説明

光触媒性高硬度被膜形成用水液及び該被膜を備える構造体、並びにそれらの製造方法

【課題】 ガラス板、樹脂シートあるいは金属板等に光触媒性能と、高い表面硬度を有する被膜を形成する技術の提供。
【解決手段】 4価チタン塩とカルシウム塩との混合溶液と、塩基性溶液とを反応させて、チタンとカルシウムとの混在する水酸化物を形成し、この水酸化物中のチタンを酸化剤でペルオキソ化してアモルファス型過酸化チタンを形成するペルオキソ基を持つアモルファス型チタン酸化物又はそれを更に加熱してアナターゼ型に転換したアナターゼ型チタン酸化物微細粒子を含有する被膜形成用水液をガラス板、樹脂シート又は金属板等に塗布し、その後加熱して透明性及び表面硬度の高い光触媒性能を有する被膜を形成する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、励起波長を受光し、水や酸素から活性ラジカル種を生成し、無機ガスや有機化合物等を酸化還元分解して、防汚・抗菌・ガス分解・水浄化・超親水等の性質を発現する光触媒機能を有する被膜を形成する被膜形成用水液及びその製造方法、並びに該被膜を備える構造体及び該被膜を具備する構造体を製造する方法に関する。
【0002】より詳しくは、本来の触媒性能だけでなく、それに加えて実用的には、透明性、透光性、構造体本体の化粧性能維持性及び表面硬度を必要とする、ガラス、樹脂シートあるいは金属板等に被膜を形成するのに好適な特性を発現する、被膜形成用水液及びその製造方法、並びに該被膜を備える構造体及び該被膜を具備する構造体を製造する方法に関する。特に表面硬度に関し自動車のフロントガラス等に使用した場合においても、実用性のある硬度を発現できる被膜を形成できる被膜形成用水液等に関する。
【0003】
【従来の技術】チタン含有物質を、板ガラス、セラミック板、金属板あるいはタイルなどの建材等の各種材料表面に塗布して酸化チタン(チタニア)からなる被膜を形成し、表面汚染防止などの基体表面保護、光触媒、誘電体、半導体、紫外線カット、着色コーティング等の各種機能を発現させることが従前から行なわれている。その酸化チタン被膜の形成方法については、酸化チタンの微粒子を含有した分散液あるいはチタン化合物溶液を基体表面に塗布し、塗布した後に乾燥あるいは更に必要に応じ低温焼成する等の方法が知られている。
【0004】特に光触媒性能を発現させるために使用するチタン酸化物としては、アナターゼ型あるいはルチル型酸化チタン等の二酸化チタンのみでなく、ペルオキソ基を有する酸化チタン、すなわち過酸化チタンも利用できることが知られている。その過酸化チタンについては、アモルファス型のものは触媒能がなく、アナターゼ型のもののみが触媒性能を有することも知られている(特開平9−124865号公報)。
【0005】そのアナターゼ型過酸化チタンは、前記したとおり光触媒性能を有することから各種構造体の基体表面に被膜を形成し光触媒膜として利用することも前記公報に記載されている。アモルファス型のものについては、前記したとおり光触媒性能はないが結合性能が優れており、光触媒被膜を形成する際の光触媒粒子のバインダーとして利用することが提案されている(特開平9−262481号公報)。
【0006】前述のようにアナターゼ型過酸化チタンによって形成された被膜は、光触媒性能を有し、それと共に他のチタン酸化物からなる光触媒と同様に表面汚染防止等の基体表面保護、誘電体、半導体、紫外線カット、着色コーティングなどの各種機能を発現させることができるが、その被膜の導電性能は十分なものとはいい難く、電磁波シールドあるいは帯電防止などとして利用するには満足し難いものであった。
【0007】その後、この光触媒性能と導電性能と同時に発現する被膜形成技術も既に提案されており(特開平11−3155921号公報)。その被膜形成技術は、光触媒性能を発現する被膜と導電性能を発現する被膜とを積層して形成し、両被膜が表面に露出するように構造を工夫することにより導電性能と光触媒性能を付与するものである。この技術は被膜の形成工程が複雑であることから、本発明者は、光触媒能と電磁波シールドあるいは帯電防止等に有益な導電性を有する被膜をより簡便に形成できる過酸化チタン含有水液を開発し、既に特許出願した(特願2001−4506号)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、この過酸化チタン含有水液に関しては、高機能性及び施工簡便性に着目し、従前より継続して鋭意研究開発に努めている。そのような中で、この度、透明化粧性及び表面硬度を必要とするガラス、樹脂シートあるいは金属板等に実用性のある光触媒性能を持つ被膜を形成可能とする被膜形成液及びそれを利用した被膜を具備する構造体等を開発することに成功した。
【0009】以上のとおりであるから、本発明は、板ガラス、樹脂シートあるいは金属板等に実用性のある光触媒性能を有する被膜を形成できる、すなわち防汚・抗菌・ガス分解・水浄化・超親水等の性質を発現する光触媒機能を持つと同時に透明性、透光性、構造体本体の化粧性能維持性及び表面硬度をも持つ被膜を形成する、被膜形成用水液及びその製造方法、並びに該被膜を備える構造体及び該被膜を具備する構造体を製造する方法を提供することを発明の解決課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解決するために、被膜形成用水液及びその製造方法、並びに該被膜を備える構造体及び該被膜を具備する構造体を製造する方法を提供するものであり、そのうちの被膜形成用水液は、カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有するものであり、ペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子はアモルファス型及びアナターゼ型のいずれか一方、あるいは両者を含有するものであってよい。
【0011】次の光触媒性高硬度被膜形成用水液の製造方法については、4価チタン塩とカルシウム塩化合物との混合液と、塩基性溶液とを反応させて、チタンとカルシウムとの混在する水酸化物を形成し、この水酸化物中のチタンを酸化剤でペルオキソ化してアモルファス型過酸化チタンを形成する、あるいは4価チタン塩溶液と塩基性溶液とを反応させて、チタン水酸化物を形成し、この水酸化物を含有する液にカルシウム塩溶液を混合し、次いでチタンを酸化剤でペルオキソ化してアモルファス型過酸化チタンを形成し、カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つアモルファス型チタン酸化物微細粒子を含有する光触媒性高硬度被膜形成用水液を製造するものである。さらに、アナターゼ型チタン酸化物微細粒子を含有する光触媒性高硬度被膜形成用水液の製造方法は、前記アモルファス型過酸化チタンを加熱してアナターゼ型に転換するものである。
【0012】また、構造体については、カルシウム化合物が共存するチタン酸化物を有する光触媒性高硬度被膜を基体に備えるものである。さらに、その構造体を製造する方法については、カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する被膜形成用水液を基体表面に塗布し、その後加熱することにより光触媒性高硬度被膜を具備させるものである。
【0013】そして、本発明のペルオキソ基を有するアモルファス型又はアナターゼ型のチタン酸化物微細粒子と、カルシウム化合物とが共存する被膜形成用水液により形成された被膜には、チタン酸化物とカルシウム化合物とが共存し、その被膜は、チタン酸化物が本来有する触媒性能に加えて高表面硬度を有するものであり、かつ透明化粧性を有することも可能となる。
【0014】その結果、本発明は、板ガラス、樹脂シートあるいは金属板等に実用性のある光触媒性能を有する被膜を形成できる。すなわち、防汚・抗菌・ガス分解・水浄化・超親水等の性質を発現する光触媒機能を持つと同時に実用化する上で必要となる透明性、透光性、構造体本体の化粧性能維持性及び表面硬度を持つ被膜を形成することができる。特に自動車用ガラスあるいは建築用窓ガラス等に形成する際に実用上必要とされる表面硬度を得ることができ、実用性のある高硬度を有する被膜を形成することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明は、前述したとおり被膜形成用水液及びその製造方法、並びに該被膜を備える構造体及び該被膜を具備する構造体を製造する方法を提供するものであり、以下において、それらに関し詳述するが、本発明は特許請求の範囲の記載によって特定されるものであり、勿論発明の実施の形態の記載によって特定されるものではない。
【0016】本発明の光触媒性高硬度被膜形成用水液は、カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有するものであり、それはアモルファス型あるいはアナターゼ型のいずれでもよく、また両者を含有するものであってもよい。アモルファス型のみで被膜を形成した場合には、光触媒性能が発現しないので、被膜形成時にアナターゼ型に転換することが必要である。この転換には、温度150〜650℃で、5〜60分間行なうのがよく、好ましくは温度250〜550℃で、15〜30分間行なうのがよい。その加熱処理は板状構造体の加熱成形過程、熱処理過程あるいは塗料焼き付け過程等において付随的に行うのが熱の有効利用ができ好ましい。
【0017】この被膜形成用水液により形成された被膜は、ペルルオキソ基を持つチタン酸化物がアモルファス型の場合の方が、アナターゼ型の場合より高硬度を発現することができる。前述のとおりアモルファス型の場合には触媒性能がないので、被膜形成用水液としては両者が混合したものあるいはアモルファス型を造膜した上で250℃以上で加熱したものが好ましく、特にアモルファス型の含有率がアナターゼ型より高いものが高い硬度を発現することができるので望ましい。
【0018】本発明の被膜形成用水液が含有するペルオキソ基を持つチタン酸化物には、前述のとおりアモルファス型及びアナターゼ型があり、本発明の被膜形成用水液には、アモルファス型単独、アナターゼ型単独あるいは両者を含有するものの3種がある。それらの被膜形成用水液の製造は、それぞれ以下のとおり行うことができる。
【0019】まず、アモルファス型のペルオキソ基を持つチタン酸化物を含有する被膜形成用水液の製造方法について述べる。それは、4価のチタン塩と、カルシウム化合物好ましくはカルシウム塩とを含有した混合液と、塩基性溶液とを反応させてチタンの水酸化物を生成させる。その際には、水酸化物中には水酸化チタンと共にカルシウム化合物が共存したものとなる。次いで得られた水酸化物を純水で洗浄した後過酸化水素水でペルオキソ化し、カルシウム化合物が共存する、すなわちカルシウム化合物がドープされたペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する水液を作製する。
【0020】その際の反応液の濃度及び温度については、特に限定されるわけではないが、希薄溶液及び常温で実施するのが好ましい。この反応は中和反応であり、酸性から中性、すなわちpH7に調整することが望ましい。その反応後は形成されたカルシウム化合物が共存する水酸化チタンゲルを重力沈降あるいは遠心分離等により固液分離し、分離後形成された水酸化チタンゲルを水洗するのが好ましい。
【0021】その水酸化チタンゲル中のカルシウム化合物の化学構造等については、本発明者は現在までのところ特定できていないものの、塩基性溶液が添加された後のカルシウム化合物であるから、水酸化物あるいは使用した原料カルシウム化合物等であると推測している。またカルシウム化合物の一部は溶解してイオン化してものもあると推測している。
【0022】前記のようにして得られたカルシウム化合物がドーピングされた水酸化チタンは、それに過酸化水素等の酸化剤を添加しペルオキソ化することによりアモルファス型過酸化チタンが形成され、その粒子の粒径は2nm〜10nmである。このようにして得られたアモルファス型過酸化チタンを含有する被膜形成用水液は、固着力に優れた膜の形成は可能であるものの前述のとおり触媒性能はない。この造膜されたアモルファス型過酸化チタンの膜は、加熱することにより、好ましくは250℃以上の雰囲気温度で加熱することによりアモルファス型からアナターゼ型に転移し、触媒性能を発現させることができる。
【0023】さらに、この被膜形成用水液の製造については別法もあり、それは以下のとおりである。すなわち、4価のチタン塩を含有した溶液と、塩基性溶液とを反応させて水酸化物を生成させ、純水で洗浄後カルシウム化合物含有液を混合してもよい。このようにして得た混合液中のチタンの水酸化物を、過酸化水素水等の酸化剤でペルオキソ化し、カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する水液を形成する。
【0024】その酸化に先だっては冷却するのが好ましい。その際の冷却は水酸化チタンが1〜5℃になるように行うのがよい。ペルオキソ化する際の酸化剤としては、過酸化水素が望ましく、その濃度は特に制限されることはないが、30〜40%のものがよい。なお、酸化剤については、過酸化水素に制限されるものではなく、前述したとおりペルオキソ化物、すなわち過酸化チタンが形成できるものであれば各種のものが使用できる。前記のように水酸化チタンと過酸化水素とを混合することによりペルオキソ化反応が次第に進行し、アモルファス型過酸化チタンの分散液が形成される。得られた分散液は通常黄色である。
【0025】そして、カルシウムが共存するアナターゼ型のペルオキソ基を持つチタン酸化物を含有する被膜形成用水液の製造は、前記で得られたアモルファス型のペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する水液を加熱してアナターゼ型に転換させることにより行う。その際の加熱温度は80〜200℃がよく、特に大気圧下での加熱が簡便で好ましく、このようにして得られた被膜形成用水液は透明性が高い。そのため形成された被膜は透明度が高く、視界性能あるいは装飾性能を求められる用途には好適である。
【0026】本発明の被膜形成用水液の製造に使用する4価のチタン塩としては、アンモニア水、苛性ソーダ溶液等の塩基性溶液と反応させた際にオルトチタン酸(H4TiO4)とも呼称される水酸化チタンのゲルを形成できるものであれば各種のチタン化合物が使用でき、それには例えば、4塩化チタンあるいは硝酸チタン等のチタンの水溶性無機酸塩がある。それ以外にも蓚酸チタン等の水溶性有機酸塩も例示できる。なお、これらの各種チタン化合物の中では、水溶性に特に優れ、かつ製造された被膜形成用水液中にチタン化合物中のチタン以外の成分が残留しない点で4塩化チタンが好ましい。
【0027】また、これらの4価チタンの塩溶液と反応させる塩基性溶液は、4価チタンの塩溶液と反応して水酸化チタンのゲルを形成できるものであれば、各種のものが使用可能であり、それには例えばアンモニア水、苛性ソーダ溶液、炭酸ソーダ溶液あるいは苛性カリ溶液等が例示できるが、アンモニア水が好ましい。その後形成された水酸化チタンを酸化する酸化剤としては、酸化後ペルオキソ化物が形成できるものであれば各種の酸化剤が制限なく使用できるが、製造された被膜形成液中に、金属イオンあるいは酸イオン等の残留物の生じない過酸化水素が望ましい
【0028】4価チタンの塩溶液及び塩基性溶液の両溶液の濃度については、反応時の濃度が、水酸化チタンのゲルが形成できる範囲であれば特に制限されるものではないものの比較的希薄な溶液がよい。具体的には、4価チタン塩溶液は5〜0.01wt%がよく、好ましくは0.9〜0.3wt%がよい。また、塩基性溶液は10〜0.01wt%がよく、好ましくは1.0〜 0.1wt%がよい。特に塩基性溶液にアンモニアを使用した場合の濃度は、前記した範囲の10〜0.01wt%がよく、好ましくは1.0〜 0.1wt%がよい。
【0029】本発明の被膜形成用水液の製造に使用するカルシウム化合物としては、アンモニア水、苛性ソーダ溶液等の塩基性溶液と4価チタンの塩溶液とを反応させた際に、形成されたチタン水酸化物と共存できるカルシウム化合物で、極端に溶解度の低い水に不溶性のものでなければ各種のカルシウム化合物が使用でき、それには、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、酸化カルシウム等の各種の無機カルシウム化合物が例示できる。
【0030】それ以外にも蟻酸カルシウム等の水溶性有機酸塩も例示できる。また、このカルシウム化合物については、カルシウム架橋有機顔料等のカルシウムを含む化合物も使用することができ、そのようにすることにより光触媒を機能化させ、カルシウムと有機化合物との間の着色を生じさせる有機結合を解離し透明性に優れた光触媒性高硬度被膜を作製できる。なお、これらの各種カルシウム化合物の中では、水溶性のものが望ましく、特に水溶性に優れている塩化カルシウムが好ましい。
【0031】また、4価のチタン塩と共存させる量については、該チタン塩のチタンと、カルシウム化合物のカルシウムとが、モル比で、チタン:カルシウム=1:0.5〜1:0.001がよく、1:0.2〜1:0.01が好ましい。
【0032】その水酸化チタンゲル中のカルシウム化合物の化学構造等については、本発明者は、前述のとおり現在のところ特定できていないものの、塩基性溶液が添加された後のカルシウム化合物であるから、水酸化物あるいは使用した原料カルシウム化合物等であると推測している。なお、カルシウム化合物の一部は溶解してイオン化してものもあると推測している。またペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する水液中のカルシウム化合物の化学構造等についても、カルシウム化合物が過酸化水素等の酸化物により酸化されるというような技術常識も存在しないので、現状では前記と同様と解している。
【0033】本発明の被膜形成用水液を使用して高硬度被膜を形成する対象物としては、光触媒性能を必要とするものであれば、特に制限されることなく使用可能であるが、光触媒性能と高硬度との両性能の発現することを必要とするものが好適なものである。さらにそれらに加えて透明化粧性を必要とするものであれば、より好適に使用できる。そのようなものとしては、板ガラス、樹脂シートあるいは金属板等があり、特に自動車用の合わせガラス、強化ガラスには好適に使用できる。
【0034】これらを含めて被膜形成対象物に関し、さらに言及すれば、対象素材としては板ガラス、セラミック、ステンレス,アルミ等の金属板、アクリル,ポリカーボネート,PET等のプラスチック板、綿布あるいは繊維等が例示できる。また具体的構造物としては、建築物,自動車等の窓ガラス、自動車、車両、建材等の金属製外装材、タンク、観賞用等の各種水槽、金属,プラスチック等のパイプ、衛生陶器、眼鏡、レンズ、レンズフィルター、貯湯器、浴槽機器、洗面機器、流し台、ドア取手、水道用水栓、道路用ミラー、カーテンウォール等の各種ものが例示できる。
【0035】次に、光触媒性高硬度被膜を具備する構造体を製造する方法について述べる。光触媒性高硬度被膜を具備する構造体を製造するには、被膜形成用水液を基体表面に塗布する。塗布には、各種塗布手段が特に制限されることなく採用できるが、ロールコート、グラビアコート、蒸着、スピンコート、スパッタリング、バーコート、吹付コート等が例示できるが、チタンの干渉色低減の点で吹付コートが好ましい。
【0036】被膜形成用水液としては、ペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子に関しては、前記したとおりアモルファス型及びアナターゼ型のいずれも使用可能である。造膜時あるいは造膜後等に、アモルファス型及びアナターゼ型のいずれを使用した場合においても硬度を向上させるために加熱処理を行うのが好ましい。特にアモルファス型の場合には常温造膜では触媒性能が発現しないので、造膜時あるいはその後に加熱処理してアナターゼ型に転換させることが必要である。
【0037】特に、光触媒性と共に高透明性及び高い硬度を有することが望まれる板ガラス、ステンレス,アルミ等の金属板、樹脂シートにおいては、成形工程、強化工程、圧延工程、加工工程等に加熱する工程が存在するので、その加熱時あるいはそれら工程後の余熱が存在する間に基体表面に被膜形成用水液を造膜し、余熱等で固着することにより光触媒性高硬度被膜を具備した構造体を製造するのが望ましい。
【0038】その光触媒性能と高い硬度とを有する被膜を具備することが望まれる板ガラス、金属板、樹脂シート等に関し、その被膜を具備せしめる製造プロセスに関し具体的に説明する。まず、光触媒性高硬度被膜を有する板ガラスあるいはその加工品の場合に関し述べると、板ガラスに関しては、板ガラス製造プロセス、強化ガラス製造プロセス、曲げ強化ガラス製造プロセスあるいは合わせガラス製造プロセスにおいて、いずれもガラス加熱工程が存在するので光触媒性高硬度被膜を好ましく作製することができる。
【0039】例えば、板ガラス製造プロセスにおいては、光触媒性高硬度被膜の作製は、ガラス原料を溶解炉で溶融しフロートバス等で板ガラスに成形した後の徐冷窯導入前の工程において、被膜形成用水液を塗布し、厚さ0.1〜0.5μm程度に造膜し、ガラスが保有する余熱を利用して行うことができる。
【0040】また、強化ガラス製造プロセスにおいては、同被膜の作製は、所定の形状に切断された板ガラスを加熱炉導入前工程もしくは空冷強化工程前に板ガラス製造プロセスの場合と同様に被膜形成用水液を塗布し、ガラスが保有する余熱等を利用して行うことができる。さらに、曲げ強化ガラス又は合わせガラスの製造プロセスにおける同被膜の作製も、所定の形状に切断された板ガラスを曲げ強化又は合わせガラス作製における加熱工程の前又は後に、強化ガラス製造プロセスの場合と同様に被膜形成用水液を塗布し、ガラスが保有する余熱等を利用して行うことができる。
【0041】次の樹脂シート製造工程における光触媒性高硬度被膜の作製は、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂等の厚肉樹脂シート材の場合あるいはそれらの薄肉樹脂シート材の場合の2種があり、前者の場合は、成形ロール引き出し時の加熱後の規格切断前までの工程における余熱を利用して行うものであり、該シート材表面にまず光触媒ブロック機能性プライマーを厚さ0.01〜0.5μm程度造膜し、その後被膜形成用水液を塗布した後余熱を利用して固着する。後者の場合は、フィルム延伸加熱及び延伸余熱を有する工程があり、この工程において前記の場合と同様にプライマーを造膜し、その後被膜形成用水液を塗布した後余熱を利用して固着する。
【0042】最後の金属板の製造工程における光触媒性高硬度被膜の作製には、金属板自体の製造工程における場合と、塗装鋼板の製造工程における場合の2種類がある。前者の被膜作製の場合は、金属板(銅、アルミニウム、ステンレス、各種合金等の板)製造プロセスである熱延工程後における表面研磨等の化粧加工後、被膜形成用水液を塗布し、余熱を利用して固着する。後者の被膜作製の場合は、塗膜形成後に行う焼き付け工程の余熱を利用するものであり、塗膜面にまず光触媒ブロック機能性プライマーを厚さ0.01〜0.5μm程度造膜し、その後被膜形成用水液を塗布した後余熱を利用して固着する。
【0043】
【実施例】以下において、本発明の被膜形成用水液を製造する実施例及び比較対照水液を製造する比較例、並びにそれら水液を使用してガラス及びタイルに被膜を製造する実施例及び比較例を記載する。また、合わせてそれら実施例及び比較例を用いて硬度、透明性及び触媒性能に関する評価試験を行った結果に関し記載するが、本発明はこれらの例及び評価試験結果によって何等限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載によって特定されるものであることはいうまでもない。
【0044】[水液実施例1]純水1000mlにCaCl2・2H2O、0.774gを完全に溶かした溶液に、50%四塩化チタン溶液(住友シチックス(株)製)20gを添加し、純水を加え2000mlにメスアップした溶液を準備する。これに25%アンモニア水(高杉製薬(株)製)を10倍希釈したアンモニア水を滴下してpH7.0に調整して水酸化物を沈殿させた。
【0045】この沈殿物を純水で上澄み液中の導電率が0.8mS/m以下になるまでデカンテーション洗浄を繰り返し、導電率が0.798mS/mになったところで洗浄を終了すると、固形分濃度0.78wt%濃度の水酸化物の含有液が695g作製された。次いで、この含有液を1〜5℃に冷却し、35%過酸化水素(タイキ薬品工業(株)製)を28gづつ2回に分けて添加し16時間攪拌すると黄褐色の透明なカルシウム化合物がドープされた固形分濃度0.86wt%のアモルファス型過酸化チタン溶液751gが得られた。
【0046】[水液実施例2]水液実施例1で得られたアモルファス型過酸化チタン溶液を200g秤量し100℃で5時間加熱すると黄色透明なカルシウム化合物がドープされた固形分濃度1.75wt%のアナターゼ型過酸化チタン分散液が得られた。
【0047】[水液実施例3]水液実施例1で使用したアンモニア水に代えて苛性ソーダ(NaOH)を使用して以外は、水液実施例1と同様にしてカルシウム化合物がドープされたアモルファス型過酸化チタン溶液を得た。
【0048】[水液比較例1]純水500mlに純度97%CuCl2・2H20(日本化学産業(株)製)0.463gを完全に溶かした溶液に、50%四塩化チタン溶液(住友シチックス(株)製)10gを添加し純水を加え1000mlにした溶液を準備する。これに25%アンモニア水(高杉製薬(株)製)を10倍希釈したアンモニア水を滴下してpH6.9に調整して水酸化銅と水酸化チタンとの混合物を沈殿させた。
【0049】この沈殿物を純水で上澄み液中の導電率が0.8mS/m以下になるまで洗浄を継続し、導電率が0.782mS/mになったところで洗浄を終了すると、0.96wt%濃度の水酸化物の含有液が350g作製された。次いで、この含有液を1〜5℃に冷却しながら35%過酸化水素(タイキ薬品工業(株)製)を25g添加し16時間攪拌すると青緑色の透明な銅がドープされた0.96wt%濃度のアモルファス型過酸化チタンの分散液370gが得られた。
【0050】この得られたアモルファス型過酸化チタン分散液を100g秤量し100℃で5時間加熱すると更に青みが増し強い青緑色の銅がドープされたアナターゼ型過酸化チタンゾルが1.6wt%濃度の分散液60gが得られた。これを純水で希釈して、アナターゼ型過酸化チタンを濃度0.85wt%(Ti換算、チタン濃度に関して特に断りがない限り、本明細書ではいずれもチタン換算である)で含有する被膜形成用の水液112gを調製した。
【0051】[水液比較例2]純水30mlで希釈した0.85wt%のアナターゼ型過酸化チタン酸水溶液(サスティナブル・テクノロジー社製、STi−500B、TiO2含有量1.7wt%)54gに対し、0.05mol硝酸銀を濃度0.005molになるように6g添加し、銀がドープされたアナターゼ型過酸化チタン分散液を調製した。
【0052】[水液比較例3]純水500mlに30wt%シリカゾル2.5gと、50%四塩化チタン溶液(住友シチックス(株)製)10gを添加し純水を加え1000mlにした溶液を準備する。これに25%アンモニア水(高杉製薬(株)製)を10倍希釈したアンモニア水を滴下してpH6.9に調整してシリカゾルと水酸化チタンとの混合物を沈殿させた。
【0053】この沈殿物を純水で上澄み液中の導電率が0.8mS/m以下になるまで洗浄を継続し、導電率が0.688mS/mになったところで洗浄を終了すると、0.96wt%の水酸化物の含有液が345g作製された。次いで、この含有液を1〜5℃に冷却しながら35%過酸化水素(タイキ薬品工業(株)製)を25g添加し16時間攪拌するとシリカがドープされた1.05wt%濃度のアモルファス型過酸化チタンの分散液370gが得られた。
【0054】この得られたアモルファス型過酸化チタン分散液を100g秤量し100℃で5時間加熱するとシリカがドープされたアナターゼ型過酸化チタンゾルが1.72wt%濃度で60g得られた。これを純水で希釈して、被膜形成用の濃度0.85wt%のアナターゼ型過酸化チタン分散液120gに調製した。
【0055】[被膜形成用基板及び製造条件等]前記した水液実施例及び水液比較例で製造した各被膜形成用水液を用いて被膜を形成するに使用した基板は、透明フロートガラス(100×100×4mm)、及び陶磁器タイル(97×97×4mm)であり、被膜は、各水液に関し被膜形成用水液を塗布した後、常温における乾燥、及び250℃15分間の加熱乾燥の2種の条件下で作製した。
【0056】[被膜実施例1]基板である透明フロートガラス及びタイルに、水液実施例1で製造したカルシウム化合物がドープされたアモルファス型過酸化チタン溶液を、40g/m2で塗布し、乾燥して約0.3μmの膜厚の被膜を具備した基板を作製し、これを被膜形成基板1とした。
【0057】[被膜実施例2]水液実施例1で製造したカルシウム化合物がドープされたアモルファス型過酸化チタン溶液と、水液実施例2で製造したカルシウム化合物がドープされたアナターゼ型過酸化チタン分散液とを、3:7で混合した被膜形成用水液を調製し、これを基板に40g/m2で塗布し、乾燥して約0.3μmの膜厚の被膜を基板に作製し、これを被膜形成基板2とした。
【0058】[被膜実施例3]基板に、水液実施例2で製造したカルシウム化合物がドープされたアナターゼ型過酸化チタン分散液を、40g/m2で塗布し、乾燥して約0.3μmの膜厚の被膜を具備した基板を作製し、これを被膜形成基板3とした。
【0059】[被膜比較例1]基板に、アナターゼ型過酸化チタン酸水溶液(サスティナブル・テクノロジー社製、STi−500B、TiO2含有量1.7wt%)を、20g/m2で塗布し、乾燥して約0.3μmの膜厚の被膜を具備した基板を作製し、これを対照被膜基板1とした。
【0060】[被膜比較例2]基板に、水液比較例1で製造した銅がドープされたアナターゼ型過酸化チタン分散液を、40g/m2で塗布し、乾燥して約0.3μmの膜厚の被膜を具備した基板を作製し、これを対照被膜基板2とした。
【0061】[被膜比較例3]基板に、水液比較例2で製造した銀がドープされたアナターゼ型過酸化チタン酸水溶液を、40g/m2で塗布し、乾燥して約0.3μmの膜厚の被膜を具備した基板を作製し、これを対照被膜基板3とした。
【0062】[被膜比較例4]基板に、水液比較例3で製造したシリカがドープされたアナターゼ型過酸化チタン酸水溶液を、40g/m2で塗布し、乾燥して約0.3μmの膜厚の被膜を具備した基板を作製し、これを対照被膜基板4とした。
【0063】[被膜形成用水液により形成される被膜の性能評価試験概要]前記被膜実施例及び被膜比較例で作製した、被膜形成基板及び対照被膜基板を性能評価用試料として、各試料について、透明性、表面硬度及び光触媒性能を評価した。なお、透明性及び表面硬度評価試験には透明フロートガラス基板に造膜した試料を用いた。また光触媒性能評価試験にはタイルに基板に造膜した試料を用いた。
【0064】[透明性評価試験]透明性評価試験は以下のとおり実施した。すなわち、透明フロートガラス基板に造膜した各試料について、無造膜の透明フロートガラス基板と対比しながら目視により透明性を評価する。
【0065】[表面硬度評価試験]表面硬度評価試験は、各種硬度の鉛筆を使用して以下のとおり実施した。すなわち、透明フロートガラス基板に被膜を形成した各試料について、各種硬度の三菱鉛筆「ユニ」を使用して試料表面を擦り、残留傷(残留痕)が発生しない最大硬度を測定し、それにより表面硬度を評価する。
【0066】[光触媒性能評価試験]光触媒性能評価試験は、有機染料を使用し、着色された各試料に関し退色性能を測定することにより酸化分解する能力を評価するものであり、具体的には以下のとおり行う。タイルに被膜を形成した各試料について、市販の赤インク(パイロット社製)を20倍に希釈した液を20g/m2でまず均一に塗布する。そこで形成された塗膜を乾燥した後に市販のブラックライト15Wを10cm離間して60分照射する(360nm、1200μw/cm2)。
【0067】色彩計(ミノルタ CR−200)を用いて、ブラックライトを照射し、その照射前後のタイル表面の色の変化を測定する。この測定結果により各試料の退色能力を測定し、それにより各試料の有機化合物に対する酸化分解する能力が評価でき、光触媒性能を評価する。なお、色彩計の測定値は、L*、a*、及びb*で表記され、本評価試験では、それらに関し照射前と、照射後について計測される。
【0068】[色彩変化の計測値]色彩計の計測値であるL*、a*及びb*は、それぞれ以下のことを表す。
*:明度を示す。この数値が大きい場合には明るいa*:赤と緑の間の色の変化を表す。数値が+側にあるときは赤色であることを示す。その数値が大きい場合には赤色が濃いことを示す。数値が−側にあるときは緑色で、その数値が大きい場合には緑色が濃いことを示す。なお、数値が0の場合は無彩色であることを示す。
*:黄色と青の間の色の変化を表す。数値が+側にあるときは黄色であること を示す。その数値が大きい場合には黄色が濃いことを示す。数値が−側にあるときは青色で、その数値が大きい場合には青色が濃いことを示す。
【0069】[色彩変化の評価方法]色彩変化の評価は、△E*によって表され、その値は、L*、a*及びb*により求められものであって、以下のとおりのものである。
△E*:色差(時間経過による色の変化量)を表す。時間経過による色の変化量が大きい場合には、この数値が大きくなる。この△E*は、以下の計算式によって求める。
△E*ab=[(△L*)2+(△a*)2+(△b*)2]1/2
【0070】なお、本評価試験によって求める△E*は、以下のとおりである。
△E*ab=[(L*1−L*2)2+(a*1−a*22+( *1−b*2)2]1/2(ただしL*1 :照射前の明度*1、b*1:照射前の色彩L*2 :照射後の明度*2、b*2:照射後の色彩)
【0071】[透明性評価試験及び表面硬度評価試験の結果]両評価試験の結果は表1に示すとおりである。その表1によれば、カルシウムがドープされたアモルファス型過酸化チタン溶液で造膜した被膜形成基板1、カルシウムがドープされたアモルファス型過酸化チタンとアナターゼ型過酸化チタンの混合溶液で造膜した被膜形成基板2、及びカルシウムがドープされたアナターゼ型過酸化チタン溶液で造膜した被膜形成基板3のいずれの被膜形成基板においても、透明性の優れた被膜が形成できることがわかる。
【0072】
【表1】


【0073】また、いずれの基板の場合においても、250℃で塗膜を加熱乾燥した場合には、高い表面硬度を有する被膜が形成できることがわかる。すなわち、被膜形成基板1、2、3のいずれの場合にも三菱鉛筆「ユニ」の最高硬度である9Hあるいはそれ以上の硬度を有することがわかる。なお、市販されている三菱鉛筆「ユニ」の最高硬度は9Hであり、表1中における「9H<」は、最高硬度の9Hの鉛筆によっては、残留傷が発生しないことを意味する。それに対して、常温で塗膜を乾燥した場合には、250℃で塗膜を加熱乾燥した場合に比し相当程度表面硬度が低くなり、アモルファス型単独、アモルファス型とアナターゼ型混合、アナターゼ型単独の順に表面硬度が低下することがわかる。
【0074】[光触媒性能評価試験結果]光触媒性能を評価するために実施した色彩変化の評価試験結果は、表2に示すとおりである。その表2によれば、常温で固着した被膜の場合には、カルシウム化合物がドープされた被膜形成基板1及び2は、カルシウムがドープされていない基板よりもわずかに酸化分解性能が優れていることがわかる。また250℃で固着した被膜の場合には、その傾向が顕著に現れることがわかる。
【0075】
【表2】


【0076】
【発明の効果】本発明の被膜形成用水液には、ペルオキソ基を有するアモルファス型又はアナターゼ型のチタン酸化物微細粒子と、カルシウム化合物とが共存し、その水液により形成された被膜は、チタン酸化物が本来有する触媒性能に加えて高表面硬度を有するものであり、かつ透明化粧性を有することも可能となる。その結果、本発明は、ガラス、樹脂シートあるいは金属板等に実用性のある光触媒性能を有する被膜を形成できる。
【0077】すなわち、防汚・抗菌・ガス分解・水浄化・超親水等の性質を発現する光触媒機能を持つと同時に実用化する上で必要となる透明性、透光性、構造体本体の化粧性能維持性及び表面硬度をも持つ被膜を形成することができる。特に自動車用ガラスあるいは建築用窓ガラス等に形成する際に必要とされる表面硬度を向上させることができ、実用性のある表面硬度を有する被膜を形成することができる。
【0078】また、板ガラス、金属板、樹脂シート等については、成形時の余熱を利用することにより、熱効率よく、表面硬度の高い光触媒性能を有する素材を製造することができる。特に、板ガラス加工製品である、強化ガラス、合わせガラスあるいは曲げ強化ガラス等も余熱を利用して熱効率よく、表面硬度の高い光触媒性能を有するものを製造できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する光触媒性高硬度被膜形成用水液。
【請求項2】 カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する光触媒性及び高透明性高硬度被膜形成用水液。
【請求項3】 ペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子がアモルファス型及び/又はアナターゼ型である請求項1又は2記載の被膜形成用水液。
【請求項4】 ペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子がアモルファス型及びアナターゼ型の両者を含有し、かつアモルファス型の含有率がアナターゼ型に比し高い請求項1、2又は3記載の被膜形成用水液。
【請求項5】 共存するカルシウム化合物におけるカルシウムがチタンに対して、モル比でチタン:カルシウム=1:0.5〜1:0.001である請求項1ないし4のいずれか1に記載の被膜形成用水液。
【請求項6】 4価チタン塩とカルシウム化合物との混合液と、塩基性溶液とを反応させて、チタンとカルシウムとの混在する水酸化物を形成し、この水酸化物中のチタンを酸化剤でペルオキソ化してアモルファス型過酸化チタンを形成する、カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つアモルファス型チタン酸化物微細粒子を含有する光触媒性高硬度被膜形成用水液の製造方法。
【請求項7】 4価チタン塩溶液と塩基性溶液とを反応させて水酸化物を形成し、この水酸化物を含有する液にカルシウム化合物含有液を混合し、次いでチタンを酸化剤でペルオキソ化してアモルファス型過酸化チタンを形成する、カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つアモルファス型チタン酸化物微細粒子を含有する光触媒性高硬度被膜形成用水液の製造方法。
【請求項8】 請求項6又は7記載のアモルファス型過酸化チタンを加熱してアナターゼ型に転換するアナターゼ型チタン酸化物微細粒子を含有する光触媒性高硬度被膜形成用水液の製造方法。
【請求項9】 カルシウム化合物が共存するチタン酸化物を含有する光触媒性高硬度被膜を基体に備える構造体。
【請求項10】 カルシウム化合物が共存するチタン酸化物を含有する光触媒性及び高透明性高硬度被膜を基体に備える構造体。
【請求項11】 基体が板ガラス、樹脂シート又は金属板である請求項9又は10に記載の構造体。
【請求項12】 共存するカルシウム化合物におけるカルシウムがチタンに対して、モル比でチタン:カルシウム=1:0.5〜1:0.001である請求項9、10又は11に記載の構造体。
【請求項13】 カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する被膜形成用水液を基体表面に塗布し、その後加熱する光触媒性高硬度被膜を具備する構造体を製造する方法。
【請求項14】 板状構造体の加熱成形過程、熱処理過程、塗料焼き付け過程において、カルシウム化合物が共存するペルオキソ基を持つチタン酸化物微細粒子を含有する被膜形成用水液を板状基体表面に塗布し加熱固着することにより光触媒性高硬度被膜を具備する板状構造体を製造する方法。

【公開番号】特開2003−210996(P2003−210996A)
【公開日】平成15年7月29日(2003.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−11493(P2002−11493)
【出願日】平成14年1月21日(2002.1.21)
【出願人】(501016054)サスティナブル・テクノロジー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】