説明

光触媒材料およびその製造方法ならびに合成原料溶液

【課題】 水溶性ガスを初めとする有害ガスの吸着能力に優れた光触媒材料の製造方法を提供すること。
【解決手段】 担体51上に形成された結晶核52に、光触媒材料を作製する合成原料溶液54を塗布等することにより添加する処理工程P1(添加処理)で処理し、ついで乾燥固化処理工程P2、熱処理工程P3に供することによって目的物たる光触媒材料510を得る。ここで合成原料溶液54には、乾燥固化処理工程P2に用いる温度によっては失われずかつ熱処理工程P3に用いる温度によって気化する性質を有する有機化合物541を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒材料およびその製造方法ならびに合成原料溶液に関し、特に、酢酸、メチルメルカプタンといった水溶性ガスを初めとする有害ガスの吸着能力に優れた光触媒材料の提供を可能とする、光触媒材料およびその製造方法ならびに合成原料溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人らはこれまで、独自開発による画期的な光触媒材料である「柱状結晶」構造の光触媒材料の発明について開示してきた(特開2002−253975号、特開2002−370027号、特開2002−370034号、特開2003−190810号、特開2003−299965号の各公報、WO02/102510 A1、他)。これらに開示した光触媒材料によれば、極めて高活性の光触媒機能を達成することができ、また、光触媒材料の飛散や脱落がなくて取り扱いが容易であり、環境浄化装置等にも組み込みやすく、製造コストを低減することができる。そして、清浄機能、抗菌機能、脱臭機能、防汚機能が極めて優れており、空気清浄機、脱臭機、各種空調機器を始めとした環境浄化装置に広く応用することができる。
【0003】
この柱状結晶構造の光触媒材料とは、結晶核から成長させた柱状構造、または柱状中空構造を有する光触媒材料であり、柱状中空の酸化チタン結晶がその典型である。すなわち、結晶核上に一つ以上の柱状結晶を成長させ、結晶核とその上に成長させる柱状結晶が同一方位に成長し、典型的なものでは柱状結晶の内部は中空構造を有していることを特徴とする。柱状結晶構造を有する光触媒は、従来の他の結晶形状を有するものに比べて分解対象物との接触効率が良く、分解性能が飛躍的に向上する。
【0004】
また、光触媒結晶の形状が柱状とは、角柱状、円柱状、棒状、その他柱状の立体構造をとるものをすべて含み、また該柱状結晶は鉛直方向に真っ直ぐに伸びるもの、傾斜状に伸びるもの、湾曲しながら伸びるもの、枝状に分岐して伸びるもの、柱状結晶が複数本成長し途中で融合したもの等を含む。また、結晶核はスパッタリング法、PVD法、またはCVD法で作製した結晶核のみならず、その種類は単結晶、多結晶体、その他を広く用いることができる。また結晶核としては、通常の化学反応に見られる様に明らかに核と認められないようなもの、たとえば基板上の傷等を核の代替物とすることも可能である。
【0005】
【特許文献1】特開2003−190810号公報「光触媒材料とその製造方法」
【特許文献2】特開2003−299965号公報「光触媒材料とその製造方法」
【特許文献3】国際出願WO 2004/026471「PHOTOCATALYST MATERIAL AND PROCESS FOR PRODUCING THE SAME」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さて、本願出願人の開発に係る上記柱状結晶構造の光触媒材料は、その優れた光触媒機能により、地域的にも用途的にも実施・利用範囲が拡大しており、従来にも増した性能向上が大いに期待されている状況である。つまり、分解速度の増大、分解対象物質範囲の拡大等である。特に、酢酸、メチルメルカプタンといった水溶性ガスを初めとする有害ガスの吸着能力増大は、さらに高性能の光触媒材料の提供を可能とし、環境浄化装置全般の性能向上につながり、当該・関連産業のさらなる需要拡大・発展をもたらすものである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の現状を踏まえ、特に酢酸、メチルメルカプタンといった水溶性ガスを初めとする有害ガスの吸着能力に優れた光触媒材料の提供を可能とする、光触媒材料およびその製造方法ならびに合成原料溶液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は上記課題について検討した結果、光触媒材料原料溶液に界面活性剤や糖類等の有機化合物を添加し、これに熱処理を施して結晶表面を多孔質化、改質することにより、有害ガス吸着能力を向上させることができることを見出し、本発明に至った。すなわち、上記課題を解決するための手段として本願で特許請求される、もしくは少なくとも開示される発明は、以下の通りである。
【0009】
(1) 光触媒材料担体に担持して光触媒体を構成するための光触媒材料であって、該光触媒材料の表面には複数の細孔が形成されていることを特徴とする、光触媒材料。
(2) 前記光触媒の細孔は、その径が0.1nm以上7000nm以下、1nm以上1000nm以下、または5nm以上200nm以下のいずれかの範囲内であることを特徴とする、(1)に記載の光触媒材料。
(3) 前記光触媒の細孔は、その数が1μmX1μm当たり30以上4000万以下、または300以上1万以下であることを特徴とする、(1)または(2)に記載の光触媒材料。
(4) 前記光触媒は、柱状の結晶構造を有する光触媒材料であることを特徴とする、(1)ないし(3)のいずれかに記載の光触媒材料。
【0010】
(5) 前記光触媒が酸化チタンであることを特徴とする、(1)ないし(4)のいずれかに記載の光触媒材料。
(6) 前記光触媒上には、貴金属または卑金属の少なくともいずれか一方の粒子が担持されていることを特徴とする、(1)ないし(5)のいずれかに記載の光触媒材料。
(7) 前記光触媒により、これを用いて作製された光触媒体(触媒担持面積75mm×75mm、酸化チタン担持量約0.1g)は、人工空気で置換した相対湿度60ないし65%および気温18ないし20℃の20リットルガラス製容器中に注入された20ppmの酢酸を、1時間で15ppm以上20ppm以下、または17ppm以上20ppm以下吸着することができることを特徴とする、(1)ないし(6)のいずれかに記載の光触媒材料。
(8) 前記光触媒は水分吸着性を有することを特徴とする、(1)ないし(6)のいずれかに記載の光触媒材料。
【0011】
(9) 担体上に形成された結晶核を光触媒材料を作製する合成原料溶液にて処理し、これを乾燥固化処理、さらに熱処理することによって目的物を得る光触媒材料製造方法であって、該合成原料溶液には、該乾燥固化処理に用いる温度によっては失われず、かつ該熱処理に用いる温度によって気化する性質を有する有機化合物が添加されており、これによって、表面上に複数の細孔を有する柱状結晶構造の光触媒材料が得られることを特徴とする、光触媒材料製造方法。
(10) 前記乾燥固化処理は、到達温度が135℃以上400℃以下、保持時間が45分間以上であり、前記熱処理は、450℃以上、処理時間が45分間以上であることを特徴とする、請求項9に記載の光触媒材料製造方法。
【0012】
(11) 担体上に形成された結晶核を、光触媒材料を作製するための合成原料溶液にて処理し、これを乾燥固化処理、さらに熱処理することによって目的物を得る光触媒材料製造方法に用いることのできる、光触媒材料作製用の合成原料溶液であって、該合成原料溶液には、有機チタン化合物、水、アルコール、および、該乾燥固化処理に用いる温度によっては失われず、かつ該熱処理に用いる温度によって気化する性質を有する有機化合物が含まれていることを特徴とする、光触媒材料作製用の合成原料溶液。
(12) 前記有機化合物は、非イオン性のもしくはその他の界面活性剤、または糖類であることを特徴とする、(11)に記載の光触媒材料作製用の合成原料溶液。
(13) 前記有機化合物は、沸点が130℃以上550℃以下であることを特徴とする、(11)または(12)に記載の光触媒材料作製用の合成原料溶液。
(14) 前記有機化合物は、トレハロース、ラクチトール、マルトース、スクロース、キチン、またはキトサンのいずれかの糖類であることを特徴とする、(11)に記載の光触媒材料作製用の合成原料溶液。
【0013】
すなわち本発明は、光触媒結晶表面に細孔を形成させることにより、有害ガスに対する吸着能力に優れた構造の光触媒材料、その製造方法等を提供するものである。つまり、有害ガスを光触媒において分解する際、対象ガスの吸着が光触媒反応の律速となる場合が多い。したがって、ガス吸着能力の向上は触媒能力の向上に大いに有効である。そこで本発明においては、光触媒結晶の多孔質化により、対象ガスを取り込み易い構造の形成、水分吸着性の高い結晶表面への改質を行ったものである。
【0014】
本願発明の光触媒材料における良好な水分吸着性は、形成された細孔が水分を取り込み易い大きさや構造に改質されており、そこに水分子がフィットして生じる現象とも考えられる。また、細孔を有することで表面積が広がり、表面に存在するOH基が増し、より親水性の高い表面構造に改質されたことの寄与も考えられる。さらにまた、細孔を形成するために用いられる原料溶液中の有機化合物の作用により、加水分解時にTiOが水分吸着性のある新たな構造に変化したという可能性もある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光触媒材料およびその製造方法ならびに合成原料溶液は上述のように構成されるため、これによれば、光触媒結晶表面を、対象ガスを取り込み易い構造に形成し、水分吸着性の高い状態に改質することができ、特に酢酸、メチルメルカプタンといった水溶性ガスを初めとする有害ガスの吸着能力に優れた光触媒材料を得ることができる。また、このような吸着能力の向上は、分解ガスの吸着のみならず、光触媒反応の際に生じる中間生成物の発生を抑制することにも有効である。
【0016】
特に、柱状結晶構造を有する光触媒結晶に細孔を形成したものでは、高い吸着能力と高活性な光触媒機能が得られる。また、結晶の細孔の大きさまたは比表面積を有機化合物添加やHOの量の調整によって制御することができ、対象となる有害ガスに応じて高い活性を発揮できるように、光触媒を設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下本発明について、図面も用いつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の光触媒材料の基本的な構成を示す模式図である。図において本光触媒材料10は、光触媒材料担体1に担持されて光触媒体20を構成するものであって、該光触媒材料10の表面には複数の細孔3が形成されていることを、主たる構成とする(上記(1)の発明)。図は、本発明の説明のための、後記実施例等に基づく模式図であり、光触媒体の形状、それに形成された細孔のサイズや数などが、この図に限定されるものではない。以下の模式図においても同様である。
【0018】
本光触媒材料10はこのような構成を有するため、複数設けられた該細孔3の少なくとも一部においては、これが水分や吸着対象物質を内部に取り込み易い、もしくは捕捉し易い大きさや構造となっていて、それがために水分や吸着対象物質が該細孔3に取り込まれる、もしくは捕捉されるものと考えられる。また、該細孔3が存在する構造によって該光触媒の表面積が拡大されており、これによって表面に存在するOH基の数が増加し、本光触媒材料10がより親水性の高い表面構造に改質されていることが充分に考えられ、それがために、水分や水溶性の吸着対象物質がよく吸着されることが考えられる。いずれにせよ、該細孔3が形成されていることによって、水分、酢酸、メチルメルカプタンといった水溶性ガスを初めとする水溶性の吸着対象物質、その他の吸着対象物質の本光触媒材料10への吸着が大いに促進される。
【0019】
つまり、有害ガス等の分解対象物質を光触媒において分解する際、対象物質の吸着が光触媒反応の律速となる場合が多いのであるが、複数の該細孔3の形成により多孔質化された本発明光触媒材料10は、対象物質を取り込み易い構造に形成され、また水分吸着性の高い結晶表面に改質されているため、有害ガス等の分解対象物質に対して優れた吸着能力が発揮され、かかるガス吸着能力の向上により、触媒能力が大いに向上する。
【0020】
該細孔3は、その径が0.1nm以上7000nm以下の範囲にあるものを、特に本発明の範囲とすることもできるが、さらにこれを限定して、1nm以上1000nm以下の範囲とすることもできる。あるいはまた、さらに限定して、5nm以上200nm以下の範囲内とすることもできる(上記(2)の発明)。該細孔3のサイズは、後述するように、これを製造方法によって制御することが可能である。
【0021】
また、形成される該細孔3の数は、1μmX1μmの領域内当たり30以上4000万個以下の範囲にあるものを、特に本光触媒材料発明の範囲とすることもできるが、さらにこれを限定して、300以上1万個以下の範囲とすることもできる(上記(3)の発明)。該細孔3の数は、後述するように、これを製造方法によって制御することが可能である。
【0022】
図において、本発明光触媒材料10は特に、光触媒を柱状の結晶構造(柱状結晶構造)のものに特定することもできる(上記(4)の発明)。本願出願人らが発明した柱状結晶構造の光触媒は、本願においても既に説明した通りの構成と作用効果を有するものである。極めて高い光触媒能力が認められている柱状結晶構造の光触媒材料に、本発明の多孔質構造を付与することにより、分解対象物質の吸着作用の大幅な促進と、吸着された該物質の高速分解がなされ、光触媒の性能が一段と向上する。
【0023】
該光触媒としては、酸化チタンを原料とすることができる(上記(5)の発明)。
【0024】
図2は、本発明光触媒材料の基本的構成を示す別の模式図である。図示するように、本光触媒材料12は、光触媒材料担体1に担持されて光触媒体22を構成するものであって、該光触媒材料12の表面には複数の細孔3が形成されている構成は、図1を用いた説明の通りであるが、該光触媒材料12は、該担体1上に形成されている結晶核2から伸長する構造の光触媒であり、柱状結晶構造の光触媒による本発明光触媒材料の構成を、より詳しく記載した模式図である。製造方法の説明で後述する通り、柱状結晶構造の光触媒材料作製に当たっては、該結晶核が用いられる。
【0025】
図3は、本発明光触媒材料の別の構成を示す模式図である。図において本光触媒材料15は、光触媒材料担体1に担持されて光触媒体25を構成するものであって、該光触媒材料15の表面には複数の細孔3が形成されている構成に加え、前記光触媒材料15上には、貴金属または卑金属の少なくともいずれか一方の粒子5が担持されていることを、主たる構成とする(上記(6)の発明)。
【0026】
ここで該粒子5は、貴金属、卑金属いずれも、金属または金属化合物の少なくともいずれか一方の粒子であればよい。該粒子5としては、(a)特定の金属の粒子のみの場合、(b)特定の金属の酸化物等の化合物のみの場合、(c)特定の金属単体およびその金属の酸化物等の化合物の場合、が含まれ、その他異なる種類の金属、異なる種類の金属化合物があらゆる混合状態で混在している場合をも含む。したがって、たとえば(c)の場合の例として、Ptと、その塩化物であるPtClの各微粒子の双方が混在して担持されている場合も、本発明の態様として含まれる。
【0027】
また、該粒子5としてはたとえば、Cuのみを担持することも、その酸化物であるCuOのみを担持することも、あるいはその双方を混在させて担持することもできる。
【0028】
また、該粒子5の原料となる金属としては、Cu、Fe、Ni、Zn、Co、V、Zr、Mn、Sn、Cr、W、Mo、Nb、Taまたはこれらの化合物のうちの少なくとも1種を用いることとすることができる。したがってたとえば、粒子5としてCu、およびその酸化物であるCuOの双方が混在して担持される構成、NiおよびVのように、異なる元素の単体および化合物を任意に組み合わせて担持させることも可能である。
【0029】
このように、金属粒子を担持させることによって本発明光触媒材料15は、酢酸、メチルメルカプタンといった水溶性ガスを始めとする水溶性の分解対象物質の吸着効果に加え、アセトアルデヒド、トルエン等の非水溶性の分解対象物質の分解性能を向上させることができる。したがって、光触媒の用途に応じてその分解対象物質に最適の構成のものを、本発明では作製することができる。つまり、酢酸、メチルメルカプタンといった水溶性ガスが主対象である場合は、特に金属担持しないものを提供し、アセトアルデヒド等が主対象である場合は、金属担持したものを提供することができる。
【0030】
図において該金属粒子5を担持することにより、光触媒効果を得るために紫外線によって光励起を行う際に発生し得る特有の臭いの発生が低減される、あるいは臭いの発生がなくなるという効果もある。臭い発生を低減する効果は、Pt等の貴金属を用いた場合でも有効に認められるが、Cu等の卑金属またはこれらの化合物によって、より顕著に作用させることができる。
【0031】
本発明光触媒材料は、これを用いて作製された光触媒体(触媒担持面積75mm×75mm、酸化チタン担持量約0.1g)は、人工空気で置換した相対湿度60ないし65%および気温18ないし20℃の20リットルガラス製容器中に注入された20ppmの酢酸を、1時間で15ppm以上20ppm以下、または17ppm以上20ppm以下吸着できる吸着性能によって、本発明を特定するものとすることもできる(上記(7)の発明)。かかる吸着性能の高さが、本願発明の主たる効果である。
【0032】
そして本願発明光触媒材料は、水分吸着性を有するという特徴を有するものである(上記(8)の発明)。
【0033】
図4は、本発明の光触媒材料製造方法の構成を示すフロー図である。図示するように本方法は、担体51上に結晶核52が形成された被処理体59の該結晶核52に、光触媒材料を作製する合成原料溶液54を塗布等することにより添加する処理工程P1(添加処理)で処理し、これを乾燥固化処理工程P2、さらに熱処理工程P3に供することによって目的物たる光触媒材料510を得るものである。ここで、該合成原料溶液54には、該乾燥固化処理工程P2に用いる温度によっては失われず、かつ該熱処理工程P3に用いる温度によって気化する性質を有する有機化合物541が添加されていることを、主たる構成とする(上記(9)の発明)。
【0034】
かかるフローを経ることによって、添加処理工程P1において、担体51上に形成された結晶核52は該合成原料溶液54の塗布等を受けて光触媒形成のための必要物質の添加がなされ、乾燥固化処理工程P2においてこれは適宜の条件にて乾燥固化され、ついで熱処理工程P3において適宜条件にて焼成されて、目的物たる光触媒材料510が得られるが、ここで、該合成原料溶液54に、前記有機化合物541が添加されていることにより、表面上に複数の細孔を有する柱状結晶構造の光触媒材料が形成される。
【0035】
図5は、本発明光触媒材料製造方法の熱処理工程における変化を示す模式図である。図示するように、先行する乾燥固化処理工程P2により得られた中間体p510には、前記有機化合物541が粒子状になって含まれている。該有機化合物541は前述の性質によって、該乾燥固化処理工程P2終了段階では、分解や蒸発等によって失われてはいない。
【0036】
これが、より高温を用いた処理である該熱処理工程P3を経ることによって気化し、既に該乾燥固化処理工程P2において構造的に安定している該中間体p510は該有機化合物541を囲繞する形状が特に自身の構造の変化によって充填されるようなことはなく、したがってその後には細孔503が形成される。このようにして、本光触媒材料製造方法を経て、多孔質化された光触媒材料510が形成される。
【0037】
図4において、前記乾燥固化処理工程P2における乾燥固化条件は、到達温度を135℃以上400℃以下、保持時間を45分間以上とし、前記熱処理工程P3における熱処理条件は450℃以上、処理時間が45分間以上とすることができる(上記(10)の発明)。得るべき光触媒材料の乾燥固化、焼成を充分に行うためである。
【0038】
また、これに関わらず、乾燥固化条件は、到達温度を150℃以上250℃以下、保持時間を45分間以上2時間以下とし、熱処理条件は40℃以上600℃以下、処理時間が45分間以上2時間以下とすることもできる。さらに、熱処理においては、たとえば昇温速度10℃/minで、到達温度550℃、最低保持時間1時間、といった条件を用いることもできる。あるいはまた、乾燥固化処理工程P2、熱処理工程P3ともに、適宜の別の条件を適用することもできる。
【0039】
図4を用いて説明した有機化合物541を含んだ前記合成原料溶液54自体も、本願発明を特定するものの一つである(上記(11)の発明)。つまり、有機チタン化合物、水、アルコール、および、該乾燥固化処理に用いる温度によっては失われず、かつ該熱処理に用いる温度によって気化する性質を有する有機化合物541が含まれた、光触媒材料作製用の合成原料溶液541である。これには、硝酸を含むこともできる。
【0040】
本発明の合成原料溶液は、これに含まれる前記有機化合物としては、非イオン性のもしくはその他の界面活性剤、または糖類(上記(12)の発明)、あるいは、沸点が130℃以上550℃以下の有機化合物(上記(13)の発明)を用いることができる。
【0041】
また、前記有機化合物として特に、トレハロース、ラクチトール、マルトース、スクロース、キチン、またはキトサンのいずれかの糖類を、好適に用いることもできる(上記(14)の発明)。
【0042】
とりわけトレハロース二水和物は、本発明の合成原料溶液に係る有機化合物として、光触媒材料の多孔質化その他の効果を得る上で好適な物質の一つである。つまり、上述したような細孔の大きさ、構造、数、表面の状態等は、トレハロース二水和物を用いて好適に得ることができ、それに基づく作用効果もいかんなく発揮される。また、光触媒としてTiOを用いる場合、トレハロースの持つ結晶水がTiO形成時(加水分解時)に利用されることによって、水分吸着性に優れた新たなTiOに変化できるということも、考えられる。
【0043】
なお、このことを敷衍すると、トレハロース以外でも、結晶水を有し、かつ光触媒材料製造過程中の乾燥固化処理温度では消失せず、熱処理工程の処理温度では気化する、あるいは分解消失する等して消失する物質は、本発明合成原料溶液の有機化合物に替えて用い、多孔質化した光触媒材料を得ることができるといえる。
【0044】
トレハロース二水和物は糖類の中でも極めて保水力が高く、結晶水を安定して持っていることができるので、少しの熱等によっては結晶水を失うことなく、光触媒材料原料中で有効に結晶水が活用され、後述するように、多孔質化に加え、光触媒材料にとって好ましい別の効果も得られる。
【0045】
トレハロース二水和物を使用し、温度50℃から170℃の範囲で毎分10℃の昇温条件下で吸熱特性(単位時間・単位重量当たりの吸熱量)を示差走査熱量計により測定した結果によれば、トレハロース二水和物は90℃付近から吸熱効果を示し、107.3℃で第一のピークを迎え、さらに、115℃付近から再び吸熱効果を示し、125.8℃で第二のピークを迎える。
【0046】
この二つの吸熱反応は水分子(二つ)それぞれが分子内から外れることによるものである。 かかる吸熱反応がTiO結晶の急激な温度上昇を抑制するのに寄与する。したがって、90℃〜130℃の温度域で優れた吸熱特性を有し、加熱焼成時の体積変化に起因する応力を緩和し、基材からの剥離やクラックの発生を防ぐ作用も得られる。
【0047】
トレハロース二水和物は約130℃で結晶水が蒸発し、無水物となるが、これの沸点は300℃前後である。一方、柱状結晶構造の光触媒結晶の場合、その結晶生成温度は450℃〜550℃である。したがって、トレハロース二水和物は、概ね130℃〜300℃の範囲では光触媒の構造中に存在し、さらに高温の熱処理を受ける過程で、これが気化消失するものと考えられる。すなわち、光触媒の結晶化の温度とトレハロースの沸点が、処理工程的には比較的近いため、細孔が良好に発現するものと考えられる。
【実施例】
【0048】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
ガラス、金属または網目状構造を有する繊維等の各種基材上に調製した結晶核原料溶液を用いて結晶核を作製し、結晶核上に有機金属化合物からなるゾル溶液を塗布し、固化、熱処理を施すことによって、本発明に係る、細孔を有する柱状結晶構造の光触媒材料(以下、「多孔質柱状酸化チタン」ともいう)を得た。
【0049】
有機金属化合物からなるゾル溶液の調製方法としては、ブタンジオール、HO、多孔質化に有用な有機化合物を混合し、この溶液に硝酸、チタニウムテトライソプロポキシド(以下、TTIPと記す)を攪拌しながら滴下し、その後4時間常温にて攪拌した。各実施例における具体的な混合比率は、次の通りである。単位は、wt%である。
【0050】
実施例1:水/ブタンジオール/硝酸/TTIP=0.85/88.3/0.74/10.0
実施例2:水/ブタンジオール/硝酸/TTIP=0.70/88.3/0.74/10.0
実施例3:水/ブタンジオール/硝酸/TTIP=0.67/88.3/0.74/10.0
実施例4:水/ブタンジオール/硝酸/TTIP=0.50/88.3/0.74/10.0
実施例5:水/ブタンジオール/硝酸/TTIP=0/88.3/0.74/10.0
【0051】
このようにして得られたゾル溶液を前記の方法で作製した結晶核上に塗布し、固化、熱処理を施すことにより、結晶核上に多孔質柱状酸化チタンを形成した。固化は乾燥機中で到達温度150℃、保持時間1時間の条件で行った。熱処理は電気炉中で昇温速度10℃/min、到達温度550℃、保持時間1時間の条件で行った。なお、本実施例とは別に、固化は到達温度150〜250℃、保持時間2時間の条件で、熱処理は到達温度400〜600℃、保持時間2時間の条件で、それぞれ行うこともできる。
【0052】
得られる多孔質柱状酸化チタンの細孔は前記固化処理段階では現れず、電気炉における熱処理による有機化合物の分解、消失によって発現した。
【0053】
このようにして得られた多孔質柱状酸化チタンを試料とし、光触媒機能および多孔質体の性能評価として、有害物質であるアセトアルデヒド、トルエン、トリメチルアミン、キシレン、アンモニア、酢酸、メチルメルカプタン等を対象とした分解および吸着試験を実施した。有害物質としては、90.0%アセトアルデヒド(和光純薬工業(株)製)、トルエン(和光純薬工業(株)製)、キシレン(和光純薬工業(株)製)、30.0%トリメチルアミン(和光純薬工業(株)製)、25%アンモニア水(和光純薬工業(株)製)、酢酸(和光純薬工業(株)製)、98.5%メチルメルカプタン(ガステック製 パーミエーションチューブ)を用いた。評価手順を以下に記す。
【0054】
作製した光触媒材料試料を、酸化チタン結晶膜面を上にしてガラス製20リットル容器内に設置し、その容器内を人工空気で置換した。用いた人工空気(日本酸素(株)製)のガス組成は、窒素78%、酸素21%、アルゴン0.9%、炭酸ガス(CO、CO2、CH4)0.03%、残りは水分である。
【0055】
その後、容器内の湿度を60〜65%に調整し、各種分解ガス20ppmをマイクロシリンジで容器内に注入した。メチルメルカプタンを用いる場合のみガラス製5リットル容器を使用し、注入濃度は10ppmとした。各種ガス注入後1時間放置し、容器内のガス濃度変化を測定した。その後、紫外光を照射し、容器内のガス濃度の時間変化を光音響マルチガスモニター(INNOVA製1312−5型)またはガステック製ガス検知管を用いて測定した。なお、試料とブラックライトの距離は20mm、紫外線照度は4000μW/cmとした。本試験では吸着性能をガス注入時から1時間経過後のガス濃度減少量、分解性能を紫外線照射時から1ppmまたは0ppmに至るまでの時間で定義した。
【0056】
また、上記試料における多孔質柱状酸化チタン光触媒の結晶構造解析をX線回折により行い、表面観察を走査型電子顕微鏡(以下、SEMと記す)により行った。
【0057】
<実施例1〜5、比較例1>
表1に有機添加物としてトレハロース二水和物を用いた場合の添加量を示す。添加量は、先に示した合成原料溶液の他の要素の重量比に合わせて示す。
【0058】
【表1】

【0059】
実施例1は、結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して1.0wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した柱状酸化チタン光触媒を作製した。
【0060】
実施例2は結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して2.5wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した多孔質柱状酸化チタン光触媒を作製した。
【0061】
実施例3は結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して3.0wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した多孔質柱状酸化チタン光触媒を作製した。
【0062】
実施例4は結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して5.0wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した多孔質柱状酸化チタン光触媒を作製した。
【0063】
実施例5は結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して10.0wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した多孔質柱状酸化チタン光触媒を作製した。
【0064】
比較例1は結晶核上に塗布するゾル溶液に有機物を添加せず、乾燥固化、熱処理を施した柱状酸化チタン光触媒を作製した。
これら実施例、比較例における実験結果を表2に示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2および図7の結果から以下のことが分かる。トレハロース二水和物を、調製するゾル溶液に対して1.0wt%添加した場合には細孔は現れず、2.5〜10.0wt%添加した場合には5〜120nmの無数の細孔が発現した。また、アセトアルデヒドに対する分解性能は比較例1を超える値を示すものはなかったが、酢酸に対する吸着性能はトレハロース二水和物添加量の増加に伴い向上した。特に実施例4、5の吸着性能は極めて高く、比較例1のおおよそ2倍となった。
【0067】
以下に、実施例1〜5の実験結果の詳細を示す。
【0068】
実施例1は、結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して1.0wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した柱状酸化チタン光触媒を作製したものである。結晶に細孔の発現は確認されず、アセトアルデヒド分解性能は17分、酢酸吸着性能は17.0であった。
【0069】
実施例2は、結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して2.5wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した多孔質柱状酸化チタン光触媒を作製したものである。結晶に5〜10nmの無数の細孔が発現し、アセトアルデヒド分解性能は27分、酢酸吸着性能は17.9であった。
【0070】
実施例3は、結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して3.0wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した多孔質柱状酸化チタン光触媒を作製したものである。結晶に10〜60nmの無数の細孔が発現し、アセトアルデヒド分解性能は25分、酢酸吸着性能は17.4であった。
【0071】
実施例4は、結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して5.0wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した多孔質柱状酸化チタン光触媒を作製したものである。結晶に60〜150nmの無数の細孔が発現した。また、平均3μmのマクロな孔もいくつか確認された。アセトアルデヒド分解性能は23分、酢酸吸着性能は19.3であった。
【0072】
実施例5は、結晶核上に塗布するゾル溶液に添加するトレハロース二水和物の量を全ゾル重量に対して10.0wt%とし、乾燥固化、熱処理を施した多孔質柱状酸化チタン光触媒を作製したものである。結晶に60〜120nmの無数の細孔が発現した。また、平均7μmのマクロな孔もいくつか確認された。アセトアルデヒド分解性能は23分、酢酸吸着性能は19.8であった。
【0073】
<実施例6>
以上の実施例1〜5よりもさらに高い吸着性能と分解性能、機械的強度を得るために、実施例6を行った。実施例6では、添加する有機化合物の量と加水分解に用いられるHOの量を調整し、既に述べたのと同様の方法でゾル溶液を調製した。このようにして得られたゾル溶液を、作製した結晶核上に塗布し、固化、熱処理を施すことにより結晶核上に多孔質柱状酸化チタンを形成した。固化は乾燥機中で到達温度150℃、保持時間1時間の条件で行った。熱処理は電気炉中で昇温速度10℃/min、到達温度550℃、保持時間1時間の条件で行った。
【0074】
有機化合物と加水分解に用いるHOの量については、次のようにした。すなわち、水/ブタンジオール/硝酸/TTIP/トレハロース二水和物=0.42/88.3/0.74/10.0/1.0 である。単位は、wt%である。
実施例6における実験結果を表3に示す。また、
図6は、実施例5のSEM観察写真である。
【0075】
【表3】

【0076】
実施例6では、細孔径30〜120nmのミクロな孔が無数に存在していた。細孔の数は、図6のSEM観察写真上に表示された細孔をカウントしたところ、1μmX1μmの範囲に約300〜2000個であった。もっとも、SEMの分解能の制約上、本例では未確認だが、たとえば0.1nm程度の水分子レベルのサイズの細孔も、多数形成されているものと考えられる。また、アセトアルデヒドの分解性能は実施例1〜5に比較して、比較例1と同等程度の性能を示し、酢酸吸着性能はさらに向上した。トリメチルアミンに対する分解性能は20ppmから0ppmに至るまで150分、メチルメルカプタンに対する分解性能は20ppmから0ppmに至るまで10分であり、比較例1よりも良好な光触媒機能を示した。また、実施例6はメチルメルカプタンに対しても高い吸着能力があることも確認された。
【0077】
以上の実施例より、トレハロース二水和物をゾル溶液に添加することによって多孔質となった柱状酸化チタン結晶は、その比表面積の拡大と結晶表面の改質により有害ガスに対する吸着能力、および光触媒機能が増大した。また、これら性能に関与していると考えられる結晶の細孔の有無や形状、大きさは、トレハロース二水和物の添加量やHOの量に依存しており、これらを制御することによって、有害ガスに対する選択性を発現させ、吸着能力および分解能力をもコントロールすることができ、対象ガスに応じた光触媒結晶の設計が可能であることが示された。
【0078】
<実施例7>
実施例6の条件で作製した試料に、金属担持処理を施した。担持に用いた金属はCuである。また、担持工程は次の通りである。
担持工程その1 担持する卑金属の原料溶液
Cu化合物として硝酸銅三水和物を用いた。これを水で希釈し、濃度を2×10−5mol/リットルに調製し硝酸銅水溶液とした。さらにこれに還元剤としてエタノールを10wt%添加し、Cu原料溶液とした。硝酸銅水溶液濃度は2×10−6mol/リットル程度以上のものから用いることができる。
【0079】
担持工程その2 光析出工程
Cu原料溶液中に実施例6で得た光触媒体を浸漬し、その上から紫外線を照射した。この操作でCu原料溶液中のCuイオンは光触媒の還元作用により還元されてCuとなり、酸化チタン表面に析出する。なお、浸漬処理ではなく、スプレー法などで酸化チタン表面にCu原料溶液を塗布した後、紫外線を照射しCuを担持させてもよい。
【0080】
担持工程その3 乾燥工程
光所媒体にCuを担持した後、純水で洗浄し、光触媒材料を150℃で1時間乾燥した。
【0081】
以上の工程によりCu微粒子が担持され、Cu担持多孔質柱状酸化チタン光触媒が得られた。
実施例7における実験結果を表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
実施例6と比較すれば、酢酸の吸着量は若干低下したとはいえ、依然高い吸着量を維持している。そして、アセトアルデヒド分解性能については、実施例6と比較して大きな性能の向上が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る光触媒材料を、紫外線光源とともに筐体に組み込み空気を循環させることにより、臭い成分、有害成分を吸着、分解し、空気浄化を効果的に行うことができる。また、本発明に係る光触媒は多くの細孔を有するため、微粒子や細菌、ウイルスの捕獲効果もまた大きく、それらの分解、除菌・殺菌能力向上を得ることが期待できる。
【0085】
また本発明に係る光触媒材料は、清浄機能、抗菌機能、脱臭機能、防汚機能等において顕著な効果を有するため、空気清浄機、脱臭機、冷房機等の各種空調機器あるいは清水器や水質浄化機器などの環境浄化装置に幅広く応用することができ、環境浄化装置全般の性能向上につながり、当該・関連産業のさらなる需要拡大・発展をもたらすものである。よって、産業上利用価値が高い発明である。
【0086】
本発明の光触媒材料製造方法、合成原料溶液を用いれば、光触媒結晶の細孔の大きさ、数、触媒の比表面積を、有機化合物添加やHOの量の調整によって制御することができ、さらにまた金属粒子の担持によって対象分解物質の範囲と効果を変更することもできる。したがって、利用用途ごとに異なる対象分解物質に応じて個別に高い活性を発揮できるように、光触媒を設計することができ、環境関連産業分野における光触媒による環境浄化技術の応用範囲、製品展開を大きく広げることができると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の光触媒材料の基本的な構成を示す模式図である。
【図2】本発明光触媒材料の基本的構成を示す別の模式図である。
【図3】本発明光触媒材料の別の構成を示す模式図である。
【図4】本発明の光触媒材料製造方法の構成を示すフロー図である。
【図5】本発明光触媒材料製造方法の熱処理工程における変化を示す模式図である。
【図6】実施例5のSEM観察写真である。
【符号の説明】
【0088】
1…光触媒担体
3…細孔
5…金属粒子
10、12、15…光触媒材料
20、22、25…光触媒体
51…担体
52…結晶核
54…合成原料溶液
59…被処理体
541…有機化合物
503…細孔
510…光触媒材料
p510…中間体
P1…添加処理工程
P2…乾燥固化処理工程
P3…熱処理工程



【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒材料担体に担持して光触媒体を構成するための光触媒材料であって、該光触媒材料の表面には複数の細孔が形成されていることを特徴とする、光触媒材料。
【請求項2】
前記光触媒の細孔は、その径が0.1nm以上7000nm以下、1nm以上1000nm以下、または5nm以上200nm以下のいずれかの範囲内であることを特徴とする、請求項1に記載の光触媒材料。
【請求項3】
前記光触媒の細孔は、その数が1μmX1μm当たり30以上4000万以下、または300以上1万以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光触媒材料。
【請求項4】
前記光触媒は、柱状の結晶構造を有する光触媒材料であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の光触媒材料。
【請求項5】
前記光触媒が酸化チタンであることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の光触媒材料。
【請求項6】
前記光触媒上には、貴金属または卑金属の少なくともいずれか一方の粒子が担持されていることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれかに記載の光触媒材料。
【請求項7】
前記光触媒により、これを用いて作製された光触媒体(触媒担持面積75mm×75mm、酸化チタン担持量約0.1g)は、人工空気で置換した相対湿度60ないし65%および気温18ないし20℃の20リットルガラス製容器中に注入された20ppmの酢酸を、1時間で15ppm以上20ppm以下、または17ppm以上20ppm以下吸着することができることを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の光触媒材料。
【請求項8】
前記光触媒は水分吸着性を有することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれかに記載の光触媒材料。
【請求項9】
担体上に形成された結晶核を光触媒材料を作製する合成原料溶液にて処理し、これを乾燥固化処理、さらに熱処理することによって目的物を得る光触媒材料製造方法であって、該合成原料溶液には、該乾燥固化処理に用いる温度によっては失われず、かつ該熱処理に用いる温度によって気化する性質を有する有機化合物が添加されており、これによって、表面上に複数の細孔を有する柱状結晶構造の光触媒材料が得られることを特徴とする、光触媒材料製造方法。
【請求項10】
前記乾燥固化処理は、到達温度が135℃以上400℃以下、保持時間が45分間以上であり、前記熱処理は、450℃以上、処理時間が45分間以上であることを特徴とする、請求項9に記載の光触媒材料製造方法。
【請求項11】
担体上に形成された結晶核を、光触媒材料を作製するための合成原料溶液にて処理し、これを乾燥固化処理、さらに熱処理することによって目的物を得る光触媒材料製造方法に用いることのできる、光触媒材料作製用の合成原料溶液であって、該合成原料溶液には、有機チタン化合物、水、アルコール、および、該乾燥固化処理に用いる温度によっては失われず、かつ該熱処理に用いる温度によって気化する性質を有する有機化合物が含まれていることを特徴とする、光触媒材料作製用の合成原料溶液。
【請求項12】
前記有機化合物は、非イオン性のもしくはその他の界面活性剤、または糖類であることを特徴とする、請求項11に記載の光触媒材料作製用の合成原料溶液。
【請求項13】
前記有機化合物は、沸点が130℃以上550℃以下であることを特徴とする、請求項11または12に記載の光触媒材料作製用の合成原料溶液。
【請求項14】
前記有機化合物は、トレハロース、ラクチトール、マルトース、スクロース、キチン、またはキトサンのいずれかの糖類であることを特徴とする、請求項11に記載の光触媒材料作製用の合成原料溶液。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−7119(P2006−7119A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−189030(P2004−189030)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(591269712)アンデス電気株式会社 (33)
【Fターム(参考)】