説明

光触媒構造体

【課題】被処理気体の湿度が変化しても放電光の発生量および光触媒の反応効率が安定して高い放電型光触媒ユニット用の光触媒構造体を提供すること。
【解決手段】本発明に係る光触媒構造体13は、第1の電極11と、第1の電極11との間に放電光を発生する第2の電極12と、第1の電極11と第2の電極12との間に配置され、放電光により光触媒反応を起こす光触媒構造体13と、を備えた放電型光触媒ユニット1に用いられる光触媒構造体13であって、基材と、この基材に担持され、酸化チタンと水を吸着する吸着剤との混合物を含む光触媒膜と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電光の作用と光触媒反応とを組み合わせて用いる放電型光触媒ユニット用の光触媒構造体に関するものであり、特に、湿度変化の影響を受け難い放電型光触媒ユニット用の光触媒構造体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光触媒は光を照射されて触媒作用を有するものであり、近年、空気浄化・脱臭、水浄化・排水処理、防汚、抗菌・殺菌、防曇等の広い分野で注目されている。光触媒は、光を照射されることにより、強い酸化作用や超撥水作用を示し、たとえば、有機物を分解して空気を浄化したり、防曇作用を発現したりする。
【0003】
光触媒の酸化作用は、以下の機構により発現すると考えられている。すなわち、光半導体粒子にバンドギャップ以上のエネルギーを持つ波長の光が与えられると、価電子帯に存在している電子は光励起されて伝導帯に移動し、価電子帯に正孔(ホール)が生成される。
【0004】
伝導帯の電子(e)は酸素(O)と反応してスーパーオキサイドアニオン(・O)を生成し、価電子帯の正孔(h)は水と反応してヒドロキシラジカル(・OH)を生成する。スーパーオキサイドアニオン(・O)およびヒドロキシラジカル(・OH)は強い酸化力を示すため、光触媒に酸化作用が生じる。
【0005】
光触媒は、応用範囲が極めて広く、また、太陽光または蛍光灯の光などをエネルギー源として直接利用できるため、環境に優しいという点で注目されている。しかし、光触媒の触媒反応はあまり強力でなくまた迅速でもないため、触媒反応の効率を向上させることが望まれている。
【0006】
光触媒の触媒反応の効率の向上を目的とする従来技術としては、以下のものが挙げられる。
【0007】
例えば、特開平9−262482号公報(特許文献1)には、Cr、Cu、Pd、Pt等から選択される1種以上の金属イオンを特定の割合で酸化チタンの表面から内部に含有する光触媒装置が開示されている。この光触媒装置によれば、紫外光に加え可視光を利用して触媒反応を行えるため、光触媒の効率の向上を図れる。
【0008】
また、特開平2−107339号公報(特許文献2)には、3次元網目構造の基材上に、光触媒活性成分を担持させた光触媒装置が開示されている。この光触媒装置によれば、光触媒の効率が向上するとともに、充填して使用するときに圧力損失が少なくなる。
【0009】
さらに、特開平8−103631号公報(特許文献3)には、球状の耐熱ガラスが融着されてなる基材の表面が酸化チタン膜で被覆された光触媒装置が開示されている。この光触媒装置によれば、表面積が大きく、入射光が酸化チタン全体に当たるため、効率良く汚染物質を吸着または分解除去できる。
【0010】
しかし、特許文献1〜3に開示された光触媒装置では光触媒を励起させる光源としてランプを用いるため、装置が大きくなるという問題があった。
【0011】
これに対して、たとえば、特開2007−29827号公報(特許文献4)には、
基材に紫外光を発光する発光物質および光触媒材料が担持されてなる光触媒構造体と、放電して光触媒構造体に電子および紫外光を照射する電極とを備えた放電型光触媒反応装置が開示されている。
【0012】
この放電型光触媒反応装置によれば、光触媒を励起させる光源として電極からの放電光を用いるため、光触媒を励起させるエネルギーが小さくて済むことから装置構成の小型化が可能になるとともに、光触媒への光の照射面積が増加して光触媒の反応効率が向上する。
【特許文献1】特開平9−262482号公報
【特許文献2】特開平2−107339号公報
【特許文献3】特開平8−103631号公報
【特許文献4】特開2007−29827号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、放電光の発生は湿度により変化するため、被処理空気等の被処理気体の湿度によっては、放電光が十分に発生せず光触媒の反応効率が低下するという問題があった。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被処理気体の湿度が変化しても放電光の発生量および光触媒の反応効率が安定して高い放電型光触媒ユニット用の光触媒構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る光触媒構造体は、上記問題点を解決するものであり、第1の電極と、この第1の電極との間に放電光を発生する第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極との間に配置され、前記放電光により光触媒反応を起こす光触媒構造体と、を備えた放電型光触媒ユニット用の光触媒構造体であって、基材と、この基材に担持され、酸化チタンと水を吸着する吸着剤との混合物を含む光触媒膜と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る光触媒構造体によれは、被処理気体の湿度が変化しても放電光の発生量および光触媒の反応効率が安定して高い放電型光触媒ユニットを作製することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る光触媒構造体の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0018】
本発明に係る光触媒構造体は、第1の電極と、この第1の電極との間に放電光を発生する第2の電極と、第1の電極と第2の電極との間に配置され、放電光により光触媒反応を起こす光触媒構造体と、を備えた放電型光触媒ユニットに用いられる光触媒構造体である。
【0019】
図面を参照して、本発明に係る光触媒構造体が用いられる放電型光触媒ユニットを説明する。
【0020】
[放電型光触媒ユニット]
図1は、放電型光触媒ユニットの縦断面図である。
【0021】
放電型光触媒ユニット1は、ハウジング20内の流路21に、第1の電極11と、第2の電極12と、光触媒構造体13と、オゾン分解フィルター15と、ファン17とを備える。
【0022】
ハウジング20内の流路21には、流路(通風路)21内に導入される被処理空気の流れ方向に沿って、第1の電極11と、光触媒構造体13と、第2の電極12と、オゾン分解フィルター15と、ファン17とが配置される。
【0023】
(第1の電極および第2の電極)
第1の電極11および第2の電極12は、被処理空気が通気可能で、第1の電極11−第2の電極12間での放電光の発生が可能な電極である。第1の電極11および第2の電極12としては、たとえば、メッシュ状、格子状、棒状等の電極が用いられる。
【0024】
第1の電極11と第2の電極12とは対向して配置され、図示しない電源から第1の電極11−第2の電極12間に電圧が印加されることにより、第1の電極11−第2の電極12間で放電光を発生させることができるようになっている。放電光としては、光触媒構造体13の光触媒膜が光触媒反応を起こす波長のものが用いられ、たとえば、波長10nm〜400nmの紫外線等が挙げられる。
【0025】
(光触媒構造体)
光触媒構造体13は、通気が可能であり、第1の電極11−第2の電極12間で発生した放電光により光触媒反応を起こす部材である。
【0026】
光触媒構造体13は、たとえば3次元網目構造等の通気可能な空隙を有する部材である。光触媒構造体13は、第1の電極11−第2の電極12間に配置され、第1の電極11−第2の電極12間で発生した放電光により光触媒反応を起こすようになっている。
【0027】
光触媒構造体は、基材と、この基材に担持される光触媒膜とからなる。
【0028】
<基材>
本発明で用いられる基材としては、たとえば、3次元網目構造等の多孔質部材が挙げられる。基材が3次元網目構造であると、この基材から作製される光触媒構造体も3次元網目構造を保持して通気可能な空隙が形成されやすいため好ましい。
【0029】
3次元網目構造を有する基材としては、たとえば、コーディエライト(MgAlSi18)を主成分とするケイ酸塩、アルミナ珪酸ガラス等が挙げられる。ここで、コーディエライトを主成分とするとは、ケイ酸塩の50重量%以上がコーディエライトであることを意味する。3次元網目構造を有する基材は、コーディエライトであると、光触媒膜が基材から剥離しにくいため好ましい。3次元網目構造を有する基材は、開気孔率が75%以上であると、圧力損失が小さいため好ましい。
【0030】
<光触媒膜>
光触媒膜は、光触媒反応を生じさせる物質であり、基材の表面に担持される。光触媒膜は、酸化チタンと水を吸着する吸着剤との混合物を含むものである。光触媒膜は、具体的には、酸化チタン結晶粒と吸着剤粒とが、混合物となって基材の表面に固着したものになっている。
【0031】
水を吸着する吸着剤としては、たとえば、ゼオライト、活性炭、シリカゲルおよび活性アルミナから選択される少なくとも1種が用いられる。
【0032】
吸着剤は、細孔径が、通常20Å以下、好ましくは10Å以下、より好ましくは3Å〜10Åであると、被処理空気中の水分が吸着剤の細孔径に吸着されて被処理空気の湿度が調整され、放電型光触媒ユニット1の第1の電極11−第2の電極12間の放電光の発生量が大きくなるため好ましい。一方、吸着剤の細孔径が20Åを超えると、吸着剤の水の吸着保持力が低下し、光触媒性能が、被処理空気の湿度変化の影響を受けやすくなる。
【0033】
光触媒膜は、吸着剤を酸化チタンに対して、通常10質量%以下、好ましくは1質量%〜10質量%、より好ましくは2質量%〜5質量%の量で含むと、光触媒性能、たとえば、有機化合物の分解性能が高くなるため好ましい。光触媒膜の吸着剤含有量がこの範囲内にあると有機化合物の分解性能が高くなる理由は、被処理空気中の湿度が低下することにより、放電型光触媒ユニット1の第1の電極11−第2の電極12間の放電光の発生量が大きくなるためであると考えられる。
【0034】
一方、光触媒膜が、吸着剤を酸化チタンに対して10質量%を超える量で含むと、光触媒膜中の相対的な酸化チタン量が低下し、光触媒性能が低下しやすくなる。
【0035】
光触媒膜は、吸着剤と酸化チタンの混合物の理論密度に対する相対密度が、通常85%〜95%、好ましくは86%〜91%である。ここで、吸着剤と酸化チタンの混合物の理論密度とは、吸着剤と酸化チタンの混合物が最も密な構造をとる場合の密度を意味する。また、理論密度に対する相対密度とは、理論密度を100%とした場合の相対密度である。相対密度が、100%未満であるとは、吸着剤と酸化チタンの混合物中に空隙が生じていることを示す。
【0036】
光触媒膜の相対密度が85%〜95%であると、光触媒膜の構造が適度に疎になり光触媒膜内の隙間に被処理空気中の有機物や水が浸入しやすくなることにより、光触媒膜の強度が高くかつ光触媒性能が高くなるため好ましい。
【0037】
一方、光触媒膜の相対密度が85%未満であると、光触媒膜の強度が低下して基材から剥離しやすくなりやすい。また、光触媒膜の相対密度が95%を超えると、光触媒膜の構造が密になり光触媒膜内の隙間に被処理空気中の有機物や水が浸入しにくくなることにより、光触媒性能が低くなりやすい。
【0038】
光触媒構造体は、たとえば、3次元網目構造等の通気可能な空隙を有する基材の表面に光触媒膜を担持させることにより、通気が可能になっている。
【0039】
オゾン分解フィルター15は、ハニカム構造体等の、通気可能な空隙を有し、オゾンを分解するフィルターである。オゾン分解フィルター15は、通常、オゾンを活性酸素に分解するものである。オゾン分解フィルター15としては、たとえば、オゾン分解触媒である酸化マンガンをベースとしたセラミック製ハニカム構造体が挙げられる。
【0040】
ファン17は、ハウジング20内の流路21に被処理空気の送風を行う。
【0041】
(作用)
次に、図1を参照して放電型光触媒ユニット1の作用について説明する。
【0042】
はじめに、ファン17を稼働させて、ハウジング20内の流路21内に、図示しない集塵フィルター等を介して、アンモニア等の有機化合物を含む空気(被処理空気)を導入する。導入された被処理空気は、第1の電極11、光触媒構造体13、第2の電極12、オゾン分解フィルター15およびファン17をこの順番で通過する。
【0043】
この状態で、図示しない電源から第1の電極11−第2の電極12間に電圧を印加すると、第1の電極11−第2の電極12間で紫外線等の放電光が発生する。この放電光は、第1の電極11−第2の電極12間に配置された光触媒構造体13の基材の空隙中に発生し、光触媒膜を活性化して光触媒構造体13での光触媒反応を生じさせるとともに、被処理空気中の酸素と反応してオゾンを生成する。
【0044】
被処理空気中の有機化合物は、光触媒構造体13での光触媒反応とオゾンとにより分解される。また、被処理空気中のオゾンは、オゾン分解フィルター15で分解される。
【0045】
これにより、放電型光触媒ユニット1から排出される空気は、有機化合物の含有量がないかまたは被処理空気より減少した清浄な空気となる。
【0046】
なお、従来の放電型光触媒ユニットは、被処理空気の湿度が変化すると第1の電極−第2の電極間の放電光の量も変化するため、被処理空気中の有機物分解処理能力が不安定であるという問題があった。たとえば、通常、被処理空気の湿度が50%程度では放電光の量およびオゾン発生量が多く有機物分解処理能力が良好であるが、被処理空気の湿度が50%より低くなったり高くなったりすると放電光の量およびオゾン発生量が少なくなり有機物分解処理能力が低下するという問題があった。
【0047】
本発明で用いられる放電型光触媒ユニット1では、光触媒構造体13の光触媒膜中に、被処理空気中の水分を吸着する吸着剤が含まれているため、被処理空気の湿度が変化しても放電光の量および有機物分解処理能力が高く保たれる。
【0048】
本発明に係る光触媒構造体によれば、被処理空気の湿度が変化しても有機物分解処理能力が高く保たれる放電型光触媒ユニットを作製する光触媒構造体が得られる。
【0049】
なお、放電型光触媒ユニット1には、第1の電極11と光触媒構造体13と第2の電極12とからなる放電光触媒ユニットを1個有する構成を示したが、この放電光触媒ユニットを2個以上有する構成にしてもよい。放電光触媒ユニットを2個以上有する構成にすると、放電光による作用と光触媒作用とが増大する。
【0050】
また、放電光触媒ユニットを2個以上直列に配置する場合は、隣接する放電光触媒ユニットが第1の電極11または第2の電極12を共有する形態とすると、スペース性に優れ、低コスト化が可能であるため好ましい。
【0051】
たとえば、放電光触媒ユニットを2個直列に配置する構成の場合は、第1の電極11と光触媒構造体13と第2の電極12とを、第1の電極11/光触媒構造体13/第2の電極12/光触媒構造体13/第1の電極11の順番で配置して第2の電極12を共有したり、第2の電極12/光触媒構造体13/第1の電極11/光触媒構造体13/第2の電極12の順番で配置して第1の電極11を共有したりした上、第1の電極11−第2の電極12間に電圧を印加可能にした構成が挙げられる。
【実施例】
【0052】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに限定されて解釈されるものではない。
【0053】
(実施例1)
(基材)
基材として、コーディエライト(MgAlSi18)を主成分とし、開気孔率85%の3次元網目構造を有するケイ酸塩を用いた。
【0054】
(光触媒膜形成用混合物の調製)
濃度30質量%、結晶粒径6nmの酸化チタンゾルに、6Åの細孔径を有するゼオライトを酸化チタンゾル中の酸化チタン量100質量部に対して5質量部、およびポリエチレングリコール(和光純薬工業株式会社製、ポリエチレングリコール200)を添加して、光触媒膜形成用混合物を調製した。
【0055】
(光触媒構造体の作製)
光触媒膜形成用混合物を基材に塗布して含浸させ、乾燥させた後、大気中、600℃で4時間熱処理したところ、光触媒構造体が得られた。光触媒構造体は、3次元網目構造の基材上に、酸化チタン結晶粒100質量部とゼオライト5質量部とが固着してなる光触媒膜が形成されたものであり、通気が可能になっていた。光触媒構造体は、縦195mm×横70mm×通気方向の厚さ6mmであった。
【0056】
(電極)
ハニカム構造の電極を2枚用意した。電極は、縦195mm×横70mm×通気方向の厚さ3mmであった。
【0057】
(オゾン分解フィルター)
二酸化マンガンを焼き固めてなるハニカム構造のオゾン分解フィルターを用意した。
【0058】
(放電型光触媒ユニットの作製)
断面矩形の筒状ハウジング内に、電極2枚と光触媒構造体1個とオゾン分解フィルターとを用いて、第1の電極/光触媒構造体/第2の電極/オゾン分解フィルターの順番になるように配置した。第1の電極、光触媒構造体、第2の電極およびオゾン分解フィルターは、筒状ハウジング内に、通風路を横断するように長手方向に沿って順次整列配置した。
【0059】
次に、直流電源を、第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加可能に接続して、放電型光触媒ユニットを作製した。
【0060】
得られた放電型光触媒ユニットについて、オゾン発生量を測定した。
【0061】
(オゾン発生量の測定)
放電型光触媒ユニットの筒状ハウジング中に湿度30%の空気を1.6m/分で流した。この状態で、直流電源を用い、第1の電極が正極、第2の電極が負極になるように電圧を印加して、第2の電極とオゾン分解フィルターとの間の空気中のオゾン発生量を測定した。
【0062】
直流電源での電圧の印加は、8KV、パルス周期100Hzの直流高電圧パルスで行った。
【0063】
オゾン発生量の測定は、放電型光触媒ユニットに通じる空気の湿度を40%、50%、60%、70%、90%に変えて同様に行った。
【0064】
図2に、オゾン発生量の測定結果を示す。
【0065】
図2には、湿度50%におけるオゾン発生量を1とした場合のオゾン発生量の相対比率を示す。
【0066】
(比較例1)
ゼオライトを用いない以外は実施例1と同様にして、光触媒構造体を作製した。この光触媒構造体は、3次元網目構造の基材上に、酸化チタンのみからなる光触媒膜が形成されたものであり、通気が可能になっていた。
【0067】
次に、この光触媒構造体を用い、実施例1と同様にして放電型光触媒ユニットを作製しオゾン発生量を測定した。
【0068】
放電型光触媒ユニットに通じる空気の湿度は、実施例1と同様に30%、40%、50%、60%、70%、90%とした。
【0069】
図2に、オゾン発生量の測定結果を示す。
【0070】
図2には、湿度50%におけるオゾン発生量を1とした場合のオゾン発生量の相対比率を示す。
【0071】
実施例1および比較例1の結果より、以下のことが分かった。
【0072】
ゼオライトを添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(実施例1)およびゼオライトを添加しない光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(比較例1)のいずれも、通じる空気の湿度が50%のときにオゾン発生量が最大値を示すことが分かった。
【0073】
また、ゼオライトを添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(実施例1)およびゼオライトを添加しない光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(比較例1)のいずれも、通じる空気の湿度が50%から離れた値になるに従ってオゾン発生量が低下し、このオゾン発生量の低下の度合は、ゼオライトを添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(実施例1)の方が、ゼオライトを添加しない光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(比較例1)に比べて小さいことが分かった。
【0074】
具体的には、通じる空気の湿度が90%である場合のオゾン発生量は、ゼオライトを添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(実施例1)が約0.6であるのに対し、ゼオライトを添加しない光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(比較例1)は約0.4であり、前者の方が低下の度合が小さかった。
【0075】
また、通じる空気の湿度が30%である場合のオゾン発生量は、ゼオライトを添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(実施例1)が約0.9であるのに対し、ゼオライトを添加しない光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(比較例1)は約0.8であり、前者の方が低下の度合が小さかった。
【0076】
すなわち、実施例1および比較例1の結果より、ゼオライトを添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(実施例1)の方が、ゼオライトを添加しない光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(比較例1)に比べて、通じる空気の湿度が同じ場合にオゾン発生量が多く、かつ湿度による性能変化が小さいことが分かった。
【0077】
(実施例2−1〜2−3、参考例1−1および1−2)
光触媒膜中の酸化チタン量100質量部に対するゼオライト量の比率を1質量部(実施例2−1)、2質量部(実施例2−2)、10質量部(実施例2−3)、15質量部(参考例1−1)、20質量部(参考例1−2)とした以外は、実施例1(ゼオライト量の比率:5質量部)と同様にして光触媒構造体を作製した。
【0078】
光触媒膜中のゼオライト量の変更は、光触媒膜形成用混合物中のゼオライト量を変えることにより行った。光触媒膜中の酸化チタン量とゼオライト量との比率は、光触媒膜形成用混合物中の酸化チタン量とゼオライト量との比率と同じであった。
【0079】
次に、これらの光触媒構造体を用い、実施例1と同様にして放電型光触媒ユニットを作製した。
【0080】
得られた放電型光触媒ユニットについて、アンモニア分解性能を測定した。
【0081】
(アンモニア分解性能の測定)
放電型光触媒ユニットの筒状ハウジング中に、湿度30%、入口アンモニア濃度100ppmの空気を1.6m/分で流した。この状態で、直流電源を用い、第1の電極が正極、第2の電極が負極になるように電圧を印加して、放電型光触媒ユニットから排出される空気中の出口アンモニア濃度(ppm)を測定した。
【0082】
直流電源での電圧の印加は、8KV、パルス周期100Hzの直流高電圧パルスで行った。
【0083】
出口アンモニア分解性能の測定は、実施例1および比較例1の放電型光触媒ユニットについても行った。
【0084】
図3に、出口アンモニア濃度の測定結果を示す。図3には、実施例1および比較例1の放電型光触媒ユニットを用いた測定結果も示す。
【0085】
実施例1、2−1〜2−3、参考例1−1、1−2、および比較例1の結果より、以下のことが分かった。
【0086】
すなわち、ゼオライトを酸化チタン量100質量部に対し1〜10質量部添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(実施例2−1〜2−3、実施例1)は、ゼオライトを15質量部以上添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(参考例1−1および1−2)やゼオライトを添加しない光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(比較例1)よりも、アンモニア分解性能が高いことが分かった。
【0087】
特に、ゼオライトを酸化チタン量100質量部に対し2質量部または5質量部添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニット(実施例2−2、実施例1)は、アンモニア分解性能が高いことが分かった。
【0088】
(実施例3−1および3−2、参考例2)
用いるゼオライトの細孔径を、3Å(実施例3−1)、10Å(実施例3−2)、20Å(参考例2)のものとした以外は、実施例1(細孔径6Å)と同様にして光触媒構造体を作製し、放電型光触媒ユニットを作製した。
【0089】
(放電量の測定)
放電型光触媒ユニットの筒状ハウジング中に湿度30%の空気を1.6m/分で流した。この状態で、直流電源を用い、第1の電極が正極、第2の電極が負極になるように電圧を印加して、第1の電極と第2の電極との間の放電量を測定した。
【0090】
直流電源での電圧の印加は、8KV、パルス周期100Hzの直流高電圧パルスで行った。
【0091】
放電量の測定は、実施例1の放電型光触媒ユニットについても行った。
【0092】
図4に、放電量の測定結果を示す。図4には、実施例1の放電型光触媒ユニットを用いた測定結果も示す。
【0093】
実施例1、3−1、3−2、参考例2の結果より、ゼオライトのミクロ細孔径が3Å(実施例3−1)のときに放電量が29Wと最も大きくなることがわかった。また、ゼオライトのミクロ細孔径が大きくなるほど、放電量が減少することがわかった。
【0094】
(実施例4−1〜4−4)
上記ポリエチレングリコールの含有量を増やした光触媒膜形成用混合物を用いた以外は実施例1と同様にして、光触媒構造体を作製し、この光触媒構造体を用いて放電型光触媒ユニットを作製した。
【0095】
光触媒構造体は、光触媒膜形成用混合物中に含まれるポリエチレングリコールの量を変えて4種類作製した(実施例4−1〜4−4)。得られた光触媒構造体の光触媒膜は、熱処理によりポリエチレングリコールが焼失したため、酸化チタンおよびゼオライトのみからなるものになっていた。
【0096】
得られた光触媒構造体の光触媒膜につき、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して光触媒膜の膜厚を測定した。また、測定した膜厚と、基材に担持された酸化チタンおよびゼオライトの質量とから、光触媒膜の密度を算出した。
【0097】
光触媒膜の密度は、実施例1の光触媒膜の密度を100%とした相対密度で、83%(実施例4−1)、86%(実施例4−2)、91%(実施例4−3)、97%(実施例4−4)であった。
【0098】
得られた放電型光触媒ユニットについて、実施例2−1と同様にしてアンモニア分解性能を測定した。
【0099】
図5に、出口アンモニア濃度の測定結果を示す。
【0100】
図5に示す実施例4−1〜4−4の結果より、特に光触媒膜の密度が86%(実施例4−2)および91%(実施例4−3)の場合には出口のアンモニア濃度が非常に低くなることがわかった。
【0101】
(参考例3)
基材として、3次元網目構造を有するケイ酸塩に代えて、ハニカムセルの断面形状が略正三角形の無機繊維製ハニカム基材を用いた以外は実施例1と同様にして、光触媒構造体を作製し、この光触媒構造体を用いて放電型光触媒ユニットを作製した。無機繊維製ハニカム基材は、3mm間隔で平行配置された複数枚の薄い平板と、平板間の空間に配置、固定された縦断面三角波状の薄いコルゲート板とからなるものであり、ハニカムセルの断面形状の略正三角形の一辺の長さは3.5mmであった。
【0102】
得られた放電型光触媒ユニットについて、実施例2−1と同様にしてアンモニア分解性能を測定した。また、実施例1についても、同様にしてアンモニア分解性能を測定した。
【0103】
図6に、出口アンモニア濃度の測定結果を示す。図6には、実施例1の放電型光触媒ユニットを用いた測定結果も示す。
【0104】
図6に示す参考例3、実施例1の結果より、3次元網目構造を有する基材を用いた放電型光触媒ユニット(実施例1)は出口のアンモニア濃度が8ppmで光触媒効率が良好であったが、ハニカム基材を用いた放電型光触媒ユニット(参考例3)は、出口のアンモニア濃度が15ppmと光触媒性能が低下した。
【0105】
(実施例5−1および5−2)
吸着剤として、ゼオライトに代えて、細孔径6Åの活性炭(実施例5−1)または細孔径6Åのシリカゲル(実施例5−2)を用いた以外は実施例1と同様にして、光触媒構造体を作製し、この光触媒構造体を用いて放電型光触媒ユニットを作製した。
【0106】
得られた放電型光触媒ユニットについて、実施例3−1と同様にして放電量を測定した。
【0107】
図7に、放電量の測定結果を示す。図7には、実施例1の放電型光触媒ユニットを用いた測定結果も示す。
【0108】
図7に示す実施例5−1および5−2、実施例1の結果より、吸着剤を添加した光触媒構造体を用いた放電型光触媒ユニットは、どれも高い放電量を示したが、とくにゼオライトを添加したとき(実施例1)に最も効果が高いことがわかった。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】本発明に係る光触媒構造体が用いられる放電型光触媒ユニットの縦断面図。
【図2】被処理空気の湿度とオゾン発生量との関係を示すグラフ。
【図3】光触媒膜のゼオライト量と出口アンモニア濃度との関係を示すグラフ。
【図4】光触媒膜のゼオライトの細孔径と放電量との関係を示すグラフ。
【図5】光触媒膜の相対密度と出口アンモニア濃度との関係を示すグラフ。
【図6】基材の種類と出口アンモニア濃度との関係を示すグラフ。
【図7】光触媒膜の吸着剤の種類と放電量との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0110】
1 放電型光触媒ユニット
11 第1の電極
12 第2の電極
13 光触媒構造体
15 オゾン分解フィルター
17 ファン
20 ハウジング
21 流路(通風路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、この第1の電極との間に放電光を発生する第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極との間に配置され、前記放電光により光触媒反応を起こす光触媒構造体と、を備えた放電型光触媒ユニット用の光触媒構造体であって、
基材と、
この基材に担持され、酸化チタンと水を吸着する吸着剤との混合物を含む光触媒膜と、
を有することを特徴とする光触媒構造体。
【請求項2】
前記光触媒膜は、前記吸着剤を前記酸化チタンに対して10質量%以下の量で含むことを特徴とする請求項1に記載の光触媒構造体。
【請求項3】
前記光触媒膜の吸着剤は、細孔径が20Å以下であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒構造体。
【請求項4】
前記光触媒膜は、前記吸着剤と酸化チタンの混合物の理論密度に対する相対密度が85%〜95%であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒構造体。
【請求項5】
前記基材は、3次元網目構造を有することを特徴とする請求項1に記載の光触媒構造体。
【請求項6】
前記光触媒膜の吸着剤は、ゼオライト、活性炭、シリカゲルおよび活性アルミナから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の光触媒構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−94592(P2010−94592A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−266345(P2008−266345)
【出願日】平成20年10月15日(2008.10.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】