説明

光触媒活性を有する酸化チタン、該酸化チタンを含む組成物、及びこれらの製造方法

【課題】
チタン酸のアルカリ金属塩等から得られる、平均粒子径の小さい、優れた光触媒活性を有する酸化チタン;平均粒子径の小さい、優れた光触媒活性を有する酸化チタンを含む組成物;及びこれらの製造方法を提供する。
【解決手段】
チタン酸のアルカリ金属塩等を、(α)該チタン酸のアルカリ金属塩等に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理した後、得られた処理物を300〜700℃で焼成する、或いは(β)該チタン酸のアルカリ金属塩等に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、又は、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液を用いて、50〜200℃で処理することにより得られる酸化チタン、該酸化チタンを含む組成物、並びにこれらの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩から得られる光触媒活性を有する酸化チタン、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する組成物から得られる、光触媒活性を有する酸化チタンを含む組成物、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光触媒は、光照射により活性化して、有機物を酸化分解する作用を有するので、空気の浄化、浄水、脱臭、防汚、殺菌、排水処理、藻の成育抑制、有害物質の分解、及び各種化学反応等に用いることができる。そのため、近年では、酸化チタンの光触媒作用を利用する技術が、環境分野を始め各方面で注目され、より優れた光触媒活性を有する酸化チタンを得る方法が種々検討されている。
例えば、特許文献1には、結晶又は無定形のチタニアを、アルカリ又は酸で化学処理することを特徴とするチタニア系光触媒の製造方法が開示されている。
【0003】
一方、製紙スラッジは、紙の製造工程で出る廃棄物である。従来、製紙スラッジは焼却してその灰を埋立てて処分していたが、埋め立て処分場のスペース不足等により、近年においては、製紙スラッジを再資源化する方法が検討されている。
【0004】
製紙工程においては、白色顔料等として酸化チタンが添加される場合があり、この場合には、酸化チタンを含有する製紙スラッジが発生する。しかしながら、白色顔料として添加された酸化チタンは、光触媒活性による紙の劣化を防止するために、粒子径が大きく、その表面がシリカ、アルミナ等の無機物でコーティングされており、そのまま回収しても、光触媒活性を有する酸化チタンを得ることができなかった。
【0005】
本発明者らは、製紙スラッジ等の廃棄物の再資源化の一環として、製紙スラッジ又は製紙スラッジを焼却して得られる製紙スラッジ焼却灰に含まれる酸化チタンの光触媒活性を再生できれば、より有効な資源の再利用化を図ることができると考えた。そして、検討を重ね、酸化チタンを含有する製紙スラッジ等を、酸又はアルカリで処理する光触媒活性を有する酸化チタンの再生方法を見出し、特許文献2に開示している。
【0006】
【特許文献1】特開平10−15387号公報
【特許文献2】特開2005−329392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような本発明者らの研究開発の一環としてなされたものであり、平均粒子径がより小さく、より優れた光触媒活性を有する酸化チタン;かかる酸化チタンを含む組成物;及びこれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を解決すべく、さらに、製紙スラッジ等に含まれる顔料用の酸化チタンの光触媒活性を再生する技術について鋭意検討した。その結果、顔料用の酸化チタンを含有する製紙スラッジを、所定濃度の水酸化ナトリウムで処理するとチタン酸ナトリウムを含有する組成物が得られること、その組成物を、(a)所定濃度の酸溶液を用いて、0〜50℃で処理した後、得られた処理物を300〜700℃で焼成するか、又は(b)(i)所定濃度の酸溶液、若しくは、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の所定濃度の水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理すると、平均粒子径が小さい、優れた光触媒活性を有する酸化チタンを含有する組成物が得られることを見出した。そして、これらの知見を一般化することにより本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして本発明の第1によれば、下記(1)〜(4)の酸化チタンが提供される。
(1)チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を、該チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理した後、得られた処理物を300〜700℃で焼成することにより得られる酸化チタン。
【0010】
(2)チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を、該チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、又は、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理することにより得られる酸化チタン。
【0011】
(3)前記チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を、該チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理して得られたものである(1)又は(2)に記載の酸化チタン。
(4)平均粒子径が5〜100nmである(1)〜(3)いずれかに記載の酸化チタン。
【0012】
本発明の第2によれば、下記(5)〜(7)の組成物が提供される。
(5)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、該組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理し、得られた処理物を300〜700℃で焼成することにより得られる酸化チタンを含む組成物。
【0013】
(6)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、該組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、又は、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理することにより得られる酸化チタンを含む組成物。
(7)平均粒子径が5〜100nmである酸化チタンを含む、(5)又は(6)に記載の組成物。
【0014】
本発明の第3によれば、下記(8)〜(11)の酸化チタンの製造方法が提供される。
(8)チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を、該チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理した後、得られた処理物を300〜700℃で焼成することを特徴とする酸化チタンの製造方法。
【0015】
(9)チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を、該チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、又は、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理することを特徴とする酸化チタンの製造方法。
【0016】
(10)前記チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩として、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を、該チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理して得られたものを用いる(8)又は(9)に記載の酸化チタンの製造方法。
(11)平均粒子径が5〜100nmである酸化チタンを製造するものである(8)〜(10)のいずれかに記載の酸化チタンの製造方法。
【0017】
本発明の第4によれば、下記(12)〜(14)の組成物の製造方法が提供される。
(12)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、該組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理し、得られた処理物を300〜700℃で焼成することを特徴とする酸化チタンを含む組成物の製造方法。
【0018】
(13)アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、該組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、又は、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理することを特徴とする酸化チタンを含む組成物の製造方法。
(14)平均粒子径が5〜100nmである酸化チタンを製造するものである(12)又は(13)に記載の組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明の酸化チタン及び本発明の組成物中の酸化チタンは、平均粒子径が小さく、優れた光触媒活性を有する。
本発明の酸化チタンの製造方法によれば、平均粒子径の小さい、優れた光触媒活性を有する酸化チタンを効率よく得ることができる。
【0020】
本発明の組成物の製造方法によれば、光触媒活性を有さないチタン化合物を含有する組成物から、平均粒子径の小さい、優れた光触媒活性を有する酸化チタンを含む組成物を簡便に得ることができる。
本発明によれば、製紙スラッジ等に含まれる顔料用の酸化チタンを再生、有効利用することができる。
【0021】
また、本発明においては、処理に用いる酸の種類を変えることにより、アナターゼ型及びルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを作り分けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を、1)酸化チタン及びその製造方法、2)酸化チタンを含む組成物及びその製造方法に項分けして詳細に説明する。
1)酸化チタン及びその製造方法
本発明の酸化チタンは、チタン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩を、以下に示すいずれかの処理を行うことにより得られるものである。
(a)前記チタン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理した後、得られた処理物を300〜700℃で焼成する。
(b)前記チタン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、若しくは、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理する。
【0023】
(a)の方法は、前記チタン酸のアルカリ金属塩若しくはアルカリ土類金属塩(以下、「チタン酸のアルカリ金属塩等」ということがある。)を、酸溶液で処理した後、焼成するものである。
本発明に用いるチタン酸のアルカリ金属塩としては、チタン酸リチウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸カリウム、チタン酸セシウム等が挙げられる。
チタン酸のアルカリ土類金属塩としては、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等が挙げられる。
【0024】
用いる酸溶液としては、0.2〜12N水溶液であれば特に限定されず、例えば、塩酸(HCl)、硝酸(HNO)、硫酸(HSO)、リン酸(HPO)等の無機酸;や、ギ酸(HCOOH)、酢酸(CHCOOH)等の有機酸;の水溶液等が挙げられる。これらの中でも、平均粒子径の小さい酸化チタンがより効率よく得られることから、塩酸、硝酸、酢酸の水溶液が好ましい。
【0025】
酸溶液の濃度は、通常0.2〜12N、好ましくは0.5〜3Nである。その使用量は、前記チタン酸のアルカリ金属塩等に対して、重量比で2〜500倍、好ましくは5〜200倍、より好ましくは10〜100倍である。
【0026】
チタン酸のアルカリ金属塩等を酸溶液で処理する方法としては、両者を混合した混合物を、静置、撹拌又は振とうする方法が挙げられる。
【0027】
酸溶液での処理温度は、通常0〜50℃、好ましくは5〜40℃である。処理時間は反応規模等にもよるが、通常、数分から数十時間、好ましくは数分から数時間である。
【0028】
酸溶液で処理した後は、酸処理物を、遠心分離、洗浄、デカント等の通常の後処理操作により固形物(処理物)を得、このものを焼成する。
なお、後処理操作の後、更に酸溶液での処理を繰り返してもよい。この場合の酸溶液の合計使用量は、チタン酸のアルカリ金属塩等に対して、通常、重量比で2〜500倍である。
【0029】
焼成する温度は、通常300〜700℃、好ましくは400〜600℃である。焼成する時間は、通常数分から数時間、好ましくは10分から2時間である。
【0030】
(b)の方法は、前記チタン酸のアルカリ金属塩等を、酸溶液、又は、50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の水溶液で処理するものである。
【0031】
用いるチタン酸のアルカリ金属塩等としては、前記(a)で列記したものと同様のものが挙げられる。
用いる酸溶液としては、0.2〜12Nであれば特に限定されず、前記(a)で列記したものと同様のものが挙げられる。
酸溶液の濃度は、通常0.2〜12N、好ましくは0.5〜3Nである。その使用量は、前記チタン酸のアルカリ金属塩等に対して、重量比で2〜500倍、好ましくは5〜200倍、より好ましくは10〜100倍である。
【0032】
また、前記酸溶液の代わりに、50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の水溶液を用いることもできる。50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質としては、NHCl等のアンモニウム塩が挙げられる。例えば、NHCl水溶液を100℃以上で加熱すると、アンモニア(NH)と塩酸に分解し、プロトン(H)が外れ、酸溶液を使用する場合と同等の効果が得られる。
【0033】
前記チタン酸のアルカリ金属塩等を、酸溶液、又は、50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の水溶液(以下、「酸溶液等」ということがある。)で処理する方法としては、両者を混合した混合物を、静置、撹拌又は振とうする方法等が挙げられる。
【0034】
酸溶液等での処理温度は、通常50〜200℃、好ましくは60〜150℃である。50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の水溶液を用いる場合には、さらに、当該用いる物質がプロトンを発生する温度以上である必要がある。
処理時間は反応規模等にもよるが、通常、数分から数十時間、好ましくは30分から48時間である。
【0035】
酸溶液等で処理した後は、洗浄、遠心分離、乾燥等の通常の後処理操作により固形物(処理物)を得ることができる。
【0036】
以上のように、チタン酸のアルカリ金属塩等を、前記(a)又は(b)の処理を行うことにより、チタン酸のアルカリ金属塩等の結晶中のアルカリ金属等がプロトン(H)にイオン交換して、結晶形が変化して酸化チタンが生成すると考えられる。
【0037】
得られる酸化チタンの平均粒子径は、通常3〜100nm、好ましくは5〜70nm、より好ましくは5〜60nmである。本発明の酸化チタンは、平均粒子径が小さいものであるため、優れた光触媒活性を有する。
なお、平均粒子径は、X線回折法により測定して求めることができる。
【0038】
このようにして得られた酸化チタンが光触媒活性を有することは、例えば、密閉可能な反応容器内に、酸化チタンのサンプルを入れ、そこにアセトアルデヒドガスを注入し、吸着平衡に達した後、外部から紫外光を照射し、アセトアルデヒド濃度が減少すること(アセトアルデヒド分解試験)等で確認できる。アセトアルデヒド濃度は、ガスクロマトグラフィにより測定することができる。
【0039】
また、本発明によれば、処理方法や酸の種類を変えることにより、アナターゼ型及びルチル型の結晶構造を有する酸化チタンを作り分けることができる。例えば、前記(b)の方法を用い、酸として、塩酸を用いると、主としてルチル型酸化チタンが得られ、硫酸や酢酸を用いるとアナターゼ型酸化チタンが得られる。アナターゼ型酸化チタンは、光触媒反応による有害物質の分解に有効であり、ルチル型酸化チタンは、光触媒反応による水の分解等に有効な場合がある。
【0040】
得られる酸化チタンがアナターゼ型であるかルチル型であるかは、XRD分析を行い、確認することができる。XRD分析は、X線回折試験機を使用して行うことができる。
【0041】
出発原料に用いるチタン酸のアルカリ金属塩等は、市販品を用いてもよいが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩等を与えるチタン化合物を、該チタン化合物に対して、重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理して得られたものであってもよい。後者の方法によれば、顔料用アナターゼ型酸化チタン等の産業廃棄物となったチタン化合物を再利用することができるため好ましい。
【0042】
用いるチタン化合物としては、アルカリ金属等の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩等を与えるチタン化合物であれば特に制限されず、例えば、顔料用の酸化チタン等が挙げられる。
チタン酸アルカリ金属塩等の製造に用いるアルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム等が挙げられる。
【0043】
アルカリ金属等の水酸化物溶液の濃度は、通常5〜20N、好ましくは5〜15Nである。
アルカリ金属等の水酸化物の使用量は、前記チタン化合物に対して2〜20倍モル、好ましくは5〜15倍モルである。
【0044】
前記チタン化合物をアルカリ金属等の水酸化物の溶液で処理する方法としては、両者を混合した混合物を、撹拌又は振とうする方法が挙げられる。
【0045】
前記チタン化合物をアルカリ金属等の水酸化物溶液で処理する温度は、通常、50〜100℃である。処理時間は、処理規模にもよるが、通常、10分から100時間、好ましくは1〜80時間である。
【0046】
処理終了後、遠心分離、洗浄、乾燥等の通常の後処理操作を行うことにより、チタン酸のアルカリ金属塩等を得ることができる。
【0047】
2)酸化チタンを含む組成物及びその製造方法
本発明の組成物は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、60〜200℃、5〜20Nのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、以下に示すいずれかの処理を行うことにより得られるものである。
【0048】
(c)得られた組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理した後、得られた処理物を300〜700℃で焼成する。
(d)得られた組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、又は、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理する。
【0049】
まず、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物(以下、「アルカリ金属等の水酸化物」ということがある。)と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩等を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属等の水酸化物で処理する。
【0050】
アルカリ金属等の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩等を与えるチタン化合物を含有する組成物としては、特に制約はないが、例えば、製紙スラッジ、製紙スラッジ焼却灰(以下、「製紙スラッジ等」という。)等が挙げられる。
【0051】
ここで用いる製紙スラッジ等は、製紙工程で、白色顔料として酸化チタンを添加した場合に得られるものである。白色顔料として添加された酸化チタンは、光触媒活性による紙の劣化を防止するため粒子径が大きく、シリカやアルミナ等の無機物で表面がコーティングされており、光触媒活性を持たないものである。
【0052】
本発明によれば、簡便な操作により、製紙スラッジ等に含まれる酸化チタンを光触媒活性を有する酸化チタンに再生することができ、従来廃棄されていた製紙スラッジ等中の酸化チタンの有効利用を図ることができる。
【0053】
前記チタン化合物を含有する組成物中のチタン化合物の含有量は特に制限はないが、例えば、酸化チタンを含有する製紙スラッジ等中の酸化チタンの含有量は、通常、1〜35重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0054】
用いるアルカリ金属等の水酸化物としては、前記チタン化合物からチタン酸のアルカリ金属塩等を得る反応に用いることができるとして列記したのと同様のものが挙げられる。
【0055】
アルカリ金属等の水酸化物の濃度は、通常5〜20N、好ましくは5〜10Nである。
アルカリ金属等の水酸化物の使用量は、前記チタン化合物に対して2〜20倍モル、好ましくは5〜10倍モルである。
【0056】
前記組成物をアルカリ金属等の水酸化物で処理する方法としては、両者を混合した混合物を、撹拌又は振とうする方法が挙げられる。
【0057】
前記組成物をアルカリ金属等の水酸化物で処理する温度は、通常、50〜100℃である。処理時間は、処理規模にもよるが、通常、10分から100時間、好ましくは1〜30時間である。
【0058】
処理終了後は、不溶物をろ取し、ろ過物を洗浄、乾燥等の通常の後処理操作を行うことにより、チタン酸のアルカリ金属塩等を含有する組成物を得ることができる。
【0059】
次に、得られた組成物に対し、前記(c)又は(d)の処理を行うことにより、平均粒子径の小さい、優れた光触媒活性を有する酸化チタンを含有する組成物を得ることができる。前記(c)又は(d)の処理は、前記チタン酸のアルカリ金属塩等に対して行う前記(a)及び(b)の処理と同様にして行うことができる。
【0060】
なお、より小さい平均粒子径の酸化チタンを含有する組成物が得られる観点から、(d)の処理方法を行うのが好ましい。但し、用いるアルカリ金属等の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩等を与えるチタン化合物を含有する組成物として、ゼオライトやアパタイトを含む製紙スラッジ等を用いる場合には、(d)の処理を行うとゼオライトやアパタイトが壊れるおそれがあるため、(c)の処理を行うのが好ましい。
【0061】
得られる組成物中に酸化チタンが生成していることは、前記XRD分析を行うことにより、確認することができる。
また、得られる酸化チタンが光触媒活性を有することは、前記アセトアルデヒド分解試験等により確認することができる。
【0062】
本発明の酸化チタンあるいは酸化チタンを含む組成物は、基材の表面に塗布したり、基材に混合して使用することができる。基材としては、合成樹脂、パルプ、ガラス、セラミックス、金属等が挙げられる。
【0063】
光触媒活性を有する酸化チタンを含有する組成物は、空気の浄化、浄水、脱臭、防汚、殺菌、排水処理、藻の成育抑制、有害物質の分解、及び各種化学反応等に用いることができる。
【実施例】
【0064】
次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
なお、下記の実施例及び比較例により得られたサンプルの、X線回折測定、平均粒子径の測定、及びアセトアルデヒドの分解試験は、下記のようにして行った。
【0066】
(1)X線回折測定(XRD分析)
XRD分析は、X線回折試験機(RINT2000、理学電器社製)を使用して行った。
(2)平均粒子径の測定
平均粒子径は、X線回折法により求められた2θ=25.3°におけるピークの半値幅から、シェラー式を用いて算出した。
【0067】
【数1】

【0068】
(3)アセトアルデヒド分解試験1
図1に示すように、サンプルの各0.5gを反応容器(ガラス製10リットル容器)内に入れ、反応容器内の濃度が20ppmになるようにアセトアルデヒドガスを注入し、吸着平衡に達した後、UVランプ(UVGL−25、UVP社製)から、波長365nm、4mW/cmの強度の紫外線を、試料より高さ20cmの位置から照射した。照射1時間後の、アセトアルデヒド濃度をガスクロマトグラフ(GC−390B、ジーエルサイエンス社製)で測定した。
【0069】
(実施例1)
顔料用のアナターゼ型酸化チタン(FA55W、古河機械金属社製)10g、水酸化ナトリウム(関東化学社製)40g、及び蒸留水100gを、容積250mlのポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という。)製三角フラスコ内に加えた(アルカリ濃度10N)。三角フラスコに冷却管を取り付け、沸点維持条件下72時間加熱した。反応終了後、反応液を、蒸留水で遠心分離・洗浄する作業を3回繰り返し、50℃に設定した乾燥機で24時間乾燥させて、アルカリ処理物である白色粉末(サンプル(1))を得た。サンプル(1)についてXRD分析、アセトアルデヒド分解試験を行った。
サンプル(1)のXRD分析結果を図2に示す。また、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に示す。図2に示すサンプル(1)のXRD分析結果から、サンプル(1)はチタン酸ナトリウムであることが確認された。
【0070】
サンプル(1)1gと1N−HCl水溶液30gを50ml遠心管に加え、25℃で10分間振とう後遠心分離する作業を2回繰り返し、蒸留水30mlで洗浄・遠心分離する作業を2回繰り返した。HCl水溶液の合計使用量は60gである。
上澄み液を除いて得られた白色物質を、空気中、500℃で30分間加熱(焼成)を行い、白色粉末(サンプル(2))を得た。
【0071】
サンプル(2)についてXRD分析、アセトアルデヒドの分解試験、及び平均粒子径の測定を行った。
XRD分析結果を図2に、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に、平均粒子径を第2表にそれぞれ示す。
【0072】
図2に示すサンプル(2)のXRD分析結果から、サンプル(2)はアナターゼ型酸化チタンであることが確認された。
【0073】
(実施例2)
容積100mlのPTFE製容器に、実施例1で製造したサンプル(1)1g、1N−HCl水溶液50gを加え、PTFE製の蓋をして、100℃で6時間静置した。反応終了後、反応液を蒸留水50mlで2回洗浄後、50℃に設定した乾燥機で24時間乾燥させてサンプル(3)を得た。サンプル(3)についてXRD分析、及びアセトアルデヒドの分解試験を行った。
XRD分析結果を図2に示す。また、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に、平均粒子径を第2表にそれぞれ示す。
図2に示すサンプル(3)のXRD分析結果から、サンプル(3)は主にルチル型酸化チタンであることが確認された。
【0074】
(実施例3)
実施例2において、1N−HCl水溶液50gの代わりに、1N−HNO水溶液50gを用いる以外は実施例2と同様の操作を行い、サンプル(4)を得た。サンプル(4)について、XRD分析及びアセトアルデヒドの分解試験を行った。
XRD分析結果を図2に、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に、平均粒子径を第2表にそれぞれ示す。図2に示すサンプル(4)のXRD分析結果から、サンプル(4)はアナターゼ型酸化チタンとルチル型酸化チタンの混合物であることが確認された。
【0075】
(実施例4)
実施例2において、1N−HCl水溶液50gの代わりに、2N−HSO水溶液50gを用いる以外は実施例2と同様の操作を行い、サンプル(5)を得た。サンプル(5)についてXRD分析、アセトアルデヒドの分解試験、及び平均粒子径の測定を行った。
XRD分析結果を図2に、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に、平均粒子径を第2表に示す。図2に示すサンプル(5)のXRD分析結果から、サンプル(5)はアナターゼ型酸化チタンであることが確認された。
【0076】
(実施例5)
実施例2において、1N−HCl水溶液50gの代わりに、1N−CHCOOH水溶液50gを用いる以外は実施例2と同様の操作を行い、サンプル(6)を得た。サンプル(6)について、XRD分析、アセトアルデヒドの分解試験、及び平均粒子径の測定を行った。
XRD分析結果を図2に、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に、平均粒子径を第2表に示す。図2に示すサンプル(6)のXRD分析結果から、サンプル(6)はアナターゼ型酸化チタンであることが確認された。
【0077】
(実施例6)
顔料用アナターゼ型酸化チタンを含有する製紙スラッジ焼却灰(SiO:36.3重量%、Al:34.2重量%、TiO:21.5重量%、MgO:5.2重量%、鉱物組成は、タルク、メタカオリン、及びアナターゼ型酸化チタン)5g、水酸化ナトリウム(関東化学社製)40g、及び蒸留水100gを容積300mlのPTFE製三角フラスコ内に加えた(アルカリ濃度10N)。三角フラスコに冷却管を取り付け、沸点維持条件下4時間加熱した。反応終了後、反応液を蒸留水で遠心分離・洗浄する作業を3回繰り返し、50℃に設定した乾燥機で24時間乾燥させてサンプル(7)を得た。
【0078】
サンプル(7)についてXRD分析を行った。サンプル(7)のXRD分析結果を、製紙スラッジ焼却灰のXRD分析結果と共に図3に示す。
図3から、タルクは残存するが、アナターゼ型酸化チタンが消失し、ゼオライトの一種であるヒドロキシソーダライトが生成したことがわかった。
【0079】
サンプル(7)1gと、1N−HCl水溶液30gを50mlの遠心管に加え、10分間振とう後遠心分離する作業を2回繰り返し、蒸留水30mlで洗浄・遠心分離する作業を2回繰り返した。処理温度は25℃である。上澄み液を除いて得られた白色物質を700℃で2時間焼成を行い、サンプル(8)を得た。サンプル(8)についてXRD分析及びアセトアルデヒドの分解試験を行った。
サンプル(8)のXRD分析結果を図3に、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に、平均粒子径を第2表にそれぞれ示す。
図3に示すサンプル(8)のXRD分析結果から、アナターゼ型酸化チタンが再び生成したことがわかった。
【0080】
(実施例7)
実施例2において、サンプル(1)1gの代わりにサンプル(7)1gを用い、1N−HCl水溶液50gの代わりに、2N−HSO水溶液50gを用いる以外は実施例2と同様の操作を行い、サンプル(9)を得た。サンプル(9)についてXRD分析及びアセトアルデヒドの分解試験を行った結果から、アナターゼ型酸化チタンが再び生成したことがわかった。
【0081】
(実施例8)
サンプル(1)1gと0.2N−HCl水溶液30gを50ml遠心管に加え、10分間振とう後遠心分離する操作を2回繰り返した後、30mlの蒸留水で洗浄し、遠心分離する操作を2回繰り返した。処理温度は25℃である。上澄み液を捨てて、得られた白色物質を500℃で60分間焼成して、白色粉末(サンプル(13))を得た。
サンプル(13)についてXRD分析を行った結果から、平均粒子径が15nmのアナターゼ型酸化チタンが生成したことがわかった。
【0082】
(実施例9)
サンプル(1)1gと0.2N−HCl水溶液50gを容積50mlのPTFE製の容器に加え、PTFE製の蓋をして、100℃に設定した乾燥機内に6時間静置した。反応混合物を50mlの蒸留水で2回洗浄したのち、50℃に設定した乾燥機で24時間乾燥を行って、サンプル(14)を得た。
サンプル(14)についてXRD分析を行った結果から、平均粒子径が12nmのアナターゼ型酸化チタンが生成したことがわかった。
【0083】
(比較例1)
サンプル(1)を500℃で2時間焼成を行い、サンプル(10)を得た。サンプル(10)についてXRD分析及びアセトアルデヒドの分解試験を行った。
XRD分析結果を図4に、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に示す。図4に示すサンプル(10)のXRD分析結果から、サンプル(10)はチタン酸ナトリウムのままであることが確認された。
【0084】
(比較例2)
サンプル(1)1gと、0.1N−HCl水溶液30mlを50ml遠心管に加え、10分間振とう後遠心分離する作業を2回繰り返し、蒸留水30mlで洗浄・遠心分離する作業を2回繰り返した。上澄み液を除いて得られた白色物質を500℃で2時間焼成を行い、サンプル(11)を得た。サンプル(11)についてXRD分析及びアセトアルデヒドの分解試験を行った。
サンプル(11)のXRD分析結果を図4に、アセトアルデヒド分解試験結果を第1表に示す。
図4から、アナターゼ型酸化チタンは生成しておらず、チタン酸を示すピークのみが確認された。
【0085】
【表1】

【0086】
【表2】

【0087】
(実施例10)
自動角型シートマシーン(No.2557、熊谷理機工業社製)にて、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)絶乾1.8gに、実施例1で得られたサンプル(2)2.05gを混抄し、25cm×25cmのシート(A)を1枚作製した。シート(A)の光触媒能を測定するため、以下の要領にて、アセトアルデヒドの分解試験を行った。
【0088】
(アセトアルデヒド分解試験2)
容積200mlの反応容器内に、6.25cm×6.25cmの大きさに切り取ったシート(A)を1枚静置し、アセトアルデヒドガスを濃度が250ppmとなるまで導入し、密栓した。吸着平衡に達した後、UVランプにて、波長365nm、光強度0.34mW/cmの紫外光を76分間照射した。
吸着平衡時のアセトアルデヒド濃度が126ppmであったのに対し、76分間UV照射後のアセトアルデヒド濃度は3.3ppmであった。このことから、シート(A)の光触媒効果が確認できた。
【0089】
(比較例3)
市販のアナターゼ型酸化チタン粉末(関東化学社製、粉末1)5gとNaOH25g、および蒸留水50g(アルカリ濃度12.5N)をPTFE製の容器に入れ、20℃で40時間静置した。反応混合物を水洗した後、105℃で乾燥して粉末2を得た。
粉末2 3gと0.1N−HCl水溶液30gを遠心管に入れ、25℃で1分間振とうした後、遠心分離操作を行い、固液分離した。固体成分を電気炉にて700℃1時間焼成して粉末3を得た。
【0090】
粉末1、粉末2および粉末3についてXRD分析を行った。
XRD分析から、原料(粉末1)をアルカリ処理しても(粉末2)、本発明のようにチタン酸塩は生成していなかった。また、焼成して得られた粉末3も、原料との違いは認められず、チタン酸塩は生成していなかった。さらに、本処理を行っても酸化チタンの粒子径に違いは認められず、微粒子酸化チタンは生成していなかった。酸化チタンの平均粒子径を第3表に示す。
【0091】
(比較例4)
市販のルチル型酸化チタン(関東化学社製、粉末4)5gとNaOH3.5g、および蒸留水70g(アルカリ濃度1.25N)をPTFE製の容器付ステンレス反応容器に入れ、120℃で10時間反応させた。反応混合物を水洗した後、105℃で乾燥して粉末5を得た。
粉末4 3gと0.1N−HCl水溶液30gを遠心管に入れ、25℃で1分間振とうした後、遠心分離操作を行い、固液分離した。固体成分を電気炉にて500℃2時間焼成して粉末6を得た。
【0092】
粉末4、粉末5、および粉末6についてXRD分析を行った。
XRD分析結果から、原料(粉末4)をアルカリ処理しても(粉末5)、本発明のようにチタン酸塩は生成していなかった。また、焼成して得られた粉末6も、原料との違いは認められず、チタン酸塩は生成していなかった。さらに、本処理を行っても酸化チタンの粒子径に違いは認められず、微粒子酸化チタンは生成していなかった。酸化チタンの平均粒子径を第3表に示す。
【0093】
【表3】

【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】アセトアルデヒド分解試験1の概要を示す図である。
【図2】サンプル(1)〜(6)のXRDスペクトル図である(図中、縦軸は強度(cps)を、横軸はX線入射方向からの偏移角2θ(°)を表す。以下にて同じである。)。。
【図3】サンプル(7)、(8)、(9)及び製紙スラッジ焼却灰のXRDスペクトル図である。
【図4】サンプル(1)、(10)及び(11)のXRDスペクトル図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を、該チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理した後、得られた処理物を300〜700℃で焼成することにより得られる酸化チタン。
【請求項2】
チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を、該チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、または、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理することにより得られる酸化チタン。
【請求項3】
前記チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を、該チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理して得られたものである請求項1または2に記載の酸化チタン。
【請求項4】
平均粒子径が5〜100nmである請求項1〜3いずれかに記載の酸化チタン。
【請求項5】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、該組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理し、得られた処理物を300〜700℃で焼成することにより得られる酸化チタンを含む組成物。
【請求項6】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、該組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、または、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理することにより得られる酸化チタンを含む組成物。
【請求項7】
平均粒子径が5〜100nmである酸化チタンを含む、請求項5または6に記載の組成物。
【請求項8】
チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を、該チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理した後、得られた処理物を300〜700℃で焼成することを特徴とする酸化チタンの製造方法。
【請求項9】
チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を、該チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、または、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理することを特徴とする酸化チタンの製造方法。
【請求項10】
前記チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩として、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を、該チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理して得られたものを用いる請求項8または9に記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項11】
平均粒子径が5〜100nmである酸化チタンを製造するものである請求項8〜10のいずれかに記載の酸化チタンの製造方法。
【請求項12】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、該組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、0.2〜12Nの酸溶液を用いて、0〜50℃で処理し、得られた処理物を300〜700℃で焼成することを特徴とする酸化チタンを含む組成物の製造方法。
【請求項13】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物と反応して、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を与えるチタン化合物を含有する組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、5〜20Nのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物溶液を用いて60〜200℃で処理し、チタン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含有する組成物を得た後、該組成物を、前記チタン化合物に対して重量比で2〜500倍の、(i)0.2〜12Nの酸溶液、または、(ii)50〜200℃で加熱することによりプロトンを生じる物質の0.2〜12N水溶液のいずれかを用いて、50〜200℃で処理することを特徴とする酸化チタンを含む組成物の製造方法。
【請求項14】
平均粒子径が5〜100nmである酸化チタンを製造するものである請求項12または13に記載の組成物の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−190931(P2009−190931A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32960(P2008−32960)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(592134583)愛媛県 (53)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】