説明

光記録装置及びデータ書き込み方法

【課題】 複数の記録層に同時に光スポットを形成して、並列にデータを書き込むことができ、光の利用効率がよく、かつ、光スポットのサイズを小さくすることができる光記録装置及びデータ書き込み方法を提供する。
【解決手段】 複数の記録層を備える多層記録媒体7にデータの書き込みを行うための光を出射する光ヘッド(光記録装置)1であって、各々異なる波長の光を出射する複数の光源2と、この複数の光源2から出射された光を、同一の光軸と各々異なる長さの半径とを有する円環状のビームに変換するビーム変換手段6と、ビーム変換手段6によって変換された円環状のビームを、前記多層記録媒体7の各々異なる深さの記録層7a〜7eに、波長ごとに集光する対物レンズ(集光手段)5とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層された複数の記録層を有する多層記録媒体に、光を用いてデータを書き込む光記録装置及びデータ書き込み方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録容量を増やすために、複数の記録層が積層された光記録媒体(多層記録媒体)が提案されている。この多層記録媒体の複数の記録層は、多層記録媒体の表面から各々異なる深さにあるため、このような多層記録媒体にデータを書き込むためには、光記録装置は、深さの異なる位置に光スポットを配置できる光記録装置(光ヘッド)を備えていることが望ましい。
【0003】
多層記録媒体において、1つの所望の記録層に光スポットを配置できる光ヘッドとして、レンズを光軸方向に位置制御する方法(レンズシフト方式)によるものがある。以下、対物レンズを位置制御する光ヘッドと、リレーレンズを位置制御する光ヘッドとについて説明する。ここで、図11を参照して、光スポットの位置を変化させることができる、従来のレンズシフト方式の光ヘッドについて説明する。図11は、従来のレンズシフト方式の光ヘッドの構成と、当該光ヘッド光学系を伝搬する光を示す模式図、(a)は、対物レンズを光軸方向に位置制御する光ヘッドの構成を示す模式図、(b)は、リレーレンズを光軸方向に位置制御する光ヘッドの構成を示す模式図である。
【0004】
まず、図11(a)を参照して、対物レンズ103を光軸方向に位置制御することで、光スポット104の位置を変えることができる光ヘッド100について説明する。光ヘッド100は、光源101と、コリメータレンズ102と、対物レンズ103とを備える。光源101から出射された光は、まずコリメータレンズ102に入射し、平行光となって出射する。そして、この平行光は対物レンズ103に入射し、この対物レンズ103から出射された光は、光軸上における当該対物レンズ103から所定距離(焦点距離)だけ離れた位置に集光する。そのため、光源101及びコリメータレンズ102に対して、この対物レンズ103の光軸上の位置を調整することで、所望の記録層105に集光することができる。
【0005】
次に、図11(b)を参照して、リレーレンズ113を光軸方向に位置制御することで、光スポット116の位置を変えることができる光ヘッド110について説明する。光ヘッド110は、光源111と、第1のコリメータレンズ112と、リレーレンズ113と、第2のコリメータレンズ114と、対物レンズ115とを備える。なお、光ヘッド110は、光源側の光学系(第1のコリメータレンズ112及びリレーレンズ113)と、記録媒体側の光学系(第2のコリメータレンズ114と及び対物レンズ115)の2つに分離することができる。
【0006】
光源111から出射された光は、まず第1のコリメータレンズ112に入射し、平行光となって出射される。この平行光はリレーレンズ113に入射し、このリレーレンズ113から出射された光は、光軸上における当該リレーレンズ113から所定距離だけ離れた位置に配置された第2のコリメータレンズ114に入射する。そして、再び平行光となって第2のコリメータレンズ114から出射される。最後に、この平行光は対物レンズ115に入射し、光軸上における当該対物レンズ115から焦点距離だけ離れた位置に集光する。そのため、光源111及び第1のコリメータレンズ112に対して、このリレーレンズ113の光軸上の位置を調整することで、ニュートンの結像公式に従い、対物レンズ115から出射される光を所望の記録層117に集光させることができる。
【0007】
また、多層記録媒体の所望の記録層に光スポットを配置できる他の構成の光ヘッドとして、液晶シャッタ方式や、アキシコンプリズム方式によるものがある(例えば、特許文献1参照)。液晶シャッタ方式の光ヘッドは、2つで1組の環状の透明電極が表面と裏面とに取り付けられた液晶シャッタパネルを備える。この液晶シャッタパネルには、複数の組の透明電極が、同心円状に取り付けられている。そして、1組の透明電極に電圧を印加すると、2つの透明電極に挟まれた部分に電場が発生し、その領域に存在する液晶素子の配光が変わるため、その部分のみを透明化することができる。
【0008】
そのため、液晶シャッタパネルに平行光が入射した場合に、この平行光は、液晶素子が透明化された部分のみを通過するため、環状の平行光となって出射する。そして、この環状の平行光は、対物レンズによって集光される。この対物レンズの表面には、レンズの中心からの距離に応じて形状や周期が異なる突起が設けられ、光の干渉によって、対物レンズに入射する環状の平行光の形状(半径と幅)に応じて、光軸上の異なる位置に光スポットを形成することができる。つまり、液晶シャッタパネル上の同心円状の透明電極の電圧を印加する組を選択することで、液晶シャッタパネルから出射される環状の平行光の形状(半径と幅)を変えることができる。そして、この平行光を、前記した対物レンズに入射することで、多層記録媒体における深さの異なる位置に光スポットを形成することができる。
【0009】
また、アキシコンレンズ方式の光ヘッドは、光源からの光を環状の平行光に変換する2つのアキシコン(円錐プリズム)を備える(第1のアキシコンと第2のアキシコン)。光源からの平行光が第1のアキシコンに入射すると、環状の発散光となって出射する。この環状の発散光は、第2のアキシコンに入射し、環状の平行光となって出射する。このとき、第1のアキシコンから出射する光は発散光であるため、第1のアキシコンと第2のアキシコンの距離に応じて環状光の大きさ(半径)が拡大される。そのため、第1のアキシコンと第2のアキシコンとの距離を調節することで、第2のアキシコンから出射する環状の平行光の大きさ(半径)を変えることができる。そして、この平行光を、前記した液晶シャッタ方式と同様の対物レンズに入射することで、多層記録媒体における深さの異なる位置に光スポットを形成することができる。
【0010】
更に、他の構成の光ヘッドとして、波長多重方式によるものがある。この光ヘッドは、波長の異なる光を出射する複数の光源と、これらの光を多重化するコリメータレンズと、このコリメータレンズによって多重化された平行光を集光する円錐プリズム(対物レンズ)とを備える。複数の光源はコリメータレンズから焦点距離だけ離れた位置に配列し、各々の光源から出射された光は、コリメータレンズによって平行光に変換される。そして、平行光は円錐プリズムに入射し、この円錐プリズムによって集光された光は、円錐プリズムにより生じる軸上色収差によって、その波長に応じて深さの異なる位置に光スポットを形成することができる。
【0011】
また、隣接する記録層の間で生じるクロストーク(光学的熱的な干渉)による影響を小さくするためには、対物レンズによって集光される光の焦点深度と比較して、記録層の層間間隔を充分に大きくする必要がある。結局、記録層をできる限り増やすためには、隣接する記録層に集光するビームにより当該記録層で発生するクロストークが大きくならない範囲で、記録層の層間間隔を可能な限り狭くする必要がある。
【0012】
ここで、層間間隔と記録媒体上におけるクロストークについて概算し、層間間隔の最小値を見積もる。合焦点(ビームウェスト)におけるスポットサイズ(半径)が、W0[m]であるガウシアンビームが光軸方向に伝搬しているとする。そして、記録層に集光するビームが、光軸付近ではほぼ平面波で、光軸に対して緩やかに曲率を変化させながら伝搬すると仮定して緩慢変化包絡線近似すると、ビームウェストから光軸方向にz[m]だけ伝搬した位置におけるビームサイズW(z)[m]は、以下の式(1)によって表される。ただし、kは波数で2π/λであり、λは波長である。
【0013】
【数1】

【0014】
したがって、層間間隔をd[m]とすると、隣接する記録層に集光されているガウシアンビームの当該記録層におけるビームサイズ(半径)は、W(d)[m]となる。つまり、ビーム形状は、倍率[W(d)/W0]だけ拡大される。そして、クロストークは、エネルギ密度の比、つまり、ビームの面積比に反比例するため、隣接する記録層におけるクロストークP(d)は、以下の式(2)によって表される。
P(d)=20log[(W0/W(d))2]=40log(W0/W(d)) …(2)
【0015】
そして、ガウシアンビームを開口数NAである対物レンズ(凸レンズ)で集光した場合、そのスポットサイズ(半径)W0は、以下の式(3)によって表される。
0=0.46λ/NA …(3)
【0016】
ここで、図12を参照して、ブルーレイディスク装置によって記録媒体にデータを記録する際の、クロストークについて説明する。図12は、青紫色(多ビーム)光ヘッドを搭載した多層光ディスク記録装置について、記録層の層間間隔と記録媒体上におけるクロストークの関係を示すグラフである。ここで、光ディスク装置の対物レンズの開口数NAを0.85、使用する青紫色レーザの波長λを0.405μm、記録層(記録媒体)の屈折率nを1.5とした。そして、隣接する記録層に集光するビームからのクロストークの許容値は、記録層の吸収率、熱伝送率、比熱などの材料パラメータや層構成に依存するため一概には決まらないが、クロストークP(d)が−50dB程度以下であれば問題ない場合が多い。したがって、図12に示すように、クロストークを考慮した場合には、層間間隔dは10μm程度以上必要であると推測できる。
【特許文献1】特開平10−55620号公報(段落番号0012〜0016、図1〜図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、レンズシフト方式では、同時に複数の記録層に光スポットを形成できない。また、ある記録層に記録した後に、他の記録層に記録する場合には、対物レンズを光軸方向に移動させる必要があり、フォーカシングが安定するまでに時間がかかる。更に、このレンズシフト方式では、他の記録層に記録する場合には、光スポットの位置を移動させるため、光スポットを形成している記録層を識別するためのID信号を、各記録層に埋め込む必要がある。
【0018】
また、液晶シャッタ方式では、ガウシアンビームから環状の平行光を生成する際に、エネルギ密度の高い中央部付近の光を遮断するため、光の利用効率が低下する。また、液晶シャッタパネル上に複数の同心円状の透明電極が取り付けられている場合には、複数の環状の平行光が生成される。そして、光の利用効率は各環状の平行光によって異なり、外側の平行光ほど光の利用効率が低下する。そのため、光源に半導体レーザダイオードや面発光レーザ等の一般的な光デバイスを用いた場合には、記録媒体へのデータの記録に必要となるビームの強度が得られず、実現は困難であった。
【0019】
更に、液晶素子の配光の変化の速度は、記録媒体への記録の際の光の変調の速度と比べると遅いため、この方式の光ヘッドでは、液晶シャッタパネルをON/OFFすることによる光の変調は行えず、光源を駆動するドライブ回路によって光の変調を行わなくてはならない。そのため、同時に光軸上に異なる深さの位置に複数の光スポットを形成することはできても、記録パターン(変調波形)は同じとなるため、記録層ごとに異なるデータを記録することはできなかった。
【0020】
また、アキシコンレンズ方式では、環状の平行光を一度に1つしか生成できないため、同時に複数の記録層に光スポットを形成することができない。そして記録層を変える場合には、2つのアキシコンレンズ間の間隔を変える必要があり、アキシコンレンズの移動に時間がかかる。
【0021】
また、波長多重方式では、対物レンズとしてアキシコンが使用されている。そのため、光源からの光(ガウシアンビーム)はコリメータレンズによって平行光に変換され、更に、このアキシコンによりベッセル分布をもつ光に変換されて出射される。このベッセル分布をもつ光の焦点深度は深いため、フォーカシングの調整が不要となり、その機構を省略することができる。一方で、焦点深度が深いと、光スポットのサイズが大きくなるため、記録密度(記録容量)が低下し、また、記録再生の速度が遅くなる。更に、隣接する記録層との間で生じるクロストークが大きくなるため、記録時においては、記録媒体上に形成される光スポットの品質(形状やサイズ)が劣化したり、再生時においては、光検出器上に形成される光スポットの品質が劣化したりする。
【0022】
本発明は、前記従来技術の問題を解決するために成されたもので、複数の記録層に同時に光スポットを形成して、並列にデータを書き込むことができ、光の利用効率がよく、かつ、光スポットのサイズを小さく(焦点深度を浅く)することができる光記録装置及びデータ書き込み方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記課題を解決するため、請求項1に記載の光記録装置は、複数の記録層を備える多層記録媒体にデータの書き込みを行うための光を出射する光記録装置であって、各々異なる波長の光を出射する複数の光源と、この複数の光源から出射された光を、同一の光軸と各々異なる長さの半径とを有する円環状のビームに変換するビーム変換手段と、このビーム変換手段によって変換された円環状のビームを、前記多層記録媒体の各々異なる深さの記録層に、前記波長ごとに集光する集光手段とを備える構成とした。
【0024】
これによって、光記録装置は、集光手段によって円環状のビームを集光し、各々のビームの半径と波長とに応じた深さの位置に光スポットを形成する。そのため、積層された各々の記録層に、各々の波長のビームを集光して光スポットを形成することができる。
【0025】
また、光記録装置は、円環状のビームを集光して光スポットを形成するため、ガウシアンビームを集光する場合と比べて、光スポットの大きさを小さくすることができる。定性的に説明すると、ガウシアンビームのエネルギ密度の分布は、光軸付近において高くなる。一方、円環状のビームのエネルギ密度の分布は、光軸付近ではゼロであり、光軸から所定距離だけ離れたところで最大となる。つまり、レンズ(集光手段)の外側の領域(開口数の大きい部分)にエネルギを集中させることができるため、円環状ビームの大きさが大きいほど、集光手段によって集光される光スポットの大きさを小さくできる。
【0026】
なお、光源は、多層記録媒体に対するデータの書き込みに用いるレーザ光等の光を発光するものである。この光記録装置は、複数の光源を備え、それぞれの光源を、異なる波長で励振する。そして、光学系で生じる軸上色収差を利用することにより、それぞれの光源からの光が、異なる記録層に光スポットを形成する。この結果、光源ごとに光を変調させることで、それぞれの光スポットで異なるデータを同時に記録することができる。
【0027】
また、請求項2に記載の光記録装置は、請求項1に記載の光記録装置において、前記ビーム変換手段が、前記光源から出射された光を前記同一の光軸をもつ光に多重化する光多重手段と、この光多重手段によって多重化された光を、前記波長ごとに異なる長さの半径を有する円環状のビームに変換する多重ビーム変換手段とを有する構成とした。
【0028】
これによって、光記録装置は、波長の異なる光を多重化した後に、波長ごとに異なる長さの半径の円環状のビームを生成する。そして、各々の円環状のビームを集光し、半径と波長とに応じた深さの位置に光スポットを形成することができる。
【0029】
更に、請求項3に記載の光記録装置は、複数の記録層を備える多層記録媒体にデータの書き込みを行うための光を出射する光記録装置であって、各々異なる波長の光を出射する複数の光源と、この複数の光源から出射された光を、同一の光軸を有し、かつ、前記波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームに変換する回転対称ビーム変換手段と、この回転対称ビーム変換手段によって変換されたビームを、前記多層記録媒体の各々異なる深さの記録層に、前記波長ごとに集光する集光手段とを備える構成とした。
【0030】
これによって、光記録装置は、集光手段によって、波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するビームを集光し、光学系で生じる軸上色収差を利用してこの半径と波長とに応じた深さの位置に光スポットを形成する。そして、記録層の層間間隔と光スポットの間隔を一致させることにより、積層された各々の記録層に、各々の波長のビームを集光して光スポットを形成することができる。
【0031】
また、光記録装置は、同一の光軸と異なる長さの半径とを有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度の分布を有するビームを集光して光スポットを形成するため、ガウシアンビームを集光する場合と比べて、光スポットの大きさを小さくすることができる。つまり、ガウシアンビームのエネルギ密度の分布は、例えば、凸レンズや円錐プリズムのような集光手段の光軸付近において高くなる。一方、回転対称なエネルギ密度の分布を有するビームのエネルギ密度の分布は、光軸付近では低く、光軸から所定距離だけ離れたところで最大となる。したがって、円環状ビームと同様に、この距離が大きいほど光スポットの大きさは小さくなる。なお、回転対称なエネルギ密度の分布を有するビームには、例えば、ラゲールガウスビーム(Laguerre−Gaussian beam)、ヘルミートガウスビーム(Hermit−Gaussian beam)やインスガウスビーム(Ince−Gaussian beam)等が挙げられる。
【0032】
また、光記録装置は複数の光源を備え、それぞれの光源からの光が、異なる記録層に光スポットを形成するため、光源ごとに光を変調させることで、それぞれの光スポットで異なるデータを同時に記録することができる。
【0033】
また、請求項4に記載の光記録装置は、請求項3に記載の光記録装置において、前記回転対称ビーム変換手段が、前記光源から出射された光を前記同一の光軸をもつ光に多重化する光多重手段と、この光多重手段によって多重化された光を、前記波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームに変換する多重回転対称ビーム変換手段とを有する構成とした。
【0034】
これによって、光記録装置は、波長の異なる光を多重化した後に、波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームを生成する。そして、各々のビームを集光し、円環状ビームと同様に半径と波長とに応じた深さの位置に光スポットを形成することができる。
【0035】
また、請求項5に記載の光記録装置は、請求項4に記載の光記録装置において、前記多重回転対称ビーム変換手段が、フォトニック結晶デバイスからなる構成とした。これによって、光記録装置は、フォトニック結晶デバイスによって、入射端面から入射された光を、出射端面上において所定半径の円周上の所定の位置に導波することで、光多重手段によって多重化された光を、光の波長に応じた半径の回転対称なエネルギ分布を有するビームに変換することができる。
【0036】
なお、フォトニック結晶デバイスに、入射端面において光が入射される位置から出射端面の所定半径の円上の所定の位置まで線欠陥あるいは点欠陥を人工的に導入し、光閉じ込め効果によって、その欠陥領域(導波路)に沿って光を導波させ、波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するビームに変換することができる。そして、導波構造を出射端面上における所定半径の円上の所定間隔の位置に設けることで、回転対称なエネルギ分布を有するビームとすることができる。
【0037】
更に、請求項6に記載のデータ書き込み方法は、複数の記録層を備える多層記録媒体にデータの書き込みを行うデータ書き込み方法であって、複数の光源から各々異なる波長の光を出射する光出射ステップと、この光出射ステップによって前記複数の光源から出射された光を、同一の光軸と各々異なる長さの半径とを有する円環状のビームに変換するビーム変換ステップと、このビーム変換ステップによって変換された円環状のビームを、前記多層記録媒体の各々異なる深さに積層された記録層に、前記波長ごとに集光する集光ステップとを含むことを特徴とする。
【0038】
これによって、データ書き込み方法は、集光ステップによって円環状のビームを集光し、各々のビームの半径と波長とに応じた深さの位置に光スポットを形成する。そのため、積層された各々の記録層に、各々の波長のビームを集光して光スポットを形成することができる。
【0039】
更に、請求項7に記載のデータ書き込み方法は、複数の記録層を備える多層記録媒体にデータの書き込みを行うデータ書き込み方法であって、複数の光源から各々異なる波長の光を出射する光出射ステップと、この光出射ステップによって前記複数の光源から出射された光を、同一の光軸を有し、かつ、前記波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームに変換する回転対称ビーム変換ステップと、この回転対称ビーム変換ステップによって変換されたビームを、前記多層記録媒体の各々異なる深さの記録層に、前記波長ごとに集光する集光ステップとを含むことを特徴とする。
【0040】
これによって、データ書き込み方法は、集光ステップによって光を集光し、波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するビームを集光して、この半径と波長とに応じた深さの位置に光スポットを形成する。そのため、積層された各々の記録層に、各々の波長の光を集光して光スポットを形成することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係る光記録装置及びデータ書き込み方法では、以下のような優れた効果を奏する。請求項1、請求項3、請求項6、又は請求項7に記載の発明によれば、波長の異なる複数の光を同時に集光して、多層記録媒体における異なる記録層に光スポットを形成することができるため、一度に複数の記録層にデータを書き込むことができる。そのため、光源の数に応じて書き込み速度を向上させることができる。
【0042】
また、ガウシアンビームを集光する場合と比較して、より小さな光スポットを形成することができるため、従来の多層記録媒体の記録層よりも層間が狭い多層記録媒体に対して、隣接する記録層へのクロストーク(熱的な干渉)を防いでデータを書き込むことができる。そのため、厚さ方向に所定の範囲内に収めるべき、データを書き込む多層記録媒体の記録層の数を、従来の多層記録媒体に比べて増やすことができ、1枚の多層記録媒体に記録できるデータ量を増やすことが可能になる。
【0043】
請求項2又は請求項4に記載の発明によれば、波長の異なる光を多重化した後に、波長ごとに異なる長さの半径の円環状又は回転対称のエネルギ密度分布のビームに変換するため、各々の光源からの光を一括して変換することができる。つまり、1つの光デバイスによって、円環状又は回転対称のエネルギ密度分布のビームに変換することができるため、デバイス同士を接続する際のアライメントが容易となり光の接続損失(軸ずれ損失)を減らすことができる。
【0044】
請求項5に記載の発明によれば、複数の波長の光が多重化された光を1つのデバイスによって変換することができるとともに、フォトニック結晶デバイスを用いてビーム形状を緩やかに連続的に変化させることで、低損失で変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0045】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[光ヘッド(光記録装置)の構成(第一の実施の形態)]
図1を参照して、本発明における第一の実施の形態である光ヘッド1の構成について説明する。図1は、光ヘッドの構成を示したブロック図である。光ヘッド(光記録装置)1は、複数の記録層7a〜7eが積層された多層記録媒体7にデータを書き込むものである。光ヘッド1は、光源2、ビーム変換手段6及び対物レンズ5を備える。なお、図1では光ヘッド1の各々の構成である光源2、ビーム変換手段6、対物レンズ5及び後記する波長多重回路3と多重ビーム変換回路4の間を所定間隔だけ離して示しているが、光ヘッド1は、すべての構成が光集積化されて形成されていてもよいし、所定間隔だけ離して形成されていてもよい。更に、所定間隔だけ離したその間隙に、光を導波する導波回路のような、出射された光を次の回路又はレンズ(波長多重回路3、多重ビーム変換回路4、対物レンズ5)に入射させる回路や光学系等を備えることとしてもよい。
【0046】
光源2は、多層記録媒体7にデータを書き込むためのレーザ光を出射するものである。ここで、光源2は、図示しない光源制御手段によって、レーザ光の発光のパターン(発光強度の変調)が制御されている。そのため、ここでは、光ヘッド1は、5つの光源2(2a〜2e)を備えることとした。更に、光源2(2a〜2e)を、各々波長λ1〜λ5(λ1<λ2<λ3<λ4<λ5)のレーザ光を発光する半導体レーザダイオードアレイとした。なお、ここで用いる光源2は、レーザ光等を発光するデバイスであればよく、例えば、面発光レーザ等であってもよい。
【0047】
ビーム変換手段6は、光源2(2a〜2e)から出射されたレーザ光の各々を、同一の光軸をもつ所定半径の円環状のビームに変換するものである。ここで、ビーム変換手段6は、波長多重回路3と多重ビーム変換回路4とを備える。
【0048】
波長多重回路(光多重手段)3は、光源2a〜2eから発光されたレーザ光を多重化するものである。ここでは、波長多重回路3を、内部において、複数の光の各々を導波する導波路を結合して1つの導波路とすることで、導波される波長の異なる光を多重化(合成)して、同一の光軸をもつ光として出射する埋込型導波路によって構成した。ここで、図2を参照して、波長多重回路3の構造について説明する。図2は、光ヘッドの波長多重回路の構造を示す斜視図である。
【0049】
図2に示すように、波長多重回路3は、コア3aと、クラッド3bとを備えている。コア3aは、クラッド3bより屈折率が高く、コア3aとクラッド3bとの界面においてレーザ光を全反射させることで、光源2からのレーザ光をコア3aに閉じ込めて導波させることができる。コア3aは、入射端面3c側に5つの導波路を有し、波長多重回路3の内部において、この入射端面3c側の5つの導波路を1つの導波路に結合して、出射端面3d側において1つの導波路としている。そして、入射端面3c側の5つの導波路の各々の開口面には、光源2からのレーザ光の径をコア3aの開口面の径にまで拡大させるスポットサイズ変換器(図示せず)を介して光源2a〜2eが取り付けられている。これによって入射端面3c側の光源2a〜2eから入力された、発振波長の異なる5つのレーザ光は、コア3a内部において多重化され、5つのピーク波長(λ1〜λ5)の分布をもつ1本のレーザ光として出射端面3dから出射される。
【0050】
ここで、光を単一モードで導波路内を伝搬させる必要があり、コア3aとクラッド3bとの間の比屈折率を小さくすることで、伝搬損失(レーザ光の強度の減衰)を少なくすることができる。つまり、可視光が単一モードで伝搬する導波路のコア3aのサイズは小さいため、相対的にコア3aの構造うねりなどの作製不整による影響が大きくなる。例えば、コア3aとクラッド3bとの境界におけるレイリー散乱などによって伝搬損失が増加するが、その大きさは、コア3aとクラッド3bとの比屈折率差の2.5乗に比例するため、比屈折率差を小さくするほど伝搬損失を小さくできる。
【0051】
このとき、伝搬するレーザ光のエネルギ密度は、ガウシアン分布に近い分布をもち、レーザ光の放射角は小さくなる。そのため、コア3aとクラッド3bとの比屈折率差を小さくすることで、外部の光デバイス(多重ビーム変換回路4)と効率よく接続できる。
【0052】
このようなコア3aとクラッド3bとしては、例えば、次のようなもので実現することができる。すなわち、単一モードで、波長400〜440nmの範囲のレーザ光を多重化する場合に、コア材にはパーフルオロアルケニルビニルエーテル環化重合体(CYTOP(登録商標))と有機ケイ素系化合物とを混合して屈折率を1.3484に調整したものを用い、一辺が2μmの正方形の端面を有し、クラッド3bに埋め込まれたコア3aを形成する。また、屈折率1.3450のCYTOP(登録商標)を用いて、クラッド3bを形成する。このような波長多重回路3によれば、70%程度の伝搬効率が得られる。
【0053】
なお、波長多重回路3は、例えば、導波路デバイスであってもよいし、また、波長の異なる光を光学的に合成するビームスプリッタやダイクロイックミラーであってもよい。そして、異なる波長で励振される光源2を、光軸に対して垂直方向に並べる従来の方式では、光軸方向に沿って複数の光スポットを同時に配置できないが、後記する多重ビーム変換回路4によってビーム形状(プロファイル)を制御することで、対物レンズ5によって形成される複数の光スポットを光軸上に同時に並べることができる。
【0054】
図1に戻って説明を続ける。多重ビーム変換回路(多重ビーム変換手段)4は、波長多重回路3から入射されたレーザ光を円環状のビーム(以下、円環状ビームという)に変換するものである。ここで、図3及び図4を参照して、ガウシアンビームを円環状ビームに変換する多重ビーム変換回路4の構造について説明する。図3は、光ヘッドの多重ビーム変換回路の構造と、その端面及び内部の断面の構造を示す模式図である。図4は、光ヘッドの多重ビーム変換回路から出射する円環状ビームを模式的に示す模式図、(a)は、光ヘッドの多重ビーム変換回路によって、波長λ1〜λ5のガウシアンビームを変換して得られる円環状ビームを模式的に示す模式図、(b)は、円環状ビームの径方向の光強度とピークの位置を模式的に示す模式図である。
【0055】
まず、図3を参照して、多重ビーム変換回路4の構造について説明する。ここでは、多重ビーム変換回路4を、円錐形状の内部クラッド4cと円錐殻の形状のコア4aとを、全体の形状が円柱となるように外部クラッド4bによって構成した。そして、光ファイバと同様に、母材を線引きして作製した。なお、多重ビーム変換回路4は、例えば、円環状の干渉縞(0次光のない、円環状の高次回折光のみからなる光)を生成する回折格子や、ホログラム素子であってもよい。
【0056】
そして、多重ビーム変換回路4は、入射端面4dの中央に円形のコア4aを形成し、多重ビーム変換回路4内部において、この導波路を円錐状に分岐して、出射端面4eにおいて所定半径の円周上に円環状のコア4aを形成している。そのため、多重ビーム変換回路4の内部のコア4aは、多重ビーム変換回路4の入射端面4dから出射端面4eに向かうにつれて、光の入射方向に直交する断面における半径が大きくなる。そして、入射端面4dから入射されたレーザ光は、多重ビーム変換回路4のコア4a内部に閉じ込められて、出射端面4eに向かって伝搬するにつれて半径が大きくなり、所定の半径の円環状ビームに変換されて出射端面4eから出射される。
【0057】
そして、多重ビーム変換回路4は、それぞれアッベ数の異なるコア4a、外部クラッド4b及び内部クラッド4cからなり、外部クラッド4bが最もアッベ数が小さく、コア4a、内部クラッド4cの順にアッベ数が大きくなる。なお、アッベ数とは、光学材料の屈折率の波長分散特性を評価する数値であり、アッベ数が大きい媒質ほど、異なる波長に対して屈折率の変化が小さい。
【0058】
そのため、ある波長(基準波長)の光に比べて、この基準波長より短い波長の光は、アッベ数の大きい内部クラッド4cの屈折率がわずかに大きくなり、中間のアッベ数のコア4aの屈折率が大きくなり、アッベ数の小さい外部クラッド4bの屈折率が非常に大きくなる。そのため、コア4aと内部クラッド4cとの屈折率差は大きくなり、コア4aと外部クラッド4bとの屈折率差は小さくなる。これによって、基準波長より短い波長の光のピークの位置は内部クラッド4c側にシフトされ、出射端面4eから出射される円環状ビームの半径は小さくなる。一方、基準波長より長い波長の光のピーク位置は、外部クラッド4b側にシフトされ、出射端面4eから出射される円環状ビームの半径は大きくなる。このようにして、コア4a、外部クラッド4b及び内部クラッド4cを構成する媒質のアッベ数を調整することで、多重ビーム変換回路4によって変換される円環状ビームの半径を波長で制御することができる。
【0059】
そのため、波長λ1〜λ5(λ1<λ2<λ3<λ4<λ5)のレーザ光が多重化されたレーザ光が多重ビーム変換回路4に入射すると、図4(a)に示すように、多重ビーム変換回路4からは、それぞれピーク半径r(λ1)〜r(λ5)の5つの円環状ビームb1〜b5が出射する。そして、この5つの円環状ビームb1〜b5は、平面C上において同心円状のピークを有する。そして、図4(b)に示すように、波長λ5の光のピーク半径r(λ5)が一番大きくなり、波長λ1の光のピーク半径r(λ1)が一番小さくなる。なお、図4(a)の平面Cは、多重ビーム変換回路4から出射した5つの円環状ビームb1〜b5からなる円環状多重ビームの伝搬方向(光軸方向)に直交する平面を示し、平面C上の矢印(r軸)は、円環状多重ビームの中心からの径方向を示す。更に、平面C上のr軸は、図4(b)のグラフのr軸と一致し、このグラフの下に、多重ビーム変換回路4の出射端面4eにおける、中心から径方向へのコア4a、外部クラッド4b及び内部クラッド4cの配置を模式的に示している。
【0060】
図1に戻って説明を続ける。対物レンズ(集光手段)5は、多重ビーム変換回路4から出射された円環状多重ビームを集光するものである。ここで、対物レンズ5は、入射される光の波長によって屈折率が異なる波長分散特性を有し、この波長分散特性による軸上色収差によって、各々の波長λ1〜λ5の光を、光軸方向に対物レンズ5からの距離が異なる位置に集光する。ここでは、対物レンズ5を、円錐プリズムとした。なお、対物レンズ5は、円環状多重ビームを集光でき、波長分散特性を有するものであればよく、例えば、両凸レンズ等の凸レンズであってもよい。そして、円環状ビームの幅が狭い場合、凸レンズは円錐プリズムと同様に機能する。
【0061】
ここで、図5を参照して、波長が長くなるほど屈折率が小さくなる光学材料よりなる円錐プリズムを対物レンズ5とした場合における、円環状多重ビームの光スポットについて説明する。図5は、光ヘッドの対物レンズに入射した円環状多重ビームの光スポットを説明するための説明図である。
【0062】
図5に示すように、対物レンズ5は、波長が長くなるほど屈折率が小さくなるので、波長λ1〜λ5(λ1<λ2<λ3<λ4<λ5)の5つのレーザ光が多重化されたレーザ光が入射すると、一番短い波長λ1の円環状ビームb1の屈折率が一番大きくなり、多層記録媒体7のレーザ光の照射面に一番近い1層目の記録層7aに光スポットc1を形成する。そして、波長λ2の円環状ビームb2の屈折率が次に大きくなり、2層目の記録層7bに光スポットc2を形成する。同様に、波長λ3の円環状ビームb3が3層目の記録層7cに光スポットc3を形成し、波長λ4の円環状ビームb4が4層目の記録層7dに光スポットc4を形成して、一番長い波長λ5の円環状ビームb5が、対物レンズ5から一番遠い最下層の記録層7eに光スポットc5を形成する。これによって、光ヘッド1は、各波長λ1〜λ5の光スポットを各記録層7a〜7eに形成でき、多層記録媒体7にデータを書き込むことができる。
【0063】
そして、円環状多重ビームは、z軸を中心とする5つの円環状ビームからなるので、そのz軸と対物レンズ5の光軸とを一致させることで、対物レンズ5は、円環状多重ビームの各波長λ1〜λ5の光スポットを光軸上に配列させることができる。
【0064】
更に、円環状ビームb1〜b5が多重化された円環状多重ビームを集光するので、記録層7a〜7eの各々に同時に光スポットc1〜c5を形成することができる。そして、図示しない光源制御手段によって、各々の光源2(2a〜2e)の発光パターンを制御することで、記録層7a〜7eごとに独立したデータを同時に書き込むことができる。そのため、一度に複数の記録層7a〜7eにデータを書き込むことで、光源2の数に応じて書き込み速度を向上させることができる。
【0065】
また、各々の波長λ1〜λ5の円環状ビームは、それぞれz軸から半径r(λ1)〜r(λ5)だけ離れた位置においてエネルギ密度が最大になる。そして、円環状ビームを集光すると、ガウシアンビームのような、対物レンズの光軸付近でエネルギ密度の分布が高くなる光を集光する場合と比べて、光スポットのサイズを小さくすることができる。
【0066】
そのため、各々の光スポット間の間隔を短くしても、光の集光角が同じならば各々の光スポット間のクロストーク(熱的な干渉)を防ぐことができる。これによって、多層記録媒体7の層間間隔を狭くすることができ、一定範囲に積層できる記録層の数を増やすことができる。つまり、多層記録媒体7に記録できるデータ量を増やすことが可能になる。
【0067】
次に、図6を参照して、各光スポットc(c1〜c5)間の間隔について説明する。図6は、対物レンズに入射した円環状ビームの光路を模式的に示した模式図である。なお、ここでは、ある波長λの円環状ビームのピーク半径をr(λ)とし、このピーク半径がr(λ)に対して充分に小さい半値幅の円環状ビームbが大気中(屈折率が1)から対物レンズ5(円錐プリズム)に入射する場合について説明する。
【0068】
ここで、対物レンズ5(円錐プリズム)の底面の半径をy、入射側の円錐の開き角を2θ’度、出射側の円錐の開き角を2θ度、波長λにおける対物レンズ5の屈折率をn(λ)とすると、入射側の円錐の頂点P’と、光スポットcまでの距離zは、以下の式(4)によって表される。
【0069】
【数2】

【0070】
なお、式(4)において、l(λ)は、波長λの円環状ビームbの対物レンズ5内における伝搬長、α(λ)は、波長λの円環状ビームbが大気中から対物レンズ5に入射した際の屈折角、β(λ)は、波長λの円環状ビームbが対物レンズ5から大気に出射する際の屈折角である。α(λ)及びβ(λ)は、スネルの法則によって、以下の式(5)で表される。
【数3】

【0071】
次に、具体例を挙げて各光スポット間の距離について説明する。ここで、光源2a〜2eから出射するレーザ光の波長を、λ1=400[nm]、λ2=410[nm]、λ3=420[nm]、λ4=430[nm]、λ5=440[nm]とし、円環状多重ビームのピーク半径を、波長λ1の円環状ビームのピーク半径r(400)=1800[μm]、波長λ2の円環状ビームのピーク半径r(410)=1802[μm]、波長λ3の円環状ビームのピーク半径r(420)=1804[μm]、波長λ4の円環状ビームのピーク半径r(430)=1806[μm]、波長λ5の円環状ビームのピーク半径r(440)=1808[μm]とする。また、対物レンズ5(円錐プリズム)の材質をアッベ数Vが30、波長400nmの時の屈折率n(400)=1.7の重フリントガラスとし、θ=90[°]、θ’=29.4[°]、底面の半径y=2000[μm]として算出した。
【0072】
なお、アッベ数Vとは、光学材料の屈折率の波長分散特性を評価する数値であり、以下の式(6)で定義される。ここで、Nd、Nf、Ncは、材料の波長がそれぞれ589.2nm、486.1nm、656.3nmの光に対する屈折率である。
【0073】
【数4】

【0074】
更に、400〜440nmの波長の帯域では、屈折率が波長に比例して変化すると仮定して算出した。その結果、前記の式(4)及び式(5)より、円環状多重ビームは、対物レンズ5(円錐プリズム)の光源側の頂点P’から約4.1mmの位置に集光し、各光スポットc1〜c5の間隔は8.3μmとなった。そして、各光スポットを、この間隔(8.3μm)ずつ離して配置すれば、十分にクロストークを小さくすることができる。なお、対物レンズ5の波長分散特性は、この対物レンズ5を構成する光学材料のアッベ数に依存する。そして、対物レンズ5をアッベ数が小さく、屈折率の小さい光学材料で構成することで、光スポット間の間隔を広くすることができる。このように、光ヘッド1において、集光手段を構成する光学系の軸上色収差を積極的に利用して、光スポット間の間隔を所望の長さに調整することができる。
【0075】
なお、ここでは多重ビーム変換回路4が正の波長分散特性をもつ場合について説明したが、外部クラッド4bと内部クラッド4cの構成材料を交換し、外部クラッド4bが最もアッベ数が大きく、コア4a、内部クラッド4cの順にアッベ数を小さくなるように設定することで、負の波長分散特性をもつ多重ビーム変換回路4とすることができる。例えば、r(400)=1800、r(410)=1798、r(420)=1796、r(430)=1794、r(440)=1792とした場合には、各光スポット(図示せず)の間隔は3.1μmとなる。このとき、光学系(対物レンズ5とビーム変換手段6)による軸上色収差は小さくなるが、光スポットを分離する効果は損なわれない。
【0076】
[光ヘッド(光記録装置)の動作(第一の実施の形態)]
次に、図1を参照(適宜図2及び図3参照)して、多層記録媒体7にデータを書き込むために、本発明における光ヘッド1が、記録層7a〜7eにレーザ光の光スポットを形成する動作について説明する。
【0077】
(光出射ステップ)
波長多重回路3のコア3a(図2参照)の、入射端面3c側の5つの開口面に図示しないスポットサイズ変換器を介して取り付けられた光源2(2a〜2e)は、互いに波長の異なるレーザ光を出射する。この光源2(2a〜2e)は、図示しない光源制御手段によって、レーザ光の発光パターンが制御され、光源2(2a〜2e)から出射されたレーザ光は、図示しないスポットサイズ変換器を介して波長多重回路3のコア3aに入射する。
【0078】
(ビーム変換ステップ)
そして、波長多重回路3は、入射されたレーザ光をコア3aに沿って導波する。このコア3aは、波長多重回路3の内部において、各々の波長のレーザ光を導波する5つの導波路を結合して1つの導波路とし、出射端面3d(図2参照)側に1つの開口面を有しているため、入射された異なる波長のレーザ光は、多重化されて出射端面3dまで導波される。
【0079】
そして、多重化されたレーザ光は、多重ビーム変換回路4の入射端面4d(図3参照)の中央のコア4a(図3参照)から入射される。この多重ビーム変換回路4は、当該多重ビーム変換回路4内部のコア4a内部に沿って、入射されたレーザ光を導波する。このコア4aは、当該多重ビーム変換回路4の内部において、円錐状に分岐し、出射端面4e(図3参照)の所定半径の円上の位置まで形成されているため、入射端面4d側から入射されたレーザ光は、円環状ビームに変換されて、出射端面4eから出射される。
【0080】
ここで、多重ビーム変換回路4に入射されたレーザ光は、当該多重ビーム変換回路4を構成するコア4a、外部クラッド4b及び内部クラッド4cの波長依存性(媒質のアッベ数)によって、波長ごとに各々ピーク半径が異なる円環状ビームが多重化されている円環状多重ビームに変換される。
【0081】
(集光ステップ)
そして、円環状多重ビームは、対物レンズ5に入射される。対物レンズ5は、入射された光の波長によって屈折率が異なるため、波長分散特性(軸上色収差)によって、各々の波長の光を、多層記録媒体7内部において光軸方向に異なる深さに積層されている各々の記録層(7a〜7e)に集光する。
【0082】
以上の動作によって、光ヘッド1は、各々の光源2a〜2eから出射されたレーザ光を、それぞれ記録層7a〜7eに集光して光スポットを形成する。そのため、光源2の発光を制御する図示しない光源制御手段によって、各々の記録層(7a〜7e)に対応する光源2(2a〜2e)の発光パターンを制御することで、多層記録媒体7にデータを書き込むことができる。
【0083】
[光ヘッド(光記録装置)の構成(第二の実施の形態)]
次に、図7を参照して、本発明における第二の実施の形態である光ヘッド1Aの構成について説明する。図7は、光ヘッドの構成を示したブロック図である。光ヘッド(光記録装置)1Aは、複数の記録層7a〜7eが積層された多層記録媒体7にデータを書き込むものである。光ヘッド1Aは、光源2、回転対称ビーム変換手段6A及び対物レンズ5Aを備える。なお、図1では光ヘッド1Aの各々の構成である光源2、回転対称ビーム変換手段6A、対物レンズ5A及び後記する波長多重回路3と多重回転対称ビーム変換回路4Aの間を所定間隔だけ離して示しているが、光ヘッド1Aは、すべての構成が一体化されて形成されていてもよい。更に、所定間隔だけ離したその間隙に、光を導波する導波回路のような出射された光を次の回路又はレンズ(波長多重回路3、多重回転対称ビーム変換回路4A、対物レンズ5A)に入射させる回路や光学系等を備えることとしてもよい。
【0084】
光ヘッド1Aは、光ヘッド1(図1参照)のビーム変換手段6に代えて回転対称ビーム変換手段6Aを、また、対物レンズ5に代えて対物レンズ5Aを備えて構成した。光ヘッド1A内の回転対称ビーム変換手段6A及び対物レンズ5A以外の構成は、図1に示したものと同一であるので、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0085】
回転対称ビーム変換手段6Aは、光源2(2a〜2e)から出射されたレーザ光の各々を、同一の光軸を有し、かつ、波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームに変換するものである。ここで、回転対称ビーム変換手段6Aは、波長多重回路3と多重回転対称ビーム変換回路4Aとを備える。なお、波長多重回路3は、図1に示したものと同一であるので説明を省略する。
【0086】
多重回転対称ビーム変換回路(多重回転対称ビーム変換手段)4Aは、波長多重回路3から入射されたレーザ光を、同一の光軸を有し、かつ、波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームに変換するものである。なお、ここでは、回転対称ビーム変換手段6Aは、所定の半径の円環上に等間隔で2m個のエネルギ密度のピークを有するm次のラゲールガウスビーム(以下、LGビームという)に変換することとする。
【0087】
ここで、図8から図10を参照して、2m個のエネルギ密度のピークを有するLGビームと、ガウシアンビームをLGビームに変換する多重回転対称ビーム変換回路4Aの構造とについて説明する。図8は、LGビームのエネルギ密度の分布を示す模式図、(a)は、LGビームの進行方向に直交する平面におけるLGビームのエネルギ密度を模式的に示す模式図、(b)は、LGビームの径方向におけるエネルギプロファイルを示すグラフである。図9は、光ヘッドの多重回転対称ビーム変換回路の構造を示す模式図、(a)は、多重回転対称ビーム変換回路と、その端面及び内部の構造を示す模式図、(b)は、(a)における多重回転対称ビーム変換回路のA−A断面における構造を示す模式図である。図10は、光ヘッドの多重回転対称ビーム変換回路によって、波長λ1〜λ5のガウシアンビームを変換して得られたLGビームのピークの位置を示す模式図である。
【0088】
まず、LGビームについて説明する。LGビームは、エネルギ密度が、円座標系(r,θ)において以下の式(7)で表されるような、回転対称な(高いエネルギ密度を有する2m個のピークが180/m度の間隔で現れる)分布をもつ。また、このピークが現れる半径r0,mは以下の式(8)で表される。なお、U0,mはm次のLGビームのエネルギ密度を示している。また、mは2以上の自然数、U0及びω0は定数である。
【0089】
【数5】

【0090】
そして、例えば、m=2の時に、平面CにおけるLGビームのエネルギ密度は、図8(a)に示すように、平面CA上において4個のピークが90°間隔で現れ、また、図8(b)に示すように、中心部(z軸近傍)はエネルギ密度がゼロになる。なお、図8(a)の平面CAは、円柱座標系のz軸に直交する平面(rθ平面)を示し、光の進行方向はz軸方向(紙面を貫く方向)と一致する。ここで、ω0が波長依存性をもつ場合、ピークの半径r0,mは、波長によって異なる。そして、ω0が正の波長依存性をもつ場合には、波長が長くなるほどピークの半径r0,mは大きくなる。
【0091】
次に、図9を参照して、多重回転対称ビーム変換回路4Aの構造について説明する。ここでは、多重回転対称ビーム変換回路4Aを、フォトニック結晶デバイスによって構成した。フォトニック結晶デバイスは、屈折率の異なる2種類以上の物質を、光の波長程度のサイズで周期的に配置した光デバイスであり、ある周波数領域の光(ここではレーザ光)を伝搬させない性質を有する。図9(a)に示すように、ここでは、屈折率の異なる2種類の物質を、当該多重回転対称ビーム変換回路4Aを構成する媒質、及び、空孔4Aa、4Aa、…内の空気とし、媒質内に光の波長程度の径の空孔4Aa、4Aa、…を周期的に配置させている。そして、周期的に配置された空孔4Aa、4Aa、…の一部を人工的に欠損させ、人工欠陥4Abを形成する。図9(b)に示すように、入射端面4Ac側から出射端面4Adまで3次元的に人工欠陥4Ab(図9(a)参照)を導入することで、多重回転対称ビーム変換回路4Aは、その人工欠陥4Abに沿って光を導波させることができる。
【0092】
そして、図9(a)に示すように、多重回転対称ビーム変換回路4Aは、入射端面4Acの中央に1つの導波路を形成し、多重回転対称ビーム変換回路4A内部において、この導波路を2m本(図9では4本)に分岐して、2m個のピークが180/m度の間隔で現れる回転対称なエネルギ密度の分布をもつレーザ光、つまり、m次のLGビーム(図9では2次のLGビーム)に変換する。そして、3次元的に人工欠陥4bを導入することで、m次LGビームのピーク半径r0,mを大きくさせながらデバイス内を伝搬させる。なお、図9には、入射端面4Acの中央から導波路を4本に分岐して、入射端面4Acから入射したレーザ光を2次のLGビームに変換する多重回転対称ビーム変換回路4Aを示している。また、次数mは、2以上の自然数であればよく、次数mが大きいほど、LGビームの高次回折光(サイドローブ)は抑圧され、かつ、その形状が環状に近づく。
【0093】
また、前記の式(7)の定数U0及びω0は、人工欠陥4Abや空孔4Aaの配置の周期等の、多重回転対称ビーム変換回路4Aを構成するフォトニック結晶デバイスの構造により制御することができる。そして、この多重回転対称ビーム変換回路4Aを構成するフォトニック結晶デバイスの波長依存性が、屈折率の1次関数で表される場合、光源2a〜2eから出射されるレーザ光の波長の差が等間隔であれば、図10に示すように、等間隔なピーク半径のLGビームb’(b’1〜b’5)が多重化されたLG多重ビームを生成することができる。ここでは、多重回転対称ビーム変換回路4Aは波長λ1〜λ5(λ1<λ2<λ3<λ4<λ5)の5つのレーザ光が多重化されたレーザ光が入射し、5つのピークの半径r0,2をもつLG多重ビームが出射される。そして、このLG多重ビームは、平面CA上において、5つの同心円上に各々の波長λ1〜λ5のLGビームのピークを有し、波長λ1の光のピークが一番内側の円上に、波長λ5の光のピークが一番外側の円上にある。なお、平面CAは、図8の平面CAに対応し、円柱座標系のz軸に直交する平面(rθ平面)を示している。
【0094】
また、多重回転対称ビーム変換回路4Aをフォトニック結晶デバイスで構成することで、光閉じ込め効果によってレーザ光の伝搬損失を小さくすることができる。更に、波長多重回路3と、多重回転対称ビーム変換回路4Aとを一体加工することで、波長多重回路3と多重回転対称ビーム変換回路4Aとを接続する際に生じる損失を非常に小さくすることができる。なお、図8から図10では、2次のLGビームを例に挙げて説明したが、次数mは2以上の自然数であればよく、多重回転対称ビーム変換回路4Aは、例えば、入射された光を3次のLGビームに変換するものであってもよいし、4次以上のLGビームに変換するものであってもよい。この次数mが大きいほど高次回折光は小さくなるが、設計・製作の観点から、次数mを5から8までの自然数とすることが好ましい。
【0095】
図7に戻って説明を続ける。対物レンズ(集光手段)5Aは、多重回転対称ビーム変換回路4Aから出射されたLG多重ビームを集光するものである。ここで、対物レンズ5Aは、入射される光の波長によって屈折率が変化する波長分散特性を有し、この波長分散特性により軸上色収差が発生する。これにより、各々の波長λ1〜λ5の光を、光軸方向に対物レンズ5からの距離が異なる位置に集光する。なお、この対物レンズ5Aは、対物レンズ5(図1参照)に比べて入射する光を円環状多重ビームからLG多重ビームとしただけで、機能は同じものである。そして、ここでは、対物レンズ5Aを、円錐プリズムとしたが、対物レンズ5Aは、LG多重ビームを集光でき、波長分散特性を有するものであればよく、例えば、両凸レンズ等の凸レンズであってもよい。そして、LG多重ビームの幅が十分に狭い場合、凸レンズは円錐プリズムと同様に機能する。
【0096】
[光ヘッド(光記録装置)の動作(第二の実施の形態)]
次に、図7を参照(適宜図2及び図9参照)して、多層記録媒体7にデータを書き込むために、本発明における光ヘッド1Aが、記録層7a〜7eにレーザ光の光スポットを形成する動作について説明する。
【0097】
(光出射ステップ)
光源2(2a〜2e)は、互いに波長の異なるレーザ光を出射する。この光源2(2a〜2e)は、図示しない光源制御手段によって、レーザ光の発光パターンが制御され、光源2(2a〜2e)から出射されたレーザ光は、図示しないスポットサイズ変換器を介して波長多重回路3のコア3a(図2参照)に入射する。
【0098】
(回転対称ビーム変換ステップ)
そして、波長多重回路3は、入射されたレーザ光をコア3aに沿って導波し、入射された異なる波長のレーザ光を、多重化して出射する。そして、多重化されたレーザ光は、フォトニック結晶デバイスからなる多重回転対称ビーム変換回路4Aの入射端面4Ac(図9(a)参照)の中央の人工欠陥4Ab(図9(a)参照)から入射される。
【0099】
この多重回転対称ビーム変換回路4Aは、当該多重回転対称ビーム変換回路4A内部の人工欠陥4Abが連続する領域(導波路)に沿って、入射されたレーザ光を導波する。この導波路は、当該多重回転対称ビーム変換回路4Aの内部において2m本に分岐し、2m個のピークが180/m度の間隔で現れる回転対称なエネルギ密度の分布をもつ、m次のLGビームに変換される。このLGビームは、多重回転対称ビーム変換回路4Aの内部を伝搬するにつれてピーク半径が徐々に大きくなり、出射端面4Adから出射される。
【0100】
ここで、多重回転対称ビーム変換回路4Aに入射されたレーザ光は、当該多重回転対称ビーム変換回路4Aを構成するフォトニック結晶デバイスの波長依存性によって、波長ごとに各々ピーク半径が異なるLGビームが多重化されているLG多重ビームに変換される。
【0101】
(集光ステップ)
そして、LG多重ビームは、対物レンズ5Aに入射される。対物レンズ5Aは、入射する光の波長によって屈折率が変化するため、波長分散特性(軸上色収差)によって、各々の波長の光を、多層記録媒体7内部において光軸方向に異なる深さに積層されている各々の記録層(7a〜7e)に集光する。
【0102】
以上の動作によって、光ヘッド1Aは、各々の光源2a〜2eから出射されたレーザ光を、LGビームに変換した後に、それぞれ記録層7a〜7eに集光して光スポットを形成する。そのため、光源2の発光を制御する図示しない光源制御手段によって、各々の記録層(7a〜7e)に対応する光源2(2a〜2e)の発光パターンを制御することで、多層記録媒体7にデータを書き込むことができる。
【0103】
ここで、光ヘッド1Aは、各々の光源2a〜2eから出射されたレーザ光を、フォトニック結晶デバイスからなる多重回転対称ビーム変換回路4AによってLGビームに変換することができる。そして、フォトニック結晶デバイスとすることで、波長分散を大きくすることができるため、LGビームのピーク半径を、各々の光源2a〜2eの発振波長によって大きく制御することができる。その結果、光ヘッド1Aは、対物レンズ5Aの軸上色収差を利用して、多層記録媒体7に集光される光スポットの間隔を十分に広く設定することができる。また、多重回転対称ビーム変換回路4Aによって変換されるLGビームの次数mは、大きいほど高次回折光(サイドローブ)は抑圧され、かつ、その形状が環状に近づくため、対物レンズ5Aによって、真円に近い形状の光スポットを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明における第一の実施の形態である光ヘッドの構成を示したブロック図である。
【図2】本発明における第一の実施の形態である光ヘッドの波長多重回路の構造を示す斜視図である。
【図3】本発明における第一の実施の形態である光ヘッドの多重ビーム変換回路の構造と、その端面及び内部の断面の構造を示す模式図である。
【図4】本発明における第一の実施の形態である光ヘッドの多重ビーム変換回路から出射する円環状ビームを模式的に示す模式図、(a)は、光ヘッドの多重ビーム変換回路によって、波長λ1〜λ5のガウシアンビームを変換して得られる円環状ビームを模式的に示す模式図、(b)は、円環状ビームの径方向の光強度とピークの位置を模式的に示す模式図である。
【図5】本発明における第一の実施の形態である光ヘッドの対物レンズに入射した円環状多重ビームから光スポットが形成される様子を説明するための説明図である。
【図6】本発明における第一の実施の形態である光ヘッドの対物レンズに入射した円環状ビームの光路を模式的に示した模式図である。
【図7】本発明における第二の実施の形態である光ヘッドの構成を示したブロック図である。
【図8】本発明における第二の実施の形態の2次のLGビームのエネルギ密度の分布を示す模式図、(a)は、LGビームの進行方向に直交する平面におけるLGビームのエネルギ密度を模式的に示す模式図、(b)は、LGビームの径方向におけるエネルギプロファイルを示すグラフである。
【図9】本発明における第二の実施の形態である光ヘッドの多重回転対称ビーム変換回路の構造を示す模式図、(a)は、多重回転対称ビーム変換回路と、その端面及び内部の構造を示す模式図、(b)は、(a)における多重回転対称ビーム変換回路のA−A断面における構造を示す模式図である。
【図10】本発明における第二の実施の形態である光ヘッドの多重回転対称ビーム変換回路によって、波長λ1〜λ5のガウシアンビームを変換して得られたLGビームのピークの位置を示す模式図である。
【図11】従来方式であるレンズシフト方式の光ヘッドの構成と、当該光ヘッド光学系を伝搬する状態を示す模式図、(a)は、対物レンズを光軸方向に位置制御する光ヘッドの構成を示す模式図、(b)は、リレーレンズを光軸方向に位置制御する光ヘッドの構成を示す模式図である。
【図12】青紫色(多ビーム)光ヘッドを搭載した多層光ディスク記録装置について、記録層の層間間隔と記録媒体上におけるクロストークの関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0105】
1、1A 光ヘッド(光記録装置)
2 光源
3 波長多重回路(光多重手段)
4 多重ビーム変換回路(多重ビーム変換手段)
4A 多重回転対称ビーム変換回路(多重回転対称ビーム変換手段)
5、5A 対物レンズ(集光手段)
6 ビーム変換手段
6A 回転対称ビーム変換手段
7 多層記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録層を備える多層記録媒体にデータの書き込みを行うための光を出射する光記録装置であって、
各々異なる波長の光を出射する複数の光源と、
この複数の光源から出射された光を、同一の光軸と各々異なる長さの半径とを有する円環状のビームに変換するビーム変換手段と、
このビーム変換手段によって変換された円環状のビームを、前記多層記録媒体の各々異なる深さの記録層に、前記波長ごとに集光する集光手段とを備えることを特徴とする光記録装置。
【請求項2】
前記ビーム変換手段が、
前記光源から出射された光を前記同一の光軸をもつ光に多重化する光多重手段と、
この光多重手段によって多重化された光を、前記波長ごとに異なる長さの半径を有する円環状のビームに変換する多重ビーム変換手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の光記録装置。
【請求項3】
複数の記録層を備える多層記録媒体にデータの書き込みを行うための光を出射する光記録装置であって、
各々異なる波長の光を出射する複数の光源と、
この複数の光源から出射された光を、同一の光軸を有し、かつ、前記波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームに変換する回転対称ビーム変換手段と、
この回転対称ビーム変換手段によって変換されたビームを、前記多層記録媒体の各々異なる深さの記録層に、前記波長ごとに集光する集光手段とを備えることを特徴とする光記録装置。
【請求項4】
前記回転対称ビーム変換手段が、
前記光源から出射された光を前記同一の光軸をもつ光に多重化する光多重手段と、
この光多重手段によって多重化された光を、前記波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームに変換する多重回転対称ビーム変換手段とを有することを特徴とする請求項4に記載の光記録装置。
【請求項5】
前記多重回転対称ビーム変換手段が、フォトニック結晶デバイスからなることを特徴とする請求項5に記載の光記録装置。
【請求項6】
複数の記録層を備える多層記録媒体にデータの書き込みを行うデータ書き込み方法であって、
複数の光源から各々異なる波長の光を出射する光出射ステップと、
この光出射ステップによって前記複数の光源から出射された光を、同一の光軸と各々異なる長さの半径とを有する円環状のビームに変換するビーム変換ステップと、
このビーム変換ステップによって変換された円環状のビームを、前記多層記録媒体の各々異なる深さの記録層に、前記波長ごとに集光する集光ステップとを含むことを特徴とするデータ書き込み方法。
【請求項7】
複数の記録層を備える多層記録媒体にデータの書き込みを行うデータ書き込み方法であって、
複数の光源から各々異なる波長の光を出射する光出射ステップと、
この光出射ステップによって前記複数の光源から出射された光を、同一の光軸を有し、かつ、前記波長ごとに異なる長さの半径を有する円環上にエネルギ密度のピークを有するとともに、当該光軸に対して回転対称なエネルギ密度分布を有するビームに変換する回転対称ビーム変換ステップと、
この回転対称ビーム変換ステップによって変換されたビームを、前記多層記録媒体の各々異なる深さの記録層に、前記波長ごとに集光する集光ステップとを含むことを特徴とするデータ書き込み方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−252619(P2006−252619A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−64566(P2005−64566)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】