説明

光走査装置及び光走査装置の製造方法

【課題】伝達部と固定台の接合強度を向上させて、駆動部で生成された振動が減衰すること無く、不良品の発生を低減させることができる光走査装置及び光走査装置の製造方を提供する。
【解決手段】ミラー12、梁部13、伝達部14、被固定部15が形成された基板10を、その被固定部15上の複数の溶接点15aをレーザー溶接により、固定台20に接合させる。被固定部15と固定台20を、被固定部15の中心、被固定部15の一端、被固定部15の他端の順に溶接することが、水平方向に関し、伝達部14の固定台20に対する傾きを防止することができることで好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー光等の光の走査を行う光走査装置及びこれを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1や特許文献2などに示されるように、振動するミラーによりレーザー光の走査を行う光走査装置が知られている。このような光走査装置50は、図7に示されるように、梁部13で回動可能に支持されたミラー12を、梁部13が接続される伝達部14上に接着された駆動部30で共振させて回動させることにより、ミラー12に入射する光を走査する構造のものである。伝達部14の一端には、被固定部15が形成されている。特許文献2の図19に示されるように、被固定部15は、固定台20にメカクランプにより固定されて、伝達部14が固定台11に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006―293116号公報
【特許文献2】WO2008/041585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、メカクランプにより、被固定部15が固定台11に固定されていたため、伝達部14と固定台11との接合強度が十分でなく、また製造された光走査装置50によって、前記接合強度にばらつきがあるという問題があった。このため、製造された光走査装置50によっては、駆動部30で生成された振動が大きく減衰してしまい、結果として、設計値通りの性能を確保することができずに不良品となってしまう製品が発生することがあった。
また、従来の固定方法では、モデルチェンジの度にメカクランプを行うための治具を新規に製作する必要があり、製造コストが増大してしまうという問題があった。更に、メカクランプ部によって、光走査装置50が大型化してしまうという問題もあった。
本発明は、上記問題を解決し、伝達部と固定台の接合強度を向上させて、駆動部で生成された振動の減衰を抑制し、不良品の発生を低減させることができる光走査装置及び光走査装置の製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、
光を反射するミラーと、
前記ミラーの両側を支持し、前記ミラーから離れる方向に延出する梁部と、
前記梁部が接続される伝達部と、
前記伝達部に振動を加え、前記ミラーを揺動させる駆動部と、
前記伝達部が固定される固定台とを有し、
前記伝達部の一端には、前記固定台に対して固定される被固定部が形成され、
前記伝達部は、前記被固定部と前記固定台とが溶接される複数の溶接点によって、前記固定台に固定されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、
被固定部と固定台との複数の溶接点は前記被固定部の長手方向に沿って直線状に配置され、前記溶接点の数は3以上の奇数であり、
前記複数の溶接点のうち、前記長手方向において中心に位置する中心溶接点は、ミラーの重心を通過し且つ前記長手方向に直交する直線上に位置し、
前記ミラーの重心を通過し且つ前記長手方向に直交する直線に対して、ミラー、梁部、伝達部、駆動部、及び被固定部が対称に形成されることを特徴とする。
これにより、被固定部の長手方向の中心を最初に溶接することが可能となり、このため、水平方向に関して、伝達部が固定台に対して傾いて接合されることを防止することが可能となる。また、前記ミラーの重心を通過し且つ前記長手方向に直交する直線を挟んで右側と左側で、ミラーの回動特性の異なりを防止することが可能となる。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、
複数の溶接点は、等間隔に設けられることを特徴とする。
これにより、溶接点の近接による熱応力の集中を防止し、水平方向に関して、伝達部が固定台に対して微少に傾いて接合されることを防止することが可能となる。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3に記載の発明において、
溶接点の直径をd、隣接する溶接点の中心間距離をλとした場合に、前記d及びλを下式1を満たすように設定したことを特徴とする。
0.21≦d/λ≦0.62…(式1)
これにより、被固定部と固定台とのせん断破壊応力の低下を防止するとともに、ジッタ特性の劣化を防止することが可能となる。
【0009】
本発明の光走査装置を製造する方法の発明である請求項5に記載の発明は、
前記ミラーの両側を支持し、前記ミラーから離れる方向に延出する梁部と、
前記梁部が接続される伝達部と、
前記伝達部に振動を加え、前記ミラーを揺動させる駆動部と、
前記伝達部が固定される固定台とを有し、
前記伝達部の一端には、前記固定台に対して固定される被固定部が形成された光走査装置の製造方法であって、
前記被固定部と前記固定台を、前記被固定部の中心、前記被固定部の一端、前記被固定部の他端の順に、溶接することを特徴とする。
これにより、水平方向に関して、伝達部が固定台に対して傾いて接合されることを防止することが可能となる。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、
被固定部の中心及び一端の溶接点の間、及び被固定部の中心及び他端の溶接点の間を溶接することを特徴とする。
これにより、溶接点の近接による熱の集中による熱応力の集中を防止し、微少に、基板が固定台に対して傾いてしまうことを防止することが可能となる。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の発明において、
被固定部の中心及び一端の溶接点の間、及び被固定部の中心及び他端の溶接点の間を複数の溶接点において溶接する場合には、被固定部の中心から遠い位置から溶接することを特徴とする。
これにより、レーザー溶接による被固定部の固定台に対する回転ズレを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、伝達部の一端に形成された被固定部を、その被固定部上の複数の溶接点をレーザー溶接により、固定台に接合させたので、被固定部と固定台が確実に固着され、伝達部とベース台の接合強度を向上させることが可能となる。このため、駆動部で生成された振動の減衰を抑制し、不良品の発生を低減させることが可能となる。
また、モデルチェンジの度に、メカクランプを行う治具を新規に製作する必要が無く、製造コストが増大することがない。更に、メカクランプにより光走査装置が大型化してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態を示す光走査装置の説明図である。
【図2】偏心位置を溶接した場合の光走査装置の説明図である。
【図3】溶接点の中心間距離と溶接点の直径の説明図である。
【図4】溶接点数と引張破壊強度及びせん断破壊強度との関係を表したグラフである。
【図5】溶接点数、合計熱量及びジッタとの関係を表した表、及び駆動波形を表した図である。
【図6】溶接点数a、溶接直径d、中心間距離λの関係を表した表である。
【図7】従来の光走査装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(光走査装置の説明)
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を示す。本発明の光走査装置40は、図1に示されるように、ミラー12、梁部13、伝達部14、被固定部15が形成された基板10を、その被固定部15上の複数の溶接点15aをレーザー溶接により、固定台20に接合させた構造である。以下、光走査装置40を構成する各部について説明する。
【0015】
ミラー12は、レーザー光等の光を反射する面である。ミラー12は、本実施形態では、円形状であるが、これに限定されず、四角形状であっても差し支えない。ミラー12の両側には、ミラー12から離れる方向に延出する梁部13が形成されている。この梁部13によって、ミラー12の両側が支持されている。伝達部14は四角形状であり、一辺から延出する2本の接続部14aが形成されている。2本の接続部14a間に、2本の梁部13がそれぞれ接続している。伝達部14の接続部14aが形成されている辺と反対側の一端には、被固定部15が接続されている。被固定部15は、前記伝達部14の一端に沿うように、横長である。本実施形態では、被固定部15は、長方形状となっている。本実施形態では、被固定部15は、その長手方向の中心で、伝達部14の一端と接続している。基板10は、ステンレスやチタン等の金属板材を、エッチング加工やプレス加工等の除去加工により、ミラー12、梁部13、伝達部14、被固定部15を形成して製造される。
【0016】
伝達部14上には、セラミックス製の圧電素子等で構成された駆動部30が、導電性接着剤で接着されている。前記導電性接着剤は、熱硬化性を有するエポキシ系、アクリル系、シリコン系等の合成樹脂製の基剤内に、銀、金、銅等で構成された円盤状の金属フィラーを分散させたものである。先ず、伝達部14上に導電性接着剤を塗布することで、接着剤層を形成する。次に、この接着剤層上に駆動部30を載置した後に押圧する。そして、前記接着剤層を熱硬化させることにより、駆動部30を伝達部14上に接着させている。
固定台20は、ステンレスやチタン等の金属材料で構成されている。
【0017】
このように、本発明によれば、伝達部14の一端に形成された被固定部15を、その被固定部15上の複数の溶接点15aをレーザー溶接により、固定台20に接合させたので、被固定部15と固定台20が確実に固着され、伝達部14とベース台20の接合強度を向上させることが可能となる。このため、駆動部30で生成された振動の減衰を抑制し、不良品の発生を低減させることが可能となる。また、モデルチェンジの度に、メカクランプを行う治具を新規に製作する必要が無く、製造コストが増大することがない。更に、メカクランプにより光走査装置50が大型化してしまうことを防止することができる。
【0018】
(溶接方法の説明)
本発明では、固定台20上に、基板10を載置した後に、まず、被固定部15の長手方向中心位置(図1に示される(1))をレーザー溶接する。もし、図2に示されるように、被固定部15の長手方向中心位置で無く、偏心した位置をレーザー溶接した場合には、レーザー溶接による金属の溶融・冷却に伴う熱応力が、被固定部15の長手方向に不均一に作用し、基板10が固定台20に対して溶接点15aが偏心した方向に傾いてしまう。この場合には、ミラー12が設計した位置からずれてしまうので、光走査装置40が不良品となってしまう。
【0019】
次に、被固定部15の長手方向の一端(図1に示される(2))をレーザー溶接する。この場合には、被固定部15の長手方向中心位置(図1に示される(1))が既に溶接されているので、基板10が固定台20に対して傾いてしまうことが無い。
【0020】
次に、被固定部15の長手方向の他端(図1に示される(3))をレーザー溶接する。このように、被固定部15の長手方向について、前回溶接した溶接点15aと反対側をレーザー溶接するのは、被固定部15の長手方向中心位置から一方に偏った側のみをレーザー溶接すると、被固定部15に作用する熱応力が蓄積し、微少に、基板10が固定台20に対して傾いてしまう恐れがあるからである。
【0021】
次に、既に溶接された溶接点15aの間をレーザー溶接して、基板10の固定台20への固定が完了する。図1に示される例では、(1)と(2)の間の(4)及び、(1)と(3)の間の(5)の位置をレーザー溶接する。このように、最初に被固定部15の中心を溶接した後に被固定部15の一端及び他端を溶接し、更に、既に溶接された溶接点15aの間をレーザー溶接することにしているのは、前回溶接した溶接点15aに近い溶接点15aを溶接すると、近接した溶接点15aの周囲でレーザー溶接による熱が集中してしまい、当該箇所に熱応力が集中し、微少に、基板10が固定台20に対して傾いてしまう恐れがあるからである。
【0022】
図1に示される例では、被固定部15の溶接点数は5点であるが、被固定部15を7点以上溶接する場合には、まず、被固定部15の中心を溶接した後に、被固定部15の一端及び他端を溶接する。次に、被固定部15の中心と一端及び被固定部15の中心と他端の間を複数溶接する。このように、被固定部15の溶接点数が5点であっても、被固定部15の溶接点数が7点以上であっても、先ず、被固定部15の中心をレーザー溶接した後は、被固定部15の中心から遠い位置(被固定部15の一端や他端)から溶接することにしている。この理由を以下に説明する。溶接点15aの溶融・冷却時の基板10の固定台20に対する回転は、新たに溶接した溶接点15aを支点に起こる。溶接点15aの溶融・冷却時に発生するモーメント(N=λ×f)が同一である場合において、1点目の溶接点15aと2点目の溶接点15aとの距離(λ)が近接している場合には、2点目の溶接点15aに大きな力(f)が作用し、基板10の固定台20に対する回転ズレが発生しやすくなる。そこで、2点目の溶接点15aを1点目の溶接点15aから離れた位置とすることで、2点目の溶接点15aに作用する力(f)を低減し、レーザー溶接による基板10(被固定部15)の固定台20に対する回転ズレを抑制することにしている。
【0023】
本発明では、レーザー溶接時に、基板10が固定台20に対して傾いてしまうことを防止するために、溶接点15aの位置や数及び光走査装置40の構造を以下のように設定している。
(1)被固定部15と固定台20との複数の溶接点15aは、被固定部15の長手方向に沿って直線状に配置され、溶接点15aの数を3以上の奇数とする。
これは、溶接点15aの数を偶数にすると、最初にレーザー溶接する位置が、被固定部15の長手方向の中心とならず、基板10が固定台20に対して傾いてしまうからである。
【0024】
(2)被固定部15の長手方向において中心に位置する中心溶接点15a(図1に示される(1))は、ミラー12の重心を通過し且つ被固定部15の長手方向に直交する直線上(図1に示される一点鎖線)に位置する。更に、ミラー12の重心を通過し且つ被固定部15の長手方向に直交する直線上(図1に示される一点鎖線)に対して、ミラー12、梁部13、伝達部14、駆動部30、及び被固定部15が対称に形成される。
これは、図1に示される一点鎖線に対して、ミラー12、梁部13、伝達部14、駆動部30、及び被固定部15が対称で無い場合には、前記一点鎖線を挟んで右側と左側で、ミラー12の回動特性が異なってしまい、光走査装置40を作動させてミラー12で光を走査させる場合に、所望の位置に光を走査できなくなってしまうからである。
【0025】
(3)被固定部15の溶接点15aを等間隔に設ける。
これは、溶接点15aを等間隔にしなかった場合には、近接した溶接点15aの周囲でレーザー溶接による熱が集中してしまい、当該箇所に熱応力が集中し、微少に、基板10が固定台20に対して傾いてしまう恐れがあるからである。
【0026】
(4)図3に示されるように、溶接点15aの表面直径をd、隣接する溶接点15aの中心間距離をλとした場合に、前記d及びλを、下式1を満たすように設定する。
0.21≦d/λ≦0.62…(式1)
なお、本実施形態では、図3に示される被固定部15の長手寸法は5mmであり、幅寸法は1mmである。
また、本実施形態では、レーザー溶接の条件を下記のように設定した。
レーザーの照射パワー:1kW
レーザーの照射時間:1msec(Slope時間を含む)
Slope時間:0.3msec
【0027】
前記d及びλを、下式1を満たすように設定した理由を以下に詳細に説明する。図4に示されるように、引張破壊強度は全ての溶接点からの寄与があるため、溶接点数を増加させるにつれて、被固定部15と固定台20との水平方向の引張破壊強度は向上する。一方で、被固定部15と固定台20とのせん断破壊応力は、溶接点数が5を超えると低下する。換言すれば、個々の溶接点が耐えられる力は、溶接点数が5を超えると低下する。これは、被固定部15の長手方向の長さは一定であるため、溶接点数を増加させると溶接点15a間の距離が近接し、熱影響により、金属溶融後の冷却速度が緩慢となり、溶接点15a間の距離が離れている場合と比べて、溶接箇所の金属組織が変化するからであると考えられる。
【0028】
被固定部15と固定台20との水平方向の引張破壊強度が高いほうが、駆動部30で生成された振動の減衰が抑制されるので好ましい。一方で、被固定部15と固定台20とのせん断破壊応力が低いと、ある溶接点15aでの被固定部15と固定台20の接合が剥がれやすくなる。もし、ある溶接点15aで被固定部15と固定台20の接合が剥がれると、被固定部15と固定台20との接合強度が、図1に示される一点鎖線を挟んで左右で異なるようになり、ミラー12で所望の位置に光を走査できなくなってしまう。従って、本実施形態では、被固定部15と固定台20とのせん断破壊応力が低下しないように、溶接点数を5点に設定している。
【0029】
図5の(A)に示されるように、被固定部15での溶接点数5点から9点に増加させると、ジッタ特性が悪化する。ここで、ジッタとは、図5の(B)に示される時間T1の標準偏差(σ)である。なお、時間T1とは、ミラー12の光学振れ角が有る一定角度以上にある時間である。理想的には、ミラー12が毎回同じ周期で走査が行われれば、ジッタは0になる。しかし、実際には、ミラー12の走査周期は、走査毎に微妙に異なる。即ち、ジッタは走査周期の揺らぎを示すので、ジッタが小さいほど走査が安定していると言える。図5の(B)に示される例では、ミラー12の受光センサー位置に相当する光学振れ角が20°以上で最大振れ角の25°未満の時間である。図5の(B)に示される例では、32000回測定した場合の標準偏差(σ)をジッタとして表している。図5の(B)に示されるように、溶接点数が5(合計熱量6.5J)と溶接点数が9(合計熱量5.3J)を比較すると、溶接点数が5のほうが、合計熱量が多いにも関わらず、ジッタ特性については溶接点数が5のほうが、溶接点数が9よりも良好となった。この理由もまた、溶接点数の増加に伴う溶接点15a間の距離の近接に起因する熱影響によるものと考えられる。つまり、溶接点15aの近接又は重なりを防ぐことで、ジッタ特性の劣化を防止することが可能となる。
【0030】
定量的に溶接点数a、溶接直径d、中心間距離λを決定するために、本発明の発明者は、図6の表に示されるように、溶接点数a、溶接直径d、中心間距離λの関係を調べた。溶接直径dに中心間距離λを除した値(d/λ)は、溶接点15aの近接又は重なりと関連がある。本実施形態では、最適な溶接点数は5であるので、溶接点数が5と決定されるようなd/λは式(1)となる。
本実施形態と異なる長手寸法の被固定部15であっても、式(1)を満たす溶接直径d、中心間距離λを決定し、更に、溶接点数aを決定すれば、被固定部15と固定台20とのせん断破壊応力の低下を防止するとともに、ジッタ特性の劣化を防止することが可能となる。
【0031】
なお、基板10と固定台20との金属を同種の材料で構成することが好ましい。これは、基板10と固定台20を同種の材料で構成した場合には、金属の溶融温度が同一となり、溶接部での密着度が、基板10と固定台2を異種材料とした場合に比べて向上し、被固定部15と固定台20との接合強度が増すからである。これにより、駆動部30で生成された振動の減衰を抑制することができ、より光走査装置40の特性を向上させることが可能となる。
【0032】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光走査装置及び光走査装置の製造方法もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0033】
10 基板
12 ミラー
13 梁部
14 伝達部
14a 接続部
15 被固定部
15a 溶接点
20 固定台
30 駆動部
40 本発明の光走査装置
50 従来の光走査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を反射するミラーと、
前記ミラーの両側を支持し、前記ミラーから離れる方向に延出する梁部と、
前記梁部が接続される伝達部と、
前記伝達部に振動を加え、前記ミラーを揺動させる駆動部と、
前記伝達部が固定される固定台とを有し、
前記伝達部の一端には、前記固定台に対して固定される被固定部が形成され、
前記伝達部は、前記被固定部と前記固定台とが溶接される複数の溶接点によって、前記固定台に固定されていることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
被固定部と固定台との複数の溶接点は前記被固定部の長手方向に沿って直線状に配置され、前記溶接点の数は3以上の奇数であり、
前記複数の溶接点のうち、前記長手方向において中心に位置する中心溶接点は、ミラーの重心を通過し且つ前記長手方向に直交する直線上に位置し、
前記ミラーの重心を通過し且つ前記長手方向に直交する直線に対して、ミラー、梁部、伝達部、駆動部、及び被固定部が対称に形成されることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
複数の溶接点は、等間隔に設けられることを特徴とする請求項2に記載の光走査装置。
【請求項4】
溶接点の直径をd、隣接する溶接点の中心間距離をλとした場合に、前記d及びλを下式1を満たすように設定したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の光走査装置。
0.21≦d/λ≦0.62…(式1)
【請求項5】
前記ミラーの両側を支持し、前記ミラーから離れる方向に延出する梁部と、
前記梁部が接続される伝達部と、
前記伝達部に振動を加え、前記ミラーを揺動させる駆動部と、
前記伝達部が固定される固定台とを有し、
前記伝達部の一端には、前記固定台に対して固定される被固定部が形成された光走査装置の製造方法であって、
前記被固定部と前記固定台を、前記被固定部の中心、前記被固定部の一端、前記被固定部の他端の順に、溶接することを特徴とする光走査装置の製造方法。
【請求項6】
被固定部の中心及び一端の溶接点の間、及び被固定部の中心及び他端の溶接点の間を溶接することを特徴とする請求項5に記載の光走査装置の製造方法。
【請求項7】
被固定部の中心及び一端の溶接点の間、及び被固定部の中心及び他端の溶接点の間を複数の溶接点において溶接する場合には、被固定部の中心から遠い位置から溶接することを特徴とする請求項6に記載の光走査装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−203394(P2011−203394A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69073(P2010−69073)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】