説明

光走査装置及び画像表示装置

【課題】隣接する画素間のクロストークの発生を低減でき、高解像度な画像を表示するための光走査装置等を提供すること。
【解決手段】画像信号に応じたビーム光を走査させる光走査装置であって、ビーム光を供給する光源部と、光源部からのビーム光を被照射領域において第1の方向と、第1の方向に略直交する第2の方向へ走査させる走査部と、を有し、走査部は、第1の方向へビーム光を走査させる周波数が、第2の方向へビーム光を走査させる周波数に比べて高くなるように駆動され、光源部は、一つの画素を形成するためのビーム光の点灯時間tonが、画像信号に応じて形成される画素の第1の方向の長さPxから、ビーム光により被照射領域に形成されるスポットSPの第1の方向の長さdxを差し引いた距離においてビーム光を走査させる時間以下となるように駆動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光走査装置及び画像表示装置、特に、画像信号に応じて変調されたレーザ光を走査させることで画像を表示するための光走査装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を走査させることで画像を表示する画像表示装置には、レーザ光を走査させる光走査装置が用いられる。光走査装置は、画像信号に応じて変調されたレーザ光を二次元方向へ走査させる。画像表示装置は、光走査装置からのレーザ光をスクリーン等に入射させることにより画像を表示する。レーザ光を走査させることで画像を表示する画像表示装置の技術としては、例えば、特許文献1に提案されるものがある。
【0003】
【特許文献1】特開平11−295630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レーザ光は、スクリーン等の被照射領域にスポットを形成する。スポットの中心位置が画素の領域に入射したタイミングを用いてレーザ光の変調を行うと、一の画素を表示するためのレーザ光のスポットが、その画素に隣接する画素の領域にまで入り込む場合がある。このため、従来の技術によると、画像信号のアドレス情報とは異なる位置に変調光が入射することで画像がぼける、いわゆるクロストークが発生する場合があるという問題がある。クロストークを生じると、画像の輪郭が不明瞭となる等により、高解像度な画像を表示することが困難になる。本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、隣接する画素間のクロストークの発生を低減でき、高解像度な画像を表示するための光走査装置、及び画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明によれば、画像信号に応じたビーム光を走査させる光走査装置であって、ビーム光を供給する光源部と、光源部からのビーム光を被照射領域において第1の方向と、第1の方向に略直交する第2の方向へ走査させる走査部と、を有し、走査部は、第1の方向へビーム光を走査させる周波数が、第2の方向へビーム光を走査させる周波数に比べて高くなるように駆動され、光源部は、一つの画素を形成するためのビーム光の点灯時間が、画像信号に応じて形成される画素の第1の方向の長さから、ビーム光により被照射領域に形成されるスポットの第1の方向の長さを差し引いた距離においてビーム光を走査させる時間以下となるように駆動されることを特徴とする光走査装置を提供することができる。
【0006】
スポットの第1の方向の長さとしては、例えば、ビーム光のピーク強度に対して略半分の強度にまでビーム光が減衰する位置間の長さを設定することができる。第1の方向についての画素の長さ及びスポットの長さから、一つの画素を形成するためのビーム光の最大点灯時間が決定される。各画素に対する最大点灯時間をこのようにして決定することにより、一の画素を表示するためのビーム光が、その画素に隣接する画素の領域にまで入り込むことを防止できる。各画素の領域内にレーザ光をとどめることにより、第1の方向について隣接する画素間のクロストークの発生を低減させることが可能となる。これにより、隣接する画素間のクロストークの発生を低減でき、高解像度な画像を表示するための光走査装置を得られる。
【0007】
また、本発明の好ましい態様によれば、光源部は、画像信号に応じた階調を表現するように駆動され、一つの画素の階調を表現するように点灯させたビーム光が、最小階調を表現するための強度以上の強度にまで減衰したタイミングで画素同士の境界を通過するように駆動されることが望ましい。各画素に対するビーム光の点灯時間を上記の最大点灯時間以下とすることにより、画素間のクロストークの発生を低減できる。これに対して、各画素に対するビーム光の点灯時間を短くしすぎると、画素同士の境界ごとにビーム光の強度が極度に低下する部分を生じてしまう。画素同士の境界ごとに生じる暗い部分が観察者に認識される場合、高品質な画像を表示することが困難となる。そこで、各画素に対するビーム光の最小点灯時間を本態様により決定することで、画素同士の境界を目立たなくすることが可能となる。これにより、シームレスで高品質な画像を表示するための光走査装置を得られる。
【0008】
また、本発明の好ましい態様によれば、光源部は、画像信号に応じて振幅が制御された駆動信号に応じて駆動されることが望ましい。これにより、振幅変調を用いてビーム光を変調することができる。
【0009】
また、本発明の好ましい態様としては、光源部は、画像信号に応じてパルス幅が制御された駆動信号に応じて駆動されることが望ましい。これにより、パルス幅変調(Pulse Width Modulation、以下、「PWM」という。)を用いてビーム光を変調することができる。
【0010】
また、本発明の好ましい態様としては、光源部は、第1の方向における画素の中心位置をビーム光が走査するタイミングを中心としてパルス幅が設定されたパルス信号に応じて駆動されることが望ましい。PWMでは、ビーム光を点灯させるパルス幅を画像信号に応じて変化させる。画素の中心位置をビーム光が走査するタイミングを中心としてパルス幅を設定することにより、第1の方向についてビーム光を往復させる場合であっても、各画素に対するビーム光の入射タイミングを揃えることが可能となる。各画素に対するビーム光の入射タイミングを揃えることで、第1の方向についての画素の位置のずれを低減することが可能となる。これにより、ずれが少なくさらに高品質な画像を表示するための光走査装置を得られる。
【0011】
また、本発明の好ましい態様としては、光源部は、被照射領域において、第1の方向より第2の方向へ長い形状のスポットを形成することが望ましい。第1の方向へ短い形状のスポットを形成することにより、クロストークの発生を低減させるとともに、一の画素に対するビーム光の点灯時間を増大させることが可能となる。また、第2の方向へ長い形状のスポットを形成することにより、第2の方向についての画素間の隙間を少なくすることが可能となる。これにより、シームレス、かつクロストークが少なく明るい画像を表示するための光走査装置を得られる。
【0012】
さらに、本発明によれば、光走査装置からの光により画像を表示する画像表示装置であって、光走査装置は、上記の光走査装置であることを特徴とする画像表示装置を提供することができる。上記の光走査装置を備えることにより、隣接する画素間のクロストークの発生を低減でき、高解像度な画像を表示することが可能である。これにより、隣接する画素間のクロストークの発生を低減でき、高解像度な画像を表示することが可能な画像表示装置を得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る画像表示装置100の概略構成を示す。画像表示装置100は、スクリーン110の一方の面にレーザ光を供給し、スクリーン110の他方の面から出射される光を観察することで画像を鑑賞する、いわゆるリアプロジェクタである。画像表示装置100に設けられた光走査装置120は、画像信号に応じたレーザ光を走査させる。光走査装置120は、レーザ装置101、照明光学系102、及び走査部200を有する。画像表示装置100は、光走査装置120からのレーザ光により画像を表示する。
【0015】
図2は、レーザ装置101の概略構成を示す。レーザ装置101は、ビーム光である赤色レーザ光(以下、「R光」という。)を供給するR光用光源部121Rと、ビーム光である緑色レーザ光(以下、「G光」という。)を供給するG光用光源部121Gと、ビーム光である青色レーザ光(以下、「B光」という。)を供給するB光用光源部121Bと、を有する。
【0016】
各色光用光源部121R、121G、121Bは、それぞれ画像信号に応じて変調されたレーザ光を供給する。レーザ装置101には、2つのダイクロイックミラー124、125が設けられている。ダイクロイックミラー124は、R光を透過し、G光を反射する。ダイクロイックミラー125は、R光及びG光を透過し、B光を反射する。R光用光源部121RからのR光は、ダイクロイックミラー124、125を透過した後、レーザ装置101から出射する。
【0017】
G光用光源部121GからのG光は、ダイクロイックミラー124で反射することにより、光路が略90度折り曲げられる。ダイクロイックミラー124で反射したG光は、ダイクロイックミラー125を透過した後、レーザ装置101から出射する。B光用光源部121BからのB光は、ダイクロイックミラー125で反射することにより、光路が略90度折り曲げられる。ダイクロイックミラー125で反射したB光は、レーザ装置101から出射する。レーザ装置101は、このようにして、画像信号に応じて変調されたR光、G光、B光を供給する。
【0018】
図1に戻って、レーザ装置101からのレーザ光は、照明光学系102を経た後走査部200へ入射する。走査部200からの光は、投写光学系103を経た後、反射部105に入射する。照明光学系102及び投写光学系103は、レーザ装置101からのレーザ光をスクリーン110上に結像させる。反射部105は、走査部200からのレーザ光をスクリーン110の方向へ反射する。筐体107は、筐体107内部の空間を密閉する。
【0019】
スクリーン110は、筐体107の所定の一面に設けられている。スクリーン110は、画像信号に応じて変調されたレーザ光を透過させる透過型スクリーンである。反射部105からの光は、スクリーン110の、筐体107の内部側の面から入射した後、観察者側の面から出射する。観察者は、スクリーン110から出射する光を観察することで、画像を鑑賞する。
【0020】
図3は、走査部200の概略構成を示す。走査部200は、反射ミラー202と、反射ミラー202の周囲に設けられた外枠部204とを有する、いわゆる二重ジンバル構造をなしている。外枠部204は、回転軸であるトーションばね206によって、不図示の固定部に連結されている。外枠部204は、トーションばね206の捩れと、元の状態への復元とを利用して、トーションばね206を中心として回動する。反射ミラー202は、トーションばね206に略直交する回転軸であるトーションばね207によって、外枠部204に連結されている。反射ミラー202は、レーザ装置101からのレーザ光を反射する。反射ミラー202は、高反射性の部材、例えばアルミニウムや銀等の金属薄膜を形成することにより構成できる。
【0021】
反射ミラー202は、外枠部204がトーションばね206を中心として回動することにより、スクリーン110においてレーザ光をY方向(図1参照)へ走査させるように変位する。また、反射ミラー202は、トーションばね207の捩れと、元の状態への復元とを利用して、トーションばね207を中心として回動する。反射ミラー202は、トーションばね207を中心として回動することにより、反射ミラー202で反射したレーザ光をX方向へ走査するように変位する。このように、走査部200は、レーザ装置101からのレーザ光をX方向とY方向へ繰り返し走査させる。
【0022】
図4は、走査部200を駆動させるための構成を説明するものである。反射ミラー202がレーザ光を反射させる側を表側とすると、第1の電極301、302は、外枠部204の裏側の空間であって、トーションばね206に関して略対称な位置にそれぞれが設けられている。第1の電極301、302に電圧を印加すると、第1の電極301、302と、外枠部204との間には、電位差に応じた所定の力、例えば静電力が発生する。外枠部204は、第1の電極301、302に交互に電圧を印加することにより、トーションばね206を中心として回動する。
【0023】
トーションばね207は、詳細には、第1のトーションばね307と第2のトーションばね308とで構成されている。第1のトーションばね307と第2のトーションばね308との間には、ミラー側電極305が設けられている。ミラー側電極305の裏側の空間には、第2の電極306が設けられている。第2の電極306に電圧を印加すると、第2の電極306とミラー側電極305との間には、電位差に応じた所定の力、例えば静電力が発生する。第2の電極306のいずれにも同位相の電圧を印加すると、反射ミラー202は、トーションばね207を中心として回動する。走査部200は、このようにして反射ミラー202を回動させることで、レーザ光を二次元方向へ走査させる。走査部200は、例えば、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術により作成することができる。
【0024】
走査部200は、例えば画像の1フレーム期間において、垂直方向であるY方向へ1回レーザ光を走査させる間に、水平方向であるX方向について複数回レーザ光を往復させるように反射ミラー202を変位させる。X方向を第1の方向、Y方向を第1の方向に略直交する第2の方向とすると、走査部200は、第1の方向へレーザ光を走査する周波数が、第2の方向へレーザ光を走査する周波数に比べて高くなるように駆動される。なお、X方向へのレーザ光の走査を高速に行うために、走査部200は、トーションばね207を中心として反射ミラー202を共振させる構成とすることが望ましい。反射ミラー202を共振させることにより、反射ミラー202の変位量を増大させることができる。反射ミラー202の変位量を増大させることにより、走査部200は、少ないエネルギーで効率良くレーザ光を走査することができる。なお、反射ミラー202は、共振を用いず駆動することとしても良い。
【0025】
なお、走査部200は、電位差に応じた静電力によって駆動する構成に限られない。例えば、圧電素子の伸縮力や電磁力を用いて駆動する構成であっても良い。走査部200は、X方向にレーザ光を走査する反射ミラーと、Y方向にレーザ光を走査する反射ミラーとを設ける構成としても良い。さらに、走査部200は、ガルバノミラーを用いる構成に限らず、複数のミラー片を有する回転体を回転させるポリゴンミラーを用いても良い。
【0026】
図5は、スクリーン110上の被照射領域におけるレーザ光のスポットSPの形状、及び一つの画素を形成するためのレーザ光の点灯時間について説明するものである。ここでは、R、G、Bのうちの一つの色光に着目して説明を行うものとする。図5では、スポットSPを形成させるレーザ光が、画素Pの領域上をプラスX方向である右方向へ走査する状態を表している。
【0027】
例えば、スポットSP中のレーザ光の強度分布は、X方向及びY方向について、スポットSPの中心位置をピークとするガウス分布に略一致しているとする。スポットSPの外縁は、スポットSPにおけるレーザ光のピーク強度に対して略半分の強度にまで減衰するラインとすることができる。スポットSPは、第1の方向であるX方向の長さdxを短軸、第2の方向であるY方向への長さdyを長軸とする楕円形状を有している。各色光用光源部は、被照射領域において、第1の方向より第2の方向へ長い形状のスポットSPを形成する。スポットSPの整形には、例えば、レンズやプリズムによる屈折作用を用いることができる。
【0028】
画素Pを表示するためにレーザ光を点灯させるタイミングT1におけるスポットSPは、画素Pの左側境界線blとスポットSPの左端とが略一致している。その後レーザ光を消灯させるタイミングT2におけるスポットSPは、画素Pの右側境界線brとスポットSPの右端とが略一致している。タイミングT1におけるスポットSPとタイミングT2におけるスポットSPとの間隔ΔSは、画素PのX方向の長さPxからスポットSPのX方向の長さdxを差し引いた距離に略一致する。
【0029】
タイミングT1とタイミングT2の間の時間tonは、画素Pを形成するためのレーザ光の点灯時間である。点灯時間tonは、画素P上をレーザ光が走査する時間tpよりも短い。また、各色光用光源部は、点灯時間tonが、画素Pの長さPxからスポットSPの長さdxを差し引いた距離においてレーザ光を走査させる時間と略一致するように駆動される。
【0030】
図6は、光源駆動パルス信号、及び各画素におけるレーザ光の強度について説明するものである。ここでは、各画素にて最大階調を表現するようにレーザ光を変調させるものとして説明を行う。光源駆動パルス信号は、図5を用いて説明した点灯時間tonにてレーザ光を点灯させるものである。タイミングT1において、レーザ光は、タイミングT1にてピークとなる強度分布L1をとる。タイミングT2においても同様に、レーザ光は、タイミングT2にてピークとなる強度分布L2をとる。観察者には、点灯時間tonの間走査しているレーザ光の強度を積分させた強度のレーザ光が認識される。
【0031】
図7は、画素P同士の境界上におけるレーザ光の強度について説明するものである。一の画素PについてタイミングT2でレーザ光を消灯させ、さらにタイミングT1’で次の画素Pに対してレーザ光の点灯を開始したとする。タイミングT2では、強度分布L2のピーク強度Imaxに、次の画素を表示するために点灯させるレーザ光の強度が加算される。画素P同士の境界上を通過するタイミングTbでは、強度分布L2の強度Imax/2と強度分布L1’の強度Imax/2とが積分され、ピーク強度Imaxとなる。タイミングT1’では、強度分布L1’のピーク強度Imaxに、前の画素に対して点灯していたレーザ光の強度が加算される。よって、被照射領域には、タイミングTbごとに減衰するようなエンベロープの強度分布L0でレーザ光が供給される。
【0032】
例えば、画素P上を通過する時間tpを全てレーザ光の点灯時間としたとすると、強度分布L0は略直線状となる。略直線状の強度分布となる上、一の画素Pを表示するためのレーザ光のスポットが隣接する画素の領域にまで入り込むと、クロストークが生じ易くなる。これに対して、本実施例によると、一の画素Pを形成するための強度Imax/2以上のレーザ光が、その画素Pに隣接する画素Pの領域にまで入り込むことを防止できる。強度Imax/2以上のレーザ光を各画素の領域内にとどめることにより、画素P間のクロストークの発生を低減させることが可能となる。これにより、隣接する画素間のクロストークの発生を低減でき、高解像度な画像を表示することができるという効果を奏する。
【0033】
また、被照射領域において、第1の方向であるX方向より第2の方向であるY方向へ長い形状のスポットSPを形成することにより、クロストークの発生を低減させるとともに、一の画素に対するレーザ光の点灯時間tonを増大させることが可能となる。また、Y方向へ長い形状のスポットSPを形成することにより、Y方向についての画素間の隙間を少なくすることが可能となる。これにより、シームレス、かつクロストークが少なく明るい画像を表示することができる。
【0034】
図8は、画像表示装置100を制御するためのブロック構成を示すものである。画像信号入力部711は、入力端子から入力された画像信号の特性補正や増幅等を行う。例えば、画像信号入力部711は、アナログ形式の画像信号を増幅することにより、アナログ形式の光源変調用強度信号を出力する。この他、画像信号入力部711は、ディジタル形式の画像信号をアナログ形式の信号に変換する構成としても良い。同期/画像分離部712は、画像信号入力部711からの信号を、R光、G光、B光のそれぞれについての画像情報信号、垂直同期信号、水平同期信号に分離し、制御部713へ出力する。制御部713のうちの画像処理部721は、画像情報をフレームごとの情報に分けて、フレームメモリ714へ出力する。フレームメモリ714は、画像処理部721からの画像信号をフレーム単位で格納する。
【0035】
制御部713のうちの走査制御部723は、垂直同期信号、水平同期信号に基づいて、走査部200を駆動させる駆動信号を生成する。走査駆動部715は、制御部713からの駆動信号に応答して走査部200を駆動させる。水平角度センサ716は、スクリーン110にてレーザ光をX方向へ走査させる反射ミラー202(図3参照)の振り角を検出する。垂直角度センサ717は、スクリーン110にてレーザ光をY方向へ走査させる反射ミラー202の振り角を検出する。信号処理部718は、垂直角度センサ717の変位からフレーム開始信号F_Sync、水平角度センサ716の変位からライン開始信号L_Syncをそれぞれ生成し、制御部713へ出力する。
【0036】
制御部713は、フレーム開始信号F_Sync、ライン開始信号L_Syncから演算された線速度、及び垂直同期信号、水平同期信号に基づいて、画素タイミングクロックを生成する。画素タイミングクロックは、レーザ光が各画素上を通るタイミングを知るための信号であって、画像信号に応じて変調されたレーザ光を正確な位置に入射させるためのものである。制御部713は、さらに画素タイミングクロックから、光源駆動パルス信号を生成する。光源駆動パルス信号により、画像信号によって被照射領域に形成される画素Pの長さPxからスポットSPの長さdxを差し引いた距離に略一致する間隔ΔSにおいてレーザ光を点灯させることが可能となる。レーザ光の点灯時間ton(図5参照)は、ΔSの長さを、各画素Pにおけるレーザ光の線速度で除算することにより求められる。
【0037】
R光源駆動部732Rは、光源制御部722によりフレームメモリ714から読み出されるR光についての画像情報信号、及び光源駆動パルス信号に基づいて、R光用光源部121Rを駆動させる。R光源駆動部732Rは、光源駆動パルス信号に応じてR光用光源部121RのON/OFFを制御する。また、R光源駆動部732Rは、画像情報信号に応じて振幅が変調された駆動信号に応じてR光の変調を行う。G光源駆動部732Gも、R光源駆動部732Rと同様にして、G光用光源部121Gを駆動させる。B光源駆動部732Bも、R光源駆動部732Rと同様にして、B光用光源部121Bを駆動させる。各色光用光源部121R、121G、121Bは、画像信号に応じて振幅が制御された駆動信号に応じて駆動される。よって、図9に示すように、画像信号に応じて強度が変調されたレーザ光が供給される。
【0038】
本実施例では、点灯時間tonが、画素Pの長さPxからスポットSPの長さdxを差し引いた距離においてレーザ光を走査させる時間と略一致するような光源駆動パルス信号を生成している。かかる点灯時間tonを最大点灯時間とすることで、一の画素を表示するためのレーザ光が、その画素に隣接する画素の領域にまで入り込むことを防止できる。さらに、点灯時間tonは、画素Pの長さPxからスポットSPの長さdxを差し引いた距離においてレーザ光を走査させる時間以下となるように駆動することとしても良い。各画素に対するレーザ光の点灯時間を最大点灯時間以下とすることにより、画素間のクロストークの発生を低減できる。これに対して、各画素に対するレーザ光の点灯時間を短くしすぎると、画素同士の境界ごとにレーザ光の強度が極度に低下する部分を生じてしまう。画素同士の境界ごとに生じる暗い部分が観察者に認識される場合、高品質な画像を表示することが困難となる。
【0039】
図10は、一の画素を表示するためのレーザ光の最小点灯時間について説明するものである。例えば、一の画素に対してレーザ光を消灯させるタイミングT2を、画素P同士の境界上を通過するタイミングTbで最小階調Iminにまで減衰するように決定できる。この場合、タイミングTbでは、強度分布L2の強度Iminと強度分布L1’の強度Iminとが積分される。画素P同士の境界において最低でも最小階調Iminの略2倍の強度を確保し、画素同士の境界を目立たなくすることができる。このようにして、一の画素を表示するための最小点灯時間を決定できる。一の画素の階調を表現するように点灯させたレーザ光が最小階調を表現するための強度以上の強度にまで減衰したタイミングで画素同士の境界を通過させることで、シームレスで高品質な画像を表示することが可能となる。
【0040】
画像信号に応じた変調は、振幅変調のほか、PWMを用いることとしても良い。PWMを用いる場合、図11に示すように、上記の点灯時間tonを最大パルス幅とする光源駆動最大パルス信号が生成される。そして、光源駆動最大パルス信号のパルス幅を最大階調として、画像情報信号に応じてパルス幅が変調された光源駆動パルス信号が生成される。各光源駆動部732R、732G、732Bは、このようにして生成された光源駆動パルス信号に応じてレーザ光の変調を行う。各色光用光源部は、画像信号に応じてパルス幅が制御された光源駆動パルス信号に応じて駆動される。
【0041】
図12は、光源駆動パルス信号のタイミングについて説明するものである。PWMでは、レーザ光を点灯させるパルス幅を画像信号に応じて変化させる。例えば、立ち上がりを光源駆動最大パルス信号と同時させた光源駆動パルス信号を生成したとする。この場合、レーザ光を右方向へ走査させる間は画素の左側、レーザ光を右方向へ走査させる間は画素の右側へスポットが片寄ることとなる。このように、最大パルスの立ち上がりタイミング、立ち下がりタイミングのいずれか一方に片寄ったパルスを生成すると、X方向についてのレーザ光の往路と復路とで画素のずれを生じてしまうことになる。
【0042】
そこで、図12に示すように、光源駆動パルス信号の各パルスP1、P2、P3は、第1の方向であるX方向における画素の中心位置をレーザ光が走査するタイミングTcを中心としてパルス幅が設定される。各色光用光源部は、X方向における画素の中心位置をレーザ光が走査するタイミングTcを中心としてパルス幅が設定された光源駆動部パルス信号に応じて駆動される。画素の中心位置をレーザ光が走査するタイミングTcを中心としてパルス幅を設定することにより、第1の方向についてレーザ光を往復させる場合に、各画素に対するレーザ光の入射タイミングを揃えることが可能となる。各画素に対するレーザ光の入射タイミングを揃えることで、X方向についての画素の位置のずれを低減することが可能となる。これにより、ずれが少なくさらに高品質な画像を表示することができる。
【0043】
なお、スポットSP中のレーザ光の強度分布がガウス分布とは異なる場合も、本実施例と同様にしてレーザ光の点灯時間を設定することとしても良い。この場合、スポットSP中のレーザ光の強度分布に応じて、スポットSPの外縁を、ピーク強度に対して略半分の強度にまで減衰するライン以外としても良い。本実施例を適宜応用することにより、光走査装置120からのレーザ光の特性に応じてクロストークの発生を低減させることができる。
【実施例2】
【0044】
図13は、本発明の実施例2に係る画像表示装置1700の概略構成を示す。画像表示装置1700は、観察者側に設けられたスクリーン1705にレーザ光を供給し、スクリーン1705で反射する光を観察することで画像を鑑賞する、いわゆるフロント投写型のプロジェクタである。画像表示装置1700は、上記実施例1と同様に、光走査装置120を有する。上記実施例1と同一の部分には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。光走査装置120からのレーザ光は、投写光学系103を透過した後、スクリーン1705に入射する。本実施例の場合も、隣接する画素間のクロストークの発生を低減でき、高解像度な画像をスクリーン1705に表示することができる。
【0045】
なお、上記の実施例において、各色光用光源部はレーザ光を供給する構成としているが、ビーム状の光を供給可能な構成であれば、これに限られない。例えば、各色光用光源部は、発光ダイオード素子(LED)等の固体発光素子を用いる構成としても良い。また、本発明の光走査装置は、画像表示装置に用いる以外に、例えば、レーザプリンタ等の、レーザ光を走査させる電子機器に用いることとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0046】
以上のように、本発明に係る光走査装置は、画像信号に応じて光を走査させる画像表示装置に用いる場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施例1に係る画像表示装置の概略構成を示す図。
【図2】レーザ装置の概略構成を示す図。
【図3】走査部の概略構成を示す図。
【図4】走査部を駆動させるための構成を説明する図。
【図5】スポットの形状、及びレーザ光の点灯時間について説明する図。
【図6】光源駆動パルス信号、及びレーザ光の強度について説明する図。
【図7】画素同士の境界上におけるレーザ光の強度について説明する図。
【図8】画像表示装置を制御するためのブロック構成を示す図。
【図9】振幅変調について説明する図。
【図10】レーザ光の最小点灯時間について説明する図。
【図11】PWMについて説明する図。
【図12】光源駆動パルス信号のタイミングについて説明する図。
【図13】本発明の実施例2に係る画像表示装置の概略構成を示す図。
【符号の説明】
【0048】
100 画像表示装置、101 レーザ装置、102 照明光学系、103 投写光学系、105 反射部、107 筐体、110 スクリーン、120 光走査装置、200 走査部、121R R光用光源部、121G G光用光源部、121B B光用光源部、124、125 ダイクロイックミラー、202 反射ミラー、204 外枠部、206 トーションばね、207 トーションばね、301、302 第1の電極、305 ミラー側電極、306 第2の電極、307 第1のトーションばね、308 第2のトーションばね、P 画素、SP スポット、711 画像信号入力部、712 同期/画像分離部、713 制御部、714 フレームメモリ、715 走査駆動部、716 水平角度センサ、717 垂直角度センサ、718 信号処理部、721 画像処理部、722 光源制御部、723 走査制御部、732R R光源駆動部、732G G光源駆動部、732R B光源駆動部、1700 画像表示装置、1705 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像信号に応じたビーム光を走査させる光走査装置であって、
前記ビーム光を供給する光源部と、
前記光源部からの前記ビーム光を被照射領域において第1の方向と、前記第1の方向に略直交する第2の方向へ走査させる走査部と、を有し、
前記走査部は、前記第1の方向へ前記ビーム光を走査させる周波数が、前記第2の方向へ前記ビーム光を走査させる周波数に比べて高くなるように駆動され、
前記光源部は、一つの前記画素を形成するための前記ビーム光の点灯時間が、前記画像信号に応じて形成される画素の前記第1の方向の長さから、前記ビーム光により前記被照射領域に形成されるスポットの前記第1の方向の長さを差し引いた距離において前記ビーム光を走査させる時間以下となるように駆動されることを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
前記光源部は、前記画像信号に応じた階調を表現するように駆動され、一つの画素の階調を表現するように点灯させた前記ビーム光が、最小階調を表現するための強度以上の強度にまで減衰したタイミングで前記画素同士の境界を通過するように駆動されることを特徴とする請求項1に記載の光走査装置。
【請求項3】
前記光源部は、前記画像信号に応じて振幅が制御された駆動信号に応じて駆動されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項4】
前記光源部は、前記画像信号に応じてパルス幅が制御された駆動信号に応じて駆動されることを特徴とする請求項1又は2に記載の光走査装置。
【請求項5】
前記光源部は、前記第1の方向における前記画素の中心位置を前記ビーム光が走査するタイミングを中心として前記パルス幅が設定されたパルス信号に応じて駆動されることを特徴とする請求項4に記載の光走査装置。
【請求項6】
前記光源部は、前記被照射領域において、前記第1の方向より前記第2の方向へ長い形状の前記スポットを形成することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の光走査装置。
【請求項7】
光走査装置からの光により画像を表示する画像表示装置であって、
前記光走査装置は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光走査装置であることを特徴とする画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−47355(P2007−47355A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230404(P2005−230404)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】