説明

光走査装置

【課題】焦点距離補正光学系を使用せずに記録精度の高いレーザ光走査を行う。
【解決手段】レーザ光を出射する複数のレーザ光源装置11〜15と、感熱記録媒体16の搬送路上方に配置され、各レーザ光源装置のレーザ光源からのレーザ光を反射部材17で反射しつつその反射部材17を、各レーザ光の感熱記録媒体16までの光路長を一定に保持して感熱記録媒体の搬送方向Aとは直交する方向に移動させ、各レーザ光を感熱記録媒体に対して搬送方向と直交する方向に同時に走査させる走査手段を備え、例えば、レーザ光源からのレーザ光を反射部材17に対して、感熱記録媒体の搬送方向Aとは直交する方向で、かつ、入射角度が仰角45°となる上方から入射させ、反射部材をレーザ光の入射角度45°の延長方向に沿って上下斜めに移動させることで光路長を一定に保持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に情報を記録するためにレーザ光を走査する光走査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可逆性感熱記録媒体などの記録媒体にレーザ光を照射することで情報を非接触で記録する光走査装置として、レーザ光源からのレーザ光を、光ファイバ、レンズヘッドを介してスキャニングミラーに導き、このスキャニングミラーの回転によってレーザ光を、平面上を搬送する記録媒体に対して走査するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−113889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、このように平面上を搬送する記録媒体に対してスキャニングミラーの回転によってレーザ光を走査するものでは、レーザ光が記録媒体を走査するときの光路長が中央と側部では異なるため、記録精度を高めようとするとfθレンズ等を使用した高価な焦点距離補正光学系を使用しなければならないという問題があった。
そこで、本発明は、焦点距離補正光学系を使用せずに記録精度の高いレーザ光走査ができる光走査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、レーザ光を出射するレーザ光源と、記録媒体の搬送路上方に配置され、レーザ光源からのレーザ光を反射部材で反射しつつその反射部材を、レーザ光の記録媒体までの光路長を一定に保持して記録媒体の搬送方向とは直交する方向に移動させ、レーザ光を記録媒体に対して搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、焦点距離補正光学系を使用せずに記録精度の高いレーザ光走査ができる光走査装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の一実施の形態を、図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1に示すように、5台のレーザ光源装置11,12,13,14,15を、記録媒体である可逆性感熱記録媒体16の搬送路の上方に、その感熱記録媒体16の搬送方向Aに沿って互いに所定の間隔を隔てて配置している。
【0007】
前記各レーザ光源装置11〜15の配置に沿って長尺な反射部材17を、前記感熱記録媒体16の搬送方向Aに平行に、かつ、その反射面が前記感熱記録媒体16の記録面に対して垂直になるようにして配置している。
【0008】
前記レーザ光源装置11は、図2に示すように、レーザ光源11aと、このレーザ光源11aからのレーザ光を平行光に変換するコリメータレンズ11bと、このコリメータレンズ11bからのレーザ光を前記反射部材17の反射面に集光させる集光レンズ11cによって構成されている。なお、図2ではレーザ光源装置11のみについて述べたが、他のレーザ光源装置12〜15についても構成は同じである。
【0009】
前記各レーザ光源装置11〜15は、レーザ光を前記反射部材17の反射面に対して、前記感熱記録媒体16の搬送方向Aとは直交する方向で、かつ、入射角度が仰角45°となる上方から入射するように配置されている。
【0010】
前記反射部材17は、後述する駆動装置により、その反射面を搬送面に対して垂直を維持した状態で、各レーザ光源装置11〜15からのレーザ光の入射角度45°の延長方向に沿って図中矢印Bに示すように上下に移動制御される構成になっている。
【0011】
すなわち、図2に示すように、前記反射部材17が最も高い位置(図中実線の位置)にあるときその反射面で反射したレーザ光が前記感熱記録媒体16の搬送方向Aとは直交する方向である主走査方向の印字範囲の一端P1に位置する。また、前記反射部材17が最も低い位置(図中点線の位置)にあるときその反射面で反射したレーザ光が前記感熱記録媒体16における主走査方向の印字範囲の他端P2に位置する。そして、前記反射部材17が最も高い位置と最も低い位置との間で図中矢印Bに示すように斜め上下方向に移動することでレーザ光を印字範囲で走査して1走査ラインの印字を行うようになっている。
【0012】
前記可逆性感熱記録媒体16としては、図3に示すように、PET(ポリテレフタル酸エチレン)層161の上にリライト層162を形成し、その上に保護層163を形成したサーモリライトTRF33TA(三菱製紙(株)社製)をベースにし、このベースの上に光熱変換層164を形成したものを使用している。
【0013】
前記光熱変換層164は、近赤外線吸収色素(SDA5688: H.W.SANDS社製、λmax=842nm):0.2重量部、ポリエステル樹脂:10重量部、イソシアネート:0.1重量部を混合した材料を、前記ベースの上にワイヤーバーで塗布し、乾燥膜厚で2μmにして形成している。なお、前記感熱記録媒体16の主走査方向の幅は110mmになっている。
前記各レーザ光源装置11〜15のレーザ光源としては、近赤外線吸収色素の吸収波長に合わせて波長が830nmで出力が1Wのレーザ光を出射するものを使用している。そして、レーザ光の照射によって感熱記録媒体16はその光熱変換層164に照射された光が熱に変換され、保護層163を介してその下のリライト層162に熱を伝達することで発色させる。この発色によって感熱記録媒体16に対する1ドットずつの記録が行われる。また、リライト層162に与える熱を変化させることで消色させることができる。すなわち、前記可逆性感熱記録媒体16はリライト層162に与える熱の状態によって発色、消色の両方ができ、情報の記録及び消去が繰り返しできるようになっている。
【0014】
図4は制御部の構成を示すブロック図で、搬送ベルトなどからなる搬送路18を搬送装置19によって駆動し、搬送路18の上に載置されている前記感熱記録媒体16を搬送する。前記レーザ光源装置11のレーザ光源11aはレーザドライバ20によって駆動され記録情報を載せたレーザ光を出射する。なお、他のレーザ光源装置12〜15のレーザ光源についても同様にそれぞれレーザドライバによって駆動され記録情報を載せたレーザ光を出射する構成になっている。
【0015】
前記反射部材17は駆動装置21により駆動されて図2に矢印Bで示すように斜め上下方向に往復移動されるようになっている。すなわち、前記駆動装置21は、図5に示すように、ACサーボモータ22を内蔵した単軸ロボット23からなり、この単軸ロボット23を前記各レーザ光源装置11〜15からのレーザ光の入射角度45°と同じ角度で設置されている。そして、前記単軸ロボット21bは、ACサーボモータ22でスライダ24を図中矢印で示すように軸に沿って往復移動させることで、そのスライダ24に取付けた前記反射部材17をその反射面を前記記録媒体16に対して垂直状態を維持したまま入射角度45°と同じ角度で斜め上下方向に往復移動させるようになっている。前記反射部材17と駆動装置21は走査手段を構成している。
【0016】
また、マイクロプロセッサ等を備えた制御装置25を設け、この制御装置25によって前記搬送装置19、各レーザドライバ20,…及び駆動装置21をそれぞれ制御するようになっている。
【0017】
このような構成においては、搬送装置19は搬送路18を駆動して感熱記録媒体16を搬送し印字開始位置で停止させる。この状態で各レーザドライバ20,…は各レーザ光源装置11〜15のレーザ光源11a,…を駆動するとともに駆動装置21は単軸ロボット23のスライダ24を動作して反射部材17を最も高い位置から最も低い位置に向かって移動開始させる。
【0018】
各レーザ光源装置11〜15のレーザ光源からのレーザ光は反射部材17に対して感熱記録媒体16の搬送方向Aとは直交する方向から入射角度45°で入射し、その反射面で反射されて感熱記録媒体16上に照射される。
【0019】
反射部材17が移動すると、レーザ光は感熱記録媒体16における主走査方向の印字範囲の一端から他端へ向かって走査される。こうして感熱記録媒体16に対して各レーザ光源装置11〜15によってそれぞれ1走査ラインの印字が行われる。
【0020】
そして、1走査ラインの印字が終了すると、搬走路18が搬送装置19によって駆動され感熱記録媒体16が1走査ライン分だけ搬送される。すなわち、感熱記録媒体16は1走査ライン分だけ副走査方向に搬送される。搬送が終了すると、レーザドライバ20,…は各レーザ光源装置11〜15のレーザ光源を再度駆動するとともに駆動装置21は単軸ロボット23のスライダ24を動作して反射部材17を今度は逆に最も低い位置から最も高い位置に向かって移動開始させる。
【0021】
反射部材17が移動すると、レーザ光は感熱記録媒体16における主走査方向の印字範囲の他端から一端へ向かって走査される。こうして感熱記録媒体16に対して各レーザ光源装置11〜15によってそれぞれ次の1走査ラインの印字が行われ、レーザ光の1往復走査による印字が終了する。
【0022】
従って、各レーザ光源装置11〜15のレーザ光による走査ラインの副走査方向の間隔が、例えば6ラインであれば、反射部材17の3往復移動によるレーザ光の3往復走査が終了すると、各レーザ光源装置11〜15からのレーザ光による副走査方向の走査ライン間は埋まることになる。
【0023】
そして、レーザ光の3往復走査が終了すると、搬送路18は搬送装置19に駆動されて感熱記録媒体16を(5×6+1)走査ライン分、すなわち、31走査ライン分の距離だけ搬送される。こうして、レーザ光源装置15からのレーザ光によって最後に走査された走査ラインの次のライン位置にレーザ光源装置11による最初の走査ラインが位置するようになる。そして、各レーザ光源装置11〜15による次の30走査ラインの往復走査が開始される。
【0024】
このように、5台のレーザ光源装置11〜15を使用して同時に5走査ラインずつレーザ光を走査して印字を行うので、感熱記録媒体16に対する印字を高速で行うことができる。
【0025】
また、各レーザ光源装置11〜15からのレーザ光を、感熱記録媒体16の搬送方向と直交する方向から反射部材17に対して入射角度45°で入射させ、かつ、その反射部材17を、その反射面を搬送面に対して垂直を維持した状態で入射角に沿って矢印B方向に往復移動させることによって感熱記録媒体16に対するレーザ光の走査を行っている。これにより、感熱記録媒体16の主走査方向における印字範囲の一端から他端までのどの位置においても各レーザ光源装置11〜15からのレーザ光の光路長は一定になる。従って、焦点距離補正光学系を使用せずにレーザ光を印字範囲内においてどの位置でも焦点を合わせることができ、レーザ光による記録精度を高めることができる。しかも、高価で複雑な構成の焦点距離補正光学系を使用しないので、構成の簡単化、経済性の向上を図ることができる。
【0026】
(第2の実施の形態)
この実施の形態は、図6に示すように、反射部材17の角度を変更する角度変更装置26を設け、この角度変更装置26を制御装置22で制御するようにしている。前記角度変更装置26は、前記反射部材17と同様、前記単軸ロボット23のスライダ24に取付けられている。
【0027】
また、搬送装置19は各レーザ光源装置11〜15からレーザ光が出射され、反射部材17が移動動作されている間も搬送路18を駆動し可逆性感熱記録媒体16を所定の速度で搬送し続けるようになっている。その他の構成については前述した第1の実施の形態と同様である。
前記角度変更装置26は、図7の(a)に側面図、(b)に平面図を示すように、1対のギア31,32間にベルト33を架け渡し、一方のギア31をステッピングモータ34で回転駆動することで前記ベルト33を介して他方のギア32に回転を伝達する構成になっている。そして、他方のギア32に前記反射部材17の反射面とは反対側の背面側を、固定部材35を使用して固定している。
【0028】
前記角度変更装置26は、ステッピングモータ34でギア31を回転し、この回転をベルト33により他方のギア32に伝達する。そして、このギア32の回転する角度に応じて前記反射部材17は反射面を前記感熱記録媒体16の搬送方向と平行な状態から傾かせる。なお、前記ギア32は接続軸36によって回転自在に支持されている。
【0029】
すなわち、前記角度変更装置26は、図8に示すように、前記反射部材17を図中矢印B1で示すように最も高い位置から最も低い位置へ移動してレーザ光を走査するときには、感熱記録媒体16の搬送速度に応じて搬送方向(矢印A方向)の下流側である反射部材17の手前側端が徐々に開くようにその反射部材17の角度を変更する。
【0030】
また、前記角度変更装置26は、図9に示すように、前記反射部材17を図中矢印B2で示すように最も低い位置から最も高い位置へ移動してレーザ光を走査するときには、感熱記録媒体16の搬送速度に応じて搬送方向(矢印A方向)の上流側である反射部材17の後方側端が徐々に開くようにその反射部材17の角度を変更する。
【0031】
このような構成においては、感熱記録媒体16を所定の速度で搬送させつつレーザ光を走査して印字ができる。すなわち、反射部材17の角度を変更せずに、図10に示すように、感熱記録媒体16を矢印A方向に搬送させてレーザ光を走査すると、図中点線の矢印で示すように主走査方向に対して斜めにレーザ光を走査することになり、印字を行うことはできない。
【0032】
これに対し、反射部材17の角度を、角度変更装置26を使用して感熱記録媒体16の搬送速度に応じて図8及び図9に示すように変更すると、図中実線の矢印で示すように搬双方向Aに対して直交する方向、すなわち、主走査方向に対して平行にレーザ光を走査することができ印字ができる。
【0033】
このようにすれば、感熱記録媒体16を所定の速度で搬送させつつレーザ光を走査して印字ができるので、さらに高速印字が実現できる。その他については前述した実施の形態と同様の作用効果が得られるものである。
【0034】
例えば、感熱記録媒体16を0.32mm/secの搬送速度で搬送させつつ反射部材17を320mm/secの速度で往復移動させ、搬送速度に同期させて反射部材17の角度を可変させることで感熱記録媒体16に対して主走査方向への適切なレーザ光走査が実現できた。
【0035】
なお、前述した各実施の形態では5台のレーザ光源装置を使用して同時に5本のレーザ光を走査するものについて述べたが必ずしもこれに限定するものではなく、1台のレーザ光源装置を使用したものであっても、また、5台以外の複数台のレーザ光源装置を使用したものであってもよい。
【0036】
また、この実施の形態では記録媒体として書き込み及び消去ができる可逆性感熱記録媒体を使用したものに適用したものについて述べたがこれに限定されるものではなく、1回の書込みしかできない感熱記録媒体を使用したものにも、また、感光体ドラムの感光面を記録媒体として使用したものにも適用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光走査装置の概略構成を示す斜視図。
【図2】同実施の形態に係る光走査装置によるレーザ光走査を説明するための図。
【図3】同実施の形態で使用する可逆性感熱記録媒体の構成を示す断面図。
【図4】同実施の形態に係る光走査装置の制御構成を示すブロック図。
【図5】同実施の形態に係る駆動装置の構成を示す図。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る光走査装置の制御構成を示すブロック図。
【図7】同実施の形態の角度変更装置の構成を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図。
【図8】同実施の形態において反射部材が高い位置から低い位置へ移動するときの反射部材の角度変更状態を示す平面図。
【図9】同実施の形態において反射部材が低い位置から高い位置へ移動するときの反射部材の角度変更状態を示す平面図。
【図10】同実施の形態における反射部材と角度を変更しない反射部材を使用して感熱記録媒体を搬送しつつレーザ光を走査したときの感熱記録媒体上の走査ラインを比較して示す斜視図。
【符号の説明】
【0038】
11〜15…レーザ光源装置、11a…レーザ光源、16…可逆性感熱記録媒体、17…反射部材、19…搬送装置、20…レーザドライバ、21駆動装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源と、
記録媒体の搬送路上方に配置され、前記レーザ光源からのレーザ光を反射部材で反射しつつその反射部材を、前記レーザ光の前記記録媒体までの光路長を一定に保持して前記記録媒体の搬送方向とは直交する方向に移動させ、前記レーザ光を前記記録媒体に対して搬送方向と直交する方向に走査させる走査手段を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項2】
レーザ光を出射する複数のレーザ光源と、
記録媒体の搬送路上方に配置され、前記各レーザ光源からのレーザ光を反射部材で反射しつつその反射部材を、前記各レーザ光の前記記録媒体までの光路長を一定に保持して前記記録媒体の搬送方向とは直交する方向に移動させ、前記各レーザ光を前記記録媒体に対して搬送方向と直交する方向に同時に走査させる走査手段を備えたことを特徴とする光走査装置。
【請求項3】
レーザ光源は、レーザ光を反射部材の反射面に対して、記録媒体の搬送方向とは直交する方向から入射角度45°で入射させ、
走査手段は、反射部材をその反射面が記録媒体の記録面に対して垂直になるように配置するとともにレーザ光の入射角方向に沿って斜めに移動させることを特徴とする請求項1又は2記載の光走査装置。
【請求項4】
走査手段は、記録媒体の搬送速度に同期して反射部材の反射面の、前記記録媒体の搬送方向に対する角度を可変する角度変更装置を備え、前記記録媒体の搬送を停止させずにレーザ光を走査することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の光走査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−316536(P2007−316536A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148490(P2006−148490)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】