説明

光輝性樹脂組成物及び化粧シート

【課題】 従来の芳香族ポリカーボネート系樹脂と溶融混合すると該樹脂の重量平均分子量を著しく低下させる光輝性粒子を用いても、重量平均分子量の低下が非常に小さく、その結果多種多様な光輝性意匠を付与することが可能な光輝性樹脂組成物、及びそれを用いて作製された化粧シートを提供すること。
【解決手段】 構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂100重量部に対して、光輝性粒子の含有量が0.1重量部以上、10重量部以下である光輝性樹脂組成物であって、該光輝性粒子が、無機粒子(金属粒子を除く)に金属もしくは金属酸化物を被覆したもの、又は金属粒子であることを特徴とする光輝性樹脂組成物の作製。


(但し、前記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂と光輝性粒子を含む光輝性樹脂組成物、及び該組成物を用いた光輝性樹脂層を有する化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
玄関ドア、玄関周りの住宅壁またはエレベータ外装等の建材は、耐久性または意匠性を付与するために、しばしば化粧シートで被覆される。従来、このような用途の建材としては、エンボス意匠を付与した軟質塩ビ系樹脂シート(以下、軟質PVCシートとも言う。)を樹脂成形品、合板、木質板若しくは金属板等に被覆したもの、または塗装金属板等が用いられてきた。また、印刷意匠を有するものとして、紫外線吸収剤を添加したアクリルシートに印刷し、該アクリルシートに軟質PVCシートを積層した構成のものが用いられてきた。
【0003】
軟質PVCシートは各種の優れた特徴を有するのであるが、近年塩化ビニル系樹脂の一部の安定剤に起因する重金属化合物の問題、一部の可塑剤若しくは安定剤に起因するVOC問題や内分泌撹乱作用の問題、または燃焼時に塩化水素ガスその他の塩素含有ガスを発生する問題等から、塩化ビニル系樹脂はその使用に制限を受けるようになって来た。
【0004】
そこで、軟質PVCシートに代わる樹脂シートとして、ポリエステル系樹脂を用いた高表面硬度を有する樹脂シート被覆金属板、またはポリオレフィン系樹脂を用いた豊富な色柄に対応した樹脂シート被覆金属板等が提案されている。
【0005】
さらに芳香族ポリカーボネート系樹脂を主成分として耐候性またはエンボス加工性に優れた樹脂シートが提案されている。
特許文献1に記載のシートは、芳香族ポリカーボネート系樹脂に、特定の紫外線吸収剤を含有させて耐候性を向上させたものである。
特許文献2に記載のシートは、透明な芳香族ポリカーボネート系樹脂層の下層に特定の光輝性粒子を含有した透明樹脂からなる樹脂層を備え、光輝性意匠を持たせたものである。
特許文献3に記載のシートは、芳香族ポリカーボネート系樹脂にポリエステル系樹脂をブレンドして引張弾性率を高くすることでエンボス加工性を向上させたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−1022号公報
【特許文献2】特開2007−326314号公報
【特許文献3】特開2008−188970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで特許文献2に開示されたように、透明表層の下層に光輝性粒子分散層を設けることで深みのある光輝性意匠のある樹脂シートが得られるが、芳香族ポリカーボネート系樹脂に光輝性粒子を溶融混練により混合すると、樹脂の重量平均分子量が著しく低下し、樹脂シート自体が脆く割れやすくなる不具合が発生することがあった。これより分子量低下の不具合を起こさない光輝性粒子を特に選択して用いる必要があり、光輝性意匠を付与する手段や効果を選択する自由度が制限されていた。
従来は前記の技術をもって、特定用途にかかる要求事項を満足できていたが、用途拡大
、高意匠化または高耐久化などの要求事項の高まりにつれ、これまで以上に多種多様な光輝性意匠を選択する自由度が求められるようになってきた。
【0008】
そこで本発明は、光輝性粒子を溶融混合しても、重量平均分子量の低下が非常に小さく、その結果多種多様な光輝性意匠を付与することが可能な光輝性樹脂組成物、及びそれを用いて作製された化粧シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の構造を有するポリカーボネート樹脂と、特定の光輝性粒子とを特定量含む光輝性樹脂組成物が上記の課題を全て解決できる事を見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下である。
1.構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂100重量部に対して、光輝性粒子の含有量が0.1重量部以上、10重量部以下である光輝性樹脂組成物であって、該光輝性粒子が、無機粒子(金属粒子を除く)に金属もしくは金属酸化物を被覆したもの、又は金属粒子であることを特徴とする光輝性樹脂組成物。
【0011】
【化1】

【0012】
[但し、前記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。]
【0013】
2.前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であることを特徴とする前項1に記載の光輝性樹脂組成物。
【0014】
【化2】

【0015】
3.前記無機粒子(金属粒子を除く)が、ガラスフレーク、マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、及び雲母フレークからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属粒子が、銀フレーク、ニッケルフレーク、金フレーク、チタンフレーク、及びアルミフレークからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前項1又は2に記載の光輝性樹脂組成物。
【0016】
4.前記光輝性樹脂組成物の重量平均分子量の保持率が、前記ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量の90%以上であることを特徴とする前項1から3のいずれか1に記載の光輝性樹脂組成物。
【0017】
5.前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が80℃以上、145℃未満であることを特徴とする前項1から4のいずれか1に記載の光輝性樹脂組成物。
【0018】
6.前項1から5のいずれか1に記載の光輝性樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
【0019】
7.前項1から5のいずれか1に記載の光輝性樹脂組成物からなる層を含む化粧シート。
【0020】
8.少なくとも下記A層及び下記B層を含む、前項7に記載の化粧シート。
A層:可視光透過性を有し、厚みが10μm以上である樹脂層。
B層:前項1から5のいずれか1に記載の光輝性樹脂組成物からなり、厚みが30μm以上である樹脂層。
【0021】
9.前記A層、前記B層及び下記C層の3層を少なくともこの順に含み、総厚みが75μm以上300μm以下の範囲である、前項8に記載の化粧シート。
C層:熱可塑性樹脂と着色剤を含有する樹脂組成物からなり、厚みが45μm以上260μm以下の範囲である樹脂層。
【0022】
10.前項7から9のいずれか1に記載の化粧シートを金属板上にラミネートして得られることを特徴とする樹脂シート被覆金属積層体。
【0023】
11.前項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む玄関ドア。
【0024】
12.前項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む建材。
【0025】
13.前項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含むユニットバス部材。
【0026】
14.前項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む鋼製家具部材。
【0027】
15.前項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む電気電子機器筐体。
【0028】
16.前項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む自動車内装材。
【発明の効果】
【0029】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、光輝性粒子と溶融混合しても、重量平均分子量の低下が非常に小さく、その結果多種多様な光輝性意匠を付与することが可能な、特定構造を有するポリカーボネート樹脂と光輝性粒子とを含む光輝性樹脂組成物を提供することができる。
さらに前記光輝性樹脂組成物からなる層を有する化粧シートは従来以上に光輝性意匠に富むため、例えばこれを用いた樹脂シート被覆金属積層体は、玄関ドアなど様々な用途で好適に採用することができ、一層の意匠性付与に資する。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態の1つの例としての光輝性樹脂組成物及び化粧シートについて説明する。但し、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0031】
なお、本発明において「主成分とする」とは、当該部位における対象成分の比率が50質量%以上、好ましくは75質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であって100質量%を含む概念をいう。
また本発明において「シート」とは、厚さに関して一般に「フィルム」と呼称される範囲と「シート」と呼称される範囲との両方を包含し、便宜上本発明においては両者を「シート」と単一呼称する。また、本発明において、「質量%」は「重量%」と同義である。
【0032】
さらに、本発明において「可視光透過性を有する」層とは、当該層を通じて、その背面にある他の層又は金属板が視認できるという意味であり、当該層についてJIS K7105(1981年)に準じて測定した全光線透過率が、好ましくは80%以上、より好ましくは84%以上、特に好ましくは88%以上である。
【0033】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂であり、典型的な実施形態においては可視光透過性を有する。
【0034】
【化3】

【0035】
但し、前記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。
すなわち、前記ジヒドロキシ化合物は、二つのヒドロキシル基と、更に前記一般式(1)の部位を少なくとも含むものをいう。
【0036】
構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物の主成分としては、分子内に一般式(1)で表される構造を有していれば特に限定されるものではないが、具体的には、例えば、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−イソブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−フェニルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−(2−ヒドロキシエトキシ)−3−tert−ブチル−6−メチルフェニル)フルオレン9,9−ビス(4−(3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物、または下記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物若しくは下記一般式(3)で表されるスピログリコール等で代表される環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が挙げられる。これらのなかでも環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物が好ましく、環状エーテル構造を有するジヒドロキシ化合物のなかでも特に一般式(2)で表されるような無水糖アルコールが好ましい。より具体的には、一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物としては、例えば、立体異性体の関係にある、イソソルビド、イソマンニドまたはイソイデットが挙げられる。また、下記一般式(3)で表されるジヒドロキシ化合物としては、3,9−ビス(1,1−ジメチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカン(慣用名:スピログリコール)、3,9−ビス(1,1−ジエチル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンまたは3,9−ビス(1,1−ジプロピル−2−ヒドロキシエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5.5)ウンデカンなどが挙げられる。
これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
前記一般式(3)中、R〜Rはそれぞれ独立に、炭素数1から炭素数3のアルキル基である。
【0040】
前記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物は、生物起源物質を原料として糖質から製造可能なエーテルジオールである。とりわけイソソルビドは澱粉から得られるD−グルコースを水添してから脱水することにより安価に製造可能であって、資源として豊富に入手することが可能である。これら事情により、イソソルビドが最も好ましい。
【0041】
尚、イソソルビドに代表されるような構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物は、酸素によって徐々に酸化されやすい。このため、保管または製造時の取り扱いの際には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにし、また、脱酸素剤を用いたり、窒素雰囲気下にしたりすることが好ましい。イソソルビドが酸化されると、蟻酸をはじめとする分解物が発生する。例えば、これら分解物を含むイソソルビドを用いてポリカーボネート樹脂を製造すると、得られるポリカーボネート樹脂に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりする原因となる。あるいは重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られない可能性がある。蟻酸の発生を防止するような安定剤を添加してあるような場合、安定剤の種類によっては、得られるポリカーボネート樹脂に着色が発生したり、物性を著しく劣化させたりすることがある。
【0042】
そこで、本発明には、下記のような特定の安定化剤を用いることが好ましい。安定剤としては、還元剤、制酸剤、抗酸化剤、脱酸素剤、光安定剤、pH安定剤または熱安定剤等の安定剤を用いることが好ましく、特に酸性下ではジヒドロキシ化合物が変質しやすいことから、塩基性安定剤を含むことが好ましい。このうち還元剤としては、例えば、ナトリウムボロハイドライド、リチウムボロハイドライド等が挙げられ、制酸剤としては水酸化ナトリウム等のアルカリ金属塩が挙げられる。このようなアルカリ金属塩の添加は、アルカリ金属が重合触媒となる場合があるので、過剰に添加し過ぎると重合反応を制御できなくなる可能性がある。
【0043】
塩基性安定剤としては、例えば、長周期型周期表(Nomenclature of Inorganic Chemistry IUPAC Recommendations 2005)における第1族若しくは第2族の金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、硼酸塩または脂肪酸塩、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルエチル
アンモニウムヒドロキシド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルベンジルアンモニウムヒドロキシド、トリブチルフェニルアンモニウムヒドロキシド、テトラフェニルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド、ブチルトリフェニルアンモニウムヒドロキシド等の塩基性アンモニウム化合物、4−アミノピリジン、2−アミノピリジン、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、4−ジエチルアミノピリジン、2−ヒドロキシピリジン、2−メトキシピリジン、4−メトキシピリジン、2−ジメチルアミノイミダゾール、2−メトキシイミダゾール、イミダゾール、2−メルカプトイミダゾール、2−メチルイミダゾール若しくはアミノキノリン等のアミン系化合物が挙げられる。その中でも、その効果と後述する蒸留除去のしやすさから、ナトリウム若しくはカリウムのリン酸塩または亜リン酸塩が好ましく、中でもリン酸水素2ナトリウムまたは亜リン酸水素2ナトリウムが好ましい。
【0044】
これら塩基性安定剤のジヒドロキシ化合物中の含有量に特に制限はないが、少なすぎるとジヒドロキシ化合物の変質を防止する効果が得られない可能性があり、多すぎるとジヒドロキシ化合物の変性を招く場合があるので、通常、ジヒドロキシ化合物に対して、0.0001質量%〜1質量%であることが好ましく、より好ましくは0.001質量%〜0.1質量%である。
【0045】
また、これら塩基性安定剤を含有したジヒドロキシ化合物をポリカーボネート樹脂の製造原料として用いると、塩基性安定剤自体が重合触媒となり、重合速度または品質の制御が困難になるだけでなく、初期色相の悪化を招き、結果的に得られるポリカーボネート樹脂成形品の耐光性を悪化させるため、ポリカーボネート樹脂の製造原料として使用する前に塩基性安定剤をイオン交換樹脂または蒸留等で除去することが好ましい。
【0046】
特に、ジヒドロキシ化合物がイソソルビド等、環状エーテル構造を有する場合には、酸素によって徐々に酸化されやすいので、保管や製造時には、酸素による分解を防ぐため、水分が混入しないようにしたり、脱酸素剤等を用いたり、窒素雰囲気下で取り扱ったりすることが好ましい。イソソルビドが酸化されると、蟻酸等の分解物が発生する場合がある。例えば、これら分解物を含むイソソルビドをポリカーボネート樹脂の製造原料として使用すると、得られるポリカーボネート樹脂の着色を招く可能性があり、また、物性を著しく劣化させる可能性があるだけではなく、重合反応に影響を与え、高分子量の重合体が得られないことがある。
【0047】
上記酸化分解物を含まないジヒドロキシ化合物を得るために、また、前述の塩基性安定剤を除去するためには、ジヒドロキシ化合物を蒸留精製することが好ましい。この場合の蒸留とは単蒸留であっても、連続蒸留であってもよく、特に限定されない。蒸留の条件としてはアルゴンや窒素等の不活性ガス雰囲気において、減圧下で蒸留を実施することが好ましく、熱による変性を抑制するためには、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは180℃以下の条件で行うことが好ましい。
【0048】
このような蒸留精製により、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物中の蟻酸含有量を好ましくは20重量ppm以下、より好ましくは10重量ppm以下、特に好ましくは5重量ppm以下にすることにより、ポリカーボネート樹脂製造時の重合反応性を損なうことなく、色相や熱安定性に優れたポリカーボネート樹脂の製造が可能となる。蟻酸含有量の測定はイオンクロマトグラフィーを使用し、以下の手順に従い行われる。以下の手順では、代表的なジヒドロキシ化合物として、イソソルビドを例とする。
【0049】
イソソルビド約0.5gを精秤し50mlのメスフラスコに採取して純水で定容する。標準試料として蟻酸ナトリウム水溶液を用い、標準試料とリテンションタイムが一致するピークを蟻酸とし、ピーク面積から絶対検量線法で定量する。
イオンクロマトグラフは、Dionex社製のDX−500型を用い、検出器には電気伝導度検出器を用いた。測定カラムとして、Dionex社製ガードカラムにAG−15、分離カラムにAS−15を用いる。測定試料を100μlのサンプルループに注入し、溶離液に10mM−NaOHを用い、流速1.2ml/分、恒温槽温度35℃で測定する。サプレッサーには、メンブランサプレッサーを用い、再生液には12.5mM−HSO水溶液を用いる。
【0050】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は前記一般式(1)で表される構造単位以外の構造単位を更に含むこともでき、例えば国際公開第2004/111106号に記載の脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、または国際公開第2007/148604号に記載の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を挙げることができる。
【0051】
前記脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でもエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールからなる群より選択される少なくとも1種のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことが好ましい。
【0052】
前記脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の中でも5員環構造又6員環構造を含むことが好ましく、特に6員環構造は共有結合によって椅子型又は舟型に固定されていてもよい。これら構造の脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことによって、得られるポリカーボネート樹脂の耐熱性を高めることができる。脂環式ジヒドロキシ化合物に含まれる炭素原子数は通常70以下であることが好ましく、より好ましくは50以下、更に好ましくは30以下である。
【0053】
前記5員環構造又は6員環構造を含む脂環式ジヒドロキシ化合物としては、前記国際公開公報パンフレットに記載のものを例示でき、中でもシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール、アダマンタンジオール、又はペンタシクロペンタデカンジメタノールが好ましく、更にはシクロヘキサンジメタノール又はトリシクロデカンジメタノールが経済性または耐熱性などから最も好ましい。これらは1種又は2種以上を組み合わせてもよい。
尚、シクロヘキサンジメタノールの中でも工業的に入手が容易である、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好ましい。
【0054】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂の、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位の含有割合は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、また好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下である。かかる範囲とすることで、カーボネート構造に起因する着色、生物資源物質を用いる故に微量含有する不純物に起因する着色等を抑制することができ、可視光透過性を有するポリカーボネート樹脂として十分使用することができる。また、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位のみで構成されるポリカーボネート樹脂では達成が困難な、適当な成形加工性、機械強度または耐熱性等の物性バランスを取ることができる。
【0055】
さらに、本発明に使用するポリカーボネート樹脂において、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とのモ
ル比率は、任意の割合で選択できるが、前記モル比率を調整することで、衝撃強度(例えば、ノッチ付きシャルピー衝撃強度)が向上する可能性があり、更にポリカーボネート樹脂の所望のガラス転移温度を得ることが可能である。
【0056】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位と、脂肪族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位、又は脂環式ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位とからなることが好ましいが、本発明の目的を損なわない範囲で、その他のジヒドロキシ化合物に由来する構造単位が含まれていてもよい。その他のジヒドロキシ化合物の種類は、特に限定されるものではないが、芳香族ジヒドロキシ化合物については極力含まないことが好ましい。
【0057】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定(DSC)により測定され、好ましくは80℃以上、145℃未満、より好ましくは90℃以上、145℃未満、更に好ましくは100℃以上、145℃未満である。また通常単一のガラス転移温度を有する。重合組成比を本明細書に記載の範囲で適宜調整することで、かかるガラス転移温度に調整することが可能である。
【0058】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、ガラス転移温度の前後で弾性率が顕著に変化することから、樹脂シートの加熱軟化によるエンボス付与と冷却によるエンボス固定が容易であり転写性が良好である。更にガラス転移温度を前記好ましい範囲に調整することで、エンボス耐熱性に優れ、例えば沸騰水に浸漬してもエンボス戻りが生じないなどの利点を得ることができる。
【0059】
本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、一般に行われる重合方法で製造することができ、ホスゲン法または炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法のいずれでもよい。中でも、重合触媒の存在下に、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物とその他のジヒドロキシ化合物とを、炭酸ジエステルと反応させるエステル交換法が好ましい。エステル交換法は、ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル、塩基性触媒、該触媒を中和させる酸性物質を混合し、エステル交換反応を行う重合方法である。
【0060】
炭酸ジエステルとしては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ビフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネートまたはジシクロヘキシルカーボネート等が挙げられる。中でもジフェニルカーボネートが好適に用いられる。
このようにして得られた、本発明で用いる構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂の分子量は、還元粘度で表すことができる。前記還元粘度は、通常0.30dL/g以上が好ましく、0.35dL/g以上がより好ましく、還元粘度の上限は、1.20dL/g以下が好ましく、1.00dL/g以下がより好ましく、0.80dL/g以下が更に好ましい。ポリカーボネート樹脂の還元粘度が低すぎると成形品の機械的強度が小さい可能性があり、大きすぎると、成形する際の流動性が低下し、生産性または成形性を低下させる傾向がある。
還元粘度は、溶媒として塩化メチレンを用い、ポリカーボネート濃度を0.6g/dLに精密に調製し、温度20.0℃±0.1℃でウベローデ粘度管を用いて測定する。
【0061】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、可視光〜近紫外波長領域において光吸収が小さく、受光による黄変劣化に関して耐候性が優れるため、該樹脂自体の黄変劣化を抑制するための紫外線吸収剤を使用しないか、使用したとしてもその量を著しく低減することが
可能となる。本発明に使用するポリカーボネート樹脂以外のその他の樹脂を含有するなど、黄変劣化の対策が必要な場合については、これを抑制するための必要最低限の紫外線吸収剤を添加すればよい。
この場合、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とする層の全樹脂100質量%に対する紫外線吸収剤の添加量は0.0001〜10質量%の範囲であることが好ましい。また、0.0005質量%以上、1質量%以下の割合で使用することがより好ましく、0.001質量%以上、0.5質量%以下の割合で配合することがさらに好ましく、0.01質量%以上、0.2質量%以下の割合で配合することが特に好ましい。0.0001質量%以上であれば紫外線吸収の性能を十分に発現することができ、また10質量%以下であれば、樹脂の着色を抑制できたり、原料コストの低減を図ることができたりする。更に、かかる範囲で紫外線吸収剤の量を調節することにより、本発明の光輝性樹脂組成物の表面への紫外線吸収剤のブリードアウト、または本発明の光輝性樹脂組成物の機械特性低下を生じることなく、本発明の光輝性樹脂組成物の耐候性を向上することができる。
【0062】
<紫外線吸収剤>
本発明に用いるポリカーボネート樹脂に必要に応じて添加する紫外線吸収剤は、各種市販のものを使用できるが、従来公知の芳香族ポリカーボネート樹脂への添加用に専ら用いられるものを好適に用いることができる。紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール若しくは2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)などのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)などのベンゾオキサジン系紫外線吸収剤、または2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤の融点としては、特に120〜250℃の範囲にあるものが好ましい。融点が120℃以上の紫外線吸収剤を使用すると、成形品表面のガスによる曇りが減少し改善される。
より具体的には、例えば、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリ
アゾール、2−(2 '−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル) −
5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3'−(3'',4'',5'',6''−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5'−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2
−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリ
アゾール−2−イル)フェノール若しくは2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェ
ニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤または2−(4,6
−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールなどのヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤が挙げられる。これらのうちでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2
,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル) −6−(2H−ベン
ゾトリアゾール−2−イル)フェノールまたは2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−
トリアジン−2−イル)−5−(ヘキシル)オキシ−フェノールが好ましい。これらの紫外線吸収剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
<光輝性粒子>
本発明に使用する光輝性粒子は、無機粒子(金属粒子を除く)に金属もしくは金属酸化物を被覆したもの、又は金属粒子である。
【0064】
前記無機粒子(金属粒子を除く)としては、ガラスフレーク、マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、及び雲母フレークからなる群より選ばれる少なくとも1種が好まし
く、これらは2種以上を併用しても構わない。
【0065】
前記無機粒子(金属粒子を除く)を被覆する金属としては、銀、ニッケル、金、チタン、及びアルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。また、前記無機粒子(金属粒子を除く)を被覆する金属酸化物としては、酸化銀、酸化チタン、酸化鉄、及び酸化アルミニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0066】
さらに、前記金属粒子としては、銀フレーク、ニッケルフレーク、金フレーク、チタンフレーク、及びアルミフレークからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、これらは2種以上を併用しても構わない。
【0067】
本発明に使用する光輝性粒子の含有量は、本発明に使用するポリカーボネート樹脂100重量部に対し、0.1重量部以上であり、好ましくは0.5重量部以上、更に好ましくは0.8重量部以上である。また10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下、更に好ましくは2.5重量部以下である。かかる範囲とすることで、得られる光輝性樹脂組成物の輝度感が一様に弱過ぎも強過ぎもせず、十分かつ良好な意匠性を得ることができる。
【0068】
本発明に使用する光輝性粒子の平均粒径は20μm以上100μm以下であることが好ましい。光輝性粒子の平均粒径を20μm以上とすることで、全体として星を散りばめたような光輝性意匠を現出させることができる。
一方光輝性粒子の平均粒径を100μm以下とすることで、光輝性樹脂組成物のマスターバッチを溶融混練法により製造する場合や押出成形法等により製品を成形する場合において、剪断が加えられるプロセス中に該光輝性粒子が過度に破砕されることを抑制でき、結果十分な意匠効果を現出させることができる。更に大粒子を起点として製品にクラックが生じる加工性不良を抑制することもできる。
【0069】
また、光輝性粒子の平均厚さは1μm以上10μm以下であることが好ましい。また、光輝性粒子の平均厚さを1μm以上とすることで、同じく剪断が加えられるプロセス中に該光輝性粒子が過度に破砕されることを抑制できる。
一方光輝性粒子の平均厚さを10μm以下とすることで、光輝性樹脂組成物を成形する際の流動不良やフローマーク、スジ入りまたは穴開き等の不良を抑制できる。平均厚さは6μm以下であることが更に好ましい。
【0070】
光輝性粒子の形状としては。平板フレーク状であることが好ましい。中でも平板状ガラスフレークの表面に金属薄膜を被覆した光輝性粒子は、表面の平滑性が高く、非常に高い輝度感を得ることができ、星を散りばめたような光輝性意匠を得るには好適である。更に平板状の光輝性粒子は、押出成形時の流動配向で製膜シートの面と平行に配向しやすく、効率的に高い輝度感を得ることができる。
【0071】
前記の平板状ガラスフレークの表面に金属薄膜を被覆した光輝性粒子としては、具体的には、例えば、日本板硝子社製「メタシャイン」を挙げることができる。中でも銀及びニッケル薄膜を被覆したものが、強い輝度感を効率よく得ることができる。
【0072】
これらは面方向には大きさの分布がある程度認められるが、薄膜原料を破砕してフレークを得る製法の特徴から、厚さの分布は良好な均一性を有している。このため極端に肉厚な大粒子が混在することによる押出成形時の不良が発生しにくい利点がある。
【0073】
2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称:ビスフェノールA)をジヒドロキシ化合物原料として用いた従来の芳香族ポリカーボネート樹脂においては、一般に光輝性粒子として用いられる酸化チタン被覆マイカやアルミフレークなどを混合すると、
該樹脂の著しい重量平均分子量の低下とそれに伴う劣化が生じて、白濁したり脆くなったりする不具合が発生することがあった。
しかしながら本発明に使用する前記ポリカーボネート樹脂においては、前記光輝性粒子を好適に選択して該ポリカーボネート樹脂と混合しても、重量平均分子量の低下とそれに伴う劣化は殆ど起こらず、前記のような不具合が発生することがない。
【0074】
この現象は正確には理解されていないものの、以下のような要因が引き起こすものと推察される。例示した前記ビスフェノールAは、芳香環にヒドロキシル基が直接結合しているジヒドロキシ化合物である。一方、本発明に使用するポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を前記の割合で含み、該ジヒドロキシ化合物は、そもそも芳香環を有しないものであったり、芳香環にヒドロキシル基が直接結合していないものである。
すなわち、芳香環にヒドロキシル基が直接結合しているジヒドロキシ化合物を構造単位に含む芳香族ポリカーボネート樹脂に前記光輝性粒子を混合し、特に高温で溶融混練して成形する際に、光輝性粒子が化学的に何らかの影響を及ぼして、芳香族ポリカーボネート樹脂の分子鎖を切断し、重量平均分子量の低下を引き起こすものと推察される。
【0075】
これに対し、本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことからそのような現象がほとんど生じないと推察される。
特に、本発明に用いるポリカーボネート樹脂が、構造の一部に前記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物の中でも、芳香環を有しない前記一般式(2)で表されるジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むことにより、前記光輝性粒子を混合した場合であっても、重量平均分子量の低下を顕著に抑制することができるため好ましい。
【0076】
<光輝性樹脂組成物>
本発明の光輝性樹脂組成物を製造する方法は、目的の形態に応じて選択することが可能であり、特に限定されるものではない。例えば、前記ポリカーボネート樹脂と、前記光輝性粒子、さらにはその他の添加剤等を、本明細書に記載された範囲の含有量についてドライブレンドし、これらを単軸押出機、二軸押出機等に投入して溶融混練して押出、冷却、成形加工して得ることができる。また、前記ポリカーボネート樹脂に対して、より多くの量の前記光輝性粒子、さらにはその他の添加剤等を溶融混練してマスターバッチを作製した後に、これらを適宜前記ポリカーボネート樹脂で希釈しながら再度溶融混練し、本明細書に記載された範囲の含有量となるように調整して得ることもできる。
この場合の形状は、いわゆる一般的なペレット形状でもよいが、例えば後述するようなシートなどの形状としたものも本発明の光輝性樹脂組成物として扱うことを妨げるものではない。
溶融混練する場合の押出機や口金の温度は、本発明に使用するポリカーボネート樹脂に適した範囲であれば特に制限されないが、通常180℃〜240℃の範囲であることが好ましい。
【0077】
本発明の光輝性樹脂組成物は、前述の通り重量平均分子量の低下が殆ど起こらないことが特徴であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定した、本発明に使用するポリカーボネート樹脂の重量平均分子量の値を100%とした時、本発明の光輝性樹脂組成物の重量平均分子量の保持率は、好ましくは90%以上、より好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上となる。
重量平均分子量が係る範囲となるためには、前記光輝性粒子の添加量を本明細書に記載の範囲内において適宜調整すればよいが、この方法に限定されるものではない。
【0078】
本発明の光輝性樹脂組成物は、前記ポリカーボネート樹脂を主成分とするものであって、本発明の特徴を損なわない範囲で、公知の他の樹脂を混合させることもできる。
また、その他の添加剤成分として、耐熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、ブルーイング剤、透明着色剤または帯電防止剤等を、本発明の特徴を損なわない範囲で添加してもよい。
【0079】
<成形体>
本発明の光輝性樹脂組成物を射出成形してなる成形体は、光輝性意匠を幅広く選択することができ、予め顔料等で原料着色したり着色ペレットと混合したりすれば、塗装工程を経ることなく所望の光輝性意匠及び色調を付与した成形品を簡便に得ることができる。
また成形体面方向に光輝性粒子面方向が配向しやすいので、フィラー含有樹脂でありながらも表面平滑性に富み、鏡面成形体も簡便に得ることができる。
更に透明加飾フィルムを貼ったり、透明塗料を塗装したりすれば、外観に深みが増し、従来公知の成形法、塗装法では得難かった意匠を得ることができる。
【0080】
<化粧シート>
本発明の光輝性樹脂組成物を押出成形法等により製膜した層を有するシートは、光輝性意匠に富む化粧シートとして好適に用いることができる。
本発明の光輝性樹脂組成物を製膜する方法は特に制限なく、Tダイ成形法またはカレンダー成形法等の通常薄いシートを製膜する方法を制限なく用いることができる。また多層構造の製品を得るために、マルチマニホールドまたはフィードブロックを用いた共押出成形法により、積層一体化した状態に製膜したり、単層シートと他種のシートとを熱ラミネーション等で張合わせて一体化させたりすることができる。
【0081】
表面に可視光透過性を有する透明保護層を積層した化粧シートを得る場合は、以下に示すA層、B層を少なくとも備えた構造とすることが好ましい。
A層:可視光透過性を有し、厚みが10μm以上である樹脂層。
B層:本発明の光輝性樹脂組成物からなり、厚みが30μm以上である樹脂層。
【0082】
A層に用いる樹脂は、本発明の光輝性樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂若しくはポリエチレンテレフタレート樹脂等の結晶性ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレートのジヒドロキシ化合物原料の一部またはジカルボン酸原料の一部を置換した構造の非晶性または低結晶性ポリエステル樹脂、芳香族ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂等のアクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン共重合樹脂、メチルメタクリレート・スチレン共重合樹脂または非晶性ポリオレフィン樹脂あるいはこれらの複数種ブレンド物、エラストマー成分をブレンドし柔軟性を付与した樹脂組成物等、のうち可視光透過性を有するものを好適に挙げることができる。
【0083】
これらの中でも、本発明の光輝性樹脂組成物に用いるポリカーボネート樹脂をA層にも用いることが、共押出成形法により容易に一体化させやすく、製膜後の反りまたは収縮シワを抑制することができるため好適である。
【0084】
A層の厚みは通常10μm以上であることが好ましく、より好ましくは30μm以上である。表面保護性を確保したり、深いエンボス意匠を付与したりする場合は、50μm以上が好ましい。また上限は特に無いが、通常好ましくは120μm以下、より好ましくは105μm以下とすることで、シートの巻き取り性や折り曲げ性を損なうこと無く、またシート製品の薄肉軽量化にも資する。
【0085】
B層の厚みは通常30μm以上であることが好ましく、より好ましくは50μm以上で
ある。これより薄いと光輝性粒子を一様分散させることが困難になる。また上限は特に無いが、通常好ましくは150μm以下、より好ましくは130μm以下とすることで、シートの巻き取り性や折り曲げ性を損なうこと無く、またシート製品の薄肉軽量化にも資する。
【0086】
更に金属板、木質板、樹脂板、石膏板、陶器、コンクリート壁またはモルタル壁等の基材に貼りつけて、基材隠蔽意匠性を付与することに好適な、着色層を備えた化粧シートを得ることができる。好ましい実施形態は、表面側から前記A層、前記B層、以下に示すC層を少なくとも含む構造である。
C層:熱可塑性樹脂と着色剤を含有する樹脂組成物からなり、厚みが45〜260μmである樹脂層。
【0087】
C層は着色層であって、化粧シートへ着色意匠の付与、基材の視覚的隠蔽効果の付与、または光輝性意匠層等の発色向上等の目的で配置される。また必要に応じ金属被覆または金属酸化物被覆をして、金属外観を付与していてもよい。
【0088】
C層に用いる熱可塑性樹脂は、特に制限は無いがメタクリル樹脂またはメタクリル酸エステル樹脂と総称される樹脂から好適に選択される。特には架橋アクリルゴム弾性体を核としてメタクリル酸エステルをグラフト重合したコア・シェル型共重合組成物を含む、メタクリル酸エステル系樹脂を好適に用いることができる。これらのアクリル系樹脂はソフトアクリル、軟質アクリルまたは柔軟性アクリル等と呼称され、カレンダー成形性に優れるものはカレンダーアクリルと呼称されることもある。
【0089】
前記架橋弾性体を含むことでシートに溶融張力が付与され、カレンダー成形時にドローダウン等の製膜不良を起こすことが少ない。また金属ロールからの剥離性も付与され、滑剤等を特段に工夫して添加しなくても容易にカレンダー成形が可能となる。
【0090】
C層に用いる着色剤は、種類や添加量に特に制限は無いが、一例として白系の着色を行う場合、隠蔽効果が高く、粒径が微細で、樹脂シートの加工性に不具合を起こしにくい酸化チタン顔料を用い、色彩調整用に有彩色の顔料を少量添加する手法が好ましい。基材の視覚的隠蔽効果に関しては、一例として内装建材用の樹脂シートの場合、JIS K5600(1999年)に準拠して、隠蔽率0.98以上が求められることが多い。一方、逆に基材の色彩や意匠を反映させるために着色隠蔽性を低下させることもある。
【0091】
C層の製膜方法は特に制限は無いが、Tダイ成形法、インフレーション成形法若しくはカレンダー成形法、またはその他押出成形法により製膜することができる。前記A層及び前記B層と共押出成形してもよい。中でも少量多品種の生産に対応しやすいカレンダー成形法が好ましい。
【0092】
C層は基材へ貼り付ける加工性を確保するために、23℃での引張破断伸びが100%以上350%以下であることが好ましい。下限値として、より好ましくは125%以上、さらに好ましくは150%以上であり、上限値として、より好ましくは325%以下、さらに好ましくは300%以下である。下限値が前記範囲にあれば、積層一体化やエンボス付与などの加工性に優れる。また、上限値が前記範囲にあれば、表面硬度の高いA層と積層した場合にも、該樹脂シートの表面硬度を高い状態で維持することが可能である。
【0093】
C層の厚さは好ましくは45μm以上、より好ましくは70μm以上である。これより化粧シートの表層側にエンボス意匠を付与する場合に、該C層が張力付与層として十分作用することができる。また上限は特に無いが、好ましくは260μm以下、より好ましくは240μm以下である。かかる範囲とすることで、シートの巻き取り性や折り曲げ性を
損なうこと無く、またシート製品の薄肉軽量化にも資する。
【0094】
本発明の化粧シートは、更に印刷層(D層)を内部に設けることができる。D層はグラビア印刷、オフセット印刷若しくはスクリーン印刷等、または公知の印刷方法で設けることができ、絵柄は石目調、木目調、幾何学模様または抽象模様等任意である。また前面ベタ印刷でも部分印刷でもよい。
【0095】
D層を配置する位置は特に制限がなく、A層の表層側、A層とB層の間、B層とC層の間、C層の外側、いずれでもよい。
【0096】
<化粧シートへのエンボス意匠付与>
本発明の化粧シートにエンボス意匠を付与する場合、まずB層と必要に応じA層及びC層とを重ねあわせ、熱融着積層等により積層一体化する。または共押出成形により予め積層一体化してあるものでもよい。これを加熱ロールや赤外線ヒータ等により十分予熱し、エンボスロールとニップロールで挟んで通紙することでエンボス柄が転写される。この後冷却ロールで冷却しエンボス固定させる。従来PVCシートの化粧シートにエンボス加工する際に用いられてきたエンボス加工機を用いれば、これら一連の加工を連続して行うことができる。
【0097】
この時の予熱条件は、エンボス柄を付与する層のガラス転移温度より15℃以上高い温度にすることが好ましい。一般にC層が無い構成の場合、該温度前後でシートの弾性率が鋭敏に変化するため、シートの伸びまたはシワ入り等の不具合を生じやすいが、該C層を備えることで安定してエンボス加工することができる。
【0098】
得られたエンボス柄を保護する目的で、更に表層に可視光透過性を有する樹脂層を備えることがある。この場合はA層に用いることができる前述の樹脂からなる樹脂シートを、エンボス柄を付与した化粧シートの表面側に重ねあわせ、熱融着積層等により積層一体化する。
【0099】
本発明の化粧シートの総厚みは、通常75μm以上であることが好ましく、より好ましくは90μm以上である。かかる範囲とすることで、被覆する基材を十分保護することができ、シートの取扱いも容易である。また上限は特に無いが、通常300μm以下であることが好ましい。
【0100】
<樹脂シート被覆金属積層体>
本発明の化粧シートを金属板上にラミネートして、本発明の樹脂シート被覆金属積層体を得る場合、用いる金属板としては、例えば、熱延鋼板、冷延鋼板、溶融亜鉛メッキ鋼板、電気亜鉛メッキ鋼板、錫メッキ鋼板、ステンレス鋼板等の各種鋼板、アルミニウム板またはアルミニウム系合金板等が挙げられる。金属板は、化成処理を施してから使用してもよい。金属板の厚みは用途毎に異なるが、通常0.1〜10mm程度の範囲で選択される。
【0101】
本発明の樹脂シート被覆金属積層体は、前記化粧シートと前記金属板とを、従来公知の方法によりラミネートして製造することができる。
【0102】
例えばアクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤またはポリエステル系接着剤等の一般に使用される熱硬化性接着剤を乾燥後厚みが2〜10μm程度になるよう金属板に塗布して、加熱炉等で塗布面を乾燥加熱し、直ちにロールラミネータ等を用いて本発明の化粧シートを貼りつけて密着させる方法が挙げられる。前記化粧シートのC層にはアクリル系樹脂が専ら用いられるため、中でもアクリル系接着剤を用いることが良好な
密着性を得る点で好ましいが、これら方法に特に限定されるものではない。
【0103】
本発明の樹脂シート被覆金属積層体は、住宅用玄関ドア、各種建材、ユニットバス、鋼製家具、電気電子機器筐体または自動車内装等に好適に用いることができる。
【0104】
中でも屋内壁材やエレベータ表面板、電気電子機器筐体等は、多種多様な意匠性が求められるようになってきており、本発明の化粧シート及び樹脂シート被覆金属積層体はこうした様々な要求に答えられるものである。
【0105】
頻繁に人の手が触れたり、布巾等で拭き掃除したりする用途については、表面硬度が取り分け求められる。この場合は、前記A層を高硬度樹脂で作製して設けたりハードコート層を設けたりして、表面硬度を極めて高くすることもできる。
【実施例】
【0106】
本発明をより具体的かつ詳細に説明するために、以下に実施例を示すが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0107】
<光輝性樹脂組成物の製造>
B層を構成する光輝性樹脂組成物を製造するために、光輝性粒子として表1に記載の種類、形状、被覆金属のものを用いた。樹脂原料として下記(b−1)及び(b−2)を用いた。光輝性粒子の配合量はいずれも1.5質量%とした。
(b−1):ジヒドロキシ化合物としてイソソルビドと、1,4−シクロヘキサンジメタノールを用い、イソソルビドに由来する構造単位:1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する構造単位=70:30(モル%)、還元粘度=0.51dl/gとなるように溶融重合法により得たポリカーボネート樹脂。
(b−2):ジヒドロキシ化合物として2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを用い、溶融重合法により得た芳香族ポリカーボネート樹脂である、三菱エンジニアリングプラスチックス社製「ノバレックス7025A」。
これらを口径φ35mmの同方向二軸押出機を用いて溶融混練しペレット化した。ここで(b−1)を用いたときはシリンダー設定温度を230℃、(b−2)を用いたときは290℃とした。
【0108】
表1中の「メタシャイン」は日本板硝子社製のガラスフレークの表面に金属薄膜または金属酸化物がコートされたもので、「鱗片状アルミニウム」はメタリック塗料に用いられるもので、ノンリーフタイプと呼ばれる表面処理のないもののうち粒径の大きい物を選択しており、「パールマイカ顔料」は真珠光沢顔料として用いられるもので、天然または合成マイカの表面に酸化チタン薄膜がコートされたものである。
【0109】
前記実施例及び比較例の樹脂ペレットについてクロロホルムを溶離液として、フィラー成分を濾過した後、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで分子量測定して重量平均分子量を算出した結果を表1に示す。なお樹脂原料の重量平均分子量は(b−1)が37200、(b−2)が72500であった。樹脂原料に対する重量平均分子量の保持率が90%以上の場合は合格、90%未満の場合は不合格とした。
【0110】
【表1】

【0111】
表1に示すように実施例1〜4の光輝性樹脂組成物はいずれも樹脂原料に対する重量平均分子量の保持率が90%以上であるのに対し、比較例1〜4の光輝性樹脂組成物はいずれも樹脂原料に対する重量平均分子量の保持率が90%未満であった。
【0112】
この結果から、本発明の光輝性樹脂組成物は、従来の芳香族ポリカーボネート系樹脂と溶融混合すると該樹脂の重量平均分子量を著しく低下させる光輝性粒子を用いても、重量平均分子量の低下が殆ど起こらないことがわかった。
【0113】
<A層及びB層を備えた化粧シートの製造>
2台の口径φ65mmのベント付き単軸押出機、マルチマニホールド機構を有するTダイ、及び必要な導管類を用いて、A層及びB層からなる2種2層の共押出シートを製造した。B層に(b−1)を用いた場合はA層にも(b−1)を、B層に(b−2)を用いた場合はA層にも(b−2)を用いた。加工温度は前述と同じとした。このときA層の厚みは20μm、B層の厚みは60μmとなるよう調整した。
【0114】
<C層の製造>
三菱レイヨン社製「メタブレン W−377」を70質量%、クラレ社製「パラペット
SA」を30質量%、三菱レイヨン社製「メタブレン L−1000」を0.5質量%、白色顔料酸化チタンを20重量%、を事前混合した。該混合物を、前工程に予備混練ロールを有する、金属ロール4本からなるカレンダー成形装置を用いて、ロール温度170℃〜185℃の条件下でシート圧延を行い、厚さ120μmの白色シートを製造した。
【0115】
「メタブレン W−377」は、アクリル樹脂系架橋ゴム弾性体成分を多量に含むアクリル系樹脂であり、カレンダー成形用の軟質アクリル樹脂として市販されている。「パラペット SA」は、アクリル樹脂系架橋ゴム弾性体成分を多量に含み、高い柔軟性を有しつつ、良好な流動性を兼ね備えている軟質アクリル樹脂として市販されており、射出成形用で軟質PVC代替用途に特に好適である。「メタブレン L−1000」は、アクリル系外部滑剤であり、安定生産性やブリード抑制のために少量添加する用途で市販されている。
【0116】
<A・B層からなる化粧シートとC層との積層一体化>
軟質PVCシートへのエンボス付与に一般に使用されているエンボス付与機を用いて、A・B層からなる前記化粧シートとC層との熱融着積層一体化を行った。加熱ドラムを140℃に設定し、A・B層からなる化粧シートとC層とを2本の繰り出し軸から供給し、加熱ドラムへの接触部分で熱融着積層により一体化した。その後冷却ロールを経て一体化したシートを冷却固化し巻き取った。
【0117】
<化粧シートの光輝性意匠の評価>
得られたA・B・C層からなる積層化粧シートについて、光輝性意匠の目視評価した結
果を表2に示す。個々の光輝性粒子が強い輝度感を有する点の意匠として認識できる良好な意匠感を有するものを「○」、個々の光輝性粒子が点の意匠として認識されず全体に一様な金属調外観を示すもの、点の意匠として認識できるが輝度感にムラや偏りがあるもの、製膜時の不具合に起因する欠陥を有するものを「×」、製膜時の不具合はないが「○」に比べて満足できないものを「△」として判定した。
【0118】
【表2】

【0119】
表2に示すように、本発明の光輝性樹脂組成物を使用した実施例1〜4では、いずれも美麗な光輝性意匠を発現することができ、本発明の目的を十分達成することができることがわかった。一方従来公知の芳香族ポリカーボネート樹脂を使用した比較例1〜4では、重量平均分子量が原料樹脂に比べて低下しており、樹脂シートが脆くなったり破れやすくなったりするなどの不具合が発生した。さらに光輝性粒子の種類によっては、樹脂の白化や分解劣化を引き起こすことが原因と推定される不具合が生じ、多種多様な光輝性意匠を発現することができないことがわかった。
【0120】
以上、現時点において、最も実践的であり、且つ好ましいと思料する実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う光輝性樹脂組成物、化粧シート、及びこれらを用いた製品もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造の一部に下記一般式(1)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂100重量部に対して、光輝性粒子の含有量が0.1重量部以上、10重量部以下である光輝性樹脂組成物であって、該光輝性粒子が、無機粒子(金属粒子を除く)に金属もしくは金属酸化物を被覆したもの、又は金属粒子であることを特徴とする光輝性樹脂組成物。
【化1】

(但し、前記一般式(1)で表される部位が−CH−O−Hの一部である場合を除く。)
【請求項2】
前記ジヒドロキシ化合物が、下記式(2)で表されるジヒドロキシ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光輝性樹脂組成物。
【化2】

【請求項3】
前記無機粒子(金属粒子を除く)が、ガラスフレーク、マイカ、アルミナフレーク、シリカフレーク、及び雲母フレークからなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記金属粒子が、銀フレーク、ニッケルフレーク、金フレーク、チタンフレーク、及びアルミフレークからなる群より選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光輝性樹脂組成物。
【請求項4】
前記光輝性樹脂組成物の重量平均分子量の保持率が、前記ポリカーボネート樹脂の重量平均分子量の90%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光輝性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度(Tg)が80℃以上、145℃未満であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光輝性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光輝性樹脂組成物を射出成形して得られる成形体。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の光輝性樹脂組成物からなる層を含む化粧シート。
【請求項8】
少なくとも下記A層及び下記B層を含む、請求項7に記載の化粧シート。
A層:可視光透過性を有し、厚みが10μm以上である樹脂層。
B層:請求項1から5のいずれか1項に記載の光輝性樹脂組成物からなり、厚みが30μm以上である樹脂層。
【請求項9】
前記A層、前記B層及び下記C層の3層を少なくともこの順に含み、総厚みが75μm
以上300μm以下の範囲である、請求項8に記載の化粧シート。
C層:熱可塑性樹脂と着色剤を含有する樹脂組成物からなり、厚みが45μm以上260μm以下の範囲である樹脂層。
【請求項10】
請求項7から9のいずれか1項に記載の化粧シートを金属板上にラミネートして得られることを特徴とする樹脂シート被覆金属積層体。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む玄関ドア。
【請求項12】
請求項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む建材。
【請求項13】
請求項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含むユニットバス部材。
【請求項14】
請求項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む鋼製家具部材。
【請求項15】
請求項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む電気電子機器筐体。
【請求項16】
請求項10に記載の樹脂シート被覆金属積層体を含む自動車内装材。

【公開番号】特開2012−107218(P2012−107218A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228936(P2011−228936)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】