説明

光送信回路

【課題】個別の光信号をそれぞれ送信するチャネル間のクロストークによる信号劣化を抑制しつつ、各チャネルのドライバ回路を1つの集積回路に集積化する。
【解決手段】クロストーク補正回路13で、入力信号INBから入力信号INAへ干渉する干渉成分IBAに相当する補正信号CBAを、入力信号INBから生成してドライバ回路11Aへ出力するとともに、入力信号INAから入力信号INBへ干渉する干渉成分IABに相当する補正信号CABを、入力信号INAから生成してドライバ回路11Bへ出力し、ドライバ回路11Aで、補正信号CBAに基づいて、入力信号INAに含まれる干渉成分IBAを補償した後、駆動信号DAに変換し、ドライバ回路1Bで、補正信号CABに基づいて、入力信号INBに含まれる干渉成分IABを補償した後、駆動信号DBに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光通信技術に関し、特に複数の入力信号をO/E(Optical/Electrical)変換して得られた光信号をそれぞれ送信する光送信回路技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信技術の進展とともに伝送されるデータ量が飛躍的に増大しており、伝送装置の大容量化が求められている。この大容量化を実現するために、光送受信器の高速・大容量化が求められている。
図12は、一般的な光通信システムの構成例である(例えば、特許文献1、非特許文献1,2など参照)。この光通信システムは、光ファイバOFからなる光伝送路を介して接続された光送信器100と光受信器200とから構成されている。
【0003】
光送信器100は、送信する入力信号(電気信号)を光信号に変換する装置である。ドライバ回路101は、入力信号を、十分な大きさの電圧あるいは電流を有する駆動信号に変換して出力することにより、E/O変換素子102を駆動する機能を有している。E/O変換素子102は、レーザダイオードなどの電気/光変換素子からなり、ドライバ回路101からの駆動信号に応じた光信号を出力する機能を有している。
【0004】
一方、光受信器200は、光送信器100から送信された光信号を伝送媒体である光ファイバーOFを介して受光し、受信信号(電気信号)に変換する装置である。O/E変換素子201は、フォトダイオードなどの光/電気変換素子からなり、受光した光信号に応じた電気信号を出力する機能を有している。増幅回路202は、光ファイバーOFで損失した光信号レベルを補うとともに、後段の論理回路を駆動できる十分な信号振幅にするため、O/E変換素子201からの電気信号を増幅して出力する機能を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2536178号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】"Characteristics of Amplifier-integrated 40 Gbps Optical Receiver and Transmitter Modules", Kwang-Seong Choi, Ho-Gyeong Yun, Yong-Hwan Kwon, Joong-Seon Choe, and Jong-Tae Moon. Electronics Packaging Technology Conference, 2007. EPTC 2007. 9th
【非特許文献2】"A Compact Optical Transmitter and Receiver for lO-Gbit/s Transceiver Modules", Atsushi Kanda, Mia Ohki, Shunji Kimura, and Yasuhiro Suzuki. Lasers and Electro-Optics Society, 2002. LEOS 2002. The 15th Annual Meeting of the IEEE
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような光通信システムでは、光通信の大容量伝送を行うために、複数の光送信器を並列に並べて光波長などで多重化し伝送する方式、例えば、40Gbps/100Gbps Ethernet(Ethernetは登録商標)などの伝送方式が導入されつつある。このような光信号で多重化を行うような場合、各光信号を送信するチャネルに対応する光送信器を、並列的に配置して用いるのが一般的である。
図13は、光送信器の並列化構成を示す説明図である。ここでは、2つの光送信器(モジュール)100A,100Bが並列的に配置されている。これら光送信器100A,100Bは、前述した図12の光送信器100と同様に、ドライバ回路101およびE/O変換素子102から構成されており、特にドライバ回路101は、集積回路(IC)103に搭載されている。
【0008】
このように、複数の光送信器を並列的に配置した場合、送信側設備の規模が大きくなってしまいコストも高くなってしまうという問題があった。これに対して、送信側設備の規模を小さくし、部品点数を減らして低コストを実現する方法として、各光送信器のドライバ回路101を1つの集積回路(IC)に集積化する構成が考えられる。
【0009】
図14は、ドライバ回路の集積化構成を示す説明図である。ここでは、光送信器110内に、2つのドライバ回路111A,111Bと、2つのE/O変換素子112A,112Bとが配置されている。このうち、一方のチャネルにおいて、E/O変換素子112Aはドライバ回路111Aからの駆動信号で動作し、他方のチャネルにおいて、E/O変換素子112Bはドライバ回路111Bからの駆動信号で動作するものとなっている。また、ドライバ回路111A,111Bは、1つの集積回路113に集積化されており、図12の構成と比較して、サイズやコストを削減できる。
【0010】
しかしながら、複数のドライバ回路を1つの集積回路に集積した場合、個別の光信号をそれぞれ送信するチャネル間の相互干渉による信号劣化が生じ、伝送特性が悪くなるという問題がある。図15は、シリコン基板によるチャネル間の相互干渉を示す説明図である。
チャネル間干渉の要因としては、電源やグランド配線を介したクロストーク、信号配線間の空間結合によるクロストークが考えられる。
【0011】
特に、図15に示すように、絶縁層113Bを挟んでシリコン基板113Aに、チャネルごとの信号パターンLA,LBを形成した集積回路の場合、信号パターンLA,LBとシリコン基板113Aとの間の寄生容量C1,C2が存在し、シリコン基板113Aには接地電位との間の寄生抵抗R1,R2やシリコン基板113A内の寄生抵抗R3も存在する。このため、これら寄生容量C1,C2や寄生抵抗R1,R2,R3を介して、信号パターンLA,LB間にクロストークが発生し、相互干渉による信号劣化を起こしてしまう可能性が考えられる。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、個別の光信号をそれぞれ送信するチャネル間のクロストークによる信号劣化を抑制しつつ、各チャネルのドライバ回路を1つの集積回路に集積化することが可能な光送信回路技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明にかかる光送信回路は、入力された第1の駆動信号を第1の光信号に変換して出力する第1のE/O変換素子と、入力された第2の駆動信号を第2の光信号に変換して出力する第2のE/O変換素子と、入力された第1の入力信号を第1の駆動信号に変換して第1のE/O変換素子へ出力する第1のドライバ回路と、入力された第2の入力信号を第2の駆動信号に変換して第2のE/O変換素子へ出力する第2のドライバ回路と、第2の入力信号から第1の入力信号へ干渉する第1の干渉成分に相当する第1の補正信号を、第2の入力信号から生成して第1のドライバ回路へ出力するとともに、第1の入力信号から第2の入力信号へ干渉する第2の干渉成分に相当する第2の補正信号を、第1の入力信号から生成して第2のドライバ回路へ出力する第1のクロストーク補正回路とを備え、第1のドライバ回路で、第1の補正信号に基づいて、第1の入力信号に含まれる第1の干渉成分を補償した後、第1の駆動信号に変換し、第2のドライバ回路で、第2の補正信号に基づいて、第2の入力信号に含まれる第2の干渉成分を補償した後、第2の駆動信号に変換するようにしたものである。
【0014】
この際、第1のドライバ回路から出力される第1の駆動信号をモニタする第1の電気モニタ回路と、第2のドライバ回路から出力される第2の駆動信号をモニタする第2の電気モニタ回路と、第1および第2の電気モニタ回路で得られた、第1および第2の駆動信号に関するモニタ結果に基づいて、第1および第2の干渉成分に関する制御信号を出力する制御回路とをさらに備え、第1のクロストーク補正回路で、制御回路からの制御信号に基づいて、第2の入力信号から第1の干渉成分に相当する第1の補正信号を生成するとともに、第1の入力信号から第2の干渉成分に相当する第2の補正信号を生成するようにしてもよい。
【0015】
また、第1の電気モニタ回路に対する第1の駆動信号の入力/切断を制御する第1のスイッチと、第2の電気モニタ回路に対する第2の駆動信号の入力/切断を制御する第2のスイッチとをさらに備えてもよい。
【0016】
また、第1の電気モニタ回路に代えて、第1のE/O変換素子から出力される第1の光出力信号をモニタする第1の光モニタ回路を備え、第2の電気モニタ回路に代えて、第2のE/O変換素子から出力される第2の光出力信号をモニタする第2の光モニタ回路を備え、制御回路で、第1および第2の光モニタ回路で得られた、第1および第2の光信号に関するモニタ結果に基づいて、第1および第2の干渉成分に関する制御信号を出力するようにしてもよい。
【0017】
また、第1のクロストーク補正回路に、第2の入力信号の振幅を調整することにより、第2の入力信号から第1の補正信号を生成する第1の重み付け回路と、第1の入力信号の振幅を調整することにより、第1の入力信号から第2の補正信号を生成する第2の重み付け回路とを含むようにしてもよい。
【0018】
また、第1のクロストーク補正回路に、第2の入力信号に対する遅延時間を調整することにより、第2の入力信号から第1の補正信号を生成する第1の遅延回路と、第1の入力信号に対する遅延時間を調整することにより、第1の入力信号から第2の補正信号を生成する第2の遅延回路とを含むようにしてもよい。
【0019】
また、入力された第3の駆動信号を第3の光信号に変換して出力する第3のE/O変換素子と、入力された第3の入力信号を第3の駆動信号に変換して第3のE/O変換素子へ出力する第3のドライバ回路と第3の入力信号から第2の入力信号へ干渉する第3の干渉成分に相当する第3の補正信号を、第3の入力信号から生成して第2のドライバ回路へ出力するとともに、第2の入力信号から第3の入力信号へ干渉する第4の干渉成分に相当する第4の補正信号を、第2の入力信号から生成して第3のドライバ回路へ出力する第2のクロストーク補正回路とをさらに備え、第3のドライバ回路で、第4の補正信号に基づいて、第3の入力信号に含まれる第3の干渉成分を補償した後、第3の駆動信号に変換し、第2のドライバ回路で、第2および第3の補正信号に基づいて、第2の入力信号に含まれる第2および第3の干渉成分を補償した後、第2の駆動信号に変換するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1のE/O変換素子で、第1の干渉成分が補償された第1の入力信号に応じた第1の駆動信号が、第1の光信号に変換され、第2のE/O変換素子で、第2の干渉成分が補償された第2の入力信号に応じた第2の駆動信号が、第2の光信号に変換される。したがって、第1および第2の入力信号間で、クロストークが発生した場合でも、このクロストークによる信号の乱れを抑えた第1および第2の光信号を送信することができる。このため、各チャネルのドライバ回路を1つの集積回路に集積化することが可能となる。
【0021】
したがって、本実施の形態によれば、複数チャネルの光信号を並列的に送信する光送信回路において、チャネル間の相互干渉による信号劣化を抑制しつつ、回路のサイズやコストを削減することができる。このため、小型かつ安価で、安定した伝送特性を持つ光送信器を実現することが可能となり、40Gbps/100Gbps Ethernetなど、複数の光送信回路(モジュール)を並列に並べて光波長などで多重化して伝送する伝送方式で使用される光送信器として、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【図2】干渉成分の補償を行わない光送信回路の動作を示す説明図である。
【図3】第1の実施の形態にかかる光送信回路の動作を示す説明図である。
【図4】第2の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【図5】第2の実施の形態にかかる光送信回路の動作を示す説明図である。
【図6】第3の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【図7】第3の実施の形態にかかる光送信回路の調整動作を示す説明図である。
【図8】第3の実施の形態にかかる光送信回路の運用動作を示す説明図である。
【図9】第4の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【図10】第5の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【図11】第6の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【図12】一般的な光通信システムの構成例である。
【図13】光送信器の並列化構成を示す説明図である。
【図14】ドライバ回路の集積化構成を示す説明図である。
【図15】シリコン基板によるチャネル間の相互干渉を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる光送信回路10について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【0024】
光送信回路10は、送信する入力信号(電気信号)を、光信号へ変換して出力する機能を有している。この光送信回路10は、光基幹伝送システム、光インターコネクション等の各種光伝送システムに用いられる光送信用IC、ならびにこれを用いた高速光送信モジュール、光送受信トランシーバなどに適用される。
【0025】
光送信回路10には、主な回路部として、ドライバ回路11A,11B、E/O変換素子12A,12B、クロストーク補正回路13、および制御回路14が設けられている。これら回路部のうち、ドライバ回路11AおよびE/O変換素子112Aが、入力信号INAを光信号OUTAへ変換するチャネルAを構成し、ドライバ回路11BおよびE/O変換素子112Bが、入力信号INBを光信号OUTBへ変換するチャネルBを構成している。本実施の形態では、2つのチャネルA,Bを持つ場合を例として説明するが、チャネル数は2つに限定されるものではなく、3つ以上のチャネルを持つ場合にも同様にして適用できる。
【0026】
本実施の形態は、クロストーク補正回路13で、入力信号INBから入力信号INAへ干渉する干渉成分IBAに相当する補正信号CBAを、入力信号INBから生成してドライバ回路11Aへ出力するとともに、入力信号INAから入力信号INBへ干渉する干渉成分IABに相当する補正信号CABを、入力信号INAから生成してドライバ回路11Bへ出力し、ドライバ回路11Aで、補正信号CBAにより入力信号INAに含まれる干渉成分IBAを補償した後、E/O変換素子12Aの駆動信号DAに変換し、ドライバ回路11Bで、補正信号CABにより入力信号INBに含まれる干渉成分IABを補償した後、E/O変換素子12Bの駆動信号DBに変換するようにしたものである。
【0027】
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる光送信回路10の構成について詳細に説明する。
ドライバ回路(第1のドライバ回路)11Aは、電気信号からなる入力信号(第1の入力信号)INAを、十分な大きさの電圧あるいは電流を有する駆動信号(第1の駆動信号)DAに変換して出力することにより、E/O変換素子12Aを駆動する機能と、クロストーク補正回路13からの補正信号(第1の補正信号)CBAに基づいて、入力信号INAに含まれる、入力信号INBから入力信号INAへ干渉する干渉成分(第1の干渉成分)IBAを補償した後、駆動信号DAに変換する機能とを有している。
【0028】
ドライバ回路(第2のドライバ回路)11Bは、電気信号からなる入力信号(第2の入力信号)INBを、十分な大きさの電圧あるいは電流を有する駆動信号(第2の駆動信号)DBに変換して出力することにより、E/O変換素子12Bを駆動する機能と、クロストーク補正回路13からの補正信号(第2の補正信号)CABに基づいて、入力信号INBに含まれる、入力信号INAから入力信号INBへ干渉する干渉成分(第2の干渉成分)IABを補償した後、駆動信号DBに変換する機能とを有している。
【0029】
E/O変換素子12Aは、ドライバ回路11Aから入力された駆動信号DAを光信号(第1の光信号)OUTAに変換して出力する機能を有している。
E/O変換素子12Bは、ドライバ回路11Bから入力された駆動信号DBを光信号(第2の光信号)OUTBに変換して出力する機能を有している。
【0030】
クロストーク補正回路(第1のクロストーク補正回路)13は、入力信号INBから入力信号INAへ干渉する干渉成分(第1の干渉成分)IBAに相当する補正信号(第1の補正信号)CBAを、入力信号INBから生成してドライバ回路11Aへ出力する機能と、入力信号INAから入力信号INBへ干渉する干渉成分(第2の干渉成分)IABに相当する補正信号(第2の補正信号)CABを、入力信号INAから生成してドライバ回路11Bへ出力する機能とを有している。
【0031】
制御回路14は、入力信号INBから入力信号INAへ干渉する干渉成分IBA、および入力信号INAから入力信号INBへ干渉する干渉成分IABに関する制御信号CNTを出力する機能を有している。この制御信号CNTには、これら干渉成分IBA,IABに関する、振幅成分や遅延時間などのパラメータが含まれている。これらパラメータは、当該光送信回路10の固有値として予め計測して、制御回路14に設定しておけばよい。
【0032】
[第1の実施の形態の動作]
次に、図2および図3を参照して、本実施の形態にかかる光送信回路10の動作について説明する。図2は、干渉成分の補償を行わない光送信回路の動作を示す説明図である。図3は、第1の実施の形態にかかる光送信回路の動作を示す説明図である。
【0033】
図2には、電気信号からなる2つの入力信号INA,INBについて、入力信号INAは無入力状態であり、入力信号INBに有効信号が入力されている状態が示されている。干渉成分の補償を行わない場合、入力信号INA,INBが流れる信号線間やドライバ回路11A,11B間でクロストークが生じ、入力信号INAに入力信号INBの干渉を受け、干渉成分IBAが重畳してしまう。その干渉成分IBAは、入力信号INAに対して入力信号INBの振幅成分ΔAを加え、また入力信号INBに対する遅延時間ΔTを与える。
【0034】
一方、本実施の形態を適用して干渉成分の補償を行った場合、図3に示すように、クロストーク補正回路13において、入力信号INBから入力信号INAへ干渉する干渉成分IBAに相当する補正信号CBAが生成される。この補正信号CBAは、干渉成分IBAと同じ振幅成分ΔAで干渉成分IBAとは逆極性の振幅と、入力信号INBに対して干渉成分IBAと同じ遅延時間ΔTとを有している。
【0035】
ドライバ回路11Aは、この補正信号CBAを入力信号INAと合成して、入力信号INBから入力信号INAへのクロストーク分の重み付けおよび遅延を施すことにより、入力信号INAに含まれる干渉成分IBAをキャンセルする。これにより、ドライバ回路11Aで、入力信号INAに含まれる干渉成分IBAが補償され、補償後の入力信号INA’が駆動信号DAに変換されて、E/O変換素子12Aへ出力される。したがって、E/O変換素子12Aからは、干渉成分が補償された入力信号INA’に応じた光信号OUTA、この例では、無入力状態を示す光信号が出力される。
【0036】
図3では、補正信号CBAに基づいて、入力信号INAに含まれる干渉成分IBAを補償する場合について説明したが、補正信号CABに基づいて、入力信号INBに含まれる干渉成分IABを補償する場合も、上記と同様である。
すなわち、クロストーク補正回路13において、入力信号INAから入力信号INBへ干渉する干渉成分IABに相当する補正信号CABが生成される。この補正信号CABは、干渉成分IABと同じ振幅成分で干渉成分IABとは逆極性の振幅と、入力信号INAに対して干渉成分IABと同じ遅延時間とを有している。
【0037】
ドライバ回路11Bは、この補正信号CABを入力信号INBと合成して、入力信号INAから入力信号INBへのクロストーク分の重み付けおよび遅延を施すことにより、入力信号INBに含まれる干渉成分IABをキャンセルする。これにより、ドライバ回路11Bで、入力信号INBに含まれる干渉成分IABが補償され、補償後の入力信号INB’が駆動信号DBに変換されて、E/O変換素子12Bへ出力される。したがって、E/O変換素子12Bからは、干渉成分が補償された入力信号INB’に応じた光信号OUTBが出力される。
【0038】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、クロストーク補正回路13で、入力信号INBから入力信号INAへ干渉する干渉成分IBAに相当する補正信号CBAを、入力信号INBから生成してドライバ回路11Aへ出力するとともに、入力信号INAから入力信号INBへ干渉する干渉成分IABに相当する補正信号CABを、入力信号INAから生成してドライバ回路11Bへ出力し、ドライバ回路11Aで、補正信号CBAに基づいて、入力信号INAに含まれる干渉成分IBAを補償した後、駆動信号DAに変換し、ドライバ回路1Bで、補正信号CABに基づいて、入力信号INBに含まれる干渉成分IABを補償した後、駆動信号DBに変換するようにしたものである。
【0039】
これにより、E/O変換素子12Aで、干渉成分IBAが補償された入力信号INA’に応じた駆動信号DAが、光信号OUTAに変換され、E/O変換素子12Bで、干渉成分IABが補償された入力信号INB’に応じた駆動信号DBが、光信号OUTBに変換される。したがって、入力信号INA,INB間で、クロストークが発生した場合でも、このクロストークによる信号の乱れを抑えた光信号OUTA,OUTBを送信することができる。このため、各チャネルのドライバ回路11A,11Bを1つの集積回路に集積化することが可能となる。
【0040】
したがって、本実施の形態によれば、複数チャネルの光信号を並列的に送信する光送信回路において、チャネル間の相互干渉による信号劣化を抑制しつつ、回路のサイズやコストを削減することができる。このため、小型かつ安価で、安定した伝送特性を持つ光送信器を実現することが可能となり、40Gbps/100Gbps Ethernetなど、複数の光送信回路(モジュール)を並列に並べて光波長などで多重化して伝送する伝送方式で使用される光送信器として、極めて有用である。
【0041】
[第2の実施の形態]
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる光送信回路10について説明する。図4は、第2の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【0042】
第1の実施の形態では、制御回路14において、予め設定されている、干渉成分IBA,IABに関する振幅成分や遅延時間などのパラメータに基づいて、制御信号CNTを生成して出力する場合を例として説明した。本実施の形態では、ドライバ回路11A,11Bから出力される駆動信号DA,DBをモニタし、得られたモニタ結果に基づき制御回路14で制御信号CNTを生成して出力する場合について説明する。
【0043】
本実施の形態では、第1の実施の形態(図1参照)と比較して、電気モニタ回路21A,21Bが追加されている。
電気モニタ回路(第1の電気モニタ回路)21Aは、ドライバ回路11AからE/O変換素子12Aへ出力される駆動信号DAをモニタし、得られたモニタ結果MAを制御回路14へ出力する機能を有している。
電気モニタ回路(第2の電気モニタ回路)21Bは、ドライバ回路11BからE/O変換素子12Bへ出力される駆動信号DBをモニタし、得られたモニタ結果MBを制御回路14へ出力する機能を有している。
【0044】
これら電気モニタ回路21A,21Bの具体例としては、入力された駆動信号DA,DBのアイパターンをモニタするアイモニタがある。一般に、アイモニタは、モニタ対象となる対象信号の各パルスの振幅および位相の一致度に応じて変化する、アイパターンの開度を出力する機能を有しており、対象信号に対して他の信号からの干渉が大きい場合、対象信号の各パルスの振幅および位相が乱れるため、アイパターンの開度が小さくなる。このアイモニタを利用すれば、干渉成分IBA,IABの影響により、駆動信号DA,DBに信号変化が大きいほど、各パルス波形の振幅や位相が乱れて、アイパターンの開度が小さくなる。
【0045】
制御回路14は、電気モニタ回路21Aで得られた駆動信号DAに関するモニタ結果MAと、電気モニタ回路21Bで得られた駆動信号DBに関するモニタ結果MBとに基づいて、干渉成分IBA,IABに関する振幅成分や遅延時間などのパラメータを抽出する機能と、これらパラメータに基づいて制御信号CNTを生成して出力する機能とを有している。
【0046】
制御回路14において、モニタ結果MA,MBから干渉成分IBA,IABに関するパラメータを抽出する方法としては、例えばこれらパラメータの異なる制御信号CNTを生成して順次クロストーク補正回路13へ出力し、これらパラメータごとに電気モニタ回路21A,21Bからモニタ結果MA,MBとして得られたアイパターンのうち、最も大きい開度が得られたパラメータ、あるいは予め設定されている開度しきい値以上の開度が得られたパラメータを、最適パラメータとして抽出すればよい。
【0047】
[第2の実施の形態の動作]
次に、図5を参照して、本実施の形態にかかる光送信回路10の動作について説明する。図5は、第2の実施の形態にかかる光送信回路の動作を示す説明図である。
【0048】
図5には、電気信号からなる2つの入力信号INA,INBについて、入力信号INAは無入力状態であり、入力信号INBに有効信号が入力されている状態が示されている。この際、駆動信号DAには、入力信号INBから入力信号INAへ干渉する干渉成分IBAを、補正信号CBAにより補償した結果に応じた信号変化が含まれているものとする。
【0049】
電気モニタ回路21Aは、ドライバ回路11AからE/O変換素子12Aへ出力される駆動信号DAをモニタし、そのモニタ結果MAを制御回路14へ出力する。
制御回路14は、このモニタ結果MAに基づいて干渉成分IBAに関する振幅成分や遅延時間に一致した、より最適なパラメータを抽出し、得られたパラメータに基づいて制御信号CNTを生成してクロストーク補正回路13へ出力する。
これにより、クロストーク補正回路13で、この制御信号CNTに基づき補正信号CBAが生成されて、ドライバ回路11Aへ出力される。
【0050】
図5では、補正信号CBAに基づいて、入力信号INAに含まれる干渉成分IBAを補償する場合について説明したが、補正信号CABに基づいて、入力信号INBに含まれる干渉成分IABを補償する場合も、上記と同様である。
すなわち、電気モニタ回路21Aにおいて、ドライバ回路11BからE/O変換素子12Bへ出力される駆動信号DBがモニタされ、そのモニタ結果MBが制御回路14へ出力される。
【0051】
制御回路14は、このモニタ結果MBに基づいて干渉成分IABに関する振幅成分や遅延時間に一致した、より最適なパラメータを抽出し、得られたパラメータに基づいて制御信号CNTを生成してクロストーク補正回路13へ出力する。
これにより、クロストーク補正回路13で、この制御信号CNTに基づき補正信号CABが生成されて、ドライバ回路11Bへ出力される。
【0052】
[第2の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、制御回路14において、電気モニタ回路21A,21Bで得られた、駆動信号DA,DBに関するモニタ結果MA,MBに基づいて、干渉成分IBA,IABに関する制御信号CNTを出力するようにしたので、干渉成分IBA,IABに応じた補正信号CBA,CABを、適応的に生成することができる。このため、干渉成分IBA,IABに関する振幅成分や遅延時間などのパラメータを予め設定しておく必要がなくなるのに加えて、実際の干渉成分IBA,IABと誤差の少ない、より最適な補正信号CBA,CABを生成できる。したがって、ドライバ回路11A,11Bにおいて、入力信号INA,INBに含まれる干渉成分IBA,IABを、極めて高い精度で補償することが可能となる。
【0053】
[第3の実施の形態]
次に、図6を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる光送信回路10について説明する。図6は、第3の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【0054】
第2の実施の形態では、電気モニタ回路21A,21Bで、ドライバ回路11A,11Bから出力される駆動信号DA,DBを常にモニタする場合を例に説明した。この場合、電気モニタ回路21A,21Bの入力端子が、ドライバ回路11A,11Bの出力端子に、常に接続されることになり、ドライバ回路11A,11Bの出力負荷が増大する要因となる。
【0055】
本実施の形態では、電気モニタ回路21Aに対する駆動信号DAの入力/切断を制御するスイッチ(第1のスイッチ)31Aと、電気モニタ回路21Bに対する駆動信号DBの入力/切断を制御するスイッチ(第2のスイッチ)31Bとを設けている。これらスイッチ31A,31Bの導通状態/非導通状態は、制御回路14により切替制御される。
【0056】
[第3の実施の形態の動作]
次に、図7および図8を参照して、本実施の形態にかかる光送信回路10の動作について説明する。図7は、第3の実施の形態にかかる光送信回路の調整動作を示す説明図である。図8は、第3の実施の形態にかかる光送信回路の運用動作を示す説明図である。
【0057】
制御回路14は、電気モニタ回路21Aからのモニタ結果MAに基づき、干渉成分IBAに関する振幅成分や遅延時間などのパラメータとして、最適なパラメータを抽出する調整動作時において、図7に示すように、スイッチ31Aを導通状態に制御して、駆動信号DAを電気モニタ回路21Aへ入力する。
【0058】
また、制御回路14は、最適パラメータが抽出されて調整動作が終了した後、当該最適パラメータによる制御信号CNTに基づく補正信号CBAを用いて、実際に光信号を安定送信する運用動作時において、図8に示すように、スイッチ31Aを非導通状態に制御して、電気モニタ回路21Aに対する駆動信号DAの入力を遮断する。これにより、運用動作時には、制御回路14において、調整動作時に抽出されて保持された最適パラメータに応じて制御信号CNTが生成されて出力される。
【0059】
これら図7および図8では、スイッチ31Aに関する動作について説明したが、スイッチ31Bに関する動作も同様であり、調整動作時に、スイッチ31Bが導通状態に制御され、運用動作時には非導通状態に制御される。
【0060】
[第3の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、スイッチ31A,31Bにより、電気モニタ回路21A,21Bに対する駆動信号DA,DBの入力/切断を制御するようにしたので、実際に光信号を安定送信する運用動作時には、電気モニタ回路21A,21Bの入力端子を、ドライバ回路11A,11Bの出力端子から切り離すことができ、ドライバ回路11A,11Bの出力負荷に対する影響を低減することができる。したがって、駆動信号DA,DBの振幅に応じた正確な強度で、光信号OUTA,OUBを送信することができる。
【0061】
[第4の実施の形態]
次に、図9を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる光送信回路10について説明する。図9は、第4の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【0062】
第2の実施の形態では、ドライバ回路11A,11BからE/O変換素子12A,12Bへ出力される駆動信号DA,DBをモニタし、これらモニタ結果に基づき干渉成分IBA,IABに関する制御信号CNTを出力する場合を例として説明した。本実施の形態では、駆動信号DA,DBに代えて、E/O変換素子12A,12Bから出力される光信号OUTA,OUTBをモニタし、これらモニタ結果に基づき干渉成分IBA,IABに関する制御信号CNTを出力する場合について説明する。
【0063】
本実施の形態では、第2の実施の形態(図4参照)と比較して、電気モニタ回路21A,21Bに代えて、光モニタ回路41A,41Bが設けられている。
光モニタ回路(第1の光モニタ回路)41Aは、E/O変換素子12Aから出力される光信号OUTAをモニタし、得られたモニタ結果MOA(光信号)を出力する機能を有している。
光モニタ回路(第2の光モニタ回路)41Bは、E/O変換素子12Bから出力される光信号OUTBをモニタし、得られたモニタ結果MOB(光信号)を出力する機能を有している。
【0064】
これら光モニタ回路41A,41Bの具体例としては、光信号OUTA,OUTBを分岐出力する光カプラがある。この光カプラを利用すれば、干渉成分IBA,IABの影響により、光信号OUTA,OUTBに信号変化が大きいほど、モニタ結果MOA,MOBの光強度が小さくなる。
【0065】
O/E変換素子42は、光モニタ回路41Aからのモニタ結果MOAと光モニタ回路41Bからのモニタ結果MOBとをO/E変換し、得られたモニタ結果M(電気信号)を制御回路14へ出力する機能を有している。
制御回路14は、O/E変換素子42で得られたモニタ結果Mに基づいて、干渉成分IBA,IABに関する振幅成分や遅延時間などのパラメータを抽出する。
【0066】
制御回路14において、モニタ結果Mから干渉成分IBA,IABに関するパラメータを抽出する方法としては、例えばこれらパラメータの異なる制御信号CNTを生成して順次クロストーク補正回路13へ出力し、これらパラメータごとに得られたモニタ結果Mのうち、最も大きい信号強度が得られたパラメータ、あるいは予め設定されている強度しきい値以上の信号強度が得られたパラメータを、最適パラメータとして抽出すればよい。
【0067】
[第4の実施の形態の効果]
このように本実施の形態では、駆動信号DA,DBに代えて、E/O変換素子12A,12Bから出力される光信号OUTA,OUTBをモニタし、これらモニタ結果に基づき干渉成分IBA,IABに関する制御信号CNTを出力するようにしたので、駆動信号DA,DBをモニタするための電気モニタ回路21A,21Bが不要となる。このため、電気回路規模を削減することができる。また、光送信回路10のうちドライバ回路11A,11Bまでの回路区間におけるクロストークの影響に加えて、E/O変換素子12A,12Bおよび光信号OUTA,OUB間におけるクロストークの影響をも考慮して、入力信号INA,INBを補償することができ、より高精度に補償することが可能となる。
【0068】
[第5の実施の形態]
次に、図10を参照して、本発明の第5の実施の形態にかかる光送信回路10について説明する。図10は、第5の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【0069】
本実施の形態では、クロストーク補正回路13の詳細構成について説明する。
図10に示すように、クロストーク補正回路13には、主な回路部として、重み付け回路51A,51B、遅延回路52A,52B、および制御信号変換回路53が設けられている。
【0070】
重み付け回路(第1の重み付け回路)51Aは、入力信号INBの振幅を調整する機能を有している。
重み付け回路(第2の重み付け回路)51Bは、入力信号INAの振幅を調整する機能を有している。
【0071】
遅延回路(第1の遅延回路)52Aは、重み付け回路51Aで振幅調整した入力信号INBに対する遅延時間を調整し、補正信号CBAとして出力する機能を有している。
遅延回路(第2の遅延回路)52Bは、重み付け回路51Bで振幅調整した入力信号INAに対する遅延時間を調整し、補正信号CABとして出力する機能を有している。
【0072】
制御信号変換回路53は、制御回路14からの制御信号CNTを変換し、重み付け回路51A,51Bおよび遅延回路52A,52Bでの調整動作を指示する調整信号を出力する機能を有している。
【0073】
なお、図10の構成例では、入力信号INB,INAに対して、重み付け回路51A,51Bで振幅調整した後、遅延回路52A,52Bで遅延時間を調整する場合が例として示されているが、調整順序についてはこれに限定されるものではない。例えば、遅延回路52A,52Bで遅延時間を調整した後、重み付け回路51A,51Bで振幅調整するようにしてもい。
【0074】
また、図10の構成例では、入力信号INA,INBに対して、振幅調整と遅延時間調整の両方を適用する場合が例として示されているが、調整内容についてはこれに限定されるものではない。例えば、光送信回路10におけるクロストークの発生状況に応じて、振幅調整または遅延時間調整のいずれか一方のみを適用するようにしてもよい。
【0075】
[第5の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、クロストーク補正回路13に、入力信号INBの振幅を調整して補正信号CBAを生成する重み付け回路51A、および入力信号INAの振幅を調整して補正信号CABを生成する重み付け回路51Bを設け、あるいは、入力信号INBの遅延時間を調整して補正信号CBAを生成する遅延回路52A、および入力信号INAの遅延時間を調整して補正信号CABを生成する遅延回路52Bを設けるようにしたので、簡素な回路構成で、制御信号CNTに応じた補正信号CBA,CABを生成することができる。
【0076】
[第6の実施の形態]
次に、図11を参照して、本発明の第6の実施の形態にかかる光送信回路10について説明する。図11は、第6の実施の形態にかかる光送信回路の構成を示すブロック図である。
【0077】
第1〜第5の実施の形態では、2つの入力信号INA,INBをそれぞれ光信号OUTA,OUTBへ変換して出力する、2チャンネルの光送信回路を例として説明した。本実施の形態では、3チャンネル以上の光送信回路の構成について説明する。
【0078】
本実施の形態では、第1の実施の形態(図1参照)と比較して、ドライバ回路(第3のドライバ回路)11C、E/O変換素子(第3のE/O変換素子)12C、およびクロストーク補正回路(第2のクロストーク補正回路)13Bが追加されている。また、クロストーク補正回路(第1のクロストーク補正回路)13Aは、前述したクロストーク補正回路13に相当する。これらクロストーク補正回路13A,13Bは、それぞれ制御回路14からの制御信号CNTに基づき、それぞれの補正信号を生成する。
【0079】
3チャネル以上の光送信回路の場合、2つのチャネルに挟まれた位置に配置されたチャネルは、これら隣接する両方のチャネルからクロストークの影響を受ける。このため、各チャネルのうち、隣接するチャネル間で干渉成分を相互に補償する必要がある。
【0080】
本実施の形態では、クロストーク補正回路13Aにおいて、前述と同様にして、入力信号INA,INB間の干渉成分IBA,IABに相当する補正信号CBA,CABを生成している。また、クロストーク補正回路13Bにおいて、入力信号INC(第3の入力信号)から入力信号INBへの干渉成分(第3の干渉成分)ICBに相当する補正信号(第3の補正信号)CCBを生成し、入力信号INBから入力信号INCへの干渉成分(第4の干渉成分)IBCに相当する補正信号(第4の補正信号)CBCを生成している。
【0081】
したがって、ドライバ回路11Bは、クロストーク補正回路13Aからの補正信号CABとクロストーク補正回路13Bからの補正信号CCBに基づいて、入力信号INBに含まれる干渉成分IAB,ICBを補償した後、駆動信号DBに変換する。
また、ドライバ回路11Cは、クロストーク補正回路13Bからの補正信号CBCに基づいて、入力信号INCに含まれる干渉成分IBCを補償した後、駆動信号DCに変換する。
【0082】
[第6の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、入力信号INCに対応して、ドライバ回路11CとE/O変換素子12Cを設け、クロストーク補正回路13Bで、入力信号INB,INC間の干渉成分ICB,IBCに相当する補正信号CCB,CBCを生成し、ドライバ回路11Bで、補正信号CAB,CCBに基づいて、入力信号INBに含まれる干渉成分IAB,ICBを補償した後、駆動信号DBに変換し、ドライバ回路11Cで、補正信号CBCに基づいて、入力信号INCに含まれる干渉成分IBCを補償した後、駆動信号DCに変換するようにしたので、各チャネルのうち、隣接するチャネル間で干渉成分を相互に補償することができる。
【0083】
したがって、3チャネル以上の光信号を並列的に送信する光送信回路であっても、各チャネル間でのクロストークに応じた干渉成分を、精度よく補償することができる。このため、各チャネルのドライバ回路を1つの集積回路に集積化することが可能となる。
また、本実施の形態は、第1の実施の形態を基礎としているため、前述した第2〜第5の実施の形態を適用することができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0084】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、光伝送方式の電気/光変換を行う光送信回路に関し、特に、多チャンネルで高速、低ジッタ動作可能な光送信回路に関するものである。具体的には、光基幹伝送システム、光インターコネクション等の各種光伝送システムに用いられる光送信用IC、ならびにこれを用いた高速光送信モジュール、光送受信トランシーバなどに光送信回路として適用されるものである。本発明は、光通信技術の進展とともに、高速・大容量化が求められる上記光送受信トランシーバにおいて、チャネル間クロストークを抑える特性を実現することにより、高速多チャンネル動作可能な光送信回路を提供するものである。
【符号の説明】
【0086】
10…光送信回路、11A…ドライバ回路(第1のドライバ回路)、11B…ドライバ回路(第2のドライバ回路)、11C…ドライバ回路(第3のドライバ回路)、12A…E/O変換素子(第1のE/O変換素子)、12B…E/O変換素子(第2のE/O変換素子)、12C…E/O変換素子(第3のE/O変換素子)、13,13A…クロストーク補正回路(第1のクロストーク補正回路)、13B…クロストーク補正回路(第2のクロストーク補正回路)、14…制御回路、21A…電気モニタ回路(第1の電気モニタ回路)、21B…電気モニタ回路(第2の電気モニタ回路)、31A…スイッチ(第1のスイッチ)、31B…スイッチ(第2のスイッチ)、41A…光モニタ回路(第1の光モニタ回路)、41B…光モニタ回路(第2の光モニタ回路)、42…O/E変換素子、51A…重み付け回路(第1の重み付け回路)、51B…重み付け回路(第2の重み付け回路)、52A…遅延回路(第1の遅延回路)、52B…遅延回路(第2の遅延回路)、53…制御信号変換回路、INA…入力信号(第1の入力信号)、INB…入力信号(第2の入力信号)、INC…入力信号(第3の入力信号)、DA…駆動信号(第1の駆動信号)、DB…駆動信号(第2の駆動信号)、DC…駆動信号(第3の駆動信号)、OUTA…光信号(第1の光信号)、OUTB…光信号(第2の光信号)、IBA…干渉成分(第1の干渉成分)、IAB…干渉成分(第2の干渉成分)、ICB…干渉成分(第3の干渉成分)、IBC…干渉成分(第4の干渉成分)、CBA…補正信号(第1の補正信号)、CAB…補正信号(第2の補正信号)、CCB…補正信号(第3の補正信号)、CBC…補正信号(第4の補正信号)、MA,MB,MOA,MOB,M…モニタ結果。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された第1の駆動信号を第1の光信号に変換して出力する第1のE/O変換素子と、
入力された第2の駆動信号を第2の光信号に変換して出力する第2のE/O変換素子と、
入力された第1の入力信号を前記第1の駆動信号に変換して前記第1のE/O変換素子へ出力する第1のドライバ回路と、
入力された第2の入力信号を前記第2の駆動信号に変換して前記第2のE/O変換素子へ出力する第2のドライバ回路と、
前記第2の入力信号から前記第1の入力信号へ干渉する第1の干渉成分に相当する第1の補正信号を、前記第2の入力信号から生成して前記第1のドライバ回路へ出力するとともに、前記第1の入力信号から前記第2の入力信号へ干渉する第2の干渉成分に相当する第2の補正信号を、前記第1の入力信号から生成して前記第2のドライバ回路へ出力する第1のクロストーク補正回路とを備え、
前記第1のドライバ回路は、前記第1の補正信号に基づいて、前記第1の入力信号に含まれる前記第1の干渉成分を補償した後、前記第1の駆動信号に変換し、
前記第2のドライバ回路は、前記第2の補正信号に基づいて、前記第2の入力信号に含まれる前記第2の干渉成分を補償した後、前記第2の駆動信号に変換する
ことを特徴とする光送信回路。
【請求項2】
請求項1に記載の光送信回路において、
前記第1のドライバ回路から出力される前記第1の駆動信号をモニタする第1の電気モニタ回路と、
前記第2のドライバ回路から出力される前記第2の駆動信号をモニタする第2の電気モニタ回路と、
前記第1および前記第2の電気モニタ回路で得られた、前記第1および前記第2の駆動信号に関するモニタ結果に基づいて、前記第1および前記第2の干渉成分に関する制御信号を出力する制御回路とをさらに備え、
前記第1のクロストーク補正回路は、前記制御回路からの前記制御信号に基づいて、前記第2の入力信号から前記第1の干渉成分に相当する前記第1の補正信号を生成するとともに、前記第1の入力信号から前記第2の干渉成分に相当する前記第2の補正信号を生成する
ことを特徴とする光送信回路。
【請求項3】
請求項2に記載の光送信回路において、
前記第1の電気モニタ回路に対する前記第1の駆動信号の入力/切断を制御する第1のスイッチと、
前記第2の電気モニタ回路に対する前記第2の駆動信号の入力/切断を制御する第2のスイッチと
をさらに備えることを特徴とする光送信回路。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の光送信回路において、
前記第1の電気モニタ回路に代えて、前記第1のE/O変換素子から出力される前記第1の光出力信号をモニタする第1の光モニタ回路を備え、
前記第2の電気モニタ回路に代えて、前記第2のE/O変換素子から出力される前記第2の光出力信号をモニタする第2の光モニタ回路を備え、
前記制御回路は、前記第1および前記第2の光モニタ回路で得られた、前記第1および前記第2の光信号に関するモニタ結果に基づいて、前記第1および前記第2の干渉成分に関する制御信号を出力する
ことを特徴とする光送信回路。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の光送信回路において、
前記第1のクロストーク補正回路は、
前記第2の入力信号の振幅を調整することにより、前記第2の入力信号から前記第1の補正信号を生成する第1の重み付け回路と、
前記第1の入力信号の振幅を調整することにより、前記第1の入力信号から前記第2の補正信号を生成する第2の重み付け回路と
を含むことを特徴とする光送信回路。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1つに記載の光送信回路において、
前記第1のクロストーク補正回路は、
前記第2の入力信号に対する遅延時間を調整することにより、前記第2の入力信号から前記第1の補正信号を生成する第1の遅延回路と、
前記第1の入力信号に対する遅延時間を調整することにより、前記第1の入力信号から前記第2の補正信号を生成する第2の遅延回路と
を含むことを特徴とする光送信回路。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載の光送信回路において、
入力された第3の駆動信号を第3の光信号に変換して出力する第3のE/O変換素子と、
入力された第3の入力信号を前記第3の駆動信号に変換して前記第3のE/O変換素子へ出力する第3のドライバ回路と、
前記第3の入力信号から前記第2の入力信号へ干渉する第3の干渉成分に相当する第3の補正信号を、前記第3の入力信号から生成して前記第2のドライバ回路へ出力するとともに、前記第2の入力信号から前記第3の入力信号へ干渉する第4の干渉成分に相当する第4の補正信号を、前記第2の入力信号から生成して前記第3のドライバ回路へ出力する第2のクロストーク補正回路とをさらに備え、
前記第3のドライバ回路は、前記第4の補正信号に基づいて、前記第3の入力信号に含まれる前記第3の干渉成分を補償した後、前記第3の駆動信号に変換し、
前記第2のドライバ回路は、前記第2および前記第3の補正信号に基づいて、前記第2の入力信号に含まれる前記第2および前記第3の干渉成分を補償した後、前記第2の駆動信号に変換する
ことを特徴とする光送信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−62573(P2013−62573A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198008(P2011−198008)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】