説明

光送信装置及び光送信方法

【課題】本発明は、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信装置及び光送信方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係る光送信装置は、光を変調する際に位相変調を伴い周波数チャープが発生する光変調器により強度変調して光信号を送信する光送信装置において、周波数チャープの和が概ねゼロとなるαパラメータの第1の光変調器12及び第2の光変調器13を用いるか、あるいは、第1の光変調器12の駆動するデータの値の切替の際に第2の光変調器13の透過率を減少又は増加して元に戻すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光送信装置及び光送信方法に関わり、特に、光ファイバ通信システムに用いられる光信号を発生する光送信装置及び光送信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、音声、静止画像、動画像等の種々のデータがネットワークを介して取り扱われている。このような多量のデータを伝送する媒体として光ファイバが一般的に用いられている。光ファイバ通信において用いられる光源は、出射される光の波長及び周波数が安定して一定な特性を有するものが望ましい。
【0003】
光ファイバを用いてデータ通信を行うためには、光源が上記特性を有する以外に、光源から出射される光を伝送するデータに応じて変調する必要がある。一般に、光ファイバ通信においては強度変調が用いられる。光信号を発生する光送信装置としては種々のものが提案されている。これらには位相変調を伴い周波数チャープが発生する光変調器を用いるものがある。特にその代表的なものは半導体電界吸収型(EA:Electro−absorption)光変調器を用いるものである。
【0004】
EA変調器は、例えばレーザ光源から出射されるCW光を強度変調するものである。つまり、EA変調器にレーザ光源から出射される光を入射させ、EA変調器に印加する電圧が例えば0Vである場合に、光を通過させ、負電圧を印加した場合に入射する光を吸収させることによって光の透過/遮断を制御して光強度変調を行うものである。EA変調器は、印加電圧が低い、半導体レーザ光源との集積化による小型化が可能、安価などの特徴を有しており、アクセス系への適用が期待される。
【0005】
しかしながら、変調時に位相変調を伴うEA変調器等の変調器は、変調によって発生される信号光に周波数チャープが生ずる問題がある。これは、EA変調器に電圧を印加すると、印加された電圧に応じて変調器の屈折率が変化することに起因する。つまり、屈折率が変化すると変調器を通過する光の位相が変調される。すると、位相の時間微分が光周波数であるので、出力光の周波数が変化することになる(例えば、非特許文献1参照。)。この周波数変化を周波数チャープという。
【0006】
周波数チャープが生ずると、光ファイバ伝送特性に悪影響を及ぼす。一般的に、光ファイバの特性の一つとして、伝搬する光の周波数によって伝搬速度が異なるという性質がある。このため、信号光がチャープしていると、1つのパルス内に早く進む成分と遅く進む成分が存在することになり、その結果光ファイバを伝搬した後のパルス信号のパルスの信号波形が崩れることとなる。この信号波形の崩れにより、符号間干渉が発生し、伝送特性が劣化する(例えば、非特許文献2参照。)。
【0007】
このことを解決するために、様々な取り組みがなされているが、いくつかの方法が有効ではないことが示されている(例えば、特許文献1参照。)。従来例として、符号が逆のαパラメータを有する2つのEA変調器に同相で印加電圧を印加して変調する方法と、同じαパラメータを有する2つのEA変調器に逆相で印加電圧を印加して変調する方法との2つの方法が開示されている。しかし、この2つの従来例の方法では、所望の特性を得ることができない。これは、2つの理由による。
【0008】
第1の理由は、2つのEA変調器で変調する場合、後段の変調器の周波数チャープは、前段のEA変調器による信号光強度の変化の影響を受けるが、その影響が考慮されていない。第2の理由は、周波数チャープは光強度に反比例するが、そのことが想定されていない。すなわち、以下に示す式を想定している。
【0009】
まず、EA変調器の周波数チャープΔfは、一般に次式で表される。
【数1】

ここで、αはアルファパラメータであり、PはEA変調器における光強度、dP/dtは光強度の時間微分である。
【0010】
前段及び後段のEA変調器の透過率が1のときの光強度P、Pを1とし、EA変調器の透過率を印加電圧V、Vの一次関数と近似すると、前段及び後段のEA変調器の光強度P及びP、周波数チャープΔf及びΔf、印加電圧V及びVは、それぞれ従来例では次式と想定している。
【数2】

ここで、kは前段のEA変調器の透過率を印加電圧Vの一次関数と近似したときの比例係数、kは後段のEA変調器の透過率を印加電圧Vの一次関数と近似したときの比例係数である。
【0011】
数(2)の関係から、前段及び後段のEA変調器のαパラメータα及びαは、次式で表される。
【数3】

従って、符号が逆のαパラメータとする場合、k=k、かつ、V=Vであり、さらに、前段のEA変調器による光出力の変化が後段のEA変調器の周波数チャープに影響されない場合に従来例の第1の方法は成立する。さらに、周波数チャープが光強度に反比例しない場合に、従来例の第2の方法が成立する。
【0012】
しかしこれらの想定は正しくないため、周波数チャープを軽減して、周波数チャープによる伝送特性の劣化を防ぐことはできない。例えば、従来例の第1の方法でαパラメータが+1から−1の一次関数で近似できるとすると、周波数チャープは改善せずに、逆に悪化する。従来例の第2の方法も、数(1)に示すように周波数チャープが光強度に反比例することから、光強度が弱いほど周波数チャープが顕著になり、符号が同じαパラメータを有する一組のEA変調器を用いて逆相で駆動しても、周波数チャープを補償できないことになる。
【特許文献1】特許第3591447号公報
【非特許文献1】F.Koyama他,‘‘Frequency Chirping in External Modulators’’,Lightwave Technology,vol.6,no.1,pp.87−93、1988
【非特許文献2】B.Wedding,‘‘New Method for Optical Transmission beyond Dispersion Limit’’,Electronics letters,vol.28,no.14,pp.1298−1300、1992
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のように、従来は、光を強度変調する際に位相変調を伴い周波数チャープが発生する光変調器を用いた場合に、周波数チャープを軽減して、周波数チャープによる伝送劣化を抑制することができなかった。
【0014】
そこで、本発明は、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信装置及び光送信方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る光送信装置は、光を変調する際に位相変調を伴い周波数チャープが発生する光変調器により強度変調して光信号を送信する光送信装置において、周波数チャープの和が概ねゼロとなるαパラメータの一組の光変調器を用いるか、一方の光変調器の駆動するデータの値の切替の際に他方の光変調器の透過率を減少又は増加して元に戻す一組の光変調器を用いることを特徴とする。
【0016】
具体的には、本発明に係る光送信装置は、連続光を出射する光源と、前記光源の出射する連続光を、送信信号に応じて強度変調する第1の光変調器と、前記第1の光変調器からの変調光を、前記送信信号に応じて強度変調して出力する第2の光変調器と、を備え、前記第2の光変調器は、変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで駆動され、前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器のαパラメータが次式で表される関係を有することを特徴とする。
【0017】
第1の光変調器及び第2の光変調器のαパラメータが、数(11)で表される関係を有するので、第2の光変調器から出力される信号光の周波数チャープを概ねゼロとすることができる。これにより、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信装置を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係る光送信装置は、連続光を出射する光源と、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似され、前記光源の出射する連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する第1の光変調器と、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似され、前記第1の光変調器からの変調光を、送信信号に応じて強度変調して出力する第2の光変調器と、を備え、前記第2の光変調器は、変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで駆動され、前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器のαパラメータが、数(7)で表される関係を有することを特徴とする。
【0019】
第1の光変調器及び第2の光変調器のαパラメータが、数(7)で表される関係を有するので、第2の光変調器から出力される信号光の周波数チャープを概ねゼロとすることができる。これにより、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信装置を提供することができる。
【0020】
具体的には、本発明に係る光送信装置は、連続光を出射する光源と、前記光源の出射する連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する第1の光変調器と、前記第1の光変調器における光の透過率が増加又は減少する間に光の透過率を増加又は減少させて元に戻す制御信号を出力する制御器と、前記第1の光変調器の透過率が増加又は減少する間に前記第1の光変調器から出力された変調光を、変調光が前記第1の光変調器から第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで前記制御信号に応じて強度変調して出力する第2の光変調器と、を備えることを特徴とする。
【0021】
第1の光変調器の透過率が増加又は減少する間、第1の光変調器から出力される変調光に周波数チャープが生じる。第2の光変調器での光の透過率を増加又は減少させて元に戻すことで、第2の光変調器から出力される信号光に含まれる周波数チャープを、変調光の周波数チャープよりも減少させることができる。これにより、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信装置を提供することができる。
【0022】
本発明に係る光送信装置では、前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器は、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似され、前記制御器は、光の透過率を、増加させた後に減少させるか、又は、減少させた後に増加させることが好ましい。
第2の光変調器の光の透過率が増加又は減少することで、第1の光変調器でのαパラメータの変動に合わせて第2の光変調器のαパラメータを変化させることができる。これにより、第1の光変調器及び第2の光変調器で発生する周波数チャープの和をゼロに近づけることができる。
【0023】
本発明に係る光送信装置では、前記制御器は、前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ前の時間にて前記第1の光変調器のαパラメータがゼロになるまで前記第2の光変調器の光の透過率を増加又は減少させ、前記第1の光変調器のαパラメータが零になった時点から前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ前の時間を境に前記第2の光変調器の光の透過率の変化の増減を逆転させることが好ましい。
第1の光変調器のαパラメータがゼロに達する時点で第2の光変調器の光の透過率を元に戻すことで、第1の光変調器及び第2の光変調器で発生する周波数チャープを常に減少させることができる。
【0024】
具体的には、本発明に係る光送信方法は、光源が、連続光を出射する光出射ステップと、第1の光変調器が、前記光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調する送信信号変調ステップと、第2の光変調器が、前記第1の光変調器からの変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで、前記送信信号変調ステップで出力した変調光を、前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで、数(11)で表されるαパラメータを用いて、送信信号に応じて強度変調して出力するαパラメータ調整ステップと、を順に有することを特徴とする。
【0025】
第1の光変調器及び第2の光変調器のαパラメータが、数(11)で表される関係を有するので、第2の光変調器から出力される信号光の周波数チャープを概ねゼロとすることができる。これにより、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信装置を提供することができる。
【0026】
具体的には、本発明に係る光送信方法は、光源が、連続光を出射する光出射ステップと、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似される第1の光変調器が、前記光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する送信信号変調ステップと、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似される第2の光変調器が、前記第1の光変調器からの変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで、前記送信信号変調ステップで出力した変調光を、数(7)で表されるαパラメータを用いて、送信信号に応じて強度変調して出力するαパラメータ調整ステップと、を順に有することを特徴とする。
【0027】
第1の光変調器及び第2の光変調器のαパラメータが、数(7)で表される関係を有するので、第2の光変調器から出力される信号光の周波数チャープを概ねゼロとすることができる。これにより、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信方法を提供することができる。
【0028】
具体的には、本発明に係る光送信方法は、光源が、連続光を出射する光出射ステップと、第1の光変調器が、前記光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する送信信号変調ステップと、第2の光変調器が、前記第1の光変調器の透過率が増加又は減少する間に前記第1の光変調器から出力された変調光を、制御信号に応じて強度変調して出力する透過率調整ステップと、を有し、前記透過率調整ステップにおいて、前記第2の光変調器は、前記第1の光変調器の透過率が増加又は減少する間に前記第1の光変調器から出力された変調光を、変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで強度変調する間、光の透過率を増加又は減少した後に元に戻すことを特徴とする。
【0029】
第1の光変調器の透過率が増加又は減少する間、第1の光変調器から出力される変調光に周波数チャープが生じる。第2の光変調器での光の透過率を増加又は減少させて元に戻すことで、第2の光変調器から出力される信号光に含まれる周波数チャープを、変調光の周波数チャープよりも減少させることができる。これにより、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信方法を提供することができる。
【0030】
本発明に係る光送信方法では、前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器は、光の透過率が印加電圧に対する一次関数で近似され、前記透過率調整ステップにおいて、前記第1の光変調器の光の透過率が増加又は減少している間に、前記第2の光変調器は、光の透過率を、増加させた後に減少させるか、又は、減少させた後に増加させることが好ましい。
第2の光変調器の光の透過率が増加又は減少することで、第1の光変調器でのαパラメータの変動に合わせて第2の光変調器のαパラメータを変化させることができる。これにより、第1の光変調器及び第2の光変調器で発生する周波数チャープの和をゼロに近づけることができる。
【0031】
本発明に係る光送信方法では、前記透過率調整ステップにおいて、前記第2の光変調器は、光の透過率を、前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ前の時間にて前記第1の光変調器のαパラメータがゼロになるまで透過率を増加又は減少させ、前記第1の光変調器のαパラメータが零になった時点から前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ前の時間を境に前記第2の光変調器の光の透過率の変化の増減を逆転させることが好ましい。
第1の光変調器のαパラメータがゼロに達する時点で第2の光変調器の光の透過率を元に戻すことで、第1の光変調器及び第2の光変調器で発生する周波数チャープを常に減少させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、周波数チャープによる伝送劣化の小さい光送信装置及び光送信方法の提供をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
(実施形態1)
本実施形態に係る光送信装置は、位相変調を伴い光変調器により強度変調して光信号を送信する光送信装置において、2つの光変調器を具備することとし、それぞれの光変調器のαパラメータを調整することにより、周波数チャープによる伝送劣化の影響を小さくすることを特徴とする。以下、具体的に説明する。
【0034】
図1は、本実施形態に係る光送信装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る光送信装置は、光源10と、第1の光変調器12と、第2の光変調器13と、伝送信号が入力される入力端子14と、変換器15を備える。第2の光変調器13は、第1の光変調器12の後段に直列接続されている。
【0035】
本実施形態に係る光送信方法は、光出射ステップと、送信信号変調ステップと、αパラメータ調整ステップと、を順に有する。光出射ステップでは、光源10が連続光を出射する。送信信号変調ステップでは、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似される第1の光変調器12が、光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調し、変調光を出力する。αパラメータ調整ステップでは、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似される第2の光変調器13が、第1の光変調器12からの変調光が第1の光変調器12から第2の光変調器13に到達する時間だけ遅延したタイミングで、送信信号変調ステップで出力した変調光を、数(7)で表されるαパラメータを用いて、送信信号に応じて強度変調し、信号光を出力する。
【0036】
光源10は、連続光を出射する。光源10は、連続光の波長などの光特性に応じて任意に選択される。印加電圧が低い半導体レーザであることが好ましい。
【0037】
変換器15は、入力端子14から入力される伝送信号を第1の光変調器12及び第2の光変調器13の透過率を制御する信号に変換する。そして、第1の光変調器12及び第2の光変調器13に、伝送信号の値に応じて印加電圧の値が切り替わる電圧信号を出力する。例えば、変換器15は、入力端子14から入力された伝送信号を、第1の光変調器12の透過率を制御する電圧信号に変換して、第1の光変調器12に出力する。また、変換器15は、入力端子14から入力された伝送信号を、第2の光変調器13の透過率を制御する電圧信号に変換して、第2の光変調器13に出力する。
【0038】
変換器15は、数(7)が成立する強度に調整する。例えば、V=Vであれば、第1の光変調器12及び第2の光変調器13の透過率に対して等しい電圧の電圧信号を出力する。これによって、第1の光変調器12及び第2の光変調器13への印加電圧が小さく、αパラメータの影響が大きくなる場合であっても、周波数チャープによる伝送劣化の小さい信号光とすることができる。
【0039】
第1の光変調器12は、光源10の出射する連続光を、変換器15からの送信信号に応じて強度変調して、変調光を出力する。そして、第2の光変調器13は、第1の光変調器12の出力する変調光を、変換器15からの送信信号に応じて強度変調して、信号光を出力する。第1の光変調器12及び第2の光変調器13は、強度変調に位相変調が伴う光変調器であり、例えばEA変調器である。装置の小型化のために、第1の光変調器12及び第2の光変調器13は、それぞれ電気的に分離された状態で光源10と一体となっていることが好ましい。
【0040】
本実施形態では、後段の第2の光変調器13が前段の第1の光変調器12の光強度に依存することを考慮して、後述の数(7)の関係をみたすように、第2の光変調器13のαパラメータαが調整されている。αパラメータは、実測した結果などにより調整し、設定し、その後の通信条件の変化がなければ、その後は一定とすることができる。なお、αパラメータを調整するのは、第2の光変調器13に限らず、第1の光変調器12であってもよいし、第1の光変調器12及び第2の光変調器13の両方であってもよい。
【0041】
αパラメータの調整原理について説明する。
第1の光変調器12及び第2の光変調器13は、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似される。この場合、第1の光変調器12及び第2の光変調器13の光強度P、Pは、第1の光変調器12及び第2の光変調器13の透過率が1のときの光強度P、Pを1として、次式で表される。
【数4】

【0042】
ここで、V及びVは、それぞれ、第1の光変調器12及び第2の光変調器13の印加電圧である。kは第1の光変調器12の透過率を印加電圧Vの一次関数と近似したときの比例係数、kは第2の光変調器13の透過率を印加電圧Vの一次関数と近似したときの比例係数である。第1の光変調器12及び第2の光変調器13の透過率は、第1の光変調器12及び第2の光変調器13における挿入損失を考慮したうえで設定する。
【0043】
第1の光変調器12及び第2の光変調器13の周波数チャープΔf、Δfは、次式で表される。
【数5】

【0044】
数(4)及び数(5)に示すように、第2の光変調器13の光強度は第1の光変調器12の光強度の関数であり、電圧印加時に第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータの比が保たれ、両印加電圧V及びVが等しいとすると、光送信装置から出力される光信号の周波数チャープは次式の矢印以下で表される。このため、光送信装置から出力される光信号の周波数チャープは次式で表される。
【数6】

【0045】
第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータは次式が成り立てば、第1の光変調器12及び第2の光変調器13が光を変調する際に位相変調を伴うことで発生する周波数チャープ(Δf+Δf)を略ゼロとすることができる。
【数7】

数(7)の関係は、第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータを調整することで実施することができる。k=kが成立する場合、第2の光変調器13のαパラメータαは−0.5αとなる。
【0046】
また、第1の光変調器12及び第2の光変調器13の透過率が印加電圧に対して反比例で近似される場合にも、光送信装置から出力される光信号の周波数チャープは次式で表されることから、第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータαがα=−0.5αの関係をみたすことで、第1の光変調器12及び第2の光変調器13が光を変調する際に位相変調を伴うことで発生する周波数チャープを略ゼロとすることができる。
【数8】

【0047】
=Vが成立する場合の実施形態について説明したが、V=Vが成立しないときもある。この場合は、周波数チャープによる伝送特性への影響は特に光強度が大きいときに顕著であることを利用して、第1の光変調器12若しくは第2の光変調器13又は第1の光変調器12及び第2の光変調器13の印加電圧を調整することが好ましい。
【0048】
数(6)において、光強度が大きいとき、すなわち印加電圧V及びVの絶対値が小さいとき、次式が成り立つ。
【数9】

【0049】
このため、第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータが数(7)の関係をみたすことで、V=Vが成立しないときであっても、第1の光変調器12及び第2の光変調器13が光を変調する際に位相変調を伴うことで発生する周波数チャープ(Δf+Δf)を略ゼロとすることができる。
【0050】
(実施形態2)
本実施形態に係る光送信装置は、位相変調を伴い光変調器により強度変調して光信号を送信する光送信装置において、2つの光変調器を具備することとし、データに応じて一方の光変調器に印加する入力値の切替のタイミングに合わせて、他方の光変調器の透過率を増加させた後に減少させることにより、周波数チャープによる伝送劣化の影響を小さくすることを特徴とする。以下、具体的に説明する。
【0051】
図2は、本実施形態に係る光送信装置の構成の一例を示すブロック図である。本実施形態に係る光送信装置は、実施形態1に係る変換器15に代えて変換器16を、第2の光変調器13に代えて第2の光変調器18を備え、制御器17をさらに備える。具体的には、本実施形態に係る光送信装置は、光源10と、第1の光変調器12と、第2の光変調器18と、入力端子14と、変換器16と、制御器17を備える。
【0052】
本実施形態に係る光送信方法は、光出射ステップと、送信信号変調ステップと、透過率調整ステップと、を順に有する。光出射ステップでは、光源10が、連続光を出射する。送信信号変調ステップでは、第1の光変調器12が、光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する。透過率調整ステップでは、第2の光変調器18が、第1の光変調器12の透過率が増加又は減少する間に第1の光変調器12から出力された変調光を、変調光が第1の光変調器12から第2の光変調器18に到達する時間だけ遅延したタイミングで制御信号に応じて強度変調して出力する。制御信号は、制御器17から入力された信号であり、例えば第1の光変調器12に入力する電圧信号が変形した信号である。透過率調整ステップにおいて、第2の光変調器18は、第1の光変調器12の透過率が増加又は減少する間に第1の光変調器12から出力された変調光を強度変調する間、制御信号によって、光の透過率を増加した後に元に戻す。
【0053】
透過率調整ステップにおいて、第2の光変調器18は、光の透過率を、増加させた後に減少させることが好ましい。さらに、制御器17は、第1の光変調器12から第2の光変調器18に到達する時間だけ前の時間にて第1の光変調器12のαパラメータが零になるまで第2の光変調器18の光の透過率を増加又は減少させ、第1の光変調器12のαパラメータが零になった時点から第1の光変調器12から第2の光変調器18に到達する時間だけ前の時間を境に第2の光変調器18の光の透過率の変化の増減を逆転させることが好ましい。後述の図3において示すように、第1の光変調器12の光強度Pの立ち上がり及び立下りの遷移の間では、第1の光変調器12で発生する周波数チャープΔfは単調増加して、マイナスの値からプラスの値に変化する。このため、第2の光変調器18における光の透過率を、単調増加させた後に単調減少させることで、周波数チャープ(Δf+Δf)を減少させることができる。
【0054】
透過率調整ステップにおいて、第2の光変調器18のαパラメータαの値が大きいことが好ましい。αパラメータは、デバイスに依存するが、例えば+2から−2のようなゼロを跨ぐ可変域を有し、印加電圧の絶対値を大きくするにつれて小さな値となる。そのため、αパラメータの値の大きなところで変調することで、変調光をほとんど透過する状態で、第2の光変調器18で発生する周波数チャープΔfの量を大きく変更することができる。
【0055】
光源10及び入力端子14から第1の光変調器12までの構成については実施形態1と同様である。変換器16は、第1の光変調器12の透過率を制御する信号に変換する。そして、第1の光変調器12に、伝送信号の値に応じて第1の光変調器12の印加電圧の値が切り替わる電圧信号を出力する。第1の光変調器12は、光源10の出射する連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する。
【0056】
第1の光変調器12での印加電圧の増減を検出するため、変換器16の出力した電圧信号は、制御器17にも入力される。これにより、第2の光変調器18は、第1の光変調器12の透過率が増加又は減少する間に第1の光変調器12から出力された変調光を強度変調する。
【0057】
第2の光変調器18は、第1の光変調器12で発生する周波数チャープを減少させるように第2の光変調器18における光の透過率を変化させる。例えば、第1の光変調器12における光の透過率を増加又は減少させると、周波数チャープΔfは負から正に増加する。このため、第2の光変調器18において正から負に減少する周波数チャープΔfを発生させることで、周波数チャープ(Δf+Δf)を減少させることができる。
【0058】
第2の光変調器18は、第1の光変調器12の透過率が増加又は減少する間に第1の光変調器12から出力された変調光を、制御器17からの制御信号に応じて強度変調して出力する。制御器17からの制御信号は、第2の光変調器18における変調光の透過率を増加させて元に戻す信号である。αパラメータαの値は、概ね印加電圧に対する一次関数と見なせる。例えば、印加電圧の絶対値の増加に伴い減少し、正の値から負の値をとるようになる。このようなαパラメータである場合、第2の光変調器18における変調光の透過率を増加させて元に戻すと、第2の光変調器18のαパラメータαは、数(1)に示すように、変調光の透過率に合わせて増加して元に戻る。例えば、周波数チャープΔfは、次式に表されるように、第1の光変調器12の印加電圧の影響を受けながら、図3(f)に示す挙動を示す。ただし、周波数チャープΔfは次式に限定されるものではない。
【数10】

【0059】
第2の光変調器18から出力される信号光の周波数チャープは、第2の光変調器18のαパラメータが一旦増加して元に戻ることで、第2の光変調器18から出力される信号光の周波数チャープ(Δf+Δf)を減少させることができる。実施形態1では、第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータが特定の関係にあることを要したが、本実施形態ではその必要はない。例えば、第1の光変調器12及び第2の光変調器18のαパラメータは、同一印加電圧に対して同じαパラメータであってもよい。
【0060】
制御器17は、第1の光変調器12における光の透過率が増加又は減少する間に光の透過率を増加させて元に戻す制御信号を、第2の光変調器18に出力する。第2の光変調器18がEA変調器であれば、制御信号は、例えば、EA変調器の印加電圧を可変する電圧信号である。この場合、印加電圧の絶対値を減少することで第2の光変調器18の光の透過率を一旦増加させ、その後、印加電圧の絶対値を元に戻すことで第2の光変調器18の光の透過率を元に戻す。このとき、制御器17は、第2の光変調器18における光の透過率を、単調増加させた後に単調減少させる。周波数チャープΔfの発生する光強度の過渡状態において、第1の光変調器12による周波数チャープΔfの値と逆符号の周波数チャープΔfを第2の光変調器18により与えるので、第2の光変調器18を出力後の周波数チャープ(Δf+Δf)を軽減することができる。制御器17は、変換器16の機能の一部として変換器16に内蔵されていてもよい。
【0061】
周波数チャープΔfの発生している変調信号に対して強度変調を行うために、制御器17は、第1の光変調器12の印加電圧の値を切り替える間に、第2の光変調器18の光の透過率を一旦増加して元に戻す。ここで、両光変調器の電圧の値の変更は、光が第1の光変調器12から第2の光変調器18に到達する時間だけ遅延したタイミングで行う。第1の光変調器12の印加電圧が切り替えたタイミング以外における第2の光変調器18の印加電圧の絶対値は、光信号伝送のために十分な光信号強度が確保される値に抑えることが好ましい。また、第1の光変調器12のαパラメータαがゼロになる時点を境にαパラメータαの符号が逆転するので、第1の光変調器12のαパラメータがゼロになるまで第2の光変調器18の光の透過率を増加させ、第1の光変調器12のαパラメータがゼロになった時点を境に第2の光変調器18の光の透過率を元に戻すことが好ましい。さらに、第1の光変調器12のαパラメータαがゼロになる時点で、第2の光変調器18の吸収率が最低となるようにすることが好ましい。
【0062】
図3は、本実施形態に係る制御器の動作の一例を示す模式図であり、(a)は第1の光変調器12の透過率、(b)はαパラメータα、(c)は周波数チャープΔf、(d)は第2の光変調器18の透過率、(e)はαパラメータα、(f)は周波数チャープΔfを示す。第1の光変調器12及び第2の光変調器18の透過率が1のとき、光強度P、Pを1とする。なお、図3(e)に示すαパラメータαは、印加電圧の絶対値の増加につれて、その値が正から負に向けて小さくなると仮定して、印加電圧は、αパラメータαが正の値の範囲内で印加している。αパラメータαが、印加電圧の絶対値の増加につれて、その値が負から正に向けて大きくなる場合は、印加電圧は、αパラメータαが負の値の範囲内で印加し、図3(e)は上ではなく下に凸となる。
【0063】
第1の光変調器12の光強度Pの立ち上がりにおいて、第1の光変調器12のαパラメータαが負で、光強度Pが増加してdP/dtが正であり、周波数チャープΔfが負であるとき、第2の光変調器18のαパラメータαが正で、光強度Pが増加してdP/dtが正であるので、数(1)により、周波数チャープΔfが正である。
【0064】
第1の光変調器12の光強度Pがさらに増加して、第1の光変調器12のαパラメータαが正になるとき、光強度Pはそのまま増加してdP/dtが正であり、周波数チャープΔfが正であるときに、第2の光変調器18のαパラメータαが正で、光強度Pが減少してdP/dtが負であるので、数(1)により、周波数チャープΔfが負となる。
【0065】
第1の光変調器12の光強度の立ち下がりにおいて、第1の光変調器12のαパラメータαが正で、光強度Pが減少してdP/dtが負であり、周波数チャープΔfが負であるとき、第2の光変調器18のαパラメータαが正で、光強度Pが増加してdP/dtが正であるので、数(1)により、周波数チャープΔfが正である。
【0066】
第1の光変調器12の光強度Pがさらに減少して、第1の光変調器12のαパラメータαが負になるとき、光強度Pはそのまま減少してdP/dtが負であり、周波数チャープΔfが正であるときに、第2の光変調器18のαパラメータαが正で、光強度Pが減少してdP/dtが負であるので、数(1)により、周波数チャープΔfが負となる。
【0067】
以上述べたように、本実施形態では、第1の光変調器12のαパラメータαの値の符号の変化に応じて、第2の光変調器18の透過率を増加から減少に転じ、かつ、第2の光変調器18のパラメータαの値の符号を変化させないようにしている。これにより、第2の光変調器18による周波数チャープΔfを発生させ、第1の光変調器12による周波数チャープΔfと逆の周波数チャープを第2の光変調器18で印加することが可能である。そのため、周波数チャープの影響を軽減して、第2の光変調器18から出力される信号光の周波数チャープ(Δf+Δf)による伝送特性の劣化を抑止することができる。
【0068】
(実施形態3)
本実施形態に係る光送信装置は、位相変調を伴い光変調器により強度変調して光信号を送信する光送信装置において、2つの光変調器を具備することとし、一方の光変調器のデータに応じて印加する入力値の切替の間に、他方の光変調器の透過率を減少させた後に増加させることにより、周波数チャープによる伝送劣化の影響を小さくすることを可能とする。ここで、両光変換器の電圧の変更は、光が一方から他方の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで行う。以下、具体的に説明する。
【0069】
本実施形態に係る光送信装置は、図2における制御器17が実施形態2と異なる。本実施形態に係る制御器17は、第2の光変調器18の透過率を一旦減少した後に元に戻すことを特徴とする。本実施形態では、第1の光変調器12と第2の光変調器18とで印加電圧に対するαパラメータの値が異なる。実施形態2では、両光変調器とも、印加電圧の絶対値の増大に応じて、αパラメータの値が減少するとしていたが、本実施形態では、一方の光変調器は、印加電圧の絶対値の増大に応じて、αパラメータの値が減少し、他方は増加する。本実施形態でも、第2の光変調器18は、αパラメータの正負の符号が変わらない印加電圧の範囲で第2の光変調器18に電圧を印加するのは変わらない。
【0070】
本実施形態に係る光送信方法では、実施形態2で説明した透過率調整ステップにおいて、第2の光変調器18は、変調光が第1の光変調器12から第2の光変調器18に到達する時間だけ遅延したタイミングで、制御信号によって、第1の光変調器12の透過率が増加又は減少している間に、光の透過率を減少した後に元に戻すことを特徴とする。
【0071】
ここで、透過率調整ステップにおいて、第2の光変調器18は、光の透過率を、減少させた後に増加させることが好ましい。さらに、制御器17は、第1の光変調器12から第2の光変調器18に到達する時間だけ前の時間にて第1の光変調器12のαパラメータが零になるまで第2の光変調器18の光の透過率を増加又は減少させ、第1の光変調器12のαパラメータが零になった時点から第1の光変調器12から第2の光変調器18に到達する時間だけ前の時間を境に第2の光変調器18の光の透過率の変化の増減を逆転させることが好ましい。後述の図4において示すように、第1の光変調器12の光強度Pの立ち上がり及び立下りの遷移の間では、第1の光変調器12で発生する周波数チャープΔfは単調増加する。このため、第2の光変調器18における光の透過率を、減少させた後に増加させることで、周波数チャープ(Δf+Δf)を減少させることができる。
【0072】
制御器17は、光の透過率を減少させて元に戻す制御信号を、第2の光変調器18に出力する。制御信号の入力によって、第2の光変調器18は、第1の光変調器12の印加電圧の値を切り替えるタイミングから光が第1の光変調器12から第2の光変調器18に到達する時間だけ遅延したタイミングで透過率を一旦減少させた後に元に戻す。これにより、実施形態2と同様の効果を得ることができる。
【0073】
本実施形態では、第1の光変調器12の透過率が最大の時に、第2の光変調器18の透過率を大きくすることができる。そのため、周波数チャープの影響を軽減して、周波数チャープによる伝送特性の劣化を抑止するとともに、実施形態2に比べて第2の光変調器18を通過後の光信号の消光比を大きくできる効果がある。
【0074】
図4は、本実施形態に係る制御器の動作の一例を示す模式図であり、(a)は第1の光変調器12の透過率、(b)はαパラメータα、(c)は周波数チャープΔf、(d)は第2の光変調器18の透過率、(e)はαパラメータα、(f)は周波数チャープΔfを示す。第1の光変調器12及び第2の光変調器18の透過率が1のとき、光強度P、Pを1とする。
【0075】
第1の光変調器12の光強度の立ち上がりにおいて、第1の光変調器12のαパラメータαが負で、光強度Pが増加してdP/dtが正であり、周波数チャープΔfが負であるとき、第2の光変調器18のαパラメータαが負で、光強度Pが減少してdP/dtが負であるので、数(1)により、周波数チャープΔfが正となる。
【0076】
第1の光変調器12の光強度Pがさらに増加して、第1の光変調器12のαパラメータαが正になるとき、光強度Pはそのまま増加してdP/dtが正であり、周波数チャープΔfが正であるときに、第2の光変調器18のαパラメータαが負で、光強度Pが増加してdP/dtが正であるので、数(1)により、周波数チャープΔfが負となる。
【0077】
第1の光変調器12の光強度の立ち下がりにおいて、第1の光変調器12のαパラメータαが正で、光強度Pが減少してdP/dtが負であり、周波数チャープΔfが負であるとき、第2の光変調器18のαパラメータαが負で、光強度Pが減少してdP/dtが負であるので、数(1)により、周波数チャープΔfが正となる。
【0078】
第1の光変調器12の光強度Pがさらに減少して、第1の光変調器12のαパラメータαが負になるとき、光強度Pはそのまま減少してdP/dtが負であり、周波数チャープΔfが正であるときに、第2の光変調器18のαパラメータαが負で、光強度Pが増加してdP/dtが正であるので、数(1)により、周波数チャープΔfが負となる。
【0079】
以上述べたように、本実施形態では、第1の光変調器12のαパラメータαの値の符号の変化に応じて、第2の光変調器18の透過率を減少から増加に転じ、かつ、第2の光変調器18のパラメータαの値の符号を変化させないようにしている。これにより、第2の光変調器18による周波数チャープΔfを発生させ、第1の光変調器12による周波数チャープΔfと逆の周波数チャープを第2の光変調器18で印加することができる。そのため、周波数チャープの影響を軽減して、第2の光変調器18から出力される信号光の周波数チャープ(Δf+Δf)による伝送特性の劣化を抑止することができる。
【0080】
(実施形態4)
本実施形態に係る光送信装置は、図1に示す実施形態1に係る光送信装置とほぼ同様であるが、第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータの関係が、V=Vに限定されない点で実施形態1と異なる。すなわち、実施形態1では、第1の光変調器12及び第2の光変調器13の透過率を数(4)のように透過率が印加電圧に対する一次関数で近似されるとしていたが、これに限定されない。
【0081】
具体的には、連続光を出射する光源10と、光源の出射する連続光を、送信信号に応じて強度変調する第1の光変調器12と、第1の光変調器からの変調光を、送信信号に応じて強度変調する第2の光変調器13と、を備える。第2の光変調器13は、変調光が第1の光変調器12から第2の光変調器13に到達する時間だけ遅延したタイミングで駆動され、第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータが次式で表される関係を有することを特徴とする。
【0082】
【数11】

ここで、α(V(t))とP(V(t))は時刻tの第1の光変調器12に印加する電圧V(t)に対応する第1の光変調器のαパラメータと第1の光変調器の光強度であり、α(V(t+T))は時刻tに対して変調器間の伝搬時間Tだけ遅延した時刻t+Tの第2の光変調器13に印加する電圧V(t+T)に対応するαパラメータであり、P(V(t+T),P(t))は時刻t+Tの第2の光変調器13に印加する電圧V(t+T)と第1の光変調器12の時刻tにおける光強度P(V(t))に対応する光強度である。
【0083】
本実施形態に係る光送信方法は、光出射ステップと、送信信号変調ステップと、αパラメータ調整ステップと、を順に有する。光出射ステップでは、光源10が、連続光を出射する。送信信号変調ステップでは、第1の光変調器12が、光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調する。αパラメータ調整ステップでは、第2の光変調器13が、第1の光変調器12からの変調光が第1の光変調器12から第2の光変調器13に到達する時間だけ遅延したタイミングで、送信信号変調ステップで出力した変調光を、第1の光変調器12から第2の光変調器13に到達する時間だけ遅延したタイミングで、数(11)で表されるαパラメータを用いて、送信信号に応じて強度変調して出力する。
【0084】
第1の光変調器12及び第2の光変調器13のαパラメータが数(11)で表されることで、第1の光変調器12及び第2の光変調器13が光を変調する際に位相変調を伴うことで発生する周波数チャープを略ゼロとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明は、光ファイバ通信において用いられる光送信装置及び光送信方法に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】実施形態1に係る光送信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図2】実施形態2に係る光送信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図3】実施形態2に係る制御器の動作の一例を示す模式図であり、(a)は第1の光変調器12の透過率、(b)はαパラメータα、(c)は周波数チャープΔf、(d)は第2の光変調器18の透過率、(e)はαパラメータα、(f)は周波数チャープΔfを示す。
【図4】実施形態3に係る制御器の動作の一例を示す模式図であり、(a)は第1の光変調器12の透過率、(b)はαパラメータα、(c)は周波数チャープΔf、(d)は第2の光変調器18の透過率、(e)はαパラメータα、(f)は周波数チャープΔfを示す。
【符号の説明】
【0087】
10 光源
12 第1の光変調器
13、18 第2の光変調器
14 入力端子
15、16 変換器
17 制御器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続光を出射する光源と、
前記光源の出射する連続光を、送信信号に応じて強度変調する第1の光変調器と、
前記第1の光変調器からの変調光を、前記送信信号に応じて強度変調して出力する第2の光変調器と、を備え、
前記第2の光変調器は、変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで駆動され、前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器のαパラメータが次式で表される関係を有することを特徴とする光送信装置。
【数1】

ここで、α(V(t))とP(V(t))は時刻tの第1の光変調器に印加する電圧V(t)に対応する第1の光変調器のαパラメータと第1の光変調器の光強度であり、α(V(t+T))は時刻tに対して変調器間の伝搬時間Tだけ遅延した時刻t+Tの第2の光変調器に印加する電圧V(t+T)に対応するαパラメータであり、P(V(t+T),P(t))は時刻t+Tの第2の光変調器に印加する電圧V(t+T)と第1の光変調器の時刻tにおける光強度P(V(t))に対応する光強度である。
【請求項2】
連続光を出射する光源と、
透過率が印加電圧に対する一次関数で近似され、前記光源の出射する連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する第1の光変調器と、
透過率が印加電圧に対する一次関数で近似され、前記第1の光変調器からの変調光を、送信信号に応じて強度変調して出力する第2の光変調器と、を備え、
前記第2の光変調器は、変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで駆動され、
前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器のαパラメータが、次式で表される関係を有することを特徴とする光送信装置。
【数2】

ここで、α及びαはそれぞれ前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器のαパラメータであり、k及びkはそれぞれ前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器の前記一次関数の比例係数である。
【請求項3】
連続光を出射する光源と、
前記光源の出射する連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する第1の光変調器と、
前記第1の光変調器における光の透過率が増加又は減少する間に光の透過率を増加又は減少させて元に戻す制御信号を出力する制御器と、
前記第1の光変調器の透過率が増加又は減少する間に前記第1の光変調器から出力された変調光を、変調光が前記第1の光変調器から第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで前記制御信号に応じて強度変調して出力する第2の光変調器と、
を備えることを特徴とする光送信装置。
【請求項4】
前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器は、透過率が印加電圧に対する一次関数で近似され、
前記制御器は、光の透過率を、増加させた後に減少させるか、又は、減少させた後に増加させることを特徴とする請求項3に記載の光送信装置。
【請求項5】
前記制御器は、前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ前の時間にて前記第1の光変調器のαパラメータが零になるまで前記第2の光変調器の光の透過率を増加又は減少させ、前記第1の光変調器のαパラメータが零になった時点から前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ前の時間を境に前記第2の光変調器の光の透過率の変化の増減を逆転させることを特徴とする請求項3又は4に記載の光送信装置。
【請求項6】
光源が、連続光を出射する光出射ステップと、
第1の光変調器が、前記光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調する送信信号変調ステップと、
第2の光変調器が、前記第1の光変調器からの変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで、前記送信信号変調ステップで出力した変調光を、前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで、数(1)で表されるαパラメータを用いて、送信信号に応じて強度変調して出力するαパラメータ調整ステップと、を順に有することを特徴とする光送信方法。
【請求項7】
光源が、連続光を出射する光出射ステップと、
透過率が印加電圧に対する一次関数で近似される第1の光変調器が、前記光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する送信信号変調ステップと、
透過率が印加電圧に対する一次関数で近似される第2の光変調器が、前記第1の光変調器からの変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで、前記送信信号変調ステップで出力した変調光を、数(2)で表されるαパラメータを用いて、送信信号に応じて強度変調して出力するαパラメータ調整ステップと、を順に有することを特徴とする光送信方法。
【請求項8】
光源が、連続光を出射する光出射ステップと、
第1の光変調器が、前記光出射ステップで出射した連続光を、送信信号に応じて強度変調して出力する送信信号変調ステップと、
第2の光変調器が、前記第1の光変調器の透過率が増加又は減少する間に前記第1の光変調器から出力された変調光を、制御信号に応じて強度変調して出力する透過率調整ステップと、を有し、
前記透過率調整ステップにおいて、前記第2の光変調器は、前記第1の光変調器の透過率が増加又は減少する間に前記第1の光変調器から出力された変調光を、変調光が前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ遅延したタイミングで強度変調する間、光の透過率を増加又は減少した後に元に戻すことを特徴とする光送信方法。
【請求項9】
前記第1の光変調器及び前記第2の光変調器は、光の透過率が印加電圧に対する一次関数で近似され、
前記透過率調整ステップにおいて、前記第2の光変調器は、光の透過率を、増加させた後に減少させるか、又は、減少させた後に増加させることを特徴とする請求項8に記載の光送信方法。
【請求項10】
前記透過率調整ステップにおいて、前記第2の光変調器は、光の透過率を、前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ前の時間にて前記第1の光変調器のαパラメータがゼロになるまで透過率を増加又は減少させ、前記第1の光変調器のαパラメータが零になった時点から前記第1の光変調器から前記第2の光変調器に到達する時間だけ前の時間を境に前記第2の光変調器の光の透過率の変化の増減を逆転させることを特徴とする請求項8又は9に記載の光送信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−260759(P2009−260759A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108523(P2008−108523)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】