説明

光配線方法及び光配線部品

【課題】住宅の壁に孔を空けることなく、屋外と屋内をパッシブな光配線で結ぶことが可能となる光配線方法を提供することにある。
【解決手段】光ドロップケーブル26の所定の位置から光ファイバ心線を取り出しテンションメンバと一緒に保護部材であるカバー基部及びカバー上部により平坦形状に被覆して光配線部品である平坦形状の光コード27を形成し、この光コードを、窓の戸23と窓枠22の間の空隙に通して光配線することで屋外と屋内を光配線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線を収容した平坦形状の光コードを、窓の戸と窓枠の間の空隙に通して光配線する光配線方法及び光配線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信の高度化、高速化に伴い、ビル外又は住宅外から屋内へ配線される情報通信のためのケーブルの配線施工の必要性が増大している。この際、ビル外又は住宅外にあるアクセス網と屋内にある構内配線を接続する必要がある。そのための主な配線方法として、(1)壁に穴を開け配管を通し配線する方法、(2)エアコン等のダクトの空隙を利用して配線する方法(例えば、非特許文献1参照。)、そして(3)窓ガラスに光無線通信機を設置し屋内配線と屋外アクセス網を接続する方法(例えば、特許文献1参照。)などがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−80595号公報
【非特許文献1】“FLET′S.com”、[online]、NTT東日本 [2005年10月14日検索]、 インターネット<URL:http://flets.com/opt/const-single-house.html >
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記背景技術を用いて屋内配線と屋外アクセス網を接続する際には、(1)の方法では壁に穴を開けるのが困難な場合があり、(2)の方法ではエアコン等のダクトがない場合があり、(3)の方法では光無線通信機の給電が難しい場合や高速化が困難という問題点がある。
【0005】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、光ファイバ心線を収容した平坦形状の光コードを、窓の戸と窓枠の間の空隙に通して光配線することにより、住宅の壁に孔を空けることなく、屋外と屋内をパッシブな光配線で結ぶことが可能となる光配線方法及び光配線部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の光配線方法は、光ファイバ心線を収容した平坦形状の光コードを、窓の戸と窓枠の間の空隙に通して光配線することを特徴とする。
【0007】
また本発明は、前記光配線方法において、平坦形状の光コードとして、光ケーブルの所定の位置から取り出した光ファイバ心線を平坦形状保護部材で被覆した平坦形状の光コードを用いることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、前記光配線方法において、平坦形状の光コードを、窓枠の形状に合わせて窓枠に貼り付けることを特徴とする。
【0009】
また本発明の光配線部品は、光ファイバ心線及びテンションメンバを保護部材で平坦形状に被覆して平坦形状の光コードとしたことを特徴とするものである。
【0010】
また本発明は、前記光配線部品において、光ファイバ心線が折り曲げられた形状であることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明は、前記光配線部品において、光ファイバ心線として、ホールアシストファイバを用いることを特徴とするものである。
【0012】
また本発明の光配線部品は、導波部の近傍に空隙層が設けられたプラスチックスよりなる導波路を、保護部材で平坦形状に被覆して平坦形状の光コードとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光配線方法及び光配線部品は、光ファイバ心線を収容した平坦形状の光コードを、窓の戸と窓枠の間の空隙に通して光配線することにより、住宅の壁に孔を空けることなく、屋外と屋内をパッシブな光配線で結ぶことが可能となる。
【0014】
また、給電の必要な機器を設置する必要が無くなり、エアコンダクトなどを利用する必要が無くなる。
【0015】
さらに、光ケーブルの途中で光ファイバ心線を引き出せるケーブル構造であれば適用することが可能であり、任意の位置で光ケーブルを切断する必要が無しに平坦化が出来、余長をほとんど必要としない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る光配線部品を示す斜視図である。図1に示すように、光配線部品11は、光ファイバ心線12、複数の可曲性の高い心線保護用の部材であるテンションメンバ13、樹脂等よりなる平板状のカバー基部14、カバー接着剤兼緩衝材15、樹脂等よりなるアーチ型のカバー上部16、窓枠に取り付けるための接着剤17より構成される。
【0017】
すなわち、下面に接着剤17が設けられたカバー基部14上にはカバー接着剤兼緩衝材15が設けられ、前記カバー接着剤兼緩衝材15上には光ファイバ心線12を挟んで両側にテンションメンバ13が配置して設けられる。前記カバー基部14上には光ファイバ心線12及びテンションメンバ13を被覆するようにしてカバー上部16が一体に設けられる。したがって、光ファイバ心線12及びテンションメンバ13は保護部材であるカバー基部14及びカバー上部16により平坦形状に被覆されて平坦形状の光コードが形成される。
【0018】
図2は本発明の第1の実施形態に係る光配線方法を説明するための斜視図である。図2に示すように、建築物の壁21の窓枠22には窓の戸23が開閉自在に取り付けられる。前記窓の戸23はガラス板24をガラス枠25に取り付けて構成される。屋外にあるアクセス網から建築物内へ光配線するために、屋外のアクセス網から建築物内へ光ドロップケーブル26が配線される。前記光ドロップケーブル26の所定の位置から光ファイバ心線12を取り出し、図1に示すように、取り出した光ファイバ心線12をテンションメンバ13と一緒に保護部材であるカバー基部14及びカバー上部16により平坦形状に被覆して光配線部品11である平坦形状の光コード27を形成する。前記光コード27と光ドロップケーブル26の接続部には光ファイバ心線12を保護する保護カバー28が設けられる。前記光コード27は窓枠22の凹凸形状に合わせて接着剤17により貼り付けられる。29は光ドロップケーブル26に設けられた光ステップルである。
【0019】
図3は本発明の第1の実施形態に係る光配線を示す屋内側斜視図であり、図4は本発明の第1の実施形態に係る光配線を示す屋外側斜視図である。図3及び図4中、図2と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。すなわち、屋外にあるアクセス網から建築物内へ光配線する場合、光ドロップケーブル26に設けた平坦形状の光コード27を窓枠22と窓の戸23の間の空隙に通して光配線することができる。図4において、41はクリートである。
【0020】
前記第1の実施形態では光コード27の平坦構造を利用して窓枠22と窓の戸23の隙間に配線することが出来、また、テンションメンバ13、カバー基部14、カバー接着剤兼緩衝材15、及びカバー上部16が窓の戸23の開閉時に発生する衝撃力から光ファイバ心線12を守る構造となっている。尚、構造を分かりやすくするためカバー基部14とカバー上部16を分けて表しているが、これらは一体となっていても構わない。カバー上部16は光ファイバ心線12が破断しないためにアーチ型をしており光ファイバ心線12が余裕を持って曲げられるようになっている。また、光ファイバ心線12は、素線外径80μmの光ファイバを応用すれば、現在主流となっている素線外径125μmの光ファイバよりも小さく曲げることが可能である。このように急な曲げを加えても光信号を損失を少なくして伝送できる光ファイバとしてホールアシストファイバ等を利用することができる。
【0021】
図5は本発明の第2の実施形態に係る光配線部品を示す斜視図である。図5中、図1と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。折り曲げられた形状の光ファイバ心線51が用いられ、折り曲げられた形状の光ファイバ心線51及びテンションメンバ13は保護部材であるカバー基部14及びカバー上部16により平坦形状に被覆されて平坦形状の光コード52が形成される。
【0022】
図6は本発明の第2の実施形態に係る光配線を示す屋内側斜視図である。図6中、図3と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。すなわち、屋外にあるアクセス網へ建築物内から光配線する場合、インドアケーブル61に余長巻取り部62を介して平坦形状の光コード52を接続し、前記平坦形状の光コード52を窓枠22と窓の戸23の間の空隙に通して光配線することができる。
【0023】
前記第2の実施形態では、屋内側の光配線と屋外側の光配線を接続するために平坦形状を持つ光コード52を利用する。光ファイバ心線51を折り曲げた形状で光コード52内に収容することで適度な余長を持たせ、光コード52の変形により光ファイバ心線51に余計な張力が掛ることを回避している。このような使用法のできる曲げ損失の小さい光ファイバとしてホールアシストファイバ等がある。構造を分りやすくするためカバー基部14、カバー上部16を分けて表しているが、これらは一体となっていても構わない。光ファイバ心線51が破断しないためにカバー上部16はアーチ型をしており光ファイバ心線51が余裕を持って曲げられるようになっている。また、光ファイバ心線51は、素線外径80μmの光ファイバを応用すれば、現在主流となっている素線外径125μmの光ファイバよりもより小さく曲げることが可能である。このように急な曲げを加えても光信号を損失を少なくして伝送できる光ファイバとしてホールアシストファイバ等を利用することができる。
【0024】
尚、前記第2の実施形態では、光コード52の両端に光コネクタを取り付け、屋内外の光ケーブルと接続することを想定しているが、この場合、光ケーブルにコネクタを付ける必要があり、一般的には図6の余長巻取り部62のような余長収容部が必要になると考えられる。しかるに余長収容部は各光ケーブルのどこか1ヶ所にあれば済むので、それを利用できる場合、接続部は図2の保護カバー29のような美観性を損なわないものに変更可能である。
【0025】
図7は本発明の第3の実施形態に係る光配線部品を示す斜視図である。図7中、図1と同一部分は同一符号を付してその説明を省略する。図7に示すように、平板状のプラスチックス等よりなる導波路71の中心部には光信号を伝搬する導波部72が設けられ、前記導波部72近傍の上部及び下部にはそれぞれ空隙層73が設けられる。前記導波路71は保護部材であるカバー基部14及びカバー上部16により平坦形状に被覆されて平坦形状の光コード74が形成される。
前記導波路71はガラスファイバよりも応力に対する耐破断性に優れた導波路であり、例えばポリマー導波路などがある。
【0026】
前記第3の実施形態では屋外側の光配線と屋内側の光配線を接続するために平坦形状を持つ光コード74を利用する。前記導波路71のような部品を用いることで窓の戸の開閉時に発生する衝撃力への光コード74の耐性を持たせており、光コード74は、第2の実施形態の光コード52よりも簡単な構造である事からより細く薄くすることが可能である。また、空隙層73を設けることで導波部72に光信号を閉じ込めることができ、曲げ損失を小さくすることが出来る。前記第3の実施形態においても構造を分りやすくするためカバー基部14、カバー上部16を分けて表しているが、これらは一体となっていても構わない。導波路71とカバー基部14、カバー上部16の3つの部品が一体となっていても構わない。前記第3の実施形態における配線方法は前記第2の実施形態における配線方法と同様である。
【0027】
なお、本発明は、上記実施形態例そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態例に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態例に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態例に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光配線部品を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る光配線方法を説明するための斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る光配線を示す屋内側斜視図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る光配線を示す屋外側斜視図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る光配線部品を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る光配線を示す屋内側斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る光配線部品を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
11…光配線部品、12…光ファイバ心線、13…テンションメンバ、14…カバー基部、15…カバー接着剤兼緩衝材、16…カバー上部、17…接着剤、21…建築物の壁、22…窓枠、23…窓の戸、24…ガラス板、25…ガラス枠、26…光ドロップケーブル、27…光コード。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線を収容した平坦形状の光コードを、窓の戸と窓枠の間の空隙に通して光配線することを特徴とする光配線方法。
【請求項2】
平坦形状の光コードとして、光ケーブルの所定の位置から取り出した光ファイバ心線を平坦形状保護部材で被覆した平坦形状の光コードを用いることを特徴とする請求項1に記載の光配線方法。
【請求項3】
平坦形状の光コードを、窓枠の形状に合わせて窓枠に貼り付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の光配線方法。
【請求項4】
光ファイバ心線及びテンションメンバを保護部材で平坦形状に被覆して平坦形状の光コードとしたことを特徴とする光配線部品。
【請求項5】
光ファイバ心線が折り曲げられた形状であることを特徴とする請求項4に記載の光配線部品。
【請求項6】
光ファイバ心線として、ホールアシストファイバを用いることを特徴とする請求項4又は5に記載の光配線部品。
【請求項7】
導波部の近傍に空隙層が設けられたプラスチックスよりなる導波路を、保護部材で平坦形状に被覆して平坦形状の光コードとしたことを特徴とする光配線部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−147754(P2007−147754A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−339061(P2005−339061)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】