説明

光重合体印刷版前駆体

支持体上に記載の順序で感光性コーティングおよび保護コーティングを含んでなり、該感光性コーティングが光の吸収時に光重合可能である組成物を含んでなり、該組成物が結合剤、重合可能な化合物、増感剤および光開始剤を含んでなり、そして該保護コーティングが1種もしくはそれ以上のタイプのポリ(ビニルアルコール)を含んでなる光重合体印刷版前駆体であって、該光開始剤がヘキサアリール−ビスイミダゾール化合物でありそして保護コーティング中で使用される全てのポリビニルアルコール類の平均鹸化度が93モル%より低いことを特徴とする前駆体が開示される。該印刷版前駆体は高い速度および良好な予備−加熱ラチチュードを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、支持体上に記載の順序で感光性コーティングおよび保護コーティングを含んでなる光重合体印刷版前駆体に関する。本発明は、また、それを用いる平版印刷版の製造方法、および印刷版前駆体の予備−加熱ラチチュードを改良するための保護オーバーコート中の1種もしくはそれ以上のタイプのポリ(ビニルアルコール)の使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
平版印刷では、いわゆる印刷マスター、例えば印刷版、が印刷機のシリンダー上に設置される。マスターは平版像をその表面に有し、そしてインキを該像に適用しそして次にインキをマスターから典型的には紙である受容物質上に移すことにより印刷されたコピーが得られる。従来のいわゆる「湿潤」平版印刷では、インキ並びに湿し水(湿し液とも称する)が親油性(または疎水性、すなわちインキ−受容性、撥水性)領域並びに親水性(または疎油性、すなわち水−受容性、インキ−反撥性)領域よりなる平版像に供給される。いわゆる「ドリオグラフィー」印刷では、平版像はインキ−受容性およびインキ−不粘着性(インキ−反撥性)領域よりなり、そしてドリオグラフィー印刷中にはインキだけがマスターに供給される。
【0003】
印刷マスターは一般的にいわゆるコンピューター−ツー−フィルム(CtF)方法により得られ、そこでは例えば活字選択、走査、色分離、スクリーニング、トラッピング、レイアウトおよび組み付けの如き種々の印刷前段階がデジタル式に行われそして各々の色選択が像セッターを用いて製版用フィルムに移される。処理後に、フィルムは版前駆体と称する像形成材料の露出用のマスクとして使用することができ、そして版処理後に、マスターとして使用できる印刷版が得られる。ほぼ1995年から、いわゆる「コンピューター−ツー−プレート」(CtP)方法に多くの関心が持たれてきた。「ダイレクト−ツー−プレート」とも称するこの方法は、デジタル文書がいわゆるプレート−セッターにより印刷版前駆体に直接転写されるため、フィルムの作成を回避する。CtP用の印刷版前駆体はしばしばデジタルプレートと称する。
【0004】
デジタルプレートは3つの範疇:(i)銀塩拡散転写機構に従い作用する銀版;(ii)露光時に硬化する光重合可能組成物を含有する光重合体版および(iii)像機構が熱によりまたは光対熱転換により引き起こされる熱版、におおまかに分類することができる。熱版は主として830nmまたは1064nmで発光する赤外レーザー用に増感される。典型的な光重合体版は可視光線に関して、主としてArレーザー(488nm)またはFD−YAGレーザー(532nm)による露出に関して、増感される。最初はDVDによるデータ貯蔵用に開発された、低価格の青色または紫色レーザーダイオードの広範囲のアベイラビリティーが、より短い波長で走査するプレート−セッターの製造を可能にした。より具体的には、350〜450nmで発光する半導体レーザーがInGaN材料を用いて実現された。
【0005】
ラジカルが光重合体版の光重合可能組成物の硬化反応に関与しており、そして該硬化反応は酸素により悪影響を受けることが知られている。この問題を減ずるために、感光性コーティングを酸素遮断層、保護オーバーコートまたはオーバーコート層とも称する保護コーティングと共に付与することが知られている。
【0006】
特許文献1によると、予備増感させた平版印刷版の酸素遮断層はポリ(ビニルアルコー
ル)を含有してなければならず、そこでは現像剤用に使用されるものと同じ溶媒中に溶解させることができ且つ像形成工程に悪影響を与えない酸素遮断層を付与するためには該ポリ(ビニルアルコール)のヒドロキシ基の少なくとも2%がジカルボン酸によりエステル化されている。特許文献1から既知である印刷版前駆体は17頁に開示されている低い感度しか有しておらず、それぞれが150ワットの4個の高圧水銀蒸気灯を用いる時に低い露出(高い感度に相当する)が3sを意味すると解釈される。
【0007】
特許文献2は390〜430nmの波長範囲を有するスペクトル感度の最大ピークを有する感光層および保護層を含んでなる写真印刷版を開示しており、そしてそこでは410nmの波長における像形成用の感光性平版印刷版に関する最少露出は多くとも100μJ/cmである。該保護層は感光層上に酸素−遮断層として付与されそして特許文献2に従う保護層の好ましい例は水溶性重合体、例えばポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)およびセルロースを含有し、ポリ(ビニルアルコール)およびポリ(ビニルピロリドン)の混合物が特に好ましい。
【0008】
特許文献3によると、保護層が光重合可能組成物の層の上に付与され、そこでは該保護層が例えば酸素の如き低分子量化合物の浸透を抑制しそして相対的に高い結晶化度を有する水溶性重合体を含有しうる。好ましくは71%〜100%の鹸化度を有するポリ(ビニルアルコール)が基本成分として使用され、それはエステル、エーテルまたはアセタールにより部分的に置換されてもよく、そして光重合可能組成物は特異的増感染料およびチタノセン化合物よりなる光重合開始系を含んでなる。
【0009】
光重合体印刷版前駆体を像形成(露出)した後に、オーバーコートを洗浄除去する前に版を短時間にわたり高温に加熱しそして光層を現像する。この加熱段階は以下では予備−加熱段階と称する。予備−加熱段階中に、版の裏側で測定される時に、約90℃〜120℃の典型的な温度が例えば約1分間の短い時間にわたり使用される。予備−加熱段階の条件は異なるタイプのプロセッサーによりそして同じプロセッサーに関しても変動するため、印刷版は予備−加熱条件、特に温度、に関係なく不変の結果を示さなければならない。印刷版が不変の結果を示す予備−加熱条件の範囲は該版の予備−加熱ラチチュードと称する。
【0010】
予備−加熱ラチチュードに関する良好な試験は画線太りであり、それは予備−加熱温度によりできる限り少なく影響されるべきである。印刷版前駆体は、予備−加熱温度が約20℃の範囲内で変動する時にその画線太りがほんの少しだけ影響を受ける(小さい変動だけを示す)場合に、良好な予備−加熱ラチチュードを有すると言われる。これは、生ずる印刷物上に目に見える影響なしに予備−加熱ラチチュードを約20℃により変動できることを意味する。
【0011】
先行技術に従う光重合体印刷版前駆体は、市販の低価格且つ低出力の青色または紫色レーザーダイオードを用いて短い露出時間を可能にするのに充分な速度(感度)で提供される時には不満足な予備−加熱ラチチュードを示すため、そのような版は不満足である。
【特許文献1】独国特許出願公開第2629883A1号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1148387A1号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第1280006A2号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
発明の要旨
本発明の目的は、良好な予備−加熱ラチチュードを有する高速光重合体印刷版前駆体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は請求項1に定義された通りにして実現される。本発明によると、光重合開始剤としてのヘキサアリールビスイミダゾールおよび特定鹸化度を有するポリ(ビニルアルコール)を含んでなる保護オーバーコートの使用が、良好な予備−加熱ラチチュードを有する高速光重合体印刷版前駆体を得ることを可能にする。本発明の印刷版前駆体はフレキソグラフィーまたは平版印刷版前駆体であり、後者が非常に好ましい。該印刷版前駆体を300〜450nmの範囲内の発光波長を有するレーザーで露出する平版印刷版の製造方法も本発明の一面である。本発明に従う好ましい光重合体印刷版前駆体は、版の表面で測定される100μJ/cmもしくはそれ以下のエネルギー密度で露出することができる。本発明に従う印刷版前駆体、平版印刷版の製造方法および使用の好ましい態様は従属請求項に定義されている。
【0014】
発明の詳細な記述
本発明は、支持体上に記載の順序で感光性コーティングおよび保護コーティングを含んでなり、該感光性コーティングが光の吸収時に光重合可能である組成物を含んでなり、該組成物が結合剤、重合可能な化合物、増感剤および光開始剤を含んでなり、そして該保護コーティングが1種もしくはそれ以上のタイプのポリ(ビニルアルコール)を含んでなる光重合体印刷版前駆体であって、該光開始剤がヘキサアリール−ビスイミダゾール化合物でありそして保護コーティング中で使用される全てのポリビニルアルコール類の平均鹸化度が93モル%より低いことを特徴とする光重合体印刷版前駆体に関する。
【0015】
本発明で好ましく使用される増感染料(増感剤)は、光重合可能組成物中に導入される時には、300〜450nm、好ましくは350〜430nm、そして特に好ましくは360〜420nmの範囲内の吸収波長を有し、そして光重合体印刷版を該波長範囲内で感光性にする。
【0016】
既知の増感染料を本発明の組成物中で使用することができる。適する種類は、欧州特許出願公開第1148387A1号明細書に開示されている、(Ia)および(Ib)
【0017】
【化1】

[式中、R〜Rの各々は、互いに独立して、炭素数1〜6のアルキル基(C1−6アルキル基)であり、そしてR〜Rの各々は水素原子またはC1−6アルキル基であり、但しRおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR、RおよびR、またはRおよびRは互いに結合して環:
【0018】
【化2】

を形成することができ、
ここで、RおよびR10の各々は、互いに独立して、C1−6アルキル基であり、R11およびR12の各々は、互いに独立して、水素原子またはC1−6アルキル基であり、Yは硫黄原子、酸素原子、ジアルキルメチレンまたは−N(R13)−であり、そしてR13は水素原子またはC1−6アルキル基であり、但しRおよびR10、RおよびR11、またはR10およびR12は互いに結合して環を形成することができる]
のようなジアルキルアミノベンゼン化合物;欧州特許出願公開第1280006A2号明細書に開示されている、式(II)
【0019】
【化3】

[式中、Aは場合により置換されていてもよい芳香族環または複素環式環を表し、Xは酸素原子、硫黄原子または−N(R16)−を表し、R14、R15およびR16は各々独立して水素原子または1価の非金属原子基を表し、そしてAおよびR14、またはR15およびR16は一緒に結合して脂肪族または芳香族環を形成することができる]
に従う化合物;欧州特許出願公開第1035435A2号明細書に開示されている1,3−ジヒドロ−1−オキソ−2H−インデン化合物;欧州特許出願公開第1048982A1号明細書、欧州特許出願公開第985683A1号明細書、欧州特許出願公開第1070990A1号明細書および欧州特許出願公開第1091247A2号明細書に開示されている増感染料;並びに/または光学増白剤を包含する。
【0020】
最高可能感度を得るためには、増感剤としての光学増白剤が好ましい。「蛍光白色化剤」としても知られる典型的な光学増白剤は、300〜450nmの範囲内の波長を有する光を吸収可能であり且つ吸収されたエネルギーを400〜500nmの間の範囲内の波長を有する蛍光として発光可能である無色ないし弱く着色された有機化合物である。光学増白剤の物理的原理および化学性の記述はUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,Sixth Edition,Electronic Release,Wiley−VCH 1998に示されている。基本的に、適する光学増白剤は炭素環式または複素環式核を含んでなるπ−電子系を含有する。これらの化合物の適切な代表は、例えば、スチルベン類、ジスチルベンゼン類、ジスチリルビフェニル類、ジビニルスチルベン類、トリアジニルアミノスチルベン類、スチルベニルトリアゾール類、シチルベニルナフトトリアゾール類、ビス−トリアゾールスチルベン類、ベンゾキサゾール類、ビスフェニルベンゾキサゾール類、スチルベニルベンゾキサゾール類、ビス−ベンゾキサゾール類、フラン類、ベンゾフラン類、ビス−ベンズイミダゾール類、ジフェニルピラゾリン類、ジフェニルオキサジアゾール類、クマリン類、ナフタルイミド類、キサンテン類、カルボスチリル類、ピレン類および1,3,5−トリアジニル−誘導体である。
【0021】
より具体的に、下記式の1つに従う構造を有する光学増白剤が本発明の組成物中での使用のための増感剤として適する:
【0022】
【化4】

【0023】
【化5】

【0024】
【化6】

[式中、Xは下記基の1種であり、*は上記式中の結合の位置を示し:
【0025】
【化7】

そしてここで上記式(III)〜(XVII)の各々における1つもしくはそれ以上の核は独立してアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、カルボキシル、ニトリル、アミノ、ヒドロキシル、アルキルスルホニルおよびアミノスルホニルから選択される1つもしくはそれ以上の基により置換されていてもよい]。
【0026】
特に適する光学増白剤は、有機溶媒中に溶解させうる化合物である。光学増白剤は単一化合物としてまたは数種の物質の混合物として使用することができる。これらの化合物の合計量は、光重合可能組成物中の非揮発性化合物の合計重量に関して0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%の範囲である。
【0027】
非常に好ましい光学増白剤は、式(III−A)〜(VIII−A):
【0028】
【化8】

[式中、
a)Rはメチルを表し、そしてR〜Rは各々Hを表し、
b)R〜Rはメトキシを表し、そしてRおよびRはHを表し、
c)RはCNを表し、そしてR〜Rは各々Hを表し、或いは
d)RはCNを表し、そしてR、R、RおよびRは各々Hを表す]、
【0029】
【化9】

[式中、R〜Rは各々Hを表し、そしてRはメトキシを表す]、
【0030】
【化10】

[式中、
a)R〜R10は各々Hを表し、
b)R、RおよびR〜R10は各々Hを表し、そしてRはメトキシを表し、或いは
c)R、R、R〜R、RおよびR10は各々Hを表し、そしてRおよびRは各々メトキシを表す]、
【0031】
【化11】

[式中、
a)RおよびRはHを表し、そしてRはフェニルスルホン酸またはフェニルスルホン酸塩を表し、或いは
b)RはHを表し、RはCNを表し、そしてRはClを表す]、
【0032】
【化12】

[式中、
a)Rはt−ブチルを表し、RはHを表し、そしてRはフェニルを表し、
b)Rはメチルを表し、RはHを表し、そしてRはカルボキシメチルを表し、或いは
c)RはHを表し、RはHを表し、そしてRは2−(4−メチル−オキサ−3,3−ジアゾール)を表す]、
【0033】
【化13】

[式中、
a)Xは4,4’−スチルベネジイルを表し、そしてRおよびRは各々Hを表し、
b)Xは2,5−チオフェネジイルを表し、そしてRおよびRは各々t−ブチルを表し、
c)Xは1,4−ナフタレンジイルを表し、そしてRおよびRは各々Hを表し、或いは
d)Xは1,1−エテンジイルを表し、そしてRおよびRは各々メチルを表す]、
【0034】
【化14】

[式中、RおよびRは各々ジエチルアミノを表す]、
【0035】
【化15】

[式中、
a)RおよびRは各々Hを表し、そしてRはSONHを表し、
b)RおよびRは各々Hを表し、そして
はSOCHCHOCHCHN(CHを表し、
c)RおよびRは各々Hを表し、そして
はSOCHCHOCH(CH)CHN(CHを表し、
d)RおよびRは各々Hを表し、そしてRはSOCHを表し、或いは
e)RおよびRは各々Hを表し、そしてRはSOCHCHOHを表す]、
【0036】
【化16】

[式中、
a)RはHを表し、RはMeを表し、そしてRはジエチルアミノを表し、
b)Rはフェニルを表し、RはHを表し、そして
は2−N−ナフタトリアゾリルを表し、
c)RはHを表し、Rはメチルを表し、そしてRはOHを表し、
d)Rはフェニルを表し、RはHを表し、そして
はNH−(4,6−ジクロロ)−(1,3,5)−トリアジンを表し、或いは
e)RはPhを表し、RはHを表し、そして
は1−(3−メチルピラゾリニル)を表す]、
【0037】
【化17】

[式中、
a)RはHを表し、Rはメトキシを表し、そしてRはメチルを表し、或いは
b)RおよびRは各々OEtを表し、そしてRはメチルを表す]、
【0038】
【化18】

[式中、
a)RおよびRは各々メチルを表し、そしてRはHを表し、或いは
b)RおよびRは各々メチルを表し、そしてRはカルボキシメチルを表す]、
【0039】
【化19】

[式中、
a)Xは1,2−エテンジイルを表し、そしてRはMeを表し、或いは
b)Xは4,4’−スチルベネジイルを表し、そしてRはメチルを表す]、
【0040】
【化20】

[式中、RはPhを表し、Rはジエチルアミノを表し、そしてRはエチルを表す]、および
【0041】
【化21】

[式中、RおよびRは各々メトキシを表す]
の化合物を包含する。
【0042】
これらの増感剤から、下記の式(IIIa)および/または(IVa)の化合物が特に好ましい:
【0043】
【化22】

[式中、
〜R14は独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基またはハロゲン原子を表し、
そしてR〜R10の少なくとも1個は1個より多い炭素原子を有するアルコキシ基を表す]、
【0044】
【化23】

[式中、
15〜R32は独立して水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基またはハロゲン原子を表し、
そしてR15〜R24の少なくとも1個は1個より多い炭素原子を有するアルコキシ基を表す]。本発明のアルキルおよびアルコキシ基は場合により置換されていてもよくそしてそれらの置換基は増感剤の溶解度を調節するために選択することができ、そして、例えば、ハロゲン、エステル、エーテル、チオエーテルまたはヒドロキシでありうる。アルキル
またはアルコキシ基は直鎖状もしくは環式でありうるが、式(IIIa)および(IVa)の増感剤にとっては分枝鎖状が好ましい。
【0045】
、R、R、R10、R11、R12、R13およびR14が独立して水素原子、弗素原子または塩素原子を表し、特にR、R、R、およびR10が水素原子であり、R〜R、R〜Rが独立してアルコキシ基であり、そしてアルコキシ基の少なくとも2個が分枝鎖状でありそして3〜15個の炭素原子を有する式(IIIa)の増感剤で特別な利点が得られる。R、R、R、Rが独立してメトキシ基を表しそしてRおよびRが独立して炭素数3〜15の分枝鎖状アルコキシ基である以上で開示された式(IIIa)の増感剤が本発明にとって特に好ましい。
【0046】
15、R19、R20、R24、R25〜R32が独立して水素原子、弗素原子または塩素原子を表し、特にR15、R19、R20、R24が水素原子であり、R16〜R18、R21〜R23が独立してアルコキシ基であり、そしてアルコキシ基の少なくとも2個が分枝鎖状でありそして3〜15個の炭素原子を有する式(IVa)の増感剤でも特別な利点が得られる。R16、R18、R21、R23が独立してメトキシ基を表しそしてR17およびR22が独立して炭素数3〜15の分枝鎖状アルコキシ基である以上で開示された式(IVa)の増感剤が本発明にとって特に好ましい。
【0047】
下記の構造が本発明の好ましい増感剤の例であり、そしてそれらの溶解度Sは括弧内に20℃で測定される増感剤のg/kgのメチルエチルケトンとして示される。
【0048】
【化24】

【0049】
【化25】

【0050】
【化26】

【0051】
【化27】

本発明にとって有用なほとんどの増感剤は既知の方法により合成することができそして式(IIIa)および(IVa)の非常に好ましい増感剤の合成は以下に開示されている増感剤(III−1)の合成と同様にして行うことができる。
中間体(C−3)の合成
【0052】
【化28】

8.365kg(45.0モル)のシリングアルデヒド(C−1)および1.494kg(9.0モル)のヨウ化カリウムの混合物に20.25Lのスルホランを室温において加える。この混合物を窒素下で30℃に加熱した後に、3.12kg(47.25モル)の水中KOHおよび2.80kg(20.25モル)のKCOを加える。反応混合物を75℃に暖めた後に、12.78kg(90.0モル)の2−ブロモブタン(C−2)を30分間の期間にわたり加える。75℃における加熱を24時間にわたり続け、引き続き25℃に冷却する。次に25Lの水を加えそして反応生成物を18Lのメチルt−ブチルエーテル(MTBE)で抽出する。有機相を連続的にa)それぞれ6.0Lの7.5重量%KCO水溶液で2回洗浄し、b)それぞれ13.5Lの純水で2回洗浄し、そして最後にc)それぞれ4.5kgの20重量%NaCl水溶液で2回洗浄する。溶媒(MTBE)を50ミリバールの減圧下での75℃における蒸留により除去しそしてそれにより7.845kg(75%の理論収率)の粗製中間体(C−3)が黄色油状で得られ、それをさらなる精製なしに(III−1)の合成において使用する。
増感剤(III−1)の合成
【0053】
【化29】

9.63kg(25.46モル)のp−キシリレン−ビス−ホスホネート(C−4)および12.13kg(50.92モル)の粗製中間体(C−3)の20LのTHF中混合物に、4.70kg(71.3モル)のKOHを室温において加える。撹拌された反応混合物を3.5時間にわたり加熱還流した後に、25.2kgのメタノールおよび9.9kgの水の混合物を加え、引き続き20℃にさらに冷却することにより反応生成物を沈殿させる。結晶性生成物(III−1)を濾別し、フィルター上で数部分のメタノール/水で洗浄しそして50℃において乾燥する。収量は、154℃の融点を有する9.05kg(67%の理論収率)の(III−1)である。
【0054】
p−キシリレン−ビス−ホスホネート(C−4)の適切な合成法は文献から、例えばB.P.Lugovkin and B.A.Arbuzov,Doklady Akademii Nauk SSSR(1948),59,pages 1301 to 1304から、既知である。
【0055】
本発明に従う光重合可能組成物はヘキサアリールビスイミダゾール(HABI、トリアリールイミダゾールの二量体)化合物を光重合開始剤として含んでなる。
【0056】
ヘキサアリールビスイミダゾール類の製造工程は独国特許第1470154号明細書に記載されており、そして光重合可能組成物中でのそれらの使用は欧州特許第24629号明細書、欧州特許第107792号明細書、米国特許第4410621号明細書、欧州特許第215453号明細書および独国特許第3211312号明細書に記載されている。好ましい誘導体は、例えば、2,4,5,2’,4’,5’−ヘキサフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−ブロモフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3−メトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,5,2’,5’−テトラキス(2−クロロフェニル)−4,4’−ビス(3,4−ジメトキシフェニル)ビスイミダゾール、2,2’−ビス(2,6−ジクロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、(2−ニトロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ジ−o−トリル−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾール、2,2’−ビス(2−エトキシフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾールおよび2,2’−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニルビスイミダゾールである。HABI光開始剤の量は典型的には、光重合可能組成物の非揮発性成分の合計重量に関して、0.01〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲である。
【0057】
最良の結果、特に最高の感度、は増感剤としての光学増白剤および光開始剤としてのヘキサアリールビスイミダゾールの組み合わせにより得られ、式(III)および(IV)の増感剤が特に好ましい。
【0058】
ヘキサアリールビスイミダゾール化合物は光開始剤として単独でまたは別の光開始剤と組み合わせて使用することができる。既知の光重合開始剤は本発明の組成物中でヘキサアリールビスイミダゾール化合物と組み合わせて使用することができる。適する種類は、芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物および炭素−ハロゲン結合を有する化合物を包含する。そのような光開始剤の多くの具体例は欧州特許出願公開第1091247号明細書に見ることができる。
【0059】
好ましくはヘキサアリールビスイミダゾール化合物は単独でまたは芳香族ケトン類、芳香族オニウム塩類、有機過酸化物、チオ化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、活性エステル化合物または炭素ハロゲン結合を有する化合物と組み合わせて使用することができる。
【0060】
本発明の好ましい態様では、ヘキサアリールビスイミダゾール化合物は本発明の光重合可能な組成物中で使用される全ての光開始剤の50モル%より多く、好ましくは少なくとも80モル%、そして特に好ましくは少なくとも90モル%を構成する。
【0061】
結合剤は広範囲の有機重合体から選択することができる。種々の結合剤の組成物を使用することもできる。有用な結合剤は、例えば、塩素化されたポリアルキレン類、特に塩素化されたポリエチレンおよび塩素化されたポリプロピレン;ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル類またはアルケニルエステル類、特にポリ((メタ)アクリル酸メチル)、ポリ((メタ)アクリル酸エチル)、ポリ((メタ)アクリル酸ブチル)、ポリ((メタ)アクリル酸イソブチル)、ポリ((メタ)アクリル酸ヘキシル)、ポリ((メタ)アクリル酸(2−エチルヘキシル))およびポリ((メタ)アクリル酸アルキル);(メタ)アクリル酸アルキルエステル類またはアルケニルエステル類と他の共重合可能単量体との、特に(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレンおよび/またはブタジエンとの、共重合体;ポリ(塩化ビニル)(PVC);塩化ビニル/(メタ)アクリロニトリル共重合体;ポリ(塩化ビニリデン)(PVDC);塩化ビニリデン/(メタ)アクリロニトリル共重合体;ポリ(酢酸ビニル);ポリ(ビニルアルコール);ポリ(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体;(メタ)アクリルアミド/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体;(メタ)アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン(ABS)三元共重合体;ポリスチレン;ポリ(α−メチルスチレン);ポリアミド類;ポリウレタン類;ポリエステル類;セルロース、またはメチルセルロース、エチルセルロース、アセチルセルロース、ヒドロキシ−(C1−4−アルキル)セルロース、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース化合物;ポリ(ビニルホルマール)およびポリ(ビニルブチラール)を包含する。水中に不溶性であるが他方で水性−アルカリ性溶液中に可溶性であるかまたは少なくとも膨潤性である結合剤が特に適する。別の有効な結合剤は一般的な有機コーティング溶媒中に可溶性である重合体である。
【0062】
カルボキシル基を含有する結合剤、特にα,β−不飽和カルボン酸の単量体単位および/またはα,β−不飽和ジカルボン酸の単量体単位、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル酢酸、マレイン酸またはイタコン酸を含有する重合体または共重合体が本発明の目的に特に適する。用語「共重合体」は、本発明の文脈では少なくとも2種の単量体の単位を含有する重合体であり、それ故、三元共重合体およびそれより高級の混合重合体でもある、ことを理解すべきである。特に有用な共重合体の例は、(メタ)アクリル酸の単位、並びに/或いは(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリルエステル類および/または(メタ)アクリロニトリルの単位を含有するもの、並びにクロトン酸の単位および(メタ)アクリル酸アルキルエステル類および/または(メタ)アクリロニトリルの単位を含有する共重合体、並びに酢酸ビニル/(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体である。無水マレイン酸またはマレイン酸モノアルキルエステル類の単位を含有する共重合体も適する。これらの中には、例えば、無水マレイン酸およびスチレン、不飽和エーテル類もしくはエステル類または不飽和脂肪族炭化水素類の単位を含有する共重合体、並びにそのような共重合体から得られるエステル化生成物がある。別の適する結合剤は、分子内無水ジカルボン酸を用いるヒドロキシル−含有重合体の転化から得られる生成物である。別の有用な結合剤は、酸水素原子を有する基が存在しており、それらの一部または全部が活性化されたイソシアネート類を用いて転化される重合体である。これらの重合体の例は、脂肪族または芳香族スルホニルイソシアネート類またはホスフィン酸イソシアネート類を用いるヒドロキシル−含有重合体の転化により得られる生成物である。脂肪族または芳香族ヒドロキシル基を有する重合体、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類、アリルアルコール、ヒドロキシスチレンまたはビニルアルコールの単位を含有する共重合体、並びにエポキシ樹脂も、それらが充分な数の遊離OH基を有する限り適する。
【0063】
結合剤として使用される有機重合体は600〜200000の間の、好ましくは1000〜100000の間の典型的平均分子量Mを有する。10〜250の間の、好ましくは20〜200の間の酸価、または50〜750の間の、好ましくは100〜500の間のヒドロキシル価を有する重合体がさらに好ましい。1種もしくは複数の結合剤の量は一般的に、組成物の非揮発性成分の合計重量に関して、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%の範囲である。
【0064】
重合可能な化合物は広範囲の光−酸化可能な化合物から選択することができる。適する化合物は第一級、第二級および特に第三級アミノ基を含有する。少なくとも1個のウレタンおよび/またはウレア基および/または第三級アミノ基を含有するラジカル重合可能な化合物が特に好ましい。用語「ウレア基」は本発明の文脈では式>N−CO−N<の基であると理解すべきであり、ここで窒素原子上の原子価は水素原子および炭化水素基により飽和される(但し、2個の窒素原子のいずれかの上の1個より多くない原子価が1個の水素原子により飽和される)。しかしながら、1個の窒素原子上の1個の原子価がカルバモイル(−CO−NH−)基に結合されてビウレット構造を生成することも可能である。
【0065】
複素環式環の構成成分でもありうる光−酸化可能なアミノ、ウレアまたはチオ基を含有する化合物も適する。光−酸化可能なエノール基を含有する化合物を使用することもできる。光−酸化可能な基の具体例は、トリエタノールアミノ、トリフェニルアミノ、チオウレア、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、アセチルアセトニル、N−フェニルグリシンおよびアスコルビン酸基である。
【0066】
特に適する化合物は下記式(XVIII):
【0067】
【化30】

[式中、
Rは炭素数2〜8のアルキル基((C−C)アルキル基)、(C−C)ヒドロキシアルキル基または(C−C14)アリール基を表し、
Qは
【0068】
【化31】

を表し、
ここで
Eは炭素数2〜12の2価の飽和炭化水素基、2個までの窒素、酸素および/または硫黄原子を環内に含有できる2価の5−〜7−員の飽和イソ−もしくはへテロ環式基、炭素数6〜12の2価の芳香族単もしくは二環式イソ環式基、或いは2価の5−もしくは6−員
の芳香族複素環式基を表し、そして
およびDは独立して炭素数1〜5の飽和炭化水素基を表し、
およびRは独立して水素原子、アルキルまたはアルコキシアルキル基を表し、
は水素原子、メチルまたはエチル基を表し、
は炭素数1〜12の直鎖もしくは分枝鎖状の飽和炭化水素基を表し、
は5個までのメチレン基が酸素原子により置換されていてもよい(c+1)−価の炭化水素基を表し、
aは0〜4の整数であり、
bは0または1であり、
cは1〜3の整数であり、
mは2〜4の整数であり、そして
nは1〜mの整数である]
に相当する光−酸化可能な基を含有する単量体である。
【0069】
この性質の化合物およびそれらの製造方法は欧州特許第287818号明細書に記載されている。一般式(XVIII)の化合物が数個の基Rまたは角括弧の間に示されている構造に従う数個の基を含有する場合には、すなわち(n−m)>1およびn>1である場合には、これらの基は互いに同一もしくは相異なりうる。n=mである式(XVIII)に従う化合物が特に好ましい。この場合、全ての基は重合可能な基を含有する。好ましくは、指数aが1であり、数個の基が存在する場合には、1つより多い基の中でaは0であることはできない。Rがアルキルまたはヒドロキシアルキル基である場合には、Rは一般的に2〜6個の、特に2〜4個の炭素原子を含有する。アリール基Rは一般的に単核または二核であり、しかしながら好ましくは単核であり、そして(C−C)アルキルまたは(C−C)アルコキシ基で置換されていてもよい。RおよびRがアルキルまたはアルコキシ基である場合には、それらは好ましくは1〜5個の炭素原子を含有する。Rは好ましくは水素原子またはメチル基である。Xは好ましくは炭素数が好ましくは4〜10の直鎖もしくは分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式基である。好ましい態様では、Xは2〜15個の炭素原子を含有しそして特にこの量の炭素原子を含有する飽和した直鎖もしくは分枝鎖状の脂肪族および/または脂環式基である。これらの基の中の5個までのメチレン基は酸素原子により置換されていてもよく、Xが純粋な炭素連鎖から構成されている場合には、基は一般的に2〜12個の炭素原子、好ましくは2〜6個の炭素原子を有する。Xは炭素数5〜10の脂環式基、特にシクロヘキサンジイル基でもありうる。D、Dおよび2個の窒素原子により構成される飽和複素環式環は一般的に5〜10個の環員、特に6個の環員を有する。後者の場合、複素環式環は好ましくはピペラジンおよびそこから誘導される基であるピペラジン−1,4−ジイル基である。好ましい態様では、基Eは通常は約2〜6個の炭素原子を含有スルアルカンジイル基である。好ましくは、2価の5−〜7−員の飽和イソ環式基Eはシクロヘキサンジイル基、特にシクロヘキサン−1,4−ジイル基である。2価のイソ環式芳香族基Eは好ましくはオルト−、メタ−またはパラ−フェニレン基である。2価の5−もしくは6−員の芳香族複素環式基Eは、最後に、好ましくは窒素および/または硫黄原子を複素環式環内に含有する。cは好ましくは1であり、すなわち角括弧内の各々の基は一般的に1個だけの重合可能基、特に1個だけの(メタ)アクリロイルオキシ−基を含有する。
【0070】
b=1である、従って角括弧内に示されている基の各々の中に2個のウレタン基を含有する、式(XVIII)の化合物は既知の方法で等モル量のジイソシアネート類を用いる遊離ヒドロキシル基を含有するアクリル酸エステル類またはアルクアクリル酸エステル類の転化により製造することができる。過剰のイソシアネート基を次に、例えば、トリス(ヒドロキシアルキル)アミン類、N,N’−ビス(ヒドロキシアルキル)ピペラジン類またはN,N,N’,N’−テトラキス(ヒドロキシアルキル)アルキレンジアミン類と反応させ、それらの各々において個々のヒドロキシアルキル基はアルキルまたはアリール基により置換されていてもよい。a=0である場合には、結果はウレア基である。ヒドロキシアルキルアミン出発物質の例は、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリス(2−ヒドロキシプロピル)アミン、トリス(2−ヒドロキシブチル)アミンおよびアルキル−ビス−ヒドロキシアルキルアミン類である。適するジイソシアネート類の例は、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート(=1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン)および1,1,3−トリメチル−3−イソシアナトメチル−5−イソシアナトシクロヘキサンである。使用されるヒドロキシ−含有エステル類は好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルおよび(メタ)アクリル酸ヒドロキシイソプロピルである。
【0071】
b=0である式(XVIII)の重合可能な化合物は上記のヒドロキシアルキルアミン化合物をイソシアネート−含有アクリル酸またはアルクアクリル酸エステル類を用いて転化させることにより製造される。好ましいイソシアネート−含有エステルは(メタ)アクリル酸イソシアナト−エチルである。
【0072】
本発明の目的に適する光酸化可能な基を含んでなる別の重合可能な化合物は下記式(XIX):
【0073】
【化32】

[式中、a’およびb’は独立して1〜4の整数を表し、そしてQ、R、R、R、nおよびmは以上と同じ意味を有しそしてQは式>N−E’−N<の基でもあることができ、ここで基E’は式(XX):
【0074】
【化33】

に相当し、
ここでcは式(I)中と同じ意味を有し、そして(p)Cはパラ−フェニレンを表す]
に従う化合物である。
【0075】
式(XIX)の化合物は、アクリル酸またはアルクアクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類およびジイソシアネートの転化生成物が対応するアクリル酸およびアルクアクリル酸グリシドエステル類により置換されること以外は、式(XVIII)のものと同様にして製造される。式(XX)の化合物およびそれらの製造方法は欧州特許第316706号明細書に開示されている。
【0076】
光酸化可能な基を含有する別の有用な重合可能な化合物は下記式(XXI):
【0077】
【化34】

[式中、
Q’は
【0078】
【化35】

を表し、
ここでDおよびDは独立して炭素数1〜5の飽和炭化水素基を表し、そしてDは炭素数4〜8の飽和炭化水素基を表し、それらは窒素原子と一緒になって5−もしくは6−員の複素環式環を形成し、
1’は−C2i−または
【0079】
【化36】

を表し、
Zは水素原子または下記式:
【0080】
【化37】

の基を表し、
i、kは独立して1〜12の整数を表し、
n’は1〜3の整数を表し、そして
aは0または1であり、但しQと結合された基の少なくとも1つの中でaは0であり、
、R、aおよびbは上記式(VIII)に示されたものと同じ意味を有し、そしてXは5個までのメチレン基が酸素原子により置換されていてもよい2価の炭化水素基を表す]
のアクリル酸およびアルクアクリル酸エステル類である。
【0081】
式(XXI)において、指数aは好ましくは0または1でありそしてiは好ましくは2〜10の間の数を表す。好ましい基Qはピペラジン−1,4−ジイル(D=D=CH−CR)、ピペリジン−1−イル(D=(CH、Z=H)および2−(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジン−1−イル(D=(CH、Z=CHCHOH)である。
【0082】
式(XXI)の化合物の中で、ウレア基とは別に少なくとも1個のウレタン基を含有するものが好ましい。ここでも、用語「ウレア基」は上記の式>N−CO−N<の基であると理解すべきである。式(XXI)の化合物およびそれらの製造方法は欧州特許第355387号明細書に開示されている。
【0083】
これらも適する重合可能な化合物は、ヒドロキシ基が(メタ)アクリル酸で部分的にま
たは完全にエステル化されているモノ−またはジイソシアネート類と多官能性アルコール類との反応生成物である。好ましい化合物は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類とジイソシアネート類との反応により合成される物質である。そのような化合物は基本的に既知でありそして例えば独国特許第2822190号明細書および独国特許第2064079号明細書に記載されている。
【0084】
光酸化可能な基を含んでなる重合可能な化合物の量は一般的に、光重合可能な組成物の非揮発性化合物の合計重量に関して、5〜75重量%、好ましくは10〜65重量%の範囲である。
【0085】
さらに、組成物は多官能性(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸アルキルエステル化合物を架橋結合剤として含有できる。そのような化合物は2個より多い、好ましくは3〜6個の間の(メタ)アクリル酸エステルおよび/または(メタ)アクリル酸アルキル基を含有しそして特に飽和脂肪族または脂環式の3価もしくは多価アルコール、例えばトリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトールまたはジペンタエリトリトール、の(メタ)アクリル酸エステル類を包含する。
【0086】
重合可能な化合物の合計量は一般的に、本発明の光重合可能な組成物の非揮発性化合物の合計重量に関して、約10〜90重量%、好ましくは約20〜80重量%の範囲である。
【0087】
下記の具体例も適切な重合可能な化合物である:
【0088】
【化38】

高い感度を得るために、欧州特許第107792号明細書に記載されているようなラジカル連鎖転移剤を本発明の光重合可能な組成物に加えることが有利である。好ましい連鎖転移剤は、硫黄含有化合物、特に例えば2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾキサゾールまたは2−メルカプト−ベンズイミダゾールのようなチオール類である。連鎖転移剤の量は一般的に、本発明の光重合可能な組成物の非揮発性化合物の合計重量に関して、0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜2重量%の範囲である。
【0089】
場合により、組成物およびそれらを用いて製造される層を染色するために、顔料、例えば予備分散させたフタロシアニン顔料、を本発明の組成物に加えることができる。それら
の量は一般的に、本発明の光重合可能な組成物の非揮発性化合物の合計重量に関して、約1〜15重量%、好ましくは約2〜7重量%の範囲である。特に適する予備分散させたフタロシアニン顔料は独国特許第19915717号明細書および独国特許第19933139号明細書に開示されている。金属を含まないフタロシアニン顔料が好ましい。
【0090】
本発明に従う光重合可能な組成物を具体的な要望に適合させるために、熱重合を防止するための熱抑制剤または安定剤を加えることができる。さらに追加の水素供与体、染料、着色されたまたは無色の顔料、発色剤、指示剤および可塑剤も存在しうる。これらの添加剤は、それらが像通りに適用される放射線の活性範囲内でできるだけ少なく吸収するように、簡便に選択される。
【0091】
本発明に従う光重合可能な組成物は支持体に、当業者にそれ自体既知である方法により適用される。一般的に、光重合可能な組成物の成分を有機溶媒または溶媒混合物の中に溶解または分散させ、溶液または分散液を意図する支持体に注ぎ、噴霧、浸し、ロール適用などにより適用し、そして溶媒をその後の乾燥段階中に除去する。
【0092】
金属もしくはプラスチック製の箔、テープまたは板のような既知の支持体を、そしてスクリーン−印刷の場合にはペルロンゲージも、本発明の光重合体印刷版用に使用することができる。好ましい金属はアルミニウム、アルミニウム合金、鋼および亜鉛であり、アルミニウムおよびアルミニウム合金が特に好ましい。好ましいプラスチックはポリエステルおよび酢酸セルロース類であり、ポリエチレンテレフタレート(PET)が特に好ましい。
【0093】
ほとんどの場合、支持体の表面を機械的におよび/または化学的におよび/または電気化学的に処理して支持体および感光性コーティングの間の付着性を最適に調節し、並びに/或いは支持体の表面上で像通りに露出される放射線の反射を減少させること(抗ハレーション)が好ましい。
【0094】
本発明のために使用される最も好ましい支持体はアルミニウムまたはアルミニウム合金製であり、その表面は電気化学的に粗くされ、その後に陽極酸化されそして場合により例えばポリ(ビニルホスホン酸)のような親水性化剤で処理される。
【0095】
本発明に従う保護オーバーコートは少なくとも1種のタイプのポリ(ビニルアルコール)を含んでなり、ここで平均鹸化度は93モル%より低い。
【0096】
鹸化度はポリ(ビニルアルコール)の製造に関連する。ポリ(ビニルアルコール)の単量体であるビニルアルコールは実在しないため、ポリ(ビニルアルコール)の製造には間接的方法だけが利用可能である。ポリ(ビニルアルコール)の最も重要な製造方法は、ビニルエステル類またはエーテル類の重合、その後の鹸化またはエステル交換である。本発明のポリ(ビニルアルコール)用の好ましい出発物質はモノカルボン酸によりエステル化されたビニルアルコールそして特に酢酸ビニルであるが、酢酸ビニルの誘導体、ジカルボン酸類のビニルエステル類、ビニルエーテル類などを使用することもできる。本発明に関して定義された鹸化度は加水分解用に使用される方法と無関係なモル加水分解度である。純粋なポリ(ビニルアルコール)は例えば100モル%の鹸化度を有するが、市販製品はしばしば98モル%の鹸化度を有する。本発明のために使用されるポリ(ビニルアルコール)は主として1,3−ジオール単位を含有するが、少量の1,2−ジオール単位も含有できる。部分的に鹸化されたポリ(ビニルアルコール)類では、エステルまたはエーテル基は統計学的にまたは塊状に分布されうる。本発明の好ましい部分的に鹸化されたポリ(ビニルアルコール)は20℃における4%水溶液の4〜60mPa・s、好ましくは4〜20mPa・s、そして特に4〜10mPa・sの粘度を有する。
【0097】
本発明にとって好ましいポリ(ビニルアルコール)類は例えば商品名モウィオール(Mowiol)で市販されている。これらの製品は粘度および鹸化度を意味する2つの追加されている番号により同定される。例えば、モウィオール8−88またはモウィオール8/88は20℃における4%水溶液状で約mPa・sの粘度および88モル−%の鹸化度を有するポリ(ビニルアルコール)を意味する。本発明の目的を達成するには唯一のタイプのポリ(ビニルアルコール)の使用で充分であるが、2種もしくはそれ以上の化合物を使用することが好ましく、その理由はこれにより予備−加熱ラチチュードのより正確な調節および印刷版前駆体の別の性質のより良好な最適化を可能になるからである。好ましくは以上で定義されたような粘度および/または鹸化度において異なるポリ(ビニルアルコール)類が組み合わされる。それらの20℃における4%水溶液の粘度において少なくとも2mPa・s異なるかまたは鹸化度において少なくとも5モル−%異なるポリ(ビニルアルコール)類の混合物が特に好ましい。少なくとも2種の化合物が20℃における4%水溶液の以上で定義されたような粘度において少なくとも2mPa・s異なるかまたは鹸化度において少なくとも5モル−%異なる少なくとも3種のタイプのポリ(ビニルアルコール)類を含んでなる混合物が最も好ましい。
【0098】
本発明によると、保護層で使用される全てのポリ(ビニルアルコール)の合計平均鹸化度は93モル−%より低くなければならない。それより高い鹸化度は、予備−加熱ラチチュードのない許容できない物質をもたらす。本発明の好ましい態様では、該合計平均鹸化度は71モル−%〜93モル−%以下そして特に80モル−%〜92.9モル−%の範囲である。
【0099】
93モル−%の該平均の合計鹸化限度が達成されない限り、混合物中で使用されるポリ(ビニルアルコール)の1種は93モル−%より高いそして100モル−%までの平均鹸化度を有することができる。
【0100】
印刷版前駆体の保護オーバーコート中で使用されるポリ(ビニルアルコール)の合計平均鹸化度は実験的に13C−NMRにより測定することができる。13C−NMRスペクトルを測定するためには、約200mgの保護オーバーコートを1.0mlのDMSOの中に溶解させ、そしてこの溶液から75MHz13C−NMRスペクトルを取得し、それらの共鳴は容易に解析することができそして鹸化度を計算することができる。そのような値は実施例では表3に実験値として挙げられている。該実験値とポリ(ビニルアルコール)の製品仕様から既知である値との間に良好な相関性が得られる。後者の値は以下では平均鹸化度の理論値と称し、そしてポリ(ビニルアルコール)の混合物が使用される時に容易に計算することができる。
【0101】
好ましくは、本発明のポリ(ビニルアルコール)は保護オーバーコートの非揮発性化合物の合計重量に関して50〜99.9重量百分率(重量%)で使用される。さらに、他の水溶性重合体、例えばポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(エチレンオキシド)、ゼラチン、アラビアゴム、欧州特許第352630B1号明細書から既知である脂肪族アミン基を有する酸素結合性重合体、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ(カルボン酸)類、エチレンオキシドおよびポリ(ビニルアルコール)の共重合体、カーボンハイドレート(carbon hydrates)、ヒドロキシエチルセルロース、酸性セルロース、セルロース、ポリ(アクリル酸)およびこれらの重合体の混合物を層に加えることもできる。
【0102】
好ましくは、ポリ(ビニルピロリドン)はポリ(ビニルアルコール)に比べて少量でのみ使用される。本発明の好ましい態様では、ポリ(ビニルピロリドン)は使用されるポリ(ビニルアルコール)の0〜10重量部で使用され、0〜3重量部が特に好ましい。もっ
とも好ましくは、ポリ(ビニルピロリドン)化合物は使用されない。
【0103】
本発明のポリ(ビニルアルコール)および場合により存在する以上で論じられた水溶性重合体の他に、保護層の既知の成分を使用することができる。
【0104】
本発明の保護層に適する既知の成分の例は、表面湿潤剤、着色剤、錯化剤および殺菌剤である。該錯化剤の中では、エトキシル化されたエチレンジアミン化合物が本発明にとって特に好ましいことが見出された。
【0105】
保護層は活性光線に対して透過性でなければならずそして好ましくは0.2〜10g/mの乾燥厚さを有し、1.0〜5g/mが特に好ましい。好ましくは、それは均質であり、酸素に対して実質的に不透過性であり、水透過性であり、そして好ましくは感光層の像通りの露出後に印刷レリーフを形成するために使用される従来の現像剤溶液を用いて洗浄除去されうる。該感光層は像通りに除去されるが、保護層は作成された要素の全領域にわたり除去可能である。保護層の洗浄除去は別個の段階で行うことができるが、現像段階中に行うこともできる。
【0106】
保護層は感光層の上に既知の技術でコーティングすることができ、そしてコーティング溶液は好ましくは水または水および有機溶媒の混合物を含有する。より良好な湿潤化を可能にするために、コーティング溶液は好ましくは固体含有量に関して10重量%までの、そして特に好ましくは5重量%までの表面活性剤を含有する。表面活性剤の適する代表例は、炭素数12〜18のアルキル硫酸およびスルホン酸ナトリウム、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、N−セチル−およびC−セチルベタイン、アルキルアミノカルボン酸エステルおよび−ジカルボン酸エステル、並びに400までの平均モル重量を有するポリエチレングリコール類のようなアニオン性、カチオン性および非イオン性表面活性剤である。
【0107】
さらに、別の機能を保護層に加えることもできる。例えば、300〜450nmの波長を有する光に対して優れた透過性を有し且つ500nmもしくはそれ以上の波長を有する光を吸収する着色剤、例えば水溶性染料を加えることにより、層の感度を減ずることなく安全光適性を改良することが可能でありうる。この原理を種々の波長に関して容易に変動させて要望に応じて印刷版前駆体の有効スペクトル感度分布を調節することができる。
【0108】
本発明は、本発明の光重合体印刷版前駆体を準備し、該印刷版前駆体を300〜450nmの範囲内の発光波長を有するレーザーを用いて露出しそして印刷版前駆体を水性アルカリ性現像液中で処理する段階を含んでなる平版印刷版の作製方法にも関する。
【0109】
本発明の方法の好ましい態様では、露出は380〜430nmの範囲内の、特に390〜420nmの範囲内の発光波長を有するレーザーを用いて行われ、そして露出は、版の表面で測定される、100μJ/cmもしくはそれ以下のエネルギー密度で行われる。
【0110】
本発明の印刷版前駆体の処理は普通の方法で行われる。像通りの露出後に、感光層の架橋結合を改良するために予備−加熱が行われる。普通は、予備−加熱段階に引き続き次に現像段階が行われ、そこで全部のオーバーコート層および感光層の露出されなかった部分が除去される。オーバーコート層の除去(洗浄除去)および感光層の現像は記載の順序で別個の二段階で行うことができるが、一段階で同時に行うこともできる。好ましくは、オーバーコート層は現像段階前に水で洗浄除去される。洗浄除去は冷水を用いて行うことができるが、工程を促進させるためには熱水を使用することが好ましい。現像段階後に支持体上に残存するものは、感光層の露出されそしてそれにより光重合された部分である。本発明の露出された印刷版前駆体の現像用に使用される現像剤溶液は好ましくは少なくとも11のpHを有する水性アルカリ性溶液であり、11.5〜13.5のpHが特に好ましい。現像剤溶液は少割合の、好ましくは5重量%より少ない、水−混和性の有機溶媒を含有できる。溶液のpHを調節するために、アルカリ水酸化物が好ましく使用される。
【0111】
現像剤溶液の好ましい追加成分の例は、単独のまたは組み合わされたアルカリ燐酸塩、アルカリ炭酸塩、アルカリ炭酸水素塩、有機アミン化合物、アルカリ珪酸塩、緩衝剤、錯化剤、発泡防止剤、表面活性剤および染料であるが、適する成分はこれらの好ましい例に限定されずそして別の成分を使用することができる。
【0112】
使用される現像方法は特に限定されず、そして版を現像剤の中でソーキングしそして振り、非像部分を現像剤中に溶解させながら例えばブラシにより物理的に除去するか、または現像剤を版の上に噴霧して非像部分を除去することにより行うことができる。現像時間は使用される上記方法に依存して非像部分が適切に除去されるように選択され、そして場合により5秒間〜10分間の範囲内で選択される。
【0113】
現像後に、版を例えば場合により必要に応じて印刷版に適用されるアラビアゴムによる親水性処理にかけることができる(ゴム引き段階)。
【0114】
本発明はまた、全てのポリ(ビニル)の平均鹸化度が以上で開示されていることを特徴とする、光重合体印刷版前駆体の予備−加熱ラチチュードを改良するための該前駆体の保護オーバーコートの中の1種もしくはそれ以上のタイプのポリ(ビニルアルコール)の使用にも関する。
【実施例】
【0115】
実施例1〜8
A)感光層の製造
表1に指定されている成分を混合することにより組成物を製造した(pw=重量部、重量%=重量百分率)。この組成物を、ポリ(ビニルホスホン)酸の水溶液を用いる処理(酸化物重量3g/m)により表面が親水性にされそして2分間にわたり105℃において乾燥(循環炉)された電気化学的に粗くされそして陽極酸化されたアルミニウムシートの上に、コーティングした。生じた層厚さは1.5g/mであった。
【0116】
【表1】

B)保護オーバーコート層の製造/コーティング
感光層の上部に、4.9重量%の表2で定義された組成物を含有する水溶液をコーティングし、そして次に110℃において2分間にわたり循環炉の中で乾燥した。
【0117】
【表2】

(A)部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)(鹸化度88モル−%、20℃における4重量%の水溶液中での粘度4mPa・s)。
(B)完全に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)(鹸化度98モル−%、20℃に
おける4重量%の水溶液中での粘度4mPa・s)。
(C)部分的に加水分解されたポリ(ビニルアルコール)(鹸化度88モル−%、20℃における4重量%の水溶液中での粘度8mPa・s)。
(D)CA24E(殺菌剤):
68%クロロアセトアミド
29%安息香酸ナトリウム
(E)メトラト(Metolat)FC355(エトキシル化されたエチレンジアミン):
【0118】
【化39】

(F)ルテンソル(Lutensol)A8(90%)(表面活性剤)
(G)水
保護オーバーコートは2.0g/mの乾燥厚さを有していた。
【0119】
予備−加熱ラチチュードの評価
3枚の版を40%スクリーン(110lpi)を用いて版の適切な露出、すなわち感度、で像形成した。像形成は、392〜417nmの間で発光する紫色レーザーダイオードが装備された実験用紫色プレートセッター装置(平床システム)を用いて行われた。下記の像形成条件が使用された:
走査速度:1000m/s
可変像面出力:0〜10.5mW
スポット直径:20μm
アドレッサビリティー:1270dpi
像形成段階後に、版をアグファ(Agfa)VSP85プロセッサーの中で1.2m/分の速度で処理した。処理中に、版を最初に加熱し(予備−加熱段階)、次に保護オーバーコートを洗浄除去しそして光層を水をベースとしたアルカリ性現像剤(アグファEN231C)の中で28℃において処理した。水すすぎおよびゴム引き段階後に、印刷版は使用の準備がなされている。
【0120】
3枚の版を異なる予備−加熱温度(Tpre−heat)(すなわち、版の裏側で測定される温度):93℃、104℃および116℃において処理した。版の裏側における温度は、プロセッサーのセラミックヒーターの温度を変えることにより、変動させた。
【0121】
次に、40%スクリーン(110lpi)のドット面積をテクコン(Techcon)DMS910を用いて測定した。表3に5回の測定値が挙げられている。次に3種の予備−加熱温度設定(SDpre−heat)に関する40%スクリーン(110lpi)上の標準偏差を計算した。許容可能にするには、良好な予備−加熱ラチチュードを示す標準偏差は2より小さくなければならい。全ての結果は表3にまとめられている。
【0122】
実施例は、<93モル%の平均鹸化度を有する保護オーバーコートを有する全ての印刷版前駆体(実施例1〜3および実施例8)は良好な予備−加熱ラチチュードを有するが、
93モル%の平均鹸化度を有する実施例4〜7は許容できない予備−加熱ラチチュードを有することを示している。
【0123】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に記載の順序で感光性コーティングおよび保護コーティングを含んでなり、該感光性コーティングが光の吸収時に光重合可能である組成物を含んでなり、該組成物が結合剤、重合可能な化合物、増感剤および光開始剤を含んでなり、そして該保護コーティングが1種もしくはそれ以上のタイプのポリ(ビニルアルコール)を含んでなる光重合体印刷版前駆体であって、該光開始剤がヘキサアリール−ビスイミダゾール化合物でありそして保護コーティング中で使用される全てのポリビニルアルコール類の平均鹸化度が93モル%より低く、そして保護コーティングが他の水溶性重合体を含んでなることができ、但しポリ(ビニルピロリドン)が使用されるポリ(ビニルアルコール)の0〜10重量部でのみ使用されることを特徴とする光重合体印刷版前駆体。
【請求項2】
光の波長範囲が350〜430nmである請求項1に記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項3】
波長範囲が360〜420nmである請求項2に記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項4】
版の表面上で測定される像形成のための最少露出が100μJ/cmもしくはそれ以下である請求項1〜3のいずれかに記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項5】
結合剤がμ,μ−不飽和カルボン酸および/またはμ,μ−不飽和ジカルボン酸の単量体単位を含有する共重合体である前記請求項のいずれかに記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項6】
多官能性(メタ)アクリル酸エステルまたは(メタ)アクリル酸アルキル化合物を架橋結合剤としてさらに含んでなる前記請求項のいずれかに記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項7】
重合可能化合物がウレタンおよび/またはウレア基および/または第三級アミノ基を含有する前記請求項のいずれかに記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項8】
ラジカル連鎖転移剤をさらに含んでなる前記請求項のいずれかに記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項9】
ラジカル連鎖転移剤が硫黄含有化合物である請求項8に記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項10】
増感剤が光学増白剤である前記請求項のいずれかに記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項11】
光学増白剤が下記式:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

[式中、Xは下記基:
【化5】

の1つであり、*は上記式中の結合の位置を示し、そして上記式(III)〜(XVII)の各々における1つもしくはそれ以上の核は独立してアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、カルボキシル、ニトリル、アミノ、ヒドロキシル、アルキルスルホニルおよびアミノスルホニルから選択される1つもしくはそれ以上の基により置換されていてもよい]
の1つに従う構造を有する請求項10に記載の光重合体印刷版前駆体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかで定義された光重合体印刷版前駆体を準備し、該印刷版前駆体を300〜450nmの範囲内の発光波長を有するレーザーを用いて露出しそして印刷版前駆体を水性アルカリ性現像液中で処理する段階を含んでなる平版印刷版の作製方法。
【請求項13】
該印刷版前駆体を380〜430nmの範囲内の発光波長を有するレーザーを用いて露出する請求項12に記載の方法。
【請求項14】
平板印刷版前駆体の露出を、版の表面上で測定される100μJ/cmもしくはそれ
以下のエネルギー密度で行う請求項12または13のいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2007−506125(P2007−506125A)
【公表日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−526628(P2006−526628)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051986
【国際公開番号】WO2005/029190
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(504376795)アグフア−ゲヴエルト (24)
【Fターム(参考)】