説明

光量調整装置

【課題】ロータ軸を軸受支持する際に摩擦負荷を軽減して安定した羽根部材の駆動が可能であり、しかも羽根部材にガタつきが生ずることの少ない光量調整装置を提供する。
【解決手段】光路開口を備えた基板と、この基板に配置され上記光路開口を通過する光量を調整する羽根部材と、これを開閉動する電磁駆動装置とを備える。そして上記電磁駆動装置は、ロータ軸と、このロータ軸に回転力を付与する励磁コイルと、ロータ軸を回転自在に軸受支持するフレーム枠から構成する。この場合ロータ軸はその両端に先鋭形状の第1軸端部と円柱形状の第2軸端部とを設ける。また上記フレーム枠には上記第1軸端部を支持する円錐形状の軸受凹部と上記第2軸端部を支持する円筒状軸受孔を設ける。そこで上記電磁駆動装置は上記基板側に上記ロータ軸の第1軸端部が位置するように配置し、このロータ軸の第1軸端部には上記羽根部材に開閉駆動力を伝達するアーム部材を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチールカメラ、ビデオカメラその他の撮像装置においてシャッタ羽根、絞り羽根などの羽根部材を開閉駆動して撮影光量を調整する光量調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種の光量調整装置はカメラ等の撮影光軸に羽根部材を配置し、この羽根部材を電磁駆動装置で開閉することによってシャッタ、或いは絞りなどの光量を調整している。そしてこの電磁駆動装置は永久磁石の中心に回転軸を設けたマグネットロータと、コイル枠の外周に励磁コイルを巻廻したステータとで構成され、励磁コイルに通電することによってマグネットロータを所定角度回転させ、羽根部材を開閉するようになっている。
【0003】
このような電磁駆動式光量調整装置は最近特に小型コンパクト化が要求され、例えば携帯電話などの小型機器に組み込まれたカメラ装置では、シャッタ羽根、絞り羽根などの光量調整装置は微細な程にその小型化と省電力化か求められている。そしてこの光量調整装置の駆動部は、マグネットロータの回転軸をコイル枠で回転自在に軸受支持し、このコイル枠に励磁コイルを捲回した後、その外側をスリーブ状のヨークで覆っているが、このヨーク径が2mm〜3mm程度にまで小型化が進み、更にその小型化が要求されている。
【0004】
上述のように駆動部の小型化に伴ってマグネットロータの回転軸(以下、「ロータ軸」という)をコイル枠などのフレーム枠でどのように軸受支持するかが問題となる。従来この軸受構造としては円柱形状の軸端部を円筒形状の軸受孔に嵌合することによって軸受支持することが知られている。このような軸受構造ではスラスト方向(軸方向)にロータ軸が移動しないように例えばマグネットロータの端面をフレーム枠に摺接させてスラスト方向を支持し、ラジアル方向はロータ軸の外周壁と軸受孔の内壁とを摺接させているため、軸受部での摩擦負荷が大きく、またロータ軸の軸径を小さくすると軸受孔との間でガタつきが生じ易くこの嵌合部のギャップを適確に形成するには加工が困難であるという問題が知られている。
【0005】
そこで例えば特許文献1(特開2004−138939号公報)には、ロータ軸をコイル枠にピボット軸受構造で軸承することが提案されている。同公報には羽根部材を配置した基板の背面側にマグネットロータ軸、コイル枠、コイル、ヨークの順で円環状に配置し、ロータ軸の下端部を球形状若しくは円錐形状に形成し、この軸下端縁を円錐形状若しくは球形状の軸受孔で支持する軸受構造が提案されている。
【0006】
このようなピボット軸受けの場合には回転軸(ロータ軸)の両端を先鋭状に形成してこれをV溝軸受で支持すると両端のV溝軸受間隔を極めて正確に形成しなければ回転軸が上下に踊ることとなる。このため同文献のものはロータ軸の一端は先鋭形状でV溝軸受に支持し、他端は円柱形状に形成して円筒状軸受で支持している。そしてロータ軸をV溝軸受側に磁気的に付勢して荷重がV溝側に作用するように構成し、ロータ軸の安定と負荷軽減を計っている。
【特許文献1】特開2004−138939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにロータ軸を、軸受負荷を軽減した状態で安定して支持する際に、比較的スラスト方向の負荷が少ないピボット軸受を採用することが例えば前述の特許文献1に開示されている。このように従来知られた軸受構造は図8に示すように基板50にコイルを捲回したコイル枠51を取付け、このコイル枠51の下端部にV若しくはU字状の軸受溝52を設けてロータ軸53に形成した先鋭状軸端部53aを支持し、ロータ軸53の他端側は円柱状軸端部53bに形成してその外周を円筒状軸受54で支持している。そしてこの円筒状軸受54で支持されている円柱状軸端部53bにアーム部材55を一体的に取付け、このアーム部材55を基板50に取付けた羽根部材56に係合している。
【0008】
上述のような従来の軸受構造ではロータ軸53が図示の軸受溝52で位置決めされ、この点(ピボット点)を中心に傾斜することがある。これは上端側に位置する円柱状軸端部53bとその周囲を嵌合支持する円筒状軸受54との間にクリアランスが必要となり、このクリアランスが加工精度でバラつくことが原因する。つまり円柱状軸端部53bの外径d1と円筒状軸受54の内径d2が等しい(d1=d2)と摩擦負荷が大きく、この外径d1と内径d2との寸法差が大きいとギャップが大きくなり図示のようにロータ軸53が傾くこととなる。このようなクリアランスは円滑な回転のために必要であり、その加工精度を均一に保つことは不可能に近いこととされている。例えばロータ軸の外径は、その真円度と外径寸法を1/100mm以上の精度で加工するとコストが高くなり製造工程での仕損も多くなる。また円筒状軸受部の加工も同様となる。
【0009】
そこで、従来のようにロータ軸の下端部をピボット状に支持し、その上端部にアーム部材を設けて羽根部材を開閉駆動すると次の問題が起きる。ロータ軸53の上端部の円柱状軸端部53bとこれを支持する円筒状軸受54との間に必要以上のクリアランス(ギャップ)が形成されるとロータ軸53が傾く(図示角度α)こととなる。この傾斜(角度α)によって羽根部材56には変移量Yがガタつきとして生ずる。この変移量YはY=2Ly・sin(βy/2)・cos(α+βy/2)となり、ピボット支点o1とアーム部55材と羽根部材56との係合点o2との長さLyに比例してガタつき量が大きくなる。
【0010】
上述のようにロータ軸と羽根部材との間にガタつきが生ずると、羽根部材が例えばシャタ動作する場合には光路開口を完全に閉鎖(クローズ)或いは開放(オープン)できない問題が発生する。また羽根部材が絞り動作する場合には撮影条件に応じた光量に調整できない問題と、動作時にハンチングによって羽根が振動して制御不能となり装置故障に至ることがある。
【0011】
そこで本発明はロータ軸を軸受支持する際に摩擦負荷を軽減して安定した羽根部材の駆動が可能であり、しかも羽根部材にガタつきが生ずることの少ない光量調整装置の提供をその主な課題としている。更に本発明は装置の小型化と省電力の節減が可能な光量調整装置を簡単な構造で安価に提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために以下の構成を採用する。光路開口を備えた基板と、この基板に配置され上記光路開口を通過する光量を調整する羽根部材と、これを開閉動する電磁駆動装置とを備える。そして上記電磁駆動装置は、ロータ軸と、このロータ軸に回転力を付与する励磁コイルと、ロータ軸を回転自在に軸受支持するフレーム枠から構成する。この場合ロータ軸はその両端に先鋭形状の第1軸端部と円柱形状の第2軸端部とを設ける。また上記フレーム枠には上記第1軸端部を支持する円錐形状の軸受凹部と上記第2軸端部を支持する円筒状軸受孔を設ける。
【0013】
そこで上記電磁駆動装置は上記基板側に上記ロータ軸の第1軸端部が位置するように配置し、このロータ軸の第1軸端部には上記羽根部材に開閉駆動力を伝達するアーム部材を連結する。これによってロータ軸は先鋭形状の第1軸端部と円錐状の軸受凹部とで位置決め支持され、他端側の第2軸端部と円筒状軸受孔との間にガタつきが生じてもその影響が羽根部材にガタつきハンチングなどとして及ぶことが少ない。
【0014】
また、前記ロータ軸には前記第1軸端部側を前記軸受凹部側に圧接するように該ロータ軸を付勢する付勢手段が設け、この付勢手段は上記ロータ軸に作用する磁気吸引力で構成する。これによって簡単な構造で安定した軸受作用を得ることが出来る。
【0015】
上記付勢手段をマグネットロータの外周に配置する軟磁性材のヨークによってロータ軸に磁気的な付勢力を作用させることが出来る。更に、前記第1軸端部の端面を球面状凸曲面に形成し、前記軸受凹部を上記球面状凸曲面に適合する円錐状凹曲面に形成する。そして上記凹曲面の曲率は上記凸曲面の曲率より大きく設定することによってロータ軸を成形する際に寸法誤差が生じてもこれを軸受支持する際にその影響を受けることが少ない。
【0016】
前記フレーム枠は前記永久磁石に回転力を付与する励磁コイルを巻装するコイル枠で構成し、このフレーム枠には前記基板の背面側に位置する上半部に軟磁性体のスリーブ状ヨークを、下半部に熱収縮性チューブをそれぞれ嵌合する。そして上記ヨークは前記第1軸端部を前記軸受凹部側に付勢するように前記ロータ軸に磁気吸引力を作用させ、上記熱収縮性チューブと上記フレーム枠との間には前記ロータ軸の磁気を検出する磁気検出素子を収容支持する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、基板上に光路開口を開閉するように配置した羽根部材を開閉駆動する際に、その駆動装置を構成するロータ軸の一端を先鋭形状に形成してフレーム枠の円錐状軸受凹部に支持してこの先鋭状軸端部が基板側に位置するように配置して羽根部材と連結するアーム部材を設け、ロータ軸の他端は円柱形状に形成してフレーム枠の円筒状軸受孔に支持したものであるから、ロータ軸の軸形状及び軸受部の形状に加工上の寸法誤差が生じてもロータ軸はコイル枠などのフレーム枠に先鋭状軸端部を基準に回転自在に支持されることとなる。
【0018】
そしてこの先鋭状軸端部を、羽根部材を支持する基板側に位置するように配置してあるからロータ軸に寸法誤差による傾きが生じてもロータ軸に固定したアーム部材が大きく傾くことがなく羽根部材にガタつき、位置ズレなどを及ぼすことが少ない。つまりロータ軸はその加工時に寸法誤差が生じても先鋭状軸端部を基準に軸受支持され、この軸端部に設けられたアーム部材から羽根部材に駆動伝達するからアーム部材と羽根部材の係合部に生ずる位置ずれ、或いはガタつきを最小限に止めることが出来る。
【0019】
従って、加工時の加工誤差或いは使用途上での変形がロータ軸又はアーム部材に生じても先鋭状軸端部を基準に位置決めされ、この先鋭状軸端部が羽根部材の係合部と最も近い位置(基板背面の近傍)に設定されているから、ロータ軸の軸承部に加工誤差があっても羽根部材に大きな位置ズレを生ずることがない。これによって羽根部材は予め設定したクローズ位置とオープン位置との間で開閉動することとなり、また所定の口径に開口規制する制御時にハンチングなどの開閉挙動を示す動作不良を招くことがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下図示の好適な実施の形態に基づいて本発明を詳述する。図1は本発明に係わる光量調整装置の分解斜視図であり、図2は羽根部材を開閉駆動する電磁駆動装置の斜視図であり、図3はその縦断断面図である。
【0021】
まず図1に基づいて光量調整装置Aの全体構成を説明する。図1に示すように本発明の光量調整装置Aは基板1と羽根部材2と駆動装置3とから構成される。基板1は扁平形状の地板1aと、この地板1aに少許の間隙を形成して重ね合わせられた押え板1bとから構成される。地板1aはカメラ装置などの撮影鏡筒の組込みスペースに応じた形状に構成され、例えば耐熱性、機械的強度に富んだ合成樹脂のモールド成形、或いは金属板のプレス加工で形成する。
【0022】
この地板1aには中央部に羽根支持面11と光路開口12と、周囲にフランジ13が形成してある。そして羽根支持面11には第1羽根部材20aと第2羽根部材20bが上下に重ね合わせて支持してあり、この第1、第2羽根部材20a、20bは光路開口12に臨ませてある。図示の第1、第2羽根部材20a、20bは光路開口12を大小口径に規制する絞り羽根で構成する場合を示し、第1羽根部材20aは半円形状の開口部21aを有し、その中央に狭窄部21bが形成してあり、第2羽根部材20bは円形状の開口部22aを有し、その中央に狭窄部22bが形成してある。この第1、第2羽根部材20a、20bの開口部21a、22aを光路開口12に臨ませ、この光路開口12を中心に両者を接近方向に摺動させると光路開口12は小口径に、逆に離反方向に摺動すると大口径となり、撮影条件に応じて光量調整することが出来る。
【0023】
この為、第1、第2羽根部材20a、20bはそれぞれ両側縁を地板1aのフランジ13の対向側壁13a、13bにガイドされ、図1左右方向に摺動自在に支持されている。これと共に第1羽根部材20aにはスリット溝23a、23bが、第2羽根部材20bには同様のスリット溝24a、24bが設けてあり、地板1aの羽根支持面11に植設したガイドピン14a、14b、14cが嵌合してある。
【0024】
図示ガイドピン14aはスリット溝24aに、ピン14bはスリット溝23aとスリット溝24bに、ピン14cはスリット溝23bにそれぞれ嵌合してある。従って第1、第2羽根部材20a、20bはフランジ13の対向側壁13a、13bとガイドピン14a、14b、14cに案内され図1左右方向に直線的に移動することとなる。そして各羽根部材20a、20bには摺動方向と所定角度で交差する方向にカム溝25aと25bが穿設してあり、このカム溝25a、25bに後述する駆動装置3の駆動アーム34が係合するようになっている。
【0025】
上述の地板1aには羽根部材2を装備した表面側に対し、その背面側には駆動装置3の取付部15が設けられ、次の駆動装置3が取付けられている。駆動装置3は、ロータ組31とステータ組30から構成され、ロータ組31はロータ軸32と永久磁石33と駆動アーム34とから構成されている。図示のロータ組31は円柱形状の永久磁石33の中心にロータ軸32(以下、「回転軸」という)を一体的に固定し、この回転軸32に駆動アーム34が一体的に固定してある。永久磁石33はフェライト磁石、ネオジウム磁石などで中心に軸孔を有する円筒形状に焼成し、中心の軸孔に別途金属或いは樹脂で成形した回転軸32を貫挿して一体化する。
【0026】
この他磁気ポリマーなどの高分子材料でモールド成形することも可能であり、この場合には回転軸32を一体成形する。そして回転軸32を貫挿した場合には例えば接着剤で一体化した後、円筒形状の磁石(強磁性体)に着磁する。着磁方向は2極、4極その他、適宜極数に円筒状磁石の外周を分極着磁する。尚回転軸32は成型時に図4に示すように上端部は先鋭形状の軸端部32a(以下、「第1軸端部」という)に、下端部は円柱形状の軸端部32b(以下、「第2軸端部」という)に形成してある。この第1、第2軸端部形状については後述する。
【0027】
このように一体化された永久磁石33と回転軸32には駆動アーム34が一体化される。図示の駆動アーム34は回転軸32に一体化されこの軸の回転を羽根部材2に伝達するため軸に対しラジアル方向に張り出した第1アーム34aと第2アーム34bで構成されている。この駆動アーム34は樹脂などで回転軸32と一体成形しても、図示のように別途成形して接着剤などで回転軸に固着しても良い。この場合回転軸の軸径を小さく(小径)するときには永久磁石の端面と回転軸の両者に被冠して接着すると確実な一体化が可能となる。
【0028】
尚図示の駆動アーム34は第1、第2アーム34a、34bを、回転軸32を挟んで対向する位置に配置したのは羽根部材2を第1、第2、2つの羽根で形成し、この2つの羽根を相反方向に摺動させる関係で2つのアームで形成したが、1枚の羽根部材、或いは複数の羽根部材に連結した伝動リングを備える場合には1つのアームで構成し、このアームを羽根部材或いは伝動リングに連結することも可能である。
【0029】
上記ロータ組31は下記のステータ組30に回動自在に内蔵される。ステータ組30はコイル枠35とこのコイル枠35に巻回された励磁コイル36と、外筐シールドとしてのヨーク37とから構成される。コイル枠35は円筒形状で図3左右若しくは上下に2分割され、内部にロータ組31を内蔵するように構成される。通常は合成樹脂などでカップ状に上下2分割されるか回転軸32を境に左右に縦断2分割する。図示のものは上コイル枠35aと下コイル枠35bで上下2分割され、合体した状態で内部に永久磁石33を収容する空洞部35cと回転軸32の前記第1、第2軸端部32a、32bを軸受支持する軸受部35d、35eと、外周に励磁コイルを巻回するコイル巻回溝35fとを備えている。
【0030】
そして前記第1軸端部32aは先鋭形状の軸端部に形成されているが、上記上コイル枠35aには第1軸端部32aに適合する円錐形状の軸受凹部35dが設けられている。この第1軸端部32aと軸受凹部35dの形状について説明すると図5に示すように両者を略2等片三角形状(同図(a)参照)とすることも可能であるがこの場合には軸端部32aが摩損する耐久性の問題と、材質によっては第1軸端部32aが軸受凹部35d内に刺入する問題があり光量調整装置としては適さない。
【0031】
図2の装置は図5(b)に示すように第1軸端部32aの先端を、曲率r1を有する断面U字状に形成し、軸受凹部35d側も曲率r2を有する断面U字状に形成している。この軸端部32aと軸受凹部35dは同図(c)に示す断面V字状、同図(d)に示す斜裁状に形成しても良いがいずれの場合も軸端部の先端は曲率r1を有する円弧形状に形成する。また軸受凹部35dも凹陥部は曲率r2を有する円弧形状に形成してある。そして曲率r1は曲率r2より小さく設定され、r1<r2になっている。このような軸支持構造を採用すると回転軸32の軸径Drに加工精度上の誤差が生じても、また同様に軸受凹部35dの内径Deに加工精度上の誤差が存在しても図5(b)(c)(d)に示す接点oの位置が変化することが少ない。
【0032】
一方前記第2軸端部32bは下コイル枠35bに形成された円筒状の軸受孔35eに支持されている。この軸受構造は円柱形状の第2軸端部32bの外周を軸受孔35eで嵌合支持するため、回転軸32の軸径Drと軸受孔35eの内径Dfとは円滑な回転運動と回転軸32にガタつきが生じないように配慮する必要がある。上記軸径Drと内径Dfとを等しくなるように近づけるとガタつきは少ないが摩擦負荷が大きくなり大きな回転駆動力を要し、逆にギャップを大きく(Dr≪Df)すると摩擦負荷は軽減されるがガタつきによって回転軸32が傾くことがある。このように回転軸32の軸支持は軸両端の軸支持部にそれぞれガタつきが生ずると回転軸32がブレて円滑な運動が得られない。
【0033】
そこで本発明は前記第1軸端部32aをピボット状の軸支持構造を採用し、第2軸端部32bは通状の円筒状軸受孔で支持している。上述のように上コイル枠35aと下コイル枠35bとは永久磁石33を有する回転軸32を回転自在に支持し、その外周にはコイル巻回溝35fに励磁コイル36が捲回してあり、この励磁コイル36の捲回によって上下コイル枠35a、35bを一体化している。そして励磁コイル36を外周に捲回したコイル枠35にはヨーク37嵌装してあり、このヨーク37は鉄などの軟磁性材料でロータ組31の永久磁石33を磁気的にシールドする。
【0034】
このためコイル枠35の外周で内部の永久磁石33を覆うように配置する。これと同時にこのヨーク37は回転軸32を常時図3上方、即ち第1軸端部32aを軸受凹部35d側に付勢するように永久磁石33の軸方向中央に対しヨーク37の軸方向中央を第1軸端部32a側に距離m(図3)だけ片寄らせてある。これによって回転軸32は磁気的に図3上方に付勢され第1軸端部32aが軸受凹部35dに当接する状態に保持される。
【0035】
上記コイル枠35の下端部には熱収縮性のチューブ38が嵌合してあり、下コイル枠35bとこれに捲回した励磁コイル36の外周を覆って保護している。図示39は磁気検出素子(ホール素子)であり、永久磁石33の回転位置(ロータ軸の回転位置)を検出する。特に図示のものは熱収縮性の樹脂チューブをコイル枠35に磁気検出素子39を挟んで嵌挿し、その後加熱することによって検出素子39をコイル枠35に固定している。
【0036】
上述のようにユニット構成された駆動装置3は前記地板1aの駆動装置の取付部15に装着される。前記コイル枠35には一体化された上コイル枠35aと下コイル枠35bのいずれかに取付ステムが設けられ、このステムを地板1a背面側の取付部15に固定している。この固定はビスなどで固定しても良いが、地板1aに設けた取付穴(図示せず)にステム端縁に設けた弾性爪を嵌合して取付けると組立て作業が容易である。尚、この取付の際に前記回転軸32の第1、第2アーム34a、34bを地板1aに形成された逃げ溝16a、16bに貫挿し、羽根部材2に形成した前記カム溝25a、25bに係合する。
【0037】
尚、上述の地板1aにはこれに形成した前記フランジ13に押え板1bが取付けられる。この押え板1bは金属板のプレス加工で地板1aと略々同一形状に形成され、上記フランジ13上に重ね合わせられ、地板1aに形成した弾性爪で固定されている。
【0038】
上述のように構成された光量調整装置Aは例えば図6に示す撮像装置に組み込まれて光路開口12を通過する光量を調整する。スチールカメラ、ビデオカメラ等のレンズ鏡筒に前述の光量調整装置Aを組込む。図示40は撮影光路に配置した前レンズ、41は後レンズであり、これ等のレンズで被写体像を結像しその結像面に撮像手段42を配置する。撮像手段42としてはCCDなどの固体撮像素子或いは感光フィルムなどを用いる。そして制御はCPU制御回路、露出制御回路、及びシャッタ駆動回路で実行するように構成する。図示のSW1はメイン電源スイッチであり、SW2はシャッタレリーズスイッチを示す。カメラ装置としての制御には、この他オートフォーカス回路などが用いられるが良く知られた構成であるので説明を省く。
【0039】
そこでレンズ鏡筒に組込まれた前レンズ40と後レンズ41との間に基板1を組込む。この基板1には前述の第1、第2羽根部材20a、20b及び駆動装置3が組込まれた光量調整装置Aがユニット化されている。そこで制御CPUは露出量、シャッタスピードなどの撮影条件を設定し、露出制御回路及びシャッタ駆動回路に指示信号を発する。まず露光量は露出制御回路が制御CPUからの指示信号で駆動装置3のコイルに所定方向の電流を供給する。すると第1、第2羽根部材20a、20bは駆動装置3の回転を駆動アーム34a、34bから伝達され最適露光量に光路開口12を形成する。
【0040】
本発明は斯かる光量調整の過程で、回転軸(ロータ軸)32をフレーム枠(前記コイル枠)35に回動自在に支持する際に、地板1a側に近接する回転軸32の軸端部(第1軸端部32a)を先鋭形状に形成してコイル枠35の円錐状軸受凹部35dで軸受支持し、地板1aと距離を隔てた軸端部(第2軸端部32b)を円柱形状に形成してコイル枠35の円筒状軸受孔35eで軸受支持しているため、回転軸32およびコイル枠35の加工時の寸法精度によって軸径にバラツキが生じても次のように作用する。
【0041】
図7に示すように回転軸(ロータ軸)32の軸径Drと軸受凹部35dの内径Deに加工精度或いは使用過程での径時変化によって図示ギャップ誤差Δgが生じた場合に、回転軸32(ロータ軸)は第1軸端部32aと軸受凹部35dとの接点oを中心に図示のように傾く、このとき回転軸32(ロータ軸)と一体の第1、第2アーム34a、34bは図示角度αだけ傾く。このとき羽根部材2に作用する変位量Xは次式で表される。
X=2Lx・sin(α/2)・cos(βx+α/2)
尚上記変位量Xは図7(b)に示す模式図において第1、第2アーム34a、34bの傾き角度αの形成する2等辺三角形に角度α/2の垂線を引き、その底辺の長さ(2Lx・sin(α/2)を求め、羽根移動方向(水平方向)の長さXを求める算出式である。
【0042】
この変位量Xは仮にロータ軸32の他端縁である第2軸端部32bを中心にロータ軸32が傾いた場合には図8に示すように変位量Yは、Y=2Ly・sin(α/2)・cos(βy+α/2)となり、接点oの位置を異ならせたことにより、変位量Xと変位量Yとの間には接点(軸支点)oからの距離の差(Ly−Lx)の2倍のガタつき量の差が生ずる。このガタつき量の差は本発明者の算出によれば変位量Xは変位量Yの約1/3に軽減することが認められた。つまり接点(軸支点)oの移動により上記算出式でLx<Lyと同時にβx>βyとなる関係で変位量Xと変位量Yに著しい差違が生ずることが判明した。
【0043】
従って、ロータ軸32の軸径Drが加工精度によって大きく異なっても前述の軸受構造を採用することによって、著しいガタつき量の軽減が計られ、ロータ軸32の軸径Drに多少の加工誤差が生じても安定したロータの回転が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明に係わる光量調整装置の組立て分解斜視図である。
【図2】図1の装置における駆動装置の斜視説明図。
【図3】図2の装置の縦断断面図。
【図4】図2の装置のロータ組を示す斜視説明図。
【図5】図2の装置における第1軸端部の断面形状を示す拡大説明図であり、(a)は先鋭状端面を2等辺三角形とする場合、(b)は先鋭状端面をU字状断面とする場合、(c)は先鋭状端面をV字状断面とする場合、(d)は先鋭状端面を斜裁形状とする場合を示す。
【図6】撮像装置の鏡筒に図1の光量調整装置を組み込んだ場合の制御構成を示す説明図。
【図7】図2の装置においてロータ軸の軸径が異なった場合の羽根部材に及ぼす位置ズレ度合いを示す説明図であり、(a)はロータ軸が所定角度傾いた場合の説明図、(b)はその位置ズレ量を算出する模式図である。
【図8】従来の装置におけるロータ軸の軸径が異なった場合の羽根部材に及ぼす位置ズレ度合いを示す説明図であり、(a)はロータ軸が所定角度傾いた場合の説明図、(b)はその位置ズレ量を算出する模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 基板
1a 地板
1b 押え板
2 羽根部材
3 駆動装置
12 光路開口
13 フランジ
20a 第1羽根部材
20b 第2羽根部材
30 ステータ組
31 ロータ組
32 ロータ軸(回転軸)
32a 第1軸端部
32b 第2軸端部
33 永久磁石
34 駆動アーム
34a 第1アーム
34b 第2アーム
35 コイル枠(フレーム枠)
35a 上コイル枠
35b 下コイル枠
35d 軸受部(軸受凹部)
35e 軸受部(軸受孔)
A 光量調整装置
o 接点(軸支点)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光路開口を備えた基板と、
上記基板に配置され上記光路開口を通過する光量を調整する羽根部材と、
上記羽根部材を開閉動する電磁駆動装置と、を備えた光量調整装置であって、
上記電磁駆動装置は、
ロータ軸と、
上記ロータ軸に回転力を付与する励磁コイルと、
上記ロータ軸を回転自在に軸受支持するフレーム枠と、を備え、
上記ロータ軸はその両端に先鋭形状の第1軸端部と円柱形状の第2軸端部とを有し、
上記フレーム枠には上記第1軸端部を支持する円錐形状の軸受凹部と上記第2軸端部を支持する円筒状軸受孔を有し、
上記電磁駆動装置は上記基板側に上記ロータ軸の第1軸端部が位置するように配置され、
このロータ軸の第1軸端部には上記羽根部材に開閉駆動力を伝達するアーム部材が連結されていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項2】
前記ロータ軸には前記第1軸端部側を前記軸受凹部側に圧接するように該ロータ軸を付勢する付勢手段が設けられ、
この付勢手段は上記ロータ軸に作用する磁気吸引力で構成されていることを特徴とする光量調整装置。
【請求項3】
前記ロータ軸は略々円柱形状の永久磁石を有し、
前記フレーム枠には上記永久磁石に回転力を付与する励磁コイルが装備され、
前記付勢手段は上記フレーム枠に嵌装された軟磁性体のヨークで構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光量調整装置。
【請求項4】
前記第1軸端部の端面は球面状凸曲面に形成され、
前記軸受凹部は上記球面状凸曲面に適合する円錐状凹曲面に形成され、
上記凹曲面の曲率は上記凸曲面の曲率より大きく設定されていることを特徴とする請求項1乃至3の何れかの項に記載の電磁駆動装置。
【請求項5】
略々扁平形状で光路開口を有する基板と、
上記基板の表面側に開閉自在に取付けられ上記光路開口を通過する光量を調整する羽根部材と、
上記基板の背面側に取付けられ、上記羽根部材を開閉動する電磁駆動装置と、を備えた光量調整装置であって、
上記電磁駆動装置は、
永久磁石を有するロータ軸と、
上記ロータ軸に回転力を付与する励磁コイルと、
上記ロータ軸を回転自在に軸受支持するフレーム枠とから構成され、
上記ロータ軸はその一端縁を先鋭形状に形成した第1軸端部と、他端縁を円柱形状に形成した第2軸端部とを有し、
上記フレーム枠には上記第1軸端部を支持する円錐形状の軸受凹部と上記第2軸端部を支持する円筒状軸受孔を有し、
上記電磁駆動装置は上記基板の背面側に上記ロータ軸の第1軸端部が位置するように取付けられ、
この第1軸端部に連結されたアーム部材を上記羽根部材に連結して上記光路開口を通過する光量を調節するようにしたことを特徴とする光量調整装置。
【請求項6】
前記フレーム枠には前記永久磁石に回転力を付与する励磁コイルが巻装され、
このフレーム枠には前記基板の背面側に位置する上半部に軟磁性体のスリーブ状ヨークが
下半部に熱収縮性チューブがそれぞれ嵌合され、
上記ヨークは前記第1軸端部を前記軸受凹部側に付勢するように前記ロータ軸に磁気吸引力を作用させ、
上記熱収縮性チューブと上記フレーム枠との間には前記ロータ軸の磁気を検出する磁気検出素子が収容支持されていることを特徴とする請求項3に記載の光量調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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