説明

光量調節装置および光学機器

【課題】薄型化を可能にしつつ、安定した絞り待機状態を得ることができる光量調節装置を提供する。
【解決手段】絞り開口13aが光軸18上に挿入される挿入位置と前記挿入位置から退避する退避位置との間で移動自在に設けられる第1の絞り部材13と、露光開口を開閉する少なくとも一つのシャッタ部材15と、光軸方向において、前記第1の絞り部材と前記シャッタ部材の間にそれぞれに接して移動自在に配置され、かつ、前記第1の絞り部材と前記シャッタ部材が相互に接触しないように常に分離させる第2の絞り部材14と、前記第1および第2の絞り部材と前記シャッタ部材を保持する地板11とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絞り部材およびシャッタ部材を有する光量調節装置、および、該光量調節装置を具備するデジタルカメラ等の光学機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラ自体の小型化や高倍率ズームレンズの搭載などにより、全開口径は比較的大きいまま、シャッタ装置の外形はできるだけ小型かつ薄型化することが必要となってきた。デジタルスチルカメラ等の光学機器には、シャッタ羽根や絞り径を切り換えることにより光量調節を行う光量調節装置が内蔵されている。
【0003】
従来、シャッタ羽根と光量調節の為の絞り羽根とを同一装置内で構成する場合、シャッタ羽根と絞り羽根は各々作動方向が異なる。その為に、板金や樹脂、羽根材等でお互いの作動に干渉し合わないように仕切り部材を設置する必要があった。これを解決するために、絞り開口が形成されている絞り羽根をシャッタ羽根と常に重合させ、両者の作動の干渉を回避させることは以前より提案されている。
【0004】
例えば特許文献1に開示された光量調節装置では、絞り開口が形成されている絞り羽根と同一装置内にあるシャッタ羽根が常にその一部を重合する状態にしており、両者が作動中に噛み合うことがないようにしている。
【特許文献1】特開2003−5251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記提案の構成では、絞り開口を有する絞り羽根を、高速作動するシャッタ羽根と一部を常に重合させていなければならない。そのため、その絞り羽根が口径挿入位置、もしくは口径退避位置にある時、つまり絞り羽根の待機状態時に該絞り羽根がシャッタ羽根の作動につられて動いてしまう虞があった。
【0006】
(発明の目的)
本発明の目的は、薄型化を可能にしつつ、安定した絞り待機状態を得ることのできる光量調節装置および光学機器を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、開放絞りよりも小径の絞り開口が形成され、前記絞り開口が光軸上に挿入される挿入位置と前記挿入位置から退避する退避位置との間で移動自在に設けられる第1の絞り部材と、露光開口を開閉する少なくとも一つのシャッタ部材と、光軸方向において、前記第1の絞り部材と前記シャッタ部材の間にそれぞれに接して移動自在に配置され、かつ、前記第1の絞り部材と前記シャッタ部材が相互に接触しないように常に分離させる第2の絞り部材と、前記第1および第2の絞り部材と前記シャッタ部材を保持する地板とを有する光量調節装置とするものである。
【0008】
同じく上記目的を達成するために、本発明は、本発明の上記光量調節装置を備えた光学機器とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、薄型化を可能にしつつ、安定した絞り待機状態を得ることのできる光量調節装置または光学機器を提供できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例に示す通りである。
【実施例】
【0011】
図1ないし図3は本発明の一実施例に係る光量調節装置を示す図である。この光量調節装置は、例えばデジタルカメラのレンズ鏡筒内に組み込まれる。
【0012】
これらの図において、光量調節装置10は、開放絞りとなる開口11aが形成された地板11と、地板11に保持される絞り羽根13,14と、シャッタ羽根15,16とを備えている。絞り羽根13には、開口11aより小径の絞り開口13aが形成されている。絞り羽根13,14は、絞り開口13aを光軸に挿入する挿入位置と、この挿入位置から退避する退避位置との間で回動自在に設けられている。絞り羽根14は、絞り羽根13とシャッタ羽根15との中間に設けられている。
【0013】
地板11には、絞り羽根13,14及びシャッタ羽根15,16のそれぞれを駆動するための電磁駆動ユニット17が二つ設けられている。そして、それぞれの電磁駆動ユニット17は地板11の下面に固定されている。電磁駆動ユニット17には、回転軸17aと駆動ピン17bが設けられていて、それぞれが地板11の上面に突出している。駆動ピン17bは、地板11に形成された円弧形の穴部11bを挿通されている。絞り羽根13及びシャッタ羽根16は、それぞれ回転軸17aに回動自在に取り付けられ、駆動ピン17bによって駆動される。絞り羽根14及びシャッタ羽根15はそれぞれ突起22,23に回動自在に取り付けられ、駆動ピン17bによって駆動される。
【0014】
地板11及び羽根押さえ板12は、それぞれポリカーボネート等の硬質の樹脂で形成されている。地板11と羽根押さえ板12の中央部には、それぞれ開口11a,12aが形成されている。これら開口11a,12aは光軸18上に配置されており、開放絞りとなる。地板11上には、羽根押さえ板12の取り付け脚となる突部19a,19bが設けられている。突部19a,19bにはねじ穴が形成されており、羽根押さえ板12は、これを突部19a,19b上に配置された状態でねじ21によってねじ止めされる。突部19a,19bの高さは、絞り羽根13,14及びシャッタ羽根15,16が走行する適宜な空隙が設けられるように決められる。
【0015】
シャッタ羽根15,16には、軸穴15b,16bと長穴15c,16cとが形成されている。軸穴15b,16bには回転軸17aまたは突起23が、長穴15c,16cには駆動ピン17bが、それぞれが挿通される。シャッタ羽根15,16は、駆動ピン17bが移動することにより、その遮蔽部15a,16aを光軸18に挿入する挿入位置と、この挿入位置から退避する退避位置との間で回動する。
【0016】
絞り羽根13には、開口11a及び開口12aよりも小径の絞り開口13aが形成されている。また、絞り羽根13,14には、シャッタ羽根15,16と同様に、回転軸17aまたは突起22が挿通される軸穴13b,14bと、駆動ピン17bが挿通される長穴13c,14cとが形成されている。絞り羽根13,14は、地板11上に回転軸17aまたは突起22を中心に回動自在に保持されている。そして、図2に示すように絞り開口13aが光軸18上に挿入される挿入位置と、図3に示すように挿入位置から退避する退避位置との間で回動する。
【0017】
シャッタ羽根15に隣接して、絞り羽根14が設けられている。絞り羽根14は、図2に示すように開放絞りの開口11a上に一部が挿入される挿入位置と、図3に示すようにこの挿入位置から退避して、その環状部分が開口11aの周縁に位置する退避位置との間で回動する。このときに、常に絞り羽根14の一部分がシャッタ羽根15の一部分を覆う形状をしており、シャッタ羽根15の走行経路上の障害とはならない。
【0018】
また、絞り羽根14に隣接して設けられている絞り羽根13は、図2に示すように絞り開口13aが光軸18上に挿入される挿入位置と、図3に示すこの挿入位置から退避する退避位置との間で回動する。このときに、絞り羽根14の一部分は常に絞り羽根13の先端部の一部分を支えるように重なり合う形状をしており、絞り羽根14と絞り羽根13は相互にその走行経路上の障害とはならない。
【0019】
電磁駆動ユニット17は、マグネットロータ46、ステータヨーク47、電磁コイル48、マグネットカバー49からなる。マグネットロータ46は、回転軸17aと、駆動ピン17bが設けられた駆動レバー51と、この駆動レバー51の裏面に取り付けられた永久磁石52とからなる。駆動レバー51の裏面には、回転軸17aが突き出している。この回転軸17aを永久磁石52に圧入することにより、駆動レバー51に永久磁石52が固定される。なお、インサート成形により、駆動レバー51と永久磁石52とを固定してもよい。回転軸17aの先端は、マグネットカバー49の軸受け穴49aと嵌合して保持される。
【0020】
永久磁石52の外周面は、2極に着磁されて磁極が形成されている。ステータヨーク47は、軟磁性材料を複数枚積層してそれらを連結したものである。このステータヨーク47には、導線からなる電磁コイル48が取り付けられている。永久磁石52の外周面は、ステータヨーク47によって包囲される。
【0021】
マグネットロータ46の全回転角度は、例えば50°である。永久磁石52の磁極とステータヨーク47の配置関係は、マグネットロータ46の全回転角度の中間点である25°の位置で、永久磁石52とステータヨーク47との間に作用する吸引力(デイテント力)がゼロとなる。そして、マグネットロータ46が0°又は50°の位置にある時にデイテント力が最大となるようにしている。電磁コイル48の通電がオフされている時には、ステータヨーク47が非励磁状態にある。そして、永久磁石52とステータヨーク47との間に作用するデイテント力によって、マグネットロータ46が0°又は50°の位置に保持される。
【0022】
この状態から、電磁コイル48に電流を流す(通電オン)と、ステータヨーク47とマグネットロータ46との間に吸引力と反発力が生じ、マグネットロータ46が回転する。この吸引力と反発力が作用する方向は、電磁コイル48に電流を流す向きによって切り換わるようになっている。これにより、電磁コイル48に通電することで、マグネットロータ46を0°と50°の間で回動させることができる。そして、上述した通り、マグネットロータ46が0°又は50°の位置にあるときには、電磁コイル48の通電をオフしても、マグネットロータ46と永久磁石52との間にはデイテント力が作用する。よって、このデイテント力によってマグネットロータ46を0°又は50°の位置で静止させたままにすることができる。
【0023】
以下、上記構成による作用について説明する。
【0024】
デジタルカメラで静止画を撮影する時、被写体の輝度が変化した場合には、光量調節装置10が作動して、絞り状態が切り換えられる。電磁駆動ユニット17の駆動により、絞り羽根13,14が挿入位置または退避位置の一方の位置から他方へ回動し、停止する。その際、絞り羽根14が、同時に移動している絞り羽根13の先端部の一部分を支えるように絞り羽根13と重なり合いながらシャッタ羽根15上を移動する。
【0025】
よって、絞り羽根14は、絞り羽根13と協働して絞り部品の一部分を形成しつつ、かつ、シャッタ羽根15と絞り羽根13の仕切り板の役割を同時に果たす。このため、絞り羽根13はシャッタ羽根15から完全に仕切られる。よって、高速に動くシャッタ羽根からの摺動影響を最小限に抑えることができ、安定した停止状態(絞り待機状態)が得られる。また、絞り羽根14は、その位置が絞り羽根13と協働して挿入する絞り開口の位置へ影響を与えず、また絞り羽根13と十分重なり合うように形成されている。このため、絞り羽根14の停止位置が高速に動くシャッタ羽根の影響で多少変動しても差し支えない。
【0026】
本実施例では、仕切板の機能を担当する絞り羽根14と絞り開口を担当する絞り羽根13を用意する必要があるので、最低2枚以上の絞り羽根の構成になってしまう。しかし、最近の傾向として、小さいユニットに対して大型の開放口径が配置されることが多くなってきており、絞り羽根も小面積の羽根を多数枚用いて口径を覆う仕様が増えてきている。よって、本実施例のような絞り羽根に役割分担させることは比較的容易になってきている。
【0027】
なお、本実施例では、上記光量調節装置10を、デジタルカメラに組み込んだ場合を想定して説明してきた。しかし、デジタルカメラ以外にも、例えばビデオカメラなどの各種光学機器に適用することができる。また、絞り羽根14の形状は、図1のような環形状が最も好適であるが、それ以外でも絞り羽根13とシャッタ羽根15を支えるように重なり合い、常にこれらを分離できる形状であればよい。また、シャッタ羽根は二つの羽根部材により構成しているが、少なくとも一枚以上であれば良い。一枚のシャッタ羽根としては、例えば、光軸18に対する開閉動作の方向に異なる開口を有する一枚のシャッタ羽根が考えられる。
【0028】
以上の実施例によれば、絞り開口を設けた絞り羽根13,14と、シャッタ羽根15,16を具備する光量調節装置10において、上記絞り羽根14を仕切り板としても機能させる構成としている。詳しくは、絞り羽根14を、絞り羽根13とシャッタ羽根15,16との間に配置し、絞り羽根13とシャッタ15,16が作動したときに、互いの動作が干渉を起さないように常にこれらを分離させる、例えば環形状にしている。よって、専用の仕切り板を省略した、部品点数を削減したコストダウンと薄型化を両立した光量調節装置10とすることができる。
【0029】
また、上記構成とすることにより、シャッタ羽根15の摺動影響を最小限に抑えることができ、絞り口径の安定した保持状態を得ることができる。つまり、シャッタ羽根15が高速作動しても、絞り待機状態にある絞り羽根が上記シャッタ羽根15の作動につられて動いてしまう、といったことが無くなる。
【0030】
以上のように、本実施例によれば、ユニットの薄型化を可能にしつつ、安定した絞り待機状態を得ることができる光量調節装置10または該光量調節装置10を搭載したデジタルカメラ等の光学機器を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施例に係る光量調節装置を示す分解斜視図である。
【図2】図1の絞りが小絞りのときの絞り羽根の位置を示す正面図である。
【図3】図1の絞りが開放絞りのときの絞り羽根の位置を示す正面図である。
【符号の説明】
【0032】
10 光量調節装置
11 地板
11a 開放絞り開口
12 羽根押さえ板
12a 開口
13 絞り羽根
13a 絞り開口
14 絞り羽根
15 シャッタ羽根
15a 遮蔽部
16 シャッタ羽根
16a 遮蔽部
17 電磁駆動ユニット
17a 回転軸
31 駆動レバー
32 永久磁石
46 マグネットロータの駆動レバー
47 ステータヨーク
48 電磁コイル
49 マグネットカバー
51 駆動レバー
52 永久磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放絞りよりも小径の絞り開口が形成され、前記絞り開口が光軸上に挿入される挿入位置と前記挿入位置から退避する退避位置との間で移動自在に設けられる第1の絞り部材と、
露光開口を開閉する少なくとも一つのシャッタ部材と、
光軸方向において、前記第1の絞り部材と前記シャッタ部材の間にそれぞれに接して移動自在に配置され、かつ、前記第1の絞り部材と前記シャッタ部材が相互に接触しないように常に分離させる第2の絞り部材と、
前記第1および第2の絞り部材と前記シャッタ部材を保持する地板とを有することを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
前記第2の絞り部材は、環形状をしていることを特徴とする請求項1に記載の光量調節装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光量調節装置を備えたことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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