説明

光集積素子及びそれを用いた光ピックアップ装置

【課題】異なる波長を有する複数の半導体レーザからの光を受光素子でモニターし、一定の電流値を出力する。
【解決手段】光集積素子は、波長の異なるレーザ光を出射する複数の半導体レーザ101、102と、複数の半導体レーザ101、102の端子間電圧を比較し、その比較結果に応じた信号を出力するコンパレータ回路105と、複数の半導体レーザ101、102から出射されるレーザ光の光量に応じて光電流を出力する受光素子106と、コンパレータ回路105から出力される信号に基づいて、受光素子106から出力される光電流を増幅又は減衰の切り替えを行い、モニター信号を出力するカレントミラー回路107とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に開示する技術は、複数の異なる波長の光を受光する光集積素子及び該光集積素子を備えた光ピックアップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大容量でランダムアクセス可能なデジタルメディアとして、CD、DVD、及びBDなどの光ディスクがある。これらCD、DVD、及びBDの光ディスクのデータの読み込み又は書き込みのために光ピックアップ装置が用いられる。光ピックアップ装置で使用される半導体レーザとしては、CD、DVD、及びBDの各光ディスクの情報量によって異なり、赤外レーザ(λ=780nm)、赤色レーザ(λ=650nm)、又は青色レーザ(λ=410nm)と、波長の異なる複数の半導体レーザが必要である。光ピックアップ装置の中には、データの読み込み又は書き込みを行う際に半導体レーザの出力を安定させるために、半導体レーザが出力する光を受光素子でモニターし、モニター信号によって半導体レーザの出力制御を行う自動出力制御回路(APC回路)がある。
【0003】
第1の背景技術の光ピックアップ装置では、波長の異なる複数の半導体レーザから出力された光を共通の受光素子で受光し、その受光素子から出力される光電流をカレントミラー回路においてモニター信号として生成し、APC回路の各々に出力する。半導体レーザのモニター信号に基づいて、各APC回路は、複数の半導体レーザの出力制御を行う(例えば、下記特許文献1の図2参照)。
【0004】
複数の半導体レーザを用いた光ピックアップ装置においても、対応する半導体レーザのモニター信号に基づいて、半導体レーザの出力制御を行うAPC回路を使用すればよい。このため、基本的には単一の半導体レーザを搭載していた光ピックアップ装置で用いていたAPC回路をそのまま利用できるので、技術面及びコスト面での負荷を軽減できる。特に、半導体レーザ又はモニター用受光素子が光学系と共に光ヘッドに構成され、APC回路がヘッド駆動装置に構成されている場合には、カレントミラー回路を追加変更するなどの設計変更を行うだけでよく、APC回路が構成されるヘッド駆動装置側では設計変更を行う必要がない。
【0005】
また、第2の背景技術の光ピックアップ装置は、複数の半導体レーザにそれぞれ対応した複数の可変抵抗器と、複数の半導体レーザに対応した一つの光検出手段と、半導体レーザから出力される光の出力が一定となるように半導体レーザの出力制御を行う出力安定化手段とを備える。そして、各々の可変抵抗器の抵抗を変化させることにより、各可変抵抗器に対応した各半導体レーザから出力される光の出力が所定のレベルとなるように設定される(例えば、下記特許文献2の図1参照)。
【0006】
このAPC回路では、一つの回路で複数の半導体レーザの出力制御を行うことができるので、複数の半導体レーザに対して各々独立にAPC回路を用意する場合に比べて装置自体の小型化を図ることができる。さらに、部品点数の削減を図ることができるので、製造コストの削減も図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−133692号公報
【特許文献2】特開2001−85786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上述した第1の背景技術によると、複数の半導体レーザの出力制御を行うために、それぞれに対応したAPC回路が備えられており、受光素子からの光電流をカレントミラー回路でモニター信号として生成し、カレントミラー回路から個々に異なるモニター信号が対応する各々のAPC回路に出力される。このため、APC回路に出力するためのモニター信号用の端子数が増加して、光集積素子のチップサイズが大きくなる。さらに、単一の半導体レーザを搭載していた光ピックアップ装置で用いていたAPC回路に合わせるために、カレントミラー回路のミラー比を設計しているので、カレントミラー回路から出力されるモニター信号の電流値が異なり、それぞれのモニター信号に対して検査規格を設ける必要が生じると共に検査数増加の要因にもなるので、製造コストの増加に繋がる。
【0009】
また、上述した第2の背景技術によると、半導体レーザによって受光素子から出力されるモニター信号の電流値が異なるので、複数の半導体レーザの出力制御を一つのAPC回路で行うためには、複数の半導体レーザにそれぞれ対応した複数の可変抵抗器を備える必要があり、光ピックアップ装置の構成が複雑になる。
【0010】
前記に鑑み、本発明の目的は、半導体レーザから出力された光の波長に依存することなく、受光素子からのモニター電流の値を自動的に一定とすることを可能とする光集積素子及びそれを用いた光ピックアップ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を解決するために、本発明の一側面に係る光集積素子は、波長の異なるレーザ光を出射する複数の半導体レーザと、複数の半導体レーザの各々の端子間電圧を比較し、その比較結果に応じた信号を出力する比較回路と、複数の半導体レーザから出射されるレーザ光の各々の光量に応じて光電流を出力する受光素子と、比較回路から出力される信号に基づいて、受光素子から出力される光電流を増幅又は減衰の切り替えを行い、モニター信号を出力する光電流増幅器とを備える。
【0012】
本発明の一側面に係る光集積素子において、光電流増幅器は、入力端子が受光素子に接続された第1のカレントミラー回路であり、比較回路から出力される信号に基づいて、第1のカレントミラー回路の入力側のトランジスタのエミッタに接続された第1のエミッタ抵抗の抵抗値と、第1のカレントミラー回路の出力側のトランジスタのエミッタに接続された第2のエミッタ抵抗の抵抗値とのいずれか一方に切り替えることにより、第1のカレントミラー回路のミラー比を変更する構成であってもよい。
【0013】
この場合において、第1のエミッタ抵抗又は第2のエミッタ抵抗は、並列接続された複数の抵抗によって構成されており、複数の抵抗のうちの少なくとも1つはスイッチ素子を介して接続されており、スイッチ素子が、比較回路から出力される信号に基づいて、ONとOFFとを切り替えることにより、第1のカレントミラー回路のミラー比を変更する構成であってもよい。
【0014】
この場合において、第1のエミッタ抵抗又は第2のエミッタ抵抗は、直列接続された複数の抵抗によって構成されており、複数の抵抗のうちの少なくとも1つはスイッチ素子と並列に接続されており、スイッチ素子が、比較回路から出力される信号に基づいて、ONとOFFとを切り替えることにより、第1のカレントミラー回路のミラー比を変更する構成であってもよい。
【0015】
本発明の一側面に係る光集積素子において、光電流増幅器は、ミラー比が異なる複数のカレントミラー回路であり、複数のカレントミラー回路の各々の入力は、複数のカレントミラー回路の各々に一対一に対応するように接続されたスイッチ素子を介して、受光素子に接続されており、複数のカレントミラー回路の各々の出力は、共通接続されており、スイッチ素子が、比較回路から出力される信号に基づいて、ONとOFFとを切り替えることにより、複数のカレントミラー回路のうちの1つを選択してミラー比を変更する構成であってもよい。
【0016】
本発明の一側面に係る光集積素子において、光電流増幅器は、複数の半導体レーザの各々の波長に対して一定の電流値を出力する構成であってもよい。
【0017】
本発明の一側面に係る光集積素子において、光電流増幅器は、出力端子が1つのみである構成であってもよい。
【0018】
本発明の一側面に係る光ピックアップ装置は、上記一側面に係る光集積素子を備える構成であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明の一側面の光集積素子によると、複数の半導体レーザから出力される光の波長に依存することなく、受光素子からのモニター電流を一定にすることができる。このため、検査規格を統一できると共に検査数を減らすことができる。その結果、製造コストの削減が図られると共に、モニター電流の出力端子を分ける必要が無いためチップサイズの削減も可能となる。また、発光している半導体レーザに依存することなく、モニター電流の値が一定であるため、本発明の一側面に係る光集積素子を用いると、APC回路及び光ピックアップ装置の構成を簡素化できる。さらに、半導体レーザの端子をモニターして自動的にカレントミラー回路のミラー比を切り替えるため、外部からの切り替え用の信号が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の第1の実施形態に係る光集積素子の構成を示す回路図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施形態に係る光集積素子の変形例の構成を示す回路図である。
【図3】図3は、本発明の第2の実施形態に係る光集積素子の構成を示す回路図である。
【図4】図4は、本発明の第3の実施形態に係る光集積素子の構成を示す回路図である。
【図5】図5は、本発明の第4の実施形態に係る光集積素子を用いた光ピックアップ装置の構成の一例を示す模式図である。
【図6】図6は、本発明の第4の実施形態に係る光集積素子とAPC回路との接続関係を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の例示的な各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下では、図面及び詳細な説明をもって本発明の技術的思想を明確に説明するものであり、当該技術分野におけるいずれかの当業者であれば、本発明の好ましい実施例を理解した後に、本発明が開示する技術により、変更及び付加を加えることが可能であり、これは本発明の技術的思想及び範囲を逸脱するものではない。
【0022】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光集積素子の構成を示している。
【0023】
図1に示すように、本実施形態の光集積素子は、図示しない光記録媒体に記録の読み取り及び書き込みを行うための光ピックアップ装置に典型的には用いられ、赤色半導体レーザ101と、赤外半導体レーザ102と、半導体レーザの各々の端子間電圧を比較し、その比較結果に応じた信号を出力するコンパレータ回路105と、スイッチ回路112と、受光素子106と、カレントミラー回路107とを備えている。
【0024】
赤色及び赤外半導体レーザ101及び102の各々は、図示しない光記録媒体に光ビームを照射する。赤色及び赤外半導体レーザ101及び102の各々のカソード側の端子はGNDに接地されている。受光素子106は、フォトダイオードであり、半導体レーザから出力される光を受光して光電流を出力する。コンパレータ回路105は、赤色半導体レーザ101のアノード端子103と赤外半導体レーザ102のアノード端子104との間の電圧を比較した結果に応じた信号を出力する。スイッチ回路112は、コンパレータ回路105からの信号によりON/OFFの切り替えを行う。カレントミラー回路107は、抵抗108〜110及びトランジスタ113、114を備えており、スイッチ回路112のON/OFF動作によってミラー比が切り替えられることにより、受光素子106から出力される光電流を増幅又は減衰させてモニター電流出力端子111からモニター電流として出力する。
【0025】
図1に示した本実施形態に係る光集積素子の動作は、赤色半導体レーザ101が発光している場合には、コンパレータ回路105から出力された信号によりスイッチ回路112がONになり、抵抗109にも電流が流れるため、抵抗109及び抵抗110の合成抵抗と抵抗108とによりミラー比が決まり、モニター電流出力端子111からモニター電流が出力される。一方、赤外半導体レーザ102が発光している場合は、スイッチ回路112がOFFになり、抵抗109には電流が流れないため、抵抗108と抵抗110とによりミラー比が決まり、モニター電流出力端子111からモニター電流が出力される。
【0026】
また、図2は、本発明の第1の実施形態に係る光集積素子の変形例の構成を示している。
【0027】
図2に示すように、上述の図1に示した光集積素子の構成に代えて、抵抗109aと抵抗110とが直列に接続され、スイッチ回路112が抵抗109aと並列に接続する構成とすることもできる。
【0028】
このようにすると、スイッチ回路112がOFFのときは、抵抗109aに電流が流れるため、抵抗109a及び抵抗110の合成抵抗と抵抗108とによりミラー比を決めることができる一方、スイッチ回路112がONのときは、抵抗109aに電流が流れないため、抵抗110と抵抗108とによりミラー比を決めることができる。
【0029】
上述の図1及び図2に示した光集積素子の構成において、赤色半導体レーザ101及び赤外半導体レーザ102の各々の場合におけるカレントミラー回路107のミラー比は、モニター電流出力端子111からのモニター電流が同じ値になるように、カレントミラー回路107の抵抗108、109、109a、110の抵抗値を設定する。
【0030】
また、上述の図1及び図2に示した光集積素子の構成において、抵抗109、109aが、カレントミラー回路107の出力側のエミッタ抵抗110に接続された構成について説明したが、入力側のエミッタ抵抗108に接続された構成とすることもでき、この構成の場合も上述と同様の動作を得ることができる。
【0031】
なお、上述の図1及び図2に示した光集積素子の構成において、スイッチ回路112としては、バイポーラトランジスタ又は電界効果トランジスタを用いることができる。バイポーラトランジスタを用いてスイッチ回路112を構成する場合は、コンパレータ回路105から出力される信号によってバイポーラトランジスタのベース電圧を変化させたり、ベース電流の流れを変化させたりすることにより、スイッチ回路112のON/OFFを制御する。一方、電界効果トランジスタを用いてスイッチ回路112を構成する場合は、コンパレータ回路105から出力される信号によって電界効果トランジスタのゲート電圧を変化させることにより、スイッチ回路112のON/OFFを制御する。
【0032】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態に係る光集積素子によると、赤色及び赤外半導体レーザ101及び102の各端子103及び104をモニターして、自動的にカレントミラー回路107のミラー比を切り替えることにより、出力端子111から出力されるモニター電流の値を一定にすることができる。このため、検査数の削減による製造コストの削減を実現できると共に、APC回路及び光ピックアップ装置の簡素化を実現することができる。
【0033】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の第2の実施形態に係る光集積素子の構成を示している。
【0034】
図3に示すように、本実施形態の光集積素子は、図示しない光記録媒体に記録の読み取り及び書き込みを行うための光ピックアップ装置に典型的には用いられ、赤色半導体レーザ101と、赤外半導体レーザ102と、半導体レーザの各々の端子間電圧を比較し、その比較結果に応じた信号を出力するコンパレータ回路105と、スイッチ回路100と、受光素子106と、2つのカレントミラー回路117、118とを備えている。
【0035】
ここで、スイッチ回路100は、スイッチ素子115、116を備え、コンパレータ回路105からの信号により、各スイッチ素子115、116のON/OFFの切り替えを行う。抵抗119、120及びトランジスタ123、124を備えるカレントミラー回路117並びに抵抗121、122及びトランジスタ125、126を備えるカレントミラー回路118は、スイッチ回路100のON/OFFによって動作するカレントミラー回路が切り替えられることにより、受光素子106から出力される光電流を増幅又は減衰させてモニター電流出力端子111からモニター電流として出力する。なお、図3において、上記図1に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付しており、その重複する説明は繰り返さない。
【0036】
図3に示した本実施形態に係る光集積素子の動作は、赤色半導体レーザ101が発光している場合には、コンパレータ回路105から赤色半導体レーザ101に対応した信号がスイッチ回路100に入力され、カレントミラー回路117に接続されたスイッチ素子115がONになり、カレントミラー回路117に受光素子106からの光電流が流れるが、カレントミラー回路118に接続されたスイッチ素子116はOFFになり、カレントミラー回路118には光電流は流れない。そのため、抵抗119と抵抗120とによりカレントミラー回路117のミラー比が決まり、モニター電流出力端子111からモニター電流が出力される。
【0037】
一方、赤外半導体レーザ102が発光している場合には、コンパレータ回路105から赤外半導体レーザ102に対応した信号がスイッチ回路100に入力され、カレントミラー回路118に接続されたスイッチ素子116がONになり、カレントミラー回路118に受光素子106からの光電流が流れるが、カレントミラー回路117に接続されたスイッチ素子115はOFFになり、カレントミラー回路117には光電流は流れない。そのため、抵抗121と抵抗122とによりカレントミラー回路118のミラー比が決まり、モニター電流出力端子111からモニター電流が出力される。
【0038】
上述した図3に示した光集積素子の構成において、赤色半導体レーザ101及び赤外半導体レーザ102の各々に対応したカレントミラー回路117、118のミラー比は、モニター電流出力端子111からのモニター電流が同じ値になるように、カレントミラー回路117、118の抵抗119〜122の抵抗値を設定する。
【0039】
また、上述の図3に示した光集積素子の構成において、スイッチ回路100としては、バイポーラトランジスタ又は電界効果トランジスタを用いることができる。バイポーラトランジスタでスイッチ回路100を構成する場合は、コンパレータ回路105から出力される信号によってバイポーラトランジスタのベース電圧を変化させたり、ベース電流の流れを変化させたりすることにより、スイッチ回路100におけるON/OFFを制御する。一方、電界効果トランジスタを用いてスイッチ回路100を構成する場合は、コンパレータ回路105から出力される信号によって電界効果トランジスタのゲート電圧を変化させることにより、スイッチ回路100におけるON/OFFを制御する。
【0040】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態に係る光集積素子によると、第1の実施形態と同様に、赤色及び赤外半導体レーザ101及び102の各端子103及び104をモニターして、自動的にカレントミラー回路117、118を切り替えることにより、ミラー比が切り替わり、モニター電流出力端子111から出力されるモニター電流の値を一定にすることができる。このため、検査数の削減による製造コストの削減を実現できると共に、APC回路及び光ピックアップ装置の簡素化を実現することができる。さらに、本実施形態では、スイッチ回路100がカレントミラー回路117、118のエミッタ抵抗と接続されていないため、ミラー比の変動もなく安定したモニター電流をモニター電流出力端子111から出力することが可能となる。このように、本実施形態は第1の実施形態に比べて、ミラー比の精度をさらに向上させてAPC制御をさらに安定にすることができる。
【0041】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の第3の実施形態に係る光集積素子の構成を示している。
【0042】
図4に示すように、本実施形態の光集積素子は、図示しない光記録媒体に記録の読み取り及び書き込みを行うための光ピックアップ装置に典型的には用いられ、赤色半導体レーザ101と、赤外半導体レーザ102と、半導体レーザの各々の端子間電圧を比較し、その比較結果に応じた信号を出力するコンパレータ回路105と、スイッチ回路127と、受光素子106と、カレントミラー回路131とを備えている。
【0043】
ここで、スイッチ回路127は、トランジスタ128、130及びインバータ回路129を備え、コンパレータ回路105からの信号により、ON/OFFの切り替えが行われる。また、抵抗132〜136及びトランジスタ137〜143を備えるカレントミラー回路131は、上述の図3に示したカレントミラー回路117、118の2つからなる構成を1つのカレントミラー回路131からなる構成としたものである。カレントミラー回路131は、スイッチ回路127のON/OFFによってミラー比が切り替えられることにより、受光素子106から出力される光電流を増幅又は減衰させてモニター電流出力端子111からモニター電流として出力する。なお、図4において、上記図1に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付しており、その重複する説明は繰り返さない。
【0044】
図4に示した本実施形態に係る光集積素子の動作は、赤色半導体レーザ101から光が出力されている場合には、コンパレータ回路105とスイッチ回路127とにより、受光素子106から出力される光電流がカレントミラー回路131の抵抗133には流れず、抵抗132のみに流れるため、抵抗132と抵抗134とによってカレントミラー回路131のミラー比が決まり、モニター電流出力端子111からモニター電流が出力される。一方、赤外半導体レーザ102から光が出力されている場合には、コンパレータ回路105とスイッチ回路127とにより、受光素子106から出力される光電流がカレントミラー回路131の抵抗132には流れず、抵抗133のみに流れるため、抵抗133と抵抗134とによってカレントミラー回路131のミラー比が決まり、モニター電流出力端子111からモニター電流が出力される。
【0045】
上述の図4に示した光集積素子の構成において、赤色半導体レーザ101及び赤外半導体レーザ102の各々の場合におけるカレントミラー回路131のミラー比は、モニター電流出力端子111からのモニター電流が同じ値になるように、カレントミラー回路131の抵抗132、133の抵抗値を設定する。
【0046】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態に係る光集積素子によると、第1の実施形態と同様に、赤色及び赤外半導体レーザ101及び102の各端子103及び104をモニターして、自動的にカレントミラー回路131のミラー比を切り替えることにより、モニター電流出力端子111から出力されるモニター電流の値を一定にすることができる。このため、検査数の削減による製造コストの削減を実現できると共に、APC回路及び光ピックアップ装置の簡素化を実現することができる。さらに、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、スイッチ回路127がカレントミラー回路131のエミッタ抵抗と接続されていないため、ミラー比の変動もなく安定したモニター電流をモニター電流出力端子111から出力することが可能となる。このように、本実施形態は第1の実施形態に比べて、ミラー比の精度をさらに向上させてAPC制御をさらに安定にすることができる。それに加えて、本実施形態では、第2の実施形態のようにカレントミラー回路を分ける必要がないため、さらに回路の集積化が可能となり、より小型の光集積素子を得ることができる。
【0047】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の第4の実施形態に係る光集積素子を用いた光ピックアップ装置の構成の一例を示している。
【0048】
図5に示すように、例えばBD、HD−DVD、DVD及びCDなどの保護基板の厚さが異なる光情報記録媒体に対して適切に情報の記録/再生を行える光ピックアップ装置であって、例えば波長350〜450nmの光束を出射できる半導体レーザ202と、例えば波長600〜700nmの光束を出射できる半導体レーザ及び例えば波長700〜800nmの光束を出射できる半導体レーザを搭載した2レーザ1パッケージ203と、コリメートレンズ204、205と、ダイクロイックプリズム206と、偏光ビームスプリッタ207と、回折素子208と、モニタレンズ209と、モニタ素子であるモニタディテクタ210と、λ/4波長板211と、アクチュエータにより駆動可能に保持された対物レンズ212とを含んでいる。
【0049】
ここで、図5に示したモニタディテクタ210が、上述した各実施形態の光集積素子に相当するものであって、それらの光集積素子を適宜用いることができる。図6は、第2の実施形態のカレントミラー回路117、118と第3の実施形態のスイッチ回路127との組み合わせを例として用いて、該光集積素子とAPC回路213及び214との接続関係を示している。
【0050】
図6に示すように、光ピックアップ装置は、赤色半導体レーザ101と、赤外半導体レーザ102と、コンパレータ回路105と、スイッチ回路127と、カレントミラー回路117、118と、APC回路213、214とを備えている。
【0051】
図6に示す光ピックアップ装置の動作は、赤色半導体レーザ101又は赤外半導体レーザ102から光が出力されると、コンパレータ回路105からの信号とスイッチ回路127とにより、受光素子106から出力される光電流の入力先であるカレントミラー回路117とカレントミラー回路118とが切り替えられる。モニター電流出力端子111から出力されたモニター電流がAPC回路213、214へ入力され、APC回路213、214により、赤色半導体レーザ101又は赤外半導体レーザ102の出力が一定になるように制御を行う。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る光ピックアップ装置によると、本発明の光集積素子を用いることにより、単波長の半導体レーザを使用したときと同じAPC回路を適応することができる。また、APC回路への出力端子も一つであるため、簡素な構成の光ピックアップ装置が実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の光集積素子は、複数の半導体レーザから出力される光の波長に依存することなく、受光素子からのモニター電流を一定にすることが可能であるため、光ピックアップ装置にとって有用である。
【符号の説明】
【0054】
101 赤色半導体レーザ
102 赤外半導体レーザ
103 赤色半導体レーザのアノード端子
104 赤外半導体レーザのアノード端子
105 コンパレータ回路
107 カレントミラー回路
108、109、109a、110 抵抗
111 モニター電流出力端子
112 スイッチ回路
113、114 トランジスタ
115、116 スイッチ素子
117、118 カレントミラー回路
119、120、121、122 抵抗
123、124、125、126 トランジスタ
127、100 スイッチ回路
128、130 トランジスタ
129 インバータ回路
131 カレントミラー回路
132、133、134、135、136 抵抗
137、138、139、140、141、142、143 トランジスタ
201 光情報記録媒体
202 半導体レーザ
203 2レーザ1パッケージ
204、205 コリメートレンズ
206 ダイクロイックプリズム
207 偏光ビームスプリッタ
208 回折素子
209 モニタレンズ
210 モニタディテクタ
211 λ/4波長板
212 対物レンズ
213、214 APC回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長の異なるレーザ光を出射する複数の半導体レーザと、
前記複数の半導体レーザの各々の端子間電圧を比較し、その比較結果に応じた信号を出力する比較回路と、
前記複数の半導体レーザから出射されるレーザ光の各々の光量に応じて光電流を出力する受光素子と、
前記比較回路から出力される信号に基づいて、前記受光素子から出力される光電流を増幅又は減衰の切り替えを行い、モニター信号を出力する光電流増幅器と
を備えることを特徴とする光集積素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光集積素子において、
前記光電流増幅器は、
入力端子が前記受光素子に接続された第1のカレントミラー回路であり、
前記比較回路から出力される信号に基づいて、前記第1のカレントミラー回路の入力側のトランジスタのエミッタに接続された第1のエミッタ抵抗の抵抗値と、前記第1のカレントミラー回路の出力側のトランジスタのエミッタに接続された第2のエミッタ抵抗の抵抗値とのいずれか一方を切り替えることにより、前記第1のカレントミラー回路のミラー比を変更することを特徴とする光集積素子。
【請求項3】
請求項2に記載の光集積素子において、
前記第1のエミッタ抵抗又は前記第2のエミッタ抵抗は、並列接続された複数の抵抗によって構成されており、前記複数の抵抗のうちの少なくとも1つはスイッチ素子を介して接続されており、
前記スイッチ素子が、前記比較回路から出力される信号に基づいて、ONとOFFとを切り替えることにより、前記第1のカレントミラー回路のミラー比を変更することを特徴とする光集積素子。
【請求項4】
請求項2に記載の光集積素子において、
前記第1のエミッタ抵抗又は前記第2のエミッタ抵抗は、直列接続された複数の抵抗によって構成されており、前記複数の抵抗のうちの少なくとも1つはスイッチ素子と並列に接続されており、
前記スイッチ素子が、前記比較回路から出力される信号に基づいて、ONとOFFとを切り替えることにより、前記第1のカレントミラー回路のミラー比を変更することを特徴とする光集積素子。
【請求項5】
請求項1に記載の光集積素子において、
前記光電流増幅器は、
ミラー比が異なる複数のカレントミラー回路であり、
前記複数のカレントミラー回路の各々の入力は、前記複数のカレントミラー回路の各々に一対一に対応するように接続されたスイッチ素子を介して、前記受光素子に接続されており、前記複数のカレントミラー回路の各々の出力は、共通接続されており、
前記スイッチ素子が、前記比較回路から出力される信号に基づいて、ONとOFFとを切り替えることにより、前記複数のカレントミラー回路のうちの1つを選択してミラー比を変更することを特徴とする光集積素子。
【請求項6】
請求項1〜5のうちのいずれか1項に記載の光集積素子において、
前記光電流増幅器は、前記複数の半導体レーザの各々の波長に対して一定の電流値を出力することを特徴とする光集積素子。
【請求項7】
請求項1〜6のうちのいずれか1項に記載の光集積素子において、
前記光電流増幅器は、出力端子が1つのみであることを特徴とする光集積素子。
【請求項8】
請求項1〜7のうちのいずれか1項に記載の光集積素子を備えること特徴とする光ピックアップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−165292(P2011−165292A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29666(P2010−29666)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】