説明

光電圧測定装置

【課題】温度、湿度などの環境特性に影響を受けずに分圧し、高精度で主回路電圧を測定する。
【解決手段】主回路導体1と、主回路導体1を絶縁支持するとともに、接地部材3に固定された誘電体2と、誘電体2内に埋め込まれた埋め込み電極6と、埋め込み電極6に接続された主回路導体1の電圧を測定するための電気光学素子20とを備え、電気光学素子20には、主回路導体1と埋め込み電極6間、および埋め込み電極6と接地部材3間で形成される静電容量比で分圧された電圧が印加されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発変電所などに用いられる開閉装置の主回路電圧の測定精度を向上し得る光電圧測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
数kV以上の高電圧開閉装置は、静電容量分圧や抵抗分圧によって主回路電圧が測定される。この種の測定装置は、図3に示すようなガス絶縁開閉装置に用いられるコーン形絶縁スペーサが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図3に示すように、主回路導体1は、コーン形絶縁スペーサ2に支持され、筒状の接地電位のタンク3に対して絶縁されている。絶縁スペーサ2は、エポキシ樹脂を注型して形成した第1の誘電体4と、これよりも抵抗率が小さく表面に層状に設けられた第2の誘電体5とから構成されている。また、タンク3側の第1の誘電体4内には、環状の埋め込み電極6が埋め込まれている。外周端部の両端には、環状の埋め込み金属7が設けられ、タンク3端と気密に固定される。
【0004】
埋め込み電極6には、二次側コンデンサ8が接続され、埋め込み金属7を介して接地される。二次側コンデンサ8には、検出インピーダンス9が並列接続されている。なお、主回路導体1と埋め込み電極6間には、一次側静電容量10と、第2の誘電体5による一次側体積抵抗11が形成される。
【0005】
これにより、一次側静電容量10と検出インピーダンス9を含む二次側コンデンサ8とで分圧された電圧を測定することができる。また、第2の誘電体5は時定数の改善のために設けられたものであり、周波数の高いものでは一次側体積抵抗11による分圧となり、精度よく主回路電圧を測定することができる。
【0006】
一方、電圧の測定には、電気光学素子(ポッケルス効果素子)を用いたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、電気光学素子に印加できる電圧は約1kV以下であり、高電圧を測定するためには分圧器を用いなくてはならない。このため、分圧器には高精度のものが要求されるが、絶縁耐力などを考慮すると大形状となり、ガス絶縁開閉装置そのものが大型化する。
【特許文献1】特開2000−232719号公報 (第4ページ、図1)
【特許文献2】特開2000−258465号公報 (第3ページ、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の従来の高電圧開閉装置の主回路電圧測定においては、次のような問題がある。電気光学素子を用いようとすると、専用の分圧器が必要となり、ガス絶縁開閉装置が大型化する。そこで、絶縁スペーサ2を用いて分圧回路を作り、主回路電圧を測定しようとすると、一次側分圧回路の一次側静電容量10と一次側体積抵抗11とがタンク3内であり、二次分圧回路の二次側コンデンサ8と検出インピーダンス9とがタンク3外の気中となる。タンク3内では通電電流による温度上昇があり、またタンク3外では気温の変化があり、一次側と二次側の分圧回路の温度特性を同様とすることが困難であった。また、タンク3内では湿度が低いものの、タンク3外では湿度の影響を受けることになる。
【0008】
このため、ガス絶縁開閉装置の絶縁構造物である絶縁スペーサ2などを用い、温度や湿度などの環境特性を同様とすることのできる分圧回路を作り、主回路電圧を高精度に測定するものが望まれていた。また、電気光学素子を用いる場合、この電気光学素子を接続することにより二次側のインピーダンスが大きく変化せず、安定した分圧比が得られるものが望まれていた。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたもので、環境特性に影響を受けず、高精度で主回路電圧を測定する光電圧測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の光電圧測定装置は、主回路導体と、前記主回路導体を絶縁支持するとともに、接地部材に固定された誘電体と、前記誘電体内に埋め込まれた埋め込み電極と、前記埋め込み電極に接続された前記主回路導体の電圧を測定するための電気光学素子とを備え、前記電気光学素子には、前記主回路導体と前記埋め込み電極間、および前記埋め込み電極と前記接地部材間で形成される静電容量比で分圧された電圧が印加されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一次側静電容量と二次側静電容量とを同一の絶縁材料で形成し、これらの静電容量比で分圧した電圧を電気光学素子に接続しているので、静電容量比が温度、湿度などの環境特性に影響を受けず、高精度に主回路電圧を測定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0013】
先ず、本発明の実施例1に係る光電圧測定装置を図1を参照して説明する。図1は、本発明の実施例1に係る分圧器として機能する絶縁スペーサの断面図である。なお、図1において、従来と同様の構成部分については、同一符号を付した。
【0014】
図1に示すように、ガス絶縁開閉装置の主回路導体1は、コーン形絶縁スペーサ2に支持固定され、筒状の接地電位のタンク(接地部材)3に対して絶縁されている。絶縁スペーサ2は、エポキシ樹脂を注型して形成された第1の誘電体4で構成されている。また、タンク3側の第1の誘電体4内には、環状の埋め込み電極6が埋め込まれている。外周端部の両端には、環状の埋め込み金属7が設けられ、タンク3端と気密に固定される。タンク3内には、絶縁ガスが充填されている。
【0015】
埋め込み電極6には、BGO、BSOなどの単結晶を用いた電気光学素子20の一方端が接続され、電気光学素子20の他方端は接地されている。電気光学素子20には、光源駆動装置21、発光ダイオードなどの光源22、光ファイバー23、送光コリメータ部24、入射光を直線偏光に変換する偏光子25、直線偏光を円偏光に変換する1/4波長板26を介して電圧を測定するための測定光(光信号)が入射される。
【0016】
電気光学素子20では、入射された円偏光を電界強度の大きさに応じて楕円光に変換し、出射する。測定光は検光子27を透過し、一偏光成分のみが出射される。そして、受光コリメータ部28で光ファイバー29に導かれ、検出器30に送られる。検出器30では、測定光を電気信号に変換し、電子回路31で被測定電圧が演算される。送光コリメータ部24から受光コリメータ部28までは、電界の影響を除去するシールドケース32内に収納される。
【0017】
絶縁スペーサ2では、主回路導体1と埋め込み電極6間に一次側静電容量10が形成され、埋め込み電極6とタンク3間に二次側静電容量33が形成される。このため、電気光学素子20には、一次側静電容量10と、電気光学素子20自身の静電容量と二次側静電容量33との合成容量とで分圧された電圧が印加される。
【0018】
ここで、電気光学素子20の静電容量は二次側静電容量33と比べて格段に小さく、分圧比は二次側静電容量33でほぼ決定される。これは、電気光学素子20の比誘電率がエポキシ樹脂よりも大きいのにも係らず、埋め込み電極6とタンク3間の電極配置が同軸電極配置であり、対向する電極面積が電気光学素子20よりも格段に大きくなるためである。直径300mm程度の絶縁スペーサ2で、電気光学素子20と二次側静電容量33との静電容量比は100倍以上となる。
【0019】
これにより、一次側静電容量10と二次側静電容量33との静電容量比で分圧された電圧が電気光学素子20に印加され、主回路電圧を測定することができる。一次側静電容量10と二次側静電容量33とは、同一のエポキシ樹脂で形成されており、温度変化に伴う静電容量の変化が同様となる。また、タンク3内は、所定の低湿度で一定に保たれるので、湿度の影響を受けることはない。即ち、一次側静電容量10と二次側静電容量33とは同一の環境下に曝されることになる。なお、一次側静電容量10には、絶縁ガス中の浮遊静電容量が加算されるが、上述と同様に、環境特性に左右されることはない。
【0020】
上記実施例1の光電圧測定装置によれば、エポキシ樹脂よりなる第1の誘電体4内に埋め込み電極6を埋め込み、電気光学素子20に印加される電圧を、同一のエポキシ樹脂で形成される一次側静電容量10と二次側静電容量33とで分圧しているので、静電容量比が温度、湿度などの環境特性に影響を受けず、高精度で主回路電圧を測定することができる。
【実施例2】
【0021】
次に、本発明の実施例2に係る光電圧測定装置を図2を参照して説明する。図2は、本発明の実施例2に係る分圧器として機能するポストスペーサの断面図である。なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、分圧器として機能する絶縁物である。図2において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0022】
図2に示すように、カップリング35で連結された主回路導体1は、エポキシ樹脂からなる第1の誘電体4で形成されたポストスペーサ36で支持固定されている。第1の誘電体4には、カップリング35側に主回路側埋め込み金属37が埋め込まれ、タンク3側に筒状の接地側埋め込み金属38が埋め込まれ、タンク3に固定されている。また、接地側埋め込み金属38の略中央部には、主回路電圧を分圧させるための円柱状の埋め込み電極39が埋め込まれている。埋め込み電極39には、電気光学素子が接続される。
【0023】
これにより、主回路側埋め込み金属37と埋め込み電極39間で一次側静電容量40が形成され、また埋め込み電極39と接地側埋め込み金属38間で二次側静電容量41が形成され、主回路電圧が分圧される。埋め込み電極39と接地側埋め込み金属38間は同軸電極配置であり、一次側静電容量40よりも二次側静電容量41が大きくなる。これらの静電容量40、41は、同一の絶縁材料である第1の誘電体4で形成され、同一の環境下で用いられるので、環境特性に影響を受けることはない。
【0024】
上記実施例2の光電圧測定装置によれば、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々変形して実施することができる。上記実施例では、第1の誘電体4を一般的なエポキシ樹脂を用いて説明したが、シリカなどの無機材料を充填すれば、温度特性を緩和することができる。また、混合比により比誘電率の調整が容易となり、静電容量の選択幅を増やすことができる。更に、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂など電気機器に適用される他の絶縁材料も用いることができる。
【0026】
また、管理された電気室などで使用され、汚損湿潤などでの沿面漏れ電流が無視できる場合には、気中においても適用することができる。即ち、一次側静電容量10、40と二次側静電容量33、41とが同一の絶縁材料で形成され、同一の環境下で使用し、沿面絶縁耐力が優れている場合には主回路電圧を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例1に係る分圧器として機能する絶縁スペーサの断面図。
【図2】本発明の実施例2に係る分圧器として機能するポストスペーサの断面図。
【図3】従来の分圧器として機能する絶縁スペーサの断面図。
【符号の説明】
【0028】
1 主回路導体
2 絶縁スペーサ
3 タンク
4 第1の誘電体
5 第2の誘電体
6、39 埋め込み電極
7、37、38 埋め込み金属
8 二次側コンデンサ
9 検出インピーダンス
10、40 一次側静電容量
11 一次側体積抵抗
20 電気光学素子
21 光源駆動装置
22 光源
23、29 光ファイバー
24 送光コリメータ部
25 偏光子
26 1/4波長板
27 検光子
28 受光コリメータ部
30 検出器
31 電子回路
32 シールドケース
33、41 二次側静電容量
35 カップリング
36 ポストスペーサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主回路導体と、
前記主回路導体を絶縁支持するとともに、接地部材に固定された誘電体と、
前記誘電体内に埋め込まれた埋め込み電極と、
前記埋め込み電極に接続された前記主回路導体の電圧を測定するための電気光学素子とを備え、
前記電気光学素子には、前記主回路導体と前記埋め込み電極間、および前記埋め込み電極と前記接地部材間で形成される静電容量比で分圧された電圧が印加されることを特徴とする光電圧測定装置。
【請求項2】
前記主回路導体と前記埋め込み電極間、および前記埋め込み電極と前記接地部材間で形成される静電容量が同一の環境下に曝されることを特徴とする請求項1に記載の光電圧測定装置。
【請求項3】
前記埋め込み電極と前記接地部材とは、同軸電極配置であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電圧測定装置。
【請求項4】
前記誘電体は、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の光電圧測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−68665(P2010−68665A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233941(P2008−233941)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】