光電変換素子、光検出器及び太陽電池
【課題】機器の性能を従来よりも向上し得る光電変換素子、光検出器及び太陽電池を提供する。
【解決手段】Geからなる光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、光電変換層5及びGeO2膜10間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、光電変換層5の暗電流を低減させたり、或いは、表面再結合を抑制し得、光電変換機能を用いた各種機器の性能を従来よりも向上し得る。
【解決手段】Geからなる光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、光電変換層5及びGeO2膜10間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、光電変換層5の暗電流を低減させたり、或いは、表面再結合を抑制し得、光電変換機能を用いた各種機器の性能を従来よりも向上し得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光検出器及び太陽電池に関し、例えばGe(ゲルマニウム)からなる光電変換層を備えた光電変換素子に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、Geを光電変換素子として用いたGeフォトディテクター(PhotoDetectors:PD、以下これを光検出器と呼ぶ)は、既存のSiCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プラットフォームに整合可能であることから、活発に研究が進められている(例えば、非特許文献1参照)。例えば、光検出器に用いる光電変換素子としては、Siの基板上にp型のp-Ge層を備え、このp-Ge層の一部にイオン注入を行って、p-Ge層表面にn型のn-Ge層を形成したpn接合構造の光電変換素子が知られている。
【0003】
このような光電変換素子では、SiとGeとの結晶格子不整合からくる格子欠陥や、イオン注入を用いた接合形成時の結晶欠陥による暗電流が大きいという問題が指摘されている。しかしながら、このような光電変換素子における暗電流については、製造過程において、Ge中へのAsの気相式ドーピングを行って高品質のn+/p接合を作ることで、イオン注入と比較して2桁ほど減らせることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Michel et al.,Nature photon.,Vol.4,pp.527-534,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような光電変換素子では、他にも、p-Ge層及びn-Ge層の光電変換層表面において発生するリーク電流が、暗電流増大の大きな要因となっていることが分かった。特に、導波路型の光検出器に用いる光電変換素子では、体積に比較し光電変換層の表面積が大きくなることから、トラップ準位アシスト電流のような、表面のリーク電流を低減させることが特に重要になる。そして、このような光電変換素子では、暗電流を低減して、微弱光をも検出できるように光検出器の性能を向上させることも望まれる。
【0006】
ところで、このようなGeにて形成した光電変換素子は、太陽電池の技術分野にも用いられることも考えられているが、この場合、光電変換層表面において表面再結合が生じることで、光電変換層で発電電圧が損失してしまうという問題があった。そのため、このような太陽電池に用いられる光電変換素子でも、発電電圧の損失を低減して、太陽電池の性能を向上させることが望まれる。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、機器の性能を従来よりも向上し得る光電変換素子、光検出器及び太陽電池を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の請求項1の光電変換素子は、Geを含む光電変換層と、前記光電変換層の表面に形成されたGeO2膜とを備え、前記光電変換層及び前記GeO2膜間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項5の光検出器は、請求項1〜4のうちいずれか1項記載の光電変換素子と、前記光電変換素子が光を受光することにより該光電変換素子から出力される出力信号を検知する出力検知手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項6の太陽電池は、光電変換素子が光を受光することにより該光電変換素子にて電気エネルギーを生成する太陽電池であって、前記光電変換素子が請求項1〜4のうちいずれか1項記載の光電変換素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1によれば、光電変換層の表面にGeO2膜を形成し、光電変換層の表面及びGeO2膜間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下とすることで、暗電流を低減させたり、或いは、表面再結合を抑制し得、光電変換機能を用いた各種機器の性能を従来よりも向上し得る。
【0012】
本発明の請求項5によれば、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも低減し得、その結果、光電変換層にて微弱光を検出できるようになり、光電変換機能を用いた光検出器の性能を従来よりも向上し得る。
【0013】
本発明の請求項6によれば、光電変換層の表面にてキャリアの表面再結合を抑制し得ることから、光電変換層の表面での発電電圧の損失を低減でき、これにより光電変換の高効率化を実現し得、光電変換機能を用いた太陽電池の性能を従来よりも向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図2】Ge層とGeO2膜との境界の側断面構成を示すTEM画像である。
【図3】界面準位密度とエネルギーとの関係を示すグラフである。
【図4】電流とバイアス電圧との関係を示すグラフである。
【図5】暗電流と受光層底面の面積との関係を示すグラフである。
【図6】従来の光電変換素子の側断面構成を示す概略図である。
【図7】図6に示す従来の光電変換素子における電流とバイアス電圧との関係を示すグラフである。
【図8】第2の実施の形態による光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図9】第3の実施の形態による導波路型の光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図10】第4の実施の形態による導波路型の光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図11】第5の実施の形態による導波路型の光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図12】第6の実施の形態による太陽電池の断面構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
(1−1)光検出器の構成
図1において、1は本発明による光検出器を示し、上方からの光を受光することで電気信号を生成する垂直入射型の光電変換素子2と、光電変換素子2にて生成した電気信号を検知する出力検知手段3とから構成されている。実際上、光電変換素子2には、例えばp型のSiからなる基板4上に、pn接合構造を有したGeからなる光電変換層5が設けられている。光電変換層5は、極性がp型のp-Geからなるp-Ge層6と、p-Ge層6とは逆極性であるn型のn+-Ge(図1中、単に「n+Ge」と表記する)からなるn+Ge層7とから構成されており、p-Ge層6の表面上の一部に、パターニングされたn+Ge層7が島状に形成されている。
【0016】
具体的にこの実施の形態の場合、光電変換層5は、p-Ge層6の表面と、n+Ge層7の表面とが面一に形成され、このn+Ge層7の表面一部にNiからなる電極9が形成されている。ここで、この光電変換層5は、上方から入射される光をp-Ge層6表面及びn+Ge層7表面で受光し、受光した光によりn+Ge層7の所定領域にて正孔及び電子(以下、これらを纏めて単にキャリアと呼ぶ)が生成され得る。光電変換層5は、このとき出力検知手段の印加手段によって逆バイアスが印加されることで、n+Ge層7からp-Ge層6に流れる電気信号が生成され得る
【0017】
かかる構成に加えて、この光電変換層5は、電極9を除いたn+Ge層7の表面から、p-Ge層6の表面にかけて、膜厚が10〜100[nm]のGeO2膜10が形成されている。ここで、光電変換層5の表面となるp-Ge層6の表面及びn+Ge層7の表面と、GeO2膜10との間の界面は、界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されており、n+Ge層7の表面からp-Ge層6の表面にかけてリーク電流が抑制され得るようになされている。
【0018】
すなわち、本発明による光電変換素子2は、光電変換層5の表面と、GeO2膜10との界面においてトラップ準位アシスト電流が抑制し得ることにより、リーク電流が発生し難くなり、暗電流を大幅に低減し得るようになされている。因みに、ここで、暗電流とは、後述する逆バイアスをpn接合に印加したとき、光が照射されていないにもかかわらず、光電変換層5に流れてしまう電流をいう。
【0019】
なお、この光検出器1は、光電変換素子2の電極9に配線12が設けられており、この配線12が出力検知手段3を経由して光電変換素子2の基板4に接続されている。出力検知手段3は、印加手段13を備えており、当該印加手段13によって光電変換素子2の電極及び基板4間に逆バイアスを印加し得るようになされている。
【0020】
出力検知手段3は、光電変換素子2に逆バイアスを印加した状態で、当該光電変換素子2に光が入射されると、光電変換層5にてキャリアが発生したことにより生成された電気信号を、配線12を介して検知し得るようになされている。かくして光検出器1は、出力検知手段3による電気信号の検知の有無に基づいて、光電変換素子2に入射された光を検出し得るようになされている。
【0021】
ここで、このような光電変換素子2については以下のようにして製造され得る。まず初めに、極性がp型のGeからなるp-Ge層6が基板4上に設けられたGeウェハ(図示せず)を用意する。次いで、イオン注入ではなく、後述する気相ドーピング法を用いて、Geウェハのp-Ge層6の表面一部にパターニングしたn+Ge層7を形成する。
【0022】
実際上、気相ドーピング法を用いる場合には、先ず初めに、Geウェハのp-Ge層6表面には、後述するGe自然酸化物を除去するクリーニングにより除去され得ない膜厚でなる所定形状のSiO2マスク(図示せず)を設けておき、当該SiO2マスクにて、n+Ge層7が形成される接合形成予定部のみp-Ge層6表面を露出させた状態とする。次いで、露出しているp-Ge層6表面のGe自然酸化物を除去するために、HF溶液と脱イオン水とによるエッチングで、p-Ge層6の表面を複数回クリーニングした後、気相式ドーピングを行うためにGeウェハを反応炉に挿入する。
【0023】
Geウェハが挿入される反応炉は、炉内にH2が流されるとともに、例えば500[℃]〜700[℃]のドーピング温度に加熱される。そして、金属有機材料として、ターシャリ・ブチル・アルシン(略称:TBAs、化学式:(CH2)2CAsH2)を水素ガスに混ぜて反応炉に導入し、ドープ時間として60分、Geウェハを加熱することでドーピングする。
【0024】
このようにして、TBAsを用い、接合形成予定部として露出させたp-Ge層6の表面からAsを気相拡散させ、p-Ge層6の表面一部にn+Ge層7を形成し、pn接合構造を有したGeでなる光電変換層5を形成する。次いで、p-Ge層6の表面上のSiO2マスクを除去した後、パッシベーション処理を行うことで、光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、最後に所定の手順にてGeO2膜10を一部除去して露出させたn+Ge層7表面に、Niで電極9を形成して光電変換素子2を製造し得る。
【0025】
ここで、光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成するパッシベーション処理としては、酸化温度が450[℃]〜575[℃]、好ましくは550[℃]〜575[℃]で、光電変換層5の表面をドライO2ガス100%で熱酸化させることにより、p-Ge層6の表面からn+Ge層7の表面にかけて所定の膜厚でなるGeO2膜10を形成し得る。このようして形成されたGeO2膜10と、光電変換層5の表面との間の界面は、低温コンダクタンス法により界面準位密度を測定すると、1012[eV-1cm-2]以下となっている。
【0026】
具体的には、450[℃]の酸化温度にて光電変換層5を熱酸化させた場合、最も低い界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となり得る。また、575[℃]の酸化温度にて光電変換層5を熱酸化させた場合、最も低い界面準位密度が1011[eV-1cm-2]以下となり得る。このようにしてパッシベーション処理が行われた光電変換層5の表面には、図2に示すように、光電変換層5と交わることなく、光電変換層5の表面と境界線により区切られたGeO2膜10が形成され得る。因みに、図2は、酸化温度550[℃]で光電変換層5の表面を熱酸化させて形成したGeO2膜10と、光電変換層(Ge層)5との界面のTEM写真を示す。
【0027】
(1−2)各種検証試験
次に、酸化温度と、界面準位密度との関係について検証試験を行ったところ、図3に示すような結果が得られた。実際上、この検証試験では、4つのGeウェハを用意し、これらGeウェハをそれぞれ450[℃]、500[℃]、550[℃]又は575[℃]の異なる酸化温度で、ドライO2ガス100%により熱酸化し、GeO2膜10を光電変換層5表面に形成した。次いで、各光電変換層5とGeO2膜10との間の界面について、これらをGeO2/GeMOSコンデンサとして、低温コンダクタンス法により界面準位密度を調べたところ、図3に示すような結果が得られた。
【0028】
図3から、酸化温度を450[℃]とした場合、光電変換層5とGeO2膜10との間の最も低い界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下になることが確認できた。また、酸化温度を575[℃]まで上げた場合には、光電変換層5とGeO2膜10との間の界面準位密度が全エネルギーで1012[eV-1cm-2]以下になり、最も低い界面電位密度が1011[eV-1cm-2]以下になることが確認できた。そして、酸化温度を上げてゆくことで、光電変換層5とGeO2膜10との間の界面準位密度が、次第に低くなることが確認できた。
【0029】
次に、パッシベーション処理において酸化温度550[℃]でGeO2膜10を光電変換層5の表面に形成した本発明による光電変換素子2について、暗電流と光電流とを測定したところ、図4に示すような結果が得られた。図4において、上方の波形は、0[dBm]で波長1550[nm]のレーザ光を光電変換素子2の光電変換層5に入射させたときの光電流の測定結果を示し、下方の波形は、光を照射していないときの暗電流の測定結果を示す。
【0030】
因みに、この光電変換素子2は、n+Ge層7の底面と、p-Ge層6と、の接合面積Area(図1参照)を105[μm2]とした。図4から、この光電変換素子2は、n+Ge層7の底面と、p-Ge層6との接合面積Areaが105[μm2]であるにもかかわらず、100[nA]未満という低い暗電流を示した。このように本発明による光電変換素子2は、暗電流が低減し得、±1[V]で測られるダイオードのIon/Ioff比率がおよそ107となった。そして、このような結果は、これまで報告された値と比較して最も高い値である。
【0031】
また、この光電変換素子2に波長1550[nm]のレーザ光を照射することで得られた光電流の結果から、0.5[A/W]の応答度が確認できた。因みに、図4において、‐2[V]まで逆電圧を光電変換素子2に印加しても暗電流に変化がないことは、気相ドーピング法によって形成されたn+/p接合がほとんど欠陥を有していないことを表している。
【0032】
次に、パッシベーション処理において酸化温度550[℃]でGeO2膜10を光電変換層5上に形成した本発明による光電変換素子2について、光電変換層5に-1[V]を印加した状態で、p-Ge層6とn+Ge層7の底面との接合面積Area(図1)と、暗電流との関係について調べたところ、図5に示すような結果が得られた。また、ここで暗電流Idarkと、接合面積Areaとを用いて、図5に示す数式から、接合電流密度Jbulkと、表面電流密度Jsurfとを算出したところ、接合電流密度Jbulkが0.032[mA/cm2]、表面電流密度Jsurfが0.27[A/cm]であった。
【0033】
0.032[mA/cm2]という接合電流密度Jbulkは、これまで報告されているGeからなる光電変換素子の中で最も低い値の1つである。また、表面電流密度Jsurfの値も、文献1(H.Y.Yu,S.Ren,W.S.Jung,A.B.Miller,and
K.C.Saraswat,IEEE Electron Dev Letts.,vol.30,pp.1161,2009)、及び文献2(T.H.Loh,H.S.Nguyen,R.Murthy,M.B.yu,W.Y,Loh,G.Q.Lo,N.Balasubramanian,and D.L.Kwong,Appl.Phys.Lett.,vol.91,073503,2007)で報告されたものより、2桁小さいものであることが確認できた。
【0034】
また、接合面積Areaを小さくした導波路型の光検出器に用いる光電変換素子について、表面電流密度Jsurfを本結果から推定することができるが、接合面積Areaが100[μm2]未満の場合は、1[nA]未満の表面電流密度Jsurfにできることが分かった。
【0035】
ここで、本発明による光電変換素子2の暗電流低減が、従来の光電変換素子とどの程度異なるかを検証するため、比較例1の光電変換素子と、比較例2の光電変換素子とを用意した。図1との対応部分に同一符号を付して示す図6に示すように、比較例1の光電変換素子100は、上述した気相ドーピング法を用いて、600[℃]でp-Ge層6の表面一部にn+Ge層7を形成した。また、比較例1の光電変換素子2では、温度350[℃]、希釈シランガスでプラズマCVD法により、p-Ge層6及びn+Ge層7の面一の表面にパッシベーション膜としてSiO2層101を形成した。なお、この光電変換素子100には、n+Ge層7上のSiO2層101を一部除去し、露出させたn+Ge層7上にNiからなる電極9を設けた。
【0036】
一方、これとは別に、比較例2として、気相ドーピング法を用いずに、n+Ge層をイオン注入により形成した光電変換素子を用意した。実際上、この比較例2の光電変換素子では、所定形状のSiO2マスクにて、n+Ge層が形成される接合形成予定部のみp-Ge層表面を露出させた状態とし、露出したp-Ge層表面に10[eV]でリンをイオン注入した後、10[S]、600[℃]でRTA(Rapid Thermal Annealing)処理して、当該p-Ge層表面にn+Ge層を形成した。なお、比較例2の光電変換素子は、SiO2層101の形成等については比較例1の光電変換素子と同じとした。
【0037】
これら比較例1及び比較例2について、光を照射していないときの暗電流をそれぞれ測定したところ、図7に示すような結果が得られた。図7では、比較例1の測定結果を点線で示し、比較例2の測定結果を実線で示している。図7から、比較例1及び比較例2のいずれにおいても、本発明による光電変換素子2よりも暗電流が大きく、本発明による光電変換素子2は、比較例1の光電変換素子100や、比較例2の光電変換素子よりも、暗電流を低減できることが確認できた。
【0038】
(1−3)動作及び効果
以上の構成において、光電変換素子2では、Geからなる光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、光電変換層5及びGeO2膜10間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、光電変換層5の暗電流を低減させたり、或いは、表面再結合を抑制し得、光電変換機能を用いた各種機器の性能を従来よりも向上し得る。
【0039】
例えば、本発明による光電変換素子2を用いた光検出器1では、光電変換層5の表面にてトラップ準位アシスト電流を大幅に抑制し得、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも格段に低減でき、その結果、光電変換層5に微弱光が照射されても、暗電流が低減されている分だけ、当該微弱光に応じて生成された僅かな電気信号をも検知し得る。かくして、光検出器1では、光電変換層5にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出性能を向上し得る。
【0040】
(2)第2の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付して示す図8において、21は第2の実施の形態による光検出器を示し、上述した第1の実施の形態による光検出器1とは異なる構成の垂直入射型の光電変換素子22を用いている。実際上、この光電変換素子22は、n-Geからなる光電変換層23の表面に、Ni又はAl等の金属部材からなる第1電極25a及び第2電極25bが設けられている。
【0041】
かかる構成に加えて、光電変換層23の表面には、これら第1電極25a及び第2電極25b以外の領域にGeO2膜26が形成されている。ここでも、光電変換層23の表面と、GeO2膜26との間の界面は、境界準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されており、光電変換層23にてトラップ準位アシスト電流の発生が抑制され得るようになされている。これにより、光電変換層23は、表面でのトラップ準位アシスト電流の発生が抑制されることで、表面リーク電流による暗電流の発生を低減し得るようになされている。
【0042】
ここで、光電変換素子22には、印加手段13により第1電極25a及び第2電極25b間に逆バイアスが印加され得るようになされている。光電変換素子22は、光電変換層23の上方から光が入射されると、当該光がGeO2膜26を透過して当該光電変換層23に到達し得る。これにより光電変換素子22は、光電変換層23にてキャリアが発生し、この際、第1電極25a及び第2電極25b間に逆バイアスが印加されていることで、光電変換層23にて発生したキャリアにより電気信号を生成し得る。かくして光検出器21は、出力検知手段3によって光電変換素子22にて生成される電気信号の検知の有無に基づいて、光電変換素子22に入射された光を検出し得るようになされている。
【0043】
以上の構成において、このような光電変換素子22を用いた光検出器21でも、光電変換層23の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生を抑制し得ることから、光電変換層23の表面で発生する表面リーク電流による暗電流を従来よりも格段に低減し得、その結果、光電変換層23にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出器21の光検出性能を向上し得る。
【0044】
(3)第3の実施の形態
図9において、31は、導波路型の光電変換素子32を用いた光検出器を示し、上述した実施の形態とは光電変換素子32の構成が異なるものである。なお、図9は、紙面奥側に向かう導波方向に沿って延びる導波路型の光電変換素子32において、この光電変換素子32の受光面断面を示す。
【0045】
実際上、この光電変換素子32は、導波方向に延びる帯状のSiからなる基板33上に、SiO2層34を介在させて同じく導波方向に延びる光電変換層35が設けられている。光電変換層35は、SiO2層34の表面に形成されたp型Siでなるp-Si層36と、このp-Si層36の表面一部に形成されたn型Geでなるn-Ge層37とから構成されており、n-Ge層37の断面で光を受光し得るようになされている。
【0046】
かかる構成に加えて、この光電変換層35には、n-Ge層37を取り囲むようにGeO2膜39が形成されている。これにより光電変換層35は、n-Ge層37周辺のp-Si層36の表面からn-Ge層37の側面にかけてもGeO2膜39に覆われ、n-Ge層37及びGeO2膜39間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されており、n-Ge層37の表面からp-Si層36の表面にかけてトラップ準位アシスト電流の発生が抑制され得るようになされている。
【0047】
光電変換層35は、n-Ge層37に図示しない電極を介して配線12が接続された構成を有し、当該配線12が出力検知手段3を経由してp-Si層36に接続されている。因みに、光電変換素子32には、印加手段13によりn-Ge層37及びp-Si層36間に逆バイアスが印加されており、この状態で光電変換層35に光が入射されると、光電変換層35にてキャリアが発生して電気信号を生成し得る。かくして光検出器31は、出力検知手段3によって光電変換素子32にて生成される電気信号の検知の有無に基づいて、光電変換素子32に入射された光を検出し得るようになされている。
【0048】
以上の構成において、光電変換素子32では、光電変換層35のp-Si層36の表面からn-Ge層37の表面にかけてGeO2膜39を形成し、p-Si層36及びGeO2膜39間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、n-Ge層の側面からp-Si層36の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生を大幅に抑制し、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも格段に低減し得る。かくして、このような光電変換素子32でも、光電変換層35にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出器31の光検出性能を向上し得る。
【0049】
(4)第4の実施の形態
図9との対応部分に同一符号を付して示す図10において、41は導波路型の光電変換素子42を用いた光検出器を示し、上述した実施の形態とは光電変換素子42の構成が異なるものである。なお、図10も、紙面奥側に向かう導波方向に沿って延びる光電変換素子42の受光面断面を示す。
【0050】
実際上、この光電変換素子42は、導波方向に延びる帯状のSiの基板33上に、SiO2層34及びp-Si層36を順次介して光電変換層43が設けられている。光電変換層43は、p-Si層36の表面に形成されたi-Ge層45と、このi-Ge層45の表面一部に形成されたn-Ge層46と、このi-Ge層45の表面一部に形成されn-Ge層46と所定間隔をあけて形成されたp-Ge層47とから構成されており、導波方向に照射される光を、同じく導波方向に延びるi-Ge層45にて受光し得るようになされている。
【0051】
かかる構成に加えて、この光電変換層43は、i-Ge層45、n-Ge層46及びp-Ge層47を覆うようにしてGeO2膜49が形成されており、i-Ge層45及びGeO2膜49間と、n-Ge層45及びGeO2膜49間と、p-Ge層47及びGeO2膜49間の各界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されている。
【0052】
このように光電変換素子42では、i-Ge層45、n-Ge層46及びp-Ge層47と、GeO2膜49との間の各界面が境界準位密度1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されていることで、i-Ge層45やn-Ge層46、p-Ge層47の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生が抑制され得る。
【0053】
光電変換層43は、n-Ge層46に図示しない電極を介して配線12が接続され、当該配線12が出力検知手段3を経由して、図示しない電極を介してp-Ge層47に接続されており、出力検知手段3の印加手段13によって、これらn-Ge層46及びp-Ge層47間に逆バイアスが印加され得るようになされている。
【0054】
光電変換素子42は、光電変換層43に導波方向から光が入射されると、光電変換層43にてキャリアが発生し得、この際、印加手段13による逆バイアスが光電変換層43に印加されていることから、電気信号を生成し得る。かくして光検出器41は、出力検知手段3によって光電変換素子42にて生成される電気信号の検知の有無に基づいて、光電変換素子42に入射された光を検出し得るようになされている。
【0055】
以上の構成において、光電変換素子42では、光電変換層43のi-Ge層45の表面からp-Ge層46及びn-Ge層47の表面にかけてGeO2膜49を形成し、光電変換層43のi-Ge層45、n-Ge層46及びp-Ge層47とGeO2膜49との間の各界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、i-Ge層45、n-Ge層46及びp-Ge層47の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生を大幅に抑制し得、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも格段に低減できる。かくして、このような光電変換素子42でも、光電変換層43にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出器41の光検出性能を向上し得る。
【0056】
(5)第5の実施の形態
図9との対応部分に同一符号を付して示す図11において、51は導波路型の光電変換素子を用いた光検出器を示し、上述した実施の形態とは光電変換素子52の構成が異なるものである。なお、図11も、紙面奥側に向かう導波方向に沿って延びる光電変換素子52の受光面断面を示す。
【0057】
実際上、導波方向に延びる光電変換層55は、n-Geからなり、p-Si層36の表面に形成され、導波方向に照射される光を受光し得るようになされている。かかる構成に加えて、この光電変換層55には、Ni又はAl等の金属部材からなる第1電極56aと第2電極56bとが間隔をあけて表面に設けられており、これら第1電極56aと第2電極56bを除いた表面にGeO2膜59が形成されている。また、光電変換層55は、表面及びGeO2膜59間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成され、表面にてトラップ準位アシスト電流の発生が抑制され得るようになされている。
【0058】
ここで光電変換層55は、第1電極56aに配線12が接続され、当該配線12が出力検知手段3を経由して第2電極56bに接続されており、出力検知手段3の印加手段13によって、これら第1電極56aと第2電極56b間に逆バイアスが印加され得るようになされている。
【0059】
光電変換素子52は、光電変換層55に導波方向から光が入射されると、光電変換層55にてキャリアが発生し得、この際、第1電極56aと第2電極56b間に逆バイアスが印加されていることで、電気信号を生成し得る。かくして光検出器51は、出力検知手段3によって光電変換素子52にて生成される電気信号の検知の有無を基に、光電変換素子52に入射された光を検出し得るようになされている。
【0060】
以上の構成において、光電変換素子52では、光電変換層55の表面にGeO2膜59を形成し、光電変換層55の表面とGeO2膜59との間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、光電変換層55の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生を大幅に抑制し、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも格段に低減し得る。かくして、このような光電変換素子52でも、光電変換層55にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出器51の光検出性能を向上し得る。
【0061】
(6)第6の実施の形態
図12において、61は太陽電池に用いられる本発明による光電変換素子を示し、光電変換層62の受光表面がGeO2膜68で覆われているとともに、光電変換層62の裏面がGeO2膜69で覆われた構成を有している。なお、この場合、太陽電池の全体図は省略し、光電変換素子61についてのみ説明する。
【0062】
実際上、この光電変換素子61の光電変換層62は、板状のGe層64と、このGe層64の裏面に形成されたn-Ge層66と、同じくGe層の裏面に形成されn-Ge層66と所定間隔をあけて配置されたp-Ge層67とで構成されており、Ge層64の裏面と対向する受光表面にて光を受光し得るようになされている。
【0063】
この実施の形態の場合、光電変換層62は、Ge層64、n-Ge層66及びp-Ge層67が面一に形成されており、これらGe層64、n-Ge層66及びp-Ge層67が面一に形成された裏面にGeO2膜69が形成されている。そして、光電変換層62は、Ge層64及びGeO2膜69間の界面準位密度と、n-Ge層66及びGeO2膜69間の界面準位密度と、p-Ge層67及びGeO2膜69間の界面準位密度とが、それぞれ1012[eV-1cm-2]以下に形成されており、裏面にてキャリアの表面再結合が抑制され得るようになされている。
【0064】
また、この光電変換層62は、裏面と対向する受光表面でも、当該受光表面及びGeO2膜68間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下に形成されており、受光表面にてキャリアの表面再結合が抑制され得るようになされている。このように、光電変換層62は、キャリアの表面再結合が抑制されていることから、受光表面及び裏面にてキャリアが再結合してしまうことで生じる発電電圧の損失を低減して、発電効率を向上し得るようになされている。
【0065】
因みに、この光電変換層62には、n-Ge層66及びp-Ge層67に図示しない電極を介して配線12が接続されており、n-Ge層66及びp-Ge層67間に逆バイアスが印加され得る。この際、光電変換素子61は、光電変換層62の受光表面側から光が照射されると、光がGeO2膜68を透過して光電変換層62に入射され、当該光電変換層62にてキャリアが発生し得、キャリアが発生し得ることにより電気信号を生成し得るようになされている。かくして太陽電池は、光電変換素子61により生成された電気信号を、光電変換素子61から配線12を介して電気蓄積手段等に送出し得るようになされている。
【0066】
以上の構成において、光電変換素子61では、光電変換層62の裏面及び受光表面の両面にそれぞれGeO2膜68,69を形成し、光電変換層62の裏面及びGeO2膜69間の界面準位密度と、光電変換層62の受光表面及びGeO2膜68間の界面準位密度とを、それぞれ1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、光電変換層62の裏面及び受光表面にてキャリアの表面再結合を大幅に抑制し、その分だけ光電変換層62での発電電圧の損失を低減できる。かくして、この光電変換素子61では、光電変換の高効率化を実現し得、光電変換機能を用いた太陽電池の発電性能を従来よりも向上し得る。
【0067】
因みに、上述した実施の形態においては、光電変換層62の裏面及び受光表面の両面にそれぞれGeO2膜68,69を形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、光電変換層62の裏面及び受光表面のいずれか片面にだけGeO2膜を形成するようにしてもよい。このような光電変換素子であっても、GeO2膜の形成面とGeO2膜との間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下とすることで、当該GeO2膜の形成面にてキャリアの表面再結合を抑制し得る。
【0068】
(7)他の実施の形態
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、上述した実施の形態を組み合わせた構成であってもよい。また、上述した実施の形態においては、熱酸化により、例えば光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、光電変換層5及GeO2膜10間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下にするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマにより光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、光電変換層5及GeO2膜10間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下にするようにしてもよい。すなわち、本発明では、他の実施の形態においても、光電変換層及GeO2膜間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下にできれば、その他種々の方法にて光電変換層の表面にGeO2膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,21,31,41,51 光検出器
2,22,32,42,52,61 光電変換素子
5,23,35,43,55,62 光電変換層
10,26,39,49,59 GeO2膜
6,47,67 p-Ge層(第2極性半導体層)
7,37,46,66 n-Ge層(第1極性半導体層)
36 p-Si層(第2極性半導体層)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、光検出器及び太陽電池に関し、例えばGe(ゲルマニウム)からなる光電変換層を備えた光電変換素子に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、Geを光電変換素子として用いたGeフォトディテクター(PhotoDetectors:PD、以下これを光検出器と呼ぶ)は、既存のSiCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)プラットフォームに整合可能であることから、活発に研究が進められている(例えば、非特許文献1参照)。例えば、光検出器に用いる光電変換素子としては、Siの基板上にp型のp-Ge層を備え、このp-Ge層の一部にイオン注入を行って、p-Ge層表面にn型のn-Ge層を形成したpn接合構造の光電変換素子が知られている。
【0003】
このような光電変換素子では、SiとGeとの結晶格子不整合からくる格子欠陥や、イオン注入を用いた接合形成時の結晶欠陥による暗電流が大きいという問題が指摘されている。しかしながら、このような光電変換素子における暗電流については、製造過程において、Ge中へのAsの気相式ドーピングを行って高品質のn+/p接合を作ることで、イオン注入と比較して2桁ほど減らせることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Michel et al.,Nature photon.,Vol.4,pp.527-534,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、このような光電変換素子では、他にも、p-Ge層及びn-Ge層の光電変換層表面において発生するリーク電流が、暗電流増大の大きな要因となっていることが分かった。特に、導波路型の光検出器に用いる光電変換素子では、体積に比較し光電変換層の表面積が大きくなることから、トラップ準位アシスト電流のような、表面のリーク電流を低減させることが特に重要になる。そして、このような光電変換素子では、暗電流を低減して、微弱光をも検出できるように光検出器の性能を向上させることも望まれる。
【0006】
ところで、このようなGeにて形成した光電変換素子は、太陽電池の技術分野にも用いられることも考えられているが、この場合、光電変換層表面において表面再結合が生じることで、光電変換層で発電電圧が損失してしまうという問題があった。そのため、このような太陽電池に用いられる光電変換素子でも、発電電圧の損失を低減して、太陽電池の性能を向上させることが望まれる。
【0007】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、機器の性能を従来よりも向上し得る光電変換素子、光検出器及び太陽電池を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するため本発明の請求項1の光電変換素子は、Geを含む光電変換層と、前記光電変換層の表面に形成されたGeO2膜とを備え、前記光電変換層及び前記GeO2膜間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項5の光検出器は、請求項1〜4のうちいずれか1項記載の光電変換素子と、前記光電変換素子が光を受光することにより該光電変換素子から出力される出力信号を検知する出力検知手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項6の太陽電池は、光電変換素子が光を受光することにより該光電変換素子にて電気エネルギーを生成する太陽電池であって、前記光電変換素子が請求項1〜4のうちいずれか1項記載の光電変換素子であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1によれば、光電変換層の表面にGeO2膜を形成し、光電変換層の表面及びGeO2膜間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下とすることで、暗電流を低減させたり、或いは、表面再結合を抑制し得、光電変換機能を用いた各種機器の性能を従来よりも向上し得る。
【0012】
本発明の請求項5によれば、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも低減し得、その結果、光電変換層にて微弱光を検出できるようになり、光電変換機能を用いた光検出器の性能を従来よりも向上し得る。
【0013】
本発明の請求項6によれば、光電変換層の表面にてキャリアの表面再結合を抑制し得ることから、光電変換層の表面での発電電圧の損失を低減でき、これにより光電変換の高効率化を実現し得、光電変換機能を用いた太陽電池の性能を従来よりも向上し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態による光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図2】Ge層とGeO2膜との境界の側断面構成を示すTEM画像である。
【図3】界面準位密度とエネルギーとの関係を示すグラフである。
【図4】電流とバイアス電圧との関係を示すグラフである。
【図5】暗電流と受光層底面の面積との関係を示すグラフである。
【図6】従来の光電変換素子の側断面構成を示す概略図である。
【図7】図6に示す従来の光電変換素子における電流とバイアス電圧との関係を示すグラフである。
【図8】第2の実施の形態による光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図9】第3の実施の形態による導波路型の光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図10】第4の実施の形態による導波路型の光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図11】第5の実施の形態による導波路型の光検出器の断面構成を示す概略図である。
【図12】第6の実施の形態による太陽電池の断面構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて本発明の実施の形態を詳述する。
(1)第1の実施の形態
(1−1)光検出器の構成
図1において、1は本発明による光検出器を示し、上方からの光を受光することで電気信号を生成する垂直入射型の光電変換素子2と、光電変換素子2にて生成した電気信号を検知する出力検知手段3とから構成されている。実際上、光電変換素子2には、例えばp型のSiからなる基板4上に、pn接合構造を有したGeからなる光電変換層5が設けられている。光電変換層5は、極性がp型のp-Geからなるp-Ge層6と、p-Ge層6とは逆極性であるn型のn+-Ge(図1中、単に「n+Ge」と表記する)からなるn+Ge層7とから構成されており、p-Ge層6の表面上の一部に、パターニングされたn+Ge層7が島状に形成されている。
【0016】
具体的にこの実施の形態の場合、光電変換層5は、p-Ge層6の表面と、n+Ge層7の表面とが面一に形成され、このn+Ge層7の表面一部にNiからなる電極9が形成されている。ここで、この光電変換層5は、上方から入射される光をp-Ge層6表面及びn+Ge層7表面で受光し、受光した光によりn+Ge層7の所定領域にて正孔及び電子(以下、これらを纏めて単にキャリアと呼ぶ)が生成され得る。光電変換層5は、このとき出力検知手段の印加手段によって逆バイアスが印加されることで、n+Ge層7からp-Ge層6に流れる電気信号が生成され得る
【0017】
かかる構成に加えて、この光電変換層5は、電極9を除いたn+Ge層7の表面から、p-Ge層6の表面にかけて、膜厚が10〜100[nm]のGeO2膜10が形成されている。ここで、光電変換層5の表面となるp-Ge層6の表面及びn+Ge層7の表面と、GeO2膜10との間の界面は、界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されており、n+Ge層7の表面からp-Ge層6の表面にかけてリーク電流が抑制され得るようになされている。
【0018】
すなわち、本発明による光電変換素子2は、光電変換層5の表面と、GeO2膜10との界面においてトラップ準位アシスト電流が抑制し得ることにより、リーク電流が発生し難くなり、暗電流を大幅に低減し得るようになされている。因みに、ここで、暗電流とは、後述する逆バイアスをpn接合に印加したとき、光が照射されていないにもかかわらず、光電変換層5に流れてしまう電流をいう。
【0019】
なお、この光検出器1は、光電変換素子2の電極9に配線12が設けられており、この配線12が出力検知手段3を経由して光電変換素子2の基板4に接続されている。出力検知手段3は、印加手段13を備えており、当該印加手段13によって光電変換素子2の電極及び基板4間に逆バイアスを印加し得るようになされている。
【0020】
出力検知手段3は、光電変換素子2に逆バイアスを印加した状態で、当該光電変換素子2に光が入射されると、光電変換層5にてキャリアが発生したことにより生成された電気信号を、配線12を介して検知し得るようになされている。かくして光検出器1は、出力検知手段3による電気信号の検知の有無に基づいて、光電変換素子2に入射された光を検出し得るようになされている。
【0021】
ここで、このような光電変換素子2については以下のようにして製造され得る。まず初めに、極性がp型のGeからなるp-Ge層6が基板4上に設けられたGeウェハ(図示せず)を用意する。次いで、イオン注入ではなく、後述する気相ドーピング法を用いて、Geウェハのp-Ge層6の表面一部にパターニングしたn+Ge層7を形成する。
【0022】
実際上、気相ドーピング法を用いる場合には、先ず初めに、Geウェハのp-Ge層6表面には、後述するGe自然酸化物を除去するクリーニングにより除去され得ない膜厚でなる所定形状のSiO2マスク(図示せず)を設けておき、当該SiO2マスクにて、n+Ge層7が形成される接合形成予定部のみp-Ge層6表面を露出させた状態とする。次いで、露出しているp-Ge層6表面のGe自然酸化物を除去するために、HF溶液と脱イオン水とによるエッチングで、p-Ge層6の表面を複数回クリーニングした後、気相式ドーピングを行うためにGeウェハを反応炉に挿入する。
【0023】
Geウェハが挿入される反応炉は、炉内にH2が流されるとともに、例えば500[℃]〜700[℃]のドーピング温度に加熱される。そして、金属有機材料として、ターシャリ・ブチル・アルシン(略称:TBAs、化学式:(CH2)2CAsH2)を水素ガスに混ぜて反応炉に導入し、ドープ時間として60分、Geウェハを加熱することでドーピングする。
【0024】
このようにして、TBAsを用い、接合形成予定部として露出させたp-Ge層6の表面からAsを気相拡散させ、p-Ge層6の表面一部にn+Ge層7を形成し、pn接合構造を有したGeでなる光電変換層5を形成する。次いで、p-Ge層6の表面上のSiO2マスクを除去した後、パッシベーション処理を行うことで、光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、最後に所定の手順にてGeO2膜10を一部除去して露出させたn+Ge層7表面に、Niで電極9を形成して光電変換素子2を製造し得る。
【0025】
ここで、光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成するパッシベーション処理としては、酸化温度が450[℃]〜575[℃]、好ましくは550[℃]〜575[℃]で、光電変換層5の表面をドライO2ガス100%で熱酸化させることにより、p-Ge層6の表面からn+Ge層7の表面にかけて所定の膜厚でなるGeO2膜10を形成し得る。このようして形成されたGeO2膜10と、光電変換層5の表面との間の界面は、低温コンダクタンス法により界面準位密度を測定すると、1012[eV-1cm-2]以下となっている。
【0026】
具体的には、450[℃]の酸化温度にて光電変換層5を熱酸化させた場合、最も低い界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となり得る。また、575[℃]の酸化温度にて光電変換層5を熱酸化させた場合、最も低い界面準位密度が1011[eV-1cm-2]以下となり得る。このようにしてパッシベーション処理が行われた光電変換層5の表面には、図2に示すように、光電変換層5と交わることなく、光電変換層5の表面と境界線により区切られたGeO2膜10が形成され得る。因みに、図2は、酸化温度550[℃]で光電変換層5の表面を熱酸化させて形成したGeO2膜10と、光電変換層(Ge層)5との界面のTEM写真を示す。
【0027】
(1−2)各種検証試験
次に、酸化温度と、界面準位密度との関係について検証試験を行ったところ、図3に示すような結果が得られた。実際上、この検証試験では、4つのGeウェハを用意し、これらGeウェハをそれぞれ450[℃]、500[℃]、550[℃]又は575[℃]の異なる酸化温度で、ドライO2ガス100%により熱酸化し、GeO2膜10を光電変換層5表面に形成した。次いで、各光電変換層5とGeO2膜10との間の界面について、これらをGeO2/GeMOSコンデンサとして、低温コンダクタンス法により界面準位密度を調べたところ、図3に示すような結果が得られた。
【0028】
図3から、酸化温度を450[℃]とした場合、光電変換層5とGeO2膜10との間の最も低い界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下になることが確認できた。また、酸化温度を575[℃]まで上げた場合には、光電変換層5とGeO2膜10との間の界面準位密度が全エネルギーで1012[eV-1cm-2]以下になり、最も低い界面電位密度が1011[eV-1cm-2]以下になることが確認できた。そして、酸化温度を上げてゆくことで、光電変換層5とGeO2膜10との間の界面準位密度が、次第に低くなることが確認できた。
【0029】
次に、パッシベーション処理において酸化温度550[℃]でGeO2膜10を光電変換層5の表面に形成した本発明による光電変換素子2について、暗電流と光電流とを測定したところ、図4に示すような結果が得られた。図4において、上方の波形は、0[dBm]で波長1550[nm]のレーザ光を光電変換素子2の光電変換層5に入射させたときの光電流の測定結果を示し、下方の波形は、光を照射していないときの暗電流の測定結果を示す。
【0030】
因みに、この光電変換素子2は、n+Ge層7の底面と、p-Ge層6と、の接合面積Area(図1参照)を105[μm2]とした。図4から、この光電変換素子2は、n+Ge層7の底面と、p-Ge層6との接合面積Areaが105[μm2]であるにもかかわらず、100[nA]未満という低い暗電流を示した。このように本発明による光電変換素子2は、暗電流が低減し得、±1[V]で測られるダイオードのIon/Ioff比率がおよそ107となった。そして、このような結果は、これまで報告された値と比較して最も高い値である。
【0031】
また、この光電変換素子2に波長1550[nm]のレーザ光を照射することで得られた光電流の結果から、0.5[A/W]の応答度が確認できた。因みに、図4において、‐2[V]まで逆電圧を光電変換素子2に印加しても暗電流に変化がないことは、気相ドーピング法によって形成されたn+/p接合がほとんど欠陥を有していないことを表している。
【0032】
次に、パッシベーション処理において酸化温度550[℃]でGeO2膜10を光電変換層5上に形成した本発明による光電変換素子2について、光電変換層5に-1[V]を印加した状態で、p-Ge層6とn+Ge層7の底面との接合面積Area(図1)と、暗電流との関係について調べたところ、図5に示すような結果が得られた。また、ここで暗電流Idarkと、接合面積Areaとを用いて、図5に示す数式から、接合電流密度Jbulkと、表面電流密度Jsurfとを算出したところ、接合電流密度Jbulkが0.032[mA/cm2]、表面電流密度Jsurfが0.27[A/cm]であった。
【0033】
0.032[mA/cm2]という接合電流密度Jbulkは、これまで報告されているGeからなる光電変換素子の中で最も低い値の1つである。また、表面電流密度Jsurfの値も、文献1(H.Y.Yu,S.Ren,W.S.Jung,A.B.Miller,and
K.C.Saraswat,IEEE Electron Dev Letts.,vol.30,pp.1161,2009)、及び文献2(T.H.Loh,H.S.Nguyen,R.Murthy,M.B.yu,W.Y,Loh,G.Q.Lo,N.Balasubramanian,and D.L.Kwong,Appl.Phys.Lett.,vol.91,073503,2007)で報告されたものより、2桁小さいものであることが確認できた。
【0034】
また、接合面積Areaを小さくした導波路型の光検出器に用いる光電変換素子について、表面電流密度Jsurfを本結果から推定することができるが、接合面積Areaが100[μm2]未満の場合は、1[nA]未満の表面電流密度Jsurfにできることが分かった。
【0035】
ここで、本発明による光電変換素子2の暗電流低減が、従来の光電変換素子とどの程度異なるかを検証するため、比較例1の光電変換素子と、比較例2の光電変換素子とを用意した。図1との対応部分に同一符号を付して示す図6に示すように、比較例1の光電変換素子100は、上述した気相ドーピング法を用いて、600[℃]でp-Ge層6の表面一部にn+Ge層7を形成した。また、比較例1の光電変換素子2では、温度350[℃]、希釈シランガスでプラズマCVD法により、p-Ge層6及びn+Ge層7の面一の表面にパッシベーション膜としてSiO2層101を形成した。なお、この光電変換素子100には、n+Ge層7上のSiO2層101を一部除去し、露出させたn+Ge層7上にNiからなる電極9を設けた。
【0036】
一方、これとは別に、比較例2として、気相ドーピング法を用いずに、n+Ge層をイオン注入により形成した光電変換素子を用意した。実際上、この比較例2の光電変換素子では、所定形状のSiO2マスクにて、n+Ge層が形成される接合形成予定部のみp-Ge層表面を露出させた状態とし、露出したp-Ge層表面に10[eV]でリンをイオン注入した後、10[S]、600[℃]でRTA(Rapid Thermal Annealing)処理して、当該p-Ge層表面にn+Ge層を形成した。なお、比較例2の光電変換素子は、SiO2層101の形成等については比較例1の光電変換素子と同じとした。
【0037】
これら比較例1及び比較例2について、光を照射していないときの暗電流をそれぞれ測定したところ、図7に示すような結果が得られた。図7では、比較例1の測定結果を点線で示し、比較例2の測定結果を実線で示している。図7から、比較例1及び比較例2のいずれにおいても、本発明による光電変換素子2よりも暗電流が大きく、本発明による光電変換素子2は、比較例1の光電変換素子100や、比較例2の光電変換素子よりも、暗電流を低減できることが確認できた。
【0038】
(1−3)動作及び効果
以上の構成において、光電変換素子2では、Geからなる光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、光電変換層5及びGeO2膜10間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、光電変換層5の暗電流を低減させたり、或いは、表面再結合を抑制し得、光電変換機能を用いた各種機器の性能を従来よりも向上し得る。
【0039】
例えば、本発明による光電変換素子2を用いた光検出器1では、光電変換層5の表面にてトラップ準位アシスト電流を大幅に抑制し得、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも格段に低減でき、その結果、光電変換層5に微弱光が照射されても、暗電流が低減されている分だけ、当該微弱光に応じて生成された僅かな電気信号をも検知し得る。かくして、光検出器1では、光電変換層5にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出性能を向上し得る。
【0040】
(2)第2の実施の形態
図1との対応部分に同一符号を付して示す図8において、21は第2の実施の形態による光検出器を示し、上述した第1の実施の形態による光検出器1とは異なる構成の垂直入射型の光電変換素子22を用いている。実際上、この光電変換素子22は、n-Geからなる光電変換層23の表面に、Ni又はAl等の金属部材からなる第1電極25a及び第2電極25bが設けられている。
【0041】
かかる構成に加えて、光電変換層23の表面には、これら第1電極25a及び第2電極25b以外の領域にGeO2膜26が形成されている。ここでも、光電変換層23の表面と、GeO2膜26との間の界面は、境界準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されており、光電変換層23にてトラップ準位アシスト電流の発生が抑制され得るようになされている。これにより、光電変換層23は、表面でのトラップ準位アシスト電流の発生が抑制されることで、表面リーク電流による暗電流の発生を低減し得るようになされている。
【0042】
ここで、光電変換素子22には、印加手段13により第1電極25a及び第2電極25b間に逆バイアスが印加され得るようになされている。光電変換素子22は、光電変換層23の上方から光が入射されると、当該光がGeO2膜26を透過して当該光電変換層23に到達し得る。これにより光電変換素子22は、光電変換層23にてキャリアが発生し、この際、第1電極25a及び第2電極25b間に逆バイアスが印加されていることで、光電変換層23にて発生したキャリアにより電気信号を生成し得る。かくして光検出器21は、出力検知手段3によって光電変換素子22にて生成される電気信号の検知の有無に基づいて、光電変換素子22に入射された光を検出し得るようになされている。
【0043】
以上の構成において、このような光電変換素子22を用いた光検出器21でも、光電変換層23の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生を抑制し得ることから、光電変換層23の表面で発生する表面リーク電流による暗電流を従来よりも格段に低減し得、その結果、光電変換層23にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出器21の光検出性能を向上し得る。
【0044】
(3)第3の実施の形態
図9において、31は、導波路型の光電変換素子32を用いた光検出器を示し、上述した実施の形態とは光電変換素子32の構成が異なるものである。なお、図9は、紙面奥側に向かう導波方向に沿って延びる導波路型の光電変換素子32において、この光電変換素子32の受光面断面を示す。
【0045】
実際上、この光電変換素子32は、導波方向に延びる帯状のSiからなる基板33上に、SiO2層34を介在させて同じく導波方向に延びる光電変換層35が設けられている。光電変換層35は、SiO2層34の表面に形成されたp型Siでなるp-Si層36と、このp-Si層36の表面一部に形成されたn型Geでなるn-Ge層37とから構成されており、n-Ge層37の断面で光を受光し得るようになされている。
【0046】
かかる構成に加えて、この光電変換層35には、n-Ge層37を取り囲むようにGeO2膜39が形成されている。これにより光電変換層35は、n-Ge層37周辺のp-Si層36の表面からn-Ge層37の側面にかけてもGeO2膜39に覆われ、n-Ge層37及びGeO2膜39間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されており、n-Ge層37の表面からp-Si層36の表面にかけてトラップ準位アシスト電流の発生が抑制され得るようになされている。
【0047】
光電変換層35は、n-Ge層37に図示しない電極を介して配線12が接続された構成を有し、当該配線12が出力検知手段3を経由してp-Si層36に接続されている。因みに、光電変換素子32には、印加手段13によりn-Ge層37及びp-Si層36間に逆バイアスが印加されており、この状態で光電変換層35に光が入射されると、光電変換層35にてキャリアが発生して電気信号を生成し得る。かくして光検出器31は、出力検知手段3によって光電変換素子32にて生成される電気信号の検知の有無に基づいて、光電変換素子32に入射された光を検出し得るようになされている。
【0048】
以上の構成において、光電変換素子32では、光電変換層35のp-Si層36の表面からn-Ge層37の表面にかけてGeO2膜39を形成し、p-Si層36及びGeO2膜39間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、n-Ge層の側面からp-Si層36の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生を大幅に抑制し、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも格段に低減し得る。かくして、このような光電変換素子32でも、光電変換層35にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出器31の光検出性能を向上し得る。
【0049】
(4)第4の実施の形態
図9との対応部分に同一符号を付して示す図10において、41は導波路型の光電変換素子42を用いた光検出器を示し、上述した実施の形態とは光電変換素子42の構成が異なるものである。なお、図10も、紙面奥側に向かう導波方向に沿って延びる光電変換素子42の受光面断面を示す。
【0050】
実際上、この光電変換素子42は、導波方向に延びる帯状のSiの基板33上に、SiO2層34及びp-Si層36を順次介して光電変換層43が設けられている。光電変換層43は、p-Si層36の表面に形成されたi-Ge層45と、このi-Ge層45の表面一部に形成されたn-Ge層46と、このi-Ge層45の表面一部に形成されn-Ge層46と所定間隔をあけて形成されたp-Ge層47とから構成されており、導波方向に照射される光を、同じく導波方向に延びるi-Ge層45にて受光し得るようになされている。
【0051】
かかる構成に加えて、この光電変換層43は、i-Ge層45、n-Ge層46及びp-Ge層47を覆うようにしてGeO2膜49が形成されており、i-Ge層45及びGeO2膜49間と、n-Ge層45及びGeO2膜49間と、p-Ge層47及びGeO2膜49間の各界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されている。
【0052】
このように光電変換素子42では、i-Ge層45、n-Ge層46及びp-Ge層47と、GeO2膜49との間の各界面が境界準位密度1012[eV-1cm-2]以下となるように形成されていることで、i-Ge層45やn-Ge層46、p-Ge層47の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生が抑制され得る。
【0053】
光電変換層43は、n-Ge層46に図示しない電極を介して配線12が接続され、当該配線12が出力検知手段3を経由して、図示しない電極を介してp-Ge層47に接続されており、出力検知手段3の印加手段13によって、これらn-Ge層46及びp-Ge層47間に逆バイアスが印加され得るようになされている。
【0054】
光電変換素子42は、光電変換層43に導波方向から光が入射されると、光電変換層43にてキャリアが発生し得、この際、印加手段13による逆バイアスが光電変換層43に印加されていることから、電気信号を生成し得る。かくして光検出器41は、出力検知手段3によって光電変換素子42にて生成される電気信号の検知の有無に基づいて、光電変換素子42に入射された光を検出し得るようになされている。
【0055】
以上の構成において、光電変換素子42では、光電変換層43のi-Ge層45の表面からp-Ge層46及びn-Ge層47の表面にかけてGeO2膜49を形成し、光電変換層43のi-Ge層45、n-Ge層46及びp-Ge層47とGeO2膜49との間の各界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、i-Ge層45、n-Ge層46及びp-Ge層47の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生を大幅に抑制し得、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも格段に低減できる。かくして、このような光電変換素子42でも、光電変換層43にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出器41の光検出性能を向上し得る。
【0056】
(5)第5の実施の形態
図9との対応部分に同一符号を付して示す図11において、51は導波路型の光電変換素子を用いた光検出器を示し、上述した実施の形態とは光電変換素子52の構成が異なるものである。なお、図11も、紙面奥側に向かう導波方向に沿って延びる光電変換素子52の受光面断面を示す。
【0057】
実際上、導波方向に延びる光電変換層55は、n-Geからなり、p-Si層36の表面に形成され、導波方向に照射される光を受光し得るようになされている。かかる構成に加えて、この光電変換層55には、Ni又はAl等の金属部材からなる第1電極56aと第2電極56bとが間隔をあけて表面に設けられており、これら第1電極56aと第2電極56bを除いた表面にGeO2膜59が形成されている。また、光電変換層55は、表面及びGeO2膜59間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下となるように形成され、表面にてトラップ準位アシスト電流の発生が抑制され得るようになされている。
【0058】
ここで光電変換層55は、第1電極56aに配線12が接続され、当該配線12が出力検知手段3を経由して第2電極56bに接続されており、出力検知手段3の印加手段13によって、これら第1電極56aと第2電極56b間に逆バイアスが印加され得るようになされている。
【0059】
光電変換素子52は、光電変換層55に導波方向から光が入射されると、光電変換層55にてキャリアが発生し得、この際、第1電極56aと第2電極56b間に逆バイアスが印加されていることで、電気信号を生成し得る。かくして光検出器51は、出力検知手段3によって光電変換素子52にて生成される電気信号の検知の有無を基に、光電変換素子52に入射された光を検出し得るようになされている。
【0060】
以上の構成において、光電変換素子52では、光電変換層55の表面にGeO2膜59を形成し、光電変換層55の表面とGeO2膜59との間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、光電変換層55の表面にてトラップ準位アシスト電流の発生を大幅に抑制し、表面リーク電流により発生する暗電流を従来よりも格段に低減し得る。かくして、このような光電変換素子52でも、光電変換層55にて微弱光を従来よりも検出できるようになり、光検出器51の光検出性能を向上し得る。
【0061】
(6)第6の実施の形態
図12において、61は太陽電池に用いられる本発明による光電変換素子を示し、光電変換層62の受光表面がGeO2膜68で覆われているとともに、光電変換層62の裏面がGeO2膜69で覆われた構成を有している。なお、この場合、太陽電池の全体図は省略し、光電変換素子61についてのみ説明する。
【0062】
実際上、この光電変換素子61の光電変換層62は、板状のGe層64と、このGe層64の裏面に形成されたn-Ge層66と、同じくGe層の裏面に形成されn-Ge層66と所定間隔をあけて配置されたp-Ge層67とで構成されており、Ge層64の裏面と対向する受光表面にて光を受光し得るようになされている。
【0063】
この実施の形態の場合、光電変換層62は、Ge層64、n-Ge層66及びp-Ge層67が面一に形成されており、これらGe層64、n-Ge層66及びp-Ge層67が面一に形成された裏面にGeO2膜69が形成されている。そして、光電変換層62は、Ge層64及びGeO2膜69間の界面準位密度と、n-Ge層66及びGeO2膜69間の界面準位密度と、p-Ge層67及びGeO2膜69間の界面準位密度とが、それぞれ1012[eV-1cm-2]以下に形成されており、裏面にてキャリアの表面再結合が抑制され得るようになされている。
【0064】
また、この光電変換層62は、裏面と対向する受光表面でも、当該受光表面及びGeO2膜68間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下に形成されており、受光表面にてキャリアの表面再結合が抑制され得るようになされている。このように、光電変換層62は、キャリアの表面再結合が抑制されていることから、受光表面及び裏面にてキャリアが再結合してしまうことで生じる発電電圧の損失を低減して、発電効率を向上し得るようになされている。
【0065】
因みに、この光電変換層62には、n-Ge層66及びp-Ge層67に図示しない電極を介して配線12が接続されており、n-Ge層66及びp-Ge層67間に逆バイアスが印加され得る。この際、光電変換素子61は、光電変換層62の受光表面側から光が照射されると、光がGeO2膜68を透過して光電変換層62に入射され、当該光電変換層62にてキャリアが発生し得、キャリアが発生し得ることにより電気信号を生成し得るようになされている。かくして太陽電池は、光電変換素子61により生成された電気信号を、光電変換素子61から配線12を介して電気蓄積手段等に送出し得るようになされている。
【0066】
以上の構成において、光電変換素子61では、光電変換層62の裏面及び受光表面の両面にそれぞれGeO2膜68,69を形成し、光電変換層62の裏面及びGeO2膜69間の界面準位密度と、光電変換層62の受光表面及びGeO2膜68間の界面準位密度とを、それぞれ1012[eV-1cm-2]以下としたことにより、光電変換層62の裏面及び受光表面にてキャリアの表面再結合を大幅に抑制し、その分だけ光電変換層62での発電電圧の損失を低減できる。かくして、この光電変換素子61では、光電変換の高効率化を実現し得、光電変換機能を用いた太陽電池の発電性能を従来よりも向上し得る。
【0067】
因みに、上述した実施の形態においては、光電変換層62の裏面及び受光表面の両面にそれぞれGeO2膜68,69を形成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、光電変換層62の裏面及び受光表面のいずれか片面にだけGeO2膜を形成するようにしてもよい。このような光電変換素子であっても、GeO2膜の形成面とGeO2膜との間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下とすることで、当該GeO2膜の形成面にてキャリアの表面再結合を抑制し得る。
【0068】
(7)他の実施の形態
なお、本発明は、本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、上述した実施の形態を組み合わせた構成であってもよい。また、上述した実施の形態においては、熱酸化により、例えば光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、光電変換層5及GeO2膜10間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下にするようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えばECR(Electron Cyclotron Resonance)プラズマにより光電変換層5の表面にGeO2膜10を形成し、光電変換層5及GeO2膜10間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下にするようにしてもよい。すなわち、本発明では、他の実施の形態においても、光電変換層及GeO2膜間の界面準位密度を1012[eV-1cm-2]以下にできれば、その他種々の方法にて光電変換層の表面にGeO2膜を形成してもよい。
【符号の説明】
【0069】
1,21,31,41,51 光検出器
2,22,32,42,52,61 光電変換素子
5,23,35,43,55,62 光電変換層
10,26,39,49,59 GeO2膜
6,47,67 p-Ge層(第2極性半導体層)
7,37,46,66 n-Ge層(第1極性半導体層)
36 p-Si層(第2極性半導体層)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Geを含む光電変換層と、前記光電変換層の表面に形成されたGeO2膜とを備え、
前記光電変換層及び前記GeO2膜間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下である
ことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記光電変換層は、p型又はn型の第1の極性からなる第1極性半導体層と、該第1極性半導体層とは逆極性のn型又はp型の第2の極性からなる第2極性半導体層とが隣接又は非隣接に配置され、
前記第1極性半導体層及び前記第2極性半導体層は、少なくともいずれか一方が前記Geからなる
ことを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記光電変換層は、前記第1極性半導体層と前記第2極性半導体層とが面一に配置され、前記面一の表面に前記GeO2膜が形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記光電変換層は、前記第2極性半導体層上に前記第1極性半導体層を備え、
前記GeO2膜は、前記第1極性半導体層を覆うように形成されているとともに、前記第2極性半導体層の表面から前記第1極性半導体層の側面にかけても形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項記載の光電変換素子と、
前記光電変換素子が光を受光することにより該光電変換素子から出力される出力信号を検知する出力検知手段と
を備えたことを特徴とする光検出器。
【請求項6】
光電変換素子が光を受光することにより該光電変換素子にて電気信号を生成する太陽電池であって、
前記光電変換素子が請求項1〜4のうちいずれか1項記載の光電変換素子である
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項7】
前記光電変換素子には、電極が配置された裏面と、光を受光する受光表面との両面に前記GeO2膜がそれぞれ形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の太陽電池。
【請求項1】
Geを含む光電変換層と、前記光電変換層の表面に形成されたGeO2膜とを備え、
前記光電変換層及び前記GeO2膜間の界面準位密度が1012[eV-1cm-2]以下である
ことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記光電変換層は、p型又はn型の第1の極性からなる第1極性半導体層と、該第1極性半導体層とは逆極性のn型又はp型の第2の極性からなる第2極性半導体層とが隣接又は非隣接に配置され、
前記第1極性半導体層及び前記第2極性半導体層は、少なくともいずれか一方が前記Geからなる
ことを特徴とする請求項1記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記光電変換層は、前記第1極性半導体層と前記第2極性半導体層とが面一に配置され、前記面一の表面に前記GeO2膜が形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記光電変換層は、前記第2極性半導体層上に前記第1極性半導体層を備え、
前記GeO2膜は、前記第1極性半導体層を覆うように形成されているとともに、前記第2極性半導体層の表面から前記第1極性半導体層の側面にかけても形成されている
ことを特徴とする請求項2記載の光電変換素子。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1項記載の光電変換素子と、
前記光電変換素子が光を受光することにより該光電変換素子から出力される出力信号を検知する出力検知手段と
を備えたことを特徴とする光検出器。
【請求項6】
光電変換素子が光を受光することにより該光電変換素子にて電気信号を生成する太陽電池であって、
前記光電変換素子が請求項1〜4のうちいずれか1項記載の光電変換素子である
ことを特徴とする太陽電池。
【請求項7】
前記光電変換素子には、電極が配置された裏面と、光を受光する受光表面との両面に前記GeO2膜がそれぞれ形成されている
ことを特徴とする請求項6記載の太陽電池。
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【公開番号】特開2013−58566(P2013−58566A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195441(P2011−195441)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人応用物理学会、「2011年春季 第58回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集」、05−083ページ、2011年3月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、さきがけ事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 社団法人応用物理学会、「2011年春季 第58回応用物理学関係連合講演会 講演予稿集」、05−083ページ、2011年3月9日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成23年度、独立行政法人科学技術振興機構、さきがけ事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】
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