説明

光電変換素子及び太陽電池

【課題】新規で酸化物半導体への吸着性が良く、光電変換効率が高い化合物(色素)を用いた光電変換素子及び太陽電池を提供することにある。
【解決手段】対向する一対の電極間に、少なくとも増感色素を半導体に担持してなる半導体層及び電荷輸送層が設けられている色素増感型の光電変換素子において、前記増感色素が下記一般式(1)で表される化合物を含有し、前記半導体層がアナターゼ型二酸化チタンを含有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規化合物(色素)を用いた光電変換素子及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無限で有害物質を発生しない太陽光の利用が精力的に検討されている。このクリーンエネルギー源である太陽光利用として現在実用化されているものは、住宅用の単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン及びテルル化カドミウムやセレン化インジウム銅等の無機系太陽電池が挙げられる。
【0003】
しかしながら、これらの無機系太陽電池の欠点としては、例えば、シリコン系では、非常に純度の高いものが要求され、当然精製の工程は複雑でプロセス数が多く、製造コストが高いことが挙げられる。
【0004】
その一方で、有機材料を使う太陽電池も多く提案されている。有機太陽電池としては、p型有機半導体と仕事関数の小さい金属を接合させるショットキー型光電変換素子、p型有機半導体とn型無機半導体、あるいはp型有機半導体と電子受容性有機化合物を接合させるヘテロ接合型光電変換素子等があり、利用される有機半導体は、クロロフィル、ペリレン等の合成色素や顔料、ポリアセチレン等の導電性高分子材料、またはそれらの複合材料等である。これらを真空蒸着法、キャスト法、またはディッピング法等により、薄膜化し電池材料が構成されている。有機材料は低コスト、大面積化が容易等の長所もあるが、変換効率は1%以下と低いものが多く、また耐久性も悪いという問題もあった。
【0005】
こうした状況の中で、良好な特性を示す太陽電池がスイスのグレッツェル博士らによって報告された(非特許文献1参照)。提案された電池は色素増感型太陽電池であり、ルテニウム錯体で分光増感された酸化チタン多孔質薄膜を作用電極とする湿式太陽電池である。この方式の利点は酸化チタン等の安価な金属化合物半導体を高純度まで精製する必要がないこと、従って安価で、さらに利用できる光は広い可視光領域にまでわたっており、可視光成分の多い太陽光を有効に電気へ変換できることである。
【0006】
反面、資源的制約があるルテニウム錯体が使われているため、この太陽電池が実用化された場合に、ルテニウム錯体の供給が危ぶまれている。また、このルテニウム錯体は高価なことと、経時での安定性に問題があり、安価で安定な有機色素へ変更することができれば、この問題は解決できる。
【0007】
この色素としてローダニン骨格含有アミン構造を有する化合物を用いると光電変換効率が高い素子が得られることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、これらの色素を用いた場合でも、ルテニウム錯体を用いた場合に比べ変換効率が低く、さらに光電変換効率が高い増感色素が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−123033号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B.O’Regan,M.Gratzel,Nature,353,737(1991)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、新規で酸化物半導体への吸着性が良く、光電変換効率が高い化合物(以下、増感色素又は単に色素とも云う)と特定の酸化物半導体を用いた高効率、高耐久性の光電変換素子及び太陽電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0012】
1.対向する一対の電極間に、少なくとも増感色素を半導体に担持してなる半導体層及び電荷輸送層が設けられている色素増感型の光電変換素子において、前記増感色素が下記一般式(1)で表される化合物を含有し、前記半導体層がアナターゼ型二酸化チタンを含有することを特徴とする光電変換素子。
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Arは各々置換または無置換の、アリーレン基または複素環基を表す。R、Rは各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R、R、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Rは水素原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。RはXで置換した、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Xは酸性基を表し、mは1以上の整数を表す。m≧2の場合、Xは同じでも異なってもよい。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
2.前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする前記1に記載の光電変換素子。
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、Arは各々置換または無置換の、アリーレン基または複素環基を表す。R、Rは各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R、R、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Rは水素原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Yは硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を表し、Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
3.前記一般式(2)で表される化合物のYが硫黄原子であることを特徴とする前記2に記載の光電変換素子。
【0017】
4.前記一般式(2)で表される化合物のRが水素原子であることを特徴とする前記3に記載の光電変換素子。
【0018】
5.前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする前記2に記載の光電変換素子。
【0019】
【化3】

【0020】
(式中、R、Rは水素原子、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、n8、n9は1〜5の整数を表す。n8、n9≧2の場合は、R、Rは同じでも異なってもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
6.前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする前記2に記載の光電変換素子。
【0021】
【化4】

【0022】
(式中、R、R10は水素原子、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、n9、n10はそれぞれ1〜5、1〜8の整数を表す。n9、n10≧2の場合、R、R10は同じでも異なってもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
7.前記増感色素として、前記一般式(1)〜(4)で表される化合物から選ばれた複数の化合物を含有することを特徴とする前記1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0023】
8.前記一般式(1)において、Xで表わされる酸性基がカルボン酸基であることを特徴とする前記1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0024】
9.前記アナターゼ型二酸化チタンが水熱法又は気相法により合成された酸化チタンであることを特徴とする前記1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【0025】
10.前記1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、新規で酸化物半導体への吸着性が良く、光電変換効率が高い化合物(色素)を用いた光電変換素子及び太陽電池を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に用いられる光電変換素子の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
前述のように、従来、ローダニン骨格含有アミン構造を有する化合物は光電変換効率が高い色素として知られているが、これらの色素は前述のルテニウム錯体色素に比べ変換効率が劣り、さらなる改善が求められている。
【0029】
本発明者らは、イミダゾロン骨格含有アミン構造を有する化合物を検討したところ、これを用いた光電変換素子は光電変換効率が高いことが分かった。この新しい色素は、従来のローダニン骨格含有アミン構造を有する化合物より、分子吸光係数が高いこと、色素分子中の電子アクセプター部分(イミダゾロン骨格部分)の電気陰性度が高いため、色素分子の酸性基(X)の求核性が強まり、半導体表面の金属分子に結合または配位しやすくなり光電変換効率が向上したものと推定している。また、本発明に係る一部の増感色素分子は分子間相互作用により凝集が発達して吸収波長が長波シフトし、また吸着色素量が増加することにより、より多くの波長の光を吸収していることも光電変換効率向上の要因として推定している。
【0030】
一方、多孔質半導体層を構成する金属酸化物の微粒子の純度、種類によって、微粒子間の接着、多孔度、表面積、結晶性などが変わることで電子伝導性に影響し、さらに色素の吸着量、配列、安定性などにも影響があると考えられる。
【0031】
本発明者らが検討したところ、多孔質半導体層を構成する金属酸化物微粒子がアナターゼ型二酸化チタンを含む場合にはより光電変換効率が高く、安定動作性高くなり、本願の色素と組み合わせることで、より高効率で、高耐久な光電変換素子が得られることが分かった。
【0032】
この理由としては、アナターゼ型二酸化チタンは粒子表面活性が高く、色素分子間相互作用による凝集がより発達し易く、より多くの波長の光を吸収するとともに、活性ガス、光等による分解性を抑制していることが、光電変換効率向上と安定動作性向上の要因として推定している。特に、水熱法或いは気相法により合成されたアナターゼ型二酸化チタンは、酸化チタンの純度が高い粒子が得られ好ましく、アナターゼ型二酸化チタンの含有比率を高く出来る水熱法がより好ましく用いられる。
【0033】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0034】
〔光電変換素子〕
本発明の光電変換素子について、図により説明する。
【0035】
図1は、本発明の光電変換素子の一例を示す断面図である。
【0036】
図1に示すように、基板1、1′、透明導電膜2、7、半導体3、増感色素4、電荷輸送層5、隔壁9等から構成されている。
【0037】
本発明の光電変換素子は、透明導電膜2を付けた基板1(導電性支持体とも言う。)上に、半導体3の粒子を焼結して形成した空孔を有する半導体層を有し、その半導体表面に色素4を吸着させたものが用いられる。対向する一対の電極の内の一つの電極6としては、基板1′上に透明導電膜7が形成され、その上に白金8を蒸着したものが用いられ、両電極間には電荷輸送層5として電荷輸送物質が充填されている。透明導電膜2及び7に端子を付けて光電流を取り出す。
【0038】
本発明は、新規化合物(色素)、及びそれを用いた光電変換素子及び太陽電池に関するものである。
【0039】
《一般式(1)で表される化合物》
以下に、前記一般式(1)で表される化合物について説明する。
【0040】
一般式(1)において、Arは各々置換または無置換の、アリーレン基または複素環基を表す。R、Rは各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R、R、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Rは水素原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。RはXで置換した、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Xは酸性基を表し、mは1以上の整数を表す。m≧2の場合、Xは同じでも異なってもよい。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
【0041】
Arで表されるアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基等が挙げられ、複素環基としては、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、モルホニル基等が挙げられる。
【0042】
、Rで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、アリル基等が挙げられ、アルキニル基としては、プロパルギル基、3−ペンチニル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等が挙げられ、複素環基としては、フラニル基、チエニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、モルホニル基等が挙げられる。
【0043】
で表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等が挙げられ、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基等が挙げられる。
【0044】
、R、Rで表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基としては、R、Rで挙げた基と同義である。
【0045】
で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられ、アルキルセレノ基としては、メチルセレノ基、エチルセレノ基、プロピルセレノ基、ブチルセレノ基、ヘキシルセレノ基等が挙げられ、アミノ基としては、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロポエンチルアミノ基等が挙げられる。上記Rで表されるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基にXが置換する。
【0046】
Xは酸性基を表し、酸性基としては、カルボキシル基、スルホ基、スルフィノ基、スルフィニル基、ホスホリル基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホニル基、スルホニル基、及び、それらの塩等が挙げられ、カルボキシル基、スルホニル基が好ましい。
【0047】
置換基としては、アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、アリル基等)、アリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等)、水酸基、アミノ基、チオール基、シアノ基、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等)または複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロチエニル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−テトラヒドロピラニル基等)が挙げられる。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
【0048】
《一般式(2)で表される化合物》
前記一般式(1)で表される化合物の中で、前記一般式(2)で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
【0049】
一般式(2)において、Arは各々置換または無置換の、アリーレン基または複素環基を表す。R、Rは各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R、R、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Rは水素原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Yは硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を表し、Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
【0050】
、Rで表されるハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基は、一般式(1)においてRで表されるハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基または複素環基と同義である。
【0051】
一般式(2)において、Ar、R、R、R、R、Xは、一般式(1)におけるAr、R、R、R、R、Xと同義である。
【0052】
前記一般式(2)で表される化合物のYが硫黄原子であることが好ましい。Yが硫黄原子であることにより、光電変換効率が高く好ましい。
【0053】
更に、前記一般式(2)で表される化合物のRが水素原子で表される化合物は、光電変換効率が高く好ましい。
【0054】
《一般式(3)で表される化合物》
前記一般式(2)で表される化合物が、前記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0055】
一般式(3)において、R、Rは水素原子、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、n8、n9は1〜5の整数を表す。n8、n9≧2の場合は、R、Rは同じでも異なってもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
【0056】
、Rで表される、アルキルチオ基としては、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、イソプロピルチオ基、ブチルチオ基、tert−ブチルチオ基、ヘキシルチオ基等が挙げられ、アルキルセレノ基としては、メチルセレノ基、エチルセレノ基、プロピルセレノ基、ブチルセレノ基、ヘキシルセレノ基等が挙げられ、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基としては、一般式(2)においてRで表されるハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基と同義である。
【0057】
一般式(3)において、R、R、R、Xは、一般式(2)におけるR、R、R、Xと同義である。
【0058】
《一般式(4)で表される化合物》
前記一般式(2)で表される化合物が、前記一般式(4)で表される化合物であることが好ましい。
【0059】
一般式(4)において、R、R10は水素原子、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、n9、n10はそれぞれ1〜5、1〜8の整数を表す。n9、n10≧2の場合、R、R10は同じでも異なってもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。
【0060】
10で表される、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基としては、一般式(3)においてRで表される、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、セレノアルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基と同義である。
【0061】
一般式(4)において、R、R、R、R、Xは、一般式(3)におけるR、R、R、R、Xと同義である。
【0062】
一般式(1)〜(4)で表される化合物の具体例を下記に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。後述の一覧において、部分構造の波線が付いている部分は、化学式で結合している結合部分を表す。
【0063】
【化5】

【0064】
【化6】

【0065】
【化7】

【0066】
【化8】

【0067】
【化9】

【0068】
【化10】

【0069】
【化11】

【0070】
【化12】

【0071】
【化13】

【0072】
【化14】

【0073】
【化15】

【0074】
【化16】

【0075】
【化17】

【0076】
【化18】

【0077】
【化19】

【0078】
【化20】

【0079】
【化21】

【0080】
【化22】

【0081】
【化23】

【0082】
【化24】

【0083】
【化25】

【0084】
【化26】

【0085】
【化27】

【0086】
【化28】

【0087】
【化29】

【0088】
【化30】

【0089】
【化31】

【0090】
【化32】

【0091】
【化33】

【0092】
【化34】

【0093】
【化35】

【0094】
【化36】

【0095】
【化37】

【0096】
【化38】

【0097】
【化39】

【0098】
【化40】

【0099】
【化41】

【0100】
【化42】

【0101】
【化43】

【0102】
【化44】

【0103】
【化45】

【0104】
【化46】

【0105】
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【0106】
【化48】

【0107】
【化49】

【0108】
【化50】

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【0110】
【化52】

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【0116】
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【0135】
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【化80】

【0139】
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【0140】
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【0148】
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【0149】
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【化100】

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【化101】

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【化120】

【0179】
【化121】

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【0184】
【化126】

【0185】
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【化129】

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【化130】

【0189】
【化131】

【0190】
【化132】

【0191】
【化133】

【0192】
【化134】

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【0194】
【化136】

【0195】
【化137】

【0196】
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【0197】
【化139】

【0198】
【化140】

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【化141】

【0200】
【化142】

【0201】
【化143】

【0202】
【化144】

【0203】
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【0204】
【化146】

【0205】
【化147】

【0206】
【化148】

【0207】
【化149】

【0208】
【化150】

【0209】
【化151】

【0210】
【化152】

【0211】
【化153】

【0212】
【化154】

【0213】
【化155】

【0214】
【化156】

【0215】
【化157】

【0216】
【化158】

【0217】
【化159】

【0218】
【化160】

【0219】
【化161】

【0220】
【化162】

【0221】
【化163】

【0222】
【化164】

【0223】
【化165】

【0224】
【化166】

【0225】
【化167】

【0226】
【化168】

【0227】
【化169】

【0228】
【化170】

【0229】
【化171】

【0230】
【化172】

【0231】
【化173】

【0232】
【化174】

【0233】
【化175】

【0234】
【化176】

【0235】
【化177】

【0236】
【化178】

【0237】
【化179】

【0238】
【化180】

【0239】
【化181】

【0240】
【化182】

【0241】
【化183】

【0242】
【化184】

【0243】
【化185】

【0244】
【化186】

【0245】
【化187】

【0246】
【化188】

【0247】
【化189】

【0248】
【化190】

【0249】
【化191】

【0250】
【化192】

【0251】
【化193】

【0252】
【化194】

【0253】
【化195】

【0254】
【化196】

【0255】
【化197】

【0256】
【化198】

【0257】
【化199】

【0258】
【化200】

【0259】
【化201】

【0260】
【化202】

【0261】
【化203】

【0262】
【化204】

【0263】
【化205】

【0264】
【化206】

【0265】
【化207】

【0266】
【化208】

【0267】
【化209】

【0268】
【化210】

【0269】
【化211】

【0270】
【化212】

【0271】
【化213】

【0272】
【化214】

【0273】
【化215】

【0274】
【化216】

【0275】
【化217】

【0276】
【化218】

【0277】
【化219】

【0278】
【化220】

【0279】
【化221】

【0280】
【化222】

【0281】
【化223】

【0282】
【化224】

【0283】
【化225】

【0284】
【化226】

【0285】
【化227】

【0286】
【化228】

【0287】
【化229】

【0288】
【化230】

【0289】
【化231】

【0290】
【化232】

【0291】
【化233】

【0292】
【化234】

【0293】
【化235】

【0294】
【化236】

【0295】
【化237】

【0296】
【化238】

【0297】
【化239】

【0298】
【化240】

【0299】
【化241】

【0300】
【化242】

【0301】
【化243】

【0302】
【化244】

【0303】
【化245】

【0304】
【化246】

【0305】
【化247】

【0306】
一般式(1)〜(4)で表される色素(以下、本発明の色素ともいう)は、一般的な合成法により合成することができるが、中でも、特開平7−5709号公報、同7−5706号公報等に記載の方法を用いて合成することができる。
【0307】
《合成例》
合成例1(色素1の合成)
アルデヒド(化合物A)を、2.5当量のdiethyl benzhydrylphosphonate、3当量のK−OtBuのDMF溶液に加え、120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Bを得た。
【0308】
化合物Bのトルエン溶液に、1.5当量のオキシ塩化リン、3当量のDMFを加え、60℃で1時間攪拌した。反応液に冷水を加え、室温にて1時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Cを得た。
【0309】
化合物C、チオヒダントイン1.2当量、酢酸アンモニウム3当量を加えた酢酸溶液を120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Dを得た。
【0310】
化合物Dのエタノール溶液に、1.05当量のブロモ酢酸、3当量の水酸化カリウムを加え、70℃で1時間攪拌した。ロータリーエバポレータにて濃縮乾固した後、水、酢酸エチルを加え分液ロートにて有機層を除去した。水層に1mol/l塩酸を過剰量加え5分間攪拌した後、酢酸エチルにて抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し色素1を得た。
【0311】
色素1は、核磁気共鳴スペクトル及びマススペクトルで構造を確認した。
【0312】
【化248】

【0313】
合成例2(色素32の合成)
下記スキームにより、色素32を合成した。
【0314】
【化249】

【0315】
DMFに3当量のオキシ塩化リンを滴下し室温にて30分攪拌した後、p−メトキシトリフェニルアミンのDMFを0℃で滴下し、室温にて3時間攪拌した。反応液に冷水を加え、室温にて1時間攪拌した後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Eを得た。
【0316】
化合物E、ジエチルフェニル(p−トリル)メチルホスホネート1.05当量のDMF溶液を0℃に冷却し、ナトリウムメトキシド1.1当量を加え3時間攪拌した。反応液に0.1mol/l塩酸水溶液を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Fを得た。
【0317】
化合物F、チオヒダントイン1.2当量、酢酸アンモニウム3当量を加えた酢酸溶液を120℃で1時間攪拌した。反応液に水を加えた後、酢酸エチルで抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し化合物Gを得た。
【0318】
化合物Gのエタノール溶液に、1.1当量のブロモ酢酸、3当量の水酸化カリウムを加え、70℃で1時間攪拌した。ロータリーエバポレータにて濃縮乾固した後、水、酢酸エチルを加え分液ロートにて有機層を除去した。水層に1mol/l塩酸を過剰量加え5分間攪拌した後、酢酸エチルにて抽出、水洗、硫酸マグネシウムで乾燥後、ロータリーエバポレータにて濃縮乾固し、シリカカラムで処理し色素32を得た。
【0319】
色素32は、核磁気共鳴スペクトル及びマススペクトルで構造を確認した。
【0320】
【化250】

【0321】
他の化合物も同様にして合成することができる。
【0322】
このようにして得られた本発明の色素を半導体に担持させることにより増感し、本発明に記載の効果を奏することが可能となる。ここで、半導体に色素を担持させるとは、半導体表面への吸着、半導体が多孔質等のポーラスな構造を有する場合には、半導体の多孔質構造に前記色素を充填する等の種々の態様が挙げられる。
【0323】
また、半導体層(半導体でもよい)1m当たりの本発明の色素の総担持量は0.01〜100ミリモルの範囲が好ましく、さらに好ましくは0.1〜50ミリモルであり、特に好ましくは0.5〜20ミリモルである。
【0324】
本発明の色素を用いて増感処理を行う場合、色素を単独で用いてもよいし、複数を併用してもよく、また他の化合物(例えば、米国特許第4,684,537号明細書、同4,927,721号明細書、同5,084,365号明細書、同5,350,644号明細書、同5,463,057号明細書、同5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2000−150007号公報等に記載の化合物)と混合して用いることもできる。
【0325】
特に、本発明の光電変換素子の用途が後述する太陽電池である場合には、光電変換の波長域をできるだけ広くして太陽光を有効に利用できるように吸収波長の異なる二種類以上の色素を混合して用いることが好ましい。
【0326】
半導体に本発明の色素を担持させるには、適切な溶媒(エタノール等)に溶解し、その溶液中によく乾燥した半導体を長時間浸漬する方法が一般的である。
【0327】
本発明の色素を複数種併用したり、その他の色素を併用したりして増感処理する際には、各々の色素の混合溶液を調製して用いてもよいし、それぞれの色素について別々の溶液を用意して、各溶液に順に浸漬して作製することもできる。各色素について別々の溶液を用意し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体に色素等を含ませる順序がどのようであっても本発明に記載の効果を得ることができる。また、前記色素を単独で吸着させた半導体の微粒子を混合する等することにより作製してもよい。
【0328】
また、本発明に係る半導体の増感処理の詳細については、後述する光電変換素子のところで具体的に説明する。
【0329】
また、空隙率の高い半導体の場合には、空隙に水分、水蒸気等により水が半導体薄膜上、並びに半導体薄膜内部の空隙に吸着する前に、色素等の吸着処理を完了することが好ましい。
【0330】
次に本発明の光電変換素子について説明する。
【0331】
〔光電変換素子〕
本発明の光電変換素子は、導電性支持体上に、少なくとも半導体に本発明の色素を担持させてなる半導体層、電荷輸送層及び対向電極を有する。以下、導電性支持体(基板、透明導電膜)、半導体層、電荷輸送層、対向電極について順次説明する。
《基板》
基板1は、光入射方向の側に設けられ、光電変換素子の光電変換効率の観点から、光透過率が10%以上であることが好ましく、更に好ましくは50%以上であり、特に80%〜100%であることが好ましい。
【0332】
光透過率とは、JIS K 7361−1(ISO 13468−1に対応)の「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に準拠した方法で測定した可視光波長領域における全光線透過率をいう。
【0333】
基板としては、その材料、形状、構造、厚み、硬度等については公知のものの中から適宜選択することができるが、上記のように高い光透過性を有していることが好ましい。
【0334】
基板としては、例えば、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリビニルブチラール(PVB)等のポリビニルアセタール樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができる。これらの樹脂フィルムの他に無機ガラスフィルムを基板として用いてもよい。
【0335】
可視域の波長(380〜780nm)における透過率が80%以上であるガラスや樹脂フィルムであれば、本発明に特に好ましく適用することができる。
【0336】
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度およびコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
【0337】
これらの基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。
【0338】
表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。
【0339】
また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
【0340】
基板の厚さとしては、1〜1000μmが好ましく、さらに10〜200μmであることが好ましい。
《透明導電膜》
透明導電膜2(透明導電層ともいう)について説明する。
【0341】
透明導電膜2は、基板1の光入射方向9に対して反対側となる一方の面上に設けられる。
【0342】
透明導電膜2を形成する材料の例としては、金属(例えば、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム)あるいは透明導電性金属酸化物を用いることが好ましく、例えば、SnO、CdO、ZnO、CTO系(CdSnO、CdSnO、CdSnO)、In、CdIn等が挙げられる。
【0343】
金属として好ましくは、銀が挙げられ、光透過性を持たせるために、開口部を持つグリッドパターニングされた膜、あるいは微粒子やナノワーヤーを分散し塗布した膜が好ましく用いられる。
【0344】
透明導電性金属酸化物として好ましくは、上記の金属酸化物に、Sn、Sb、F及びAlから選ばれる1種または2種以上を添加した複合(ドープ)材料が挙げられる。
【0345】
中でも好ましいのは、SnをドープしたIn(ITO)、SbをドープしたSnO、FをドープしたSnO(FTO)等の導電性金属酸化物が好ましく用いられ、耐熱性の点からFTOが最も好ましい。
《導電性支持体》
上記の基板1と透明導電膜2とから導電性支持体が形成される。
【0346】
尚、導電性支持体(基板1と透明導電層2からなる)の膜厚としては、0.05mm〜5mmの範囲が好ましい。また、導電性支持体の表面抵抗は、50Ω/cm以下であることが好ましく、更に好ましくは、10Ω/cm以下である。
【0347】
尚、透明導電性支持体の光透過率の好ましい範囲は、上記基板1の光透過率の好ましい範囲と同義である。
【0348】
《バリヤ層》
電荷輸送層として固体電荷輸送剤やホール輸送剤を用いる場合には、短絡防止手段として、膜状(層状)をなし、透明導電膜2と電荷輸送層5との間に位置して、バリヤ層が設けられることが好ましい。図1には、バリヤ層の図示はないが、図1の透明導電膜2の上にバリヤ層を設け、該バリヤ層の上に半導体層、電荷輸送層を設けることが好ましい。このバリヤ層は、半導体層の空孔率より、その空孔率が小さくなるよう形成されたものである。
【0349】
光電変換素子を製造する際には、電荷輸送層を塗布法により、半導体層の上面に塗布することが行われる。この場合、仮に、バリヤ層が設けられない太陽電池では、半導体の空孔率を大きくすると、電荷輸送層材料が半導体の孔内を浸透していき、透明導電膜2に到達してしまうことがある。すなわち、バリヤ層を有さない太陽電池では、透明導電膜と電荷輸送層との間で接触(短絡)が生じることにより、漏れ電流が多くなり、発電効率(光電変換効率)の低下を招く場合がある。
【0350】
これに対し、バリヤ層が設けられた光電変換素子では、前述のような不都合が防止され、発電効率の低下が好適に防止または抑制される。
【0351】
また、バリヤ層の空孔率をC[%]とし、半導体層の空孔率をD[%]としたとき、D/Cが、例えば、1.1以上程度であるのが好ましく、5以上程度であるのがより好ましく、10以上程度であるのがさらに好ましい。これにより、バリヤ層と半導体層とは、それぞれ、それらの機能をより好適に発揮することができる。
【0352】
より具体的には、バリヤ層の空孔率Cとしては、例えば、20%以下程度であるのが好ましく、5%以下程度であるのがより好ましく、2%以下程度であるのがさらに好ましい。すなわち、バリヤ層は、緻密層であるのが好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
【0353】
バリヤ層の平均厚さ(膜厚)としては、例えば、0.005〜10μm程度であるのが好ましく、0.01〜0.5μm程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果をより向上することができる。
【0354】
このバリヤ層の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、亜鉛、ニオブ、スズ、チタン、バナジウム、インジウム、タングステン、タンタル、ジルコニウム、モリブデン、マンガン、鉄、銅、ニッケル、イリジウム、ロジウム、クロム、ルテニウムまたはその酸化物、また、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、ニオブ酸ストロンチウムのようなペロブスカイト、あるいはこれらの複合酸化物または酸化物混合物、ZnS、CdS、CdSe、TiC、Si、SiC、BNのような各種金属化合物等の1種または2種以上の組み合わせなども使用することができる。また、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物、フラーレン誘導体、ポリチオフェン等の有機物質等も使用することができ、これらや上記金属酸化物等との1種または2種以上の組み合わせなども使用することができる。特に電荷輸送層がp型半導体の場合、バリヤ層に金属を使用する場合には電荷輸送層よりも仕事関数の値が小さく、ショットキー型の接触をするものが用いられる。またバリヤ層に金属酸化物を用いる場合には、透明導電層とオーミックに接触し、かつ伝導帯のエネルギー準位が多孔質半導体層4よりも低いところにあるものが好ましい。このとき、酸化物を選択することで多孔質半導体層からバリヤ層への電子移動効率を向上させることもできる。
【0355】
この中でも、半導体層と同等の電気伝導性を有するものであるのが好ましく、特に、酸化チタンを主とするものがより好ましい。
【0356】
《半導体層》
《半導体》
半導体層に用いられる半導体として、本願発明では、アナターゼ型二酸化チタンを用いる。
【0357】
酸化チタン粒子は、結晶形としては、アナターゼ形、ルチル形、ブルッカイト形及びアモルファス形等があるが、本願発明では、アナターゼ形酸化チタンを用いる。
【0358】
本願発明では、アナターゼ型二酸化チタン以外の金属カルコゲニド(スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム等の金属酸化物、硫化物、セレン化物)や金属窒化物等を併用することもできるが、併用した場合でも、主たる半導体はアナターゼ型二酸化チタンであることが必要である。
《アナターゼ型二酸化チタンの合成法》
二酸化チタンの一般的な製造方法としては硫酸法(液相法)と塩素法(気相法)とが知られており、硫酸法(液相法)では硫酸チタニルや塩基性硫酸チタンを中和または熱加水分解することによって得られた二酸化チタン水和物をさらに水洗、乾燥、焼成することによって二酸化チタンが得られる。例えば、硫酸水溶液中にイルメナイト(FeO・TiO)を溶解し、得られた溶液を95℃を超える温度で加水分解して含水酸化チタン(TiO・xHO)を形成し、該含水酸化チタンを800〜1000℃で、か焼し、該含水酸化チタンを微粉砕して所望の相のチタニアを形成する工程を含むものである。
【0359】
しかしながら、硫酸法でチタニア粉末を製造する場合には、多くの問題点が生じる。例えば、か焼した含水酸化チタニウム沈殿物を微粉砕する際に、多くの不純物が混入する。この様な汚染によって、最終生成物の性質が大きく劣化する。更に、微粉砕工程において、粒子形状、粒径、粒径分布等の粒子の性質を制御することができない。従って、微粉砕された粒子は、不規則な形状で種々の粒径を有するものとなり、成形物の密度の低下を生じる。
【0360】
デュポン(Du Pont)によって開発された塩素法(気相法)は、天然のルチル鉱石又は合成ルチル(純度90%)を高温でHClガスと反応させて四塩化チタンを形成し、四塩化チタンを酸化分解するか、または四塩化チタン水溶液を熱加水分解して得られた二酸化チタン水和物をさらに水洗、乾燥、焼成することによって二酸化チタンが得られる。例えば、“酸化チタン 物性と応用技術” 清野学 著 技報堂出版(1991)等に記載の方法を用いて合成することができる。四塩化チタンを酸素または水蒸気のような酸化性ガスを用いて、約1000℃の反応条件下で酸化させると酸化チタン微粒子が得られる。
【0361】
この塩素法(気相法)によれば、高純度の二酸化チタンが得られる。しかしながら、結晶相として純粋なアナターゼのみを得ることは難しく、ルチルも混入してしまう。
【0362】
このような酸化チタン微粒子としては、P25,P90(日本アエロジル株式会社)、スーパータイタニアF6、F5,F4(昭和タイタニウム株式会社)等が知られている。
【0363】
さらに、最近は、上記方法以外に、オートクレーブを利用した二酸化チタン粒子の製造方法(水熱法)が活発に検討されている。この方法によれば、比較的温和な反応条件下で、アナターゼ結晶純度の高い粒子が得られる。
【0364】
本発明で用いられる金属半導体は水熱法または気相法により合成された金属酸化物粒子を含むことが望ましく、例えばTiO微粒子は下記のような合成法で得ることが出来る。
【0365】
水熱法
Coordination Chemistry Reviews 2004, 248, 1381−1389.、“色素増感太陽電池のモジュール化・材料開発・評価技術”編集 瀬川浩司 内田聡,技術教育出版社(2010) 等に記載の方法を用いて合成することができる。
【0366】
Ti原料として四塩化チタン、チタンアルコキシド等を用いて酸性下あるいは塩基性下で加水分解した酸化チタンゾル溶液や、ペルオキソチタン酸、オキシ硫酸チタンの水溶液を塩基性もしくは酸性にした水溶液を、オートクレーブを使用して150〜300℃で水熱反応することで酸化チタン微粒子が得られる。
《合成例1》
10gの酢酸と48.8gのチタンテトライソプロポキシドを室温で混合して得られた液を245mlの水に混合した。1時間の撹拌後、3.3mlの65%硝酸を加えて78℃で2時間加熱した。加熱終了後、300mlの水を加えて、チタン製のオートクレーブに移し、250℃で12時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子を調製した。得られたチタニアコロイド粒子は、X線回折により結晶性の高いアナターゼ型二酸化チタンであった。その後、上記で得られたチタニアコロイド粒子に2mlの65%硝酸を加え、超音波分散した後、ロータリーエバポレータでTiO量が15%程度になるまで分散液を濃縮後、遠心分離で分けられた上澄み水を捨てて、その水と同量のエタノールを加え、さらに超音波分散と遠心分離による酸化チタン粒子の沈降を計3回繰り返してエタノールに溶媒を置換して、酸化チタン微粒子のエタノール分散液を得た。
《合成例2》
5gの水素化チタンを1リットルの純水に懸濁し、濃度5質量%の過酸化水素液400gを30分かけて添加し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の全量から90容積%を分取し、濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、チタン製のオートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子を調製した。得られたチタニアコロイド粒子は、X線回折により結晶性の高いアナターゼ型二酸化チタンであった。次に、上記で得られたチタニアコロイド粒子を濃度10%まで濃縮し、前記ペルオキソチタン酸溶液を混合して、酸化チタン微粒子分散液を得た。
《合成例3》
15℃に冷却した純水250ml中に、撹拌しながら、チタンテトライソプロポキシド71gを滴下した。撹拌を1時間行い、白色水性懸濁液を得た。この白色水性懸濁液を濾過し、続いて純水1250mlで洗浄を行い、白色ケーキ状物質が得られた。この白色ケーキ状物質に、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド26%水溶液14g、グリセリン23gを加え、仕込み液の総量が250gになるように純水を追加した。このときのスラリーのpHは12.3であった。これをチタン製のオートクレーブに入れ、210℃で9時間加熱処理を行い、酸化チタン水分散液を得た。X線回折により結晶性の高いアナターゼ型二酸化チタンであった。
《合成例4》
80g/lの硫酸チタニルの溶液1リットルを85℃の温度に加熱し3時間保持して、硫酸チタニルを加水分解した。得られた酸化チタン微粒子はX線回折の結果、アナタース型結晶を有していた。このようにして得られた酸化チタン微粒子を濾過し、洗浄した後、水に分散させ、TiOに換算して250g/lの懸濁液とした。次いで、この懸濁液に塩酸水溶液を添加し、pHを1.0にした後、チタン製のオートクレーブに入れ、200℃の温度で13時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行った。この後、得られた生成物を濾過し、洗浄し、乾燥して、酸化チタン粒子を得た。X線回折により結晶性の高いアナターゼ型二酸化チタンであった。
《合成例5》
酸性チタニアゾル(石原産業株式会社製、STS−02、塩酸酸性ゾル)に水を加え、TiOに換算して150g/lとなるように酸化チタン微粒子懸濁液を調製した後、チタン製のオートクレーブに入れ、210℃の温度で8時間飽和蒸気圧下で水熱処理を行って、酸化チタン微粒子分散液を得た。X線回折により結晶性の高いアナターゼ型二酸化チタンであった。
《合成例6》
チタン化合物としてオキシ硫酸チタン(TiOSO)を用い、これを溶解した水溶液のチタンの金属イオンの濃度を0.6mol/Lとなるよう調整し、更に2.8gのテトラメチルアンモニウムハイドロキサイドを溶解させた。次いで、この液をチタン製のオートクレーブに入れ、250℃の温度で8時間飽和蒸気圧下で水熱処理を行った。
【0367】
その後、ロータリーエバポレータで濃縮、エタノール添加を繰り返し、溶媒をエタノールに置換して超音波分散して酸化チタン微粒子のエタノール分散液を得た。X線回折により結晶性の高いアナターゼ型二酸化チタンであった。
《合成例7》
四塩化チタン水溶液を純水で希釈してTiOとして濃度5質量%の四塩化チタン水溶液を調製した。この水溶液を、温度を5℃に調節した濃度15質量%のアンモニア水に添加して中和・加水分解した。ついで、生成したゲルを濾過洗浄し、TiOとして濃度9質量%のオルソチタン酸のゲルを得た。
【0368】
このオルソチタン酸のゲル100gを純水2900gに分散させた後、濃度35質量%の過酸化水素水800gを加え、攪拌しながら、85℃で3時間加熱し、ペルオキソチタン酸水溶液を調製した。得られたペルオキソチタン酸水溶液のTiOとして濃度は0.5質量%であった。
【0369】
ついで、このチタン酸水溶液1000gに両イオン交換樹脂(三菱化学(株)製ダイヤイオン SMNUPB)で脱イオンを行った。この脱イオン後のペルオキソチタン酸水溶液に濃度25質量%のテトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドをTiOに対するモル比が0.1となるように添加した。ついで、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイドを添加したペルオキソチタン酸水溶液をチタン製のオートクレーブに入れ、200℃で8時間水熱処理してブルッカイト型結晶とアナターゼ型結晶を含む酸化チタン微粒子の分散液を得た。
【0370】
酸化チタンは、アナターゼ型二酸化チタンやブルッカイト型酸化チタンを含むことが好ましい。また、酸化チタンのBET比表面積が、10〜300m/gであることが好ましく、さらに20〜100m/gであることがさらに好ましい。また、酸化チタンの粒度分布はシャープであることが好ましい。
【0371】
アナターゼ型二酸化チタンは上記合成例の水熱法以外にも、気相法でも合成できる。気相法で合成されたアナターゼ型二酸化チタンは、市販品で入手することができる。前記したように、市販のアナターゼ型二酸化チタンとしては、P25,P90(日本アエロジル株式会社)、スーパータイタニアF6、F5,F4(昭和タイタニウム株式会社)等が知られている。
【0372】
半導体層に用いる半導体は、上述した複数の半導体を併用して用いてもよい。例えば、上述した金属酸化物もしくは金属硫化物の数種類を併用することもできるし、また酸化チタン半導体に20質量%の窒化チタン(Ti)を混合して使用してもよい。また、J.Chem.Soc.Chem.Commun.,15(1999)に記載の酸化亜鉛/酸化錫複合としてもよい。このとき、半導体として金属酸化物もしくは金属硫化物以外に成分を加える場合、追加成分の金属酸化物もしくは金属硫化物半導体に対する質量比は30%以下であることが好ましい。
【0373】
また、本発明に係る半導体は、有機塩基を用いて表面処理してもよい。前記有機塩基としては、ジアリールアミン、トリアリールアミン、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン、キノリン、ピペリジン、アミジン等が挙げられるが、中でもピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジンが好ましい。
【0374】
上記の有機塩基が液体の場合は、そのまま固体の場合は有機溶媒に溶解した溶液を準備し、本発明に係る半導体を液体アミンまたはアミン溶液に浸漬することで、表面処理を実施できる。
【0375】
《半導体層の作製》
本発明に係る半導体層の作製方法について説明する。
【0376】
本発明に係る半導体層の半導体が粒子状の場合には、半導体を導電性支持体に塗布あるいは吹き付けて、半導体層を作製するのがよい。また、本発明に係る半導体が膜状であって、導電性支持体上に保持されていない場合には、半導体を導電性支持体上に貼合して半導体層を作製することが好ましい。
【0377】
本発明に係る半導体層の好ましい態様としては、上記導電性支持体上に半導体の微粒子を用いて焼成により形成する方法が挙げられる。
【0378】
本発明に係る半導体が焼成により作製される場合には、色素を用いての該半導体の増感(吸着、多孔質層への充填等)処理は、焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
【0379】
以下、本発明に好ましく用いられる半導体電極を、半導体微粉末を用いて焼成により形成する方法について詳細に説明する。
【0380】
(半導体微粉末含有塗布液の調製)
まず、半導体の微粉末を含む塗布液を調製する。この半導体微粉末はその1次粒子径が微細な程好ましく、その1次粒子径は1〜5000nmが好ましく、さらに好ましくは2〜100nmである。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散させることによって調製することができる。溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散する。溶媒としては半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。
【0381】
前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度の範囲は0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
【0382】
(半導体微粉末含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記のようにして得られた半導体微粉末含有塗布液を、導電性支持体上に塗布または吹き付け、乾燥等を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性支持体上に半導体層(半導体膜とも言う)が形成される。
【0383】
導電性支持体上に半導体微粉末含有塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
【0384】
このようにして導電性支持体等の導電層上に形成された半導体微粒子層は、導電性支持体との結合力や微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、機械的強度を高め、基板に強く固着した半導体層とするため前記半導体微粒子層の焼成処理が行われる。
【0385】
本発明においては、この半導体層はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。
【0386】
半導体層が、多孔質構造膜である場合には、電荷輸送層の電荷輸送物質などの成分は、この空隙にも存在することが好ましい態様である。
【0387】
ここで、半導体層の空隙率は1〜90体積%が好ましく、さらに好ましくは10〜80体積%であり、特に好ましくは20〜70体積%である。なお、半導体層の空隙率は誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアサイザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
【0388】
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、少なくとも10nm以上が好ましく、さらに好ましくは500〜30000nmである。
【0389】
焼成処理時、焼成膜の実表面積を適切に調製し、上記の空隙率を有する焼成膜を得る観点から、焼成温度は1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは200〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。
【0390】
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径及び比表面積や焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高めたりして、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば、四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0391】
(半導体の増感処理)
半導体の増感処理は、前述のように本発明の色素を適切な溶媒に溶解し、その溶液に前記半導体を焼成した基板を浸漬することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、予め減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去しておくことが好ましい。このような処理により、本発明の色素が半導体層(半導体膜)内部深くに進入できるようになり、半導体層(半導体膜)が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
【0392】
本発明の色素を溶解するのに用いる溶媒は、前記化合物を溶解することができ、かつ半導体を溶解したり半導体と反応したりすることのないものであれば格別の制限はない。しかしながら、溶媒に溶解している水分及び気体が半導体膜に進入して、前記化合物の吸着等の増感処理を妨げることを防ぐために、予め脱気及び蒸留精製しておくことが好ましい。
【0393】
前記化合物の溶解において、好ましく用いられる溶媒はアセトニトリル等のニトリル系溶媒、メタノール、エタノール、n−プロパノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、複数の溶媒を混合してもよい。特に好ましくはアセトニトリル、アセトニトリル/メタノール混合溶媒、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
【0394】
(増感処理の温度、時間)
半導体を焼成した基板を本発明の色素を含む溶液に浸漬する時間は、半導体層(半導体膜)に深く進入して吸着等を充分に進行させ、半導体を十分に増感させることが好ましい。また、溶液中での色素の分解等により生成して分解物が色素の吸着を妨害することを抑制する観点から、25℃条件下では3〜48時間が好ましく、さらに好ましくは4〜24時間である。この効果は、特に半導体膜が多孔質構造膜である場合において顕著である。ただし、浸漬時間については25℃条件での値であり、温度条件を変化させた場合には、上記の限りではない。
【0395】
浸漬しておくに当たり本発明の色素を含む溶液は、前記色素が分解しない限りにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は5〜100℃であり、さらに好ましくは25〜80℃であるが、前記の通り溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
【0396】
《電荷輸送層》
本発明に用いられる電荷輸送層について説明する。
【0397】
電荷輸送層は、色素の酸化体を迅速に還元し、色素との界面で注入された正孔を対向電極に輸送する機能を担う層である。
【0398】
本発明に係る電荷輸送層は、レドックス電解質の分散物や正孔輸送材料としてのp型化合物半導体(電荷輸送剤)を主成分として構成されている。
【0399】
レドックス電解質としては、I/I系や、Br/Br系、キノン/ハイドロキノン系等が挙げられる。このようなレドックス電解質は従来公知の方法によって得ることができ、例えば、I/I系の電解質は、ヨウ素のアンモニウム塩とヨウ素を混合することによって得ることができる。これらの分散物は溶液である場合に液体電解質、常温において固体である高分子中に分散させた場合に固体高分子電解質、ゲル状物質に分散された場合にゲル電解質と呼ばれる。電荷輸送層として液体電解質が用いられる場合、その溶媒としては電気化学的に不活性なものが用いられ、例えば、アセトニトリル、炭酸プロピレン、エチレンカーボネート等が用いられる。固体高分子電解質の例としては特開2001−160427号公報記載の電解質が、ゲル電解質の例としては「表面科学」21巻、第5号、288〜293頁に記載の電解質が挙げられる。
【0400】
電荷輸送剤としては、色素吸収を妨げないために大きいバンドギャップを持つことが好ましい。本発明で使用する電荷輸送剤のバンドギャップは、2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、電荷輸送剤のイオン化ポテンシャルは色素ホールを還元するためには、色素吸着電極イオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によって電荷輸送層に使用する電荷輸送剤のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5eV以上5.5eV以下が好ましく、さらに4.7eV以上5.3eV以下が好ましい。
【0401】
電荷輸送剤としては、正孔の輸送能力が優れている芳香族アミン誘導体が好ましい。このため、電荷輸送層を主として芳香族アミン誘導体で構成することにより、光電変換効率をより向上させることができる。芳香族アミン誘導体としては、特に、トリフェニルジアミン誘導体を用いるのが好ましい。トリフェニルジアミン誘導体は、芳香族アミン誘導体の中でも、特に正孔の輸送能力が優れている。また、このような芳香族アミン誘導体は、モノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマーのいずれを用いてもよく、これらを混合して用いてもよい。また、モノマー、オリゴマーやプレポリマーは、比較的低分子量であることから、有機溶媒等の溶媒への溶解性が高い。このため、電荷輸送層を塗布法により形成する場合に、電荷輸送層材料の調製をより容易に行うことができるという利点がある。このうち、オリゴマーとしては、ダイマーまたはトリマーを用いるのが好ましい。
【0402】
具体的な芳香族第3級アミン化合物としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
【0403】
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
【0404】
芳香族アミン誘導体以外の電荷輸送剤としては、チオフェン誘導体、ピロール誘導体、スチルベン誘導体等が挙げられる。
【0405】
以下に、電荷輸送剤(CTM)の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0406】
【化251】

【0407】
【化252】

【0408】
【化253】

【0409】
《対向電極》
本発明に用いられる対向電極について説明する。
【0410】
対向電極は導電性を有するものであればよく、任意の導電性材料が用いられるが、Iイオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものの使用が好ましい。このようなものとしては、白金電極、導電材料表面に白金めっきや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。絶縁性の物質でも、電荷輸送層に面している側に導電性物質層が設置されていれば、これも使用可能である。電荷輸送層との接触性が良いことが好ましい。また電荷輸送層との仕事関数の差が小さく、化学的に安定であることが好ましい。金、銀、銅、アルミ、白金等の金属薄膜やカーボンブラック、導電性高分子等の有機導電体を用いることも出来る。
【0411】
〔太陽電池〕
本発明の太陽電池について説明する。
【0412】
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子の一態様として、太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、色素増感された半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記半導体電極、電荷輸送層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
【0413】
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、半導体に担持された本発明に係る色素は照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は半導体に移動し、次いで導電性支持体を経由して対向電極に移動して、電荷移動層のレドックス電解質を還元する。一方、半導体に電子を移動させた本発明に係る色素は酸化体となっているが、対向電極から電荷輸送層のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷輸送層のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
【実施例】
【0414】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明これらに限定されない。
【0415】
実施例
〔光電変換素子1の作製〕
前記合成例1のアナターゼ型二酸化チタン微粒子の固形分の0.5質量倍のエチルセルロースと3.5質量倍のテルピネオールを加え、ついで、ロータリーエバポレータにてTiO固形分濃度が20質量%になるまでエタノールを蒸発させながら濃縮した。濃縮品に、TiO固形分濃度が17質量%になるまで、テルピネオールを加えてアナターゼ型二酸化チタンペーストを調整した。
【0416】
アナターゼ型二酸化チタンペーストを、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積5×5mm)により塗布した。塗布及び乾燥(120℃で3分間)を3回繰り返し、200℃で10分間及び500℃で15分間焼成を行い、厚さ15μmの二酸化チタン薄膜を得た。この薄膜上に、さらに二酸化チタンペースト(アナターゼ型、1次平均粒径(顕微鏡観察平均)400nmポリエチレングリコール分散)を同様の方法で塗布及び焼成し、厚さ5μmの二酸化チタン薄膜を形成した。
【0417】
本発明の色素1をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記二酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、半導体電極とした。
【0418】
電荷輸送層(電解液)にはヨウ化1−メチル−3−ブチルイミダゾリウム0.6mol/l、グアニジンチオシアネート0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、4−(t−ブチル)ピリジン0.5mol/lを含むアセトニトリル:バレロニトリル=85:15の溶液を用いた。対極に白金及びクロムを蒸着したガラス板を用い、先に作製した半導電極との間に厚さ20μmのスペーサーフィルムを挟んで貼り合わせた。電荷輸送層を半導体電極と対極との間の隙間から注入することによって光電変換素子1を作製した。
〔光電変換素子2〜33作製〕
光電変換素子1の作製において、色素1及び合成例1のアナターゼ型二酸化チタンを表1、表2に記載の色素及び合成例に記載のアナターゼ型二酸化チタンに変更した以外は同様にして、光電変換素子2〜33を作製した。
〔光電変換素子34の作製〕
アナターゼ型二酸化チタン微粒子P25(日本アエロジル株式会社製)に分散助剤としてアセチルアセトンを添加してエタノールに分散させてチタニア濃度が20質量%になるようにP25分散液を調製した。
【0419】
光電変換素子1の作製において、アナターゼ型二酸化チタンペーストを前記P25分散液に変更して、スピンコート法にて多孔質を形成した以外は同様にして、光電変換素子34を作製した。
〔光電変換素子35作製〕
光電変換素子31の作製において、アナターゼ型二酸化チタン微粒子P25をアナターゼ型二酸化チタンのスーパータイタニアF5(昭和タイタニウム株式会社製)に変更した以外は同様にして、光電変換素子35を作製した。
〔光電変換素子36作製〕
光電変換素子1の作製において、色素1を色素76と色素801の混合(混合比1/1)に変更した以外は同様にして、光電変換素子36を作製した。
【0420】
【化254】

【0421】
〔光電変換素子37の作製〕
光電変換素子1の作製において、色素1を色素1と色素802の混合(混合比1/1)に変更した以外は同様にして、光電変換素子37を作製した。
【0422】
【化255】

【0423】
〔光電変換素子38の作製〕
チタンテトライソプロポキシド4ml、水1ml、およびエタノール溶液40mlを混合し、さらに塩酸を加えてpH1に調整した。この酸化チタン前駆体溶液を、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板上に、1000rpmでスピンコートした。これを、100℃で15分間加熱して乾燥した。さらに、450℃で10分間焼成を行って緻密な、厚み30〜50nmの酸化チタン薄膜からなるバリヤ層を形成した。
【0424】
光電変換素子1の作製で用いたアナターゼ型二酸化チタンペーストを、上記バリヤ層を形成したフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電性ガラス基板へスクリーン印刷法(塗布面積5×5mm)により塗布し200℃で10分間及び450℃で15分間焼成を行い、厚さ1.5μmの二酸化チタン薄膜を得た。
【0425】
本発明の色素5をアセトニトリル:t−ブチルアルコール=1:1の混合溶媒に溶解し、5×10−4mol/lの溶液を調製した。上記二酸化チタンを塗布焼結したFTOガラス基板を、この溶液に室温で3時間浸漬して色素の吸着処理を行い、半導体電極とした。
【0426】
次いで、クロロベンゼン:アセトニトリル=19:1混合溶媒に、電荷輸送材料である芳香族アミン誘導体2,2′,7,7′−テトラキス(N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)アミン)−9,9′−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTAD)を0.17mol/l、Li[(CFSON]を15mmol/l、t−Butylpyridineを50mmol/lとなるように溶解した電荷輸送層形成用塗布液を調製した。そして、当該電荷輸送層形成用塗布液を、前記光増感色素を吸着、結合させた半導体層の上面にスピンコート法により塗布し、電荷輸送層を形成した。さらに真空蒸着法により金を90nm蒸着し、対極電極を作製し、光電変換素子38を作製した。前述したスピンコート法による塗布ではスピンコートの回転数を1000rpmに設定して行った。
[光電変換素子39の作製(比較例)]
光電変換素子1の作製において、色素1を下記ローダニン色素(R−1)に変更した以外は同様にして、光電変換素子39を作製した。
【0427】
【化256】

【0428】
[光電変換素子40の作製(比較例)]
光電変換素子1の作製において、水熱合成例1のアナターゼ型二酸化チタン微粒子をルチル型酸化チタンCTR−100(硫酸法:堺化学工業株式会社製)に変更した以外は同様にして、光電変換素子40を作製した。
【0429】
〔光電変換素子41の作製(比較例)〕
光電変換素子38の作製において、光電変換素子の色素をR−1に変更した以外は、光電変換素子38と同様にして光電変換素子41を作製した。
【0430】
〔光電変換素子の評価〕
作製した光電変換素子を、ソーラーシミュレータ(英弘精機製)を用い、AMフィルター(AM−1.5)を通したキセノンランプから100mW/cmの擬似太陽光を照射することにより行った。即ち、光電変換素子について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、短絡電流密度(Jsc)、開放電圧(Voc)、及び形状因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率(η(%))を求めた。
【0431】
形状因子(F.F.)は、後述する光電変換効率を測定する際の電流密度−電圧特性グラフにおいて、Pmaxを短絡電流密度Jscと開放電圧Vocの積で除して得られる値である。
【0432】
更に半導体層を、強度100mW/cmのキセノンランプで20分間、光照射し、その後、9ppmのオゾン雰囲気下で10分間曝露させた後での光電変換特性の変化を比較した。
【0433】
表1、表2に光照射/オゾン曝露の劣化操作前後での光電変換電極を用いたときの特性評価結果を示す。
【0434】
【表1】

【0435】
【表2】

【0436】
表1、表2中、
*1は合成例1の水熱法アナターゼ型二酸化チタン
*2は合成例2の水熱法アナターゼ型二酸化チタン
*3は合成例3の水熱法アナターゼ型二酸化チタン
*4は合成例4の水熱法アナターゼ型二酸化チタン
*5は合成例5の水熱法アナターゼ型二酸化チタン
*6は合成例6の水熱法アナターゼ型二酸化チタン
*7は合成例7の水熱法アナターゼ型二酸化チタン
*8は気相法のアナターゼ型二酸化チタン(P25(日本アエロジル株式会社製))
*9は気相法のアナターゼ型二酸化チタン(スーパータイタニアF5(昭和タイタニウム株式会社製))
*10はルチル型酸化チタンCTR−100(硫酸法:堺化学工業株式会社製)
表1、表2に示すとおり、光照射/オゾン曝露の劣化前後での光電変換効率の比から、本発明の光電変換素子No.1〜38は、色素は、比較色素(R−1トリフェニルアミン−ローダニン色素)を用いた光電変換素子No.39、No.41やルチル型酸化チタンを用いた光電変換素子No.40に比べ、大幅に上回る光電変換効率と酸化劣化耐性を有していることが分かる。
【符号の説明】
【0437】
1、1′ 基板
2、7 透明導電膜
3 半導体
4 色素
5 電荷輸送層
6 対向電極
8 白金

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する一対の電極間に、少なくとも増感色素を半導体に担持してなる半導体層及び電荷輸送層が設けられている色素増感型の光電変換素子において、前記増感色素が下記一般式(1)で表される化合物を含有し、前記半導体層がアナターゼ型二酸化チタンを含有することを特徴とする光電変換素子。
【化1】

(式中、Arは各々置換または無置換の、アリーレン基または複素環基を表す。R、Rは各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R、R、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Rは水素原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。RはXで置換した、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Xは酸性基を表し、mは1以上の整数を表す。m≧2の場合、Xは同じでも異なってもよい。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
【請求項2】
前記一般式(1)で表される化合物が、下記一般式(2)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【化2】

(式中、Arは各々置換または無置換の、アリーレン基または複素環基を表す。R、Rは各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表し、R、R、Arは互いに連結して環状構造を形成してもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。Rは水素原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Yは硫黄原子、酸素原子またはセレン原子を表し、Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
【請求項3】
前記一般式(2)で表される化合物のYが硫黄原子であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記一般式(2)で表される化合物のRが水素原子であることを特徴とする請求項3に記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【化3】

(式中、R、Rは水素原子、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、n8、n9は1〜5の整数を表す。n8、n9≧2の場合は、R、Rは同じでも異なってもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
【請求項6】
前記一般式(2)で表される化合物が、下記一般式(4)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の光電変換素子。
【化4】

(式中、R、R10は水素原子、ハロゲン原子、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルセレノ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、n9、n10はそれぞれ1〜5、1〜8の整数を表す。n9、n10≧2の場合、R、R10は同じでも異なってもよい。また、Rは水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表す。R、Rは水素原子、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、シアノ基、各々置換または無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アミノ基、アリール基または複素環基を表し、互いに連結して環状構造を形成してもよい。nは0以上の整数を表し、n≧2の場合、R、Rは同じでも異なってもよい。Xは酸性基を表す。炭素−炭素二重結合は、シス体、トランス体のどちらでもよい。)
【請求項7】
前記増感色素として、前記一般式(1)〜(4)で表される化合物から選ばれた複数の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記一般式(1)において、Xで表わされる酸性基がカルボン酸基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記アナターゼ型二酸化チタンが水熱法又は気相法により合成された酸化チタンであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子を有することを特徴とする太陽電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−84466(P2012−84466A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231298(P2010−231298)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】