説明

光電変換素子

【課題】従来と比較して長期安定性に優れ、生産性にも優れた完全固体型の光電変換素子を提供すること。
【解決手段】導電性基板上に光増感化合物を担持した電子輸送性化合物からなる電子輸送層が設けられた第一電極と、前記第一電極の電子輸送層と対峙する第二電極と、前記電子輸送層と前記第二電極との間にホール輸送性化合物からなるホール輸送層を備えた光電変換素子であって、前記ホール輸送層を超臨界状態または亜臨界状態にて設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池や太陽電池を用いた電源装置等に使用できる光電変換素子に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池にはいくつかの種類があるが、実用化されているものはシリコン半導体の接合を利用したダイオード型のものがほとんどである。これらの太陽電池は現状では製造コストが高く、このことが普及を妨げる要因となっている。
【0003】
最近、低コスト化の可能性としてスイス、ローザンヌ工科大学のGraetzelらが高効率の太陽電池を発表したことにより、実用化への期待が高まっている(例えば、特許文献1、非特許文献1、2参照)。この高効率太陽電池の構造は、透明導電性ガラス基板上に多孔質な金属酸化物半導体を設け、その表面に吸着した色素と、酸化還元対を有する電解質と、対向電極とからなる。Graetzelらは酸化チタン等の金属酸化物半導体電極を多孔質化して表面積を大きくしたこと、並びに色素としてルテニウム錯体を単分子吸着させたことにより光電変換効率を著しく向上させた。
【0004】
しかしながら、これらの太陽電池はアセトニトリル等の蒸気圧の高い電解液を用いているため、電解液の揮発や漏れに問題があった。この欠点を補うものとして、次に示されるような完全固体型色素増感型太陽電池が発表されている。
1)無機半導体を用いたもの(例えば、非特許文献3、4参照)
2)低分子有機ホール輸送材料を用いたもの(例えば、特許文献2、非特許文献5、6参照)
3)導電性高分子を用いたもの(例えば、特許文献3、非特許文献7参照)
【0005】
非特許文献3記載の太陽電池では、p型半導体層の構成材料としてヨウ化銅が用いられている。しかしながら、ヨウ化銅の結晶粒の増大等を理由とする劣化により、発生電流が低下する問題があった。そこで、非特許文献4記載の太陽電池においては、イミダゾリニウム塩を加えることによってヨウ化銅の結晶化を抑制しているが、長期安定性に欠け、更なる耐久性向上が求められている。
【0006】
非特許文献5記載の有機ホール輸送材料を用いたタイプの固体型太陽電池はHagenらによって報告され、Graetzelらによって改良されている(非特許文献6)。しかしながら、液体電解質に比べて変換効率は非常に低く、また、特許文献2記載のトリフェニルアミン化合物を用いた固体型太陽電池は、トリフェニルアミン化合物を真空蒸着して電荷輸送層を形成している。そのため、多孔質半導体の内部空孔へトリフェニルアミン化合物が到達出来ず、やはり低い変換効率しか得られていない。
【0007】
導電性高分子を用いたタイプの固体型太陽電池として、大阪大学、柳田らがポリピロールを用いたもの(非特許文献7)を報告している。しかしながら、これらにおいても変換効率は低く、特許文献3記載のポリチオフェン誘導体を用いた固体型太陽電池は、色素を吸着した多孔質酸化チタン電極上で、電解重合法を用いて電荷移動層を設けているが、色素が酸化チタンから脱着したり、あるいは色素の分解が生じたりする問題がある。また、ポリチオフェン誘導体は耐久性に非常に問題がある。
【0008】
以上、上述の完全固体型の光電変換素子は、何れも満足のいく特性のものが得られていない。
【0009】
本発明者らは、最近、少なくとも一方が透明な電子集電電極とホール集電電極との間に、電子輸送層とホール輸送層が設けられた光電変換素子において、前記ホール輸送層に特定の高分子材料を含有することによって従来と比較して良好な光電変換特性を有するものを見出すことができた(特許文献4参照)が、まだ十分とはいえない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点を解決し、従来と比較して長期安定性に優れ、生産性にも優れた完全固体型の光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために鋭意検討した結果、高性能な光電変換素子を提供できることを見出し本発明に到達した。本発明には以下に示す(1)から(8)の発明が包含される。
(1)導電性基板上に光増感化合物を担持した電子輸送性化合物からなる電子輸送層が設けられた第一電極と、前記第一電極の電子輸送層と対峙する第二電極と、前記電子輸送層と前記第二電極との間にホール輸送性化合物からなるホール輸送層を備えた光電変換素子であって、前記ホール輸送層が超臨界状態、または亜臨界状態にて設けられたことを特徴とする光電変換素子。
(2)前記超臨界状態または前記亜臨界状態で用いる超臨界流体または亜臨界流体のいずれかが、二酸化炭素であることを特徴とする(1)に記載の光電変換素子。
(3)前記超臨界状態または前記亜臨界状態で用いる超臨界流体または亜臨界流体のいずれかが、二酸化炭素と有機溶剤からなるエントレイナーの混合流体であることを特徴とする(1)に記載の光電変換素子。
(4)前記ホール輸送層に、金属化合物またはイオン液体の少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする(1)ないし(3)のいずれかに記載の光電変換素子。
(5)前記金属化合物が、ハロゲン化金属、チオシアン化金属、及びアミド化金属からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(4)に記載の光電変換素子。
(6)前記イオン液体が、イミダゾリニウム化合物であることを特徴とする(4)に記載の光電変換素子。
(7)前記電子輸送性化合物が、酸化物半導体であることを特徴とする(1)ないし(6)のいずれかに記載の光電変換素子。
(8)前記酸化物半導体が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、及び酸化ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする(7)に記載の光電変換素子。
【0012】
上記本発明の(1)〜(3)の構成により、コストパフォーマンスに優れ、良好な変換効率を示す光電変換素子が提供される。
また、上記(4)〜(6)の構成により、ホール輸送層のホール移動が効率的となり、更に優れた変換効率を示す光電変換素子が提供される。
また、上記(7)〜(8)の構成により、電子輸送層に酸化物半導体を用いることで、電子移動が効率的となり、更に優れた変換効率を示す光電変換素子が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、従来よりも長期安定性に優れ、生産性にも優れた完全固体型の光電変換素子を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかわる光電変換素子の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下本発明を詳細に説明する。
光電変換素子は一般に電子集電電極、電子受容体兼電子輸送層(以下単に電子輸送層と称す)、電子供与体兼ホール輸送層(以下単にホール輸送層と称す)、ホール集電電極から構成される。
【0016】
図を参照して本発明の実施形態を説明すると、本発明による光電変換素子は、例えば図1の概略図に示すような構造を有する。図1の光電変換素子では、基板1a上に設けられた電子集電電極2a上に緻密な構造からなる電子輸送層3aと、光増感化合物5を吸着した多孔質構造からなる粒状の電子輸送層3b、ホール輸送層4、ホール集電電極2b、基板1bが積層されており、3aと3bにより電子輸送層3が構成されている。
【0017】
まず、本発明に用いられる電子集電電極2aとしては、可視光に対して透明な導電性物質であれば特に限定されるものではなく、通常の光電変換素子、あるいは液晶パネル等に用いられる公知のものを使用できる。例えば、インジウム・スズ酸化物(以下、ITOと称す)、フッ素ドープ酸化スズ(以下、FTOと称す)等が挙げられる。これらの内、FTOが好ましい。電子集電電極2aの厚さは5nm〜100μmが好ましく、50nm〜10μmが更に好ましい。また電子集電電極2aは一定の硬性を維持するため、可視光に透明な材質からなる基板1a上に設けることが好ましく、基板1aとしては、例えば、ガラス、透明プラスチック板、透明プラスチック膜、無機物透明結晶体などが用いられる。
【0018】
電子集電電極2aと基板1aが一体となっている公知のものを用いることもでき、例えば、FTOコートガラス、ITOコートガラス、酸化亜鉛:アルミニウムコートガラス、FTOコート透明プラスチック膜、ITOコート透明プラスチック膜等が挙げられる。また、酸化スズや酸化インジウムに原子価の異なる陽イオン若しくは陰イオンをドープした透明電極、メッシュ状、ストライプ状など光が透過できる構造にした金属電極をガラス基板等の基板上に設けたものでもよい。これらは単独あるいは2種以上の混合、または積層したものでも構わない。
【0019】
また基板1aの抵抗を下げる目的で、金属リード線6a等を用いてもよい。金属リード線の材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、ニッケル等の金属が挙げられる。金属リード線は、基板に蒸着、スパッタリング、圧着等で設置し、その上にITOやFTOを設ける方法が挙げられる。
【0020】
本発明の光電変換素子は、上記の電子集電電極2a上に、電子輸送層3として、半導体からなる薄膜を形成する。この電子輸送層3は、電子集電電極2a上に緻密な構造からなる電子輸送層3aを形成し、更にその上に多孔質構造からなる電子輸送層3bを形成する積層構造であることが好ましい。
【0021】
この緻密な電子輸送層3aは、電子集電電極2aとホール輸送層4との電子的コンタクトを防ぐ目的で形成するものである。従って、電子集電電極2aとホール輸送層4が物理的に接触しなければ、ピンホールやクラック等が形成されていても構わない。また、この緻密な電子輸送層3aの膜厚に制限はないが、10nm〜1μmが好ましく、20nm〜700nmがより好ましい。なお、電子輸送層3aの「緻密」とは、電子輸送層3b中の半導体微粒子の充填密度より高密度で無機酸化物半導体が充填されていることを意味する。
【0022】
緻密な電子輸送層3a上に形成する多孔質状の電子輸送層3bは、単層であっても多層であってもよい。多層の場合、粒径の異なる半導体微粒子の分散液を多層塗布することも、種類の異なる半導体や、樹脂、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布することもできる。一度の塗布で膜厚が不足する場合には多層塗布は有効な手段である。一般的に、電子輸送層3bの膜厚が増大するほど単位投影面積当たりの担持光増感化合物量も増えるため光の捕獲率が高くなるが、注入された電子の拡散距離も増えるため電荷の再結合によるロスも大きくなってしまう。従って、電子輸送層3bの膜厚は100nm〜100μmが好ましい。
【0023】
本発明における電子輸送層3の構成材料としては、半導体を用いることが好ましい。半導体としては特に限定されるものではなく、公知のものを使用することができる。具体的には、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、あるいは金属のカルコゲニドに代表される化合物半導体、またはペロブスカイト構造を有する化合物等を挙げることができる。金属のカルコゲニドとしてはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、あるいはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム、等のリン化物、ガリウム砒素、銅−インジウム−セレン化物、銅−インジウム−硫化物等が好ましい。また、ペロブスカイト構造を有する化合物としては、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウム等が好ましい。これらの中でも酸化物半導体が好ましく、特に酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化ニッケルが好ましく、単独、あるいは2種以上の混合で使用しても構わない。これらの半導体の結晶型は特に限定されるものではなく、単結晶でも多結晶でも、あるいは非晶質でも構わない。
【0024】
上記半導体を微粒子状態で用いる場合の粒子サイズに特に制限は無いが、一次粒子の平均粒径は1〜100nmが好ましく、5〜50nmがより好ましい。また、より大きい平均粒径の半導体微粒子を混合し、入射光を散乱させる効果により、効率を向上させることも可能である。この場合の半導体の平均粒径は50〜500nmが好ましい。
【0025】
電子輸送層3の作製方法には特に制限は無く、スパッタリング等の真空中で薄膜を形成する方法や湿式製膜法が挙げられる。製造コスト等を考慮した場合、特に湿式製膜法が好ましく、半導体微粒子の粉末あるいはゾルを分散したペーストを調製し、電子集電電極基板上に塗布する方法が好ましい。この湿式製膜法を用いた場合、塗布方法は特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、ディップ法、スプレー法、ワイヤーバー法、スピンコート法、ローラーコート法、ブレードコート法、グラビアコート法、また、湿式印刷方法として、凸版、オフセット、グラビア、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等様々な方法を用いることができる。
【0026】
機械的粉砕、あるいはミルを使用して半導体微粒子の分散液を作製する場合、少なくとも半導体微粒子単独、あるいは半導体微粒子と樹脂の混合物を、水あるいは有機溶剤に分散して形成される。この時に使用される樹脂としては、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等によるビニル化合物の重合体や共重合体、シリコーン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0027】
半導体微粒子を分散する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、あるいはイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらは単独、あるいは2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0028】
半導体微粒子の分散液、あるいはゾル−ゲル法等によって得られた半導体微粒子のペーストは、粒子の再凝集を防ぐため、塩酸、硝酸、酢酸等の酸、ポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル等の界面活性剤、アセチルアセトン、エチレンジアミン等のキレート化剤等を添加することができる。また、製膜性を向上させる目的で増粘剤を添加することも有効な手段である。この時加える増粘剤としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等の高分子、エチルセルロース等の増粘剤等が挙げられる。
【0029】
半導体微粒子は、塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせ、膜強度の向上や基板との密着性を向上させるために焼成、マイクロ波照射、電子線照射、レーザー光照射、あるいはプレス処理を行うことが好ましい。これらの処理は単独で行ってもあるいは二種類以上組み合わせて行ってもよい。焼成する場合、焼成温度の範囲に特に制限は無いが、温度を上げ過ぎると基板の抵抗が高くなったり、溶融することもあるため、30〜700℃が好ましく、100〜600℃がより好ましい。また、焼成時間にも特に制限は無いが、10分〜10時間が好ましい。焼成後、半導体微粒子の表面積の増大や、光増感化合物から半導体微粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタンの水溶液や有機溶剤との混合溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行っても良い。マイクロ波照射は、電子輸送層形成側から照射しても、裏側から照射しても構わない。照射時間には特に制限が無いが、1時間以内で行うことが好ましい。プレス処理は、100kg/cm以上が好ましく、1000kg/cmが更に好ましい。プレスする時間は特に制限が無いが、1時間以内で行うことが好ましい。また、プレス処理時に熱を加えても構わない。
【0030】
直径が数十nmの半導体微粒子を焼結等によって積層した膜は、多孔質状態を形成する。このナノ多孔構造は、非常に高い表面積を持ち、その表面積はラフネスファクターを用いて表すことが出来る。このラフネスファクターは、基板に塗布した半導体微粒子の面積に対する多孔質内部の実面積を表す数値である。従って、ラフネスファクターは大きいほど好ましいが、電子輸送層3bの膜厚との関係もあり、本発明においては20以上が好ましい。
【0031】
光変換効率のさらなる向上のため、電子輸送層3に光増感化合物5を吸着させた方が好ましい。光増感化合物5は使用される励起光により光励起される化合物であれば特に限定されないが、具体的には以下に記載の化合物が挙げられる。
特表平7−500630号公報、特開平10−233238号公報、特開2000−26487号公報、特開2000−323191号公報、特開2001−59062号公報等に記載の金属錯体化合物(金属がRuなど)、特開平10−93118号公報、特開2002−164089号公報、特開2004−95450号公報等に記載のクマリン化合物、同特開2004−95450号公報等に記載のポリエン化合物、特開2003−264010号公報、特開2004−63274号公報、特開2004−115636号公報、特開2004−200068号公報、特開2004−235052号公報、J.Am.Chem.Soc.,12218,Vol.126(2004)、Chem.Commun.,3036(2003)等に記載のインドリン型化合物、特開平11−86916号公報、特開平11−214730号公報、特開2000−106224号公報、特開2001−76773号公報、特開2003−7359号公報等に記載のシアニン色素、特開平11−214731号公報、特開平11−238905号公報、特開2001−52766号公報、特開2001−76775号公報、特開2003−7360号公報等に記載メロシアニン色素、特開平10−92477号公報、特開平11−273754号公報、特開平11−273755号公報、特開2003−31273号公報等に記載の9−アリールキサンテン化合物、特開平10−93118号公報、特開2003−31273号等に記載のトリアリールメタン化合物、特開平9−199744号公報、特開平10−233238号公報、特開平11−204821号公報、特開平11−265738号公報等に記載のフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物等を挙げることができる。特にこの中で、金属錯体化合物、クマリン化合物、ポリエン化合物、インドリン化合物を用いることが好ましい。
【0032】
電子輸送層に光増感化合物5を吸着させる方法としては、光増感化合物溶液中あるいは分散液中に半導体微粒子を担持した電子集電電極を浸漬する方法、前記光増感化合物溶液あるいは分散液を電子輸送層3に塗布して吸着させる方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等を用いることができ、後者の場合は、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等を用いることができる。
【0033】
光増感化合物5を吸着させる際、縮合剤を併用してもよい。縮合剤は、無機物表面に物理的あるいは化学的に光増感化合物5と電子輸送化合物を結合すると思われる触媒的作用をするもの、または化学量論的に作用し、化学平衡を有利に移動させるもの何れであってもよい。更に、縮合助剤としてチオールやヒドロキシ化合物を添加してもよい。
【0034】
光増感化合物5を溶解、あるいは分散する溶媒は、水、メタノール、エタノール、あるいはイソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒を挙げることができ、これらは単独、あるいは2種以上の混合として用いることができる。
【0035】
また、光増感化合物5はその種類によっては化合物間の凝集を抑制した方がより効果的に働くものが存在するため、凝集解離剤を併用しても構わない。凝集解離剤としてはコール酸、ケノデオキシコール酸などのステロイド化合物、長鎖アルキルカルボン酸または長鎖アルキルホスホン酸が好ましく、用いる色素(光増感化合物)に対して適宜選ばれる。これら凝集解離剤の添加量は、色素(光増感化合物)1質量部に対して0.01〜500質量部が好ましく、0.1〜100質量部がより好ましい。
【0036】
これらを用い、光増感化合物5、あるいは光増感化合物5と凝集解離剤を吸着する際の温度としては、−50℃以上、200℃以下が好ましい。また、この吸着は静置しても攪拌しながら行っても構わない。攪拌する場合の方法としては、スターラー、ボールミル、ペイントコンディショナー、サンドミル、アトライター、ディスパーザー、あるいは超音波分散等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。吸着に要する時間は、5秒以上、1000時間以下が好ましく、10秒以上、500時間以下がより好ましく、1分以上、150時間が更に好ましい。また、吸着は暗所で行うことが好ましい。
【0037】
<超臨界または亜臨界による含浸工程>
本発明におけるホール輸送層4は、上述した光増感化合物を担持した多孔質電子輸送層3bの上に、ホール輸送性化合物を用いて、超臨界状態または亜臨界状態で直接形成される。超臨界流体としては、気体と液体が共存できる限界(臨界点)を超えた温度・圧力領域において非凝集性高密度流体として存在し、圧縮しても凝集せず、臨界温度以上、かつ臨界圧力以上の状態にある流体である限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することが出来るが、臨界温度が低いものが好ましい。この超臨界流体は、例えば、一酸化炭素、二酸化炭素、アンモニア、窒素、水、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどのエルコール系溶媒、エタン、プロパン、2,3−ジメチルブタン、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロトリフロロメタンなどのハロゲン系溶媒、ジメチルエーテルなどのエーテル系溶媒が好適である。これらの中でも、二酸化炭素は、臨界圧力7.3MPa、臨界温度31℃であることから、容易に超臨界状態をつくり出せるとともに、不燃性で取扱いが容易であり、特に好ましい。また、これらの流体は、単独であっても二種以上の混合であっても構わない。
【0038】
亜臨界流体としては、臨界点近傍の温度及び圧力領域において、高圧液体として存在する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。上述した超臨界流体として挙げられる化合物は、亜臨界流体としても好適に使用することができる。
【0039】
超臨界流体の臨界温度及び臨界圧力は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、臨界温度としては、−273℃以上300℃以下が好ましく、0℃以上200℃以下が特に好ましい。
【0040】
さらに、上述の超臨界流体及び亜臨界流体に加え、有機溶媒からなるエントレイナーを併用することもできる。有機溶媒(エントレイナー)の添加により、超臨界流体中での溶解度の調整をより容易に行うことができる。
このような有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、あるいはメチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ギ酸エチル、酢酸エチル、あるいは酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、あるいはジオキサン等のエーテル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、あるいはN−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、ブロモホルム、ヨウ化メチル、ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、フルオロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードベンゼン、あるいは1−クロロナフタレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−オクタン、1,5−ヘキサジエン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサジエン、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、エチルベンゼン、あるいはクメン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0041】
ホール輸送性化合物は、公知のホール輸送性化合物を用いる。ホール輸送性化合物の具体例としては特公昭34−5466号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特公昭45−555号公報等に示されているトリフェニルメタン化合物、特公昭52−4188号公報等に示されているピラゾリン化合物、特公昭55−42380号公報等に示されているヒドラゾン化合物、特開昭56−123544号公報等に示されているオキサジアゾール化合物、特開昭54−58445号公報等に示されているテトラアリールベンジジン化合物、特開昭58−65440号公報あるいは特開昭60−98437号公報に示されているスチルベン化合物等を挙げることができ、単独であっても二種以上の混合であっても構わない。
【0042】
また、本発明の光電変換素子においては、上記に示したホール輸送性化合物に各種添加剤を加えても構わない。添加剤としては、ヨウ素、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、ヨウ化セシウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化銅、ヨウ化鉄、ヨウ化銀等の金属ヨウ化物、ヨウ化テトラアルキルアンモニウム、ヨウ化ピリジニウム等の4級アンモニウム塩、臭化リチウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化セシウム、臭化カルシウム等の金属臭化物、臭化テトラアルキルアンモニウム、臭化ピリジニウム等の4級アンモニウム化合物の臭素塩、塩化銅、塩化銀等の金属塩化物、酢酸銅、酢酸銀、酢酸パラジウム等の酢酸金属塩、硫酸銅、硫酸亜鉛等の金属硫酸塩、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸銅、チオシアン酸ナトリウム等のチオシアン化金属、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン等、ヨウ化1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリニウム塩、ヨウ化1−メチル−3−n−ヘキシルイミダゾリニウム塩等のInorg. Chem.35(1996)1168に記載のイオン液体、ピリジン、4−t−ブチルピリジン、ベンズイミダゾール等の塩基性化合物、リチウムトリフルオロメタンスルホニルイミド、リチウムジイソプロピルイミド等のリチウム化合物を挙げることができる。
これらの中でも上記金属化合物あるいはイオン液体の少なくともいずれか一方を含有することによって電子移動が効率的となり、さらに優れた光電変換特性を得ることができる。該金属化合物の中でも、ハロゲン化金属、チオシアン化金属、アミド化金属、また、イオン液体の中でもイミダゾリニウム化合物が特に好ましい。
【0043】
また導電性を向上させる目的で、ホール輸送性化合物の一部をラジカルカチオンにするための酸化剤を添加しても構わない。その酸化剤としては、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4−ブロモフェニル)アミニウム、ヘキサフルオロアンチモネート銀、ニトロソニウムテトラフルオボラート等が好ましい。この酸化剤の添加によって全ての高分子が酸化される必要はなく、一部のみが酸化されていれば良い。また添加した酸化剤は添加した後、系外に取り出しても、取り出さなくてもよい。
【0044】
ホール集電電極2bは、ホール輸送層4形成後に新たに付与する。またホール集電電極2bは通常前述の電子集電電極2aと同様のものを用いることができ、強度や密封性が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要ではない。ホール集電電極2bの材料の具体例としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム等の金属、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ等の炭素系化合物、ITO、FTO等の導電性金属酸化物、ポリチオフェン、ポリアニリン等の導電性高分子が挙げられる。ホール集電電極層2bの膜厚には特に制限はなく、また単独あるいは2種以上の混合で用いても構わない。ホール集電電極2bの塗設については、用いられる材料の種類やホール輸送層の種類により、適宜ホール輸送層4上に塗布、ラミネート、蒸着、CVD、貼り合わせ等の手法により形成可能である。
また、基板1bの抵抗を下げる目的で、金属リード線6b等を用いてもよい。この金属リード線の材質、設ける方法は金属リード線6aの場合と同様である。
【0045】
光電変換素子として動作するためには、電子集電電極2aとホール集電電極2bの少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の光電変換素子においては、電子集電電極2a側が透明であり、太陽光を電子集電電極2a側から入射させる方法が好ましい。この場合、ホール集電電極2b側には光を反射させる材料を使用することが好ましく、金属、導電性酸化物を蒸着したガラス、プラスチック、あるいは金属薄膜が好ましい。また、太陽光の入射側に反射防止層を設けることも有効な手段である。
【0046】
以上説明した本発明の光電変換素子は太陽電池及び太陽電池を用いた電源装置に応用できる。応用例としては従来から太陽電池やそれを用いた電源装置を利用している機器類であれば、いずれのものでも可能である。例えば電子卓上計算機や腕時計用の太陽電池に用いても良いが、本発明の光電変換素子の特徴を活用する一例として、携帯電話、電子手帳、電子ペーパー等の電源装置が挙げられる。また充電式や乾電池式の電気器具の連続使用時間を長くするための補助電源として用いることもできる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
(酸化チタン半導体電極の作製)
チタニウムテトラ−n−プロポキシド2ml、酢酸4ml、イオン交換水1ml,2−プロパノール40mlを混合し、FTOガラス基板(日本板硝子社製)上にスピンコートし、室温で乾燥後、空気中450℃で30分間焼成した。再度同一溶液を用いて、得た電極上にスピンコートし、空気中450℃で30分間焼成し、厚さ100nmの緻密な電子輸送層を形成した。
次いで、酸化チタン(石原産業社製、ST−21)3g、アセチルアセトン0.2g、界面活性剤(和光純薬社製、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル)0.3gを水5.5g、エタノール1.0gと共にビーズミル処理を12時間行った。得られた分散液にポリエチレングリコール(#20,000)1.2gを加えてペーストを作製した。このペーストを、上記緻密な電子輸送層上に膜厚3μmになるように塗布し、室温で乾燥後、空気中450℃で30分間焼成し、多孔質状の電子輸送層を形成した。
【0048】
(光電変換素子の作製)
上記酸化チタン半導体電極を、ルテニウム錯体として0.5mMに調整したN719色素[シス−ビス(イソチオシアナート)ビス(2,2’−ビピリジル−4,4’−ジカルボキシレート)ルテニウム(II)−ビス−テトラ−n−ブチルアンモニウム]のアセトニトリル/t−ブタノール(体積比1:1)混合溶液中に室温で2日間、暗所にて静置して光増感化合物を吸着させた。
次いで、下記構造式の化合物(1)を溶解したクロロベンゼン(固形分10%)溶液にトリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム(27mM)、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4−ブロモフェニル)アミニウム(0.2mM)、4−t−ブチルピリジン(0.11M)を加え、得られた溶液を上記光増感化合物を担持した半導体電極上に滴下し、自然乾燥した。この電極を二酸化炭素の超臨界状態(30MPa、80℃)で2時間半保ち、厚さ3.1μmのホール輸送層を形成した。このホール輸送層上に、金を30nm真空蒸着して光電変換素子を作製した。
【0049】
【化1】

【0050】
この光電変換素子の疑似太陽光照射下(AM1.5、100mW/cm2)における光電変換特性を評価した。その結果、光電変換特性は、開放電圧=0.79V、短絡電流密度3.5mA/cm、形状因子=0.61、変換効率=1.69%という優れた特性を示した。
【0051】
<実施例2>
トリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム、ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4−ブロモフェニル)アミニウム、4−t−ブチルピリジンを加えなかった以外は実施例1と同様の方法により、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子を実施例1と同様に評価したところ、開放電圧=0.78V、短絡電流密度2.9mA/cm、形状因子=0.59、変換効率=1.33%という優れた特性を示した。
【0052】
<実施例3>
トリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム(27mM)のかわりに、ヨウ化リチウム(27mM)を加えた以外は実施例1と同様の方法により、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子を実施例1と同様に評価したところ、開放電圧=0.79V、短絡電流密度3.6mA/cm、形状因子=0.61、変換効率=1.73%という優れた特性を示した。
【0053】
<実施例4>
ヘキサクロロアンチモン酸トリス(4−ブロモフェニル)アミニウム(0.2mM)のかわりに、ヨウ素(0.2mM)を加えた以外は実施例1と同様の方法により、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子を実施例1と同様に評価したところ、開放電圧=0.75V、短絡電流密度2.8mA/cm、形状因子=0.60、変換効率=1.26%という優れた特性を示した。
【0054】
<実施例5>
実施例1における化合物(1)を、下記構造式の化合物(2)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果、開放電圧=0.78V、短絡電流密度3.7mA/cm、形状因子=0.60、変換効率=1.73%という優れた特性を示した。
【0055】
【化2】

【0056】
<実施例6>
実施例1における化合物(1)を、下記構造式の化合物(3)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果、開放電圧=0.75V、短絡電流密度3.6mA/cm、形状因子=0.59、変換効率=1.59%という優れた特性を示した。
【0057】
【化3】

【0058】
<実施例7>
実施例1における化合物(1)を、下記構造式の化合物(4)に変更した以外は実施例1と同様にして光電変換素子を作製し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果、開放電圧=0.79V、短絡電流密度3.4mA/cm、形状因子=0.61、変換効率=1.64%という優れた特性を示した。
【0059】
【化4】

【0060】
<実施例8>
トリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム(27mM)のかわりに、ヨウ化1,2−ジメチル−3−n−プロピルイミダゾリニウム(27mM)を加えた以外は実施例6と同様の方法により、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子を実施例1と同様に評価したところ、開放電圧=0.80V、短絡電流密度3.9mA/cm、形状因子=0.59、変換効率=1.84%という優れた特性を示した。
【0061】
<実施例9>
テトラヒドロフラン(2ml)を加えて超臨界状態を2時間半保ち、ホール輸送層を形成した以外は実施例1と同様の方法によって光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子を実施例1と同様に評価したところ、開放電圧=0.81V、短絡電流密度4.0mA/cm、形状因子=0.57、変換効率=1.85%という優れた特性を示した。エントレイナーとしてテトラヒドロフランを加えたことにより、エントレイナーが無い条件よりも特性が向上することが分かる。
【0062】
<実施例10>
トリフルオロメタンスルホニルイミドリチウム(27mM)のかわりに、チオシアン酸銅(27mM)を加えた以外は実施例6と同様の方法により、光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子を実施例1と同様に評価したところ、開放電圧=0.77V、短絡電流密度3.5mA/cm、形状因子=0.58、変換効率=1.56%という優れた特性を示した。
【0063】
<実施例11>
超臨界状態(30MPa、80℃)を、亜臨界状態(6.5MPa、80℃)に変更した以外は実施例1と同様の方法によって光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子を実施例1と同様に評価したところ、開放電圧=0.72V、短絡電流密度3.3mA/cm、形状因子=0.58、変換効率=1.38%という優れた特性を示した。亜臨界状態にて作製した素子は、超臨界状態にて作製した素子よりも特性が低いものの、比較例1(超臨界状態も亜臨界状態もなし)との比較からも明らかなように、亜臨界状態にて素子を作製することで特性が向上することが分かる。
【0064】
<比較例1>
実施例1におけるホール輸送層を形成するときに、二酸化炭素の超臨界状態(30MPa、80℃)を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
得られた光電変換素子を実施例1と同様に評価したところ、開放電圧=0.76V、短絡電流密度2.8mA/cm、形状因子=0.50、変換効率=1.06%という結果であり、本発明に比較して劣っていた。
【0065】
実施例1〜10から明らかなように、ホール輸送層を超臨界状態にて形成することにより、高い変換効率を有する光電変換素子を得ることができる。また、実施例2に示すようにホール輸送層への金属化合物やイオン液体の添加が無い場合でも高い変換効率を示すが、実施例1、3、8、10に示すようにホール輸送層に金属化合物やイオン液体を添加することでより高い変換効率が得られる。また、実施例9によれば、エントレイナーとしてテトラヒドロフランを加えたことにより、エントレイナーが無い条件よりも特性が向上すること、さらにまた、実施例11によれば、ホール輸送層を亜臨界状態にて形成しても高い変換効率が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0066】
1a、1b 基板
2a 電子集電電極
2b ホール集電電極
3 電子輸送層
3a 緻密な構造からなる電子輸送層
3b 多孔質構造からなる粒状の電子輸送層
4 ホール輸送層
5 光増感化合物
6a、6b 金属リード線
【先行技術文献】
【特許文献】
【0067】
【特許文献1】特許第2664194号公報
【特許文献2】特開平11−144773号公報
【特許文献3】特開2000−106223号公報
【特許文献4】特開2007−13115号公報
【非特許文献】
【0068】
【非特許文献1】Nature,353(1991)737
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc.,115(1993)6382
【非特許文献3】Semicond.Sci.Technol.,10(1995)1689
【非特許文献4】Electrochemistry,70(2002)432
【非特許文献5】Synthetic Metals,89(1997)215
【非特許文献6】Nature,398(1998)583
【非特許文献7】Chem.Lett.,(1997)471

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基板上に光増感化合物を担持した電子輸送性化合物からなる電子輸送層が設けられた第一電極と、前記第一電極の電子輸送層と対峙する第二電極と、前記電子輸送層と前記第二電極との間にホール輸送性化合物からなるホール輸送層を備えた光電変換素子であって、前記ホール輸送層が超臨界状態または亜臨界状態にて設けられたことを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
前記超臨界状態または前記亜臨界状態で用いる超臨界流体または亜臨界流体のいずれかが、二酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項3】
前記超臨界状態または前記亜臨界状態で用いる超臨界流体または亜臨界流体のいずれかが、二酸化炭素と有機溶剤からなるエントレイナーの混合流体であることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
【請求項4】
前記ホール輸送層が、金属化合物またはイオン液体の少なくともいずれか一方を含有することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項5】
前記金属化合物が、ハロゲン化金属、チオシアン化金属、及びアミド化金属からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項6】
前記イオン液体が、イミダゾリニウム化合物であることを特徴とする請求項4に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記電子輸送性化合物が、酸化物半導体であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記酸化物半導体が、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化ニオブ、及び酸化ニッケルからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7に記載の光電変換素子。

【図1】
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【公開番号】特開2010−212131(P2010−212131A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57804(P2009−57804)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】