説明

光電変換装置、および光電変換装置の製造方法

【課題】リーク電流の抑制によって出力電力を向上させた光電変換装置ならびに該光電変換装置の製造方法を提供する。
【解決手段】光電変換装置が、下部電極層と、該下部電極層上に設けられた第1半導体層と、該第1半導体層上に設けられた、第1半導体層とは異なる導電型の第2半導体層と、該第2半導体層上に設けられた、酸化インジウム系の素材を含む上部電極層と、第2半導体層と上部電極層との間に設けられた、酸化インジウム系の素材を含み且つ上部電極層よりも電気抵抗率が高い中間導電層と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置、および光電変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電などに使用される光電変換装置としては、光吸収係数が高いCIGSなどのカルコパイライト系のI-III-VI族化合物半導体によって光吸収層が形成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。CIGSは光吸収係数が高く、光電変換装置の薄膜化や大面積化や低コスト化に適しており、これを用いた次世代太陽電池の研究開発が進められている。
【0003】
このようなカルコパイライト系の光電変換装置は、光電変換セルが、平面的に複数並設された構成を有する。この光電変換セルは、ガラスなどの基板の上に、金属電極などの下部電極と、光吸収層やバッファ層などを含む半導体層である光電変換層と、透明電極や金属電極などの上部電極とが、この順に積層されて構成される。そして、複数の光電変換セルは、隣り合う一方の光電変換セルの上部電極と他方の光電変換セルの下部電極とが、接続導体によって電気的に接続されることで、電気的に直列に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−311578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カルコパイライト系の光電変換装置では、厚みが薄いバッファ層にピンホールなどの欠陥が存在する場合には、透明電極と光吸収層との間でリーク電流が生じ、出力電力の低下が生じる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、リーク電流の抑制によって出力電力を向上させた光電変換装置ならびに該光電変換装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の態様に係る光電変換装置は、下部電極層と、前記下部電極層上に設けられた第1半導体層と、前記第1半導体層上に設けられた、前記第1半導体層とは異なる導電型の第2半導体層と、前記第2半導体層上に設けられた、酸化インジウム系の素材を含む上部電極層と、前記第2半導体層と前記上部電極層との間に設けられた、酸化インジウム系の素材を含み且つ前記上部電極層よりも電気抵抗率が高い中間導電層と、を備える。
【0008】
また、第2の態様に係る光電変換装置の製造方法は、下部電極層上に第1半導体層を形成する第1形成工程と、前記第1半導体層上に、該第1半導体層とは異なる導電型の第2半導体層を形成する第2形成工程と、前記第2半導体層上に、酸化インジウム系の素材を含む中間導電層をスパッタ法によって形成する第3形成工程と、前記第3形成工程が行われた雰囲気の第1酸素分圧よりも低い第2酸素分圧の雰囲気において、前記中間導電層上に、酸化インジウム系の素材を含み且つ前記中間導電層よりも電気抵抗率が低い上部電極層をスパッタ法によって形成する第4形成工程と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光電変換装置におけるリーク電流の発生が抑制される。これにより、光電変換装置における出力電力が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】光電変換装置の構成を示す上面図である。
【図2】光電変換装置の構成を示す断面図である。
【図3】光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図4】光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図5】光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図6】光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図7】光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図8】光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図9】光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図10】スパッタ時の酸素分圧とITOの比抵抗との関係を示す図である。
【図11】スパッタ時の酸素分圧とITOのシート抵抗との関係を示す図である。
【図12】中間導電層が存在する光電変換装置の電圧−電流特性を示す図である。
【図13】中間導電層が存在しない光電変換装置の電圧−電流特性を示す図である。
【図14】変形例に係る光電変換装置の構成を示す断面図である。
【図15】変形例に係る光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図16】変形例に係る光電変換装置の製造途中の様子を示す断面図である。
【図17】変形例に係る光電変換装置の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
<(1)光電変換装置の概略構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る光電変換装置20の構成を示す上面図である。図2は、図1の切断面線II−IIにおける光電変換装置20の断面図、つまり図1で一点鎖線にて示した位置における光電変換装置20のxz断面図である。
【0013】
光電変換装置20は、基板1の上に複数の光電変換セル10を並設した構成を有する。図1においては、図示の都合上、2つの光電変換セル10のみが示されているが、実際の光電変換装置20においては、図面の左右方向、あるいはさらにこれに垂直な図面の上下方向に、多数の光電変換セル10が平面的に(二次元的に)配設される。また、図1および図1以降の他の図には、光電変換セル10の配列方向(図面視左右方向)をx軸方向とする右手系のxyz座標系が付されている。
【0014】
各光電変換セル10は、下部電極層2と、光吸収層3と、バッファ層4と、中間導電層6と、上部電極層7と、グリッド電極8と、接続部9とを主として備える。光電変換装置20においては、上部電極層7およびグリッド電極8が設けられた側の主面が受光面側となっている。
【0015】
また、光電変換装置20には、第1溝部P1、第2溝部P2、および第3溝部P3という、3種類の溝部が設けられている。
【0016】
基板1は、複数の光電変換セル10を支持するためのものである。基板1に用いられる材料としては、ガラス、セラミックス、樹脂、および金属などが挙げられる。ここでは、基板1として、厚さ1〜3mm程度の青板ガラス(ソーダライムガラス)が用いられているものとする。
【0017】
下部電極層2は、基板1の一主面上に設けられた、Mo(モリブデン)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Ta(タンタル)、またはAu(金)などの金属、あるいはこれらの金属の積層構造体からなる導体層である。下部電極層2は、スパッタ法または蒸着法などの公知の薄膜形成方法を用いて、0.2μm〜1μm程度の厚みに形成される。
【0018】
光吸収層3は、下部電極層2の上に設けられた、カルコパイライト系(CIS系とも言う)のI-III-VI族化合物からなる、p型の導電型を有する半導体層である。光吸収層3は、1μm〜3μm程度の厚みを有している。
【0019】
ここで、I-III-VI族化合物とは、I-B族元素(11族元素とも言う)とIII-B族元素(13族元素とも言う)とVI-B族元素(16族元素とも言う)との化合物である。I-III-VI族化合物としては、例えば、CuInSe2(二セレン化銅インジウム、CISとも言う)、Cu(In,Ga)Se2(二セレン化銅インジウム・ガリウム、CIGSとも言う)、Cu(In,Ga)(Se,S)2(二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウム、CIGSSとも言う)が挙げられる。なお、光吸収層3は、薄膜の二セレン・イオウ化銅インジウム・ガリウム層を表面層として有する二セレン化銅インジウム・ガリウムなどの多元化合物半導体薄膜にて構成されていても良い。
【0020】
また、光吸収層3は、II-VI族化合物からなる半導体層であっても良い。II-VI族化合物とは、II-B族(12族元素とも言う)とVI-B族元素との化合物半導体である。ただし、光電変換効率を高めるという観点から言えば、カルコパイライト系化合物半導体であるI-III-VI化合物半導体が用いられることが好ましい。
【0021】
このような光吸収層3については、スパッタ法、蒸着法などのいわゆる真空プロセスによって形成可能であるほか、光吸収層3の構成元素を含む溶液を下部電極層2の上に塗布し、その後、乾燥・熱処理を行う、いわゆる塗布法あるいは印刷法と称されるプロセスによって形成することもできる。ただし、光電変換装置20の製造コストを抑制する観点から言えば、後者のプロセスが用いられる方が好ましい。
【0022】
バッファ層4は、光吸収層3の上に設けられた、該光吸収層3の導電型とは異なるn型の導電型を有する半導体層である。バッファ層4は、光吸収層3がI-III-VI族化合物半導体によって構成される場合に、光吸収層3とヘテロ接合する態様で設けられる。光電変換セル10では、このヘテロ接合を構成する光吸収層3とバッファ層4とにおいて光電変換が生じることから、光吸収層3とバッファ層4とが光電変換層5となっている。なお、光電変換層5の構成はこれに限定されず、異なる導電型の半導体層がホモ接合されたものであっても良い。ここで、導電型が異なる半導体とは、伝導担体(キャリア)が異なる半導体のことである。
【0023】
バッファ層4は、例えば、CdS(硫化カドミウム)、In23(硫化インジウム)、ZnS(硫化亜鉛)、ZnO(酸化亜鉛)、In2Se3(セレン化インジウム)、In(OH,S)、(Zn,In)(Se,OH)、および(Zn,Mg)Oなどの化合物半導体によって構成される。そして、リーク電流の低減という観点から言えば、バッファ層4は1Ω・cm以上の抵抗率を有することが好ましい。
【0024】
また、バッファ層4は、10nm〜200nmの厚みに、好ましくは100nm〜200nmの厚みに形成されることが好ましい。これにより、高温高湿の条件下における光電変換効率の低下が特に効果的に抑制される。バッファ層4は、例えばケミカルバスデポジション(CBD)法などで形成される。
【0025】
中間導電層6は、バッファ層4の上に設けられた、n型の導電型を有する透明導電膜である。別の観点から言えば、中間導電層6は、バッファ層4と上部電極層7との間に設けられている。そして、中間導電層6は、上部電極層7よりも電気抵抗率(比抵抗)が高い物質によって構成されている。具体的には、中間導電層6は、必要な比抵抗と導電性とを考慮すれば、シート抵抗が1×103Ω/□〜1×107Ω/□であることが好ましい。
【0026】
また、中間導電層6は、例えば、錫を含んだ酸化インジウム(ITO:In23−SnO2)および亜鉛を含んだ酸化インジウム(IZO:In23−ZnO)のうちの少なくとも一方を含む酸化インジウム系の素材を主成分とした金属酸化物半導体を用いて構成される。このように、中間導電層6では、酸化インジウム系の素材が用いられることで、高い透明性と高い導電率とがともに実現される。
【0027】
さらに、中間導電層6は、スパッタ法、蒸着法、または化学的気相成長(CVD)法などによって、0.025μm〜0.1μmの厚みに形成される。
【0028】
このような中間導電層6の存在によって、上部電極層7と光吸収層3との間におけるリーク電流の発生が抑制される。
【0029】
上部電極層7は、中間導電層6の上に設けられた、n型の導電型を有する透明導電膜である。上部電極層7は、光電変換層5において生じた電荷を中間導電層6を介して取り出す電極として設けられている。また、上部電極層7は、バッファ層4および中間導電層6よりも低い抵抗率を有する物質によって構成される。上部電極層7には、いわゆる窓層と呼ばれるものも含まれ、窓層に加えてさらに透明導電膜が設けられる場合には、これらが併せて上部電極層7とみなされる。
【0030】
この上部電極層7は、禁制帯幅が広く且つ透明で低抵抗の物質、例えば、錫を含んだ酸化インジウム(ITO)および亜鉛を含んだ酸化インジウム(IZO)のうちの少なくとも一方を含む酸化インジウム系の素材を主成分とした金属酸化物半導体を用いて構成される。このように、上部電極層7では、中間導電層6と同様に、酸化インジウム系の素材が用いられることで、高い透明性と高い導電率とがともに実現される。
【0031】
上部電極層7は、スパッタ法、蒸着法、またはCVD法などによって、0.05μm〜3.0μmの厚みに形成される。特に、中間導電層6と上部電極層7とが、スパッタ法などによって同種の金属酸化物を含む酸化インジウム系の素材によって形成される場合には、スパッタ装置内(例えば、チャンバー内)の雰囲気における酸素分圧が変更されることにより、中間導電層6と上部電極層7との間で、比抵抗を異ならせることができる。具体的には、酸素分圧の増大によって、比抵抗が高められる。
【0032】
なお、光電変換層5から中間導電層6を介して電荷を良好に取り出すという観点から言えば、上部電極層7は、抵抗率が1Ω・cm未満であり、シート抵抗が50Ω/□以下であることが好ましい。
【0033】
バッファ層4、中間導電層6、および上部電極層7については、光吸収層3が吸収する光の波長領域に対して光透過性を有する物質によって構成されることが好ましい。これにより、バッファ層4と中間導電層6と上部電極層7とが設けられることによる、光吸収層3における光の吸収効率の低下が抑制される。
【0034】
また、光透過性を高めると同時に、光の反射によるロス(光反射ロス)を防止する効果および光を散乱させる効果(光散乱効果)をそれぞれ高め、さらに光電変換によって生じた電流を良好に伝送するという観点から言えば、上部電極層7は、0.05〜0.5μmの厚さを有することが好ましい。また、上部電極層7と中間導電層6との界面、および中間導電層6とバッファ層4との界面における光反射ロスを防止する観点から言えば、バッファ層4と中間導電層6と上部電極層7の絶対屈折率が略同一であることが好ましい。
【0035】
グリッド電極8は、y軸方向に離間して設けられ、それぞれがx軸方向に延在する複数の集電部8aと、それぞれの集電部8aが接続されてなるとともにy軸方向に延在する連結部8bとを備える、導電性を有する電極である。グリッド電極8は、例えば、Agなどの金属からなる。
【0036】
集電部8aは、光電変換層5において発生して上部電極層7において取り出された電荷を集電する役割を担う。集電部8aが設けられることで、上部電極層7の薄層化が可能となる。上部電極層7については、光吸収層3の上方に設けられるので、光透過性を高めるためには出来るだけ薄く形成される方が望ましいが、薄くなればなるほど抵抗が大きくなるので、電荷の取り出し効率が低下する。そこで、集電部8aが設けられることによって、電荷の取り出し効率が確保され、上部電極層7の光透過性の向上が可能となる。
【0037】
グリッド電極8および上部電極層7によって集電された電荷は、第2溝部P2に設けられた接続部9を通じて、隣の光電変換セル10に伝達される。接続部9は、上部電極層7の延在部分7aと、その上に形成された連結部8bからの垂下部分8cとによって構成される。これにより、光電変換装置20においては、隣り合う光電変換セル10の一方の下部電極層2と、他方の上部電極層7およびグリッド電極8とが、第2溝部P2に設けられた接続部9が接続導体とされて、電気的に直列接続されている。
【0038】
グリッド電極8は、良好な導電性を確保しつつ、光吸収層3への光の入射量を左右する受光面積の低下を最小限にとどめるという観点から言えば、50μm〜400μmの幅を有することが好ましい。
【0039】
なお、グリッド電極8のうちの少なくとも連結部8bの表面は、光吸収層3が吸収する波長領域の光を反射する材質によって形成されることが好ましい。このような構成は、例えば、透光性の樹脂に光反射率の高い銀等の金属粒子を添加したり、あるいは、アルミニウムなどの光反射率の高い金属を連結部8bの表面に蒸着することなどによって形成可能である。この場合、光電変換装置20がモジュール化された際、連結部8bにおいて反射した光を、モジュール内で再び反射させて光吸収層3に再度入射させることが出来るので、光吸収層3に対する光の入射量が増大し、ひいては光電変換装置20における光電変換効率が向上する。
【0040】
好ましくは、グリッド電極8のうちの少なくとも集電部8aは、半田を含むことが好ましい。これにより、グリッド電極8について、曲げ応力に対する耐性が高められるとともに、電気抵抗をより低下させることができる。
【0041】
より好ましくは、グリッド電極8は、融点の異なる金属を2種以上含み、少なくとも1種の金属を溶融させない温度で加熱して、他の少なくとも1種の金属を溶融させた後に冷却によって硬化させることで、形成されることが好ましい。この場合、形成過程において低い融点の金属が溶融するので、グリッド電極8は緻密化され、低抵抗化される。その際、溶融していない高融点の金属によって、溶融した金属の広がりが抑制される。
【0042】
<(2)光電変換装置の製造プロセス>
次に、上記構成を有する光電変換装置20の製造プロセスについて説明する。以降においては、I-III-VI族化合物半導体からなる光吸収層3が塗布法あるいは印刷法を用いて形成され、さらにバッファ層4が形成される場合を例として説明する。
【0043】
図3から図9は、光電変換装置20の製造途中の様子を示す断面図である。なお、図3から図9で示される断面図は、図2で示される断面に対応する部分の製造途中の様子を示す。
【0044】
まず、図3で示されるように、洗浄された基板1の略全面に、スパッタ法などが用いられて、Moなどからなる下部電極層2が成膜される。そして、下部電極層2の上面のうちのY方向に沿った直線状の形成対象位置からその直下の基板1の上面にかけて、第1溝部P1が形成される。第1溝部P1は、YAGレーザーその他のレーザー光が走査されつつ形成対象位置に照射されることで溝加工が行われる、スクライブ加工によって形成されることが、好適である。図4は、第1溝部P1が形成された後の状態を示す図である。
【0045】
第1溝部P1が形成された後、下部電極層2の上に、光吸収層3とバッファ層4とが順次に形成される。図5は、光吸収層3およびバッファ層4が形成された後の状態を示す図である。
【0046】
光吸収層3については、光吸収層3を形成するための溶液が下部電極層2の表面に塗布され、乾燥によって皮膜が形成された後、該皮膜が熱処理されることで、形成される。光吸収層3を形成するための溶液は、カルコゲン元素含有有機化合物と塩基性有機溶剤とを含む溶媒(単に混合溶媒とも言う)に、I-B族金属およびIII-B族金属を直接溶解することで作製され、I-B族金属およびIII-B族金属の合計濃度が10wt%以上の溶液とされる。なお、この溶液の塗布には、スピンコータ、スクリーン印刷、ディッピング、スプレー、ダイコータなどの種々の方法の適用が可能である。
【0047】
カルコゲン元素含有有機化合物とは、カルコゲン元素を含む有機化合物である。カルコゲン元素とは、VI-B族元素のうちのS、Se、Teをいう。カルコゲン元素含有有機化合物としては、例えば、チオール、スルフィド、ジスルフィド、セレノール、セレニド、ジセレニド、テルロール、テルリド、ジテルリド等が挙げられる。
【0048】
例えば、ベンゼンセレノールを、ピリジンに対し100mol%となるように溶解させた混合溶媒に、地金の銅、地金のインジウム、地金のガリウム、および地金のセレンを直接溶解させることによって作製された溶液が、ブレード法によって塗布され、乾燥されて皮膜が形成された後、水素ガスの雰囲気下で熱処理が実施される工程が好適である。
【0049】
金属を混合溶媒に直接溶解させるというのは、単体金属または合金の地金を、直接、混合溶媒に混入し、溶解させることをいう。乾燥は、還元雰囲気下で行われることが望ましい。乾燥温度は、例えば、50℃〜300℃である。熱処理は、酸化を防止して良好なI-III-VI化合物半導体が得られるように、還元雰囲気で行われることが好ましい。還元雰囲気は、窒素雰囲気、フォーミングガス雰囲気、および水素雰囲気のうちの何れかであることが望ましい。熱処理温度は、例えば、400℃〜600℃とされる。
【0050】
バッファ層4は、溶液成長法(CBD法)によって形成される。例えば、酢酸カドミウムとチオ尿素とをアンモニアに溶解させ、これに光吸収層3の形成までが行われた基板1が浸漬されることで、光吸収層3にCdSからなるバッファ層4が形成される工程が好適な一例である。
【0051】
光吸収層3およびバッファ層4が形成された後、バッファ層4の上に、例えば、錫を含んだ酸化インジウム(ITO)および亜鉛を含んだ酸化インジウム(IZO)のうちの少なくとも一方を含む酸化インジウム系の素材を主成分とする中間導電層6が形成される。中間導電層6は、スパッタ法、蒸着法、またはCVD法などで形成される。図6は、中間導電層6が形成された後の状態を示す図である。
【0052】
中間導電層6が形成された後、中間導電層6の上面のうちのY方向に沿った直線状の形成対象位置からその直下の下部電極層2の上面にかけて、第2溝部P2が形成される。第2溝部P2は、例えば、40μm〜50μm程度のスクライブ幅のスクライブ針を用いたスクライビングを、ピッチをずらしながら連続して数回にわたり行うことによって形成される。また、スクライブ針の先端形状を第2溝部P2の幅に近い程度にまで広げたうえでスクライブすることによって第2溝部P2が形成されても良い。あるいは、2本以上のスクライブ針が相互に当接又は近接した状態で固定され、1回〜数回のスクライブを行うことによって形成されても良い。図7は、第2溝部P2が形成された後の状態を示す図である。第2溝部P2は、第1溝部P1よりも若干X方向にずれた位置に形成される。
【0053】
第2溝部P2が形成された後、中間導電層6の上に、例えば、錫を含んだ酸化インジウム(ITO)および亜鉛を含んだ酸化インジウム(IZO)のうちの少なくとも一方を含む酸化インジウム系の素材を主成分とする透明の上部電極層7が形成される。上部電極層7は、スパッタ法、蒸着法、またはCVD法などで形成される。図8は、上部電極層7が形成された後の状態を示す図である。
【0054】
中間導電層6および上部電極層7の形成については、同じ種類のスパッタ装置においてターゲットとして同一の素材を用いたスパッタ法によって形成されることが好適な一例である。具体的には、スパッタ装置のチャンバー内の雰囲気における酸素分圧が変更されることで、比抵抗が相互に異なる中間導電層6と上部電極層7とが形成される。より具体的には、チャンバー内の雰囲気の酸素分圧が、中間導電層6が形成される際よりも低い状態とされて、中間導電層6の上に、スパッタ法によって上部電極層7が形成される。なお、スパッタ装置のチャンバー内の雰囲気における酸素分圧の変更によって中間導電層6と上部電極層7との間で比抵抗が調整される条件については、後述する。
【0055】
上部電極層7が形成された後、グリッド電極8が形成される。グリッド電極8については、例えば、Agなどの金属粉を樹脂バインダーなどに分散させた導電ペーストをパターン状に印刷し、これを乾燥し、固化することで形成される。なお、固化というのは、導電ペーストに用いるバインダーが熱可塑性樹脂である場合の熔融後の固化状態を含み、バインダーが熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂などの硬化性樹脂である場合の硬化後の状態をも含む。図9は、グリッド電極8が形成された後の状態を示す図である。
【0056】
グリッド電極8が形成された後、上部電極層7の上面のうちの直線状の形成対象位置からその直下の下部電極層2の上面にかけて、第3溝部P3が形成される。第3溝部P3の幅は、例えば、40μm〜1000μm程度であることが好適である。また、第3溝部P3は、第2溝部P2と同様に、メカニカルスクライビングによって形成されることが好適である。このようにして、第3溝部P3の形成によって、図1および図2で示された光電変換装置20が得られたことになる。
【0057】
<(3)スパッタ法における酸素分圧の変更による比抵抗の調整>
次に、スパッタ装置のチャンバー内の酸素分圧が変更されてITOを主成分とする膜が形成されることで、中間導電層6および上部電極層7の比抵抗が相互に異なるように調整される条件について、実験例を示しつつ説明する。
【0058】
ここで例示する実験では、スパッタ装置のチャンバー内に、ターゲットとして酸化インジウム(In23)と酸化スズ(SnO2)とが設置される。そして、盤面が50nm四方のガラス基板がチャンバー内のターンテーブル上に設置され、該チャンバー内が真空状態とされた後に、該チャンバー内にアルゴン(Ar)と酸素(O2)の混合気体が導入されつつ、Arをイオン化してターゲットに衝突させる。このとき、弾き飛ばされたターゲットの物質がガラス基板上に付着(物理吸着)することで、ITOの膜(ITO膜)が形成される。
【0059】
なお、ITO膜を形成する際におけるスパッタ法の条件としては、下表1で示されるように、ガラス基板の温度(基板温度)が180℃〜200℃に保持されるとともに、チャンバー内の雰囲気の圧力が0.4Paに保持される。さらに、スパッタ装置のターゲットとターンテーブルとの間に電圧および電流を付与する直流電源(DC電源)の電圧、電流、および電力が、それぞれ347V、3.76A、および1.3kWに保持される。
【0060】
【表1】

【0061】
そして、チャンバー内に導入される混合気体におけるArの含有量とO2の含有量との比を変更することで得られたITO膜の電気的な特性を測定した。この測定結果を下表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
上表2では、左から順に、ITO膜の形成時にチャンバー内に導入される混合気体におけるArの含有量とO2の含有量との比(ここでは、Arの含有量をO2の含有量で除した値、単に混合比Ar/O2とも言う)と、該混合気体における酸素の含有率(酸素含有率)と、形成されたITO膜の厚さ(膜厚)と、該ITO膜のシート抵抗と、該ITO膜の比抵抗と、膜厚を50nmとした場合の該ITO膜のシート抵抗(50nm厚換算のシート抵抗とも言う)とが示されている。具体的には、混合比Ar/O2が4段階の値(36.5/0.6、36/4、32/8、30/10)に設定されたそれぞれの場合における酸素含有率、膜厚、シート抵抗、比抵抗、および50nm厚換算のシート抵抗が示されている。
【0064】
上表2で示されるように、混合比Ar/O2の低下、すなわち混合気体における酸素含有率の上昇とともに、ITO膜のシート抵抗、比抵抗、および50nm厚換算のシート抵抗が増大する。図10は、混合気体の酸素含有率とITO膜の比抵抗との関係を示す折れ線グラフであり、図11は、混合気体の酸素含有率とITO膜の50nm厚換算のシート抵抗との関係を示す折れ線グラフである。図10および図11では、横軸が混合気体の酸素含有率をそれぞれ示し、図10では、縦軸がITO膜の比抵抗を示し、図11では、縦軸がITO膜の50nm厚換算のシート抵抗を示す。
【0065】
図10および図11で示されるように、混合気体の酸素含有率が10%以上では、酸素含有率の上昇とともに、ITO膜の比抵抗および50nm厚換算のシート抵抗の双方ともに急激に増大する。すなわち、スパッタ時にチャンバー内に導入される混合気体の酸素分圧を上昇させることで、ITO膜の比抵抗およびシート抵抗を増大させることができる。
【0066】
したがって、例えば、混合気体の酸素含有率を10%以上としたスパッタリングの条件でITO膜を形成することで、中間導電層6を形成することが可能であり、混合気体の酸素含有率を0%に近い条件でITO膜を形成することで、上部電極層7を形成することが可能である。ただし、上述したように、中間導電層6については、必要な比抵抗と導電性とを考慮すれば、シート抵抗が1×103Ω/□〜1×107Ω/□であることが好ましい。このため、中間導電層6が形成される際には、スパッタ時にチャンバー内に導入される混合気体の酸素含有率が、10%〜25%程度に設定されることが好適である。
【0067】
上述した実験例では、スパッタ法によってITO膜が形成される際に、基板温度が180℃〜200℃が保持されたが、スパッタ法によって室温(25℃程度)に保持されたガラス基板上にITO膜が形成される方法や、さらにアニールが施されることでITO膜が形成される方法なども考えられる。
【0068】
しかしながら、下表3で示されるように、基板温度が室温に保持された状態でスパッタ法によって形成されたITO膜、および基板温度が室温に保持された状態でスパッタ法によって成膜された後に180℃〜200℃でアニールが施されて形成されたITO膜では、中間導電層6として好ましい電気的な特性(シート抵抗が1×103Ω/□〜1×107Ω/□)が得られない。
【0069】
【表3】

【0070】
具体的には、室温での成膜ではITO膜が非晶質となって高抵抗となり過ぎ、後でアニールを施す方法(アフターアニール)では、ITO膜の抵抗が低くなり過ぎる。したがって、中間導電層6を形成する際のスパッタ時には、基板温度が180℃〜200℃程度に加熱されることが好ましい。
【0071】
なお、上表3では、左から順に、ITO膜の形成時にチャンバー内に導入される混合気体の混合比Ar/O2と、該混合気体における酸素含有率と、スパッタ時の基板温度と、形成されたITO膜の膜厚と、該ITO膜のシート抵抗と、該ITO膜の比抵抗とが示されている。
【0072】
<(4)中間導電層の存在による特性の向上>
次に、中間導電層6の存在による光電変換装置20の特性の向上について、具体例を示して説明する。
【0073】
図12および図13は、中間導電層6の有無による光電変換装置の特性の相違についての実験結果を例示する図である。図12には、中間導電層6が存在する光電変換装置20の電圧−電流特性が示され、図13には、光電変換装置20から中間導電層6が省かれたもの、すなわち中間導電層6が存在しない光電変換装置の電圧−電流特性が示されている。
【0074】
ここでは、中間導電層6が存在する光電変換装置20については、光吸収層3がCIGSで形成され、バッファ層4がZnS(硫化亜鉛)で形成されている。また、中間導電層6が、基板温度が約200℃の条件でスパッタ法によって形成され、そのシート抵抗が1×106Ω/□〜1×107Ω/□であり且つその膜厚が約50nmのITO膜である。さらに、上部電極層7が、基板温度が約200℃の条件でスパッタ法によって形成され、そのシート抵抗が1×101Ω/□〜1×102Ω/□であり且つその膜厚が約170nmのITO膜である。
【0075】
一方、中間導電層6が存在しない光電変換装置は、中間導電層6が存在する光電変換装置20と比較して、中間導電層6が形成されず、バッファ層4上に上部電極層が直接形成された構成を有する。そして、該上部電極層は、基板温度が約200℃の条件でスパッタ法によって形成され、そのシート抵抗が1×101Ω/□〜1×102Ω/□であり且つその膜厚が約220nm(=170nm+50nm)のITO膜である。つまり、該上部電極層の膜厚が、中間導電層6が存在する光電変換装置20における中間導電層6の膜厚と上部電極層7の膜厚との合算値とほぼ等しい。
【0076】
また、図12および図13では、横軸が、光電変換装置の両極間の電圧Vを示し、縦軸が、光電変換装置の両極間に流れる電流を有効受光面積で除した値(電流密度)Jを示す。さらに、光が照射された際(光照射時)における光電変換装置の電圧−電流特性が太い実線の曲線で示され、光が照射されていない際(光非照射時)の光電変換装置の電圧−電流特性(すなわち暗電流に係る特性)が太い破線の曲線で示されている。
【0077】
図13で示されるように、中間導電層6が存在しない光電変換装置については、リーク電流の発生によって、フィルファクター(FF)および開放電圧が小さく、光電変換装置における出力電力が小さくなっている。
【0078】
これに対し、図12で示されるように、中間導電層6が存在する光電変換装置20については、リーク電流の抑制によって、FFおよび開放電圧が大きくなり、光電変換装置20における出力電力が向上している。
【0079】
すなわち、中間導電層6が存在する光電変換装置20では、中間導電層6が存在しない光電変換装置と比較して、リーク電流の発生が抑えられ、より大きな出力電力が得られる。
【0080】
以上のように、一実施形態に係る光電変換装置20では、バッファ層4と上部電極層7との間に、上部電極層7と同種の酸化インジウム系の素材を含み且つ上部電極層7よりも電気抵抗率(比抵抗)が高い中間導電層6が設けられることで、リーク電流の発生が抑制される。これにより、光電変換装置20における出力電力の向上が図られる。
【0081】
また、中間導電層6と上部電極層7とが、同じ種類のスパッタ装置においてターゲットとして同種の素材を用いたスパッタ法によって形成されることが好ましい。これにより、例えば、異なる種類のスパッタ装置を準備しなくても済むため、光電変換装置の製造設備および製造工程の簡略化が図られる。さらに、例えば、異なる素材を用いたスパッタによってスパッタ装置が汚染されることもなく、中間導電層6と上部電極層7とを形成することも可能となる。
【0082】
<(5)変形例>
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。
【0083】
例えば、上記一実施形態では、第2溝部P2の形成後に上部電極層7が形成されたが、これに限られない。例えば、第2溝部P2の形成前に上部電極層が形成され、その後、第2溝部と第3溝部とがメカニカルスクライビングなどによって同時期に形成されたうえで、グリッド電極が形成されるようにしても良い。この場合、例えば、メカニカルスクライビングによって第2溝部を形成する際に発生する削りカスなどで、中間導電層6の表面が汚染されることがないので、中間導電層6の表面の劣化が抑制され、光電変換効率がより高められる。
【0084】
さらに、この場合、中間導電層6と上部電極層とを連続して形成することが可能となる。このため、同一のスパッタ装置において、該スパッタ装置内(例えば、チャンバー内)の雰囲気の酸素分圧が変更されることで、中間導電層6と上部電極層とが連続的に形成されるようにしても良い。このような構成により、光電変換装置の製造装置および製造工程の簡略化がさらに図られ、光電変換装置の製造コストのさらなる低減も可能となる。
【0085】
図14は、第2溝部の形成前に上部電極層7Aが形成されることで製作される光電変換装置20Aの構成を示す断面図である。図1で示されるように、光電変換装置20Aを上方から見た構造は、上記一実施形態に係る光電変換装置20を上方から見た構造と同様なものとなる。このため、図14で示される光電変換装置20Aの断面は、図1の切断面線II−IIにおける光電変換装置20Aの断面に相当する。
【0086】
光電変換装置20Aは、上記一実施形態に係る光電変換装置20と比較して、第2溝部P2が幅の異なる第2溝部P2Aに置換され、上部電極層7が延在部分7aが省かれた上部電極層7Aに置換され、グリッド電極8が垂下部分8cの構成が異なる垂下部分8cAとされたグリッド電極8Aに置換され、接続部9が構成が異なる垂下部分8cAからなる接続部9Aに置換されたものである。これらの構成の置換に伴って、光電変換セル10が、構成の異なる光電変換セル10Aとされる。
【0087】
図15および図16は、光電変換装置20Aの製造途中の様子を示す断面図である。なお、図15および図16で示される断面は、図14で示される光電変換装置20Aの断面に対応する部分の製造途中の様子を示す。なお、光電変換装置20Aの製造プロセスおよび製造途中の様子のうち、下部電極層2の成膜工程(図3)、第1溝部P1の形成工程(図4)、光吸収層3およびバッファ層4の形成工程(図5)、および中間導電層6の形成工程(図6)については、光電変換装置20の製造プロセスおよび製造途中の様子と同一である。このため、以下では、中間導電層6の形成後における光電変換装置20Aの製造プロセスについて説明する。
【0088】
中間導電層6が形成された後、中間導電層6の上に、例えば、錫を含んだ酸化インジウム(ITO)および亜鉛を含んだ酸化インジウム(IZO)のうちの少なくとも一方を含む酸化インジウム系の素材を主成分とする透明の上部電極層7Aが形成される。上部電極層7Aは、上記一実施形態に係る上部電極層7と同様に、スパッタ法、蒸着法、またはCVD法などで形成される。好ましくは、中間導電層6を形成したスパッタ装置において、該スパッタ装置内(例えばチャンバー内)の酸素分圧が低減され、スパッタ法によって上部電極層7Aが形成されれば良い。図15は、上部電極層7Aが形成された後の状態を示す図である。
【0089】
上部電極層7Aが形成された後、第2溝部P2Aと第3溝部P3とが形成される。第2溝部P2Aは、上部電極層7Aの上面のうちのY方向に沿った直線状の形成対象位置からその直下の下部電極層2の上面にかけて形成される。第3溝部P3は、上部電極層7Aの上面のうちの第2溝部P2Aに係る形成対象位置よりも若干X側の形成対象位置からその直下の下部電極層2の上面にかけて形成される。第2溝部P2Aは、上記一実施形態に係る第2溝部P2と同様な方法によって形成可能であるとともに、第3溝部P3は、上記一実施形態に係る第3溝部P3と同様な方法によって形成可能である。図16は、第2溝部P2Aおよび第3溝部P3が形成された後の状態を示す図である。
【0090】
第2溝部P2Aおよび第3溝部P3が形成された後、グリッド電極8Aが形成される。グリッド電極8Aについては、上記一実施形態に係るグリッド電極8と同様な方法によって形成可能である。このようにして、グリッド電極8の形成によって、図14で示される光電変換装置20Aが得られたことになる。
【0091】
また、例えば、第2溝部の形成後に中間導電層と上部電極層とが形成され、その後、第3溝部とグリッド電極とが形成されるようにしても良い。
【0092】
図17は、第2溝部P2Bの形成後に中間導電層6Bと上部電極層7Bとが順次に形成されることで製作される光電変換装置20Bの構成を示す断面図である。図1で示されるように、光電変換装置20Bを上方から見た構造は、上記一実施形態に係る光電変換装置20を上方から見た構造と同様なものとなる。このため、図17で示される光電変換装置20Bの断面は、図1の切断面線II−IIにおける光電変換装置20Bの断面に相当する。
【0093】
光電変換装置20Bは、上記一実施形態に係る光電変換装置20と比較して、第2溝部P2が、幅の異なる第2溝部P2Bに置換され、中間導電層6が、延在部分6aBを有する中間導電層6Bに置換され、上部電極層7が、延在部分7aが形状の異なる延在部分7aBとされた上部電極層7Bに置換され、グリッド電極8が、垂下部分8cが形状の異なる垂下部分8cBとされたグリッド電極8Bに置換され、接続部9が、中間導電層6Bの延在部分6aBと上部電極層7Bの延在部分7aBとその上に形成された連結部8bからの垂下部分8cBとによって構成されている接続部9Bに置換されたものである。これらの構成の置換に伴って、光電変換セル10が、構成の異なる光電変換セル10Bとされる。
【0094】
このような構成が採用されても、中間導電層6Bと上部電極層7Bとを連続して形成することが可能となる。このため、中間導電層6Bの延在部分6aBが介在することで電気抵抗が多少増大するものの、光電変換装置の製造装置および製造工程の簡略化がさらに図られ、光電変換装置の製造コストのさらなる低減が可能となる。
【符号の説明】
【0095】
1 基板
2 下部電極層
3 光吸収層
4 バッファ層
5 光電変換層
6,6B 中間導電層
6aB,7a,7aB 延在部分
7,7A,7B 上部電極層
8,8A,8B グリッド電極
8a 集電部
8b 連結部
8c,8cA,8cB 垂下部分
9,9A,9B 接続部
10,10A,10B 光電変換セル
20,20A,20B 光電変換装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極層と、
前記下部電極層上に設けられた第1半導体層と、
前記第1半導体層上に設けられた、前記第1半導体層とは異なる導電型の第2半導体層と、
前記第2半導体層上に設けられた、酸化インジウム系の素材を含む上部電極層と、
前記第2半導体層と前記上部電極層との間に設けられた、酸化インジウム系の素材を含み且つ前記上部電極層よりも電気抵抗率が高い中間導電層と、
を備えることを特徴とする光電変換装置。
【請求項2】
下部電極層上に第1半導体層を形成する第1形成工程と、
前記第1半導体層上に、該第1半導体層とは異なる導電型の第2半導体層を形成する第2形成工程と、
前記第2半導体層上に、酸化インジウム系の素材を含む中間導電層をスパッタ法によって形成する第3形成工程と、
前記第3形成工程が行われた雰囲気の第1酸素分圧よりも低い第2酸素分圧の雰囲気において、前記中間導電層上に、酸化インジウム系の素材を含み且つ前記中間導電層よりも電気抵抗率が低い上部電極層をスパッタ法によって形成する第4形成工程と、
を備えることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の光電変換装置の製造方法であって、
前記第1および第2酸素分圧の雰囲気が、
前記第3および第4形成工程が行われるスパッタ装置内の雰囲気であることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の光電変換装置の製造方法であって、
前記第3および第4形成工程が、
同じ種類のスパッタ装置において行われることを特徴とする光電変換装置の製造方法。
【請求項5】
請求項2から請求項4の何れか1つの請求項に記載の光電変換装置の製造方法であって、
前記第3および第4形成工程が、
同一のスパッタ装置において、該スパッタ装置内の雰囲気における酸素分圧が変更されることで、連続的に行われることを特徴とする光電変換装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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