説明

光電式エンコーダ

【課題】原点位置の再現性を向上する。
【解決手段】移動量を検出するためのメイントラック14が測定方向に形成されたスケール10を有する光電式エンコーダにおいて、前記メイントラック14の測定方向と直交する方向の一部に設けられた、他の部分よりトラック幅が狭い原点信号発生部(原点検出部14a、54a)を備え、該原点信号発生部(原点検出部14a、54a)の通過によるメイン信号の振幅の変化を検出して、原点信号を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電式エンコーダに係り、特に、リニアエンコーダ、円弧エンコーダ、ロータリエンコーダ等のインクリメンタル型エンコーダに用いるのに好適な、原点位置の再現性を向上することが可能な光電式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
スケールと検出器の相対移動量を増分により検出するようにしたインクリメンタル型エンコーダが広く用いられている。このインクリメンタル型エンコーダは、絶対位置を検出するアブソリュートエンコーダに比べて、スケールの測定方向と直交する幅方向に多数のトラックを並べる必要がなく、構成が簡略であるという特徴を有する。一方、電源導入直後や、何らかの原因により基準位置との関係がずれた場合には、これをインクリメンタル信号のみでは修正できないため、図1に例示する如く、移動量を検出するためのメイントラック14が移動方向(測定方向)に形成されたスケール10に、前記メイントラック14と並んで原点トラック16を設け、電源導入直後等に該原点トラック16の通過を検出して、インクリメンタルな測定位置を修正するようにしている(特許文献1〜5参照)。図において、20は、光源22、メイントラック14と対向配置されるメイン信号用受光素子24、及び、原点トラック16と対向配置される原点信号用受光素子26を含む検出器である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平3−60041号公報
【特許文献2】特公平3−60042号公報
【特許文献3】特開平7−286861号公報
【特許文献4】特開2004−239829号公報
【特許文献5】特開2005−83808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の光電式インクリメンタル型エンコーダでは、スケール10上にメイン信号を検出するためのメイントラック14と、原点信号を検出するための原点トラック16が独立して並設されており、しかも、メイン信号用受光素子24が、相対位置を読み取り可能な受光素子アレイで構成されているのに対して、原点信号用受光素子26が、受光量により原点トラック16の有無を検出するのみであったため、トラックや光学系の光学的ばらつきや、処理回路の電気的ばらつきにより、メイン信号と原点信号に位相のずれが発生し、原点位置の再現性劣化に繋がり易いという問題点を有していた。
【0005】
なお、特許文献1には、メイントラックの間に原点検出部を設ける事が記載されているが、メイントラックが不連続で、原点検出部で途切れているため、メイン信号と原点信号の位相ずれの発生を防止することができなかった。
【0006】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、原点位置の再現性を向上することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、移動量を検出するためのメイントラックが測定方向に形成されたスケールを有する光電式エンコーダにおいて、前記メイントラックの測定方向と直交する方向の一部に設けられた、他の部分よりトラック幅が狭い原点信号発生部を備え、該原点信号発生部の通過によるメイン信号の振幅の変化を検出して、原点信号を生成するようにして、前記課題を解決したものである。
【0008】
又、メイントラック照明用光源の発光強度を一定にフィードバック制御する光源パワー制御回路と、該光源パワー制御回路による発光強度増幅分だけ、受光信号を減衰させてモニタ信号とするゲイン制御回路と、メイン信号とモニタ信号の差に基づいて原点信号を発生する原点信号生成回路と、を備えたものである。
【0009】
ここで、前記原点信号発生部を、メイントラックの一部を膜で隠すことにより形成することができる。
【0010】
あるいは、前記原点信号発生部を、スケール保護膜により形成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、メイン信号と原点信号を検出するためのモニタ信号が同じメイントラックを使って生成されるため、メイン信号とモニタ信号の位相が一致し、該モニタ信号を使って、メイン信号と位相が一致した原点信号を得ることができ、原点位置の再現性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来の光電式エンコーダの問題点を説明するための(A)側面図及び(B)平面図
【図2】本発明の第1実施形態の構成を示す(A)側面図及び(B)平面図
【図3】第1実施形態の検出器の詳細を示す断面図
【図4】同じく検出器に入射する参照信号、モニタ信号及びメイン信号の関係の例を示す図
【図5】同じく信号処理回路の一部を示す回路図
【図6】同じく信号処理回路の他の一部を示す回路図
【図7】同じく各部信号波形の例を示す図
【図8】本発明の第2実施形態の要部構成を示す(A)側面図及び(B)平面図
【図9】本発明の第3実施形態の要部構成を示す(A)側面図及び(B)平面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
本発明の第1実施形態の構成を図2(A)(側面図)及び(B)(平面図)に示す。
【0015】
本実施形態の検出器20は、図2(A)に示す如く、図1に示した従来例と同様の光源22と、受光部30とを備えている。
【0016】
又、本実施形態で使用するスケール10には、図2(B)に示す如く、一つのメイントラック14のみが配置されている。このスケール10の移動方向(測定方向)に対し、一箇所又は複数箇所に、受光部30の検出範囲30aよりもトラック幅が狭い部分を原点検出部14aとして配置する。
【0017】
前記検出器20には、スケール10上のメイントラック14と共同して明暗の参照信号を形成するインデックススケール28と、該インデックススケール28で得られた、移動量を検出した参照信号をメイン信号とモニタ信号に分岐する光学系である分岐用ビームスプリッタ32と、モニタ信号用受光素子34と、前記分岐用ビームスプリッタ32で分岐されたメイン信号を例えば4相に分波するビームスプリッタ36と、各相を受光するメイン信号用受光素子38とが備えられている。ここで、メイン信号とモニタ信号は、共に参照信号から分岐された信号になるため、位相は同相となる。
【0018】
他の構成は図1に示した従来例と同じであるため、説明は省略する。
【0019】
図2のスケール10の原点検出部14aと図3の検出器20が対面した場合、図4に示す如く参照信号の振幅が小さくなる。この時、メイン信号の振幅を確保するため、図5に示す中心電圧検出回路40で検出されるメイン信号の振幅に応じて、光源パワー制御回路(APC)42により、メイン信号の振幅が一定となるように光源22の光量をフィードバック制御する。一方、モニタ信号は、ゲイン制御回路(AGC)44により、APC42による増幅分αに対応させてモニタ信号のゲインを1/αに低下させる。
【0020】
従って、検出器20の処理回路に、図6に示す様な、モニタ信号とメイン信号を用いた差動回路50を内蔵することにより、図7に示すように原点信号が生成される。
【0021】
通常、原点信号の振幅レベルは非常に小さくなるが、検出器20がスケール10の原点検出部14aと対面した場合、振幅レベルが大きくなり、原点検出が可能となる。
【0022】
この際、スケール10の同じメイントラック14でメイン信号と原点信号を検出するため、両者の位相関係は常に同じになり、原点の再現性が向上する。
【0023】
なお、前記第1実施形態においては、原点検出部14aがメイントラック14自体の幅を狭くすることにより形成されていたが、原点検出部14aを構成する方法はこれに限定されず、図8に示す第2実施形態のように、メイントラック14の一部を膜52で隠すことにより形成したり、或いは、図9に示す第3実施形態のように、スケール10の汚れや傷を防止するための、例えばガラスやプラスチックのフィルム等でなる保護膜54により原点検出部54aを形成することも可能である。
【0024】
なお、前記実施形態において、いずれも原点検出部14aがメイントラック14の幅方向中央部に形成されていたが、中央からオフセットし、例えば片側に寄せて形成することも可能である。
【0025】
又、前記実施形態においては、いずれも本発明が、メイントラックが直線的な移動を検出するリニアエンコーダに適用されていたが、メイントラックを円弧状に配置することで、円弧エンコーダやロータリエンコーダにも適用できる。
【符号の説明】
【0026】
10…スケール
14…メイントラック
14a、54a…原点検出部
20…検出器
22…光源
30…受光部
34…モニタ信号用受光素子
38…メイン信号用受光素子
40…中心電圧検出回路
42…光源パワー制御回路(APC)
44…モニタ信号ゲイン制御回路(AGC)
50…原点信号生成用差動回路
52…膜
54…スケール保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動量を検出するためのメイントラックが測定方向に形成されたスケールを有する光電式エンコーダにおいて、
前記メイントラックの測定方向と直交する方向の一部に設けられた、他の部分よりトラック幅が狭い原点信号発生部を備え、
該原点信号発生部の通過によるメイン信号の振幅の変化を検出して、原点信号を生成するようにしたことを特徴とする光電式エンコーダ。
【請求項2】
メイントラック照明用光源の発光強度を一定にフィードバック制御する光源パワー制御回路と、
該光源パワー制御回路による発光強度増幅分だけ、受光信号を減衰させてモニタ信号とするゲイン制御回路と、
メイン信号とモニタ信号の差に基づいて原点信号を発生する原点信号生成回路と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光電式エンコーダ。
【請求項3】
前記原点信号発生部が、メイントラックの一部を膜で隠すことにより形成されたものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電式エンコーダ。
【請求項4】
前記原点信号発生部が、スケール保護膜により形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光電式エンコーダ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−237269(P2011−237269A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108750(P2010−108750)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】