説明

光電式煙感知器

【課題】S/N比および煙の流入性を改善し、製造コストの低廉化を実現する光電式煙感知器を提供する。
【解決手段】光電式煙感知器100は、光学台孔11が形成された底板12および側板13を具備する光学台10と、基板孔21が形成されたプリント基板20と、側板13に設置された光学台カバー30と、が暗室60を形成し、暗室60には底板12の一方の面12aに略平行な光軸41の光を照射する発光素子40が設置され、光学台10の底板12の他方の面12bに対面しない他方の面20bには電気的ノイズを遮蔽するグランドパターンが設置され、グランドパターン上で基板孔21の位置に、発光素子40から照射され、暗室60内の煙粒子により生じる散乱光を受光する受光素子50が実装され、受光素子50の光軸51は、基板孔21および光学台孔11を貫通し、発光素子40の光軸41に鈍角をもって交差している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光電式煙感知器、特に、S/N(シグナル/ノイズ)比がよい光電式煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光電式煙感知器は、通常、屋内等の天井に設置されるものであって、感知器内に流入した煙を検出する煙検出手段と、これらの検出結果に基づいて火災の発生を判断する判断手段と、かかる判断結果を報知する報知手段と、を有している。煙検出手段は、発光素子および受光素子から構成され、暗室内に流入した煙粒子による光の散乱の有無ないし程度を検出する。そして、暗室は蓋部、プレート、および通風自在かつ遮光可能なラビリンス体によって形成されている。
そして、光電式煙感知器の小型化を実現するため、暗室を側面の一箇所が外に向かって突出した円筒状に形成し、突出箇所に発光素子を配置すると共に、暗室の外で底面と略平行に回路基板を配置し、底面の中央に形成された基板孔の位置に合わせて回路基板に受光素子を設置した光電式煙感知器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−244515号公報(第7−9頁、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、発光素子が回路基板と平行する方向に光軸を有し、受光素子が回路基板に垂直な方向に光軸を有するため、両者がなす光軸角度が90°になっている。このため、800〜1000nm付近を検出波長とする場合、散乱する光量が少なく、S/N比が悪いという問題があった。
また、突出箇所において煙の流れが妨げられるため、全方向からの煙流入の均一性が阻害され、流入性(指向性)が悪化するという問題があった。
さらに、受光素子を形成するフォトダイオード(以下、「PD」と称す)は、電気ノイズを遮蔽するためのシールドケース内に収納(周囲を包囲)されているため、部品点数が増加して、製造コストの低廉化を阻害するという問題があった
【0005】
本発明はかかる問題を解決するものであって、第1に、S/N比および煙の流入性を改善することを目的とし、第2に、製造コストの低廉化を実現する光電式煙感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る光電式煙感知器は、貫通した光学台孔が形成された底板と、該底板の一方の面に立設され、環状に配置された複数の側板と、を具備する光学台と、前記側板の端部に設置された光学台カバーと、前記底板の他方の面に所定の間隔を空けて対面し、貫通した基板孔が形成されたプリント基板と、前記底板、前記複数の側板および前記光学台カバーによって形成され、外光は入射不能で煙は流入可能な暗室と、前記暗室内に設置され、前記底板の一方の面に略平行な光軸の光を照射する発光素子と、前記プリント基板の前記底板の他方の面に対面しない面に設けられ、電気的ノイズを遮蔽するグランドパターンと、該グランドパターン上で前記基板孔の位置に実装され、前記発光素子から照射され、前記暗室内の煙粒子により生じる散乱光を受光する受光素子と、を有し、
前記受光素子の光軸が前記基板孔および前記光学台孔を貫通することによって形成され、前記発光素子の光軸と前記受光素子の光軸とが、鈍角をもって前記暗室において交差することを特徴とする。
【0007】
(2)また、貫通した光学台孔が形成された底板と、該底板の一方の面に立設され、環状に配置された複数の側板と、を具備する光学台と、前記側板の端部に設置された光学台カバーと、前記底板の他方の面に所定の間隔を空けて対面したプリント基板と、前記底板、前記複数の側板および前記光学台カバーによって形成され、外光は入射不能で煙は流入可能な暗室と、前記暗室内に設置され、前記底板の一方の面に略平行な光軸の光を照射する発光素子と、前記プリント基板の前記底板の他方の面に対面した面に実装され、前記発光素子から照射され、前記暗室内の煙粒子により生じる散乱光を受光する受光素子と、ケース孔が形成され、前記受光素子を包囲して電気的ノイズを遮蔽するシールドケースと、を有し、
前記受光素子の光軸が前記ケース孔および前記光学台孔を貫通することによって形成され、前記発光素子の光軸と前記受光素子の光軸とが、鈍角をもって前記暗室において交差することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光電式煙感知器は、発光素子の光軸と受光素子の光軸とが鈍角をもって交差するから、800〜1000nm付近を検出波長とする場合、散乱する光量をより多く検出することができ、S/N比が改善される。
また、プリント基板の底板に対面しない面に設けられ、電気的ノイズを遮蔽するグランドパターン上に受光素子を実装すると、受光素子を受光孔が形成されている電気的ノイズを遮蔽するシールドケースに収納する必要がなくなり、部品点数が減少し、製造コストが安価になる。
さらに、底板と不連続な環状のラビリンスを形成する複数の側板と光学台カバーとによって、暗室が形成されるから、特定の方向からの煙りの流入を阻害する障壁がないため、全方向から暗室に煙が流入し、流入性(指向性)が悪化することがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光電式煙感知器を説明する平面図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る光電式煙感知器を説明する側面図。
【図3】図1に示す光電式煙感知器を説明する部材を分離して示す斜視図。
【図4】図1に示す光電式煙感知器を説明する部材を分離して示す斜視図。
【図5】図1に示す光電式煙感知器を説明する側面視の断面図。
【図6】図1に示す光電式煙感知器を説明する平面視の断面図。
【図7】本発明の実施の形態2に係る光電式煙感知器を説明する平面図。
【図8】図7に示す光電式煙感知器を説明する部材を分離して示す斜視図。
【図9】図7に示す光電式煙感知器を説明する側面視の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1に係る光電式煙感知器を図面を参照しながら説明する。なお、各図において同じ部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図1〜図6は本発明の実施の形態1に係る光電式煙感知器を説明するものであって、図1は平面図、図2は側面図、図3は部材を分離して示す斜視図、図4は部材を分離して示す斜視図、図5は側面視の断面図、図6は平面視の断面図である。
【0011】
図1〜図6において、光電式煙感知器100は、貫通した光学台孔11が形成された底板12と、底板12の一方の面12aに立設された複数の側板13と、を具備する光学台10と、底板12の他方の面12bに所定の間隔を空けて対面し、貫通した基板孔21が形成されたプリント基板20と、側板13の端部に設置された光学台カバー30と、を有している。
そして、底板12、複数の側板13および光学台カバー30によって暗室60が形成されている。複数の側板13は、それぞれ断面T字状や断面Y字状であって、側板13同士の隙間を空気が通過自在であるものの、暗室60内に外光を進入させないラビリンス(迷路)を形成するように配置されている。
また、底板12には貫通する排煙孔14が形成され、底板12の他方の面12bとプリント基板20の一方の面20aとの間に形成された隙間(以下、「排煙路」と称す)70は、外部に連通している。
【0012】
そして、側板13のうちの所定の側板13aには、底板12の一方の面12aに略平行で暗室60の中央に向かった光軸41を有する近赤外光を発する発光素子40が設置されている(正確には、発光素子40の光軸41が、底板12の一方の面12aに略平行で暗室60の中央に向かう直線に一致している)。
また、底板12の他方の面12bに対面しないプリント基板20の他方の面20bには電気的ノイズを遮蔽するグランドパターンが設置され、グランドパターン上で、基板孔21の位置に受光素子50が散乱光を受光できるように実装されている。
【0013】
すなわち、底板12と不連続な環状のラビリンスを形成する複数の側板13と光学台カバー30とによって、煙の流入を許容しながら、外光の進入を阻止する暗室60が形成されている。
そして、受光素子50は暗室60からの光(正確には、煙による散乱光で、検出波長800〜1000nmに含まれる)を感知するものであって、その光軸51は、基板孔21および光学台孔11を通過させることによって形成され、発光素子40の光軸41に鈍角(略120°)をもって交差している。
【0014】
したがって、光電式煙感知器100は、プリント基板20が建物の天井側あるいは壁側になるよう設置され、発生した煙は側板13同士の隙間(ラビリンスが形成されている)を通過して暗室60内に流入し、底板12を貫通する排煙孔14や光学台孔11を経由して、排煙路70に流入し、そして、光電式煙感知器100の外部に流出する。
このとき、暗室60内において、発光素子40から照射された光は、煙によって散乱されるから、かかる散乱光が受光素子50によって感知される。
【0015】
発光素子の光軸と受光素子の光軸とがなす角度と、受光素子が感知する散乱光出力との関係を測定した。
その結果、光軸同士がなす角度が90°より大きくなる程、散乱光出力は増大し、特に、110°を超えると、散乱光出力は急増している。
したがって、光電式煙感知器100は、光軸41と光軸51とがなす角度を略120°にしているから、散乱する光量をより多く検出することができ、S/N比が改善されている。
【0016】
また、プリント基板20の底板12に対面しない他方の面20bに電気的ノイズを遮蔽するグランドパターンが設けられ、グランドパターン上に受光素子50が実装されているから、受光素子50を電気的ノイズから遮蔽するためのシールドケースに収納する必要がなくなるため、部品点数が減少し、製造コストが安価になっている。
さらに、底板12と不連続な環状のラビリンスを形成する複数の側板13と光学台カバー30とによって、暗室60が形成され、特定の方向からの煙の流入を阻害する障壁がないため、全方向から暗室60に煙が流入し、流入性(指向性)が悪化することがない。
【0017】
[実施の形態2]
次に、本発明の実施の形態2に係る光電式煙感知器を図面を参照しながら説明する。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図7〜図9は本発明の実施の形態2に係る光電式煙感知器を説明するものであって、図7は平面図、図8は部材を分離して示す斜視図、図9は側面視の断面図である。
【0018】
図7〜図9において、光電式煙感知器200は、実施の形態1で説明した光電式煙感知器100において、受光素子50の設置位置を変更し、かかる設置位置の変更に伴って、基板孔21およびグランドパターンを撤去すると共に、受光素子50を、ケース孔52が形成されたシールドケース53内に収納したものである。
すなわち、プリント基板20の底板12の他方の面12bに対面する一方の面20aに受光素子50が実装され、受光素子50は電気的ノイズを遮蔽するシールドケース53内に収納されている。
【0019】
したがって、受光素子50は底板12に形成された光学台孔11とシールドケース53に形成されたケース孔52を通過した散乱光を、プリント基板20の底板12側の一方の面20a側において感知する。
そして、発光素子40の光軸41と、受光素子50の光軸51とは鈍角(略120°)をもって交差しているから、実施の形態1で説明した光電式煙感知器100と同様に、S/N比および流入性が改善されている。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように、本発明に係る光電式煙感知器は、S/N(シグナル/ノイズ)比が改善されるから、様々な場所に設置される各種光電式煙感知器として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
10:光学台、11:光学台孔、12:底板、12a:一方の面、12b:他方の面、13:側板、13a:側板、14:排煙孔、20:プリント基板、20a:一方の面、20b:他方の面、21:基板孔、30:光学台カバー、40:発光素子、41:光軸、50:受光素子、51:光軸、52:ケース孔、53:シールドケース、60:暗室、70:排煙路、100:光電式煙感知器(実施の形態1)、200:光電式煙感知器(実施の形態2)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通した光学台孔が形成された底板と、該底板の一方の面に立設され、環状に配置された複数の側板と、を具備する光学台と、
前記側板の端部に設置された光学台カバーと、
前記底板の他方の面に所定の間隔を空けて対面し、貫通した基板孔が形成されたプリント基板と、
前記底板、前記複数の側板および前記光学台カバーによって形成され、外光は入射不能で煙は流入可能な暗室と、
前記暗室内に設置され、前記底板の一方の面に略平行な光軸の光を照射する発光素子と、
前記プリント基板の前記底板の他方の面に対面しない面に設けられ、電気的ノイズを遮蔽するグランドパターンと、
該グランドパターン上で前記基板孔の位置に実装され、前記発光素子から照射され、前記暗室内の煙粒子により生じる散乱光を受光する受光素子と、
を有し、
前記受光素子の光軸が前記基板孔および前記光学台孔を貫通することによって形成され、前記発光素子の光軸と前記受光素子の光軸とが、鈍角をもって前記暗室において交差することを特徴とする光電式煙感知器。
【請求項2】
貫通した光学台孔が形成された底板と、該底板の一方の面に立設され、環状に配置された複数の側板と、を具備する光学台と、
前記側板の端部に設置された光学台カバーと、
前記底板の他方の面に所定の間隔を空けて対面したプリント基板と、
前記底板、前記複数の側板および前記光学台カバーによって形成され、外光は入射不能で煙は流入可能な暗室と、
前記暗室内に設置され、前記底板の一方の面に略平行な光軸の光を照射する発光素子と、
前記プリント基板の前記底板の他方の面に対面した面に実装され、前記発光素子から照射され、前記暗室内の煙粒子により生じる散乱光を受光する受光素子と、
ケース孔が形成され、前記受光素子を包囲して電気的ノイズを遮蔽するシールドケースと、
を有し、
前記受光素子の光軸が前記ケース孔および前記光学台孔を貫通することによって形成され、前記発光素子の光軸と前記受光素子の光軸とが、鈍角をもって前記暗室において交差することを特徴とする光電式煙感知器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−3640(P2013−3640A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131056(P2011−131056)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】