説明

光電気複合配線フィルムの切断方法及びダイシングテープ

【課題】外形加工の位置決め基準として光導波路のコアを使用することを可能とし、光導波路フィルムの導波路位置精度を向上し得る光電気複合配線フィルムの切断方法及び該切断用のダイシングテープを提供する。
【解決手段】ワークテーブル5上に、金属箔4、ダイシングテープ2及び、フレキシブルプリント配線板9と光導波路フィルム10を積層した光電気複合配線フィルム1を順に配し、前記金属箔4に照明の光を反射させながら、ダイシングブレード8により切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント配線板(以下「FPC」と記載する場合がある。)と光導波路フィルムを積層した光電気複合配線フィルムを、ダイシングにより切断する方法及び切断用のダイシングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイシングにおいては、切断する被加工物のアライメントマークを確認するために、光学顕微鏡(以下、単に「顕微鏡」と記載する。)を用い、通常顕微鏡と同軸の照明を用いる。この時、アライメントマークが表面に現れない被加工物やアライメントマークを認識しづらい被加工物を加工する場合に、特別に赤外線カメラを設置して、内部に埋め込まれたアライメントマークやコントラストの低いアライメントマークを認識する手段が提案されている(特許文献1参照)。
また、破損等により不定形となった半導体ウェハーをダイシングするに際しては、該不定形半導体ウェハーの大きさ、形状、位置を形状認識手段によって認識し、最適アライメント領域等を割り出す必要があるが、この際に、形状認識を容易にするために、ダイシングテープ自体に発光機能を持たせる方法が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、上記いずれの方法も、赤外線カメラの設置やダイシングテープへの発光機能の付与といった特別な手段を講じる必要があり、またダイシングの操作が煩雑になるとともに、コスト増となる。したがって、簡便でアライメントに沿って正確に切断する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−85973号公報
【特許文献2】特開平9−148277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポリイミド基材などを用いたフレキシブルプリント配線板に光導波路フィルムを積層した光電気複合配線フィルムを、ダイシングなどにより外形を加工するに際し、光導波路のコアパターンを基準にして切断を行うことが、高い位置決め精度が得られる点で好ましい。このような位置決めを行う場合には、通常、顕微鏡を使用して、光導波路のコアパターンを観察することが行われる。
具体的には、図2に示すように、被加工物1はダイシングテープ2を使用してダイシングフレーム3に固定され、ワークテーブル(ポーラスチャックテーブルなど)5上にセットされる。そして、顕微鏡及び照明(図示せず)を用いて光導波路のコアパターンを観察するものである。
【0005】
光電気複合配線フィルムの切断における位置決めについて以下説明する。図6及び図7に示す例では、LD(レーザーダイオード、発光素子)から出た光信号が45度ミラー13で反射して光導波路に伝送され、反対側に設置された45度ミラー13で、PD(フォトダイオード、受光素子)に受信される。このような構造の場合、ミラーとコアの交点がLD及びPDの位置に一致する必要がある。このような光電気複合配線フィルムを、外形を基準にして位置決めするためには、外形加工の基準をミラーとコアの交点とする必要がある。このように光導波路を基準として使用するためには、光導波路を顕微鏡の画面で明瞭に認識できるようにする必要がある。
【0006】
しかしながら、フレキシブルプリント配線板の透過率が光導波路フィルムに比べ小さいため、顕微鏡では、光導波路フィルムのコアパターンが確認しづらいという問題があった。
実際に、光電気複合配線フィルム1をワークテーブルにセットし、45度ミラーと光導波路のコアが交差する部分を、顕微鏡で見た写真を図4に示す。図4に示されるように、FPCが、茶褐色系で光の透過が悪いため(透過率が40%程度)、光導波路のコアパターンが見えづらいことがわかる。したがって、光導波路のコアパターンが認識しづらく、加工する際に基準となる位置が不明瞭となり、位置決め誤差が大きくなり、寸法精度が悪化する。
これは、顕微鏡の照明を調整しても、コアパターン(のエッジ)が明瞭にならないため、ダイシング時に光導波路コアパターンを基準にして外形加工を行う際の位置決め精度は著しく低い。
【0007】
本発明は、外形加工の位置決め基準として光導波路のコアを使用することを可能とし、光導波路フィルムの導波路位置精度を向上し得る光電気複合配線フィルムの切断方法及び該切断用のダイシングテープを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、ワークテーブル上に、金属箔、ダイシングテープ及び前記光電気複合配線フィルムを順に配することにより、照明からの光が反射され、フレキシブルプリント配線板と複合化した光導波路のコアパターンを明瞭にすることが可能になることを見出した。本発明はかかる知見に基づき完成したものである。
【0009】
すなわち、本発明は、フレキシブルプリント配線板と光導波路フィルムを積層した光電気複合配線フィルムを切断する方法であって、ワークテーブル上に、金属箔、ダイシングテープ及び前記光電気複合配線フィルムを順に配し、前記金属箔に照明の光を反射させながら、ダイシングにより切断することを特徴とする光電気複合配線フィルムの切断方法、及びフレキシブルプリント配線板と光導波路フィルムを積層した光電気複合配線フィルムをダイシングするためのダイシング用テープであって、粘着剤層と金属層を有することを特徴とするダイシングテープ、を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、光導波路のコアが明瞭に認識できるようになり、外形加工の位置決め基準として光導波路のコアを使用することが可能となる。すなわち、ダイシングテープと、ポーラスチャックテーブルなどのワークテーブルの間に金属箔を配することにより、顕微鏡に付属する同軸照明などの光を反射し、フレキシブルプリント配線板と複合化した光導波路のコアパターンを明瞭にすることが可能になる。このことにより、光導波路フィルムにおける光導波路の位置精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ポーラスチャックテーブルにダイシングフレームを使用して光電気複合配線フィルムを取り付ける際に、ダイシングテープの下にアルミ箔を敷いた状態の断面図である。
【図2】ポーラスチャックテーブルにフレームを使用して光電気複合配線フィルムを取り付けた状態の断面図である(従来例)。
【図3】ダイシング時の、ブレードによる切断状態の断面図である。
【図4】ダイシングテープの下にアルミ箔を載置しない場合に、顕微鏡で45度ミラーと光導波路のコアが交差する部分を観察した写真である。
【図5】ダイシングテープの下にアルミ箔を載置した場合に、顕微鏡で45度ミラーと光導波路のコアが交差する部分を観察した写真である。
【図6】光導波路フィルムを用いて光信号を伝送する一例の断面図である。
【図7】光導波路フィルムを用いて光信号を伝送する一例の平面図である。
【図8】本発明のダイシングテープを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の光電気複合配線フィルムの切断方法は、フレキシブルプリント配線板と光導波路フィルムを積層した光電気複合配線フィルムを切断する方法であり、図1に示すように、ワークテーブル5上に、金属箔4、ダイシングテープ2及び光電気複合配線フィルム1を順に配し、金属箔4に照明の光を反射させながら、ダイシングにより切断することを特徴とする。
【0013】
本発明の光電気複合配線フィルムの切断方法においては、ダイシングフレーム3を用いることが好ましい。具体的には、光電気複合配線フィルム1は、ダイシングテープ2に載置され、光電気複合配線フィルム1を囲むようにダイシングフレーム3が配され、固定される。
ダイシングテープ2は、図3に示すように基材層7と粘着剤層6から構成され、粘着剤層6上に光電気複合配線フィルム1が貼着される。
基材層7は樹脂フィルムからなることが好ましく、具体的には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニールなどの樹脂フィルムが好適に挙げられる。また、粘着剤層も樹脂組成物から構成されていることが好ましく、紫外線硬化型のアクリルゴム系粘着材などの樹脂組成物が好適に挙げられる。
これらのうち、特にUV剥離型の粘着テープが好ましい。ダイシングにより切断した後に、紫外線(UV)を照射することで、容易に剥離し、光電気複合配線フィルムを得やすいからである。
【0014】
本発明では、通常、ワークテーブル5上に、まず金属箔4が配され、次いで上述のようにしてダイシングフレーム3に固定された光電気複合配線フィルム1が、配される。金属箔4としては、金属光沢を有し、後述する光の反射を十分行い得るものであれば特に制限はないが、価格や取り扱いやすさの点からアルミ箔を用いることが好ましい。なお、金属箔4は、単にワークテーブル5の上に置いて、ダイシングテープ2とワークテーブル5で挟んでもよいし、粘着剤等でワークテーブル5に貼着させておいてもよい。
【0015】
また、本発明においては、粘着剤層と金属層を有してなるダイシングテープを用いることが好ましい。このようなダイシングテープとしては、基材層を有し、該基材層の表面に粘着剤層を有し、裏面に金属層を有してなるダイシングテープが挙げられる。より具体的には、例えば、図8に断面図を示すように、基材層7と粘着剤層6からなるダイシングテープ2の裏面側、すなわち、粘着剤層6の反対側にあらかじめ金属層4を有してなる、基材層の表面に粘着剤層を有し、裏面に金属層を有してなるダイシングテープが好適に挙げられる。
また、基材層を有さず、金属層に直接粘着層が設けられる態様も本発明のダイシングテープに包含され、上記基材層を有するダイシングテープと同様の効果を示す。
このように、照明光を反射するための金属層を有してなるダイシングテープを用いることで、汎用のダイシングにおいて、本発明の切断方法を簡便に適用することができ好ましい。ここで用いる金属層は、上記と同様に、価格や取り扱いやすさの点から、アルミ箔で形成されていることが好ましい。
【0016】
本発明のダイシングテープを製造する方法として、基材層を有するタイプのものについては、従来の基材層と粘着層から構成されるダイシングテープの基材層の裏面に、接着剤を用いて金属箔を貼着する方法、基材層と粘着層から構成されるダイシングテープの基材層の裏面に金属を塗布又は蒸着する等の方法で、金属薄膜からなる金属層を基材層に積層する方法が挙げられる。また、基材層を有さないタイプのものについては、従来のダイシングテープの基材層のかわりに金属薄膜、金属箔等の金属層を用い、該金属層上に粘着剤を塗布する方法が挙げられる。
【0017】
金属箔(金属層)4の厚さとしては、照明の光を反射させ得る範囲内で特に制限はないが、十分な反射光が得られ、かつワークテーブルに容易に配することができるとの観点から、2〜35μmの範囲が好ましく、5〜15μmの範囲がより好ましく、8〜12μmの範囲がさらに好ましい。
【0018】
本発明で用いる、ワークテーブル5としては、ポーラスチャックテーブル等の吸引テーブルを用いることが、金属箔4、ダイシングテープ2、及び光電気複合配線フィルム1が、ワークテーブル5に密着し、皺などが生じにくいため好ましい。
【0019】
本発明の光電気複合配線フィルムの切断方法においては、照明にて可視光を照射し、コアパターンを顕微鏡で観察しながら、ダイシングにより切断することが好ましい。照明としては、反射照明であっても、同軸照明であってもよいが、顕微鏡の位置を光電気複合配線フィルムに対して直上部に配置でき、コアの観察が容易であるとの点から、顕微鏡と同方向に光が反射する同軸照明が好ましい。なお、光源としては特に制限はない。
【0020】
ダイシングについては、例えば図3に示すように、光導波路のコアを観察しながら、ダイシングブレード8を上下させることによって光電気複合配線フィルム1を切断する。該切断を連続的に行うためには、ダイシングブレード8及び/又は光電気複合配線フィルム1を横方向(図3における矢印の方向)にずらしながら、ダイシングブレード8を上下させて切断する。
【0021】
本発明の被加工物である光電気複合配線フィルム1は、図3に示すように、フレキシブルプリント配線板9と光導波路フィルム10を積層したものであり、その表面には所望によりカバーフィルム11が配されていてもよい。光導波路フィルム10は、下部クラッド層、コア部及び上部クラッド層から構成され、通常フィルム型の光導波路に用いられる材料からなる。
【0022】
以下、本発明の実施の形態を、図1及び図3を用いて説明する。
本発明における被加工物である光電気複合配線フィルムを用意した。光電気複合配線フィルム1は、フレキシブルプリント配線板9と光導波路フィルム10をシート状の熱硬化型接着剤によって積層させたものであり、表面(フレキシブルプリント配線板9の反対側)にはカバーフィルム11が配されている。フレキシブルプリント配線板9は、ポリイミド基材を用いたものであり、光導波路フィルム10は下部クラッド層、コア部、上部クラッド層によって構成される。
次に、図1に示すように、該光電気複合配線フィルム1を、ダイシングテープ2を用いてダイシングフレーム3に固定させた。ダイシングテープ2としては、UV剥離型の粘着テープ(電気化学工業(株)製「UHP-1005M3」)を用いた。なお、該ダイシングテープは、図3に示すように基材層7と粘着剤層6から構成され、基材層7はポリエチレンフィルムからなり、粘着剤層6は紫外線硬化型のアクリルゴム系粘着材によって構成される。また、基材層の厚さは100μm、粘着剤層の厚さは5μmである。
【0023】
次いで、ワークテーブル(ポーラスチャックテーブル)5の上にあらかじめ、切断する光電気複合配線フィルム1と同等かやや大きめのサイズに切断したアルミ箔(厚さ;15μm、金属箔4)を載置した。この際に、アルミ箔は、光電気複合配線フィルム1と同じ位置で皺の生じないようにする。
その上に、金属箔4、ダイシングテープ2、光電気複合配線フィルム1の順に配されるように、光電気複合配線フィルム1が固定されたダイシングフレーム3を載せ、顕微鏡で観察した。
顕微鏡観察の結果、図5に示すように、光導波路コアパターンが明瞭に確認できた。図5における13は光電気複合配線フィルム1に形成された、45度ミラーの溝で、12は光導波路のコアである。光電気複合配線フィルム1の左右に配置されるこれらのコアと45度ミラーの交点を基準にして、外形加工を行った。
【0024】
外形加工は、図3に示すように、ダイシングブレード8を上下させることによって光電気複合配線フィルム1を切断し、光電気複合配線フィルム1を横方向(図3における矢印の方向)に移動させながら、連続して切断した。
切断された光電気複合配線フィルム1は、図6及び図7に示される構造を有する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によれば、光導波路のコアを明瞭に認識できるようになり、外形加工の位置決め基準として導波路コアを使用することが可能となる。したがって、光電気複合配線フィルムにおける光導波路の位置精度を向上させることができる。
【符号の説明】
【0026】
1 光電気複合配線フィルム(被加工物)
2 ダイシングテープ(粘着テープ)
3 ダイシングフレーム
4 金属箔(金属層)
5 ワークテーブル(ポーラスチャックテーブル)
6 ダイシングテープの粘着剤層
7 ダイシングテープの基材層
8 ダイシングブレード
9 フレキシブルプリント配線板
10 光導波路フィルム
11 カバーフィルム
12 コアパターン
13 45度ミラー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルプリント配線板と光導波路フィルムを積層した光電気複合配線フィルムを切断する方法であって、ワークテーブル上に、金属箔、ダイシングテープ及び前記光電気複合配線フィルムを順に配し、前記金属箔に照明の光を反射させながら、ダイシングにより切断することを特徴とする光電気複合配線フィルムの切断方法。
【請求項2】
顕微鏡下にコアパターンを観察しながら前記ダイシングによる切断を行うことを特徴とする請求項1に記載の光電気複合配線フィルムの切断方法。
【請求項3】
前記光複合配線フィルムを載置するダイシングテープ上に、光複合配線フィルムを囲むようにダイシングフレームを配して、前記ダイシングによる切断を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の光電気複合配線フィルムの切断方法。
【請求項4】
前記金属箔がアルミ箔である請求項1〜3のいずれかに記載の光電気複合配線フィルムの切断方法。
【請求項5】
前記照明が同軸照明である請求項1〜4のいずれかに記載の光電気複合配線フィルムの切断方法。
【請求項6】
フレキシブルプリント配線板と光導波路フィルムを積層した光電気複合配線フィルムをダイシングするためのダイシング用テープであって、粘着剤層と金属層を有することを特徴とするダイシングテープ。
【請求項7】
さらに、基材層を有し、該基材層の表面に前記粘着剤層を有し、裏面に前記金属層を有してなる請求項6に記載のダイシングテープ。
【請求項8】
前記金属層がアルミ箔である請求項6又は7に記載のダイシングテープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−258692(P2009−258692A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66033(P2009−66033)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】