説明

光電池

【課題】改良された光電池、詳細には、最終製品の改良された機械的な柔軟性に、好適な製造特性、有利な光電的特性および優れた長期間安定性を合わせ持った色素増感太陽電池を提供する。
【解決手段】金属酸化物半導体層(16)で被膜された導電性支持基板(10)と、金属酸化物半導体層と電子的に相互作用するように形成された色素層(18)と、色素層に塗布された電解質層(32)と、電解質層に接続する対向電極(20)とを備える。支持基板および/または対向電極は、複数の織り合わされた繊維から構成された柔軟なファブリックから作成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主請求項の前提部分に記載した光電池、詳細には、いわゆる色素増感型のナノ構造太陽電池(DNSC=DYE−SENSITIZED NANO STRUCTURESOLAR CELL)に関する。本発明は、また、他の太陽電池技術、特に考えられる有機太陽電池にも同様に適している。
【背景技術】
【0002】
1つのジャンルを形成する装置が専門家集団の間で広く知られ、この装置は、ジャンルを形成すると見なされる本技術の重要な構造特徴および光起電力もしくは化学的詳細事項を開示する特許文献1の発明者にちなんだグレッツェル電池と称されることが多い。このような電池の中核は、電極の上に設けられた二酸化チタン層である。この層の上には、色素層(=DYE層)が形成され、さらにこの色素層の上に電解質層、さらにこの電解質層の上に対向電極が形成されている。外部電極が、典型的には、薄い導電性ガラス基板として(電池への光の入力を可能にするために)実装される。この構成では、入射光によって電子が色素層から励起され、TiOの伝導帯に入るという効果を利用することにより、電荷分離の状態を達成する。次に、伝導帯内の電荷が、負荷を介して対向電極に送り込まれて、ここで、レドックス電解質が低減されて、それに伴い(酸化された)色素が低減される。図4はこの基本プロセスを2次元で図示し、横方向には個々の工程の順番すなわち配置、縦方向にはエネルギーレベルを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第4927721号明細書
【特許文献2】欧州特許第525070号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、多くの用途について、このような固定された装置(導電性ガラス平板電極による)は全く融通の利かないものであるため、可撓性がないことにより、可撓性を有するDNSCを製造する試みもまた知られている。一方、このために、ガラス板の代わりに高分子基板が用いられるように、低温のプロセス(金属酸化物半導体に適用する場合は特に)を提供する必要があった。なお、二酸化チタンは、典型的には、プラスチックの使用に適合しない高温で利用されるものである。したがって、特に考えられる導電被膜されたPET(特に考えられるのはITO−PET、すなわち、インジウムがドープされたSnOによって製造されたPET上の電導層)の形態で、ポリマーをベースにした基板を用いる試みがなされている。ポリマーをベースにした基板フィルムの場合、電導層は、例えば、ドープされた金属酸化物、導電性ポリマーなどの透明な材料に限定される。光学的に不透明な被膜(例えば金属など)は、一般に用いられることができない。ここで用いる(導電性)ポリマーに関する別の問題は、シート抵抗が不適切に高いことである。
【0005】
DNSC原理に基づく可撓性を有する太陽電池を製造するこのような検討事項(原則として最初のみ存在する)のさらなる欠点は、一方の、いわゆる活性層(すなわち、導電性基板、導電性基板の上に形成された二酸化チタン層、および色素層)と、他方の対向電極との間の変形によって不安定な状態となる、機械的な問題である。このような変形は、接触面における変位すなわちずれによるものである。
【0006】
最後に、柔軟なSECMの設計上の重要な問題は、基板と金属酸化物半導体材料との間における、安定で負荷に耐える接合部であるにもかかわらず柔軟でもある接合部の製造である。大きな有効表面面積(例えば、ナノ粒子構造による、投影された底面積に対する有効表面面積の割合として定義された、約20〜200の表面凹凸寸法を有する)の結果として典型的に選択される二酸化チタンには、機械的な安定性の問題を有する材料の固有の脆弱性が存在する。詳細には、このような金属酸化物層は、支持基板としての(導電性)ポリマーへの接着が不十分である。
【0007】
したがって、本発明の目的は、改良された光電池を提供することであり、詳細には、最終製品の改良された機械的な可撓性に、好適な製造特性、有利な光電的特性および優れた長期間安定性を合わせ持ったDNSC型の太陽電池を提供することである。さらに、低コストで製造できる可能性を有し、かつ大量生産に適し、一方で、小規模生産もしくは実験室環境も許容される、光電特性を高度に再現可能な電池が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、主請求項の特徴を有する光電池と、従属する請求項16による光電池の製造方法によって達成される。本発明の有利な、さらなる実現形態が従属する請求項に記載されている。
【0009】
いわゆるグレッツェル太陽電池(特に考えられるのは上記特許文献1または上記特許文献2による太陽電池)の動作モードを基本的に用いる、本発明による有利な態様においては、本発明による導電的に構成された支持基板の基体として(追加的に、または、代わりに、対向電極にも)、ファブリック(織物)が選択される。この柔軟なファブリック(可撓性を有するファブリック)によって、上記の目的を達成するための多数の驚くべき利点を得ることができる。すなわち、繊維に用いられる材料自体が透過性ではなくても、ファブリック、より好ましくは、一定の孔(開口)および/またはファブリック間隙(ファブリックにおける裂け目のような隙間)を有するファブリックを用いることによって、調節可能もしくは所定で、有利な透過性を支持基板が達成することができる。したがって、場合によっては、装置全体が同様の利益を達成することができる。また、ファブリック自体が、場合によっては大きい有効表面面積(この有効表面面積は、特に考えられるのは、このファブリックに織り込まれた繊維の水平方向表面による)を提供する。この結果、その後に金属酸化物半導体材料(同様に、この材料自体も大きい表面面積を有する)を被膜(コーティング)すると、塗布される(施される)色素層(好ましくは、単分子)の基体として有効な総面積が存在する。これによって、効率性および安定性を最適化して、これまでは達成されなかった高効率を達成することができる。(別の改良による有利な態様においては、ファブリックの有効表面面積が本質的に大きいことにより、金属酸化物半導体材料を、極めて薄く、好ましくは、対応する効率性に有利な効果を伴って、ナノ粒子および/またはナノ構造の被膜(基板の電導層までの距離が電子にとって短いことに起因して、低暗(low dark))としてのみ塗布することができ、また、薄い被膜による低い脆性に起因して、機械的安定性を改善することができる。)。この構成によって、また、十分に大きいスペクトルの適切な色素(特に、吸光係数がより低い色素)を効果的に用いることができる。
【0010】
この場合、本発明に従って用いられるファブリックによって、これらの有利な効果を達成できる数多くの可能な構成が可能になる。一方で、このファブリックは、好ましくは、製織の前または後に、適切な導電性被膜(導電性)が施される非導電性または弱導電性の繊維から構成され、別の実現形態によれば、炭素または(導電性の)高分子繊維を用いることが好ましい。他方で、例えば、適切な、銅、チタンまたはアルミニウムの繊維が、導電性繊維に用いられる。
【0011】
さらなる改良によれば、支持基板を実現するためにこのファブリックに塗布される電導層(主に、非導電性/弱導電性繊維の場合)は、この場合も同じく、電導層自体が(例えば、適切にドープされた)金属酸化物、金属または導電性ポリマーである。
【0012】
また、ファブリック自体を用いて太陽電池の各接続電極に対して電荷を供給または導出するのに必要なラインを案内することも、特に好適である。本発明の好ましい別の改良によれば、この構成は、この改良の範囲内で、ファブリックを製造中に、他の繊維を有する金属ワイヤの形態(従来は、既知の太陽電池の導電性ガラス板上に幾分高コストで形成されなければならなかった)で、これらのリード線に織り込むことによって、達成される。このようにして、好適な機械的可撓性および接続特性に加えて、好適な電気接触もまた保証される(オーム接合抵抗を低減することにより、この場合も同じく効率を高める効果を有して)。
【0013】
上述したように、本発明の好ましい実施形態の範囲内で、上述の所望の有効表面面積を有しながら、機械的安定性と弾性との間の最適化を達成できることから、好ましくはナノ構造の(例えば)TiOまたはZnOが、金属酸化物半導体材料として用いられる。プロセス技術に関する本発明の好ましいさらなる改良の範囲内で、この材料は、さらに、適切な溶剤に拡散され、含浸によってファブリックに施され(塗布され)、乾燥(溶剤を揮発させる)後に加圧される。このファブリックを不都合なほどに損なわずに、このファブリックとの好適な接合の他の適切な方法は、特に考えられるのは、焼結法、いわゆるゾルゲル法またはスパッタリングである。
【0014】
次に、本発明の範囲内で、さらなる改良による薄い色素層と、単分子(すなわち、色素分子の層厚のみを有する)が、この場合も同じく適切な溶液によって、このように提供された(導電性の)ファブリックベースのファブリック基板の金属酸化物半導体層との複合体に施される(塗布される)。Ruベースの金属錯体と有機色素は両方とも本発明の範囲内で適切であり、色素層を選択する範囲内では、本発明によれば、所望の光化学および電気プロセスが最適化された方法で進行されるように、色素、半導体および電解質のエネルギーレベルが相互に一致するようにされる。
【0015】
本発明のさらなる好ましい実施形態(最良の形態)によれば、本発明による液体または流体状態の電解質層(特に考えられるのは、アクリル樹脂または他の変形可能で硬化可能な高分子を用いることによる)によって、本発明による電池は、ほぼ任意の所望の形状に(特に、与えられた使用環境(例えば、建設または建築分野)に適合するように)変形することができる。この直後、この材料は硬化して、形状がそのまま永久的に固定されるようになる。このため、電解質層は、適切には、溶剤およびレドックス対(酸化還元対)ならびに随意の添加剤を含み、この電解質層は、ガラス強化繊維プラスチックにおける可能な設計方法で、機械的に極めて安定したユニットを実現し、同時に、DNSC太陽電池の光化学または光電特性を達成する。本発明の適切なさらなる改良の範囲においては、特に、対応する特性(熱硬化樹脂に加えて、UV硬化樹脂もまたここで特に考慮される)を備えた電解質の適切な硬化性に加えて、このような機能をもたらす電解質の外側の樹脂によって(特に考えられるのは、追加の外側の樹脂層によって)、この硬化処理または永久の形体が保証される。ここで、電解質の外側の樹脂は、電解質には接していない。このさらなる改良による方法で、適切な形成によって電解質は永久の形体となり、電解質材料はこの方法とは無関係に選択される。
【0016】
本発明の好ましいさらなる変形の範囲においては、プロセス技術に関して、スクリーン印刷方法によって1つまたは複数の層を塗布することが好ましい。
【0017】
本発明のさらに好ましいさらなる変形によれば、本発明による複数の電池をそれらの平坦な面で積み重ねることにより、極めて小型の効率的な多重電池構造を形成する。特に考えられるのは、ページが重ね合わせられた本のような方法による積み重ねである。
【0018】
本実施形態に特に適切なのは、横方向の光の入射(すなわち、ファブリックの平面への光の入射)である。この横方向の光入射は、より好ましくは、特に考えられるのは、後面または前面で光が相当分導入されるファブリックもしくはフィルム(膜)または薄いガラス層として、導光ファイバを用いることによってなされる。光入射は、また、ファイバすなわち光ガイドを適切に改装した後に、電池装置の別の光電活性層へのクラッド側に現れることができる。なお、本発明によれば、導電性支持基板側から光が入射する通常の方向は、別の方法で達成される。これは、本発明に従って用いられるファブリックが適度に透過性であることから、特に適切である。本発明のこのような実施形態(多数のページを有する本の形体の実施形態)の利点は、使用する基板が透過性でなくてもよいこと留意されたい。さらに、基本的に、光導入層は任意の厚みを有してもよく、光入射の波長を適切に調節または制御することも可能であることから、封止(encapsulation)を最適化できる。
【0019】
その結果、本発明は、生産技術の点において、驚異的に簡潔で、好適な方法で、好ましい効率特性と優れた機械的安定性を有する可撓性太陽電池を製造することにより、光電池の利用の多くに新分野が開けることが期待できるようにする方法を明らかにしている。
【0020】
本発明の別の利点、特徴および詳細が、好ましい例示的な実施形態に関する以下の説明から、および図中の図面を参照して得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の好適な実施形態による光電池の層構造の概略的な分解断面側面図である。
【図2】図1の例示的な実施形態における色素層に用いられる色素(N719)の分子構造の図である。
【図3】図1と同様の光電池の電気的特性を示す電流/電圧図である。
【図4】DNSCの基本的な動作モードを示す、エネルギーレベルと層構成とを包含する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1〜図3を参照して、本発明の第1の好ましい実施形態による光電池の構造および製造方法がさらに説明される。所望の特性を達成するには製造面も重要であるため、以下の説明では、図1による活性層はそれぞれ、関連する、特に適した製造工程と併せて説明および関連付けられる。
【0023】
図1における光電池の例示的な実施形態においては、導電的に構成された支持基板10が、下地の織物層12を備え、この織物層12は別の公知の方法で電導層14によって被覆されている。織物層12はPEEKファブリックであり、電導層14はインジウムがドープされたSnO(=ITO)である。
【0024】
厚さが1〜20μmのTiOである金属酸化物半導体層16が、これらの層12,14に塗布される。このために、エタノールにおける5wt%のTiO溶液が、ITOが施される織物上に噴射されることで添着(付着)され、この溶剤を乾燥または蒸発後、被膜が、10秒〜10分の期間、約15000min/cmの圧力に晒された。半導体層を塗布する別の方法は、(プラズマ)スパッタリング、コロナ+エアロゾルおよびスクリーン印刷である。
【0025】
TiO層16には、次に、単分子層の光吸収色素層18が設けられる。この場合、図2の構造式を有するルテニウム−金属錯体が、色素N719(スイスのAubonneにあるSolaronix社製)に用いられ、金属酸化物半導体材料で被膜された基板への塗布は、PEEK−TiO基板が3mMolの色素溶液に4時間導入されてなされる。
【0026】
このように構成された光電的(および光化学的)構成の活性層14、16、18の反対側に、導電性のPEEK/ITO基板22,24(約100nm)を有する対向電極20が設けられる。PEEK/ITO基板22,24は、通常厚さのプラチナ層で導体側が被膜されている。白金めっきは、具体的には、対向電極20を2−プロパノール中の0.5nMのHPtCl溶液に、数秒間導入することによって実行された。溶液から対向電極を取り出した後、これを乾燥して、10分間、200℃の温度で加熱した。
【0027】
対向電極20および光電的な活性基板10は、それぞれ、電気接触電極28および30の形態の電気的入口または出口を有する。電気的入口または出口は、図示された例示的な実施形態においては、銀ニスによって構成されているが、他の適切な方法で構成されてもよい。詳細には、適切な導電性繊維を織物12,22に織り込むことによって構成されてもよい。これらのリード28,30は、図1における太陽電池に対する外部接点に用いられる。
【0028】
LiI(0.1M)とI(0.01M)と併せて、PEG20000(Aldrich社製)タイプの電解質が、被膜電極の間に設けられる電解質層32を形成するために用いられる(図1は、概略的な形状の分解図を示している)。PEG20000は、常温では固体であるため、活性レドックス成分と混合するには融解する必要があった。
【0029】
被膜された対向電極20を光電的に被膜された基板電極10と接合するために、液状の電解質が、電極10の活性層(すなわち、色素表面18)に施され(塗布され)、対向電極が、液状のままの電解質と共に活性層の上に置かれた。電解質を冷却して硬化処理した後、このようにして層配置全体の接着結合が生じた。その際、確実に、接触電極28,30が電解質と接触せず、2つの電極間で短絡が生じないように注意が払われた。
【0030】
図3の電流/電圧図は、開回路電圧と短絡電流との間で、周辺光および常温において、このように生産された光電池の電気的挙動を示す。
【0031】
本発明は、図示された例示的な実施形態または説明したプロセス工程に限定されない。例えば、基板は、導電性材料(アルミニウム繊維または随意に均一に被膜された炭素繊維)から構成されてもよい。電気伝導性が十分である場合、電導層14は省略することができる。所望の伝導性を達成するために、基板自体が、例示的な実施形態で説明したように、ドープされた金属酸化物、または金属(例えば、TiまたはAl)もしくは導電性ポリマー(例えば、PDOT)を備えてもよい。電極(主電極)を得る別の変形形態では、「いわゆるCarbotex(登録商標)(スイスのタールにあるSefar社による織物)を用いる。Carbotex(登録商標)は、炭素で被膜されたポリアミド繊維を含み、その伝導性からITO被膜を不必要にする。
【0032】
相当する粉末を焼結することによって、いわゆるゾルゲル法によって、またはスパッタリングによって、金属酸化物半導体(TiOの代わりに、例えば、ZnOも使用可能である)を施すこともできる。
【0033】
Ruベースの金属錯体が色素層として用いられたが、いわゆる有機色素(特に考えられるのは、アゾ染料、オリゴエン、メロシアニンなど)の形態の無金属染料も可能である。
【0034】
図1における対向電極20はプラチネーション(platination)26を呈したが、代わりに、SnOナノ粉末などを、比較的良好な触媒活性で塗布することもできる。
【0035】
上記の説明は、単に例示的と理解されるべきであり、個々の層の各機能を達成するために、他の適切なプロセス工程および/または材料もまた可能であることに留意すべきである。
【0036】
特に、本発明の好ましい、さらなる改良は、電解質層32に、アクリル樹脂、ポリエチレンオキシドまたはポリエチレングリコールを与えることにより、ガラス繊維強化プラスチックの加工の手順の方法で、本発明に従って説明された方法の太陽電池が、種々の物体および/または建築部材の一体構成部分となる。ここで、有利には、加工中の柔軟性が熱安定性と組み合わされ、剛性が同時に与えられる透過性と組み合わされる。
【0037】
本発明の第2の実施形態による光電池を得る代替手順を、本発明による必要なまたは好ましい一連の工程として詳細に説明する。
【0038】
a)電極(例えば、ITOで被膜されたPEEK)用および対向電極(例えば、Carbotex(登録商標))用の織物が、太陽電池パターンを構成するために、いずれも1.5×4cmの大きさに切断され、それぞれ、ストリップ形状のアルミニウム箔と織物接着テープと接触する。それによって、0.8×6cmサイズの市販のアルミニウムテープのストリップが、アルミニウム箔が縦方向側で2cm突出するように、織物接着テープのストリップ(1×4cmの大きさ)の接着面の中心に接着される。電極織物が接着面またはアルミニウム箔に接着され、次に、アルミニウム箔の突出部が折り曲げられて加圧される。さらに、織物ストリップ(PET1000)は、中間に位置する織物として、0.8×4cmの大きさに切断される。
【0039】
b)次に、1MのTTIP/エタノール溶液が、アルゴン雰囲気中で調製され、EBFEエアブラシピストル(ダブルアクション式CIモデル)によって電極が噴射される(0.4バールの前圧力(アルゴン)、織物までの噴射距離約10cm、片側で5回の噴射サイクルが2回)。各噴射サイクルの間に、溶剤がピストルのアルゴン流内の織物上で気化される。
【0040】
c)ミニクレーブ内の配置物を10mlの2回蒸留水で処理し、100℃で12時間熱処理した後、常温まで冷却する。電極は両側をエタノールで洗浄され、織物が温風流で約1分間乾燥される。
【0041】
d)3mmolの色素溶液(N719/無水エタノール100%)が調製される。色素全体が(例えば、超音波槽によって)溶解される。その後、電極の配置物が、この色素溶液中に約3時間置かれ、光と水分から保護され、その後に取り出され、エタノールで洗浄され、温風流で約1分間乾燥される。
【0042】
e)電解質が次のように調製される。0.0160gのTiO(ポリエチレンオキシドに対して約10%、Degussa社製のP25)と、1.3384gのLiI(0.5M、純度99.9%、Aldrich社製)と、0.2538gのI(0.05M、純度>=99.5%、Fluka社製)と、0.16gのポリエチレンオキシド(Mw=2000000、Fluka社製)とを含む20mlのアセトニトリル(ACN、純粋)が、1分間にわたって供給される。この電解質混合物は、常温で12時間攪拌される。
【0043】
f)太陽電池を取り付けるために、電解質が高度に流動性になるまで100℃で加熱板上において濃縮される。対向電極(Carbotex(登録商標)(Sefar社製)の対向電極を用いる場合、さらなる被膜は随意に省略されてもよい)が、ガラス基板上に置かれ、中間に位置する織物(工程a)の両面が、加熱された電解質に浸漬されることによって被膜され、対向電極上に置かれる。電極は、1mmの深さまで電解質に浸漬され、次に前記中間に位置する織物上に置かれる。この配置物をそのままの状態に放置する(約10分間)ことによって、電解質が硬化し、次に、残りの溶剤が蒸発できるように温風流で処理(約1分間)する。封止のためにクリヤワニスまたは透過性樹脂が両面に塗布され、機械的特性(例えば、風化作用からの保護および/または恒久的な形状固定)が再び調節される。
【0044】
注記:Carbotex(登録商標)は、対向電極として未処理で使用されることができる。それ以外の場合には、方法1と同様の方法を用いることができる。
【0045】
結果として、本発明の織物ベースの技術を利用して多くの利点を達成できる。この構造により、不透過性の材料で被膜した後であっても、この配置物は、依然として少なくとも部分的に光透過性であり、さらに、柔軟性が達成されることによって、様々に形成された表面上で、任意の固定および硬化処理のほとんどが可能になる。
【0046】
フィルムと比較して、実質的により大きな有効表面面積を達成することができ、特に面積が大きいことから、その分金属酸化物半導体層(特に考えられるのはTiO)がより薄くなり(したがってより柔軟になる)、層間剥離を低減し、材料消費量を低減するというさらなる利点を備える。これにより、糸を織り込み、または縫うことによって、電気接点またはコンセントを容易に構成することができ、さらなる改良によって達成可能なブック構造によって、使用および用途の追加領域が広げられる。
【符号の説明】
【0047】
10 支持基板
12 ファブリック
14 電導層
16 金属酸化物半導体層
18 色素層
20 対向電極
22 ファブリック
24 電導層
32 電解質層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物半導体層(16)でコーティングされた導電的に構成された支持基板(10)と、
前記金属酸化物半導体層(16)と電子的に相互作用する色素層(18)と、
前記色素層(18)に置かれた電解質層(32)と、
前記電解質層(32)に接触する対向電極(20)とを備えた、光電池、特に、色素増感太陽電池であって、
前記支持基板(10)と前記対向電極(20)の両方またはいずれか一方が、複数の繊維から織られた可撓性ファブリックから作成されていることを特徴とする、光電池。
【請求項2】
請求項1において、前記繊維は、電気導電性材料から成るか、または、特に、高分子、ガラス、セラミックもしくは複合材料から作製された、電気的に非導電性もしくは弱導電性のコア上の電気導電性コーティングを備えていることを特徴とする、光電池。
【請求項3】
請求項1または2において、前記繊維は、炭素繊維、導電性ポリマー繊維、金属繊維(特に、アルミニウム繊維)またはこれらの組み合わせを含むグループから選択されることを特徴とする、光電池。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項において、前記ファブリック(12、22)を電導層(14、24)で被膜して、前記導電的に構成された支持基板(10)を実現していることを特徴とする、光電池。
【請求項5】
請求項4において、前記電導層(14,24)は、ドープされた金属酸化物、金属および/または電気導電性ポリマーを含むことを特徴とする、光電池。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項において、前記ファブリック(12、22)は、前記光電池によって生成された電流を接続電極に供給する、少なくとも1つの織り込まれた電気導電性繊維を含むことを特徴とする、光電池。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項において、前記ファブリック(12、22)は、複数の所定のファブリック間隙と開口の両方またはいずれか一方を備えて、前記支持基板(10)の部分的な透過性を実現し、ファブリック間隙の幅は、好ましくは50μmと500μmの間であることを特徴とする、光電池。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項において、前記金属酸化物半導体層(16)は、好ましくは、ナノ構造、ならびに/または施された、TiOおよび/もしくはZnOおよび/もしくはBaTiOを含むことを特徴とする、光電池。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項において、焼結、ゾルゲル法、コロナエアロゾル、スクリーン印刷、またはプラズマスパッタリングによって、または、前記金属半導体材料の溶液を前記ファブリックの内部および/または表面に付着させて加圧することで、前記金属酸化物半導体層(16)が施されることを特徴とする、光電池。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項において、前記色素層の厚みは分子サイズであり、特に、単分子および/またはナノ構造として施されることを特徴とする、光電池。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項において、前記色素層の色素は、好ましくは、Ruベースの金属錯体および/または有機色素、特に、アゾ染料、オリゴエン、メロシアニンまたはこれらの混合物から成るグループから選択された色素を含むことを特徴とする、光電池。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項において、前記電解質層(32)は、変形可能で硬化可能な材料、特にアクリル樹脂を含み、
所定形状を形成するために変形可能であり、続いて硬化処理によってこの所定形状に硬化することができるように、前記材料は形成され、および/または、前記変形可能で硬化可能な材料が、前記電解質層の外側の前記光電池の上または中に提供されることを特徴とする、光電池。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項において、多層コーティングとして複数の光電池を連続してコーティングすることによって製造され、前記光電池への入射光の好ましい方向は、前記多層コーティングの各コーディング面に垂直である、光電池。
【請求項14】
請求項13において、前記多数の層を有する構成は、各色素層内に、好ましくは異なる吸収スペクトルを有する異なる色素を含むことを特徴とする、光電池。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項において、前記ファブリックは、前面で前記ファブリックに光が導入されるように構成された、導光ファイバを含むことを特徴とする、光電池。
【請求項16】
光電池を製造する方法、特に、請求項1から15のいずれか1つに記載された光電池を製造する方法であって、
−導電的に構成されたファブリックを金属酸化物半導体層でコーティングする工程と、
−前記金属酸化物半導体層と電子的に相互作用する色素層を施す工程と、
−前記色素層に電解質層を施す工程と、
−前記電解質層に対向電極を施す工程とを備えることによって特徴付けられる、方法。
【請求項17】
請求項16において、前記金属酸化物半導体層は、プラズマスパッタリング、ゾルゲル法、ならびに/または前記ファブリックの内部および/または表面に付着させて加圧することによって、乳化状で施されることを特徴とする、方法。
【請求項18】
請求項16または17において、前記色素層の色素は、溶解した形体で、適用時の厚みが分子サイズ、特に単分子で前記金属酸化物半導体層に施されることを特徴とする、方法。
【請求項19】
請求項16から18のいずれか一項において、前記電解質層は、流体状態で、前記対向電極と、ファブリック、金属酸化物半導体層および色素層の複合物とに施され、その後に硬化されることを特徴とする、方法。
【請求項20】
請求項19において、前記硬化は、装置全体を所定の形状に変形した後に、好ましくは前記電解質層の外側で、前記電解質層および/または追加で使用されるポリマーを硬化することによって、行われることを特徴とする、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−537938(P2009−537938A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510337(P2009−510337)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004256
【国際公開番号】WO2007/134742
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(502369414)ゼファー・アクチエンゲゼルシャフト (7)
【氏名又は名称原語表記】SEFAR AG
【Fターム(参考)】