説明

免疫モジュレーター、免疫モジュレーターを含む調製物および組成物、免疫モジュレーターならびにそれを含む調製物および組成物の活性を評価するための検査、そして方法

ナノ画分免疫モジュレーター分子(すなわち約3,000Daおよびそれより小さい分子量を有する分子)を含む、免疫モジュレーターの原料からの抽出物を含む組成物を開示する。これらの組成物はまた、他の免疫モジュレーター、例えばトランスファーファクターを含んでもよい。ナノ画分免疫モジュレーター分子を含む抽出物を含む組成物の投与は、そのような組成物を投与した被験者の細胞性免疫を調節する(例えば望ましくないT細胞の活性をダウンレギュレートする)。トランスファーファクターと共に投与した場合、ナノ画分免疫モジュレーター分子およびトランスファーファクターとの組み合わせは、望ましくないT細胞の活性をダウンレギュレートし、一方、病原体およびその他の望ましくない実体、例えば癌細胞およびその他の異常なまたは変異した細胞に対するT細胞の活性を増加させる、またはアップレギュレートする。様々な物質の免疫調節能力を評価するためのアッセイおよびアッセイ技術についてもまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2006年9月29日に提出された米国仮特許出願第60/848,348号、および2007年9月14日に提出された米国特許出願第11/855,944号に対する優先権の利益を主張し、これら双方の文献の開示を、本明細書にてそれらの全内容において参照として本明細書により援用する。
【0002】
技術分野
本発明は、被験者における細胞性免疫を調節する(誘発する、増強する、望ましくない活性を抑制する、など)分子に関し、そのような分子、そのような分子を含む調節物および組成物を製造し、得るための方法、そのような分子の有効性を評価するための方法、ならびに使用法を含む。より具体的には本発明は、細胞性免疫を調節する “ナノ画分”分子と本明細書において呼ぶ小分子に関する。
【背景技術】
【0003】
抗体の特徴および抗体が産生される機序と同様に、免疫を提供し伝達する抗体の活性は周知されており、広く研究されている。
細胞性免疫またはT細胞を介した免疫を調節する上での役割を担う、3,500Daおよび7,500Daの間の分子量を有する分子のファミリーを含む、トランスファーファクターの役割については、それほど周知されておらず、それほど広く研究されてもいない。時間と共に、トランスファーファクターの特徴、および有機体の免疫系におけるそれらの役割について当業者の有する理解は改善されてきており、今も改善され続けている。
【0004】
さらなる研究が、広く多様な免疫系成分の特徴および機能に光を投じ続けてはいるものの、免疫が展開、維持、輸送、および伝達される様式に、同様に長寿命における免疫の効果に大きな影響を持つと思われる、ほとんど理解されていない、あるいは見過ごされてさえいる多数の分子が存在し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
細胞性免疫を調節する上での様々な分子の有効性は、近年数量化可能な様式で特徴づけられている。細胞性免疫を直接的または間接的に調節すると思われる分子は、当該技術において“免疫モジュレーター”として知られている。免疫モジュレーターの1つのクラスは、細胞性免疫の応答を誘発する、増強する、抑制する、さもなければ調節する、小さなまたは低分子量のナノ画分(例えば3,000Daまで、3,500Daまで、250Daから2,000Da、2,000Daから4,000Da)分子を含む。そのような免疫モジュレーターの相対的に小さなサイズ、または分子量のため、それらを本明細書において“ナノ画分”免疫モジュレーター、および“ナノ画分”分子と呼ぶ。
【0006】
ナノ画分免疫モジュレーターは、多様な異なるタイプの原料動物より得てよい。原料動物の例として、哺乳類(例えばウシ)および鳥類(例えばニワトリ)を含むがこれに限定されない。本発明の範囲を限定するものではないが、ナノ分画モジュレーターは、哺乳類により産生される初乳から、または乳汁からでも得てよい。もう1つの非限定的例として、ナノ画分免疫モジュレーターは、鳥類またはあらゆるその他のタイプの動物により産生される卵から手に入れてよい。初乳、卵、およびナノ画分分子のその他の原料をまとめて、本明細書において“ナノ画分の原料”と呼ぶ。
【0007】
原料動物によるナノ画分免疫モジュレーターの天然での産生は、原料動物が通常暴露されてきた1つまたはそれより多くの抗原の量より多い量または濃度のそのような抗原(1つまたは複数)に、原料動物を暴露させることにより増強してよい。例えば特定のタイプの原料動物が、または具体的な原料動物の場合でも、その典型的な環境において、通常ある種の量または濃度の所定の抗原に暴露されてきたのであれば、ナノ画分分子を含む免疫モジュレーターの原料動物による産生は、原料動物をずっと多い量(例えば濃度)のその抗原に暴露させることにより(例えば原料動物をワクチン接種することにより、より多い量または濃度のその抗原が存在する環境内に原料動物を置くことにより、など)増強してよい。もう1つの例として、特定のタイプの原料動物を、または具体的な原料動物の場合でも、所定の抗原で典型的にワクチン接種する場合、1つまたはそれより多くのナノ画分免疫モジュレーターの原料動物による産生は、原料動物の抗原への暴露を増加することにより(例えば原料動物を、より高い濃度の抗原、より有効なまたはより病原性のある形の抗原に暴露させることにより)増強することができる、しかしナノ画分分子それ自体は抗原特異的ではないと考えられている。
【0008】
公知のプロセスを使用して、ナノ画分免疫モジュレーターを得るナノ画分の原料動物中に存在するその他の分子から、ナノ画分免疫モジュレーターを部分的に、実質的に、または完全に精製してよく、そして所望によりナノ画分免疫モジュレーターを濃縮してもよい。そのようなプロセスは非限定的に、機械的な分離、相分離(例えば水性成分および非水性成分の互いからの分離)、沈殿、遠心、濾過(約12,000Daから約4,000Daの範囲の分子量カットオフ(MWCO)を伴うマイクロ濾過、および約4,000Daより小さなMWCOを伴うナノ濾過を含む)、透析、クロマトグラフィー、および電気泳動による精製プロセスを含む。そのようなプロセスを個別にまたはあらゆる組み合わせで行って、1つまたはそれより多くのタイプの免疫モジュレーターが存在する調製物を生成してよい。
【0009】
1つの側面において本発明は、少なくとも部分的に精製された、実質的に精製された(例えば当業者により受容される程度に)、および完全に精製された免疫モジュレーターの調製物を含む。加えて本発明は、ナノ画分分子を含む組成物を含む。ナノ画分分子に加えて、そのような組成物は、被験者の免疫系を補助するまたは調節する上で有用であるその他の成分(例えばトランスファーファクター、抗体、など)、ならびに他のやり方で被験者に利益をもたらすと思われる成分を含んでよい。
【0010】
ナノ画分分子、または前記分子を単独で、もしくは他の免疫モジュレーターと共に含む組成物の、使用または投与を含む方法もまた、本発明の範囲内である。使用方法は、1つまたはそれより多くのタイプの免疫モジュレーター(例えば未加工の形、部分的に精製された形、実質的に精製された形、または完全に精製された形、調製物中、組成物中、など)の、被験者(例えばヒト、またはナノ画分分子により提供される免疫調節から利益を受けると考えられるあらゆるタイプの動物)への投与を含む。免疫モジュレーターは、特定の投与されるタイプの免疫モジュレーターのレベル(例えば、濃度)を、被験者の体内において、被験者にとって正常からそれを上回る量にまで増加させる量で、被験者に投与する。本発明のこの側面の範囲を限定することなく、被験者には、被験者の免疫系に細胞性免疫応答の誘発を引き起こすために臨床的に有効である量、または被験者による細胞性免疫応答を効果的に増強する量の1つまたはそれより多くの免疫モジュレーターを与えてよい。
【0011】
加えて、免疫モジュレーターの有効性を評価する検査および試験の方法も、本発明の範囲内である。一例として、T細胞免疫機能アッセイを使用して、細胞性免疫に参加する1つまたはそれより多くのタイプの細胞の(例えばその細胞によるアデノシン3リン酸(ATP)産生の)活性を、単独でまたはその他の分子(例えば抗原、マイトジェン(有糸分裂または細胞の複製、などを誘導する))と組み合わせてのいずれかで調節する、潜在的免疫モジュレーターの能力を評価してよい。
【0012】
その他の特性および有益性は、後述の記載および付記した請求項の考察を通して、当業者には明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図面において、図1から4は本発明の技術を組み入れた組成物に関して行った様々な検査の結果を表したグラフである。
【図2】図面において、図1から4は本発明の技術を組み入れた組成物に関して行った様々な検査の結果を表したグラフである。
【図3】図面において、図1から4は本発明の技術を組み入れた組成物に関して行った様々な検査の結果を表したグラフである。
【図4】図面において、図1から4は本発明の技術を組み入れた組成物に関して行った様々な検査の結果を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
多様な分子量の範囲の低分子が、免疫細胞の活性を調節する上で有用であることが、近年発見されている。以下の実施例は、これらの結論に達するために行った作業を示す。
【実施例】
【0015】
実施例1
相分離、沈殿、濾過、マイクロ濾過またはナノ濾過、および透析を含む公知のプロセスを使用して、多様な分子量の画分を、ウシ初乳および鶏卵の双方より調製した。ウシ初乳より得た分子量画分は、250Daから2,000Da、2,000Daから4,000Da、4,000Daから8,000Da(この画分はトランスファーファクターを含んでおり、比較の目的のために含めた)、および8,000Daから12,000Daであった。同様に2,000Daから4,000Da、4,000Daから8,000Da(この画分はトランスファーファクターを含んでおり、比較の目的のために含めた)、および8,000Daから12,000Daの分子量画分を、鶏卵卵黄から調製した。その後分子量画分は(例えばスプレー乾燥、凍結乾燥、などにより)粉末の形に乾燥させた。
【0016】
次にこれらの調製物を使用して様々なアッセイを行って、細胞性免疫を伝達する細胞(例えばCD4+ Tヘルパー細胞)の活性を調節する、各画分内の分子の効果を評価した。具体的には、米国特許5,773,232号および6,630,316号ならびに米国特許出願公開2005/0260563号に開示されているタイプのアッセイを改変し、使用して、多様な条件下で実施例1の異なる分子量画分の活性を評価した。前述のアッセイを使用して、免疫細胞(例えばCD4+ Tヘルパー細胞、CD3+細胞(すべてのT細胞を含む)など)によるアデノシン3リン酸(ATP)の産生を評価した。細胞によって産生されるATPの量は、当該技術の公知の様式で(例えば、ルミノメーターを用いてのいわゆる“ルシフェリン反応”の使用により)測定してよい。
【0017】
実施例2
最初の一連のアッセイは、Columbia, Maryland のCylex Incorporated により製造されているImmuKnow(商標)アッセイを使用して、その表面上にいわゆる“CD4”糖タンパク質を含むまたは発現する、健常な個体の白血球細胞を使用して行った。これらの白血球細胞はまた、それらのCD4糖タンパク質の発現のため“CD4+”細胞とも呼ぶ。CD4糖タンパク質の発現は、他のT細胞を含む他のタイプの白血球細胞から、いわゆる“Tヘルパー”細胞を識別する。
【0018】
ImmuKnow(商標)アッセイ検査キットの構成要素は以下のとおりである;標準的な96ウェル“アッセイプレート”、これは取り外し可能な8ウェルの小板(strip)を含む;“サンプル希釈液”、これは成長培地および保存剤を含む;“刺激物質”、これは植物性血球凝集素−L(PHA−L)(非特異的に有糸分裂(細胞が成長し2つの新しい細胞に分裂するプロセス)を刺激し、したがって白血球細胞におけるアデノシン3リン酸(ATP)の予備的産生を刺激することが知られている豆類(赤インゲン豆)由来物質(すなわち“マイトジェン”))を、成長培地および保存剤中に希釈して含む;“ダイナビーズ(Dynabeads、登録商標)CD4”、これはマウスモノクローナル抗ヒトCD4抗体でコーティングした磁気サンプル精製ビーズであり、ウシ血清アルブミン(BSA)および保存剤を含む緩衝化生理食塩水溶液により保管されている;“洗浄バッファー”、これはBSAを含む緩衝化生理食塩水溶液含む;“溶解試薬”、これは界面活性剤を含む低張塩基性溶液を含む;“標準物質パネル”、これは0、1、10、100、および1,000ng/mlのATP濃度を有する;“蛍光試薬”、これは緩衝化溶液中にルシフェリンおよびルシフェラーゼを含み、ATPと反応して、蛍光試薬が暴露されたATPの量の指標となる量の光を発する;そして“測定プレート”、これは不透明な境界面(すなわち壁面および底面)を有する96ウェルを有する。
【0019】
96ウェルアッセイプレートの8ウェルの小板の一つは、“コントロール小板”と呼んでよく、4つの“非刺激”(NS)コントロールウェル、および4つの“刺激”コントロールウェルを含むコントロールを提供するために使用した。
【0020】
96ウェルアッセイプレートの別の8ウェル小板は、“検査小板”と呼んでよく、検査する各サンプル用に使用した。各小板の4つのウェルは“非刺激”ウェルとして指定し、一方各小板の他の4ウェルは“刺激”ウェルとした。50マイクロリットル(50μl)のサンプル希釈液を、コントロール小板の4つの各“非刺激”ウェル内に導入し、一方、各検査小板の各“非刺激”ウェル内には25μlのサンプル希釈液を導入した。コントロール小板の4つの各“刺激”ウェル、および各々の検査小板の4つの各“刺激”ウェル内に、各々25マイクロリットル(25μl)の刺激物質を導入した。
【0021】
サンプル希釈液または刺激物質に加えて、実施例1で同定した分子量画分の1つの25μlサンプルを、各検査小板の各8ウェル内に導入した。より具体的には、実施例1の各々の分子量画分は、サンプル希釈液中で再構成し、一定量のサンプル希釈液で希釈して、1ウェルに25μlのサンプルを加えて、最終的にそのウェルに対して各々10μg、100μg、および1,000μgの乾燥粉末を加えた量となるような、3つの異なる濃度を提供した。
【0022】
白血球細胞を含むその構成成分が均一に分散するように緩やかに撹拌しておいた、血液サンプルの1:3(血液:“サンプル希釈液”)希釈を調製した。75マイクロリットル(75μl)の希釈血液を、各小板の各ウェルに加えた。次にウェルの内容物を(例えばプレートを約30秒間プレート振盪器上に置くことにより)混合した後、37℃の温度、5%CO環境下で約18時間インキュベーションした。
【0023】
一度インキュベーションが完了した時点で、ウェルの内容物を(例えばプレートを約3分間プレート振盪器の上に置くことにより)再度混合した。その後ダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズを含む溶液を混合して、ダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズが保管されている液体内にそれらを均一に懸濁した(例えばボルテックスを用いて)。上に記したように、本実施例におけるダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズは、マウスモノクローナル抗ヒトCD4抗体でコーティングした磁気ビーズを含む。50マイクロリットル(50μl)のダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズ−保管溶液を、各小板の各ウェルに加えた。
【0024】
各小板のウェルの内容物を(例えば約15秒間プレート振盪器上で)再度混合した後、室温で約15分の間置いたまま、またはインキュベーションしたまま放置した。その後、この混合およびインキュベーションのプロセスを繰り返し行った。ダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズ上のマウス抗ヒトCD4抗体は、CD4糖タンパク質を提示する白血球としか結合しない。このインキュベーションの間に、Tヘルパー細胞を含むCD4+白血球細胞を、ダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズ上のマウスモノクローナル抗ヒトCD4抗体により固定化、または結合させた。
【0025】
インキュベーションに続いて、各ウェルの内容物を(例えばプレート振盪器上で約15秒から約30秒間)再度混合して、ダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズを再懸濁した。その後各ウェルの内容物は、ImmuKnow(商標)アッセイに添付された説明書に示されたプロトコルに従って、磁場内に(例えば各8ウェル小板を、Cylexより入手可能な磁気トレイ内に置くことにより)導入した。磁場をかけると、ダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズはそれらの入っている各ウェルの片側に引き寄せられる。次にウェルの残りの内容物を除去し(例えばピペットなどで吸引する)、ビーズとTヘルパー細胞を1回またはそれより多く(例えば3回、各々200μlの洗浄バッファーにて)洗浄して、それらを実質的に純粋なものとした。
【0026】
その後200マイクロリットル(200μl)の溶解試薬を各ウェルに加えた。磁場から各ウェルの内容物を取り出した後、各ウェルの内容物(すなわちダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズ、それに付着した細胞、および溶解バッファー)を、(例えばプレート振盪器上で約5分間)混合した。溶解バッファーは、ダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズ上の抗体により固定化されたCD4+細胞の膜を破壊した。他の物質と共に、ATPを溶解した細胞から放出させた。
【0027】
一度細胞の溶解が完了した時点で、各ウェルの内容物に再び磁場をかけ、各ウェル内のダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズをウェルの片側に引き寄せた。次に50μlのサンプルを、各ウェルから測定プレートの対応するウェルに移した。サンプルの移動に加えて、96ウェル測定プレートのいくつかのウェルを、標準物質パネル溶液の様々なATP濃度の50μlサンプル用に確保した。
【0028】
次に150マイクロリットル(150μl)の蛍光試薬を、検査サンプルまたは標準物質パネル溶液のサンプルのどちらかを含む測定プレートの各ウェルに加えた。その後各ウェルからの蛍光を測定した。測定した各ウェルからの蛍光は、そのウェル内に存在するATPの量の指標を提供する。各ウェルに存在するATPの量は、今度は測定プレートの各ウェルの内容物の由来する、細胞(例えばCD4+細胞)内の代謝活性の量の指標となる。PHAにより非特異的に刺激された細胞に由来するサンプルにおいては、相対的に高レベルのATPが存在すると予想される。免疫モジュレーター(例えば実施例1で同定した画分の1つからの)の添加は、PHAにより非特異的に刺激されたCD4+細胞の代謝活性を増加、もしくは減少する、または調節することになるだろう。
【0029】
そのような試験の結果を、各サブセットの白血球細胞により産生されたATPの平均量を表す説明上の数値を用いて、以下の表に示す。
【0030】
【表1】

【0031】
これらのデータは、細胞がPHAに暴露されない非刺激検査において、4,000Daから8,000Da分子量の各画分(初乳および卵由来)は、その双方ともトランスファーファクターを含有することが知られているが、CD4+白血球細胞において付加的な代謝活性を刺激したことを示す。これらのデータは、細胞性免疫をアップレギュレートするトランスファーファクターの能力を確認するものである。
【0032】
反対に4,000Daから8,000Daの初乳および卵の画分は、CD4+細胞における代謝活性を刺激するPHAの非特異的能力をダウンレギュレートした。PHAは人工の非特異的刺激物質であるため、細胞性免疫に参加するトランスファーファクターによるその活性のダウンレギュレーションは驚くにはあたらない。トランスファーファクターは、T細胞による免疫活性を(例えば細胞がそれらの本来の目標を“思い出させる”手助けをすることにより、例えば微生物(細菌、ウイルス、等)による被験者の体の感染のような望ましくない実体に対しては活性を改善する一方で、自己免疫障害および関連する障害を低減することにより、など)釣り合わせる、および集中さえさせる手助けをする、と考えられており、また先行する研究によって示されている。T細胞によるPHAに刺激された活性のダウンレギュレーションは、細胞性免疫におけるトランスファーファクターのこの役割を確認するようにみえる。
【0033】
同様の結果は、250Daから2,000Daの初乳画分(アップレギュレーションおよびダウンレギュレーションの双方)、2,000Daから4,000Da初乳画分(アップレギュレーション)、および2,000Daから4,000Daの卵画分(アップレギュレーションおよびダウンレギュレーション)を含む、トランスファーファクターを含まないいくつかのその他の分子量画分においても認められた。8,000Daから10,000Da初乳画分もまた、PHAで刺激されてないCD4+白血球細胞における活性のアップレギュレーション、およびCD4+白血球細胞におけるPHA刺激による代謝活性のダウンレギュレーションを引き起こした。
【0034】
これらのデータは、トランスファーファクター以外の免疫モジュレーターが、少なくとも250Daから2,000Daの初乳画分、2,000Daから4,000Daの初乳画分、および2,000Daから4,000Daの卵画分中に存在することを確かなものとする。これら各画分中に存在する“ナノ画分分子”の免疫調節能力は、実施例3に示す実験により、少なくとも部分的には確認された。
【0035】
実施例3
活性に関する第二の一連のアッセイは、いわゆる“T記憶”細胞を含むすべてのT細胞を含むことが知られている、CD3糖タンパク質を提示する健常な個体の白血球細胞(すなわちCD3+細胞)において、誘発した。具体的にはCylexのT-Cell Memory(商標)アッセイを使用した。CylexのT-Cell Memory(商標)アッセイのプロトコルは、以下の点を除いて実施例2に示したものと非常に類似する:PHAの代わりにコンカナバリンA(ConA)を含む25μlの刺激物質は、コントロール小板の“刺激”ウェル内にのみ導入し、一方25μlの1:10希釈のサイトメガロウイルス(CMV)ワクチンを、各検査小板の“刺激”ウェルに加えた(最終的に1ウェル当たり1:50希釈);マウス抗ヒトCD3抗体を、磁気ビーズ表面に(T-Cell Memory(商標)検査キットに添付の説明書により)固定化して、ダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズを調製した;そしてダイナビーズ(登録商標)サンプル精製ビーズを、最初のインキュベーションの前に、血液サンプル、サンプル希釈液、刺激物質(加える場合)、およびサンプル画分(加える場合)に加えた。
【0036】
T-Cell Memory(商標)アッセイにおいては、特定の抗原を認識するT記憶細胞の能力を評価してよいように、マイトジェン(例えばPHA)の代わりに抗原を使用する。特に、T記憶細胞は、ダイナビーズ(登録商標)の抗体分子に結合した細胞の一部のみを構成するに過ぎないため、測定プレートの各ウェルから発せられる光の強度は小さい。
【0037】
これらのアッセイの結果を、検査した各サンプル(および量)について、白血球細胞により産生されるATPの平均量を表す説明上の数値を用いて、以下の表に示す。
【0038】
【表2】

【0039】
この実施例3で行った試験から得られたデータは、抗原(マイトジェン、例えばConAまたはPHA、の非特異性とは反対に、特異的な刺激物質)の存在下で、3つのトランスファーファクターを含有しない初乳画分が、CMVに暴露した時に、検査した細胞の活性を増強するトランスファーファクターを含有する初乳画分である4,000Daから8,000Daと同等のサイズのサンプルの能力に匹敵する(250Daから2,000Da、および8,000Daから12,000Daの初乳画分の10μgのサンプル)または越える(2,000Daから4,000Daの初乳画分の10μgおよび100μgのサンプル)程度にまで、検査したT記憶細胞のCMVに対する活性を増強することを実証する。
【0040】
実施例4
もう1組のアッセイは、ナノ画分免疫モジュレーター分子(すなわち2,000Daから4,000Daの初乳画分の免疫モジュレーター)またはトランスファーファクターを含有する画分(すなわち4,000Daから8,000Daの初乳画分)のどちらかが、高用量の特定の抗原に最近暴露された被験者の免疫記憶を調節する(例えば増強する)ことができるか否かを決定するために行った。具体的には、全身感染を引き起こすインフルエンザウイルスに暴露され、4週間インフルエンザの症状を患った個体から、血液サンプルを得た。
【0041】
本アッセイは、実施例3に記載した様式で、CylexのT-Cell Memory(商標)アッセイを使用して、実施例3のCMVの代わりに、2006−2007年のインフルエンザシーズンに関する、Paris, France のAventis Pasteur により製造されたインフルエンザワクチンの1:25希釈の形のインフルエンザ抗原(1ウェルあたり1:125の最終希釈として)を使用したことを除いては、同アッセイに提供され、そして実施例3に記載した指示に従って行った。
【0042】
このアッセイの結果を以下の表に示す:
【0043】
【表3】

【0044】
表3に示した(図1にグラフでも示す)結果は、特定の抗原に最近暴露された被験者のT記憶細胞が、特にナノ画分分子またはトランスファーファクターの存在下で、その抗原に暴露されると、CD3+記憶T細胞の活性が有意に増加することを示す。事実、相対的に少量のナノ画分分子およびトランスファーファクターは、T記憶細胞の活性における約20%の増加を引き起こした。事実、2,000Daから4,000Da画分の免疫モジュレーターは、検査した細胞の活性の調節において、4,000Daから8,000Daの画分中に存在するトランスファーファクターおよびあらゆるその他の分子と、ほぼ同程度の有効性があるようにみえる。
【0045】
実施例1−4の結果は、250Daから2,000Da、2,000Daから4,000Da、および8,000Daから12,000Daの範囲の分子量を有する免疫モジュレーターは、様々なタイプのT細胞の免疫活性を調節する上で有効であることを実証する。したがって、そのような免疫モジュレーター、または免疫モジュレーターを含む調製物もしくは組成物を、被験者に投与することにより、被験者の細胞性免疫を調節してもよい。
【0046】
これらの結果に基づいて、予め決定したMWCOの分子を含む様々な栄養補助食品(例えば(ウシ)初乳、(鶏)卵、など由来)を生産するためのプロセスを開発した。限定する目的はないが、例えば、少なくとも肉眼で見える粒子(例えば初乳/乳汁の固形物、卵の殻および膜、等)を(例えば相分離、濾過のプロセス、等により)除去した、ナノ画分免疫モジュレーターの原料の液体調製物を、予め決定した上限のMWCOを提供するサイズであるポアのフィルターに通してよい。非限定的例として、約3,000Daの分子量カットオフを提供するフィルターを使用してよい。あるいは所望のMWCOを提供するポアを有する透析膜の使用を含む透析プロセスを使用してもよい。そのようなプロセスの使用は、約3,000Daより大きい分子量を有するトランスファーファクター、抗体、および多様なその他の分子を含むより大きな分子を除外した、“ナノ画分”を提供する(例えば初乳、ニワトリ、および様々な原料の粉末化組成物を生成した。次に濾液(すなわちフィルターを通過した液体部分)を、公知の技術(例えば凍結乾燥、スプレー乾燥、より濃縮された液体を形成するための蒸発、ゲル内への組み入れ、など)により、さらに加工してよい。その後得られた“ナノ画分生成物”を、単独で使用してもよいし、または他の組成物中に組み入れてもよい。
【0047】
トランスファーファクターもまた含む調製物(そして調製物はまた、ベースラインレベル(すなわちトランスファーファクターを得る原料(例えば初乳、卵、など)中に既に存在するレベル)を含んでいてもよい)中に、たとえ非常に少量であってもナノ画分分子を含むことにより、得られた組成物は、T細胞による望ましくない活性(例えば自己免疫障害および関連する障害、など)をダウンレギュレートし、一方では望ましいT細胞活性を改善する、またはアップレギュレートする、と考えられる。表4および5に示す、ナノ画分−および−トランスファーファクターの組成物を開発した。
【0048】
【表4】

【0049】
表4の組成物はまた、“免疫調節成分”と呼んでもよい。そのような“免疫調節成分”は、免疫モジュレーターの原料(ナノ画分免疫モジュレーターの原料を含む)もしくは免疫モジュレーター原料の抽出物を組み合わせたもの、例えば表4に列記したものから本質的に成ってよく、または免疫調節成分はその他の成分を含んでもよい。
【0050】
同様に本発明の教示内容を組み込む組成物は、 “免疫調節成分”、例えば表4に開示したものから本質的に成ってよく、または表5に示したようなその他の成分を含んでもよい。
【0051】
【表5】

【0052】
本発明に従っての組成物は、液体(例えばSandy, Utah の4Life Research, LC より入手可能なRio Vida(登録商標)ドリンク中)、粉末(所望の芳香、溶解特性、などを提供する付加的な成分を含んでよい)、錠剤(その他の成分、例えば結合剤(例えばデンプン)などを付加的に含む)、ゲル(ゼラチンもしくはその他の成分を加えてよい)として、またはあらゆるその他の適切な剤形中に組み入れてもよい。本開示の目的として、本発明の組成物のそのような態様を製造するために使用する付加的な成分は、付記した請求項により別に要求していなければ、本開示の目的としては、所望によるものであり、組成物に必須ではないと単に考えてよいものと理解されなければならない。
【0053】
実施例5
約4週間帯状疱疹(水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染)の症状を患っている個体より、血液を集めた。その後血液は、実施例2に記載した様式でImmuKnow (商標)アッセイを使用して、実施例2のサンプル画分を以下の様に置き換えてアッセイを行った:(a)免疫モジュレーターを含まないコントロール;(b)スプレー乾燥した約3,000DaのMWCOを有する初乳画分;(c)Transfer Factor XF(トランスファーファクターXF)(登録商標)、これは現在4Life Research より入手可能であり、約10,000Daの上限MWCOを含むウシ初乳抽出物を含む、を加えた;(d)表4の組成物、すなわち“組成物A”と命名したもの;および(e)表5の組成物、すなわち“組成物B”と命名したもの。(b)から(e)までの各成分は、ImmuKnow(商標)アッセイに添付されたサンプル希釈液中で再構成し、一度血液サンプルおよびその他のすべての液体を各ウェルに加えた時点で、最終的に1ウェル当たり1mg/mlの濃度となる濃度に希釈した。
【0054】
これらのアッセイの結果を以下の表に示す:
【0055】
【表6】

【0056】
これらの結果はまた図2のグラフにも示す。
これらの結果は、刺激の不在下で、多数のTヘルパー細胞が被験者の血液中に残っているがTヘルパー(CD4+)細胞の活性は減少していると予測される時点(初期感染後約4週;すなわち回復期)で得たことを、繰り返しておく。Tヘルパー細胞の活性は、非特異的刺激物質PHAの不在下では、ナノ画分、TF XF、および組成物Aによりわずかにのみ刺激されたに過ぎず、組成物Bによっては刺激されなかったようにみえる。しかしながら表1に示した実施例2の結果から予測されたかもしれないように、PHAによるTヘルパー細胞の非特異的刺激は、TF XFおよび組成物Aにより有意に低減され、そして組成物Bによってはさらに大きな程度にまで低減された。
【0057】
実施例6
より早期の時点(帯状疱疹の症状発症後約1週間)では、T記憶細胞は、帯状疱疹を引き起こすVZV感染の局所的な性質(すなわち相対的に低いVZV血液力価)のため、被験者の血液中に高濃度では存在しないものの、既にVZV感染を認識しており、VZV抗原の存在により容易に刺激されると予測されよう。故に、実施例5で検査したのと同じ患者由来血液に由来するT記憶細胞に関して、T-Cell Memory(商標)アッセイを行い、ナノ画分、TF XF、組成物A、および組成物Bの効果を決定した。以下の点を除き、実施例3に示したプロトコルに従った:VZVワクチン、これは1:10に希釈し、CMVワクチンの代わりに使用した(最終的に1ウェル当たり1:50希釈);および実施例3のサンプル画分を、実施例5で使用したコントロールおよび免疫モジュレーターに置き換え、各免疫モジュレーターは1ウェル当たり100μg/mlの最終濃度に希釈した。
【0058】
以下の表は本アッセイの結果を示す:
【0059】
【表7】

【0060】
このデータはまた、図3にもグラフで表示した。
予測されるように、TF XF中に存在するトランスファーファクターは、T記憶細胞による活性を刺激した。トランスファーファクターへの少量の追加のナノ画分分子の添加は、付加的なVZV刺激を伴う場合もそうでない場合も双方とも、T記憶細胞の活性を有意に増加させた。したがって実施例5および6の結果は、トランスファーファクターもまた含む調製物に、例え非常に少量であっても追加のナノ画分分子を添加することで、T細胞による望ましくない活性(例えば自己免疫障害および関連する障害、など)をダウンレギュレートし、一方所望のT細胞活性を、改善またはアップレギュレートすることを確認した。
【0061】
実施例7
もう1つの研究において、表4および5に示したトランスファーファクターおよび追加のナノ画分分子を含む組成物を含む様々な組成物の、ナチュラルキラー(NK)細胞への感受性のあるヒト赤芽球性白血病細胞株K−562に対するNK細胞の活性を刺激する能力を決定するためにこの研究を行い、評価した。故に本明細書において、NK細胞はまた“エフェクター細胞”とも呼び、一方本明細書においてK−562細胞はまた“腫瘍細胞”および“標的細胞”とも呼ぶ。具体的には、MTTアッセイの技術を使用したが、このアッセイでは、黄色である3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)が、生きている細胞の活性なミトコンドリア内の還元酵素により、紫色であるホルマザンに還元される。細胞傷害性の分析の直前に、ホルマザンを溶解する溶液(例えば希塩酸(HCl)中のジメチルスルホキシド、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、など)を、各ウェルに加える。次に、各ウェル内の溶液により吸収されるある種の波長(例えば約500nmから600nmの範囲の波長)の光の量を測定する分光測定を使用して、検査組成物を添加しない1つまたはそれより多くのコントロールウェル内の生きている細胞数に相対して、アッセイを行ったウェル内の生きている細胞数を決定した。
【0062】
評価した組成物は、4Life Research より入手可能なTransfer Factor Advanced(商標);これもまた4Life Research より入手可能なTransfer Factor Plus Advanced(商標);組成物A、すなわちトランスファーファクターおよび増加した量のナノ画分分子の双方を含むもの;組成物B、すなわちトランスファーファクター、増加した量のナノ画分分子、および免疫系の活性を増強すると考えられているその他の成分を含むもの;ウシ初乳由来のナノ画分分子;鶏卵由来のナノ画分分子;およびインターロイキン−2(IL−2)、これは癌細胞に対してNK細胞を動員することが知られており、オランダのChiron から商標名Proleukin にて入手可能、を含んだ。
【0063】
血液は5名の健常なドナーより得た。公知のプロセスを使用して、血液の他の構成物より白血球細胞を単離した。公知の密度勾配遠心法(例えばSt. Louis, MissouriのSigma-Aldrich Corporationより入手可能なHistopaque(登録商標)密度勾配を使用して)を使用して、他のタイプの白血球細胞から、NK細胞を含む単核細胞を単離した。単核細胞を、10%ウシ胎児血清(FCS)を含むRPMI 1640成長培地中に導入した。100μlの培養培地中に約60,000白血球細胞の濃度を含む、この混合物の等しい容量を、標準的な96ウェルプレートの別個のウェル内に導入した。1mlの無菌、脱イオン水に0.100mg粉末の濃度を各々有する、上記で同定したトランスファーファクターおよび/またはナノ画分分子を含有する組成物の再構成したサンプルを、白血球細胞および成長培地を含有する3つの別個のウェルに各々加えて、合計18のウェルとした。加えて、1,000IU/mlのIL−2を、単核細胞−成長培地の混合物を含有する3つのポジティブコントロールウェル内に導入した。3つのネガティブコントロールウェルは、単核細胞−成長培地の混合物のみを含み、免疫モジュレーターは含まないものとした。3つのエフェクター細胞のみのネガティブコントロールウェルもまた、単核細胞−成長培地の混合物のみを含み、一方3つの標的細胞のみのネガティブコントロールウェルは、100μlの成長培地のみを含んだ。
【0064】
単核細胞は、それらの各々の免疫調節組成物と共に(3つのネガティブコントロールウェルは除く)、5%COの存在下、37℃の温度および100%の湿度で48時間インキュベーションした。
【0065】
インキュベーションの後、3つのエフェクター細胞のみのネガティブコントロールウェルを除き、約30,000のK−562細胞を、単核細胞および成長培地を含有する各ウェルに導入した。96ウェルプレートおよびそのウェル内の混合物を、5%COの存在下、37℃の温度および100%の湿度で48時間、再度インキュベーションした。
【0066】
5mg MTT/ml Henkの生理食塩水溶液の濃度を有するMTT溶液は、公知の標準的な技術に従って調製した。20マイクロリットル(20μl)のMTT溶液を、96ウェルプレーの単核細胞−成長培地−腫瘍細胞を含有する各ウェル内に導入した。プレートおよびそのウェルの内容物を、5%COの存在下、37℃の温度および100%の湿度で、今回は約4時間、再度インキュベーションした。
【0067】
この最後のインキュベーションの後、96ウェルプレートを約1,500rpmで約5分間遠心した。その後上清(液体)を各ウェルから除去し、150μlのジメチルスルホキシド(DMSO)を、単核細胞および腫瘍細胞を含有する各ウェル内に導入した。その後分光光度計を使用して、細胞を含有する各ウェルの540nmの波長での光学密度を測定した。次に測定した光学密度を使用して、各検査物質により活性化された場合のNK細胞の細胞傷害性指数(%)(CI(%))を、以下の式を使用して決定した:
CI(%)=[1−(ODe+t−OD)/OD]×100
式中、ODe+tは、ポジティブコントロールのIL−2を含む、検査組成物に対応する各検査ウェルの光学密度であり、ODは3つのエフェクター細胞のみのネガティブコントロールウェルの平均光学密度であり、そしてODは3つの標的細胞のみのネガティブコントロールウェルの平均光学密度である。CI(%)は、検査した免疫調節組成物もまた含有する各ウェルにおける、NK細胞により殺された標的細胞のパーセントを表す。結果を以下の表に表す:
【0068】
【表8】

【0069】
これらのデータは、図4の図表にも示したが、ナノ画分分子、特にウシ初乳由来のものを含む組成物は、K−562主要細胞に対するNK細胞活性の誘発で、IL−2とほぼ同程度、またはそれ以上に有効であり、一方初乳および卵由来のトランスファーファクターならびに初乳由来のナノ画分分子を含む組成物(すなわち組成物Aおよび組成物B)は、ナノ画分分子を含まない組成物より有効に、NK細胞を活性化することを示す。
【0070】
重量でわずか2%のさらなるナノ画分分子を、トランスファーファクターを含む組成物に加えることにより、ナノ画分分子が、被験者の免疫系の細胞性免疫部分の非特異的成分(例えばNK細胞)による作用をブーストし、被験者の免疫系の細胞性部分の抗原特異的成分による活性を誘発するトランスファーファクターの能力を補完すると思われる。
【0071】
まとめて考察すると実施例5から7までの結果は、トランスファーファクターはTヘルパー細胞を制御および刺激し、そのことが病原体およびその他の望ましくない侵入物に対する被験者の免疫系が、より迅速にそして効率的に応答することを可能にすることを実証する。加えて実施例5から7は、トランスファーファクターがT記憶細胞の活性を増強すると思われることを説明する。
【0072】
実施例5から7はまた、トランスファーファクターを含む組成物に追加のナノ画分免疫モジュレーター分子加えることで、トランスファクター、およびトランスファーファクターを含む現在ある組成物の(例えばTヘルパー細胞、T記憶細胞、およびNK細胞の)免疫調節を強化および増強すると思われることを示す。
【0073】
被験者の細胞性免疫を調節する方法は、ナノ画分分子を含む組成物を被験者に(例えば経腸的に、非経口的に、など)投与することを含む。ナノ画分分子は、単独で、もしくは本質的にナノ画分分子から成る組成物の一部として投与してよく、またはナノ画分分子は、トランスファーファクターを含む組成物(例えば実施例4または実施例5に示した組成物)と共に投与してもよい。投与は、被験者の細胞性免疫における全体のバランスを維持する目的で、規定の基礎的状態において実施してよく、または被験者の細胞性免疫に影響を及ぼす(活性化または抑制する)感染、自己免疫障害、組織移植、もしくは別のイベントに応答して達成してもよい。
【0074】
本発明の教示内容に従ってのナノ画分免疫モジュレーター分子を含む組成物の投与は、生理学的必要性に基づいて細胞性免疫の活性を調節すると考えられる。例えば望ましくない細胞性免疫の活性(例えば自己免疫、など)は、低減されると思われる。もう1つの例として、望ましくない病原体、ならびにその他の望ましくない実体、例えば癌細胞およびその他の異常なまたは変異した細胞を、(例えばTヘルパー(CD4+)細胞を活性化し、それにより今度はナチュラルキラー(NK)細胞を活性化することにより、T記憶細胞の作用を可能にすることによって抗原特異的免疫を増加させることにより、など)被験者の体から除去するT細胞の能力もまた、特にトランスファーファクターが付加的な量のナノ画分免疫モジュレーター分子と共に投与された時に、集中および増強されると思われる。
【0075】
前述の記載は多くの具体的例を含有するが、これらは本発明の範囲を限定するものとしてではなく、単に本発明に好ましい態様のいくつかの説明を提供するものとして、解釈されなければならない。同様に、本発明の精神または範囲から離れることのない本発明の他の態様を考案してもよい。異なる態様の特徴を組み合わせて使用してよい。それ故本発明の範囲は、前述の記載よりむしろ付記した請求項およびそれらの法的均等物によってのみ、示され、限定される。請求項の意味および範囲に含まれる本明細書に開示したような、本発明に対するすべての添加、削除、および修飾は、本発明により包括的に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫機能を改善するための組成物であって、以下:
約10,000Daの上限分子量カットオフを有する免疫モジュレーターの原料の第一の抽出物を含む第一の部分、該食品抽出物はトランスファーファクター、および約3,000Daまたはそれより小さい分子量を有するナノ画分免疫調節分子を含む;ならびに
約3,000Daの上限分子量カットオフを有する免疫モジュレーターの原料の第二の抽出物を含む第二の部分、該抽出物は約3,000Daまたはそれより小さい分子量を有するナノ画分免疫調節分子の多くを含む;
を含む免疫調節成分、
を包含する、前記組成物。
【請求項2】
抽出物がウシ初乳の抽出物を包含する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
抽出物が鶏卵の抽出物をさらに包含する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
第2の抽出物が、ウシ初乳のもう1つの抽出物を包含する、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
ウシ初乳のもう1つの抽出物が、免疫調節成分の重量の少なくとも約2パーセントを構成する、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
ウシ初乳の抽出物が、免疫調節成分の重量の約68%を構成し;そして
鶏卵の抽出物が、免疫調節成分の重量の約30%を構成する;
請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
免疫機能を改善するための組成物であって、以下の成分:
約10,000Daの上限分子量カットオフを有するウシ初乳の粉末化抽出物;
約3,000Daの上限分子量カットオフを有するウシ初乳の粉末化抽出物;および
粉末化卵黄;
から本質的に成る免疫調節成分、
を包含する、前記組成物。
【請求項8】
約3,000Daの上限分子量カットオフを有するウシ初乳の粉末化抽出物が、免疫調節成分の重量の少なくとも約2パーセントを構成する、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
約10,000Daの上限分子量カットオフを有するウシ初乳の粉末化抽出物が、免疫調節成分の重量の約68%を構成し;
約10,000Daの上限分子量カットオフを有するウシ初乳の粉末化抽出物が、免疫調節成分の重量の約2%を構成し;そして
粉末化した全卵の卵黄が、免疫調節成分の重量の約30%を構成する;
請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
免疫機能を改善するための組成物であって、以下:
最大でも約3,000Daの分子量を有するナノ画分分子から本質的に成る免疫調節成分
を包含する、前記組成物。
【請求項11】
ナノ画分分子を、ウシ初乳および鶏卵の少なくとも1つから得る、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
被験者の免疫系を調節するための方法であって、以下:
最大でも約3,000Daの分子量を有するナノ画分免疫モジュレーター分子から本質的に成る、免疫モジュレーターの原料からの抽出物を含む組成物を、被験者に投与すること
を包含する、前記方法。
【請求項13】
投与が、抽出物から本質的に成る組成物を投与することから本質的に成る、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
投与が、約10,000Daまでの分子量を有する免疫モジュレーター分子を含む、免疫モジュレーターの原料の抽出物を付加的に含む組成物を、被験者に投与することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
投与が、重量の少なくとも約2パーセントの、約3,000Daまでの分子量を有する免疫モジュレーター分子から本質的に成る抽出物、を含む組成物を投与することを包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
投与が、以下から成る免疫調節成分であって:
栄養補助食品の重量の約2%が、ウシ初乳の抽出物を包含し、そして約3,000Daまでの分子量を有する免疫モジュレーター分子から本質的に成り;
栄養補助食品の重量の約68%が、ウシ初乳の抽出物を包含し、そして約10,000Daまでの分子量を有する免疫モジュレーター分子から本質的に成り;そして
栄養補助食品の重量の約30%が、鶏卵の卵黄を包含する;
前記免疫調節成分、
を含む組成物、を投与することを包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
投与が、病原体、癌細胞、および異常なまたは変異した細胞に対する、T記憶細胞、Tヘルパー細胞、およびナチュラルキラー細胞の少なくとも1つの活性を増加させる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
投与が、望ましくない細胞性免疫の活性を減少させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
以下:
少なくとも1つのタイプの免疫細胞の刺激されていない活性を評価すること;
少なくとも1つのタイプの免疫細胞を刺激分子に暴露させること;
少なくとも1つのタイプの免疫細胞の刺激された活性を評価すること;
少なくとも1つのタイプの免疫細胞を、潜在的免疫モジュレーターに暴露させること:そして
少なくとも1つのタイプの免疫細胞の刺激された活性における、潜在的免疫モジュレーターの効果を評価すること、
を包含する、少なくとも1つの分子の免疫調節能力を決定するためのアッセイ法。
【請求項20】
少なくとも1つのタイプの免疫細胞の活性の評価が、少なくとも1つのタイプのT細胞の活性を評価することを包含する、請求項19に記載のアッセイ法。
【請求項21】
少なくとも1つのタイプのT細胞の活性の評価が、CD3+細胞およびCD4+細胞の少なくとも1つの活性を評価することを包含する、請求項20に記載のアッセイ法。
【請求項22】
少なくとも1つのタイプの免疫細胞の刺激分子への暴露が、少なくとも1つのタイプの免疫細胞をマイトジェンに暴露させることを包含し;そして
刺激された活性の評価が、マイトジェンへの暴露に続いての、少なくとも1つのタイプの免疫細胞の活性における増加を評価することを包含する;
請求項19に記載のアッセイ法。
【請求項23】
以下:
少なくとも1つのタイプの免疫細胞の刺激分子への暴露が、少なくとも1つのタイプの免疫細胞を抗原に暴露させることを包含すること;そして
刺激された活性の評価が、抗原への暴露に続いての少なくとも1つのタイプの免疫細胞の活性における増加を評価することを包含すること;
をさらに包含する、請求項19に記載のアッセイ法。
【請求項24】
少なくとも1つのタイプの免疫細胞が、健常な免疫細胞、免疫学的に易感染性の原料由来の免疫細胞、または感染から回復しているもしくは感染から最近回復した原料由来の免疫細胞、の少なくとも1つを包含する、請求項19に記載のアッセイ法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−504988(P2010−504988A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−530527(P2009−530527)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/078947
【国際公開番号】WO2008/042604
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(503107808)フォーライフ リサーチ エルエルシー (2)
【氏名又は名称原語表記】4LIFE RESEARCH
【Fターム(参考)】