免疫介在性疾患の治療及び/又は予防における繊維状血球凝集素
繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドは、免疫介在性疾患及び/又は自己免疫疾患の予防、及び/又は治療に有用である。FHAは、自己抗原若しくは外来抗原、又はそのペプチドを含み得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
先天性免疫システムに関与する細胞、特に樹状細胞(DC)は、ナイーブCD4+T細胞が機能的に独立したTh1、Th2、又は制御性T細胞(Tr)のサブタイプへ分化することを誘導する。保存された微生物の分子がトル様受容体(TLR)及びインテグリンのような病原体認識受容体(PRR)に結合することによる未熟DCの活性化は、成熟とリンパ節への定着と共に起こり、成熟したDCはリンパ節内でナイーブT細胞に抗原を提示する。病原体由来の分子によるDCの活性化は、ナイーブCD4+T細胞が別々のT細胞サブタイプへ分化することの調節に重要な役割を果たす(1、2)。Th1細胞は、細胞内感染に対する防御を提供するが、同時に炎症応答、及び自己免疫疾患にも関係する。これに対してTh2細胞は、アレルギー応答に関係している。Tr細胞はTh1及びTh2応答を抑制する能力を有している。
【0003】
百日咳菌(Bordetella pertussis)は、経過の長い重篤な疾患を起こし、度々二次感染及び肺炎を併発し、幼児では死に至る場合もある。この感染症からの回復は、百日咳菌に特異的なTh1細胞の発達と関連しており、このTh1細胞が細菌の呼吸器からの駆逐に重要な役割を果たす。しかしながら、肺及び局所リンパ節内での抗原特異的なTh1応答は、感染症の急性期では高度に抑制されている。百日咳菌は、進化の過程で、防御免疫応答から逃れる多数の手段を獲得してきた。
【0004】
百日咳菌由来の病原性因子である繊維状血球凝集素(FHA)は、LPSによるマクロファージのIL−12産生を抑制し、マウスの敗血症ショックモデルにおいてIL−12及びIFN−γ産生を抑制し(3)、また互いに関連のない病原因子であるインフルエンザウイルスを同時に気道に感染させた際に起こるTh1応答を抑制する能力を有している(4)。FHAは、基本的にはアドヘシンとして作用し、白血球応答性インテグリン(leukocyte response integrin)及びインテグリン関連タンパク質(CD47)複合体への結合を介して百日咳菌のβ2−インテグリン(CR3、CD11b/CD18、αMβ2)への結合を仲介すると考えられている(5)。FHAはまた、先天性免疫システムの細胞と相互作用することにより、百日咳菌の急性感染期において、制御活性を有するT細胞を誘導させてTh1応答を抑制することにも寄与し得る。FHAは、DCと直接的に相互作用してIL−10を誘導させ、LPS誘導IL−12及び炎症性ケモカインの産生を抑制する(6)。FHAとの相互作用後に生じたDCは、ナイーブT細胞からのTr1細胞の分化を選択的に刺激する。急性感染したマウスの肺からは、百日咳菌由来のFHA及びパータクチン(PRN)に特異的なTr1クローンが発生した。これらのTr1細胞はIL−10を高いレベルで産生し、インビトロ及びインビボで百日咳に対する防御的なTh1応答を抑制した(6)。これらの発見は、防御免疫を回避するために呼吸器の病原因子によって利用されるTr1細胞の新たな機能を提示するものであり、これらの制御性細胞がDCにより誘導され、病原因子由来の分子と相互作用した後にIL−10産生が活性化され、IL−12が抑制されるという証拠を提供するものである。
【0005】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系を冒す自己免疫疾患である。この疾患に罹患している人は、自己反応性のT細胞(自己抗原を認識するT細胞)を有し、これがインターロイキン(IL)−1β及び腫瘍壊死因子(TNF)αと共に神経繊維のミエリン鞘に沿った炎症性病変の形成に関与する。MS患者の脳脊髄液(CSF)は活性化T細胞を含み、これが脳組織に浸潤してミエリンを破壊するという特徴的な炎症性病変を起こす。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、MSの動物モデルである。EAEは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)若しくはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)又はそれらのペプチドを、フロイント完全アジュバントと共に注入することによってマウス又はラット内で誘導される。この疾患はまた、IFN−γを分泌するT細胞(Th1細胞と称される)の中でMBP又はMOGに特異的なものを移入することによっても誘導され得る。動物の中枢神経系のミエリン鞘に細胞浸潤が起こり、その結果、脱髄が起こってついには麻痺を発症する。その臨床徴候及び病理学的変化は、MSと類似する。
【0006】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、ヒトの腸の炎症性疾患である。これら自己免疫疾患は、CD4+T細胞に仲介される腸の炎症状態である。制御性T細胞(Tr細胞)は正常な人においては自己免疫疾患の発症を防止している。CD45RBhigh(ナイーブ)T細胞を注入することで重症複合性免疫不全症(SCID)マウスに大腸炎が発生し得るが、これはCD45RBlow又はCD4+CD25+制御性T細胞の同時注入により防ぐことができる(7)。また、CD45RBlow又はCD4+CD25+制御性T細胞を除去すると、そのような処置を施さなければ正常であったマウス又はラットに種々の自己免疫疾患が自然に発症する(8)。
【非特許文献1】McGuirk、P.、及びK.H.G.Mills. 2002. Pathogen−specific regulatory T cells provoke a shift in the Th1/Th2 paradigm in immunity to infectious diseases. Trends. Immunol. 23:450−455。
【非特許文献2】Lavelle、E.、E.McNeela、M.E.Armstrong、O.Leavy、S.C.Higgins、及びK.H.G.Mills. 2003. Cholera toxin promotes the induction of regulatory T cells as well as Th2 cells specific for bystander antigens by modulating dendritic activation. J. Immunol. 171:2384−2392。
【非特許文献3】McGuirk、P.、C.McCann、及びK.H.G.Mills. 2002. Pathogen−specific T regulatory 1 cells induced in the respiratory tract by a bacterial molecule that stimulates interleukin 10 production by dendritic cells: a novel strategy for evasion of protective T helper type 1 responses by Bordetella pertussis. J. Exp. Med. 195:221−231。
【非特許文献4】McGuirk、P.及びK.H.G.Mills. 2000. Direct anti−inflammatory effect of a bacterial virulence factor: IL−10−dependent suppression of IL−12 production by filamentous hemagglutinin from Bordetella pertussis. Eur. J. Immunol. 30:415−422。
【非特許文献5】McGuirk、P.、P.A.Johnson、E.J.Ryan、及びK.H.G.Mills. 2000. Filamentous hemagglutinin and pertussis toxin from Bordetella pertussis modulate immune responses to unrelated antigens. J. Infect. Dis. 182、 1286−1289。
【非特許文献6】Ishibashi、Y.、S.Claus、及びD.A.Relman. 1994. Bordetella pertussis filamentous hemagglutinin interacts with a leukocyte signal transduction complex and stimulates bacterial adherence to monocyte CR3 (CD11b/CD18). J. Exp. Med. 180:1225−1233。
【非特許文献7】Asseman、C.、Mauze、S.、Leach、M.W.、Coffman、R.L.及びPowrie、F. 1999. An essential role for interleukin 10 in the function of regulatory T cells that inhibit intestinal inflammation. J. Exp. Med. 190:995−1004。
【非特許文献8】Sakaguchi、S.、Takahashi、T.、Yamazaki、S.、Kuniyasu.、Y.、Itoh、M.、Sakaguchi、N.及びShimizu、J. 2001. Immunologic self tolerance maintained by T−cell−mediated control of self−reactive T cells: implications for autoimmunity and tumor immunity. Microbes Infect. 3:911−8。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先天性免疫システム細胞に抗炎症性サイトカインを誘導させる方法、又はインビボでTr細胞を誘導するように先天性免疫細胞を調節する方法は、炎症性疾患及び自己免疫疾患並びにアレルギーの治療に有用である可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤を投与するステップを含む、免疫介在性疾患の予防及び/又は治療方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤を投与するステップを含む、自己免疫疾患の予防及び/又は治療方法が提供される。
【0010】
本発明は更に、免疫介在性疾患の予防及び/又は治療のための、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤の使用も提供する。
【0011】
本発明は、自己免疫疾患の予防及び/又は治療のための、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤の使用も提供する。
【0012】
一実施態様において、繊維状血球凝集素(FHA)は、百日咳菌(Bordetella pertussis若しくはBordetella bronchisepetica)若しくはパラ百日咳菌(Bordetellaparapertussis)、又は他の細菌からの関連分子に由来する。関連分子は、FHA内の配列と相同な配列を有する他の細菌からのタンパク質を含み得る。
【0013】
本発明の一実施形態において、薬剤は、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む。
【0014】
一実施態様において、薬剤は、自己抗原若しくは外来抗原、又はそれらのペプチドと組合せたFHAを含む。
【0015】
本発明の一実施態様において、薬剤は、インビボで抗炎症性サイトカインの産生を促進する。
【0016】
本発明の一実施態様において、薬剤は、自己抗原に応答したTr細胞の誘導を促進する。
【0017】
本発明の別の一実施態様において、FHAは、共投与された自己抗原又は外来抗原に対するTr細胞の誘導を促進するようにインビボで免疫調節剤として作用する。
【0018】
自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、及び動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、及び変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上であることが好ましい。移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む。
【0019】
自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上であり得る。
【0020】
好ましくは、ミエリンタンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである。ミエリン塩基性タンパク質は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチド、最も好ましくはMOGペプチド(35〜55)である。
【0021】
本発明の一実施態様において、薬剤は、炎症性サイトカインの産生を調節する。
【0022】
一実施態様において、薬剤は抗炎症性サイトカインの誘導を促進する。
【0023】
本発明の別の一実施態様において、先天性免疫システムに関与する細胞に対するFHAの免疫調節効果は、トル様受容体のリガンドとの同時活性化により高められる。トル様受容体(TLR)のリガンドは、LPS、又はCpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上の他のトル様受容体リガンドであり得る。
【0024】
本発明の一実施態様において、FHAは、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10及びTGF−βの産生を促進する。
【0025】
本発明の一実施態様において、FHAは、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−6の産生を促進する。
【0026】
本発明の更なる実施態様において、FHAは、LPS又は他のTLRリガンドとの相乗効果によって、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10、TGFβ及びIL−6の産生を促進する。
【0027】
本発明の一実施態様において、FHAは、TGFβのmRNAの発現を誘導する。
【0028】
別の一実施態様において、FHAは、炎症性サイトカイン、炎症性ケモカイン又は他の炎症性メディエータを抑制する。炎症性サイトカインは、TNF−α、IFN−γ、IL−2、IL−12、IL−1、IL−23及びIL−27のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上であり得る。
【0029】
炎症性サイトカインは、マクロファージ炎症性タンパク質−1α又はマクロファージ炎症性タンパク質−1βであり得る。
【0030】
一実施態様において、FHAは、樹状細胞が亜成熟した表現型に成熟することを促進する。
【0031】
一実施態様において、FHAは、TLR−リガンドとの同時活性化の後に、樹状細胞の成熟を促進する。
【0032】
別の一実施態様にて、FHAは、TLR−リガンドにより誘導される樹状細胞の活性化を抑制する。
【0033】
FHAは、エンドトキシンを実質的に含まないことが好ましい。FHAは、タンパク質1μg当たり300pg未満のエンドトキシンを含み得る。
【0034】
本発明の一実施態様において、FHAは、免疫調節剤、アジュバント、免疫治療薬又は抗炎症薬の形態で存在する。
【0035】
本発明の一実施態様において、薬剤は、感染又は外傷により誘導される炎症性サイトカインの産生を調節する。
【0036】
別の一実施態様において、免疫介在性疾患は、敗血症、又は感染、外傷若しくは損傷によって惹起される急性炎症である。疾患は、多発性硬化症であり得る。
【0037】
本発明の一実施態様において、免疫介在性疾患は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ及び乾癬から選択される任意の一つ又はそれ以上である。他の免疫介在性疾患は、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群から二次的に発生した乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬傷に対するアレルギー応答、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症(scieroderma)、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病リバーサル反応、ハンセン病性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、突発性両側性進行性感音性難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、突発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、アルツハイマー病及びセリアック病の任意の一つ又はそれ以上を含む。
【0038】
本発明の別の一実施態様において、免疫介在性疾患は、大腸炎、喘息又はアトピー性疾患である。
【0039】
薬剤は、経口、鼻腔内、静脈内、経皮、皮下又は筋内投与用の形態で存在することが好ましい。薬剤は反復して投与され得る。
【0040】
本発明は更に、FHAを含む免疫調節剤を提供する。
【0041】
本発明はまた、免疫調節効果を有する組み換えFHAも提供する。
【0042】
本発明は更に、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含むワクチンを提供する。ワクチンは、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、抗原とを含み得る。
【0043】
FHA及び抗原は、0.01:1〜100:1の範囲内の重量比にて存在することが好ましい。FHA及び抗原は、1:10〜10:1のモル比にて存在することが好ましい。
【0044】
本発明はまた、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドに対する抗体も提供する。
【0045】
本発明はまた、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと抗原との組合せを含む製品も提供し、ここで該抗原は自己抗原及び外来抗原から選択される。
【0046】
一実施態様において、製品は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンドとの組合せを含む。
【0047】
別の一実施態様において、製品は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンド及び自己抗原との組合せを含む。
【0048】
TLRリガンドは、薬剤的に許容されるTLRリガンドが好ましい。TLRリガンドは、CpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysから選択される任意の一つ又はそれ以上であり得る。
【0049】
製品は、その誘導体、変異体、断片若しくは変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含み得る。
【0050】
本発明はまた、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む医薬組成物も提供する。
【0051】
本発明の一実施態様において、医薬組成物は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを、自己抗原又は外来抗原による免疫のためのアジュバントとして含む。
【0052】
別の一実施態様において、医薬組成物は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはペプチドと抗原との組合せを含み、該抗原は自己抗原及び外来抗原から選択される。
【0053】
FHAは、その誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含み得る。
【0054】
自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、花粉としての杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、及び動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、及び変異したペプチドのリガンドのうちから選択された任意の一つ又はそれ以上であり得る。移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含み得る。
【0055】
自己抗原は、好ましくはミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である。ミエリンタンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドであり得る。ミエリン塩基性タンパク質は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドであり得る。ミエリン塩基性タンパク質は、MOGペプチド(35〜55)であり得る。
【0056】
一実施態様において、医薬組成物は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドとTLRリガンドとの組合せを含む。TLRリガンドは、薬剤的に許容されるTLRリガンドが好ましい。
【0057】
本発明は更に、炎症性及び/又は免疫介在性疾患の治療、及び/又は予防のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用を提供する。
【0058】
本発明はまた、トル様受容体依存性シグナル伝達に関与する疾病又は病状の予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0059】
本発明はまた、喘息又はアレルギーの予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0060】
本発明はまた、免疫介在性疾患の予防のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0061】
本発明はまた、多発性硬化症の予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0062】
本発明はまた、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ、及び乾癬のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上の疾病の予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0063】
本発明はまた、大腸炎、炎症性腸疾患又は喘息若しくはアレルギーの予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0064】
更なる実施態様において、本発明はFHAの精製方法を提供し、この方法はLPSを実質的に含まないFHAを提供するための方法を含む。本発明は、実質的に純粋なFHA製剤を調製する方法を提供し、この方法は、FHAの標本を透析してタンパク質を変成させ混入エンドトキシンを露出させ、残留したエンドトキシンを除去するステップを含む。エンドトキシンは、洗浄剤を使用して除去されてもよい。
【0065】
ある場合にて、この方法は、
精製カラムを充填し、
透析されたFHAの標本を加え、
洗浄剤で洗浄し、
実質的に精製されたタンパク質を溶出するステップを含む。
【0066】
明細書全体を通して、用語「免疫介在性疾患」は、免疫応答が発病に寄与する任意の疾患であって、自己免疫疾患を含むがそれに限定されない疾患と解釈される。
【0067】
用語「自己免疫疾患」は、自己の免疫システムによる炎症及び組織破壊を原因とするもので、自己組織の成分又は産生物に対してそれらを外来物として処理する細胞性又は体液性の免疫応答に関与する多数の互いに関連のない疾患の一つを指す。
【0068】
本願で使用されているように、用語「誘導体、変異体、断片、変種又はペプチド」は、FHAの機能的部分から構成される任意の分子、又は巨大分子を含むものと理解される。断片、変種又はペプチドは、当業者に通常知られた技術によって調製され得る。これらはCD11b/CD18又はCD47/CD61と相互作用するFHAの領域に対応し、RGDモチーフを含んでもよいペプチド又は断片を含む。FHAのRGD含有領域に対応する合成ペプチドに関する先駆的なデータは、これらがマクロファージ又は樹状細胞からIL−10を誘導させ、及び/又はIL−12産生を抑制することが可能であり得ることを示唆している。
【0069】
用語「抗原」は、抗原のレシピエント内で体液性及び/又は細胞性の免疫応答を引き起こし得る分子を指す。体液性及び/又は細胞性の免疫応答は、例えば抗原に特異的な抗体の産生、又は抗原を認識するか又は抗原に結合するT細胞の誘導を含み得る。本明細書全体において用語「抗原」は、抗体又はT細胞の受容体に特異的に結合する任意の物質を含むものと解釈される。用語「自己抗原」は、自己組織又は自己の細胞上にある、外来のものではない内在性の抗原を意味するものと解釈される。用語「外来抗原」は、病原体(細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫)由来の抗原を意味するものと解釈される。
【0070】
本発明の組成物及び方法には、自己免疫疾患、アレルギー及び移植拒絶反応に関与する抗原が使用され得る。自己免疫疾患に関与する抗原の例は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体を含む。アレルギーに関与する抗原の例は、例えば杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原のような花粉抗原、例えばホコリダニ抗原及びネコ抗原のような動物由来の抗原、組織適合抗原を含む。移植拒絶反応に関与する抗原の例は、例えば心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓のようなレシピエント内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む。抗原は、自己免疫疾患の治療に有用な、変異したペプチドのリガンドでもあり得る。
【0071】
本発明の組成物及び方法に使用することができる多様な抗原の例には、βアミロイドタンパク質及びアミロイド前駆体タンパク質がある。
【0072】
用語「アジュバント」は、インビボで抗原と共に使用されて抗原に対する免疫応答を高める物質を含むものと解釈される。
【0073】
用語「免疫調節剤」は、細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌の病原体由来の分子を含む、免疫システム細胞の応答を調節、即ち増大及び/又は低下させる任意の分子を含むものと解釈される。
【0074】
用語「樹状細胞(DC)の亜成熟の表現型」とは、未熟DCと成熟DCの中間の表現型を意味する。未熟DCとは、組織内に存在し、未だ刺激を受けていないDCを意味する。成熟DCは、トル様受容体リガンドにより単独で、又はサイトカインと共に刺激された後に、未熟DCから分化する。成熟とは、細胞表面上で共刺激分子及びMHC分子の発現が増大していることを意味する。
【0075】
本発明は以下の添付の図面を参照とした実施例の説明から、より明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
本発明者等は、百日咳由来の繊維状血球凝集素(FHA)が、免疫介在性疾患の治療に、又は自己免疫疾患に対するワクチンを含む免疫介在性疾患に対するワクチン中の免疫調節剤として使用できることを見出した。実験的アレルギー性脳髄膜炎(EAE)、即ちマウスの多発性硬化症モデルにおいて、このマウスにFHA存在下でミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)合成ペプチドを非経口的に投与して免疫すると、疾病徴候、及び病態の発現が防止できることを発見した。FHA存在下で自己抗原又は外来抗原により免疫すると、バイスタンダー抗原に特異的な制御性T細胞の誘導が促進され、これらの制御性T細胞が、自己免疫状態に繋がる自己反応性免疫応答を防止することができるものと思われる。
【0077】
多発性硬化症の治療のための現在のアプローチは、疾病徴候の発現が既に始まっている個人の脳内の炎症を減少させることを狙いとする治療戦略に焦点を当てている。
【0078】
本発明者等は、抑制活性を有し、かつミエリンタンパク質に特異的な記憶T細胞をFHAにより誘導することによって、EAEの臨床徴候の発現を防止し得ることを見出した。
【0079】
本発明者等は、FHAの皮下投与により、ナイーブCD45RBhi細胞の移入によってSCIDマウス内で誘導された腸の炎症が減少され、大腸重量の増加及び収縮が低減され、体重低下が防止されることも見出した。このことは、FHAが、おそらくは制御性T細胞の誘導によって、又は制御性T細胞の誘導を促進する、若しくは自己免疫疾患を仲介する免疫応答に対して直接的な抑制効果を有する、内因性のIL−10及びTGF−βを産生させることによって、自己免疫疾患の発症を防止し得ることを示している。
【0080】
FHAを外来抗原と共投与すると、共投与された抗原に特異的な制御性T細胞が刺激される。FHAは、IL−5及びIL−10を分泌するT細胞の誘導を促進するが、IL−4又はTNF−αを分泌するT細胞の誘導は促進しないことが見出され、これによってFHAはインビボでタイプ1制御性T細胞(TR1)の誘導を支配することが示された(図8)。
【0081】
本発明者等は、自己抗原及びFHAにより免疫されたマウスが、レシピエントマウス内に移入後、EAEに対する防御を獲得することを見出した。FHAの単独投与による治療では、EAEの臨床徴候が減少した。
【0082】
想定され得る医薬製品の一つは、FHAと、例えば自己抗原若しくは外来抗原であり得る薬剤的に許容される抗原との組合せ、又は自己抗原若しくは外来抗原のペプチドとの組合せであり得る。このような組合せ製品は、FHAがそれと組合せた成分と相乗的に作用する点で有利な効果を有すると予見される。このような製品は、当業者に一般に知られた工程を用いて製造することができる。
【0083】
本発明者等は、FHAによるIL−10の産生と、IL−12及びIFN−γの抑制とが、例えばLPSのようなトル様受容体リガンド(TLRリガンド)の存在により向上されることを見出した。他のTLRリガンドは、Pam3Cys、CpGモチーフ、dsRNA又はPoly(I:C)から選択される任意の一つ又はそれ以上であり得る。FHAと薬剤的に許容されるTLRリガンドとの組合せは、向上された免疫調節効果を有すると思われる。FHAと、薬剤的に許容されるTLRリガンド及び自己抗原との組合せも、向上された免疫調節効果、及び/又は抗炎症効果を提供することが予見される。
【0084】
FHAは既にヒトへの使用が認可されており、現在数種の無細胞百日咳ワクチンの成分となっている。そのワクチン中でFHAは、水酸化アルミニウムに吸着されている。
【0085】
FHA又はその誘導体は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ又は乾癬を含むが、これらに限定されない免疫介在性疾患の治療に使用されるか、又はその予防のための療法若しくはワクチンの成分として使用され得る。
【0086】
FHA又はその誘導体はまた、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節症、乾癬性関節炎を含む)、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群から二次的に発生した乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬傷に対するアレルギー応答、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症(scieroderma)、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病リバーサル反応、ハンセン病性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、突発性両側性進行性感音性難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、突発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、アルツハイマー病及びセリアック病のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上の免疫介在性疾患の治療に使用されるか、又はその予防のための療法若しくはワクチンの成分として使用され得る。
【0087】
FHA又はその誘導体は、喘息若しくはアトピー性疾患の治療に使用されるか、又はその予防のための療法若しくはワクチンの成分としても使用され得る。
【0088】
以上詳述した疾患の多くは満足した治療法を有さず、殆どの場合、ステロイド及び非ステロイド性抗炎症薬が使用される。しかしながら、これらの薬物は非特異的な薬物であり、副作用が発生する。比較的最近になって、キーとなる炎症性サイトカイン、特に腫瘍壊死因子(TNF)−αを抑制する薬物が開発された。これらの薬物は、特定の自己免疫疾患に有効な抗体、又は可溶性TNF受容体を含んでいるが、副作用(再発性結核を含む)を伴い、TNF−αが病状の重要な調節物質となっている疾患に限られる。別の治療的アプローチの一つは、抗炎症性サイトカイン(例えばIL−10)の直接投与であるが、これはインビボでのサイトカインの半減期が短いため十分である。代替的戦略としては、インビボで直接的な免疫抑制効果を有するIL−10のような抗炎症性サイトカインを誘導する薬剤を使用し得る。
【0089】
抗炎症性サイトカインを刺激し、先天性免疫システムに関与する細胞からのプロ炎症性サイトカインの産生を抑制し、サプレッサー、即ち制御性T細胞の誘導を促進する分子は、炎症性免疫応答、及びTh1に仲介される免疫応答を制限する可能性を有する。FHAは、先天性及び適応性のIL−10を刺激することにより免疫療法剤若しくは免疫調節剤、又は免疫介在性疾患を予防するワクチンのアジュバントとして作用する可能性を有する。
【0090】
クローン病の慢性腸炎症は、Tヘルパー1細胞(Th1)、並びにプロ炎症性サイトカイン、IFN−γ、TNF−α及びIL−12(9)の過剰産生と関連している。これら有害な炎症及び組織破壊的な免疫応答は、抗炎症応答の欠陥、又は共生細菌性抗原に対する耐性が失われた結果であり得るとの証拠が存在している。NOD−2、即ち細菌性ペプチドグリカンからのムラミルジペプチドに対する細胞内病原体認識受容体(PRR)に変異を有するクローン病患者においては、TLR−2リガンド及び腸内細菌に応答する抗炎症性サイトカイン、IL−10及びTGF−βの産生が相当減少され、かつTh1応答が増大されている(10、11)。その代わりに、Tr細胞の生成不全の結果として炎症応答に対抗する調節が失われることによって免疫介在性疾患が生じ得る(8)。Tr細胞を移入することによって、動物大腸炎モデルにおいて腸の炎症に対する防御が獲得されることが示されている(12)。従って、インビボで抗炎症性サイトカイン及びTr細胞を誘導させることを目標とした戦略は、クローン病に対する新たな治療法開発の上でかなり有望である。
【0091】
クローン病の治療には、TNF抗体又はTNF拮抗剤や、アザチオプリンを使用した免疫抑制療法が行われる。本発明者等が現在知るところによれば、これらの療法は、キーとなるプロ炎症性調節物質の直接的な抑制、又は活性化T細胞のアポトーシスの誘導によりその効果を生じるものであり、DC機能の調節によるものではない(13、14)。抗炎症性サイトカイン、IL−10の直接投与も検討されたが、IL−10はインビボでの半減期が短いため、臨床試験では中程度の治療的有用性が見られたのみである(15)。IL−10を発現するように遺伝子操作された細菌も、動物モデルにて大腸炎を減少させることが示されている(16)。本発明にて採用された代替的手法では、病原体由来の免疫調節分子により適切な宿主細胞を標的とすることによって、インビボで抗炎症性サイトカインの産生を刺激する。
【0092】
FHAは、先天性免疫細胞の機能を調節して抗炎症性サイトカインを産生させる能力を有し、これは続いてTr細胞の二次的な誘導を介して増幅され得る。本発明においては、FHAの注入により所属リンパ節及び遠位リンパ節、並びにパイエル板内でIL−10及びTGF−βが即時に(2〜6時間)誘導され、このことはFHAが組織DC又はマクロファージをリンパ節及び二次リンパ組織に移動するように調節して、抗炎症応答を開始させることを示唆している。T細胞が介在する大腸炎の予防にはIL−10及びTGF−βの両方が重要であり(12、17)、FHAで処理した重症複合性免疫不全症(SCID)マウスの脾臓内に検知されたIL−10産生T細胞の存在の原因となっていると思われる。PBS処理マウスと比較して、FHA処理マウスでは、大腸炎の減少、脾細胞IL−10の増加、及びそれに伴うプロ炎症性Th1型サイトカイン(IFN−γ及びTNF−α)の減少が見られた。興味深いことに、FHAはIL−10−/−及び野生型CD4+CD45RBhighT細胞を移入したSCIDマウスにおいても大腸炎に対する同程度の防御を誘導し、これは、このような防御がT細胞誘導IL−10により仲介されるものではないことを示唆している。Tr細胞はまた、TGF−β産生及び細胞間接触を介して免疫応答を抑制することができるため、このことはTr細胞のこの防御における役割を除外するものではない。
【0093】
脾臓T細胞によるIL−10産生の増大は、FHA刺激による免疫調節応答が局部組織に限定されずに、腸を含む遠位部位にも起こることを示している。
【0094】
FHAは、DC上のCD11b/CD18と結合して、IL−10産生Tr細胞を生成するように細胞の機能を調節する。Tr細胞は次に、そのIL−10産生能に依存せずに大腸炎の発症を抑制する。DCの免疫調節、及びその結果としてのTr細胞の単独、又は集合的な活性化は、大腸炎の予防において有用な戦略となり得る。FHAはクローン病の治療法としての相当の可能性を有する。
【0095】
本発明は、以下の実施例により更に明らかとなるであろう。
【実施例】
【0096】
<FHAの精製>
Bordet−Gengou寒天プレート上で百日咳菌(Bordetella pertussis)を3日間増殖させた。溶血性であるコロニーを用いてStainer−Scholte(SS)培地内で、ジメチル−βシクロデキストリン(CDX、Sigmaより購入)を補充して最終濃度を0.5g/lとし、液体前培養(30ml)を開始した(CDXは、細菌表面からのFHA放出を誘導する)。この前培養物を攪拌下で一夜、37°Cで増殖させ、大きい培地への播種に使用した(1Lフラスコ中、250mlのSS培地)。この培養物を攪拌下で36〜48時間、37°Cで増殖させた。プラトー相に到達した後(培養物の光学密度を測定して決定)、培地内の細胞を4°Cで20分間、7000rpmで遠心分離して、上清を回収した。
【0097】
PBSでpH7.4に平衡化したヘパリンセファロースカラム(Amersham)の基質を用いたFPLCを使用して、上清からFHAを精製した。サンプルを充填した後、カラムをPBSで洗浄して、0.5M NaClを加えたPBSを用いて室温で流速2ml/分にて溶出した。ピーク溶出を伴うフラクションがFHAを含有していた。混入しているLPSをエンドトキシン除去カラム(Detoxi−Gel(登録商標)エンドトキシン除去ゲル、Pierce、Rockford、IL、USA)上で除去した。このステップの後、色素産生性カブトガニアメーバ様溶菌液(LAL)アッセイ(BioWhittaker、Walkersville、MD、USA)では、標本中にエンドトキシンは検知されなかった。
【0098】
FHA標本中には、残留エンドトキシン又はリポ多糖(LPS)が存在する。しかしながら、このエンドトキシンの残留量は非常に小さい。混入エンドトキシンの濃度は、概してタンパク質1μgにつき300pg未満である。
【0099】
現在までに商業的に入手可能なFHA製剤、及び当該技術分野で検討されているFHA製剤は、これよりも相当高い濃度のエンドトキシンが混入している。本発明者等は、混入LPSを除去するために、以下のような更なるFHA精製ステップを行った。
【0100】
タンパク質製剤に、以下の透析ステップを行った。1)FHAタンパク質製剤を、新鮮な8M尿素製剤に対して1時間、次いで一夜透析する。2)FHAタンパク質製剤を、新鮮な4M尿素製剤に対して1時間、次いで一夜透析する。3)FHAタンパク質を、新鮮な1M尿素製剤に対して1時間、次いで一夜透析する。
【0101】
これら最初のステップの目的は、タンパク質を確実かつ完全に変性させることにある。これによりFHAの内部疎水性領域に結合したLPSが露出する。尿素の濃度は徐々に低下させる必要があり、さもなければ、タンパク質が修復不能な損傷を受け、リフォールディングが正確に行われなくなる。その後、残留したLPSを以下のように除去する。
【0102】
i)エンドトキシンを含まない、1%デオキシコール酸ナトリウムを含む水5mlでEtoxateカラム(Pierce)を洗浄する。
ii)エンドトキシンを含まない水5mlでカラムを洗浄する。
iii)タンパク質溶液を加える。
iv)1%デオキシコール酸ナトリウム5mlで再度カラムを洗浄して、1〜2mlのフラクションを収集する。
v)600nmにおける光学密度を調べて各フラクションのタンパク質濃度を測定することにより、最大タンパク質濃度を有するフラクションを決定する。
【0103】
デオキシコール酸ナトリウムは、Etoxateカラムに結合した全てのLPSを除去する。しかしながら、タンパク質に結合していないLPSの大部分は、密度の相違により、タンパク質に結合したLPSとは別のフラクション内に溶出される。
【0104】
本発明者等は、FHAによるIL−10産生の刺激が、トル様受容体−4(TLR−4)を介したLPSのシグナル伝達によって増大されるように思われることを説明してきた。FHA効果の増大に要求されるLPS量は、精製されたFHA標本中に存在し得るLPSの残留量よりも相当大きい。FHA標本中に存在する濃度(0.2ng/ml)のLPS単独によるDC処理では、DCはインビトロで活性化されなかった。図2は、FHAが単独で、C3H/HeN及びTLR−4欠損C3H/HeJマウス由来の腹膜マクロファージによるIL−10産生を刺激し、これはIL−10産生がLPSに依存するのではなく、LPSにより向上されるか、又はTLR−4を介したシグナル伝達に依存することを示したものである。LPSを追加すると、C3H/HeNマウス由来の腹膜マクロファージによるFHA誘導IL−10産生が向上したが、C3H/HeJマウス由来の腹腔マクロファージによるFHA誘導IL−10には殆ど影響がなかった。FHAはまた、C3H/HeNマウス由来の樹状細胞によるIL−10の産生を低いレベルで刺激したが、TLR−4欠損C3H/HeJマウスでは刺激が見られなかった。C3H/HeNマウス由来の樹状細胞からのFHA誘導によるIL−10の産生は、LPSの追加によって向上した。
【0105】
図3は、濃度5μg/mlのFHAが、樹状細胞からのLPS誘導によるIL−10産生を向上させることを示したものである。C3H/HeJマウスのTLR−4シグナル伝達の非存在下で、FHAはDCからのIL−10産生を刺激しないが、濃度1〜5μg/mlではLPS誘導IL−10産生を向上させる。これらの結果から、免疫調節剤としてのFHAの効果は、薬剤的に許容されるTLRリガンドとの同時注入により向上し得ることが示唆される。
【0106】
FHAは、ヒト単球からのIL−10の産生を誘導し、LPS及びIFN−γ誘導によるIL−12産生を抑制する(図1)。また、FHAの注入はインビボでIL−10の産生を刺激し、IL−12の産生を抑制する(図5)。
【0107】
FHAを長期間保存しても、その活性に影響がないものと思われた。FHAは、マウスのマクロファージによるIL−10の産生を刺激し、LPS及びIFN−γ産生を抑制し、この効果はFHAを凍結乾燥して長期間保存した後でも維持されることが見出された(図4)。
【0108】
図6は、マウスにFHAを皮下注射すると、注射から1〜2時間以内にリンパ節内における抗炎症性サイトカイン、IL−10及びTGF−βの産生が向上し、この効果は投与6時間後においても持続して向上していることを示したものである。
【0109】
FHAの皮下注射から1時間以内にTGF−βが転写レベルで誘導され、この効果は少なくとも6時間継続した(図7)。
【0110】
<マウスの多発性硬化症モデル>
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、マウスにおける多発性硬化症のモデルである。1mg結核菌(Mycobacteria tuberculosis)を加えたフロイント完全アジュバント中に乳化された150μgMOGペプチドの皮下投与、及び500ng百日咳毒素の腹腔内注射、続く2日後の再度の500ng百日咳毒の腹腔内注射により、C57BL/6マウスにEAEを誘導した。マウスは、麻痺の症状を発症した。自己免疫疾患に対するワクチンのアジュバントとしてのFHAの効果を評価する実験において、リン酸緩衝生理食塩水中の50μgMOGペプチド(残基35〜55)及び5.0μgFHAの皮下投与によってマウスを免疫した。これを21日後に再度行った。コントロールマウスは、MOGペプチド又は生理食塩水のみを投与した。2度目の免疫から7日後。マウスのEAE臨床徴候を毎日評価し、以下のように評点した。1=尾部麻痺、2=歩行不安定、3=後脚弱化、4=後脚麻痺、5=後肢及び前肢の完全麻痺、6=死。
【0111】
表1に、疾病スコア及び疾病指標を示す。この結果は、アジュバントとしてのFHAの投与が、疾病の進行を有意に抑制することを示す。
【0112】
【表1】
【0113】
発症率は、試験マウス数に対するEAE臨床徴候のいずれかを発症したマウス数を示す。疾病指標は、毎日の平均疾病スコアを全部加算して、発症日の平均で割り、100を掛けて計算した。
【0114】
図9に、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)における、ミエリンオリゴデンドロサイト(MOG)ペプチド及びFHAの疾病の進行に対する免疫効果(平均疾病指標)を示す。図10に、EAEモデルにおける、ある期間に亘る平均疾病スコアを示す。組織学的所見により、MOG及びFHAの免疫効果が明らかに示されている(図11)。
【0115】
MOG+FHAで免疫されたマウスにおいて、自発的なMOG特異的かつPMA及び抗CD3誘導IL−10が増加した。対称的に、MOG+FHAで免疫されたマウスにおいてMOG特異的IFN−γ産生は有意に減少した。図12は、EAE誘導前のMOG及びFHAによる予防的処理が、MOG特異的IFN−γ産生を抑制することを示している。
【0116】
免疫調節剤としてのFHAを用いた予防的免疫療法は、自己抗原との共免疫に依存する。FHA及びMOGによる免疫がEAEの発症を防止するのに対し、コントロール抗原(KLH)及びFHAによる免疫はEAEの発症を防止しない。このことは、FHAを用いた予防的免疫療法(即ち、EAE誘導前の投与)が、自己抗原(本実施例ではMOGペプチド)との共投与に依存することを示す(図13)。
【0117】
本発明者等は、MOG及びFHAで免疫したマウス由来のCD4+T細胞は、それがレシピエントマウス内に移入された後、EAEに対する防御を提供することを見出した(図14)。MOG及びFHAで免疫したマウス由来のCD4+T細胞をEAE誘導から7日後に移入すると、EAEの発症が防止された。対称的に、MOG単独又はMOG及びCpGで免疫したマウス由来のCD4+T細胞は、EAEに対する防御を提供しなかった。このことは、MOG及びFHAによる免疫によりMOG特異的Tr細胞の集団が誘導され、これがEAE発症に繋がる免疫応答を抑制することを示している。
【0118】
本発明者等は、FHAの単独投与による治療がEAEの臨床徴候を減少させることを見出した(図15)。疾病指標及び疾病スコアは、図9及び図10に説明したように計算した。EAE発症後のFHAの単独投与は、疾病の重症度を低下させた。
【0119】
FHA及びタイプIIIコラーゲンによる免疫は、マウスのコラーゲン誘導関節炎の発症を抑制することを見出した(図16)。コラーゲン及びFHAで免疫したマウスの疾病の重症度は、KLH及びFHAで免疫したマウスと比較して低下した。
【0120】
<マウスのヒト大腸炎モデル>
図17に、マウス大腸炎モデルの腸炎症の発症に対するFHAの皮下投与を示す。重症複合性免疫不全症(SCID)マウスにCD45RBhiナイーブT細胞を注入した。これにより、注入から6〜8週間後に慢性の大腸炎症が発症した。FHAによる皮下治療は、大腸の炎症及び体重低下を防止した(図17A)。FHA処理されたマウスは、未処理のCD45RBhi移入コントロールマウスと比較して、腸炎症の顕著な減少、大腸重量の低下、及び大腸縮小の減少が見られた(図17B及び図17C)。
【0121】
組織学的所見は、腸壁の全層内に単核細胞の流入、肥厚、及び腸管上皮細胞の分化の低下により特徴付けられた(図18及び図19)。
【0122】
6匹のSCIDマウスのグループにCD45RBhiナイーブT細胞を単独で、若しくはCD45RBlowT細胞と共に静脈注射するか、又はCD45RBhiナイーブT細胞を注射すると共にFHAを皮下投与した(10μg/マウス、2週間ごと)。体重を記録して、8〜12週間後、マウスを犠牲死させた。大腸の重量を記録して、大腸のヘマトキシリン及びエオシンで染色した部分上で組織学的検査を行った(図20A及び図20B)。FHAによる処理は、正常な野生型及びIL−10欠損マウス由来のナイーブT細胞を受容したSCIDマウスの体重低下を防止し、大腸炎症を有意に減少させた。これはFHAの防御的効果が、T細胞誘導IL−10に依存することを示す。
【0123】
野生型CD4+CD45RBhighT細胞を注射してPBS、FHA又はCD4+CD45RBlowT細胞で処理した、又はIL−10−/−マウス由来のCD4+CD45RBhighT細胞を注射してFHAで処理したSCIDマウスに大腸炎を誘導してから8週間後に、脾細胞を除去した。脾臓標本から未分離脾細胞及びCD4+T細胞を選別し、抗CD3及び抗C28で2度刺激して、2度目の刺激から2日後、上清中のサイトカイン濃度を測定した(図21及び図22)。野生型CD4+CD45RBhighを注射してFHAで処理したマウスからの脾細胞塊は、PBS処理したマウス又はCD4+CD45RBlowT細胞を同時注入したマウスと比較して有意に多いIL−10を産生した(244±30pg/ml対43±7pg/ml及び48±10pg/ml)(図21)。更に、IL−10の産生は、FHA処理マウスのCD4+T細胞と比較して脾細胞塊内で有意に高かった(244±30pg/ml対121±31pg/ml)。
【0124】
予想通り、IL−10−/−のCD45RBhighT細胞を注射したSCIDマウスからの脾細胞塊及びCD4+T細胞を抗CD3及び抗CD28で刺激しても、IL−10は全く検出されなかった(検出限界20pg/ml)。
【0125】
PBS処理マウスから回収した脾細胞内に、比較的高濃度のプロ炎症性Th1型サイトカイン、IFN−γ(図22A)、及びTNF−α(図22B)が検出され、これらのマウスは重症の大腸炎に罹患していた。対称的に、野生型、又はIL−10−/−マウス由来のT細胞を注入したFHA処理SCIDマウスからの脾細胞は、PBS処理SCIDマウスからの脾細胞と比較して、有意に低い濃度のTh1サイトカイン、TNF−α及びIFN−γ、並びにTh2サイトカインIL−4及びIL−5(図22C及び図22D)を産生していた。この発見により、実験的大腸炎が、脾臓内に検出され得るTh1型サイトカイン産生の向上と関連し、FHAによる処理がプロ炎症性サイトカインを抑制し得る一方で、IL−10を増大させることが証明された。
【0126】
<薬物製剤の用量及び投与方法>
本発明は、選択された抗原に対する哺乳動物内の免疫応答の調節方法を含む。本方法は、哺乳動物にFHA若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、若しくはそれらの物質で活性化された細胞から産生される物質を含む治療量の薬剤を投与すること、又はFHA若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド及び抗原、若しくはFHA及び薬剤的に許容されるトル様受容体(TLR)リガンドを含む治療量の薬剤を投与することを含む。
【0127】
投与のための組成物は、溶液又は懸濁液のいずれかの形態である注射剤として調製され、また注射の前に液体の懸濁液又は溶液にされるのに適した固形物としても調製され得る。また製剤は乳剤にされてもよく、又は組成物をリポソーム内に封入してもよい。活性免疫原性成分は、多くの場合、薬剤的に許容され、かつ活性成分と適合可能な担体と共に混合される。「薬剤的に許容される担体」という用語は、投与される対象者にアレルギー反応又は他の望ましくない効果を惹起しない担体を指す。薬剤的に許容される適切な担体は、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール又は同様物、及びそれらの組合せのうちの一つ又はそれ以上を含む。加えて、所望であれば免疫調節剤/製剤は、例えば湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又は製剤/免疫調節剤の有効性を高めるアジュバントのような少量の補助物質を含有してもよい。
【0128】
本発明の組成物は、例えば皮下、経皮、又は筋肉内のいずれかの注射により非経口的に投与され得る。他の投与形態に適した更なる製剤には坐薬が含まれ、場合により、経口用製剤、鼻腔内製剤、又はエアロゾルとして分散されるのに適した製剤が含まれる。坐薬用には、従来の結合剤及び担体は、例えばポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを含み得る。このような坐薬は0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲内の活性成分を含有する混合物から形成することができる。経口用製剤は、例えば医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム及び同様物のような通常使用されている賦形剤を含有している。この組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤又は散剤の形態を有し、かつ10%〜95%、好ましくは25〜70%の活性成分を含有する。
【0129】
本発明の組成物は、中性若しくは塩の形態で免疫調節剤組成物に調製されてもよい。薬剤的に許容される塩は、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と共に形成される)を含み、これらは例えば塩酸若しくはリン酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸及び同様物のような有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化鉄(III)のような無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン及び同様物のような有機塩基から誘導することもできる。
【0130】
組成物は、投与形態と適合可能な形態で、かつ予防的及び/又は治療的に有効となる量で投与され得る。投与されるべき量は、治療される対象者に依存し、それには例えば対象者の免疫システムの抗炎症性サイトカインの合成能、又は制御性T細胞の誘導能、及び所望される防御の程度が含まれる。適切な用量の範囲は、1回のワクチン接種につき活性成分が数百μgのオーダーにあり、好ましい範囲が約0.1μg/g〜1000μg/g、例えば約0.1μg〜100mgの範囲内にある。初回投与及び追加投与のための適切な処方計画もまた様々であるが、初回投与、及びそれに続く接種又は別様の投与により類型化される。投与に要求される活性成分の正確な量は、医師の判断に依存し、おそらく各対象者に特有のものであろう。
【0131】
FHA組成物の治療的有効量は、とりわけ投与計画、投与される抗原の単位用量、FHAが他の治療薬と組合せて投与されるか否か、レシピエントの免疫状態及び健康、並びに特定のFHA/抗原複合体の治療的活性に依存することが、当業者には明らかであろう。
【0132】
組成物は、単一の投与計画、又は好ましくは複数の投与計画に基づいて投与され得る。複数の投与計画は、最初の投与過程が1〜10回の個別投与を含んでもよく、続いて免疫応答上の効果を維持又は強化するために必要な間隔を置いて他の投与が行われ、例えば1〜4ヶ月目に2度目の投与が行われ、必要であれば、数ヶ月後に次の投与が行われる投与計画である。所望の防御レベルを維持するためには、1〜5年、通常3年の間隔を置いた周期的投与が望ましい。
【0133】
一連のワクチン接種は、例えば3ヶ月、4ヶ月、又は6ヶ月の間隔を置いて実施されてもよい。このような一連の接種は、合計で、例えば3、4又は5回のワクチン接種を含み得る。乳児に実施されるワクチン接種では、一連の接種は、例えば生誕時、又は生誕から1週間以内、及びその後6、10及び14週齢に実施され得る。一連の接種は、生誕時、並びに1、3及び6ヶ月齢に実施されてもよい。
【0134】
治療的使用のために、組成物は、1週間に数回、例えば1週間に2回、毎週、1ヶ月に数回、数週間、数ヶ月、1年又は数年間の間に毎月投与され得る。治療的使用のための組成物は、活性成分のみ、又は活性成分と自己抗原との組合せを含み得る。この治療は、同時の(同一又は別個の製剤中で)又は時間間隔を置いた他の薬物の投与を含んでもよい。
【0135】
治療的に有効な用量は、投与経路及び剤形に応じて変動し得る。疾病状態、年齢、体重、通常の健康状態、性別、対象者の日常の飲食物、投与間隔、投与経路、排泄率及び薬物の組合せに応じて、特定の用量が調製され得る。有効量を含有する剤形のいずれもが日常的な実験の範囲内にある。本発明者の組成物は、自己免疫疾患の治療に使用されている薬物を含む他の薬物と共に投与されてもよい。組成物は、自己免疫疾患の他の治療に使用されている投与計画と同様の投与計画を用いて、単独で投与されてもよい。用語「治療」は、疾患若しくは疾病に関連した症状の緩和、症状の更なる進行若しくは悪化の停止、又は疾病若しくは疾患の予防を含むことを意図する。
【0136】
治療過程は、インビトロでの例えばLPSによる刺激を伴う、又は伴わない免疫システム細胞によるエクスビボでのサイトカイン産生を試験することによって追跡され得る。アッセイは、抗体及び同様物を用いて、細胞の培養及びサイトカインの定量のための従来の試薬を用いて実施することができる。これらの手法は、当業者に通常知られている。
【0137】
本発明は、詳細部が変動し得る前述の実施態様に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】FHAがヒト単球からのIL−10の産生を刺激し、IL−12の産生を抑制することを示すグラフである。CD14+単球は、正常なドナー由来のヒト末梢血単核細胞から、MACSマイクロビーズと自動MACSソーティング装置とを用いたポジティブセレクションにより精製した。単球(1×106/ml)を培養液のみ、FHA(5μg/ml)、LPS(1μg/ml)及びIFN−γ(20ng/ml)、又はFHA、LPS及びIFN−γで刺激した。24時間後に上清を回収し、IL−10及びIL−12p70の濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図2】FHAがマウスのマクロファージ(A)及び樹状細胞(B)からのIL−10の産生を刺激し、かつこの効果がトル様受容体−4(TLR−4)を介したLPSのシグナル伝達により増大されることを示すグラフである。正常C3H/HeN及びTLR−4欠損C3H/HeJマウスの腹腔から腹腔洗浄によりマクロファージを回収した。未熟骨髄由来の樹状細胞を、正常C3H/HeN及びTLR−4欠損C3H/HeJマウスの大腿骨及び脛骨から得た骨髄から生成させ、これをGM−CSF含有上清で7日間培養した。腹腔マクロファージ又は樹状細胞(1×106/ml)を培養液のみ、FHA(5μg/ml)、LPS(1000ng/ml)、又はFHA(5μg/ml)及びLPS(10〜1000ng/ml)で刺激した。24時間後に上清を回収して、IL−10濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図3】FHAの濃度を上昇させたときのLPS誘導IL−10産生に対する効果を示すグラフである。未熟骨髄由来の樹状細胞を、正常C3H/HeN及びTLR−4欠損C3H/HeJマウスの大腿骨から得た骨髄から生成させ、これをGM−CSF含有上清で7日間培養した。樹状細胞(1×106/ml)を培養液のみ、LPS(1μg/ml)単独で又はFHA(10〜5000ng/ml)と共に刺激した。24時間後に上清を回収して、IL−10濃度をサンドイッチELISA法により決定した
【図4】長期間保存した後の凍結乾燥製剤の免疫調節活性を示すグラフである。正常BALB/cマウスの腹腔からマクロファージを回収した。5年間凍結乾燥されていたFHA製剤を、マクロファージ(1×106)に加えるに先立ちPBS内で融解した。細胞をFHA(5μg/ml)、LPS(1μg/ml)及びIFN−γ(20ng/ml)、又はFHA(5μg/ml)存在下のLPS(1μg/ml)及びIFN−γ(20ng/ml)で刺激した。24時間後に上清を回収して、IL−10及びIL−12p40濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図5】FHAを注射したマウス由来の脾細胞によるIL−10産生の増大、及びIL−12産生の抑制を示すグラフである。正常BALB/cマウスにFHA(10μg/マウス)又はPBSを皮下注射し、24時間後脾臓を取り出し、脾細胞をLPS(0.001〜1.0μg/ml)又は培養液のみで刺激した。24時間後に上清を回収して、IL−10及びIL−12p40濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図6】FHAがインビボで抗炎症性サイトカイン、IL−10及びTGF−βの産生を誘導することを示すグラフである。正常BALB/cマウスにFHA(10μg/マウス)又はPBSを皮下注射し、2又は6時間後、鼠経リンパ節、腸間膜リンパ節、パイエル板、及び血清を回収した。血清(A)中のIL−10タンパク質濃度を測定した。ホモジナイズしたリンパ組織中のIL−10(B)及びTGF−α(C)タンパク質を、サンドイッチELISA法により決定した。PBS処理マウスと比較して統計的に有意な差異が見られる。*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。
【図7】FHAがインビボでTGF−βのmRNAの発現を誘導することを示すPCR結果である。BALB/cマウスにFHA(10μg/マウス)又はPBSを皮下注射し、1又は6時間後、鼠経リンパ節を取り出した。リンパ節をホモジナイズして全RNAを抽出し、RT−PCRによりTGF−βのmRNA発現を測定した。
【図8】FHAの外来抗原との共投与が、共投与された抗原に特異的な制御性T細胞を刺激することを示すグラフである。BALB/cマウスをオブアルブミン(OVA)ペプチド(323〜339)(50μg/マウス)及びFHA(5μg/マウス)で(0及び20日目に)鼻腔内免疫した。最終免疫から7日後に脾臓を取り出し、インビトロでOVAペプチドと共に再培養した。これら培養物からOVAに特異的なT細胞系を樹立した後、限界希釈法でクローン化した。T細胞系/クローンをOVAペプチド及び抗原提示細胞(照射した同系の脾細胞)で刺激した。2日後に上清を回収し、IL−4、IL−5、IL−10及びTNF−α濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図9】実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、即ちマウスの多発性硬化症モデルにおける疾病の進行に対するミエリンオリゴデンドロサイト(MOG)ペプチド及びFHAによる免疫の効果(平均疾病指標)を示すグラフである。マウスを、リン酸緩衝生理食塩水中の50μgMOGペプチド(残基35〜55)及び5.0μgFHAで皮下免疫した。これを21日後に再度行った。コントロールマウスは、MOGペプチド又は生理食塩水のみを投与した。2度目の免疫から7日後、5mg/ml結核菌を加えた、フロイント完全アジュバント中に乳化した150μgMOGペプチドの皮下投与、及び500ng百日咳毒素の腹腔内注射、続く2日後の500ng百日咳毒素の2度目の腹腔内注射によりEAEを誘導した。マウスをEAEの臨床徴候について毎日評価し、以下のように評点した。1=尾部麻痺、2=歩行不安定、3=後脚弱化、4=後脚麻痺、5=後肢及び前肢の完全麻痺、6=死。疾病指標は、毎日の平均疾病スコアを全て加算し、発症日の平均で割り、100を掛けて計算した。
【図10】実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)における、ある時間に亘るFHA及びMOGペプチドの免疫効果を平均疾病スコアにより示すグラフである。
【図11】EAE誘導後の(未処理)、又はミエリンオリゴデンドロサイトペプチド(MOG)若しくはMOGペプチド+FHA(MOG+FHA)で免疫後の、マウス脊髄の組織病理学用切片を示す顕微鏡写真である。EAEが誘導され、マウスは図8に説明したように免疫された。EAE誘導から23日後、マウスの脊髄部分を取り出し、ヘマトキシリン(harmatoylin)及びエオシンで染色した。未処理マウス及びMOG免疫マウスに誘導されたEAEは、単核細胞の浸潤が顕著であり、MOG及びFHAによる免疫は単核細胞の浸潤、脳炎、血管周辺への細胞湿潤及び脱ミエリン化を防止した。未処理EAEでは、表面の脳内白質線維及び軟膜にて、ミエリン空胞化、軸索退縮及びリンパ球及びマクロファージ浸潤が見られる。MOG免疫したマウスでは、病変は未処理EAEと同様である。FHA+MOG免疫マウスでは、脳内白質線維は正常に見え、少数の白血球が軟膜に制限されている。
【図12】EAE誘導前のMOG及びFHAによる予防的処理が、MOG特異的IFN−γ産生を抑制することを示すグラフである。C57BL/6マウスを0及び21日目に、PBSのみで、又はMOG(50μg)及びFHA(5μg)で皮下免疫した。7日後、1mg結核菌を加えた、フロイント完全アジュバント中の150μgMOG35〜55ペプチドの皮下投与、及び500ng百日咳毒素の腹腔内注射、続く2日後の500ng百日咳毒素の2度目の腹腔内注射によりEAEを誘導した。EAE誘導から23日後、脾細胞を回収してインビトロでMOGペプチド35〜55(10又は25μg/ml)、抗CD3及びPMA、又は培養液のみで再刺激した。培養3日後、上清を回収し、IFN−γ(図12B)及びIL−10(図12A)濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図13】アジュバントとしてのFHAによる予防的免疫療法が、自己抗原との共免疫に依存することを示すグラフである。(A)は疾病指標、(B)は平均疾病スコアを表す。C57BL/6マウスを0及び21日目に、PBS、MOG(50μg)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(外来抗原モデル)、(50μg)及びFHA(5μg)、又はMOG(50μg)及びFHA(5μg)で皮下免疫した。7日後、EAEをフロイント完全アジュバント(CFA)中の150μgMOG35〜55で皮下投与により、500ng百日咳毒素(PT)で腹腔内投与により誘導した。PT(500ng)は2日後にも腹腔内投与された。疾病指標及び平均疾病スコアを、図9に示したように計算した(1グループにつきn=6)。
【図14】MOG及びFHAで免疫されたマウス由来のCD4+T細胞が、レシピエントマウス内に移植後、EAEに対する防御を提供することを示すグラフである。ドナーマウスは0及び21日目に、MOG(50μg)、MOG(50μg)及びFHA(5μg)、又はMOG(50μg)及びCpG(25μg)のいずれかの2回の皮下注射を受けた。2度目の免疫から7日後、脾細胞を回収して精製し、R&D Systems製のCD4+T細胞精製カラムを使用して、CD4+T細胞を精製した。レシピエントマウスは、EAE誘導から7日後、MOG、MOG及びFHA、又はMOG及びCpGで免疫されたマウスから0.9×106CD4+T細胞を静脈内に受容した。コントロールマウスは細胞を受容しなかった。EAEが誘導され、発症日に疾病スコア(図15B)及び疾病指標(図14A)を、図9(1グループにつきn=8)に説明したように計算した。
【図15】FHAの単独投与による治療で、EAEの臨床徴候が減少したことを示すグラフである。フロイント完全アジュバント(CFA)中の150μgMOG35〜55を皮下免疫し、500ng百日咳毒素(PT)を腹腔内投与したC57BL/6マウスの疾病指標を示す。2日目に再度、百日咳毒素(PT)を腹腔内投与した。9日目に、マウスに5μgFHAを1回皮下注射した。疾病指標(図16A)及び疾病スコア(図16B)は、図9に説明したように計算した。
【図16】FHA及びタイプIIコラーゲンによる免疫で、マウスのコラーゲン誘導関節炎の発症が抑制されることを示すグラフである。雄DBA/1マウスを0及び21日目に、タイプIIコラーゲン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びFHA、又はコラーゲン及びFHAのいずれかで免疫した。7日後、フロイント完全アジュバント(CFA)中のタイプIIコラーゲンの皮内注射により関節炎を誘導した。21日後、マウスをPBS中のコラーゲンの静脈内注射で追加免疫した。疾病の過程を40日間監視した。以下のスコアに従って、マウスを毎日評点した。0−正常、1−紅斑、2−紅斑及び膨潤、3−機能損失。各マウスの4つの足全てのスコアを加算しグループの平均を計算して(1グループにつきn=6)、関節の指標を算出した。
【図17】マウス大腸炎モデルにおける腸の炎症の発生に対するFHAの皮下投与の効果を示すグラフである。SCIDマウスの3グループに、1×105個のCD4+CD45RBhighT細胞を腹腔内注射した。マウスの1グループは2週間毎にPBSが皮下注射され、マウスの他の1グループは2週間毎に10μgFHAが皮下注射され、マウスの第3グループは0日目に4×105個のCD4+CD45RBlowT細胞が腹腔内注射された(図17A)。体重を1週間に2度記録した。FHAによる処理、又はCD4+CD45RBlowT細胞の注射により、CD4+CD45RBhighT細胞の注射により誘導された消耗性疾患が有意に減少した(各々、単一因子ANOVA、CI95%を用いたときP<0.01及びP<0.0001)(図17B)。実験の終わりに(56日目)、大腸の重量及び長さを計測した。**は、PBS処理マウスと比較して統計的に有意な差を示す(P<0.01)。CD45RBhi細胞の投与はSCIDマウスにおいて体重低下を伴う重篤な腸炎症の発生と関連していた。CD45RBlow細胞の移入は、炎症及び体重低下を防いだ。FHAによる皮下治療は、炎症及び体重低下を防いだ。FHA処理マウスでは、未処理のコントロールCD45RBhi移入マウスと比較して腸炎症が顕著な減少し、大腸重量及び大腸収縮が有意に(P<0.01)低下した。
【図18】FHAが大腸の炎症を防ぐことができるという組織学的証拠を示す顕微鏡写真である。大腸炎を誘導させ、マウスを図17に説明したように処理した。56日目に大腸を切除し、切片を作成し、マウントしてH&Eで染色した。A)1×105個のCD45RBhighT細胞を腹腔内注射し、0日目から2週間毎にPBSを注射したSCIDマウス。B)1×105個のCD45RBhigh及び4×105個のCD45RBlowT細胞を0日目に皮内注射したSCIDマウス。C)1×105個のCD45RBhighナイーブT細胞を腹腔内注射し、2週間毎にFHAを皮下注射したSCIDマウス。
【図19】FHAが実験的大腸炎モデルにて大腸の炎症を有意に減少させたことを示すグラフである。大腸炎を誘発させ、マウスを図18に説明したように処理した。大腸を異なる炎症特徴について0〜4のスケールで評点した。PBS処理マウスと比較して、統計的に有意な差異が見られる。*P<0.05及び**P<0.01。
【図20】マウスのT細胞介在性大腸炎の誘導に対するFHAの保護効果における、T細胞誘導IL−10の役割を示すグラフである。以下のように、4つの実験グループを用いた。グループ1:1×105個のCD45RBhighT細胞を注射したSCIDマウス、未処理グループ2:1×105個のCD45RBhigh及び4×105個のCD45RBlowT細胞を注射したSCIDマウスグループ3:1×105個のCD45RBhighT細胞を注射し、2週間毎に10μgFHAで皮下処理したSCIDマウスグループ4:1×105個のIL−10欠損CD45RBhighT細胞を注射し、2週間毎に10μgFHAで皮下処理したSCIDマウス (A)体重を1週間に2度記録した。(B)実験の終わりに(56日目)、大腸を切除して組織学的検査のために準備し、異なる炎症特徴について0〜4のスケールで評点した。PBS処理マウスと比較して、統計的に有意な差異が見られる。*P<0.05及び***P<0.001。
【図21】CD4+CD45RBhigh細胞を注射し、かつFHA処理したSCIDマウスの脾細胞によるIL−10産生の増大を示すグラフである。図20に説明したように、マウスの4つの実験グループを用いた。処理から8週間後、マウスの4グループから脾細胞を回収した。FACS法を使用して脾細胞塊からCD4+T細胞を精製した。未分離の脾細胞、又は精製したCD4+T細胞を、抗CD3及び抗CD28で刺激した。2度目の刺激から2日後、回収した上清中のIL−10濃度を測定した。結果は3つの培養物についての平均+/−SDである。この結果では、FHA処理マウスからの脾臓T細胞(p<0.05)及び精製CD4+T細胞によるIL−10産生の有意な増大が見られる(統計的に有意ではない)。
【図22】CD4+CD45RBhigh細胞を注射したFHA処理マウスの脾細胞による、プロ炎症性サイトカイン産生の低下を示すグラフである。CD4+CD45RBhigh細胞の注射、及び図20にて説明した処理を行った8週間後、SCIDマウスから脾細胞を回収した。脾細胞を抗CD3及び抗CD28で刺激した。2度目の刺激から2日後、回収した上清中のIFN−γ(A)、TNF−γ(B)、IL−4(C)及びIL−5(D)濃度を測定した。この結果では、脾臓T細胞によるIFN−γ及びIL−5産生の有意な抑制(p<0.05)が見られる。結果は3つの培養物についての平均+/−SDである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
先天性免疫システムに関与する細胞、特に樹状細胞(DC)は、ナイーブCD4+T細胞が機能的に独立したTh1、Th2、又は制御性T細胞(Tr)のサブタイプへ分化することを誘導する。保存された微生物の分子がトル様受容体(TLR)及びインテグリンのような病原体認識受容体(PRR)に結合することによる未熟DCの活性化は、成熟とリンパ節への定着と共に起こり、成熟したDCはリンパ節内でナイーブT細胞に抗原を提示する。病原体由来の分子によるDCの活性化は、ナイーブCD4+T細胞が別々のT細胞サブタイプへ分化することの調節に重要な役割を果たす(1、2)。Th1細胞は、細胞内感染に対する防御を提供するが、同時に炎症応答、及び自己免疫疾患にも関係する。これに対してTh2細胞は、アレルギー応答に関係している。Tr細胞はTh1及びTh2応答を抑制する能力を有している。
【0003】
百日咳菌(Bordetella pertussis)は、経過の長い重篤な疾患を起こし、度々二次感染及び肺炎を併発し、幼児では死に至る場合もある。この感染症からの回復は、百日咳菌に特異的なTh1細胞の発達と関連しており、このTh1細胞が細菌の呼吸器からの駆逐に重要な役割を果たす。しかしながら、肺及び局所リンパ節内での抗原特異的なTh1応答は、感染症の急性期では高度に抑制されている。百日咳菌は、進化の過程で、防御免疫応答から逃れる多数の手段を獲得してきた。
【0004】
百日咳菌由来の病原性因子である繊維状血球凝集素(FHA)は、LPSによるマクロファージのIL−12産生を抑制し、マウスの敗血症ショックモデルにおいてIL−12及びIFN−γ産生を抑制し(3)、また互いに関連のない病原因子であるインフルエンザウイルスを同時に気道に感染させた際に起こるTh1応答を抑制する能力を有している(4)。FHAは、基本的にはアドヘシンとして作用し、白血球応答性インテグリン(leukocyte response integrin)及びインテグリン関連タンパク質(CD47)複合体への結合を介して百日咳菌のβ2−インテグリン(CR3、CD11b/CD18、αMβ2)への結合を仲介すると考えられている(5)。FHAはまた、先天性免疫システムの細胞と相互作用することにより、百日咳菌の急性感染期において、制御活性を有するT細胞を誘導させてTh1応答を抑制することにも寄与し得る。FHAは、DCと直接的に相互作用してIL−10を誘導させ、LPS誘導IL−12及び炎症性ケモカインの産生を抑制する(6)。FHAとの相互作用後に生じたDCは、ナイーブT細胞からのTr1細胞の分化を選択的に刺激する。急性感染したマウスの肺からは、百日咳菌由来のFHA及びパータクチン(PRN)に特異的なTr1クローンが発生した。これらのTr1細胞はIL−10を高いレベルで産生し、インビトロ及びインビボで百日咳に対する防御的なTh1応答を抑制した(6)。これらの発見は、防御免疫を回避するために呼吸器の病原因子によって利用されるTr1細胞の新たな機能を提示するものであり、これらの制御性細胞がDCにより誘導され、病原因子由来の分子と相互作用した後にIL−10産生が活性化され、IL−12が抑制されるという証拠を提供するものである。
【0005】
多発性硬化症(MS)は、中枢神経系を冒す自己免疫疾患である。この疾患に罹患している人は、自己反応性のT細胞(自己抗原を認識するT細胞)を有し、これがインターロイキン(IL)−1β及び腫瘍壊死因子(TNF)αと共に神経繊維のミエリン鞘に沿った炎症性病変の形成に関与する。MS患者の脳脊髄液(CSF)は活性化T細胞を含み、これが脳組織に浸潤してミエリンを破壊するという特徴的な炎症性病変を起こす。実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、MSの動物モデルである。EAEは、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)若しくはミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)又はそれらのペプチドを、フロイント完全アジュバントと共に注入することによってマウス又はラット内で誘導される。この疾患はまた、IFN−γを分泌するT細胞(Th1細胞と称される)の中でMBP又はMOGに特異的なものを移入することによっても誘導され得る。動物の中枢神経系のミエリン鞘に細胞浸潤が起こり、その結果、脱髄が起こってついには麻痺を発症する。その臨床徴候及び病理学的変化は、MSと類似する。
【0006】
クローン病及び潰瘍性大腸炎は、ヒトの腸の炎症性疾患である。これら自己免疫疾患は、CD4+T細胞に仲介される腸の炎症状態である。制御性T細胞(Tr細胞)は正常な人においては自己免疫疾患の発症を防止している。CD45RBhigh(ナイーブ)T細胞を注入することで重症複合性免疫不全症(SCID)マウスに大腸炎が発生し得るが、これはCD45RBlow又はCD4+CD25+制御性T細胞の同時注入により防ぐことができる(7)。また、CD45RBlow又はCD4+CD25+制御性T細胞を除去すると、そのような処置を施さなければ正常であったマウス又はラットに種々の自己免疫疾患が自然に発症する(8)。
【非特許文献1】McGuirk、P.、及びK.H.G.Mills. 2002. Pathogen−specific regulatory T cells provoke a shift in the Th1/Th2 paradigm in immunity to infectious diseases. Trends. Immunol. 23:450−455。
【非特許文献2】Lavelle、E.、E.McNeela、M.E.Armstrong、O.Leavy、S.C.Higgins、及びK.H.G.Mills. 2003. Cholera toxin promotes the induction of regulatory T cells as well as Th2 cells specific for bystander antigens by modulating dendritic activation. J. Immunol. 171:2384−2392。
【非特許文献3】McGuirk、P.、C.McCann、及びK.H.G.Mills. 2002. Pathogen−specific T regulatory 1 cells induced in the respiratory tract by a bacterial molecule that stimulates interleukin 10 production by dendritic cells: a novel strategy for evasion of protective T helper type 1 responses by Bordetella pertussis. J. Exp. Med. 195:221−231。
【非特許文献4】McGuirk、P.及びK.H.G.Mills. 2000. Direct anti−inflammatory effect of a bacterial virulence factor: IL−10−dependent suppression of IL−12 production by filamentous hemagglutinin from Bordetella pertussis. Eur. J. Immunol. 30:415−422。
【非特許文献5】McGuirk、P.、P.A.Johnson、E.J.Ryan、及びK.H.G.Mills. 2000. Filamentous hemagglutinin and pertussis toxin from Bordetella pertussis modulate immune responses to unrelated antigens. J. Infect. Dis. 182、 1286−1289。
【非特許文献6】Ishibashi、Y.、S.Claus、及びD.A.Relman. 1994. Bordetella pertussis filamentous hemagglutinin interacts with a leukocyte signal transduction complex and stimulates bacterial adherence to monocyte CR3 (CD11b/CD18). J. Exp. Med. 180:1225−1233。
【非特許文献7】Asseman、C.、Mauze、S.、Leach、M.W.、Coffman、R.L.及びPowrie、F. 1999. An essential role for interleukin 10 in the function of regulatory T cells that inhibit intestinal inflammation. J. Exp. Med. 190:995−1004。
【非特許文献8】Sakaguchi、S.、Takahashi、T.、Yamazaki、S.、Kuniyasu.、Y.、Itoh、M.、Sakaguchi、N.及びShimizu、J. 2001. Immunologic self tolerance maintained by T−cell−mediated control of self−reactive T cells: implications for autoimmunity and tumor immunity. Microbes Infect. 3:911−8。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
先天性免疫システム細胞に抗炎症性サイトカインを誘導させる方法、又はインビボでTr細胞を誘導するように先天性免疫細胞を調節する方法は、炎症性疾患及び自己免疫疾患並びにアレルギーの治療に有用である可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤を投与するステップを含む、免疫介在性疾患の予防及び/又は治療方法が提供される。
【0009】
本発明によれば、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤を投与するステップを含む、自己免疫疾患の予防及び/又は治療方法が提供される。
【0010】
本発明は更に、免疫介在性疾患の予防及び/又は治療のための、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤の使用も提供する。
【0011】
本発明は、自己免疫疾患の予防及び/又は治療のための、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤の使用も提供する。
【0012】
一実施態様において、繊維状血球凝集素(FHA)は、百日咳菌(Bordetella pertussis若しくはBordetella bronchisepetica)若しくはパラ百日咳菌(Bordetellaparapertussis)、又は他の細菌からの関連分子に由来する。関連分子は、FHA内の配列と相同な配列を有する他の細菌からのタンパク質を含み得る。
【0013】
本発明の一実施形態において、薬剤は、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む。
【0014】
一実施態様において、薬剤は、自己抗原若しくは外来抗原、又はそれらのペプチドと組合せたFHAを含む。
【0015】
本発明の一実施態様において、薬剤は、インビボで抗炎症性サイトカインの産生を促進する。
【0016】
本発明の一実施態様において、薬剤は、自己抗原に応答したTr細胞の誘導を促進する。
【0017】
本発明の別の一実施態様において、FHAは、共投与された自己抗原又は外来抗原に対するTr細胞の誘導を促進するようにインビボで免疫調節剤として作用する。
【0018】
自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、及び動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、及び変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上であることが好ましい。移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む。
【0019】
自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上であり得る。
【0020】
好ましくは、ミエリンタンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである。ミエリン塩基性タンパク質は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチド、最も好ましくはMOGペプチド(35〜55)である。
【0021】
本発明の一実施態様において、薬剤は、炎症性サイトカインの産生を調節する。
【0022】
一実施態様において、薬剤は抗炎症性サイトカインの誘導を促進する。
【0023】
本発明の別の一実施態様において、先天性免疫システムに関与する細胞に対するFHAの免疫調節効果は、トル様受容体のリガンドとの同時活性化により高められる。トル様受容体(TLR)のリガンドは、LPS、又はCpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上の他のトル様受容体リガンドであり得る。
【0024】
本発明の一実施態様において、FHAは、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10及びTGF−βの産生を促進する。
【0025】
本発明の一実施態様において、FHAは、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−6の産生を促進する。
【0026】
本発明の更なる実施態様において、FHAは、LPS又は他のTLRリガンドとの相乗効果によって、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10、TGFβ及びIL−6の産生を促進する。
【0027】
本発明の一実施態様において、FHAは、TGFβのmRNAの発現を誘導する。
【0028】
別の一実施態様において、FHAは、炎症性サイトカイン、炎症性ケモカイン又は他の炎症性メディエータを抑制する。炎症性サイトカインは、TNF−α、IFN−γ、IL−2、IL−12、IL−1、IL−23及びIL−27のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上であり得る。
【0029】
炎症性サイトカインは、マクロファージ炎症性タンパク質−1α又はマクロファージ炎症性タンパク質−1βであり得る。
【0030】
一実施態様において、FHAは、樹状細胞が亜成熟した表現型に成熟することを促進する。
【0031】
一実施態様において、FHAは、TLR−リガンドとの同時活性化の後に、樹状細胞の成熟を促進する。
【0032】
別の一実施態様にて、FHAは、TLR−リガンドにより誘導される樹状細胞の活性化を抑制する。
【0033】
FHAは、エンドトキシンを実質的に含まないことが好ましい。FHAは、タンパク質1μg当たり300pg未満のエンドトキシンを含み得る。
【0034】
本発明の一実施態様において、FHAは、免疫調節剤、アジュバント、免疫治療薬又は抗炎症薬の形態で存在する。
【0035】
本発明の一実施態様において、薬剤は、感染又は外傷により誘導される炎症性サイトカインの産生を調節する。
【0036】
別の一実施態様において、免疫介在性疾患は、敗血症、又は感染、外傷若しくは損傷によって惹起される急性炎症である。疾患は、多発性硬化症であり得る。
【0037】
本発明の一実施態様において、免疫介在性疾患は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ及び乾癬から選択される任意の一つ又はそれ以上である。他の免疫介在性疾患は、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節炎、乾癬性関節炎を含む)、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群から二次的に発生した乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬傷に対するアレルギー応答、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症(scieroderma)、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病リバーサル反応、ハンセン病性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、突発性両側性進行性感音性難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、突発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、アルツハイマー病及びセリアック病の任意の一つ又はそれ以上を含む。
【0038】
本発明の別の一実施態様において、免疫介在性疾患は、大腸炎、喘息又はアトピー性疾患である。
【0039】
薬剤は、経口、鼻腔内、静脈内、経皮、皮下又は筋内投与用の形態で存在することが好ましい。薬剤は反復して投与され得る。
【0040】
本発明は更に、FHAを含む免疫調節剤を提供する。
【0041】
本発明はまた、免疫調節効果を有する組み換えFHAも提供する。
【0042】
本発明は更に、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含むワクチンを提供する。ワクチンは、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、抗原とを含み得る。
【0043】
FHA及び抗原は、0.01:1〜100:1の範囲内の重量比にて存在することが好ましい。FHA及び抗原は、1:10〜10:1のモル比にて存在することが好ましい。
【0044】
本発明はまた、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドに対する抗体も提供する。
【0045】
本発明はまた、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと抗原との組合せを含む製品も提供し、ここで該抗原は自己抗原及び外来抗原から選択される。
【0046】
一実施態様において、製品は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンドとの組合せを含む。
【0047】
別の一実施態様において、製品は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンド及び自己抗原との組合せを含む。
【0048】
TLRリガンドは、薬剤的に許容されるTLRリガンドが好ましい。TLRリガンドは、CpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysから選択される任意の一つ又はそれ以上であり得る。
【0049】
製品は、その誘導体、変異体、断片若しくは変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含み得る。
【0050】
本発明はまた、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む医薬組成物も提供する。
【0051】
本発明の一実施態様において、医薬組成物は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを、自己抗原又は外来抗原による免疫のためのアジュバントとして含む。
【0052】
別の一実施態様において、医薬組成物は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはペプチドと抗原との組合せを含み、該抗原は自己抗原及び外来抗原から選択される。
【0053】
FHAは、その誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含み得る。
【0054】
自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、花粉としての杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、及び動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、及び変異したペプチドのリガンドのうちから選択された任意の一つ又はそれ以上であり得る。移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含み得る。
【0055】
自己抗原は、好ましくはミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である。ミエリンタンパク質は、ミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドであり得る。ミエリン塩基性タンパク質は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドであり得る。ミエリン塩基性タンパク質は、MOGペプチド(35〜55)であり得る。
【0056】
一実施態様において、医薬組成物は、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドとTLRリガンドとの組合せを含む。TLRリガンドは、薬剤的に許容されるTLRリガンドが好ましい。
【0057】
本発明は更に、炎症性及び/又は免疫介在性疾患の治療、及び/又は予防のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用を提供する。
【0058】
本発明はまた、トル様受容体依存性シグナル伝達に関与する疾病又は病状の予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0059】
本発明はまた、喘息又はアレルギーの予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0060】
本発明はまた、免疫介在性疾患の予防のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0061】
本発明はまた、多発性硬化症の予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0062】
本発明はまた、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ、及び乾癬のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上の疾病の予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0063】
本発明はまた、大腸炎、炎症性腸疾患又は喘息若しくはアレルギーの予防及び/又は治療のための、FHA、若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤、又はこの薬剤によって活性化された細胞から産生される物質を含む薬剤の使用も提供する。
【0064】
更なる実施態様において、本発明はFHAの精製方法を提供し、この方法はLPSを実質的に含まないFHAを提供するための方法を含む。本発明は、実質的に純粋なFHA製剤を調製する方法を提供し、この方法は、FHAの標本を透析してタンパク質を変成させ混入エンドトキシンを露出させ、残留したエンドトキシンを除去するステップを含む。エンドトキシンは、洗浄剤を使用して除去されてもよい。
【0065】
ある場合にて、この方法は、
精製カラムを充填し、
透析されたFHAの標本を加え、
洗浄剤で洗浄し、
実質的に精製されたタンパク質を溶出するステップを含む。
【0066】
明細書全体を通して、用語「免疫介在性疾患」は、免疫応答が発病に寄与する任意の疾患であって、自己免疫疾患を含むがそれに限定されない疾患と解釈される。
【0067】
用語「自己免疫疾患」は、自己の免疫システムによる炎症及び組織破壊を原因とするもので、自己組織の成分又は産生物に対してそれらを外来物として処理する細胞性又は体液性の免疫応答に関与する多数の互いに関連のない疾患の一つを指す。
【0068】
本願で使用されているように、用語「誘導体、変異体、断片、変種又はペプチド」は、FHAの機能的部分から構成される任意の分子、又は巨大分子を含むものと理解される。断片、変種又はペプチドは、当業者に通常知られた技術によって調製され得る。これらはCD11b/CD18又はCD47/CD61と相互作用するFHAの領域に対応し、RGDモチーフを含んでもよいペプチド又は断片を含む。FHAのRGD含有領域に対応する合成ペプチドに関する先駆的なデータは、これらがマクロファージ又は樹状細胞からIL−10を誘導させ、及び/又はIL−12産生を抑制することが可能であり得ることを示唆している。
【0069】
用語「抗原」は、抗原のレシピエント内で体液性及び/又は細胞性の免疫応答を引き起こし得る分子を指す。体液性及び/又は細胞性の免疫応答は、例えば抗原に特異的な抗体の産生、又は抗原を認識するか又は抗原に結合するT細胞の誘導を含み得る。本明細書全体において用語「抗原」は、抗体又はT細胞の受容体に特異的に結合する任意の物質を含むものと解釈される。用語「自己抗原」は、自己組織又は自己の細胞上にある、外来のものではない内在性の抗原を意味するものと解釈される。用語「外来抗原」は、病原体(細菌、ウイルス、真菌又は寄生虫)由来の抗原を意味するものと解釈される。
【0070】
本発明の組成物及び方法には、自己免疫疾患、アレルギー及び移植拒絶反応に関与する抗原が使用され得る。自己免疫疾患に関与する抗原の例は、ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、及び甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体を含む。アレルギーに関与する抗原の例は、例えば杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原のような花粉抗原、例えばホコリダニ抗原及びネコ抗原のような動物由来の抗原、組織適合抗原を含む。移植拒絶反応に関与する抗原の例は、例えば心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓のようなレシピエント内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む。抗原は、自己免疫疾患の治療に有用な、変異したペプチドのリガンドでもあり得る。
【0071】
本発明の組成物及び方法に使用することができる多様な抗原の例には、βアミロイドタンパク質及びアミロイド前駆体タンパク質がある。
【0072】
用語「アジュバント」は、インビボで抗原と共に使用されて抗原に対する免疫応答を高める物質を含むものと解釈される。
【0073】
用語「免疫調節剤」は、細菌、ウイルス、寄生虫又は真菌の病原体由来の分子を含む、免疫システム細胞の応答を調節、即ち増大及び/又は低下させる任意の分子を含むものと解釈される。
【0074】
用語「樹状細胞(DC)の亜成熟の表現型」とは、未熟DCと成熟DCの中間の表現型を意味する。未熟DCとは、組織内に存在し、未だ刺激を受けていないDCを意味する。成熟DCは、トル様受容体リガンドにより単独で、又はサイトカインと共に刺激された後に、未熟DCから分化する。成熟とは、細胞表面上で共刺激分子及びMHC分子の発現が増大していることを意味する。
【0075】
本発明は以下の添付の図面を参照とした実施例の説明から、より明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
本発明者等は、百日咳由来の繊維状血球凝集素(FHA)が、免疫介在性疾患の治療に、又は自己免疫疾患に対するワクチンを含む免疫介在性疾患に対するワクチン中の免疫調節剤として使用できることを見出した。実験的アレルギー性脳髄膜炎(EAE)、即ちマウスの多発性硬化症モデルにおいて、このマウスにFHA存在下でミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)合成ペプチドを非経口的に投与して免疫すると、疾病徴候、及び病態の発現が防止できることを発見した。FHA存在下で自己抗原又は外来抗原により免疫すると、バイスタンダー抗原に特異的な制御性T細胞の誘導が促進され、これらの制御性T細胞が、自己免疫状態に繋がる自己反応性免疫応答を防止することができるものと思われる。
【0077】
多発性硬化症の治療のための現在のアプローチは、疾病徴候の発現が既に始まっている個人の脳内の炎症を減少させることを狙いとする治療戦略に焦点を当てている。
【0078】
本発明者等は、抑制活性を有し、かつミエリンタンパク質に特異的な記憶T細胞をFHAにより誘導することによって、EAEの臨床徴候の発現を防止し得ることを見出した。
【0079】
本発明者等は、FHAの皮下投与により、ナイーブCD45RBhi細胞の移入によってSCIDマウス内で誘導された腸の炎症が減少され、大腸重量の増加及び収縮が低減され、体重低下が防止されることも見出した。このことは、FHAが、おそらくは制御性T細胞の誘導によって、又は制御性T細胞の誘導を促進する、若しくは自己免疫疾患を仲介する免疫応答に対して直接的な抑制効果を有する、内因性のIL−10及びTGF−βを産生させることによって、自己免疫疾患の発症を防止し得ることを示している。
【0080】
FHAを外来抗原と共投与すると、共投与された抗原に特異的な制御性T細胞が刺激される。FHAは、IL−5及びIL−10を分泌するT細胞の誘導を促進するが、IL−4又はTNF−αを分泌するT細胞の誘導は促進しないことが見出され、これによってFHAはインビボでタイプ1制御性T細胞(TR1)の誘導を支配することが示された(図8)。
【0081】
本発明者等は、自己抗原及びFHAにより免疫されたマウスが、レシピエントマウス内に移入後、EAEに対する防御を獲得することを見出した。FHAの単独投与による治療では、EAEの臨床徴候が減少した。
【0082】
想定され得る医薬製品の一つは、FHAと、例えば自己抗原若しくは外来抗原であり得る薬剤的に許容される抗原との組合せ、又は自己抗原若しくは外来抗原のペプチドとの組合せであり得る。このような組合せ製品は、FHAがそれと組合せた成分と相乗的に作用する点で有利な効果を有すると予見される。このような製品は、当業者に一般に知られた工程を用いて製造することができる。
【0083】
本発明者等は、FHAによるIL−10の産生と、IL−12及びIFN−γの抑制とが、例えばLPSのようなトル様受容体リガンド(TLRリガンド)の存在により向上されることを見出した。他のTLRリガンドは、Pam3Cys、CpGモチーフ、dsRNA又はPoly(I:C)から選択される任意の一つ又はそれ以上であり得る。FHAと薬剤的に許容されるTLRリガンドとの組合せは、向上された免疫調節効果を有すると思われる。FHAと、薬剤的に許容されるTLRリガンド及び自己抗原との組合せも、向上された免疫調節効果、及び/又は抗炎症効果を提供することが予見される。
【0084】
FHAは既にヒトへの使用が認可されており、現在数種の無細胞百日咳ワクチンの成分となっている。そのワクチン中でFHAは、水酸化アルミニウムに吸着されている。
【0085】
FHA又はその誘導体は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ又は乾癬を含むが、これらに限定されない免疫介在性疾患の治療に使用されるか、又はその予防のための療法若しくはワクチンの成分として使用され得る。
【0086】
FHA又はその誘導体はまた、糖尿病、関節炎(関節リウマチ、若年性関節リウマチ、骨関節症、乾癬性関節炎を含む)、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎(アトピー性皮膚炎及び湿疹性皮膚炎を含む)、シェーグレン症候群から二次的に発生した乾性角結膜炎を含むシェーグレン症候群、円形脱毛症、節足動物咬傷に対するアレルギー応答、アフタ性潰瘍、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、潰瘍性大腸炎、喘息、アレルギー性喘息、皮膚エリテマトーデス、強皮症(scieroderma)、膣炎、直腸炎、薬疹、ハンセン病リバーサル反応、ハンセン病性結節性紅斑、自己免疫性ブドウ膜炎、アレルギー性脳脊髄炎、急性壊死性出血性脳症、突発性両側性進行性感音性難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、突発性血小板減少症、多発性軟骨炎、ウェゲナー肉芽腫症、慢性活動性肝炎、スティーブンジョンソン症候群、突発性スプルー、扁平苔癬、グレーブス眼症、サルコイドーシス、原発性胆汁性肝硬変、後部ブドウ膜炎、間質性肺線維症、アルツハイマー病及びセリアック病のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上の免疫介在性疾患の治療に使用されるか、又はその予防のための療法若しくはワクチンの成分として使用され得る。
【0087】
FHA又はその誘導体は、喘息若しくはアトピー性疾患の治療に使用されるか、又はその予防のための療法若しくはワクチンの成分としても使用され得る。
【0088】
以上詳述した疾患の多くは満足した治療法を有さず、殆どの場合、ステロイド及び非ステロイド性抗炎症薬が使用される。しかしながら、これらの薬物は非特異的な薬物であり、副作用が発生する。比較的最近になって、キーとなる炎症性サイトカイン、特に腫瘍壊死因子(TNF)−αを抑制する薬物が開発された。これらの薬物は、特定の自己免疫疾患に有効な抗体、又は可溶性TNF受容体を含んでいるが、副作用(再発性結核を含む)を伴い、TNF−αが病状の重要な調節物質となっている疾患に限られる。別の治療的アプローチの一つは、抗炎症性サイトカイン(例えばIL−10)の直接投与であるが、これはインビボでのサイトカインの半減期が短いため十分である。代替的戦略としては、インビボで直接的な免疫抑制効果を有するIL−10のような抗炎症性サイトカインを誘導する薬剤を使用し得る。
【0089】
抗炎症性サイトカインを刺激し、先天性免疫システムに関与する細胞からのプロ炎症性サイトカインの産生を抑制し、サプレッサー、即ち制御性T細胞の誘導を促進する分子は、炎症性免疫応答、及びTh1に仲介される免疫応答を制限する可能性を有する。FHAは、先天性及び適応性のIL−10を刺激することにより免疫療法剤若しくは免疫調節剤、又は免疫介在性疾患を予防するワクチンのアジュバントとして作用する可能性を有する。
【0090】
クローン病の慢性腸炎症は、Tヘルパー1細胞(Th1)、並びにプロ炎症性サイトカイン、IFN−γ、TNF−α及びIL−12(9)の過剰産生と関連している。これら有害な炎症及び組織破壊的な免疫応答は、抗炎症応答の欠陥、又は共生細菌性抗原に対する耐性が失われた結果であり得るとの証拠が存在している。NOD−2、即ち細菌性ペプチドグリカンからのムラミルジペプチドに対する細胞内病原体認識受容体(PRR)に変異を有するクローン病患者においては、TLR−2リガンド及び腸内細菌に応答する抗炎症性サイトカイン、IL−10及びTGF−βの産生が相当減少され、かつTh1応答が増大されている(10、11)。その代わりに、Tr細胞の生成不全の結果として炎症応答に対抗する調節が失われることによって免疫介在性疾患が生じ得る(8)。Tr細胞を移入することによって、動物大腸炎モデルにおいて腸の炎症に対する防御が獲得されることが示されている(12)。従って、インビボで抗炎症性サイトカイン及びTr細胞を誘導させることを目標とした戦略は、クローン病に対する新たな治療法開発の上でかなり有望である。
【0091】
クローン病の治療には、TNF抗体又はTNF拮抗剤や、アザチオプリンを使用した免疫抑制療法が行われる。本発明者等が現在知るところによれば、これらの療法は、キーとなるプロ炎症性調節物質の直接的な抑制、又は活性化T細胞のアポトーシスの誘導によりその効果を生じるものであり、DC機能の調節によるものではない(13、14)。抗炎症性サイトカイン、IL−10の直接投与も検討されたが、IL−10はインビボでの半減期が短いため、臨床試験では中程度の治療的有用性が見られたのみである(15)。IL−10を発現するように遺伝子操作された細菌も、動物モデルにて大腸炎を減少させることが示されている(16)。本発明にて採用された代替的手法では、病原体由来の免疫調節分子により適切な宿主細胞を標的とすることによって、インビボで抗炎症性サイトカインの産生を刺激する。
【0092】
FHAは、先天性免疫細胞の機能を調節して抗炎症性サイトカインを産生させる能力を有し、これは続いてTr細胞の二次的な誘導を介して増幅され得る。本発明においては、FHAの注入により所属リンパ節及び遠位リンパ節、並びにパイエル板内でIL−10及びTGF−βが即時に(2〜6時間)誘導され、このことはFHAが組織DC又はマクロファージをリンパ節及び二次リンパ組織に移動するように調節して、抗炎症応答を開始させることを示唆している。T細胞が介在する大腸炎の予防にはIL−10及びTGF−βの両方が重要であり(12、17)、FHAで処理した重症複合性免疫不全症(SCID)マウスの脾臓内に検知されたIL−10産生T細胞の存在の原因となっていると思われる。PBS処理マウスと比較して、FHA処理マウスでは、大腸炎の減少、脾細胞IL−10の増加、及びそれに伴うプロ炎症性Th1型サイトカイン(IFN−γ及びTNF−α)の減少が見られた。興味深いことに、FHAはIL−10−/−及び野生型CD4+CD45RBhighT細胞を移入したSCIDマウスにおいても大腸炎に対する同程度の防御を誘導し、これは、このような防御がT細胞誘導IL−10により仲介されるものではないことを示唆している。Tr細胞はまた、TGF−β産生及び細胞間接触を介して免疫応答を抑制することができるため、このことはTr細胞のこの防御における役割を除外するものではない。
【0093】
脾臓T細胞によるIL−10産生の増大は、FHA刺激による免疫調節応答が局部組織に限定されずに、腸を含む遠位部位にも起こることを示している。
【0094】
FHAは、DC上のCD11b/CD18と結合して、IL−10産生Tr細胞を生成するように細胞の機能を調節する。Tr細胞は次に、そのIL−10産生能に依存せずに大腸炎の発症を抑制する。DCの免疫調節、及びその結果としてのTr細胞の単独、又は集合的な活性化は、大腸炎の予防において有用な戦略となり得る。FHAはクローン病の治療法としての相当の可能性を有する。
【0095】
本発明は、以下の実施例により更に明らかとなるであろう。
【実施例】
【0096】
<FHAの精製>
Bordet−Gengou寒天プレート上で百日咳菌(Bordetella pertussis)を3日間増殖させた。溶血性であるコロニーを用いてStainer−Scholte(SS)培地内で、ジメチル−βシクロデキストリン(CDX、Sigmaより購入)を補充して最終濃度を0.5g/lとし、液体前培養(30ml)を開始した(CDXは、細菌表面からのFHA放出を誘導する)。この前培養物を攪拌下で一夜、37°Cで増殖させ、大きい培地への播種に使用した(1Lフラスコ中、250mlのSS培地)。この培養物を攪拌下で36〜48時間、37°Cで増殖させた。プラトー相に到達した後(培養物の光学密度を測定して決定)、培地内の細胞を4°Cで20分間、7000rpmで遠心分離して、上清を回収した。
【0097】
PBSでpH7.4に平衡化したヘパリンセファロースカラム(Amersham)の基質を用いたFPLCを使用して、上清からFHAを精製した。サンプルを充填した後、カラムをPBSで洗浄して、0.5M NaClを加えたPBSを用いて室温で流速2ml/分にて溶出した。ピーク溶出を伴うフラクションがFHAを含有していた。混入しているLPSをエンドトキシン除去カラム(Detoxi−Gel(登録商標)エンドトキシン除去ゲル、Pierce、Rockford、IL、USA)上で除去した。このステップの後、色素産生性カブトガニアメーバ様溶菌液(LAL)アッセイ(BioWhittaker、Walkersville、MD、USA)では、標本中にエンドトキシンは検知されなかった。
【0098】
FHA標本中には、残留エンドトキシン又はリポ多糖(LPS)が存在する。しかしながら、このエンドトキシンの残留量は非常に小さい。混入エンドトキシンの濃度は、概してタンパク質1μgにつき300pg未満である。
【0099】
現在までに商業的に入手可能なFHA製剤、及び当該技術分野で検討されているFHA製剤は、これよりも相当高い濃度のエンドトキシンが混入している。本発明者等は、混入LPSを除去するために、以下のような更なるFHA精製ステップを行った。
【0100】
タンパク質製剤に、以下の透析ステップを行った。1)FHAタンパク質製剤を、新鮮な8M尿素製剤に対して1時間、次いで一夜透析する。2)FHAタンパク質製剤を、新鮮な4M尿素製剤に対して1時間、次いで一夜透析する。3)FHAタンパク質を、新鮮な1M尿素製剤に対して1時間、次いで一夜透析する。
【0101】
これら最初のステップの目的は、タンパク質を確実かつ完全に変性させることにある。これによりFHAの内部疎水性領域に結合したLPSが露出する。尿素の濃度は徐々に低下させる必要があり、さもなければ、タンパク質が修復不能な損傷を受け、リフォールディングが正確に行われなくなる。その後、残留したLPSを以下のように除去する。
【0102】
i)エンドトキシンを含まない、1%デオキシコール酸ナトリウムを含む水5mlでEtoxateカラム(Pierce)を洗浄する。
ii)エンドトキシンを含まない水5mlでカラムを洗浄する。
iii)タンパク質溶液を加える。
iv)1%デオキシコール酸ナトリウム5mlで再度カラムを洗浄して、1〜2mlのフラクションを収集する。
v)600nmにおける光学密度を調べて各フラクションのタンパク質濃度を測定することにより、最大タンパク質濃度を有するフラクションを決定する。
【0103】
デオキシコール酸ナトリウムは、Etoxateカラムに結合した全てのLPSを除去する。しかしながら、タンパク質に結合していないLPSの大部分は、密度の相違により、タンパク質に結合したLPSとは別のフラクション内に溶出される。
【0104】
本発明者等は、FHAによるIL−10産生の刺激が、トル様受容体−4(TLR−4)を介したLPSのシグナル伝達によって増大されるように思われることを説明してきた。FHA効果の増大に要求されるLPS量は、精製されたFHA標本中に存在し得るLPSの残留量よりも相当大きい。FHA標本中に存在する濃度(0.2ng/ml)のLPS単独によるDC処理では、DCはインビトロで活性化されなかった。図2は、FHAが単独で、C3H/HeN及びTLR−4欠損C3H/HeJマウス由来の腹膜マクロファージによるIL−10産生を刺激し、これはIL−10産生がLPSに依存するのではなく、LPSにより向上されるか、又はTLR−4を介したシグナル伝達に依存することを示したものである。LPSを追加すると、C3H/HeNマウス由来の腹膜マクロファージによるFHA誘導IL−10産生が向上したが、C3H/HeJマウス由来の腹腔マクロファージによるFHA誘導IL−10には殆ど影響がなかった。FHAはまた、C3H/HeNマウス由来の樹状細胞によるIL−10の産生を低いレベルで刺激したが、TLR−4欠損C3H/HeJマウスでは刺激が見られなかった。C3H/HeNマウス由来の樹状細胞からのFHA誘導によるIL−10の産生は、LPSの追加によって向上した。
【0105】
図3は、濃度5μg/mlのFHAが、樹状細胞からのLPS誘導によるIL−10産生を向上させることを示したものである。C3H/HeJマウスのTLR−4シグナル伝達の非存在下で、FHAはDCからのIL−10産生を刺激しないが、濃度1〜5μg/mlではLPS誘導IL−10産生を向上させる。これらの結果から、免疫調節剤としてのFHAの効果は、薬剤的に許容されるTLRリガンドとの同時注入により向上し得ることが示唆される。
【0106】
FHAは、ヒト単球からのIL−10の産生を誘導し、LPS及びIFN−γ誘導によるIL−12産生を抑制する(図1)。また、FHAの注入はインビボでIL−10の産生を刺激し、IL−12の産生を抑制する(図5)。
【0107】
FHAを長期間保存しても、その活性に影響がないものと思われた。FHAは、マウスのマクロファージによるIL−10の産生を刺激し、LPS及びIFN−γ産生を抑制し、この効果はFHAを凍結乾燥して長期間保存した後でも維持されることが見出された(図4)。
【0108】
図6は、マウスにFHAを皮下注射すると、注射から1〜2時間以内にリンパ節内における抗炎症性サイトカイン、IL−10及びTGF−βの産生が向上し、この効果は投与6時間後においても持続して向上していることを示したものである。
【0109】
FHAの皮下注射から1時間以内にTGF−βが転写レベルで誘導され、この効果は少なくとも6時間継続した(図7)。
【0110】
<マウスの多発性硬化症モデル>
実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)は、マウスにおける多発性硬化症のモデルである。1mg結核菌(Mycobacteria tuberculosis)を加えたフロイント完全アジュバント中に乳化された150μgMOGペプチドの皮下投与、及び500ng百日咳毒素の腹腔内注射、続く2日後の再度の500ng百日咳毒の腹腔内注射により、C57BL/6マウスにEAEを誘導した。マウスは、麻痺の症状を発症した。自己免疫疾患に対するワクチンのアジュバントとしてのFHAの効果を評価する実験において、リン酸緩衝生理食塩水中の50μgMOGペプチド(残基35〜55)及び5.0μgFHAの皮下投与によってマウスを免疫した。これを21日後に再度行った。コントロールマウスは、MOGペプチド又は生理食塩水のみを投与した。2度目の免疫から7日後。マウスのEAE臨床徴候を毎日評価し、以下のように評点した。1=尾部麻痺、2=歩行不安定、3=後脚弱化、4=後脚麻痺、5=後肢及び前肢の完全麻痺、6=死。
【0111】
表1に、疾病スコア及び疾病指標を示す。この結果は、アジュバントとしてのFHAの投与が、疾病の進行を有意に抑制することを示す。
【0112】
【表1】
【0113】
発症率は、試験マウス数に対するEAE臨床徴候のいずれかを発症したマウス数を示す。疾病指標は、毎日の平均疾病スコアを全部加算して、発症日の平均で割り、100を掛けて計算した。
【0114】
図9に、実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)における、ミエリンオリゴデンドロサイト(MOG)ペプチド及びFHAの疾病の進行に対する免疫効果(平均疾病指標)を示す。図10に、EAEモデルにおける、ある期間に亘る平均疾病スコアを示す。組織学的所見により、MOG及びFHAの免疫効果が明らかに示されている(図11)。
【0115】
MOG+FHAで免疫されたマウスにおいて、自発的なMOG特異的かつPMA及び抗CD3誘導IL−10が増加した。対称的に、MOG+FHAで免疫されたマウスにおいてMOG特異的IFN−γ産生は有意に減少した。図12は、EAE誘導前のMOG及びFHAによる予防的処理が、MOG特異的IFN−γ産生を抑制することを示している。
【0116】
免疫調節剤としてのFHAを用いた予防的免疫療法は、自己抗原との共免疫に依存する。FHA及びMOGによる免疫がEAEの発症を防止するのに対し、コントロール抗原(KLH)及びFHAによる免疫はEAEの発症を防止しない。このことは、FHAを用いた予防的免疫療法(即ち、EAE誘導前の投与)が、自己抗原(本実施例ではMOGペプチド)との共投与に依存することを示す(図13)。
【0117】
本発明者等は、MOG及びFHAで免疫したマウス由来のCD4+T細胞は、それがレシピエントマウス内に移入された後、EAEに対する防御を提供することを見出した(図14)。MOG及びFHAで免疫したマウス由来のCD4+T細胞をEAE誘導から7日後に移入すると、EAEの発症が防止された。対称的に、MOG単独又はMOG及びCpGで免疫したマウス由来のCD4+T細胞は、EAEに対する防御を提供しなかった。このことは、MOG及びFHAによる免疫によりMOG特異的Tr細胞の集団が誘導され、これがEAE発症に繋がる免疫応答を抑制することを示している。
【0118】
本発明者等は、FHAの単独投与による治療がEAEの臨床徴候を減少させることを見出した(図15)。疾病指標及び疾病スコアは、図9及び図10に説明したように計算した。EAE発症後のFHAの単独投与は、疾病の重症度を低下させた。
【0119】
FHA及びタイプIIIコラーゲンによる免疫は、マウスのコラーゲン誘導関節炎の発症を抑制することを見出した(図16)。コラーゲン及びFHAで免疫したマウスの疾病の重症度は、KLH及びFHAで免疫したマウスと比較して低下した。
【0120】
<マウスのヒト大腸炎モデル>
図17に、マウス大腸炎モデルの腸炎症の発症に対するFHAの皮下投与を示す。重症複合性免疫不全症(SCID)マウスにCD45RBhiナイーブT細胞を注入した。これにより、注入から6〜8週間後に慢性の大腸炎症が発症した。FHAによる皮下治療は、大腸の炎症及び体重低下を防止した(図17A)。FHA処理されたマウスは、未処理のCD45RBhi移入コントロールマウスと比較して、腸炎症の顕著な減少、大腸重量の低下、及び大腸縮小の減少が見られた(図17B及び図17C)。
【0121】
組織学的所見は、腸壁の全層内に単核細胞の流入、肥厚、及び腸管上皮細胞の分化の低下により特徴付けられた(図18及び図19)。
【0122】
6匹のSCIDマウスのグループにCD45RBhiナイーブT細胞を単独で、若しくはCD45RBlowT細胞と共に静脈注射するか、又はCD45RBhiナイーブT細胞を注射すると共にFHAを皮下投与した(10μg/マウス、2週間ごと)。体重を記録して、8〜12週間後、マウスを犠牲死させた。大腸の重量を記録して、大腸のヘマトキシリン及びエオシンで染色した部分上で組織学的検査を行った(図20A及び図20B)。FHAによる処理は、正常な野生型及びIL−10欠損マウス由来のナイーブT細胞を受容したSCIDマウスの体重低下を防止し、大腸炎症を有意に減少させた。これはFHAの防御的効果が、T細胞誘導IL−10に依存することを示す。
【0123】
野生型CD4+CD45RBhighT細胞を注射してPBS、FHA又はCD4+CD45RBlowT細胞で処理した、又はIL−10−/−マウス由来のCD4+CD45RBhighT細胞を注射してFHAで処理したSCIDマウスに大腸炎を誘導してから8週間後に、脾細胞を除去した。脾臓標本から未分離脾細胞及びCD4+T細胞を選別し、抗CD3及び抗C28で2度刺激して、2度目の刺激から2日後、上清中のサイトカイン濃度を測定した(図21及び図22)。野生型CD4+CD45RBhighを注射してFHAで処理したマウスからの脾細胞塊は、PBS処理したマウス又はCD4+CD45RBlowT細胞を同時注入したマウスと比較して有意に多いIL−10を産生した(244±30pg/ml対43±7pg/ml及び48±10pg/ml)(図21)。更に、IL−10の産生は、FHA処理マウスのCD4+T細胞と比較して脾細胞塊内で有意に高かった(244±30pg/ml対121±31pg/ml)。
【0124】
予想通り、IL−10−/−のCD45RBhighT細胞を注射したSCIDマウスからの脾細胞塊及びCD4+T細胞を抗CD3及び抗CD28で刺激しても、IL−10は全く検出されなかった(検出限界20pg/ml)。
【0125】
PBS処理マウスから回収した脾細胞内に、比較的高濃度のプロ炎症性Th1型サイトカイン、IFN−γ(図22A)、及びTNF−α(図22B)が検出され、これらのマウスは重症の大腸炎に罹患していた。対称的に、野生型、又はIL−10−/−マウス由来のT細胞を注入したFHA処理SCIDマウスからの脾細胞は、PBS処理SCIDマウスからの脾細胞と比較して、有意に低い濃度のTh1サイトカイン、TNF−α及びIFN−γ、並びにTh2サイトカインIL−4及びIL−5(図22C及び図22D)を産生していた。この発見により、実験的大腸炎が、脾臓内に検出され得るTh1型サイトカイン産生の向上と関連し、FHAによる処理がプロ炎症性サイトカインを抑制し得る一方で、IL−10を増大させることが証明された。
【0126】
<薬物製剤の用量及び投与方法>
本発明は、選択された抗原に対する哺乳動物内の免疫応答の調節方法を含む。本方法は、哺乳動物にFHA若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、若しくはそれらの物質で活性化された細胞から産生される物質を含む治療量の薬剤を投与すること、又はFHA若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド及び抗原、若しくはFHA及び薬剤的に許容されるトル様受容体(TLR)リガンドを含む治療量の薬剤を投与することを含む。
【0127】
投与のための組成物は、溶液又は懸濁液のいずれかの形態である注射剤として調製され、また注射の前に液体の懸濁液又は溶液にされるのに適した固形物としても調製され得る。また製剤は乳剤にされてもよく、又は組成物をリポソーム内に封入してもよい。活性免疫原性成分は、多くの場合、薬剤的に許容され、かつ活性成分と適合可能な担体と共に混合される。「薬剤的に許容される担体」という用語は、投与される対象者にアレルギー反応又は他の望ましくない効果を惹起しない担体を指す。薬剤的に許容される適切な担体は、例えば水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール又は同様物、及びそれらの組合せのうちの一つ又はそれ以上を含む。加えて、所望であれば免疫調節剤/製剤は、例えば湿潤剤若しくは乳化剤、pH緩衝剤、及び/又は製剤/免疫調節剤の有効性を高めるアジュバントのような少量の補助物質を含有してもよい。
【0128】
本発明の組成物は、例えば皮下、経皮、又は筋肉内のいずれかの注射により非経口的に投与され得る。他の投与形態に適した更なる製剤には坐薬が含まれ、場合により、経口用製剤、鼻腔内製剤、又はエアロゾルとして分散されるのに適した製剤が含まれる。坐薬用には、従来の結合剤及び担体は、例えばポリアルキレングリコール又はトリグリセリドを含み得る。このような坐薬は0.5%〜10%、好ましくは1%〜2%の範囲内の活性成分を含有する混合物から形成することができる。経口用製剤は、例えば医薬品等級のマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム及び同様物のような通常使用されている賦形剤を含有している。この組成物は溶液、懸濁液、錠剤、丸剤、カプセル、徐放製剤又は散剤の形態を有し、かつ10%〜95%、好ましくは25〜70%の活性成分を含有する。
【0129】
本発明の組成物は、中性若しくは塩の形態で免疫調節剤組成物に調製されてもよい。薬剤的に許容される塩は、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基と共に形成される)を含み、これらは例えば塩酸若しくはリン酸のような無機酸、又は酢酸、シュウ酸、酒石酸、マレイン酸及び同様物のような有機酸と共に形成される。遊離カルボキシル基と共に形成される塩は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、又は水酸化鉄(III)のような無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン及び同様物のような有機塩基から誘導することもできる。
【0130】
組成物は、投与形態と適合可能な形態で、かつ予防的及び/又は治療的に有効となる量で投与され得る。投与されるべき量は、治療される対象者に依存し、それには例えば対象者の免疫システムの抗炎症性サイトカインの合成能、又は制御性T細胞の誘導能、及び所望される防御の程度が含まれる。適切な用量の範囲は、1回のワクチン接種につき活性成分が数百μgのオーダーにあり、好ましい範囲が約0.1μg/g〜1000μg/g、例えば約0.1μg〜100mgの範囲内にある。初回投与及び追加投与のための適切な処方計画もまた様々であるが、初回投与、及びそれに続く接種又は別様の投与により類型化される。投与に要求される活性成分の正確な量は、医師の判断に依存し、おそらく各対象者に特有のものであろう。
【0131】
FHA組成物の治療的有効量は、とりわけ投与計画、投与される抗原の単位用量、FHAが他の治療薬と組合せて投与されるか否か、レシピエントの免疫状態及び健康、並びに特定のFHA/抗原複合体の治療的活性に依存することが、当業者には明らかであろう。
【0132】
組成物は、単一の投与計画、又は好ましくは複数の投与計画に基づいて投与され得る。複数の投与計画は、最初の投与過程が1〜10回の個別投与を含んでもよく、続いて免疫応答上の効果を維持又は強化するために必要な間隔を置いて他の投与が行われ、例えば1〜4ヶ月目に2度目の投与が行われ、必要であれば、数ヶ月後に次の投与が行われる投与計画である。所望の防御レベルを維持するためには、1〜5年、通常3年の間隔を置いた周期的投与が望ましい。
【0133】
一連のワクチン接種は、例えば3ヶ月、4ヶ月、又は6ヶ月の間隔を置いて実施されてもよい。このような一連の接種は、合計で、例えば3、4又は5回のワクチン接種を含み得る。乳児に実施されるワクチン接種では、一連の接種は、例えば生誕時、又は生誕から1週間以内、及びその後6、10及び14週齢に実施され得る。一連の接種は、生誕時、並びに1、3及び6ヶ月齢に実施されてもよい。
【0134】
治療的使用のために、組成物は、1週間に数回、例えば1週間に2回、毎週、1ヶ月に数回、数週間、数ヶ月、1年又は数年間の間に毎月投与され得る。治療的使用のための組成物は、活性成分のみ、又は活性成分と自己抗原との組合せを含み得る。この治療は、同時の(同一又は別個の製剤中で)又は時間間隔を置いた他の薬物の投与を含んでもよい。
【0135】
治療的に有効な用量は、投与経路及び剤形に応じて変動し得る。疾病状態、年齢、体重、通常の健康状態、性別、対象者の日常の飲食物、投与間隔、投与経路、排泄率及び薬物の組合せに応じて、特定の用量が調製され得る。有効量を含有する剤形のいずれもが日常的な実験の範囲内にある。本発明者の組成物は、自己免疫疾患の治療に使用されている薬物を含む他の薬物と共に投与されてもよい。組成物は、自己免疫疾患の他の治療に使用されている投与計画と同様の投与計画を用いて、単独で投与されてもよい。用語「治療」は、疾患若しくは疾病に関連した症状の緩和、症状の更なる進行若しくは悪化の停止、又は疾病若しくは疾患の予防を含むことを意図する。
【0136】
治療過程は、インビトロでの例えばLPSによる刺激を伴う、又は伴わない免疫システム細胞によるエクスビボでのサイトカイン産生を試験することによって追跡され得る。アッセイは、抗体及び同様物を用いて、細胞の培養及びサイトカインの定量のための従来の試薬を用いて実施することができる。これらの手法は、当業者に通常知られている。
【0137】
本発明は、詳細部が変動し得る前述の実施態様に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】FHAがヒト単球からのIL−10の産生を刺激し、IL−12の産生を抑制することを示すグラフである。CD14+単球は、正常なドナー由来のヒト末梢血単核細胞から、MACSマイクロビーズと自動MACSソーティング装置とを用いたポジティブセレクションにより精製した。単球(1×106/ml)を培養液のみ、FHA(5μg/ml)、LPS(1μg/ml)及びIFN−γ(20ng/ml)、又はFHA、LPS及びIFN−γで刺激した。24時間後に上清を回収し、IL−10及びIL−12p70の濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図2】FHAがマウスのマクロファージ(A)及び樹状細胞(B)からのIL−10の産生を刺激し、かつこの効果がトル様受容体−4(TLR−4)を介したLPSのシグナル伝達により増大されることを示すグラフである。正常C3H/HeN及びTLR−4欠損C3H/HeJマウスの腹腔から腹腔洗浄によりマクロファージを回収した。未熟骨髄由来の樹状細胞を、正常C3H/HeN及びTLR−4欠損C3H/HeJマウスの大腿骨及び脛骨から得た骨髄から生成させ、これをGM−CSF含有上清で7日間培養した。腹腔マクロファージ又は樹状細胞(1×106/ml)を培養液のみ、FHA(5μg/ml)、LPS(1000ng/ml)、又はFHA(5μg/ml)及びLPS(10〜1000ng/ml)で刺激した。24時間後に上清を回収して、IL−10濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図3】FHAの濃度を上昇させたときのLPS誘導IL−10産生に対する効果を示すグラフである。未熟骨髄由来の樹状細胞を、正常C3H/HeN及びTLR−4欠損C3H/HeJマウスの大腿骨から得た骨髄から生成させ、これをGM−CSF含有上清で7日間培養した。樹状細胞(1×106/ml)を培養液のみ、LPS(1μg/ml)単独で又はFHA(10〜5000ng/ml)と共に刺激した。24時間後に上清を回収して、IL−10濃度をサンドイッチELISA法により決定した
【図4】長期間保存した後の凍結乾燥製剤の免疫調節活性を示すグラフである。正常BALB/cマウスの腹腔からマクロファージを回収した。5年間凍結乾燥されていたFHA製剤を、マクロファージ(1×106)に加えるに先立ちPBS内で融解した。細胞をFHA(5μg/ml)、LPS(1μg/ml)及びIFN−γ(20ng/ml)、又はFHA(5μg/ml)存在下のLPS(1μg/ml)及びIFN−γ(20ng/ml)で刺激した。24時間後に上清を回収して、IL−10及びIL−12p40濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図5】FHAを注射したマウス由来の脾細胞によるIL−10産生の増大、及びIL−12産生の抑制を示すグラフである。正常BALB/cマウスにFHA(10μg/マウス)又はPBSを皮下注射し、24時間後脾臓を取り出し、脾細胞をLPS(0.001〜1.0μg/ml)又は培養液のみで刺激した。24時間後に上清を回収して、IL−10及びIL−12p40濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図6】FHAがインビボで抗炎症性サイトカイン、IL−10及びTGF−βの産生を誘導することを示すグラフである。正常BALB/cマウスにFHA(10μg/マウス)又はPBSを皮下注射し、2又は6時間後、鼠経リンパ節、腸間膜リンパ節、パイエル板、及び血清を回収した。血清(A)中のIL−10タンパク質濃度を測定した。ホモジナイズしたリンパ組織中のIL−10(B)及びTGF−α(C)タンパク質を、サンドイッチELISA法により決定した。PBS処理マウスと比較して統計的に有意な差異が見られる。*P<0.05、**P<0.01及び***P<0.001。
【図7】FHAがインビボでTGF−βのmRNAの発現を誘導することを示すPCR結果である。BALB/cマウスにFHA(10μg/マウス)又はPBSを皮下注射し、1又は6時間後、鼠経リンパ節を取り出した。リンパ節をホモジナイズして全RNAを抽出し、RT−PCRによりTGF−βのmRNA発現を測定した。
【図8】FHAの外来抗原との共投与が、共投与された抗原に特異的な制御性T細胞を刺激することを示すグラフである。BALB/cマウスをオブアルブミン(OVA)ペプチド(323〜339)(50μg/マウス)及びFHA(5μg/マウス)で(0及び20日目に)鼻腔内免疫した。最終免疫から7日後に脾臓を取り出し、インビトロでOVAペプチドと共に再培養した。これら培養物からOVAに特異的なT細胞系を樹立した後、限界希釈法でクローン化した。T細胞系/クローンをOVAペプチド及び抗原提示細胞(照射した同系の脾細胞)で刺激した。2日後に上清を回収し、IL−4、IL−5、IL−10及びTNF−α濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図9】実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)、即ちマウスの多発性硬化症モデルにおける疾病の進行に対するミエリンオリゴデンドロサイト(MOG)ペプチド及びFHAによる免疫の効果(平均疾病指標)を示すグラフである。マウスを、リン酸緩衝生理食塩水中の50μgMOGペプチド(残基35〜55)及び5.0μgFHAで皮下免疫した。これを21日後に再度行った。コントロールマウスは、MOGペプチド又は生理食塩水のみを投与した。2度目の免疫から7日後、5mg/ml結核菌を加えた、フロイント完全アジュバント中に乳化した150μgMOGペプチドの皮下投与、及び500ng百日咳毒素の腹腔内注射、続く2日後の500ng百日咳毒素の2度目の腹腔内注射によりEAEを誘導した。マウスをEAEの臨床徴候について毎日評価し、以下のように評点した。1=尾部麻痺、2=歩行不安定、3=後脚弱化、4=後脚麻痺、5=後肢及び前肢の完全麻痺、6=死。疾病指標は、毎日の平均疾病スコアを全て加算し、発症日の平均で割り、100を掛けて計算した。
【図10】実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)における、ある時間に亘るFHA及びMOGペプチドの免疫効果を平均疾病スコアにより示すグラフである。
【図11】EAE誘導後の(未処理)、又はミエリンオリゴデンドロサイトペプチド(MOG)若しくはMOGペプチド+FHA(MOG+FHA)で免疫後の、マウス脊髄の組織病理学用切片を示す顕微鏡写真である。EAEが誘導され、マウスは図8に説明したように免疫された。EAE誘導から23日後、マウスの脊髄部分を取り出し、ヘマトキシリン(harmatoylin)及びエオシンで染色した。未処理マウス及びMOG免疫マウスに誘導されたEAEは、単核細胞の浸潤が顕著であり、MOG及びFHAによる免疫は単核細胞の浸潤、脳炎、血管周辺への細胞湿潤及び脱ミエリン化を防止した。未処理EAEでは、表面の脳内白質線維及び軟膜にて、ミエリン空胞化、軸索退縮及びリンパ球及びマクロファージ浸潤が見られる。MOG免疫したマウスでは、病変は未処理EAEと同様である。FHA+MOG免疫マウスでは、脳内白質線維は正常に見え、少数の白血球が軟膜に制限されている。
【図12】EAE誘導前のMOG及びFHAによる予防的処理が、MOG特異的IFN−γ産生を抑制することを示すグラフである。C57BL/6マウスを0及び21日目に、PBSのみで、又はMOG(50μg)及びFHA(5μg)で皮下免疫した。7日後、1mg結核菌を加えた、フロイント完全アジュバント中の150μgMOG35〜55ペプチドの皮下投与、及び500ng百日咳毒素の腹腔内注射、続く2日後の500ng百日咳毒素の2度目の腹腔内注射によりEAEを誘導した。EAE誘導から23日後、脾細胞を回収してインビトロでMOGペプチド35〜55(10又は25μg/ml)、抗CD3及びPMA、又は培養液のみで再刺激した。培養3日後、上清を回収し、IFN−γ(図12B)及びIL−10(図12A)濃度をサンドイッチELISA法により決定した。
【図13】アジュバントとしてのFHAによる予防的免疫療法が、自己抗原との共免疫に依存することを示すグラフである。(A)は疾病指標、(B)は平均疾病スコアを表す。C57BL/6マウスを0及び21日目に、PBS、MOG(50μg)、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)(外来抗原モデル)、(50μg)及びFHA(5μg)、又はMOG(50μg)及びFHA(5μg)で皮下免疫した。7日後、EAEをフロイント完全アジュバント(CFA)中の150μgMOG35〜55で皮下投与により、500ng百日咳毒素(PT)で腹腔内投与により誘導した。PT(500ng)は2日後にも腹腔内投与された。疾病指標及び平均疾病スコアを、図9に示したように計算した(1グループにつきn=6)。
【図14】MOG及びFHAで免疫されたマウス由来のCD4+T細胞が、レシピエントマウス内に移植後、EAEに対する防御を提供することを示すグラフである。ドナーマウスは0及び21日目に、MOG(50μg)、MOG(50μg)及びFHA(5μg)、又はMOG(50μg)及びCpG(25μg)のいずれかの2回の皮下注射を受けた。2度目の免疫から7日後、脾細胞を回収して精製し、R&D Systems製のCD4+T細胞精製カラムを使用して、CD4+T細胞を精製した。レシピエントマウスは、EAE誘導から7日後、MOG、MOG及びFHA、又はMOG及びCpGで免疫されたマウスから0.9×106CD4+T細胞を静脈内に受容した。コントロールマウスは細胞を受容しなかった。EAEが誘導され、発症日に疾病スコア(図15B)及び疾病指標(図14A)を、図9(1グループにつきn=8)に説明したように計算した。
【図15】FHAの単独投与による治療で、EAEの臨床徴候が減少したことを示すグラフである。フロイント完全アジュバント(CFA)中の150μgMOG35〜55を皮下免疫し、500ng百日咳毒素(PT)を腹腔内投与したC57BL/6マウスの疾病指標を示す。2日目に再度、百日咳毒素(PT)を腹腔内投与した。9日目に、マウスに5μgFHAを1回皮下注射した。疾病指標(図16A)及び疾病スコア(図16B)は、図9に説明したように計算した。
【図16】FHA及びタイプIIコラーゲンによる免疫で、マウスのコラーゲン誘導関節炎の発症が抑制されることを示すグラフである。雄DBA/1マウスを0及び21日目に、タイプIIコラーゲン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)及びFHA、又はコラーゲン及びFHAのいずれかで免疫した。7日後、フロイント完全アジュバント(CFA)中のタイプIIコラーゲンの皮内注射により関節炎を誘導した。21日後、マウスをPBS中のコラーゲンの静脈内注射で追加免疫した。疾病の過程を40日間監視した。以下のスコアに従って、マウスを毎日評点した。0−正常、1−紅斑、2−紅斑及び膨潤、3−機能損失。各マウスの4つの足全てのスコアを加算しグループの平均を計算して(1グループにつきn=6)、関節の指標を算出した。
【図17】マウス大腸炎モデルにおける腸の炎症の発生に対するFHAの皮下投与の効果を示すグラフである。SCIDマウスの3グループに、1×105個のCD4+CD45RBhighT細胞を腹腔内注射した。マウスの1グループは2週間毎にPBSが皮下注射され、マウスの他の1グループは2週間毎に10μgFHAが皮下注射され、マウスの第3グループは0日目に4×105個のCD4+CD45RBlowT細胞が腹腔内注射された(図17A)。体重を1週間に2度記録した。FHAによる処理、又はCD4+CD45RBlowT細胞の注射により、CD4+CD45RBhighT細胞の注射により誘導された消耗性疾患が有意に減少した(各々、単一因子ANOVA、CI95%を用いたときP<0.01及びP<0.0001)(図17B)。実験の終わりに(56日目)、大腸の重量及び長さを計測した。**は、PBS処理マウスと比較して統計的に有意な差を示す(P<0.01)。CD45RBhi細胞の投与はSCIDマウスにおいて体重低下を伴う重篤な腸炎症の発生と関連していた。CD45RBlow細胞の移入は、炎症及び体重低下を防いだ。FHAによる皮下治療は、炎症及び体重低下を防いだ。FHA処理マウスでは、未処理のコントロールCD45RBhi移入マウスと比較して腸炎症が顕著な減少し、大腸重量及び大腸収縮が有意に(P<0.01)低下した。
【図18】FHAが大腸の炎症を防ぐことができるという組織学的証拠を示す顕微鏡写真である。大腸炎を誘導させ、マウスを図17に説明したように処理した。56日目に大腸を切除し、切片を作成し、マウントしてH&Eで染色した。A)1×105個のCD45RBhighT細胞を腹腔内注射し、0日目から2週間毎にPBSを注射したSCIDマウス。B)1×105個のCD45RBhigh及び4×105個のCD45RBlowT細胞を0日目に皮内注射したSCIDマウス。C)1×105個のCD45RBhighナイーブT細胞を腹腔内注射し、2週間毎にFHAを皮下注射したSCIDマウス。
【図19】FHAが実験的大腸炎モデルにて大腸の炎症を有意に減少させたことを示すグラフである。大腸炎を誘発させ、マウスを図18に説明したように処理した。大腸を異なる炎症特徴について0〜4のスケールで評点した。PBS処理マウスと比較して、統計的に有意な差異が見られる。*P<0.05及び**P<0.01。
【図20】マウスのT細胞介在性大腸炎の誘導に対するFHAの保護効果における、T細胞誘導IL−10の役割を示すグラフである。以下のように、4つの実験グループを用いた。グループ1:1×105個のCD45RBhighT細胞を注射したSCIDマウス、未処理グループ2:1×105個のCD45RBhigh及び4×105個のCD45RBlowT細胞を注射したSCIDマウスグループ3:1×105個のCD45RBhighT細胞を注射し、2週間毎に10μgFHAで皮下処理したSCIDマウスグループ4:1×105個のIL−10欠損CD45RBhighT細胞を注射し、2週間毎に10μgFHAで皮下処理したSCIDマウス (A)体重を1週間に2度記録した。(B)実験の終わりに(56日目)、大腸を切除して組織学的検査のために準備し、異なる炎症特徴について0〜4のスケールで評点した。PBS処理マウスと比較して、統計的に有意な差異が見られる。*P<0.05及び***P<0.001。
【図21】CD4+CD45RBhigh細胞を注射し、かつFHA処理したSCIDマウスの脾細胞によるIL−10産生の増大を示すグラフである。図20に説明したように、マウスの4つの実験グループを用いた。処理から8週間後、マウスの4グループから脾細胞を回収した。FACS法を使用して脾細胞塊からCD4+T細胞を精製した。未分離の脾細胞、又は精製したCD4+T細胞を、抗CD3及び抗CD28で刺激した。2度目の刺激から2日後、回収した上清中のIL−10濃度を測定した。結果は3つの培養物についての平均+/−SDである。この結果では、FHA処理マウスからの脾臓T細胞(p<0.05)及び精製CD4+T細胞によるIL−10産生の有意な増大が見られる(統計的に有意ではない)。
【図22】CD4+CD45RBhigh細胞を注射したFHA処理マウスの脾細胞による、プロ炎症性サイトカイン産生の低下を示すグラフである。CD4+CD45RBhigh細胞の注射、及び図20にて説明した処理を行った8週間後、SCIDマウスから脾細胞を回収した。脾細胞を抗CD3及び抗CD28で刺激した。2度目の刺激から2日後、回収した上清中のIFN−γ(A)、TNF−γ(B)、IL−4(C)及びIL−5(D)濃度を測定した。この結果では、脾臓T細胞によるIFN−γ及びIL−5産生の有意な抑制(p<0.05)が見られる。結果は3つの培養物についての平均+/−SDである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫介在性疾患の予防及び/又は治療のための、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤の使用。
【請求項2】
自己免疫疾患の予防及び/又は治療のための、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤の使用。
【請求項3】
繊維状血球凝集素(FHA)は、百日咳菌(Bordetella pertussis若しくはBordetella bronchisepetica)若しくはパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、又は他の細菌からの関連分子に由来する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
上記薬剤が、FHA若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
上記薬剤が、FHAと、自己抗原若しくは外来抗原、又はそれらのペプチドとの組合せを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
上記薬剤が自己抗原に応答したTr細胞の生成を促進する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
FHAが、インビボで、共投与された自己抗原又は外来抗原に対するTr細胞の誘導を促進するように免疫調節剤として作用する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
上記自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、並びに動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、並びに変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
上記移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
上記自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項4〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
上記ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
上記ミエリン塩基性タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
上記ミエリン塩基性タンパク質はMOGペプチド(35〜55)である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
上記薬剤がプロ炎症性サイトカインの産生を調節する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
上記薬剤が抗炎症性サイトカインの誘導を促進する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
先天性免疫システムに関与する細胞に対するFHAの免疫調節効果が、トル様受容体リガンドとの同時活性化によって向上される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
上記トル様受容体リガンドは、LPS、又はCpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysから選択される任意の一つ又はそれ以上である別のトル様受容体リガンドである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
FHAが、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10及びTGF−βの産生を促進する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
FHAが、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−6の産生を促進する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
FHAが、LPSと相乗作用して、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10、TGF−β及びIL−6の産生を促進する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
FHAが、TGFβのmRNAの発現を誘導する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
FHAが、炎症性サイトカイン、炎症性ケモカイン、又は他の炎症性メディエータを抑制する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
上記炎症性サイトカインは、TNF−α、IFN−γ、IL−2、IL−12、IL−1、IL−23及びIL−27のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
上記炎症性ケモカインは、マクロファージ炎症性タンパク質−1α又はマクロファージ炎症性タンパク質−1βである、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
FHAが、樹状細胞が亜成熟の表現型に成熟することを促進する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
FHAが、TLR−リガンドとの同時活性化の後に樹状細胞の成熟を促進する、請求項1〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
FHAが、TLR−リガンドにより誘導された樹状細胞の活性化を抑制する、請求項1〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
FHAが実質的にエンドトキシンを含まない、請求項1〜27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
FHAが、免疫調節剤、アジュバント、免疫治療薬、又は抗炎症薬の形態である、請求項1〜28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
上記薬剤が感染又は外傷によって誘導される炎症性サイトカインの産生を調節する、請求項1〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
上記免疫介在性疾患は、敗血症、又は感染、外傷若しくは損傷によって惹起される急性炎症である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
上記免疫介在性疾患は多発性硬化症である、請求項1〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
上記免疫介在性疾患は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ及び乾癬のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
上記免疫介在性疾患は大腸炎である、請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用
【請求項35】
上記免疫介在性疾患は喘息又はアトピー性疾患である、請求項1〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
上記薬剤が、経口、鼻腔内、静脈内、経皮、皮下又は筋内投与用の形態である、請求項1〜35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
上記薬剤の反復投与を含む、請求項1〜36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと抗原との組合せを含み、該抗原は、自己抗原及び外来抗原から選択される製品。
【請求項39】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンドとの組合せを含む製品。
【請求項40】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンド及び自己抗原との組合せを含む製品。
【請求項41】
上記TLRリガンドは薬剤的に許容されるTLRリガンドである、請求項39又は40に記載の製品。
【請求項42】
上記TLRリガンドは、CpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項39〜41のいずれか一項に記載の製品。
【請求項43】
FHAは、その誘導体、変異体、変異体若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む、請求項38〜42のいずれか一項に記載の製品。
【請求項44】
上記自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、並びに動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、並びに変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項38〜43のいずれか一項に記載の製品。
【請求項45】
上記移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む、請求項44に記載の製品。
【請求項46】
上記自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項38〜45のいずれか一項に記載の製品。
【請求項47】
上記ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである、請求項46に記載の製品。
【請求項48】
上記ミエリン塩基性タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドである、請求項47に記載の製品。
【請求項49】
上記ミエリン塩基性タンパク質はMOGペプチド(35〜55)である、請求項48に記載の製品。
【請求項50】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む医薬組成物。
【請求項51】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを、自己抗原又は外来抗原による免疫のためのアジュバントとして含む医薬組成物。
【請求項52】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと抗原との組合せを含み、該抗原は、自己抗原及び外来抗原から選択される医薬組成物。
【請求項53】
FHAは、その誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む、請求項50〜52のいずれか一項に記載の製品。
【請求項54】
上記自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、並びに動物性抗原としてのホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、並びに変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項51〜53のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
上記移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
上記自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項51〜55のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
上記ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
上記ミエリン塩基性タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
上記ミエリン塩基性タンパク質はMOGペプチド(35〜55)である、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンドとの組合せを含む医薬組成物。
【請求項61】
上記TLRリガンドは薬剤的に許容されるTLRリガンドである、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む、免疫調節剤。
【請求項63】
免疫調節効果を有する、組み換えFHA。
【請求項64】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含むワクチン。
【請求項65】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、抗原とを含む、請求項64に記載のワクチン。
【請求項66】
FHA及び抗原が、0.01:1〜100:1の範囲内の重量比で存在する、請求項65に記載のワクチン。
【請求項67】
FHA及び抗原が、1:10〜10:1の範囲内のモル比で存在する、請求項65に記載のワクチン。
【請求項68】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドに対する抗体。
【請求項69】
実質的に純粋なFHA製剤を調製する方法であって、FHA製剤を透析してタンパク質を変性させ、混入エンドトキシンを露出させるステップと、残留した混入エンドトキシンを除去するステップとを含む方法。
【請求項70】
上記混入エンドトキシンはLPSである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
上記エンドトキシンが洗浄剤を使用して除去される、請求項69又は70に記載の方法。
【請求項72】
精製カラムを充填し、
透析されたFHA製剤を加え、
洗浄剤で洗浄し、
実質的に純粋なタンパク質を溶出するステップを含む、請求項69〜71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤を投与するステップを含む、免疫介在性疾患の予防及び/又は治療方法。
【請求項74】
繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤を投与するステップを含む、自己免疫疾患の予防及び/又は治療方法。
【請求項75】
繊維状血球凝集素(FHA)は、百日咳菌(Bordetella pertussis若しくはBordetella bronchisepetica)若しくはパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、又は他の細菌の関連分子に由来する、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
上記薬剤が、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む、請求項73〜75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
上記薬剤が、FHAと、自己抗原若しくは外来抗原、又はそれらのペプチドとの組合せを含む、請求項73〜76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
上記薬剤が自己抗原に応答したTr細胞の生成を促進する、請求項73〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
FHAが、インビボで、共投与された自己抗原又は外来抗原に対するTr細胞の誘導を促進するように免疫調節剤として作用する、請求項73〜78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
上記自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、並びに動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、並びに変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項76〜79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
上記移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
上記自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン、並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項76〜81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
上記ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
上記ミエリン塩基性タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
ミエリン塩基性タンパク質はMOGペプチド(35〜55)である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
上記薬剤がプロ炎症性サイトカインの産生を調節する、請求項73〜85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
上記薬剤が抗炎症性サイトカインの誘導を促進する、請求項73〜86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
先天性免疫システムに関与する細胞に対するFHAの免疫調節効果が、トル様受容体リガンドとの同時活性化によって向上される、請求項73〜87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
上記トル様受容体リガンドは、LPS、又はCpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysから選択される任意の一つ又はそれ以上である別のトル様受容体リガンドである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
FHAが、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10及びTGF−βの産生を促進する、請求項73〜89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
FHAが、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−6の産生を促進する、請求項73〜90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
FHAが、LPSと相乗作用して、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10、TGFβ及びIL−6の産生を促進する、請求項73〜91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
FHAが、TGFβのmRNAの発現を誘導する、請求項73〜92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
FHAが、炎症性サイトカイン、炎症性ケモカイン、又は他の炎症性メディエータを抑制する、請求項73〜93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
上記炎症性サイトカインは、TNF−α、IFN−γ、IL−2、IL−12、IL−1、IL−23及びIL−27のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
上記炎症性ケモカインは、マクロファージ炎症性タンパク質−1α、又はマクロファージ炎症性タンパク質−1βである、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
FHAが、樹状細胞が亜成熟の表現型に成熟することを促進する、請求項73〜96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
FHAが、TLR−リガンドとの同時活性化の後に樹状細胞の成熟を促進する、請求項73〜97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
FHAが、TLR−リガンドにより誘導された樹状細胞の活性化を抑制する、請求項73〜98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
FHAが実質的にエンドトキシンを含まない、請求項73〜99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
FHAが、免疫調節剤、アジュバント、免疫治療薬、又は抗炎症薬の形態である、請求項73〜100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
上記薬剤が、感染又は外傷によって誘導される炎症性サイトカインの産生を調節する、請求項73〜101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
上記免疫介在性疾患は、敗血症、又は感染、外傷又は損傷によって惹起される急性炎症である、請求項73〜102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
上記免疫介在性疾患は多発性硬化症である、請求項73〜103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
上記免疫介在性疾患は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ及び乾癬のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項73〜104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
上記免疫介在性疾患は大腸炎である、請求項73〜105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
上記免疫介在性疾患は、喘息又はアトピー性疾患である、請求項73〜106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
上記薬剤は、経口、鼻腔内、静脈内、経皮、皮下又は筋内投与用の形態である、請求項73〜107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
上記薬剤の反復投与を含む、請求項108に記載の方法。
【請求項1】
免疫介在性疾患の予防及び/又は治療のための、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤の使用。
【請求項2】
自己免疫疾患の予防及び/又は治療のための、繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤の使用。
【請求項3】
繊維状血球凝集素(FHA)は、百日咳菌(Bordetella pertussis若しくはBordetella bronchisepetica)若しくはパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、又は他の細菌からの関連分子に由来する、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
上記薬剤が、FHA若しくはその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
上記薬剤が、FHAと、自己抗原若しくは外来抗原、又はそれらのペプチドとの組合せを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
上記薬剤が自己抗原に応答したTr細胞の生成を促進する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
FHAが、インビボで、共投与された自己抗原又は外来抗原に対するTr細胞の誘導を促進するように免疫調節剤として作用する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
上記自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、並びに動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、並びに変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項4〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
上記移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
上記自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項4〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
上記ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
上記ミエリン塩基性タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
上記ミエリン塩基性タンパク質はMOGペプチド(35〜55)である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
上記薬剤がプロ炎症性サイトカインの産生を調節する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
上記薬剤が抗炎症性サイトカインの誘導を促進する、請求項1〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
先天性免疫システムに関与する細胞に対するFHAの免疫調節効果が、トル様受容体リガンドとの同時活性化によって向上される、請求項1〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
上記トル様受容体リガンドは、LPS、又はCpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysから選択される任意の一つ又はそれ以上である別のトル様受容体リガンドである、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
FHAが、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10及びTGF−βの産生を促進する、請求項1〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
FHAが、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−6の産生を促進する、請求項1〜18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
FHAが、LPSと相乗作用して、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10、TGF−β及びIL−6の産生を促進する、請求項1〜19のいずれか一項に記載の使用。
【請求項21】
FHAが、TGFβのmRNAの発現を誘導する、請求項1〜20のいずれか一項に記載の使用。
【請求項22】
FHAが、炎症性サイトカイン、炎症性ケモカイン、又は他の炎症性メディエータを抑制する、請求項1〜21のいずれか一項に記載の使用。
【請求項23】
上記炎症性サイトカインは、TNF−α、IFN−γ、IL−2、IL−12、IL−1、IL−23及びIL−27のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項22に記載の使用。
【請求項24】
上記炎症性ケモカインは、マクロファージ炎症性タンパク質−1α又はマクロファージ炎症性タンパク質−1βである、請求項22に記載の使用。
【請求項25】
FHAが、樹状細胞が亜成熟の表現型に成熟することを促進する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の使用。
【請求項26】
FHAが、TLR−リガンドとの同時活性化の後に樹状細胞の成熟を促進する、請求項1〜25のいずれか一項に記載の使用。
【請求項27】
FHAが、TLR−リガンドにより誘導された樹状細胞の活性化を抑制する、請求項1〜26のいずれか一項に記載の使用。
【請求項28】
FHAが実質的にエンドトキシンを含まない、請求項1〜27のいずれか一項に記載の使用。
【請求項29】
FHAが、免疫調節剤、アジュバント、免疫治療薬、又は抗炎症薬の形態である、請求項1〜28のいずれか一項に記載の使用。
【請求項30】
上記薬剤が感染又は外傷によって誘導される炎症性サイトカインの産生を調節する、請求項1〜29のいずれか一項に記載の使用。
【請求項31】
上記免疫介在性疾患は、敗血症、又は感染、外傷若しくは損傷によって惹起される急性炎症である、請求項1〜30のいずれか一項に記載の使用。
【請求項32】
上記免疫介在性疾患は多発性硬化症である、請求項1〜31のいずれか一項に記載の使用。
【請求項33】
上記免疫介在性疾患は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ及び乾癬のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項1〜32のいずれか一項に記載の使用。
【請求項34】
上記免疫介在性疾患は大腸炎である、請求項1〜33のいずれか一項に記載の使用
【請求項35】
上記免疫介在性疾患は喘息又はアトピー性疾患である、請求項1〜34のいずれか一項に記載の使用。
【請求項36】
上記薬剤が、経口、鼻腔内、静脈内、経皮、皮下又は筋内投与用の形態である、請求項1〜35のいずれか一項に記載の使用。
【請求項37】
上記薬剤の反復投与を含む、請求項1〜36のいずれか一項に記載の使用。
【請求項38】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと抗原との組合せを含み、該抗原は、自己抗原及び外来抗原から選択される製品。
【請求項39】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンドとの組合せを含む製品。
【請求項40】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンド及び自己抗原との組合せを含む製品。
【請求項41】
上記TLRリガンドは薬剤的に許容されるTLRリガンドである、請求項39又は40に記載の製品。
【請求項42】
上記TLRリガンドは、CpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項39〜41のいずれか一項に記載の製品。
【請求項43】
FHAは、その誘導体、変異体、変異体若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む、請求項38〜42のいずれか一項に記載の製品。
【請求項44】
上記自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、並びに動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、並びに変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項38〜43のいずれか一項に記載の製品。
【請求項45】
上記移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む、請求項44に記載の製品。
【請求項46】
上記自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項38〜45のいずれか一項に記載の製品。
【請求項47】
上記ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである、請求項46に記載の製品。
【請求項48】
上記ミエリン塩基性タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドである、請求項47に記載の製品。
【請求項49】
上記ミエリン塩基性タンパク質はMOGペプチド(35〜55)である、請求項48に記載の製品。
【請求項50】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む医薬組成物。
【請求項51】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを、自己抗原又は外来抗原による免疫のためのアジュバントとして含む医薬組成物。
【請求項52】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと抗原との組合せを含み、該抗原は、自己抗原及び外来抗原から選択される医薬組成物。
【請求項53】
FHAは、その誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む、請求項50〜52のいずれか一項に記載の製品。
【請求項54】
上記自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、並びに動物性抗原としてのホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、並びに変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項51〜53のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項55】
上記移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む、請求項54に記載の医薬組成物。
【請求項56】
上記自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項51〜55のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項57】
上記ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである、請求項56に記載の医薬組成物。
【請求項58】
上記ミエリン塩基性タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドである、請求項57に記載の医薬組成物。
【請求項59】
上記ミエリン塩基性タンパク質はMOGペプチド(35〜55)である、請求項58に記載の医薬組成物。
【請求項60】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、TLRリガンドとの組合せを含む医薬組成物。
【請求項61】
上記TLRリガンドは薬剤的に許容されるTLRリガンドである、請求項60に記載の医薬組成物。
【請求項62】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む、免疫調節剤。
【請求項63】
免疫調節効果を有する、組み換えFHA。
【請求項64】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含むワクチン。
【請求項65】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドと、抗原とを含む、請求項64に記載のワクチン。
【請求項66】
FHA及び抗原が、0.01:1〜100:1の範囲内の重量比で存在する、請求項65に記載のワクチン。
【請求項67】
FHA及び抗原が、1:10〜10:1の範囲内のモル比で存在する、請求項65に記載のワクチン。
【請求項68】
FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドに対する抗体。
【請求項69】
実質的に純粋なFHA製剤を調製する方法であって、FHA製剤を透析してタンパク質を変性させ、混入エンドトキシンを露出させるステップと、残留した混入エンドトキシンを除去するステップとを含む方法。
【請求項70】
上記混入エンドトキシンはLPSである、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
上記エンドトキシンが洗浄剤を使用して除去される、請求項69又は70に記載の方法。
【請求項72】
精製カラムを充填し、
透析されたFHA製剤を加え、
洗浄剤で洗浄し、
実質的に純粋なタンパク質を溶出するステップを含む、請求項69〜71のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤を投与するステップを含む、免疫介在性疾患の予防及び/又は治療方法。
【請求項74】
繊維状血球凝集素(FHA)、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチドを含む薬剤を投与するステップを含む、自己免疫疾患の予防及び/又は治療方法。
【請求項75】
繊維状血球凝集素(FHA)は、百日咳菌(Bordetella pertussis若しくはBordetella bronchisepetica)若しくはパラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)、又は他の細菌の関連分子に由来する、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
上記薬剤が、FHA、又はその誘導体、変異体、断片、変種若しくはそれらのペプチド、又はそれらの物質によって活性化された細胞から産生される物質を含む、請求項73〜75のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
上記薬剤が、FHAと、自己抗原若しくは外来抗原、又はそれらのペプチドとの組合せを含む、請求項73〜76のいずれか一項に記載の方法。
【請求項78】
上記薬剤が自己抗原に応答したTr細胞の生成を促進する、請求項73〜77のいずれか一項に記載の方法。
【請求項79】
FHAが、インビボで、共投与された自己抗原又は外来抗原に対するTr細胞の誘導を促進するように免疫調節剤として作用する、請求項73〜78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
上記自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ65(GAD65)、自己のDNA、ミエリン塩基性タンパク質、ミエリンプロテオリピドタンパク質、アセチルコリン受容体の構成要素、チログロブリン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体、杉花粉抗原、ブタクサ花粉抗原、ホソムギ花粉抗原、並びに動物性抗原としてホコリダニ抗原及びネコ抗原、組織適合抗原、移植拒絶反応に関与する抗原、並びに変異したペプチドのリガンドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項76〜79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
上記移植拒絶反応に関与する抗原は、レシピエントの心臓、肺、肝臓、膵臓、腎臓内に移植されるべきグラフトの抗原性成分、及び神経グラフトの成分を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
上記自己抗原は、ミエリンタンパク質、βアミロイドタンパク質、アミロイド前駆体タンパク質、及びコラーゲン、並びにそれらのペプチドのうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項76〜81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
上記ミエリンタンパク質はミエリン塩基性タンパク質又はそのペプチドである、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
上記ミエリン塩基性タンパク質はミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質合成ペプチドである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
ミエリン塩基性タンパク質はMOGペプチド(35〜55)である、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
上記薬剤がプロ炎症性サイトカインの産生を調節する、請求項73〜85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
上記薬剤が抗炎症性サイトカインの誘導を促進する、請求項73〜86のいずれか一項に記載の方法。
【請求項88】
先天性免疫システムに関与する細胞に対するFHAの免疫調節効果が、トル様受容体リガンドとの同時活性化によって向上される、請求項73〜87のいずれか一項に記載の方法。
【請求項89】
上記トル様受容体リガンドは、LPS、又はCpGモチーフ、dsRNA、Poly(I:C)及びPam3Cysから選択される任意の一つ又はそれ以上である別のトル様受容体リガンドである、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
FHAが、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10及びTGF−βの産生を促進する、請求項73〜89のいずれか一項に記載の方法。
【請求項91】
FHAが、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−6の産生を促進する、請求項73〜90のいずれか一項に記載の方法。
【請求項92】
FHAが、LPSと相乗作用して、マクロファージ及び樹状細胞によるIL−10、TGFβ及びIL−6の産生を促進する、請求項73〜91のいずれか一項に記載の方法。
【請求項93】
FHAが、TGFβのmRNAの発現を誘導する、請求項73〜92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
FHAが、炎症性サイトカイン、炎症性ケモカイン、又は他の炎症性メディエータを抑制する、請求項73〜93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
上記炎症性サイトカインは、TNF−α、IFN−γ、IL−2、IL−12、IL−1、IL−23及びIL−27のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
上記炎症性ケモカインは、マクロファージ炎症性タンパク質−1α、又はマクロファージ炎症性タンパク質−1βである、請求項94に記載の方法。
【請求項97】
FHAが、樹状細胞が亜成熟の表現型に成熟することを促進する、請求項73〜96のいずれか一項に記載の方法。
【請求項98】
FHAが、TLR−リガンドとの同時活性化の後に樹状細胞の成熟を促進する、請求項73〜97のいずれか一項に記載の方法。
【請求項99】
FHAが、TLR−リガンドにより誘導された樹状細胞の活性化を抑制する、請求項73〜98のいずれか一項に記載の方法。
【請求項100】
FHAが実質的にエンドトキシンを含まない、請求項73〜99のいずれか一項に記載の方法。
【請求項101】
FHAが、免疫調節剤、アジュバント、免疫治療薬、又は抗炎症薬の形態である、請求項73〜100のいずれか一項に記載の方法。
【請求項102】
上記薬剤が、感染又は外傷によって誘導される炎症性サイトカインの産生を調節する、請求項73〜101のいずれか一項に記載の方法。
【請求項103】
上記免疫介在性疾患は、敗血症、又は感染、外傷又は損傷によって惹起される急性炎症である、請求項73〜102のいずれか一項に記載の方法。
【請求項104】
上記免疫介在性疾患は多発性硬化症である、請求項73〜103のいずれか一項に記載の方法。
【請求項105】
上記免疫介在性疾患は、多発性硬化症、クローン病、炎症性腸疾患、1型糖尿病、関節リウマチ及び乾癬のうちから選択される任意の一つ又はそれ以上である、請求項73〜104のいずれか一項に記載の方法。
【請求項106】
上記免疫介在性疾患は大腸炎である、請求項73〜105のいずれか一項に記載の方法。
【請求項107】
上記免疫介在性疾患は、喘息又はアトピー性疾患である、請求項73〜106のいずれか一項に記載の方法。
【請求項108】
上記薬剤は、経口、鼻腔内、静脈内、経皮、皮下又は筋内投与用の形態である、請求項73〜107のいずれか一項に記載の方法。
【請求項109】
上記薬剤の反復投与を含む、請求項108に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公表番号】特表2007−508368(P2007−508368A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534903(P2006−534903)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【国際出願番号】PCT/IE2004/000139
【国際公開番号】WO2005/034983
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【国際出願番号】PCT/IE2004/000139
【国際公開番号】WO2005/034983
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(599049945)ザ・プロウボウスト・フェロウズ・アンド・スカラーズ・オブ・ザ・カレッジ・オブ・ザ・ホリー・アンド・アンデバイデッド・トリニティ・オブ・クイーン・エリザベス・ニア・ダブリン (9)
【氏名又は名称原語表記】The Provost Fellows and Scholars of the College of the Holy and Undivided Trinity of Queen Elizabeth Near Dublin
【Fターム(参考)】
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