説明

免疫原性組成物に使用するための生分解性ポリマーおよびカチオン性多糖を含むミクロ粒子

生分解性ポリマーをさらに含むミクロ粒子を含有する免疫原性組成物を本明細書に記載する。ミクロ粒子組成物はまた、カチオン性多糖、および抗原、免疫アジュバントおよびそれらの組合せから選択される免疫学的種を含む。また、そのような組成物を作製する方法およびそのような組成物を投与する方法を記載する。ミクロ粒子からの免疫学的種の放出速度を調節する方法も説明する。これらの方法は、ミクロ粒子内のカチオン性多糖対生分解性ポリマーの比率を変化させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の陳述)
この出願は、2006年2月24日に出願された米国仮特許出願第60/776,757号(これは、その全体が参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
微粒子担体は、適切な免疫応答を惹起することを目的として吸着または封入された抗原と共に使用されてきた。そのような担体は、選択された抗原の多数のコピーを免疫系に提示し、局所リンパ節における抗原の捕捉および保持を促進すると考えられている。粒子はマクロファージによって貪食され、サイトカイン放出を通して抗原提示を増強し得る。
【0003】
例えば、所有者が共通の特許文献1および同時係属中の特許文献2は、細胞媒介性免疫応答を含む、免疫応答を刺激するための抗原吸着および抗原封入ミクロ粒子の使用、ならびにミクロ粒子を作製する方法を述べている。ミクロ粒子を形成するために使用されるポリマーは、ポリ(ラクチド)およびポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)を含む。
【0004】
所有者が共通の特許文献3および特許文献4および特許文献5は、ポリヌクレオチドおよびポリペプチド抗原を含む、吸着された高分子を有するミクロ粒子を作製する方法を開示する。ミクロ粒子は、例えばポリ(α−ヒドロキシ酸)(例えばPLG、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物等)などのポリマーを含み、例えばカチオン性、アニオン性または非イオン性界面活性剤を使用して形成される。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するPLGミクロ粒子などの、アニオン性界面活性剤を含むミクロ粒子は、ポリペプチドなどの正に荷電した高分子の使用のために記述されている。CTAB(セトリミドまたは臭化セチルトリメチルアンモニウムとしても知られる)を有するPLGミクロ粒子などの、カチオン性界面活性剤を含むミクロ粒子は、DNAなどの負に荷電した高分子の使用に関して記述されている。細胞媒介性免疫応答を含む、免疫応答を刺激するためのそのようなミクロ粒子の使用も開示されている。
【特許文献1】国際公開第98/33487号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2003/0049298号明細書
【特許文献3】国際公開第00/06123号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/36599号パンフレット
【特許文献5】米国特許第6,884,435号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(要旨)
1つの態様では、本発明は、生分解性ポリマーをさらに含むミクロ粒子を含有する免疫原性組成物を提供する。ミクロ粒子組成物はまた、カチオン性多糖および抗原、免疫アジュバントおよびそれらの組合せから選択される免疫学的種を含む。
【0006】
一部の実施形態では、免疫学的種はミクロ粒子に吸着される。これらの実施形態では、カチオン性多糖対生分解性ポリマーの重量比は、例えば、特に0.0005:1−0.001:1−0.0025:1−0.005:1−0.01:1−0.025:1−0.05:1の範囲で変化し得る。免疫学的種対生分解性ポリマーの重量比も、例えば、特に0.0005:1−0.001:1−0.0025:1−0.005:1−0.01:1−0.025:1−0.05:1の範囲で変化し得る。
【0007】
一部の実施形態では、免疫学的種はミクロ粒子内に封入されている。これらの実施形態では、カチオン性多糖対生分解性ポリマーの重量比は、例えば、特に0.00005:1−0.0001:1−0.00025:1−0.0005:1−0.0025:1−0.005:1の範囲で変化し得る。カチオン性多糖対前記免疫学的種の重量比も、例えば、特に0.0001:1−0.00025:1−0.0005:1−0.001:1−0.0025:1−0.005:1−0.01:1の範囲で変化し得る。
【0008】
ミクロ粒子の平均粒径は、例えばD(v,0.5)粒径で0.1−50ミクロン、より典型的には0.5−10ミクロンの範囲で広く変化し得る。
【0009】
本発明の組成物が2つの抗原、2つの免疫アジュバント、または1つの抗原と1つの免疫アジュバントを含む場合、それらは、例えば(a)両方が同じ集団のミクロ粒子に吸着されている、(b)各々が別々の集団のミクロ粒子に吸着されている、(c)1つがミクロ粒子に吸着または封入されており、他方が溶液中に存在する、(d)1つがミクロ粒子に吸着されており、他方が同じ集団のミクロ粒子内に封入されている、(e)1つが第一集団のミクロ粒子に吸着されており、他方が第二集団のミクロ粒子内に封入されている、(f)両方が同じ集団のミクロ粒子内に封入されている、(g)各々が別々の集団のミクロ粒子内に封入されている、等であり得る。
【0010】
ある実施形態では、カチオン性多糖は、アミン置換カチオン性多糖、例えば、特にD−グルコサミンモノマー単位を含有するものを含む。カチオン性多糖の具体例は、特に、無作為に分布するβ−(1−4)連結D−グルコサミンおよびN−アセチル−D−グルコサミンモノマー単位を含有するポリマー鎖を含むもの、例えばキトサンを包含する。
【0011】
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は、例えば、特にポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノンおよびポリバレロラクトンを含むポリラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリシアノアクリレート、チロシン由来のポリカーボネートまたはポリエステル−アミド、およびそれらの組合せから選択される、合成生分解性ポリマーを含む。ある実施形態では、ミクロ粒子は、中でも特にポリ(ラクチド)(「PLA」)などのポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLG」)などのラクチドとグリコリドのコポリマー、およびD,L−ラクチドとカプロラクトンのコポリマーから形成される。ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーは、例えば20:80−25:75−40:60−45:55−55:45−60:40−75:25−80:20の範囲のラクチド/グリコリドモル比を有し、および例えば、特に5,000−10,000−20,000−40,000−50,000−70,000−100,000−200,000ダルトンの範囲の分子量を有するものを含む。
【0012】
抗原は、例えばポリペプチド含有抗原、ポリヌクレオチド含有抗原、および糖含有抗原から選択され得る。抗原は、例えば腫瘍細胞およびウイルス、細菌、真菌および寄生生物などの病原体に由来し得る。
【0013】
免疫アジュバントは、例えば、特にCpGオリゴヌクレオチドなどの負に荷電した免疫アジュバントならびにMPL類似体から選択され得る。
【0014】
ある実施形態では、本発明の免疫原性組成物は凍結乾燥組成物である。そのような凍結乾燥組成物は、例えば90重量%またはそれ以上の生分解性ポリマーを含み得る。
【0015】
他の態様では、本発明は、前記のようなミクロ粒子組成物を生産する方法を提供する。カチオン性多糖は、所望生成物に依存して、生産工程で異なる役割を果たし得る。
【0016】
例えば一部の実施形態では、カチオン性多糖は、免疫学的種がミクロ粒子内に容易に封入されることを可能にする、免疫学的種のための複合化剤として使用され得る。それ故これらの実施形態では、キトサンは捕捉剤として働く。これらの実施形態は、以下の工程:(a)生分解性ポリマーと有機溶媒を含む有機相を、水およびカチオン性多糖と免疫学的種の複合体を含む第一水相で乳化し、それによって油中水型乳剤を形成すること;(b)水中油中水型乳剤を形成するために、界面活性剤と水を含む第二水相を、工程(a)で形成された乳剤で乳化すること;および(c)水中油中水型乳剤から有機溶媒を除去し、それによって免疫学的種とカチオン性多糖が封入されたミクロ粒子の懸濁液を提供すること、を含む、ミクロ粒子組成物を生産する方法を含む。
【0017】
他の実施形態では、カチオン性多糖は、最終的に固体ミクロ粒子に変換される(溶媒蒸発後)分散油相を安定化するための、乳剤に基づく処理の間に使用し得る。これらの実施形態は、以下の工程:(a)水、有機溶媒、生分解性ポリマーおよびカチオン性多糖を含む乳剤を提供すること;(b)ミクロ粒子を形成するために乳剤から有機溶媒を除去すること;および(c)免疫学的種をミクロ粒子に吸着させること、を含む、ミクロ粒子組成物を生産する方法を含む。一部の場合には、乳剤は、(a)生分解性ポリマーと有機溶媒を含む有機相を、水を含む第一水相で乳化し、それによって油中水型乳剤を形成すること;および(b)水中油中水型乳剤を形成するために、カチオン性多糖と水を含む第二水相を、工程(a)で形成された乳剤で乳化すること、を含む工程によって形成される、水中油中水型乳剤であり得る。
【0018】
これらの実施形態では、実質的な量のカチオン性多糖がミクロ粒子表面に位置すると考えられる。これは、例えば生じるミクロ粒子が何らかの免疫学的種の吸着前に一般に正のζ電位、例えば5.0−6.5の範囲のpHで+25から+100mVの範囲のζ電位を有するという事実によって実証される。さらに、ミクロ粒子の正電荷は、水性媒質に懸濁したとき懸濁液中にとどまるミクロ粒子の能力を改善すると考えられる。さらい、ミクロ粒子の正電荷は、負に荷電した種を吸着させるミクロ粒子の能力を改善すると考えられる。それ故、これらの実施形態では、キトサンは結合剤として働く。
【0019】
本発明のさらなる他の態様は、ミクロ粒子内の生分解性ポリマーに対するカチオン性多糖界面活性剤の比率を変化させることを含む、前記のようなミクロ粒子組成物からの免疫学的種の放出速度を調節する方法を対象とする。例えば、発明人は、ミクロ粒子内の生分解性ポリマーに対するカチオン性多糖界面活性剤の比率を上昇させることによってある免疫学的種の放出速度が低下することを認めた。
【0020】
本発明の他の実施形態は、ここで述べる免疫原性組成物のいずれかを宿主動物に投与することを含む、宿主動物に免疫学的種を送達する(例えば免疫のため)方法を対象とする。宿主動物は、好ましくは脊椎動物、より好ましくは哺乳動物、さらに一層好ましくはヒトである。
【0021】
本発明の免疫原性組成物の送達は、直接注射(例えば皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内等)を含む、何らかの公知の方法によって実施され得る。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、本発明の組成物を含むキットを提供する。
【0023】
本発明の利点は、CTABなどの他の一般的なカチオン種、キトサン名とのカチオン性多糖に比べて、中でも特に、以下の1またはそれ以上の潜在的可能性を提供することである:(a)より低い毒性、(b)特にポリマーの長さに沿って電荷を有するカチオン性多糖を使用する場合、より高い電荷密度、(c)複合化剤として使用する場合、改善された封入、および(d)粒子安定剤として使用する場合、(i)ミクロ粒子表面とカチオン種のより良好な結合、(ii)免疫学的種の高い吸着、および(iii)吸着された免疫学的種の持続放出。本発明のこれらや他の実施形態、態様および利点は、ここでの開示を考慮して当業者にはより容易に明白となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
(発明の詳細な説明)
本発明の実施は、異なる指示がない限り、当分野の技術範囲内の、化学、高分子化学、生化学、分子生物学、免疫学および薬理学の従来の方法を用いる。そのような手法は文献において詳細に説明されている。例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990);Methods In Enzymology(S.ColowickとN.Kaplan編集、Academic Press,Inc.);Weir,D.M.,Handbook of Experimental Immunology,Vols.I−IV,第5版(Blackwell Publishers,1996);Sambrook,J.ら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,第3版(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2001);Ausubel,F.M.ら、Short Protocols In Molecular Biology,第5版(Current Protocols,2002);Handbook of Surface and Colloidal Chemistry(Birdi,K.S.編集、CRC Press,1997)およびSeymour/Carraher’s Polymer Chemistry,第5版(Marcel Dekker Inc.,2000)参照。
【0025】
上記または下記の、ここで引用するすべての出版物、特許および特許出願は、それらの全体が参照によりここに組み込まれる。
【0026】
本明細書および付属の特許請求の範囲置いて使用するとき、単数形態の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに異なる指示を与えない限り、複数の言及を包含する。それ故例えば、「ミクロ粒子」という用語は、1またはそれ以上のミクロ粒子を指す、等である。
【0027】
異なる記載がない限りまたは文脈が明らかに異なる指示を与えない限り、ここでのすべてのパーセンテージおよび比は重量ベースで示される。
【0028】
A.定義
本発明を説明するとき、以下の用語を使用し、これらは以下で指示するように定義されることが意図されている。
【0029】
ここで使用する「ミクロ粒子」という用語は、直径約10nm−約150μm、より典型的には直径約200nm−約30μm、さらに一層典型的には直径約500nm−約10μmの粒子を指す。本発明のミクロ粒子は、凍結乾燥などの一部の状況下でより大きな塊に凝集し得る。ミクロ粒子は一般に、針および毛細管を閉塞することなく非経口投与または粘膜投与を許容する直径である。ミクロ粒子の大きさは、光子相関分光法、レーザー回折法および/または走査型電子顕微鏡などの、当技術分野で周知の手法によって容易に測定される。「粒子」という用語はまた、ここで定義するミクロ粒子を表わすために使用され得る。
【0030】
粒径は、当技術分野で使用可能な方法を用いて決定(測定)できる。例えば粒径は、光子相関分光法、動的光散乱法または準弾性光散乱法を用いて測定できる。これらの方法はブラウン運動測定から得られる粒子の拡散特性と粒径の相関に基づく。ブラウン運動は、粒子を取り巻く溶媒分子による衝突に起因する粒子のランダムな動きである。粒子が大きいほどブラウン運動はより緩やかである。速度は併進拡散係数(D)によって定義される。測定される数値は、粒子が流体内でどのように運動するか(流体力学直径)を表わす。得られる直径は、粒子と同じ併進拡散係数を有する球体の直径である。
【0031】
粒径はまた、単一時間に溶液中の粒子によって散乱される光の強度を測定する、静的光散乱法を用いて測定することもできる。静的光散乱法は、光強度を散乱角度と溶質濃度の関数として測定する。光源、例えばレーザー光を通過する粒子は、それらの大きさに逆比例する角度で光を散乱させる。大きな粒子は高い強度を有する低散乱角度での回折パターンを生じ、一方小さな粒子は広い角度の低強度シグナルを生じる。試料から散乱される光の強度が角度の関数として測定される場合、粒径分布を算定することができる。粒径分布を算定するために角度情報を散乱モデル(例えばミー理論)と比較する。
【0032】
一般に、粒径は室温で測定され、粒子直径についての平均値を求めるために対象とする試料の多数の分析(例えば同じ試料に関して少なくとも3回の反復測定)を含む。
【0033】
光子相関分光法に関して、Z平均(キュミュラント平均または流体力学直径とも呼ばれる)は、典型的にはキュミュラント(単峰性)分析から算定される。
【0034】
静的光散乱測定に関しては(およびまた光子相関分光法に関しても)、容積に基づくサイズパラメータが測定され得る。例えばD(v,0.5)(vは容積を意味する)は、その数値が、測定したとき、組成物中の粒子の50%(容積ベース)がD(v,0.5)値未満の粒径を有し、および組成物中の粒子の50%がD(v,0.5)値より大きい粒径を有する点と定義されるサイズパラメータである。同様に、D(v,0.9)は、その数値が、組成物中の粒子の90%(容積ベース)がD(v,0.9)値未満の粒径を有し、および組成物中の粒子の10%がD(v,0.9)値より大きい粒径を有する点と定義されるサイズパラメータである。
ここでの使用のためのポリマーミクロ粒子は、典型的には、滅菌可能で、実質的に非毒性であり、生分解性である材料から形成される。そのような材料は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリラクトン(例えばポリカプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、チロシン由来のポリカーボネートまたはポリエステル−アミド、およびポリシアノアクリレート(例えばポリアルキルシアノアクリレートまたは「PACA」)を含む。より典型的には、本発明に関する使用のためのミクロ粒子は、ポリ(α−ヒドロキシ酸)から、例えばポリ(D,L−ラクチド)などのポリ(ラクチド)(「PLA」)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(「PLG」)などのラクチドとグリコリドのコポリマー、またはD,L−ラクチドとカプロラクトンのコポリマーから誘導されるポリマーミクロ粒子である。ポリマーミクロ粒子は、様々な分子量を有し、およびPLGなどのコポリマーの場合は、様々なモノマー(例えばラクチド:グリコリド)比を有する、種々のポリマー出発物質のいずれかから誘導でき、その選択は、一部には同時投与される種に依存するが、主として選択の問題である。これらのパラメータを以下でさらに論じる。
【0035】
ここで使用する「ζ電位」は、全ての固体と液体の界面を横切って存在する電位、例えば荷電したコロイド状粒子を取り巻くイオンの拡散層を横切る電位を指す。ζ電位は、当技術分野で周知の手法を使用して、電気泳動移動度、すなわちコロイド状粒子が、測定する物質と接して位置する帯電電極の間を移動する速度から算定できる。
【0036】
ここで使用する「界面活性剤」という用語は、分散剤、懸濁化剤、乳化安定剤および洗浄剤を包含する。本発明のポリマーミクロ粒子組成物における使用のためのカチオン性界面活性剤は、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウムまたは「CTAB」(例えばセトリミド)、塩化ベンザルコニウム、DDA(臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム)、DOTAP(ジオレオイル−3−トリメチルアンモニウム−プロパン)等を含む。アニオン性界面活性剤は、例えばSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)、DSS(ジスルホスクシネート)、硫酸化脂肪アルコール等を含む。非イオン界面活性剤は、例えばPVA(ポリビニルアルコール)、ポビドン(ポリビニルピロリドンまたはPVPとしても知られる)、ソルビタンエステル、ポリソルベート、ポリオキシエチル化グリコールモノエーテル、ポリオキシエチル化アルキルフェノール、ポロキサマー等を含む。
【0037】
「単糖」は、多価アルコール、すなわちアルデヒド基(この場合単糖はアルドースである)またはケト基(この場合単糖はケトースである)のいずれかをさらに含むアルコールである。単糖は、典型的には3−10個の炭素を含む。さらに、単糖は一般に実験式(CHO)[式中、nは3またはそれ以上の整数、典型的には3−10である]を有する。炭素数3−6のアルドースの例は、グリセルアルデヒド、エリトロース、トレオース、リボース、2−デオキシリボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトースおよびタロースを含む。炭素数3−6のケトースの例は、ジヒドロキシアセトン、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボースおよびタガトースを含む。天然に生じる単糖は、通常はL−形態ではなくD−異性体として認められる。「オリゴ糖」は、比較的短い単糖ポリマー、すなわち2−30の単糖単位を含むものを指す。「多糖」は、オリゴ糖の長さを超える単糖ポリマー(すなわち30単糖単位以上を含むもの)である。さらに、ここで使用する、「多糖」という用語はまた、2またはそれ以上の連結された単糖を含む単糖ポリマーを指す。あいまいさを避けるため、2番目の定義は、矛盾する明白な指示がない限り、常に適用されるものとする。「多糖」という用語はまた、数ある中でも特に、アミノ官能基化およびカルボキシル官能基化多糖誘導体などの多糖誘導体を含む。単糖は、典型的にはグリコシド結合によって連結される。
【0038】
ここで使用する、「糖」という用語は、単糖、オリゴ糖および多糖を包含する。「糖含有種」は、少なくともその一部が糖である分子である。例は、糖抗原、担体ペプチドに結合した糖を含む抗原等を包含する。
【0039】
「ポリヌクレオチド」は核酸ポリマーである。ここで使用する「ポリヌクレオチド」は、わずかに5、6、7または8個のヌクレオチドを含み得る。さらに、「ポリヌクレオチド」は、二本鎖および一本鎖配列の両方を含むことができ、ウイルスからのcDNA、原核生物または真核生物mRNA、ウイルスからのゲノムRNAおよびDNA配列(例えばRNAおよびDNAウイルスおよびレトロウイルス)または原核生物DNA、および合成DNA配列を指すが、これらに限定されない。この用語はまた、DNAおよびRNAの公知の塩基類似体のいずれかを含む配列を包含する。この用語はさらに、例えば核酸分子が抗原タンパク質をコードする場合、天然配列への、欠失、付加および置換(一般に本来は保存的)などの修飾を包含する。これらの修飾は、部位指定突然変異誘発を通してのように、意図的であり得るか、または抗原を産生する宿主の突然変異を通してのように、偶発的であり得る。
【0040】
ここで定義する「オリゴヌクレオチド」は、5−100ヌクレオチド、より好ましくは5−30ヌクレオチドの範囲内の大きさを有するポリヌクレオチドである。
【0041】
ここで使用する、「核酸」という語句は、DNA、RNA、またはそれらから形成されるキメラを指す。
【0042】
「ポリヌクレオチド含有種」は、少なくともその一部がポリヌクレオチドである分子である。例は、RNAベクター構築物、DNAベクター構築物等を含む。
【0043】
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指し、生成物の最小限の長さに限定されない。それ故ペプチド、オリゴペプチド、ダイマー、マルチマー等はこの定義に包含される。完全長タンパク質およびそのフラグメントの両方がこの定義に包含される。これらの用語はまた、例えば、タンパク質が、免疫応答を惹起するまたはタンパク質が投与される被験者に治療作用を及ぼす能力を保持するように、天然配列への、欠失、付加および置換(一般に本来は保存的)などの修飾を含む。
【0044】
「ポリペプチド含有種」は、少なくともその一部がポリペプチドである分子である。例は、ポリペプチド、糖タンパク質を含むタンパク質、輸送タンパク質に結合した糖抗原等を含む。
【0045】
「薬剤」という用語は、抗生物質、抗ウイルス薬、増殖因子、ホルモン、抗原等のような生物学的に活性な化合物を指す。
【0046】
「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫応答を高めるまたは多様化する免疫アジュバントを含むが、これらに限定されない、薬剤の作用を助けるまたは改変する物質を指す。それ故免疫アジュバントは、抗原に対する免疫応答を増強することができる化合物である。免疫アジュバントは、体液性および/または細胞性免疫を増強し得る。
【0047】
「抗原」により、抗原が提示されたとき細胞性抗原特異的免疫応答または体液性抗体応答を生じるように宿主の免疫系を刺激することができる1またはそれ以上のエピトープを含む分子が意味される。抗原は、単独でまたはもう1つ別の分子と組み合わせて存在するとき、細胞性および/または体液性応答を惹起し得ると考えられる。
【0048】
「エピトープ」は、その免疫学的特異性を決定する抗原分子または抗原複合体の部分である。エピトープは本発明の抗原の定義の範囲内である。一般に、エピトープは、天然に生じる抗原ではポリペプチドまたは多糖である。人工抗原では、アルサニル酸誘導体などの低分子量物質であり得る。エピトープは、例えば同種抗体またはTリンパ球と、インビボまたはインビトロで特異的に反応する。選択的記述語は、抗原決定基、抗原構造群およびハプテン群である。
【0049】
しばしば、エピトープは約5−15アミノ酸を含む。所与のタンパク質のエピトープは、当技術分野において周知の多くのエピトープマッピング手法を用いて同定され得る。例えばEpitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,第66巻(Glenn E.Morris編集、1996)Humana Press,Totowa,New Jersey参照。例えば線状エピトープは、例えば固体支持体上でタンパク質分子の部分に対応する多数のペプチドを同時に合成し、ペプチドを支持体に結合したままでペプチドを抗体と反応させることによって決定し得る。そのような手法は当技術分野で公知であり、例えば米国特許第4,708,871号;Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998−4002;Geysenら(1986)Molec.Immunol.23:709−715に述べられている。同様に、立体配座エピトープは、例えばx線結晶学および二次元核磁気共鳴などにより、アミノ酸の空間立体配座を決定することによって容易に同定される。例えばEpitope Mapping Protocols,前出参照。
【0050】
ここで使用する「抗原」という用語は、サブユニット抗原、すなわち抗原が本来結合している生物全体から離れた別個の抗原、ならび死滅、弱毒化または不活性化細菌、ウイルス、寄生生物または他の病原体または腫瘍細胞の両方を表わす。抗イディオタイプ抗体などの抗体またはそのフラグメント、および抗原または抗原決定基を模倣し得る合成ペプチドミモトープも、ここで使用する抗原の定義に包含される。
【0051】
同様に、核酸免疫適用などにおいて、インビボで免疫原性タンパク質または抗原決定基を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドも、ここでの抗原の定義に包含される。
【0052】
さらに、本発明に関して、「抗原」は、そのタンパク質が免疫応答を惹起する能力を保持する限り、天然配列への、欠失、付加および置換(一般に本来は保存的)などの修飾を有するタンパク質を指す。これらの修飾は、部位指定突然変異誘発を通してのように、意図的であり得るか、または抗原を産生する宿主の突然変異を通してのように、偶発的であり得る。
【0053】
抗原または組成物に対する「免疫学的応答」または「免疫応答」は、被験者における、対象組成物中に存在する分子に対する体液性および/または細胞性免疫応答の発現である。本発明に関して、「体液性免疫応答」は、抗体分子によって媒介される免疫応答を指し、一方「細胞性免疫応答」は、Tリンパ球および/または他の白血球によって媒介されるものである。細胞性免疫の1つの重要な態様は、細胞傷害性T細胞(「CTL」)による抗原特異的応答を含む。CTLは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)によってコードされ、細胞の表面で発現されるタンパク質と結合して提示されるペプチド抗原に対して特異性を有する。CTLは、細胞内微生物の細胞内破壊、またはそのような微生物に感染した細胞の溶解を誘導し、促進するのを助ける。細胞性免疫のもう1つの態様は、ヘルパーT細胞による抗原特異的応答を含む。ヘルパーT細胞は、その表面のMHC分子と結合してペプチド抗原を提示する細胞に対する非特異的エフェクター細胞の機能を刺激し、その活性を集中させるのを助けるように働く。「細胞性免疫応答」はまた、CD4+およびCD8+T細胞に由来するものを含む、活性化T細胞および/または他の白血球によって産生されるサイトカイン、ケモカインおよび他のそのような分子の産生を指す。
【0054】
細胞性免疫応答を惹起する免疫原性組成物またはワクチンなどの組成物は、細胞表面でのMHC分子に結合した抗原の提示によって脊椎動物被験者を感作する役割を果たし得る。細胞媒介性免疫応答は、それらの表面で抗原を提示する細胞または細胞の近くに向けられる。加えて、抗原特異的Tリンパ球は、免疫宿主の将来の防御を可能にするために生成され得る。
【0055】
細胞媒介性免疫応答を刺激する特定抗原または組成物の能力は、リンパ球増殖(リンパ球活性化)アッセイ、CTL細胞傷害性細胞アッセイなどの当技術分野で公知の多くのアッセイによって、感作被験者において抗原に特異的なTリンパ球を検定することによって、または抗原による再刺激に応答したT細胞によるサイトカイン産生の測定によって決定され得る。例えばEricksonら(1993)J.Immunol.151:4189−4199;Doeら(1994)Eur.J.Immunol.24:2369−2376);および以下の実施例参照。
【0056】
それ故免疫学的応答は、例えば以下の作用の1またはそれ以上を含み得る:B細胞による抗体の産生;および/またはサプレッサーT細胞および/または対象組成物またはワクチン中に存在する抗原(1またはそれ以上)を特異的に対象とするγδT細胞の活性化。これらの応答は、感染を中和する、および/または免疫宿主への防御を与える抗体−補体または抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する役割を果たし得る。そのような応答は、当技術分野で周知の標準免疫検定法および中和アッセイ、例えば放射免疫測定法およびELISAを用いて測定され得る。
【0057】
本発明の免疫原性組成物は、異なる組成物中の等量の抗原によって惹起される免疫応答より大きな免疫応答を惹起する能力を有するとき、「高い免疫原性」を示す。それ故組成物は、例えば組成物がより強力な免疫応答を生じさせるので、または抗原が投与される被験者において免疫応答を達成するためにより低用量の抗原しか必要としないため、「高い免疫原性」を示し得る。そのような高い免疫原性は、例えば本発明の組成物と抗原対照を動物に投与し、2つの検定結果を比較することによって測定され得る。
【0058】
ここで使用する、「治療」(その様々な変形、例えば「治療する」または「治療される」を含む)は、(i)問題の病原体または疾患(例えば癌または伝統的なワクチンにおけるように、病原菌感染)の予防、(ii)症状の軽減または排除、および(iii)問題の病原体または疾患の実質的または完全な排除のいずれかを指す。治療は、予防的に(問題の病原体または疾患の出現以前に)または治療的に(問題の病原体または疾患の出現後に)実施され得る。
【0059】
本発明の免疫原性組成物の「有効量」または「医薬的に有効な量」という用語は、ここでは対象とする状態を治療するまたは診断するために十分な免疫原性組成物の量を指す。必要とされる正確な量は、数ある因子の中でも特に、例えば被験者の種、年齢および全身状態;治療される状態の重症度;対象とする特定抗原;免疫応答の場合は、例えば抗体を合成する被験者の免疫系の能力および所望する防御の程度;および投与方式に依存して、被験者ごとに異なる。個々の場合の適切な「有効」量は、当業者によって決定され得る。それ故「治療有効量」は、典型的には常套的治験を通して決定され得る比較的広い範囲に属する。
【0060】
「脊椎動物被験者」または「脊椎動物」により、限定を伴わずに、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマおよびヒトなどの哺乳動物;イヌおよびネコなどの愛玩動物;およびニワトリ、シチメンチョウおよび他の家禽を含むオンドリおよびメンドリなどの家禽、野鳥および狩猟鳥を含む鳥類を包含する、脊索動物亜門の何らかの成員が意味される。この用語は特定の年齢を意味しない。それ故成体および新生児動物の両方が含まれる。
【0061】
「医薬的に許容される」または「薬理的に許容される」により、生物学的に有害でない物質、すなわち物質が、個体において過度の望ましくない生物学的作用を引き起こさずにまたは物質が含まれる組成物の成分のいずれかと過度に有害に相互作用せずに個体に投与され得ることが意味される。
【0062】
「賦形剤」という用語は、最終投与形態中に存在し得る基本的に付属的な物質を指す。例えば「賦形剤」という用語は、ビヒクル、結合剤、崩壊剤、充填剤(希釈剤)、潤滑剤、すべり剤(流動促進剤)、圧縮助剤、着色料、甘味料、防腐剤、懸濁化/分散剤、薄膜形成剤/被覆剤、香味料および印刷インクを含む。
【0063】
「生理的pH」または「生理的範囲内のpH」により、約7.2−8.0(両端を含む)の範囲内、より典型的には約7.2−7.6(両端を含む)の範囲内のpHが意味される。
【0064】
ここで使用する、「ベクター構築物」という語句は、一般に対象とする核酸配列または遺伝子の発現を指令することができる何らかの集合物(assembly)を指す。ベクター構築物は、典型的には転写プロモーター/エンハンサーまたは遺伝子座規定エレメント、または選択的スプライシング、RNA核外輸送、メッセンジャーの翻訳後修飾またはタンパク質の翻訳後修飾などの他の手段によって遺伝子発現を制御する他のエレメントを含む。加えて、ベクター構築物は、典型的には、転写されたとき、対象配列または遺伝子に作動可能に連結され、翻訳開始配列として働く配列を含む。ベクター構築物はまた、場合によりポリアデニル化を指令するシグナル、選択マーカー、ならびに1またはそれ以上の制限部位および翻訳終結配列を含む。加えて、ベクター構築物がレトロウイルスに導入される場合、ベクター構築物は、パッケージングシグナル、ロングターミナルリピート(LTR)、および使用されるレトロウイルスに適切な正鎖および負鎖プライマー結合部位を含み得る(これらが既に存在していない場合)。
【0065】
「DNAベクター構築物」は、対象とする核酸配列または遺伝子の発現を指令することができるDNA分子を指す。
【0066】
DNAベクター構築物の1つの特定型はプラスミドであり、プラスミドは、宿主細胞内で自律複製することができる環状エピソームDNA分子である。典型的には、プラスミドは、その中に付加的なDNAセグメントを連結することができる環状二本鎖DNAループである。pCMVは当技術分野において周知の1つの具体的なプラスミドである。好ましいpCMVベクターは、CMVの最初期エンハンサー/プロモーターおよびウシ成長ホルモンターミネーターを含むものである。これは、Chapman,B.S.ら(1991)Nucleic Acids Res.19:3979−3986の中で詳細に述べられている。
【0067】
他のDNAベクター構築物は公知であり、それらはRNAウイルスに基づく。これらのDNAベクター構築物は、典型的には真核細胞において機能するプロモーター、転写産物がRNAベクター構築物(例えばアルファウイルスRNAベクターレプリコン)であるcDNA配列の5’末端領域、および3’末端領域を含む。RNAベクター構築物は、好ましくは、対象産物をコードする選択された異種核酸配列による1またはそれ以上の構造タンパク質遺伝子の置換によって修飾された、ピコルナウイルス、トガウイルス、フラビウイルス、コロナウイルス、パラミクソウイルス、黄熱病ウイルスまたはアルファウイルス(例えばシンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、ベネズエラウマ脳炎ウイルスまたはロスリバーウイルス)からのRNAゲノムを含む。RNAベクター構築物は、DNA鋳型からのインビトロでの転写によって入手できる。具体例は、例えば米国特許第5,814,482号および同第6,015,686号、ならびに国際公開広報第WO97/38087号、同第WO99/18226号および共同所有の同第WO02/26209号に述べられている、pSINCPなどのシンドビスウイルスに基づくプラスミド(pSIN)を含む。そのようなベクターの構築は、一般に、米国特許第5,814,482号および同第6,015,686号に述べられている。
【0068】
ベクター構築物の他の例は、RNAベクター構築物(例えばアルファウイルスベクター構築物)等を含む。ここで使用する、「RNAベクター構築物」、「RNAベクターレプリコン」および「レプリコン」は、インビボで、典型的には標的細胞内で、それ自身の増幅または自己複製を指令することができるRNA分子を指す。RNAベクター構築物は、細胞へのDNAの導入および転写が起こる核内への輸送を必要とせずに、直接使用される。宿主細胞の細胞質への直接送達のためにRNAベクターを使用することにより、異種核酸配列の自律複製と翻訳が効率的に起こる。
【0069】
B.一般的方法
1.抗原
一部の実施形態では、本発明の組成物は、各々が有効量(例えば本発明に従った治療、予防または診断方法における使用のために有効な量)である、1またはそれ以上の抗原を含む。例えば本発明の組成物は、以下に列挙する病原体のいずれかによって引き起こされる感染を治療するまたは予防するために使用され得る。
【0070】
本発明に関する使用のための抗原は、以下に示す抗原、あるいは以下に示す病原体の1またはそれ以上に由来する抗原の1またはそれ以上を含むが、これらに限定されない。
【0071】
A.細菌抗原
本発明における使用に適する細菌抗原は、細菌から単離され得る、精製され得るまたは細菌に由来し得るタンパク質、多糖、リポ多糖および外膜小胞を含む。加えて、細菌抗原は、細菌溶解産物および不活性化細菌製剤を含む。細菌抗原は組換え発現によって生産され得る。細菌抗原は、好ましくはその生活環の少なくとも1つの段階の間に細菌の表面に曝露されるエピトープを含む。細菌抗原は、好ましくは多数の血清型にわたって保存されている。細菌抗原は、以下に示す細菌の1またはそれ以上に由来する抗原ならびに以下で特定する特異抗原の例を含む。
【0072】
髄膜炎菌:
髄膜炎菌タンパク質:髄膜炎菌の血清型A群(Parkhillら(2000)Nature 404:502−506)およびB群(Tellelinら(2000)Science 287:1809−1815;国際公開広報第WO00/66791号)についてのゲノム配列が報告されており、コードされるポリペプチドから適切な抗原を選択することができる(例えばPizzaら(2000)Science 287:1816−1820;国際公開広報第WO99/24578号;同第WO99/36544号;同第WO99/57280号;同第WO00/22430号;および同第WO00/66741号)。特定抗原は、以下の5つの抗原の1またはそれ以上を含む(国際公開広報第WO2004/032958号):(1)好ましくはオリゴマー形態(例えばトリマー形態)の、「NadA」タンパク質;(2)「741タンパク質」;(3)「936タンパク質」;(4)「953タンパク質」;および(5)「287タンパク質」。本発明の組成物に含めるための他の抗原は、TbpB(国際公開広報第WO2004/014419号)および/またはNspAなどのHsf接着タンパク質および/またはトランスフェリン結合タンパク質を含む。
【0073】
髄膜炎菌からの外膜小胞(OMV)の作製。「OMV」という用語は、外膜のタンパク質成分を含む外膜の小胞を形成するために細菌の外膜を破壊することによって得られる何らかのプロテオリポソーム小胞を含む。OMVは細菌から人工的に作製される(例えば界面活性剤処理によってまたは非界面活性剤手段によって)。この用語はまた、ブレブ、微小小胞(MV(国際公開広報第WO02/09643号))および、細菌増殖の間に自然に形成され、培地に放出される天然に生じる膜小胞である、「天然OMV」(「NOMV」(Katialら(2002)Infect,Immun.70:702−707)を包含する。MVは、ブロス培地で髄膜炎菌を培養し、ブロス培地中のより小さなMVから全細胞を分離して(例えばろ過によって、または細胞だけをペレット化し、より小さな小胞をペレット化しないための低速遠心分離によって)、その後細胞枯渇培地からMVを収集すること(例えばろ過によって、MVの分画沈殿または凝集によって、MVをペレット化するための高速遠心分離によって)によって入手できる。MVの生産における使用のための菌株は、一般に培養下で生産されるMVの量に基づいて選択され得る(例えば参考文献、米国特許第6,180,111号および国際公開広報第WO01/34642号は、高いMV生産を有する髄膜炎菌を述べている)。OMVは様々な方法で作製され得る。適切な製剤を得るための方法は、例えばここで引用する参考文献に開示されている。OMVを形成するための手法は、界面活性剤を沈殿させないように十分に高いpHで、胆汁酸界面活性剤(例えばデオキシコール酸ナトリウムと、リトコール酸、ケノデオキシコール酸、ウルソデオキシコール酸、デオキシコール酸、コール酸、ウルソコール酸等の塩(欧州特許第EP0011243B号;およびFredriksenら(1991)NIPH Ann.14(2):67−80)が、髄膜炎菌を処理するために好ましい)で細菌を処理することを含む。OMV作製のために使用される菌株は、例えば修飾fur遺伝子を有するように(国際公開広報第WO98/56901号)、nspA発現の上方調節およびporAとcpsの同時ノックアウトを有するように(国際公開広報第WO02/09746号)、または参考文献、国際公開広報第WO01/09350号;同第WO02/062378号;同第WO2004/014417号;同第WO2004/019977号;および同第WO2004/048404号に述べられているように修飾されていてもよい。OMVは付加的なタンパク質で補足されてもよく、例えば参考文献、国際公開広報第WO00/25811号および同第WO01/52885号参照。OMVは、好ましくは以下の髄膜炎筋血清亜型:P1,7b,4;P1.7,16;P1.19,15の1つから得られる。
【0074】
肺炎連鎖球菌:肺炎球菌のいくつかの菌株についてのゲノム配列が入手可能であり(Tettelinら(2001)Science 293:498−506;およびHoskinsら(2001)J Bacteriol 183:5709−5717)、適切なポリペプチド抗原を同定するために逆ワクチン学(Rappuoli(2000)Curr Opin Microbiol 3:445−450;Rappuoli(2001)Vaccine 19:2688−2691;Masignaniら(2002)Expert Opin Biol Ther 2:895−905;およびMoraら(2003)Drug Discov Today 8:459−464)に供することができる(Wizemannら(2001)Infect Immun 69:1593−1598;およびRigdenら(2003)Crit Rev Biochem Mol Biol 38:143−168)。例えば組成物は、参考文献、国際公開広報第WO02/22167号において定義されるように、以下の抗原:PhtA、PhtD、PhtB、PhtE、SpsA、LytB、LytC、LytA、Sp125、Sp101、Sp128、Sp130およびSp130の1またはそれ以上を含み得る。組成物は、これらの抗原の2以上(例えば2、3、4、5、6、7、8、9 10、11、12、13または14)を含み得る。
【0075】
化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌):A群連鎖球菌抗原は、例えば国際公開公報第02/34771号;同第WO2005/032582号;同第WO02/094851号;Dale(1999)Vaccine 17:193−200;Dale(1996)Vaccine 14(10):944−948);およびFerrettiら(2001)PNAS USA 98:4658−4663に開示されているものを含む。
【0076】
Moraxella catarrhalis:モラクセラ属抗原は、国際公開公報第02/18595号;および同第99/58562号において特定される抗原、外膜タンパク質抗原(HMW−OMP)、C抗原および/またはLPSを含む。
【0077】
百日咳菌:百日咳抗原は、場合によりパータクチンおよび/またはアグルチノーゲン2および3抗原と組み合わせた、百日咳ホロ毒素(PT)および百日咳菌からの線維状赤血球凝集素(FHA)を含む。
【0078】
典型的には不活性化百日咳菌細胞の形態の、細胞百日咳菌抗原。細胞百日咳抗原の作製は広く文書化されている(例えばVaccinesの第21章(PlotkinとOrenstein編集),第4版、2004,ISBN:0−7216−9688−0参照)。wP抗原の量は国際単位(IU)で表わすことができる。例えばNIBSCは、「Third International Standard For Pertussis Vaccine」[NIBSCコード:66/303]を供給しており、これは46IU/アンプルを含む。各アンプルは、M/15セーレンセン緩衝液、pH7.0 8リットルで希釈した細菌懸濁液10リットル(米国不透明度基準では180不透明度単位に等しい)を含む水溶液の2.0mlアリコートの凍結乾燥残留物を含む。IU系に代わるものとして、「OU」単位(「不透明度単位」)も使用される(例えば4OUは約1IUであり得る)。典型的には少なくとも8IU/mlが存在する。
【0079】
百日咳毒素(PT)、線維状赤血球凝集素(FHA)、パータクチン(「69キロダルトン外膜タンパク質」としても知られる)、および線毛(アグルチノーゲン2および3)の1またはそれ以上を含む、無細胞百日咳菌抗原。本発明は、好ましくはPT、FHAおよびパータクチンの少なくとも2つ、好ましくは3つ全部を使用する(すなわち線毛を使用しない)。FHAおよびパータクチンは、本発明に従った使用の前にホルムアルデヒドで処理し得る。PTは、好ましくはホルムアルデヒドおよび/またはグルタルアルデヒドでの処理によって無毒化する。この化学的無毒化手順に代わるものとして、PTは、突然変異誘発によって酵素活性を低下させた突然変異型PTであり得る(Rappuoliら(1991)TIBTECH 9:232−238)が、化学的処理による無毒化が好ましい。無細胞百日咳抗原の量は、典型的にはマイクログラムで表わされる。典型的には用量当たりPT25−75μg、FHA約25−75μgおよびパータクチン約10−20μgが存在する。
【0080】
黄色ブドウ球菌:黄色ブドウ球菌抗原は、StaphVAX(商標)などの、場合により非毒性組換え緑膿菌体外毒素Aに結合された黄色ブドウ球菌5型および8型莢膜多糖、および表面タンパク質に由来する抗原、インベイシン(ロイコシジン、キナーゼ、ヒアルロニダーゼ)、食細胞貪食を阻害する表面因子(莢膜、プロテインA)、カロチノイド、カタラーゼ産生、プロテインA、コアグラーゼ、凝固因子、および真核細胞膜を溶解する膜傷害毒素(場合により無毒化された)(溶血素、ロイコトキシン、ロイコシジン)を含む。黄色ブドウ球菌抗原は、例えばKurodaら(2001)Lancet 357(9264):1225−1240;p.1218−1219も参照のこと、に開示されている抗原を含む。
【0081】
表皮ブドウ球菌:表皮ブドウ球菌抗原は、粘液関連抗原(SAA)を含む。
【0082】
破傷風菌(破傷風):破傷風抗原は、好ましくは本発明の組成物と併用/複合して輸送タンパク質として使用される、破傷風トキソイド(TT)を含む。
【0083】
Vaccinesの第27章(PlotkinとOrenstein編集)第4版、2004,ISBN:0−7216−9688−0の中でより詳細に開示される、破傷風トキソイド(「Tt」)。好ましい破傷風トキソイドは、ホルムアルデヒド処理によって作製されるものである。破傷風トキソイドの量は国際単位(IU)で表わすことができる。例えばNIBSCは、「Tetanus Toxoid Adsorbed Third International Standard 2000」(Sesardicら(2002)Biologicals 30:49−68;およびNIBSCコード:98/552)を供給しており、これは469IU/アンプルを含む。IU系に代わるものとして、「Lf」単位(「凝集単位」(flocculating units)または「石灰凝集用量」(limes flocculating dose))は、1国際単位の抗毒素と混合したとき、最適凝集混合物を生じるトキソイドの量と定義される[WHOのThe immunological basis for immunization seriesのモジュール1(Galazka)]。例えばNIBSCは、「The 1st International Reference Reagent for Tetanus Toxoid For Flocculation Test」[NIBSCコード:TEFT]を供給しており、これは1000Lf/アンプルを含む。本発明の組成物中の破傷風トキソイドの濃度は、典型的には少なくとも100IU/mlである。
【0084】
ジフテリア菌(ジフテリア):ジフテリア抗原は、CRM197などの、好ましくは無毒化された、ジフテリア毒素を含む。加えて、ADPリボシル化を調節する、阻害する、またはADPリボシル化に関連する抗原が、本発明の組成物との組合せ/同時投与/複合のために考慮される。ジフテリアトキソイドは輸送タンパク質として使用し得る。
【0085】
Vaccinesの第13章(PlotkinとOrenstein編集)第4版、2004,ISBN:0−7216−9688−0においてより詳細に開示される、ジフテリアトキソイド(「Dt」)。好ましいジフテリアトキソイドは、ホルムアルデヒド処理によって作製されるものである。ジフテリアトキソイドの量は国際単位(IU)で表わすことができる。例えばNIBSCは、「Diphtheria Toxoid Adsorbed Third International Standard 1999」(Sesardicら(2001) Biologicals 29:107−22;およびNIBSCコード:98/560)を供給しており、これは160IU/アンプルを含む。IU系に代わるものとして、「Lf」単位(「凝集単位」または「石灰凝集用量」)は、1国際単位の抗毒素と混合したとき、最適凝集混合物を生じるトキソイドの量と定義される[WHOのThe immunological basis for immunization seriesのモジュール1(Galazka)]。例えばNIBSCは、「Diphtheria Toxoid,Plain」[NIBSCコード:69/017]を供給しており、これは300LF/アンプルを含み、また「The 1st International Reference Reagent for Diphtheria Toxoid For Flocculation Test」[NIBSCコード:DIFT]も供給しており、これは900Lf/アンプルを含む。本発明の組成物中のジフテリアトキソイドの濃度は、典型的には少なくとも50IU/mlである。
【0086】
インフルエンザ菌B型(Hib):Hib抗原は、Hib糖抗原を含む。
【0087】
緑膿菌:シュードモナス属抗原は、内毒素A、Wzzタンパク質、緑膿菌LPS、より詳細にはPAO1(O5血清型)から単離されるLPS、および外膜タンパク質F(OprF)を含む外膜タンパク質(Priceら(2001)Infect Immun.69(5):3510−3515)を含む。
【0088】
レジオネラ・ニューモフィラ菌:細菌抗原は、レジオネラ・ニューモフィラ菌に由来し得る。
【0089】
Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌):B群連鎖球菌抗原は、国際公開公報第02/34771号;同第03/093306号;同第04/041157号;同第2005/002619号;およびSchuchat(1999)Lancet 353(9146):51−66において特定されるもの(タンパク質GBS59、GBS67、GBS80、GBS104、GBS276およびGBS322を含み、および血清型Ia、Ib、Ia/c、II、III、IV、V、VI、VIIおよびVIIIに由来する糖抗原を含む)のような、タンパク質および糖抗原を含む。
【0090】
淋菌:淋病抗原は、PorBなどのPor(またはポーリン)タンパク質(例えばZhuら(2004)Vaccine 22:660−669参照)、TbpAおよびTbpBなどのトランスフェリン結合タンパク質(例えばPriceら(2004)Infect.Immun.71(1):277−283参照)、不透過タンパク質(opacity protein)(Opaなど)、還元調節性タンパク質(Rmp)、および外膜小胞(OMV)製剤(例えばPlanteら(2000)J.Infect.Dis.182:848−855;国際公開公報第WO99/24578号;同第WO99/36544号;同第WO99/57280号;および同第WO02/079243号参照)を含む。
【0091】
トラコーマクラミジア:トラコーマクラミジア抗原は、血清型A、B、BaおよびC(トラコーマの病原因子、失明の原因)、血清型L、LおよびL(性病性リンパ肉芽腫に関連する)、および血清型D−Kに由来する抗原を含む。トラコーマクラミジア抗原はまた、PepA(CT045)、LcrE(CT089)、ArtJ(CT381)、DnaK(CT396)、CT398、OmpH様(CT242)、L7/L12(CT316)、OmcA(CT444)、AtosS(CT467)、CT547、Eno(CT587)、HrtA(CT823)、MurG(CT761)、CT396およびCT761を含む、国際公開公報第WO00/37494号;同第WO03/049762号;同第WO03/068811号;および同第WO05/002619号において特定される抗原、およびこれらの抗原の特定の組合せを含む。
【0092】
梅毒トレポネーマ(梅毒):梅毒抗原はTmpA抗原を含む。
【0093】
軟性下疳菌(軟性下疳を引き起こす):デュクレー抗原は、外膜タンパク質(DsrA)を含む。
【0094】
Enterococcus faecalisまたはEnterococcus faecium:抗原は、三糖反復単位および米国特許第6,756,361号において提供される他のエンテロコッカス属由来の抗原を含む。
【0095】
ピロリ菌:ピロリ菌抗原は、Cag、Vac、Nap、HopX、HopYおよびウレアーゼ抗原を含む。
【0096】
Staphylococcus saprophyticus:抗原は、S.saprophyticus抗原の160kDa赤血球凝集素を含む。
【0097】
Yersinia enterocolitica:抗原は、LPS(Xuら(2002)Infect.Immun.70(8):4414−4423)を含む。
【0098】
大腸菌:大腸菌抗原は、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)、腸管凝集性大腸菌(EAggEC)、分散接着性大腸菌(DAEC)、腸管病原性大腸菌(EPEC)または腸管出血性大腸菌(EHEC)に由来し得る。
【0099】
炭疽菌(炭疽):炭疽菌抗原は、場合により無毒化されており、A成分(どちらも防御抗原(PA)として知られる共通のB成分を共有し得る、致死因子(LF)および浮腫因子(EF))から選択され得る。ある実施形態では、本発明の組成物は炭疽抗原を含まない。
【0100】
ペスト菌(ペスト):ペスト抗原は、F1莢膜抗原(Gosfeldら(2003)Infect.Immun.71(1)):374−383)、LPS(Fieldsら(1999)Infect.Immun.67(10):5395−5408)、ペスト菌V抗原(Hillら(1997)Infect.Immun.65(11):4476−4482)を含む。
【0101】
ヒト結核菌:結核抗原は、リポタンパク質、LPS、BCG抗原、場合によりカチオン性脂質小胞に製剤された抗原85B(Ag85B)とESAT−6の融合タンパク質(Olsenら(2004)Infect.Immun.72(10):6148−6150)、ヒト結核菌(Mtb)イソクエン酸デヒドロゲナーゼ関連抗原(Banerjeeら(2004)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12652−12657)、およびMPT51抗原(Suzukiら(2004)Infect.Immun.72(7):3829−3837)を含む。
【0102】
リケッチア:抗原は、外膜タンパク質Aおよび/またはB(OmpB)(Chaoら(2004)Biochim.Biophys.Acta.1702(2):145−152)を含む外膜タンパク質、LPS、および表面タンパク質抗原(SPA)(Carlら(1989)J.Autoimmun.2 Suppl:81−91)を含む。
【0103】
リステリア菌:細菌抗原はリステリア菌に由来し得る。
【0104】
Chlamydia pneumoniae:抗原は、国際公開公報第WO02/02606号において特定されるものを含む。
【0105】
コレラ菌:抗原は、プロテイナーゼ抗原、LPS、特にコレラ菌IIのリポ多糖、O1群イナバ型O特異的多糖、コレラ菌O139、IEM108ワクチンの抗原(Liangら(2003)Infect.Immun.71(10):5498−504)、および閉鎖帯毒素(Zot)を含む。
【0106】
腸チフス菌(腸チフス):抗原は、莢膜多糖、好ましくは複合体(Vi、すなわちvax−TyVi)を含む。
【0107】
Borrelia burgdorferi(ライム病):抗原は、リポタンパク質(OspA、OspB、OspCおよびOspDなど)、OspE関連タンパク質(Erps)などの他の表面タンパク質、デコリン結合タンパク質(DbpAなど)、およびP39およびP13に関連する抗原などの抗原多様性VIタンパク質(内在性膜タンパク質、Noppaら(2001)Infect.Immun.69(5):3323−3334)、VlsE抗原性変異タンパク質(Lawrenzら(1999)J.Clin.Microbiol.37(12):3997−4004)を含む。
【0108】
Porphyromonas gingivalis:抗原は、P.gingivalis外膜タンパク質(OMP)を含む。
【0109】
Klebsiella:抗原は、OMP Aを含むOMP、および場合により破傷風トキソイドに結合された多糖を含む。
【0110】
他の細菌抗原は、上記のいずれかの莢膜抗原、多糖抗原またはタンパク質抗原を含む。さらなる細菌抗原はまた、外膜小胞(OMV)製剤を含む。加えて、抗原は、上記細菌のいずれかの生、弱毒化および/または精製形態を含む。抗原は、グラム陰性またはグラム陽性菌に由来し得る。抗原は、好気性または嫌気性細菌に由来し得る。
【0111】
加えて、上記細菌由来の糖(多糖、LPS、LOSまたはオリゴ糖)のいずれもが、輸送タンパク質(例えばCRM197)などのもう1つ別の物質または抗原に複合できる。そのような複合は、米国特許第5,360,897号;およびRoyら(1984)Can.J.Biochem.Cell Biol.62(5):270−275において提供されるような、糖鎖上のカルボニル部分の、タンパク質上のアミノ基への還元的アミノ化によって実施される直接複合であり得る。もう1つの実施形態では、糖は、スクシンアミドなどのリンカーを通して、またはHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,第1版、Academic Press(1996)およびWong,S.S.,CRC,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,第1版、CRC−Press(1991)において提供される他の結合を通して複合され得る。適切な糖抗原は、以下の細菌からの複合莢膜糖を含むが、これらに限定されない。
【0112】
インフルエンザ菌B型(「Hib」):Hib複合体は、Vaccinesの第14章(PlotkinとOrenstein編集),第4版、2004,ISBN:0−7216−9688−0においてより詳細に開示される。Hib複合体の糖鎖部分は、Hib細菌から作製される完全長ポリリボシルリビトールリン酸(PRP)を含み得るか、または完全長PRPのフラグメントを含み得る。本発明の組成物中の、糖として測定されるHib複合体の量は、典型的には10−30μg/mlである。Hib複合体の投与は、好ましくは≧0.15μg/ml、より好ましくは≧1μg/mlの抗PRP抗体濃度を生じさせ、これらは標準的な許容される応答閾値である。
【0113】
髄膜炎菌血清型C群(「MenC」):MenCに対する複合体ワクチンはヒトでの使用に関して承認されており、MENJUGATE(商標)[Jones(2001)Curr Opin Investig Drugs 2:47−49]、MENINGITEC(商標)およびNEISVAC−C(商標)を含む。血清型C群の糖はOAcまたはOAc菌株のいずれかから作製され得る。
【0114】
髄膜炎菌血清型A群(「MenA」):好ましくはマンノサミン残基の少なくとも50%(例えば少なくとも60%、70%、80%、90%、95%またはそれ以上)が、C−3位でO−アセチル化されている。
【0115】
髄膜炎菌血清型W135群(「MenW135」)。
【0116】
髄膜炎菌血清型Y群(「MenY」)。
【0117】
肺炎連鎖球菌(例えばWatson(2000)Pediatr Infect Dis J 19:331−332;Rubin(2000)Pediatr Clin North Am 47:269−285;およびJedrzejas(2001)Microbiol Mol Biol Rev 65:187−207)。肺炎連鎖球菌の2以上の血清型からの糖を含むことが好ましい:5−11の異なる血清型からの多糖との複合体ワクチンと同様に、23の異なる血清型からの多糖の混合物が広く使用されている(Zielenら(2000)Infect.Immun.68:1435−1440)。例えばPrevNar(商標)(DarkesとPlosker(2002)Paediatr Drugs 4:609−630)は、7つの血清型(4、6B、9V、14、18C、19Fおよび23F)からの抗原を含み、各々の糖は還元的アミノ化によってCRM197に個別に結合しており、0.5ml用量当たり各々の糖2μg(血清型6B 4μg)を含有する。本発明の組成物は、好ましくは少なくとも血清型6B、14、19Fおよび23Fを含む。さらなる血清型は、好ましくは1、3、4、5、7F、9Vおよび18Cから選択される。本発明の組成物中の、糖として測定される肺炎球菌複合体の量は、典型的には各血清型について2−20μg/mlである。
【0118】
例えばSabharwalら(2006)J Infect Dis 193:129−135に述べられているような、化膿連鎖球菌(「GAS」)。
【0119】
例えばBakerとEdwards(2003)Arch Dis Child 88:375−378;PaolettiとKasper(2002)J Infect Dis 186:123−126;Palazziら(2004)J Infect Dis 190:558−564;HeathとFeldman(2005)Expert Rev Vaccines 4:207−218;PaolettiとKasper(2003)Expert Opin Biol Ther 3:975−984に述べられているようなStreptococcus agalactiae(「GBS」)。GBS血清型Ia、Ibおよび/またはIIIからの糖が典型的に含まれる。GBS血清型IV、VおよびVIIも使用され得る。
【0120】
B.ウイルス抗原
本発明における使用に適するウイルス抗原は、不活性化(または死滅)ウイルス、弱毒化ウイルス、スプリットウイルス製剤、精製サブユニット製剤、ウイルスから単離、精製または誘導され得るウイルスタンパク質、およびウイルス様粒子(VLP)を含む。ウイルス抗原は、細胞培養または他の基質で増殖させたウイルスに由来し得るかまたは組換えによって発現され得る。ウイルス抗原は、好ましくはその生活環の少なくとも1つの段階の間にウイルスの表面に曝露されるエピトープを含む。ウイルス抗原は、好ましくは多数の血清型または単離物にわたって保存されている。ウイルス抗原は、以下に示すウイルスの1またはそれ以上に由来する抗原ならびに以下で同定する特異抗原の例を含む。
【0121】
オルトミクソウイルス:ウイルス抗原は、インフルエンザA、BおよびC型などのオルトミクソウイルスに由来し得る。オルトミクソウイルス抗原は、赤血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)、ヌクレオタンパク質(NP)、基質タンパク質(M1)、膜タンパク質(M2)を含むウイルスタンパク質の1またはそれ以上、転写酵素成分(PB1、PB2およびPA)の1またはそれ以上から選択され得る。好ましい抗原はHAおよびNAを含む。
【0122】
インフルエンザ抗原は、汎流行間期(毎年)のインフルエンザ菌株に由来し得る。インフルエンザ抗原は、汎流行性発生を引き起こす潜在的可能性を有する菌株(すなわち現在流行中である菌株における赤血球凝集素と比較して新しい赤血球凝集素を有するインフルエンザ菌株、または鳥類被験者において病原性であり、ヒト集団において水平伝播する潜在的可能性を有するインフルエンザ菌株、またはヒトに対して病原性であるインフルエンザ菌株)に由来し得る。インフルエンザ抗原は、卵または細胞培養において増殖するウイルスに由来し得る。
【0123】
パラミクソウイルス科ウイルス:ウイルス抗原は、肺炎ウイルス属(RSV)、パラミクソウイルス属(PIV)および麻疹ウイルス属(麻疹)などのパラミクソウイルス科ウイルスに由来し得る。
【0124】
肺炎ウイルス:ウイルス抗原は、RSウイルス(RSV)、ウシRSウイルス、マウス肺炎ウイルス、およびシチメンチョウ鼻気管炎ウイルスなどの肺炎ウイルスに由来し得る。好ましくは、肺炎ウイルスはRSVである。肺炎ウイルス抗原は、以下のタンパク質:表面タンパク質融合物(F)、糖タンパク質(G)および低分子疎水性タンパク質(SH)、基質タンパク質MおよびM2、ヌクレオキャプシドタンパク質N、PおよびL、および非構造タンパク質NS1およびNS2、の1またはそれ以上から選択され得る。好ましい肺炎ウイルス抗原は、F、GおよびMを含む。例えばJohnstoneら(2004)J.Gen.Virol.85(Pt11):3229−3238参照。肺炎ウイルス抗原はまた、キメラウイルスにおいて製剤され得るまたはキメラウイルスに由来し得る。例えばキメラRSV/PIVウイルスは、RSVとPIVの両方の成分を含み得る。
【0125】
パラミクソウイルス:ウイルス抗原は、パラインフルエンザウイルス1−4型(PIV)、流行性耳下腺炎ウイルス、センダイウイルス、シミアンウイルス5、ウシパラインフルエンザウイルスおよびニューカッスル病ウイルス等のパラミクソウイルスに由来し得る。好ましくは、パラミクソウイルスはPIVまたは流行性耳下腺炎ウイルスである。パラミクソウイルス抗原は、以下のタンパク質:赤血球凝集素ノイラミニダーゼ(HN)、融合タンパク質F1およびF2、ヌクレオタンパク質(NP)、リンタンパク質(P)、大型タンパク質(L)および基質タンパク質(M)、の1またはそれ以上から選択され得る。好ましいパラミクソウイルスタンパク質は、HN、F1およびF2を含む。パラミクソウイルス抗原はまた、キメラウイルスにおいて製剤され得るまたはキメラウイルスに由来し得る。例えばキメラRSV/PIVウイルスは、RSVとPIVの両方の成分を含み得る。市販されている流行性耳下腺炎ワクチンは、一価形態または麻疹および風疹ワクチンと組み合わせた(MMR)、生弱毒化流行性耳下腺ウイルスを含む。
【0126】
麻疹ウイルス:ウイルス抗原は、麻疹などの麻疹ウイルス属に由来し得る。麻疹ウイルス抗原は、以下のタンパク質:赤血球凝集素(H)、糖タンパク質(G)、融合因子(F)、大型タンパク質(L)、ヌクレオタンパク質(NP)、ポリメラーゼリンタンパク質(P)および基質タンパク質(M)、の1またはそれ以上から選択され得る。市販されている麻疹ワクチンは、典型的には流行性耳下腺炎および風疹ワクチンと組み合わせた(MMR)、生弱毒化麻疹ウイルスを含む。
【0127】
ピコルナウイルス:ウイルス抗原は、エンテロウイルス、ライノウイルス、ヘパルナウイルス、カルジオウイルスおよびアフトウイルスなどのピコルナウイルス属に由来し得る。ポリオウイルスなどのエンテロウイルスに由来する抗原が好ましい。
【0128】
エンテロウイルス:ウイルス抗原は、ポリオウイルス1、2または3型、コクサッキーAウイルス1−22および24型、コクサッキーBウイルス1−6型、エコー(ECHO)ウイルス1−9、11−27および29−34型、およびエンテロウイルス68−71型などのエンテロウイルスに由来し得る。好ましくは、エンテロウイルスはポリオウイルスである。エンテロウイルス抗原は、好ましくはキャプシドタンパク質VP1、VP2、VP3およびVP4の1またはそれ以上から選択される。市販されているポリオワクチンは、不活性化ポリオワクチン(IPV)および経口ポリオウイルスワクチン(OPV)を含む。
【0129】
ヘパルナウイルス:ウイルス抗原は、A型肝炎ウイルス(HAV)などのヘパルナウイルスに由来し得る。市販されているHAVワクチンは、不活性化HAVワクチンを含む。
【0130】
トガウイルス:ウイルス抗原は、ルビウイルス、アルファウイルスまたはアルテリウイルスなどのトガウイルスに由来し得る。風疹ウイルスなどのルビウイルスに由来する抗原が好ましい。トガウイルス抗原は、E1、E2、E3、C、NSP−1、NSPO−2、NSP−3またはNSP−4から選択され得る。トガウイルス抗原は、好ましくはE1、E2およびE3から選択される。市販されている風疹ワクチンは、典型的には流行性耳下腺炎および麻疹ワクチンと組み合わせた(MMR)、生低温適合性ウイルスを含む。
【0131】
フラビウイルス:ウイルス抗原は、ダニ媒介脳炎(TBE)、デング熱(1、2、3または4型)、黄熱病、日本脳炎、西ナイル脳炎、セントルイス脳炎、ロシア春夏脳炎、ポーワッサン脳炎などのフラビウイルスに由来し得る。フラビウイルス抗原は、PrM、M、C、E、NS−1、NS−2a、NS2b、NS3、NS4a、NS4bおよびNS5から選択され得る。フラビウイルス抗原は、好ましくはPrM、MおよびEから選択される。市販されているTBEワクチンは、不活性化ウイルスワクチンを含む。
【0132】
ペスチウイルス:ウイルス抗原は、ウシのウイルス性下痢(BVDV)、古典的豚コレラ(CSFV)またはボーダー病(BDV)などのペスチウイルスに由来し得る。
【0133】
ヘパドナウイルス:ウイルス抗原は、B型肝炎ウイルスなどのヘパドナウイルスに由来し得る。ヘパドナウイルス抗原は、表面抗原(L、MおよびS)、コア抗原(HBc、HBe)から選択され得る。市販されているHBVワクチンは、表面抗原Sタンパク質を含有するサブユニットワクチンを含む。
【0134】
B型肝炎ウイルス表面抗原(「HBsAg」)。典型的なHBsAgは、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastorisまたはHanensula polymorphaなどの酵母において組換えDNA法によって発現される。HBsAgは、好ましくはグリコシル化されていない。HBsAgは、リン脂質および、場合により、ホスファチジルイノシトールを含む脂質マトリックスを含有する実質的に球状の粒子の形態をとり得る。HBsAgは、好ましくはHBV亜型adw2からである。典型的にはHBsAg 1−50μgが存在する。
【0135】
A型肝炎ウイルス:Vaccinesの第15章(PlotkinとOrenstein編集),第4版、2004,ISBN:0−7216−9688−0に開示されるような、A型肝炎ウイルス抗原(「HAV」)。好ましいHAV成分は不活性化ウイルスに基づき、不活性化はホルマリン処理によって達成され得る。ウイルスは、MRC−5細胞などのヒト胚肺二倍体線維芽細胞で増殖され得る。好ましいHAV菌株はHM175であるが、CR326Fも使用できる。細胞は、ウイルス増殖を許容する条件下で増殖され得る。細胞を溶解し、生じた懸濁液を限外ろ過およびゲル浸透クロマトグラフィーによって精製することができる。EU(Elisa単位)で測定したHAV抗原の量は、典型的には少なくとも600EU/mlである。
【0136】
C型肝炎ウイルス:ウイルス抗原は、C型肝炎ウイルス(HCV)に由来し得る。HCV抗原は、E1、E2、E1/E2、NS345ポリタンパク質、NS345コアポリタンパク質、コア、および/または非構造領域からのペプチドの1またはそれ以上から選択され得る(Houghtonら(1991)Hepatology 14:381−388)。
【0137】
ラブドウイルス:ウイルス抗原は、リッサウイルス(狂犬病ウイルス)およびベシクロウイルス(VSV)などのラブドウイルスに由来し得る。ラブドウイルス抗原は、糖タンパク質(G)、ヌクレオタンパク質(N)、大型タンパク質(L)および非構造タンパク質(NS)から選択され得る。市販されている狂犬病ウイルスワクチンは、ヒト二倍体細胞または胎仔アカゲザル肺細胞で増殖させた死滅ウイルスを含む。
【0138】
カルシウイルス科ウイルス:ウイルス抗原は、ノーウォークウイルス、およびハワイウイルスやスノーマウンテンウイルスなどのノーウォーク様ウイルスのようなカルシウイルス科に由来し得る。
【0139】
コロナウイルス:ウイルス抗原は、コロナウイルス、SARS、ヒト呼吸器コロナウイルス、鳥類伝染性気管支炎(IBV)、マウス肝炎ウイルス(MHV)およびブタ伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)に由来し得る。コロナウイルス抗原は、スパイク(S)、エンベロープ(E)、基質(M)、ヌクレオキャプシド(N)タンパク質、および赤血球凝集素エステラーゼ糖タンパク質(HE)から選択され得る。好ましくは、コロナウイルス抗原はSARSウイルスに由来する。SARSウイルス抗原は国際公開公報第WO04/92360号に述べられている。
【0140】
レトロウイルス:ウイルス抗原は、オンコウイルス、レンチウイルスまたはスプマウイルスなどのレトロウイルスに由来し得る。オンコウイルス抗原は、HTLV−1、HTLV−2またはHTLV−5に由来し得る。レンチウイルス抗原は、HIV−1またはHIV−2に由来し得る。レトロウイルス抗原は、gag、pol、env、tax、tat、rex、rev、nef、vif、vpuおよびvprから選択され得る。HIV抗原は、gag(p24gagおよびp55gag)、env(gp160およびgp41)、pol、tat、nef、rev、vpu、ミニタンパク質(好ましくはp55gagおよびgp140v欠失型)から選択され得る。HIV抗原は、以下の菌株:HIVIIIb、HIVSF2、HIVLAV、HIVLAI、HIVMN、HIV−1CM235、HIV−1US4の1またはそれ以上に由来し得る。
【0141】
レオウイルス:ウイルス抗原は、オルトレオウイルス、ロタウイルス、オルビウイルスまたはコルチウイルスなどのレオウイルスに由来し得る。レオウイルス抗原は、構造タンパク質λ1、λ2、λ3、μ1、μ2、σ1、σ2またはσ3、あるいは非構造タンパク質σNS、μNSまたはσ1sから選択され得る。好ましいレオウイルス抗原は、ロタウイルスに由来し得る。ロタウイルス抗原は、VP1、VP2、VP3、VP4(または切断産物VP5およびVP8)、NSP1、VP6、NSP3、NSP2、VP7、NSP4またはNSP5から選択され得る。好ましいロタウイルス抗原は、VP4(または切断産物VP5およびVP8)およびVP7を含む。
【0142】
パルボウイルス:ウイルス抗原は、パルボウイルスB19などのパルボウイルスに由来し得る。パルボウイルス抗原は、VP−1、VP−2、VP−3、NS−1およびNS−2から選択され得る。好ましくは、パルボウイルス抗原はキャプシドタンパク質VP−2である。
【0143】
デルタ肝炎ウイルス(HDV):ウイルス抗原は、HDV、特にHDVからのδ抗原に由来し得る(例えば米国特許第5,378,814号参照)。
【0144】
E型肝炎ウイルス(HEV):ウイルス抗原はHEVに由来し得る。
【0145】
G型肝炎ウイルス(HGV):ウイルス抗原はHGVに由来し得る。
【0146】
ヒトヘルペスウイルス:ウイルス抗原は、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン‐バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、ヒトヘルペスウイルス7(HHV7)およびヒトヘルペスウイルス8(HHV8)などのヒトヘルペスウイルスに由来し得る。ヒトヘルペスウイルス抗原は、最初期タンパク質(α)、初期タンパク質(β)および後期タンパク質(γ)から選択され得る。HSV抗原は、HSV−1またはHSV−2菌株に由来し得る。HSV抗原は、糖タンパク質gB、gC、gDおよびgH、融合タンパク質(gB)、または免疫回避タンパク質(gC、gEまたはgI)から選択され得る。VZV抗原は、コア、ヌクレオキャプシド、テグメントまたはエンベロープタンパク質から選択され得る。生弱毒化VZVワクチンが市販されている。EBV抗原は、初期抗原(EA)タンパク質、ウイルスキャプシド抗原(VCA)、および膜抗原(MA)の糖タンパク質から選択され得る。CMV抗原は、キャプシドタンパク質、エンベロープ糖タンパク質(gBおよびgHなど)、およびテグメントタンパク質から選択され得る。
【0147】
パポバウイルス:抗原は、パピローマウイルスおよびポリオーマウイルスなどのパポバウイルスに由来し得る。パピローマウイルスは、HPV血清型1、2、4、5、6、8、11、13、16、18、31、33、35、39、41、42、47、51、57、58、63および65を含む。好ましくは、HPV抗原は血清型6、11、16または18に由来する。HPV抗原は、キャプシドタンパク質(L1)および(L2)、またはE1−E7、またはそれらの融合物から選択され得る。HPV抗原は、好ましくはウイルス様粒子(VLP)に製剤される。ポリオーマウイルスは、BKウイルスおよびJKウイルスを含む。ポリオーマウイルス抗原は、VP1、VP2またはVP3から選択され得る。
【0148】
本発明における使用のための他の抗原、組成物、方法および微生物は、Plotkin,S.A.ら、Vaccines,第4版、W.B.Saunders Co.(2004);Murray,P.R.ら、Medical Microbiology、第5版、Mosby Elsevier(2005);Joklik,W.K.(編集),Virology,第3版、Appleton & Lange(1988);Howley,P.M.ら(編集),Fundamental Virology,第4版、Lippincott Williams & Wilkins(1991);およびFields,B.N.ら(編集)Fields Virology,第4版、Lippincott Williams & Wilkins(2001)に述べられている。
【0149】
C.真菌抗原
本発明における使用のための真菌抗原は、以下に示す真菌の1またはそれ以上に由来し得る。
【0150】
真菌抗原は、Epidermophyton floccusum、オードアン小胞子菌、イヌ小胞子菌、Microsporum distortum、Microsporum equinum、石膏状小胞子菌、Microsporum nanum、渦状白癬菌、Trichophyton equinum、Trichophyton gallinae、Trichophyton gypseum、Trichophyton megnini、毛瘡白癬菌、Trichophyton quinckeanum、紅色白癬菌、シェーンライン白癬菌、Trichophyton tonsurans、Trichophyton verrucosum、T.verrucosum var.album、var.discoides、var.ochraceum、紫色白癬菌および/またはTrichophyton faviformeを含む、皮膚糸状菌に由来し得る。
【0151】
真菌病原体は、Aspergillus fumigatus、黄色アスペルギルス、黒色アスペルギルス、Aspergillus nidulans、Aspergillus terreus、Aspergillus sydowi、Aspergillus flavatus、Aspergillus glaucus、Blastoschizomyces capitatus、鵞口瘡カンジダ、Candida enolase、Candida tropicalis、Candida glabrata、Candida krusei、Candida parapsilosis、Candida stellatoidea、Candida kusei、Candida parakwsei、Candida lusitaniae、Candida pseudotropicalis、Candida guilliermonsi、Cladosporium carrionii、Coccidioides immitis、Blastomyces dermatidis、クリプトコッカス・ネオフォルマンス、Geotrichum clavatum、ヒストプラスマ・カプスラーツム、肺炎杆菌、Paracoccidioides brasiliensis、ニューモシスティス・カリニ、Pythiumn insidiosum、Pityrosporum ovale、Sacharomyces cerevisae、Saccharomyces boulardii、Saccharomyces pombe、Scedosporium apiosperum、Sporothrix schenckii、Trichosporon beigelii、トキソプラスマ、Penicillium marneffei、マラセジア属、フォンセセア属、Wangiella属、スポロトリクス属、バシディオボールス属、コニディオボルス属、クモノスカビ属、ケカビ属、アブシディア属、モルティエラ属、Cunninghamella属、Saksenaea属、アルテルナリア属、Curvularia属、ヘルミントスポリウム属、フザリウム属、アスペルギルス属、ペニシリウム属、モノリニア種、Rhizoctonia属、ペシロミセス属、Pithomyces属およびクラドスポリウム属に由来し得る。
【0152】
真菌抗原を生産するための工程は当技術分野において周知である(米国特許第6,333,164号参照)。好ましい方法では、細胞壁が実質的に除去されたまたは少なくとも部分的に除去された真菌細胞から入手し得る不溶性分画から、可溶化された分画を抽出して分離し、前記方法は、生真菌細胞を得ること;細胞壁が実質的に除去されたまたは少なくとも部分的に除去された真菌細胞を得ること;細胞壁が実質的に除去されたまたは少なくとも部分的に除去された真菌細胞を破裂させること;不溶性分画を得ること;および不溶性分画から可溶化分画を抽出して分離すること、の工程を含むことを特徴とする。
【0153】
D.STD抗原
本発明の組成物は、性感染症(STD)に由来する1またはそれ以上の抗原を含み得る。そのような抗原は、クラミジア、陰部ヘルペス、肝炎(HCVなど)、性器いぼ、淋病、梅毒および/または軟性下疳(国際公開公報第WO00/15255号参照)などのSTDに対する予防または治療を提供し得る。抗原は、1またはそれ以上のウイルスまたは細菌STDに由来し得る。本発明における使用のためのウイルスSTD抗原は、例えばHIV、単純ヘルペスウイルス(HSV−1およびHSV−2)、ヒトパピローマウイルス(HPV)および肝炎(HCV)に由来し得る。本発明における使用のための細菌STD抗原は、例えば淋菌、トラコーマクラミジア、梅毒トレポネーマ、軟性下疳菌、大腸菌およびStreptococcus agalactiaeに由来し得る。これらの病原体に由来する特異抗原の例は上述されている。
【0154】
E.呼吸器系抗原
本発明の組成物は、呼吸器系疾患を引き起こす病原体に由来する1またはそれ以上の抗原を含み得る。例えば呼吸器系抗原は、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIV)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、VZVおよびコロナウイルス(SARS)などの呼吸器系ウイルスに由来し得る。呼吸器系抗原は、肺炎連鎖球菌、緑膿菌、百日咳菌、ヒト結核菌、肺炎マイコプラスマ、Chlamydia pneumoniae、炭疽菌およびMoraxella catarrhalisなどの、呼吸器疾患を引き起こす細菌に由来し得る。これらの病原体に由来する特異抗原の例は上述されている。
【0155】
F.小児用ワクチン抗原
本発明の組成物は、小児被験者における使用に適する1またはそれ以上の抗原を含み得る。小児被験者は、典型的には約3歳未満、または約2歳未満、または約1歳未満である。小児用抗原は、6ヶ月、1、2または3年間にわたって複数回投与され得る。小児用抗原は、小児集団を標的し得るウイルスおよび/または小児集団が感染しやすいウイルスに由来し得る。小児用ウイルス抗原は、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよび流行性耳下腺炎)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、および水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン‐バーウイルス(EBV)の1またはそれ以上に由来する抗原を含む。小児用細菌抗原は、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、Moraxella catarrhalis、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B型(Hib)、緑膿菌、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)および大腸菌の1またはそれ以上に由来する抗原を含む。これらの病原体に由来する特異抗原の例は上述されている。
【0156】
G.高齢者または免疫無防備状態個体における使用に適する抗原
本発明の組成物は、高齢者または免疫無防備状態個体における使用に適する1またはそれ以上の抗原を含み得る。高齢者は、典型的には約50、55、60、65、70または75歳以上である。そのような個体は、標的抗原に対する免疫応答を改善するためにより頻繁に、より高用量でまたはアジュバント添加製剤でワクチン接種する必要があり得る。高齢者または免疫無防備状態個体における使用のために標的し得る抗原は、以下の病原体の1またはそれ以上に由来する抗原を含む:髄膜炎菌、肺炎連鎖球菌、化膿連鎖球菌(A群連鎖球菌)、Moraxella catarrhalis、百日咳菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、破傷風菌(破傷風)、ジフテリア菌(ジフテリア)、インフルエンザ菌B型(Hib)、緑膿菌、レジオネラ・ニューモフィラ菌、Streptococcus agalactiae(B群連鎖球菌)、Enterococcus faecalis、ピロリ菌、Clamydia pneumoniae、オルトミクソウイルス(インフルエンザ)、肺炎ウイルス(RSV)、パラミクソウイルス(PIVおよび流行性耳下腺炎)、麻疹ウイルス(麻疹)、トガウイルス(風疹)、エンテロウイルス(ポリオ)、HBV、コロナウイルス(SARS)、水痘−帯状疱疹ウイルス(VZV)、エプスタイン‐バーウイルス(EBV)、サイトメガロウイルス(CMV)。これらの病原体に由来する特異抗原の例は上述されている。
【0157】
H.青年用ワクチンにおける使用に適する抗原
本発明の組成物は、青年期被験者における使用に適する1またはそれ以上の抗原を含み得る。青年被験者は、典型的には約10−約20歳、または約12−約14歳および約19または20歳である。青年は、以前に投与された小児用抗原の追加免疫を必要とし得る。青年における使用に適すると考えられる小児用抗原は上述されている。加えて、青年は、性活動の開始前に防御または治療免疫を確実にするためにSTD病原体に由来する抗原を摂取する標的であり得る。青年における使用に適し得るSTD抗原は上述されている。
【0158】
I.腫瘍抗原
本発明の組成物は、1またはそれ以上の腫瘍または癌抗原を含み得る。腫瘍抗原は、例えば、ポリペプチド腫瘍抗原または糖タンパク質腫瘍抗原などのペプチド含有腫瘍抗原であり得る。腫瘍抗原はまた、例えば、糖脂質腫瘍抗原またはガングリオシド腫瘍抗原などの糖含有腫瘍抗原であり得る。腫瘍抗原はさらに、例えば、ポリペプチド含有腫瘍抗原、例えばRNAベクター構築物またはプラスミドDNAなどのDNAベクター構築物を発現するポリヌクレオチド含有腫瘍抗原であり得る。
【0159】
腫瘍抗原は、(a)ポリペプチド(例えば8−20アミノ酸長にわたり得るが、この範囲外の長さも一般的である)、リポポリペプチドおよび糖タンパク質を含む、ポリペプチド含有腫瘍抗原、(b)多糖、ムチン、ガングリオシド、糖脂質および糖タンパク質を含む、糖含有腫瘍抗原、および(c)抗原性ポリペプチドを発現するポリヌクレオチドを含む。
【0160】
腫瘍抗原は、例えば(a)癌細胞に関連する完全長分子、(b)欠失、付加および/または置換部分を有する分子を含む、前記完全長分子のホモログおよび修飾形態、および(c)前記完全長分子のフラグメントであり得る。腫瘍抗原は組換え形態で提供され得る。腫瘍抗原は、例えばCD8+リンパ球によって認識されるクラスI拘束性抗原またはCD4+リンパ球によって認識されるクラスII拘束性抗原を含む。
【0161】
以下を含む、数多くの腫瘍抗原が当技術分野において公知である:(a)NY−ESO−1、SSX2、SCP1などの癌精巣抗原ならびにRAGE、BAGE、GAGEおよびMAGEファミリーポリペプチド、例えばGAGE−1、GAGE−2、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、MAGE−4、MAGE−5、MAGE−6およびMAGE−12(例えば黒色腫、肺、頭頸部、NSCLC、乳房、胃腸および膀胱腫瘍に対して使用できる)、(b)突然変異抗原、例えばp53(様々な固形腫瘍、例えば結腸直腸、肺、頭頸部癌に関連する)、p21/Ras(例えば黒色腫、膵癌および結腸直腸癌に関連する)、CDK4(例えば黒色腫に関連する)、MUM1(例えば黒色腫に関連する)、カスパーゼ−8(例えば頭頸部癌に関連する)、CIA0205(例えば膀胱癌に関連する)、HLA−A2−R1701、βカテニン(例えば黒色腫に関連する)、TCR(例えばT細胞非ホジキンリンパ腫に関連する)、BCR−abl(例えば慢性骨髄性白血病に関連する)、トリオースリン酸イソメラーゼ、KIA0205、CDC−27およびLDLR−FUT、(c)過剰発現抗原、例えばガレクチン4(例えば結腸直腸癌に関連する)、ガレクチン9(例えばホジキン病に関連する)、プロテイナーゼ3(例えば慢性骨髄性白血病に関連する)、WT1(例えば様々な白血病に関連する)、カルボニックアンヒドラーゼ(例えば腎癌に関連する)、アルドラーゼA(例えば肺癌に関連する)、PRAME(例えば黒色腫に関連する)、HER−2/neu(例えば乳房、結腸、肺および卵巣癌に関連する)、αフェトプロテイン(例えば肝細胞癌に関連する)、KSA(例えば結腸直腸癌に関連する)、ガストリン(例えば膵癌および胃癌に関連する)、テロメラーゼ触媒タンパク質、MUC−1(例えば乳癌および卵巣癌に関連する)、G−250(例えば腎細胞癌に関連する)、p53(例えば乳癌、結腸癌に関連する)、および癌胎児性抗原(例えば乳癌、肺癌、および結腸直腸癌などの胃腸管の癌に関連する)、(d)共有抗原、例えばMART−1/Melan Aなどの黒色腫−メラノサイト分化抗原、gp100、MC1R、メラノサイト刺激ホルモン受容体、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質−1/TRP1およびチロシナーゼ関連タンパク質−2/TRP2(例えば黒色腫に関連する)、(e)例えば前立腺癌に関連する、PAP、PSA、PSMA、PSH−P1、PSM−P1、PSM−P2などの前立腺関連抗原、(f)免疫グロブリンイディオタイプ(例えば骨髄腫およびB細胞リンパ腫に関連する)、および(g)(i)シアリルTnおよびシアリルLe(例えば乳癌および結腸直腸癌に関連する)などの糖タンパク質ならびに様々なムチン;糖タンパク質は輸送タンパク質に結合していてもよい(例えばMUC−1はKLHに結合し得る);(ii)リポポリペプチド(例えば脂質部分に連結されたMUC−1);(iii)輸送タンパク質に(例えばKLHに)結合していてもよい、多糖(例えばGlobo H合成六糖);(iv)同じく輸送タンパク質(例えばKLH)に結合していてもよい、GM2、GM12、GD2、GD3などのガングリオシド(例えば脳の癌、肺癌、黒色腫に関連する)を含む、ポリペプチド含有抗原および糖含有抗原などの他の腫瘍抗原。
【0162】
他の腫瘍抗原は、p15、Hom/Mel−40、H−Ras、E2A−PRL、H4−RET、IGH−IGK、MYL−RAR、エプスタイン‐バーウイルス抗原、EBNA、E6およびE7を含むヒトパピローマウイルス(HPV)抗原、B型およびC型肝炎ウイルス抗原、ヒトTリンパ球向性ウイルス抗原、TSP−180、p185erbB2、p180erbB−3、c−met、mn−23H1、TAG−72−4、CA19−9、CA72−4、CAM17.1、NuMa、K−ras、p16、TAGE、PSCA、CT7、43−9F、5T4、791Tgp72、β−HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15−3(CA27.29/BCAA)、CA195、CA242、CA−50、CAM43、CD68/KP1、CO−029、FGF−5、Ga733(EpCAM)、HTgp−175、M344、MA−50、MG7−Ag、MOV18、NB/70K、NY−CO−1、RCAS1、SDCCAG16、TA−90(Mac−2結合タンパク質/シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPS等を含む。これらならびに他の細胞成分は、例えば米国特許公開第2002/0007173号およびその中で引用される参考文献に述べられている。
【0163】
本発明に従ったポリヌクレオチド含有抗原は、典型的には上記で列記したようなポリペプチド癌抗原をコードするポリヌクレオチドを含む。好ましいポリヌクレオチド含有抗原は、ポリペプチド癌抗原をインビボで発現することができる、プラスミドベクター(例えばpCMV)などのDNAまたはRNAベクター構築物を含む。
【0164】
腫瘍抗原は、例えば突然変異したまたは変化した細胞成分に由来し得る。変化後、細胞成分はもはやそれらの調節機能を果たさず、それ故細胞は制御されない増殖を経験し得る。変化した細胞成分の代表的な例は、ras、p53、Rb、ウィルムス腫瘍遺伝子によってコードされる変化したタンパク質、ユビキチン、ムチン、DCC、APCおよびMCC遺伝子によってコードされるタンパク質、ならびにneu、甲状腺ホルモン受容体、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体、インスリン受容体、上皮増殖因子(EGF)受容体およびコロニー刺激因子(CSF)受容体などの受容体または受容体様構造を含む。これらならびに他の細胞成分は、例えば米国特許第5,693,522号およびその中で引用される参考文献に述べられている。
【0165】
細菌およびウイルス抗原は、癌の治療のために本発明の組成物と共に使用し得る。CRM197などの輸送タンパク質、破傷風トキソイドまたはネズミチフス菌抗原は、癌の治療のために本発明の化合物と併用/複合して使用し得る。癌抗原併用療法は、既存の治療法と比較して高い効果とバイオアベイラビリティーを示す。
【0166】
癌または腫瘍抗原に関するさらなる情報は、例えばMoingeon(2001)Vaccine 19:1305−1326;Rosenberg(2001)Nature 411:380−384;Dermineら(2002)Brit.Med.Bull.62:149−162;Espinoza−Delgado(2002)The Oncologist 7(補遺3):20−33;Davisら(2003)J.Leukocyte Biol.23:3−29;Van den Eyndeら(1995)Curr.Opin.Immunol.7:674−681;Rosenberg(1997)Immunol.Today 18:175−182;Offringaら(2000)Curr.Opin.Immunol.2:576−582;Rosenberg(1999)Immunity 10:281−287;Sahinら(1997)Curr.Opin.Immunol.9:709−716;Oldら(1998)J.Exp.Med.187:1163−1167;Chauxら(1999)J.Exp.Med.189:767−778;Goldら(1965)J.Exp.Med.122:467−468;Livingstonら(1997)Cancer Immunol.Immunother.45:1−6;Livingstonら(1997)Cancer Immunol.Immunother.45:10−19;Taylor−Papadimitriou(1997)Immunol.Today 18:105−107;Zhaoら(1995)J.Exp.Med.182:67−74;Theobaldら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 92:11993−11997;Gaudernack(1996)Immunotechnology 2:3−9;国際公開広報第WO91/02062号;米国特許第6,015,567号;国際公開広報第WO01/08636号;国際公開広報第WO96/30514号;米国特許第5,846,538号;および米国特許第5,869,445号に見出される。
【0167】
さらなる抗原はまた、外膜小胞(OMV)製剤を含み得る。
【0168】
さらなる製剤方法および抗原(特に腫瘍抗原)は、米国特許公開第2004/0202680号において提供される。また米国特許第6,884,435号も参照のこと。
【0169】
2.免疫アジュバント
ある実施形態では、本発明のワクチンは他の免疫調節剤と併用して投与される。特に、組成物は一般にアジュバントを含む。例えば、アジュバントは抗原含有組成物と同時に、例えば同じ組成物中でまたは別々の組成物中で投与され得る。あるいは、アジュバントは抗原投与の前にまたは抗原投与後に投与され得る。
【0170】
本発明に関する使用のためのアジュバントは、以下に述べるものの1またはそれ以上を含むが、これらに限定されない。
【0171】
A.無機質含有組成物
アジュバントとしての使用に適する無機質含有組成物は、アルミニウム塩およびカルシウム塩などの無機塩を含む。本発明は、水酸化物(例えばオキシ水酸化物)、リン酸塩(例えばヒドロキシリン酸塩、オルトリン酸塩)、硫酸塩等のような無機塩(例えばVaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.とNewman,M.J.編集)(New York:Plenum Press)1995,第8および9章参照)、または種々の無機化合物の混合物(例えば、場合によりリン酸塩過剰の、リン酸塩と水酸化物アジュバントの混合物)を含み、それらの化合物は何らかの適切な形態(例えばゲル、結晶、非晶質等)をとり、塩に吸着していることが好ましい。無機質含有組成物はまた、金属塩の粒子としても製剤され得る(国際公開広報第WO00/23105号)。
【0172】
アルミニウム塩は、Al3+の用量が0.2−1.0mg/用量であるように本発明のワクチンに含有され得る。
【0173】
1つの実施形態では、本発明における使用のためのアルミニウムベースのアジュバントは、ミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム(AlK(SO))、または、リン酸緩衝液中の抗原をミョウバンと混合し、その後水酸化アンモニウムまたは水酸化ナトリウムなどの塩基で滴定および沈殿させることによってインサイチューで形成されるような、ミョウバン誘導体である。
【0174】
本発明のワクチン製剤における使用のためのもう1つのアルミニウムベースのアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバント(AL(OH))または、約500m/gの表面積を有する、優れた吸着剤である結晶性オキシ水酸化アルミニウム(AlOOH)である。もう1つの実施形態では、アルミニウムベースのアジュバントは、水酸化アルミニウムアジュバントのヒドロキシル基の一部または全部の代わりにリン酸基を含む、リン酸アルミニウムアジュバント(AlPO)またはヒドロキシリン酸アルミニウムである。ここで提供される好ましいリン酸アルミニウムアジュバントは、非晶質であり、酸性、塩基性および中性媒質に可溶性である。
【0175】
もう1つの実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウムと水酸化アルミニウムの両方を含む。そのより特定の実施形態では、アジュバントは、リン酸アルミニウム対水酸化アルミニウムの重量比で2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1または9:1以上の比率のように、水酸化アルミニウムを上回る量のリン酸アルミニウムを有する。もう1つの実施形態では、ワクチン中のアルミニウム塩は、ワクチン用量当たり0.4−1.0mg、またはワクチン用量当たり0.4−0.8mg、またはワクチン用量当たり0.5−0.7mg、またはワクチン用量当たり約0.6mgで存在する。
【0176】
一般に、好ましいアルミニウムベースのアジュバント、または、リン酸アルミニウム対水酸化アルミニウムのような、複数のアルミニウムベースのアジュバントの比率は、抗原が所望pHでアジュバントと反対の電荷を担持するように分子間の静電引力の最適化によって選択される。例えばリン酸アルミニウムアジュバント(等電点=4)はpH7.4でリゾチームを吸着するが、アルブミンは吸着しない。アルブミンが標的である場合は、水酸化アルミニウムアジュバントが選択される(等電点=11.4)。あるいは、リン酸塩による水酸化アルミニウムの前処理はその等電点を低下させ、より塩基性の抗原にとって好ましいアジュバントにする。
【0177】
B.油性乳剤
アジュバントとしての使用に適する油性乳剤組成物および製剤(ムラミルペプチドまたは細菌細胞壁成分などの他の特異的免疫刺激剤と共にまたは他の免疫刺激剤なしで)は、MF59(5%スクアレン、0.5%トゥイーン80および0.5%スパン85、マイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に製剤されている)などのスクアレン−水乳剤を含む。国際公開広報第WO90/14837号参照。また、Podda(2001)Vaccine 19:2673−2680;Freyら(2003)Vaccine 21:4234−4237も参照のこと。MF59は、FLUAD(商標)インフルエンザウイルス三価サブユニットワクチンにおいてアジュバントとして使用されている。
【0178】
組成物における使用のための特に好ましいアジュバントは、サブミクロンの水中油型乳剤である。ここでの使用のための好ましいサブミクロン水中油型乳剤は、4−5%w/vスクアレン、0.25−1.0%w/vトゥイーン80(商標)(モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン)および/または0.25−1.0%スパン85(商標)(トリオレイン酸ソルビタン)、および場合によりN−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)を含むサブミクロン水中油型乳剤などの、場合により様々な量のMTP−PEを含むスクアレン/水乳剤、例えば「MF59」として知られるサブミクロン水中油型乳剤(国際公開公報第WO90/14837号;米国特許第6,299,884号;米国特許第6,451,325号;およびOttら、“MF59――Design and Evaluation of a Safe and Potent Adjuvant for Human Vaccines”in Vaccine Design:The Subunit and Adjuvant Approach(Powell,M.F.とNewman,M.J.編集)(New York:Plenum Press)1995,p.277−296)である。MF59は、110Y型マイクロフルイダイザー(Microfluidics,Newton,MA)などのマイクロフルイダイザーを用いてサブミクロン粒子に製剤された、4−5%w/vスクアレン(例えば4.3%)、0.25−0.5%w/vトゥイーン80(商標)および0.5%w/vスパン85(商標)を含み、および場合により様々な量のMTP−PEを含む。例えばMTP−PEは、約0−500μg/用量、より好ましくは0−250μg/用量、最も好ましくは0−100μg/用量の量で存在し得る。ここで使用する、「MF59−0」という用語は、MTP−PEを含まない上記サブミクロン水中油型乳剤を指し、一方MF59−MTPという用語は、MTP−PEを含む製剤を表わす。例えば「MF59−100」は、MTP−PE 100μg/用量を含む、等である。ここでの使用のためのもう1つのサブミクロン水中油型乳剤、MF69は、4.3%w/vスクアレン、0.25%w/vトゥイーン80(商標)および0.75%w/vスパン85(商標)、および場合によりMTP−PEを含む。さらにもう1つのサブミクロン水中油型乳剤は、やはりサブミクロン乳剤にマイクロフルイダイズされた、10%スクアレン、0.4%トゥイーン80(商標)、5%プルロニックブロックポリマーL121およびthr−MDPを含む、SAFとしても知られるMF75である。MF75−MTPは、MTP−PE 100−400μg/用量のような、MTPを含むMF75製剤を表わす。
【0179】
組成物における使用のための、サブミクロン水中油型乳剤、その製造方法およびムラミルペプチドなどの免疫刺激剤は、国際公開公報第WO90/14837号;米国特許第6,299,884号;および米国特許第6,451,325号に詳述されている。
【0180】
フロイント完全アジュバント(CFA)およびフロイント不完全アジュバント(IFA)も、本発明におけるアジュバントとして使用し得る。
【0181】
C.サポニン製剤
サポニン製剤も、本発明におけるアジュバントとしての使用に適する。サポニンは、広範囲の植物種の樹皮、葉、幹、根、さらには花において認められるステロールグリコシドおよびトリテルペノイドグリコシドの異種群である。Quillaia saponaria Molinaの木の樹皮から単離されるサポニンは、アジュバントとして広く研究されてきた。サポニンはまた、Smilax ornata(サルサパリラ)、Gypsophilla paniculata(ブライダルベール)およびSaponaria officianalis(サボンソウの根)から商業的に入手できる。サポニンアジュバント製剤は、QS21などの精製製剤、ならびにISCOMなどの脂質製剤を含む。サポニンアジュバント製剤は、STIMULON(登録商標)アジュバント(Antigenics,Inc.,Lexington,MA)を含む。
【0182】
サポニン組成物は、高速薄層クロマトグラフィー(HP−TLC)および逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)を用いて精製されてきた。QS7、QS17、QS18、QS21、QH−A、QH−BおよびQH−Cを含む、これらの手法を用いた特定精製画分が同定されている。好ましくは、サポニンはQS21である。QS21の生産方法は、米国特許第5,057,540号に開示されている。サポニン製剤はまた、コレステロールなどのステロールを含み得る(国際公開公報第WO96/33739号参照)。
【0183】
サポニンとコレステロールとの組合せは、免疫刺激複合体(ISCOM)と呼ばれる独特の粒子を形成するために使用できる。ISCOMはまた、典型的にはホスファチジルエタノールアミンまたはホスファチジルコリンなどのリン脂質を含む。いかなる公知のサポニンもISCOMにおいて使用できる。好ましくは、ISCOMは、Quil A、QHAおよびQHCの1またはそれ以上を含む。ISCOMはさらに、欧州特許第0109942号、国際公開公報第WO96/11711号および同第WO96/33739号に述べられている。場合により、ISCOMは付加的な界面活性剤を含まなくてもよい。国際公開公報第WO00/07621号参照。
【0184】
サポニンベースのアジュバントの開発の総説は、Barrら(1998)Adv.Drug Del.Rev.32:247−271に見出される。Sjolanderら(1998)Adv.Drug Del.Rev.32:321−338も参照のこと。
D.ビロゾームおよびウイルス様粒子(VLP)
ビロゾームおよびウイルス様粒子(VLP)もアジュバントとして適切である。これらの構造は一般に、場合によりリン脂質と組み合わせたまたはリン脂質と共に製剤された、ウイルスからの1またはそれ以上のタンパク質を含む。それらは一般に非病原性、非複製性であり、一般にいかなる天然ウイルスゲノムも含まない。ウイルスタンパク質は、組換えによって生産され得るかまたは全ウイルスから単離され得る。ビロゾームまたはVLPにおける使用に適するこれらのウイルスタンパク質は、インフルエンザウイルス(HAまたはNAなど)、B型肝炎ウイルス(コアまたはキャプシドタンパク質など)、E型肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、シンドビスウイルス、ロタウイルス、口蹄疫ウイルス、レトロウイルス、ノーウォークウイルス、ヒトパピローマウイルス、HIV、RNAファージ、Qβファージ(コートタンパク質など)、GAファージ、frファージ、AP205ファージ、およびTy(レトロトランスポゾンTyタンパク質p1など)に由来するタンパク質を含む。VLPは、国際公開公報第WO03/024480号;同第WO03/024481号;Niikuraら(2002)Virology 293:273−280;Lenzら(2001)J.Immunol.166(9)5346−5355;Pintoら(2003)J.Infect.Dis.188:327−338;およびGerberら(2001)J.Virol.75(10):4752−4760においてさらに論じられている。ビロゾームは、例えばGluckら(2002)Vaccine 20:B10−B16においてさらに論じられている。免疫増強性再構成インフルエンザビロゾーム(IRIV)が、鼻内三価INFLEXAL(商標)製品(MischlerとMetcalfe(2002)Vaccine 20、Suppl 5:B17−23)およびINFLUVAC PLUS(商標)製品におけるサブユニット抗原送達システムとして使用されている。
【0185】
E.細菌または微生物誘導体
本発明における使用に適するアジュバントは、以下のような細菌または微生物誘導体を含む:
(1)腸内細菌リポ多糖(LPS)の非毒性誘導体:そのような誘導体は、モノホスホリル脂質A(MPL)および3−O−脱アシル化MPL(3dMPL)を含む。3dMPLは、4、5または6位がアシル化された鎖を有する3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aの混合物である。3−O−脱アシル化モノホスホリル脂質Aの好ましい「微小粒子」形態は、欧州特許第0689454号に開示されている。そのような3dMPLの「微小粒子」は、0.22ミクロンの膜を通して滅菌ろ過されるのに十分な程度に小さい(欧州特許第0689454号参照)。他の非毒性LPS誘導体は、リン酸アミノアルキルグルコサミニド誘導体、例えばRC−529などのモノホスホリル脂質Aミミックを含む。Johnsonら(1999)Bioorg.Med.Chem.Lett.9:2273−2278参照。
【0186】
(2)脂質A誘導体:脂質A誘導体は、OM−174などの大腸菌からの脂質Aの誘導体を含む。OM−174は、例えばMeraldiら(2003)Vaccine 21:2485−2491;およびPajakら(2003)Vaccine 21:836−842に述べられている。
【0187】
(3)免疫刺激オリゴヌクレオチド:本発明におけるアジュバントとしての使用に適する免疫刺激オリゴヌクレオチドまたはポリマー分子は、CpGモチーフ(非メチル化シトシンとそれに続くグアノシンを含む、リン酸結合によって連結された配列)を含むヌクレオチド配列を含む。パリンドロームまたはポリ(dG)配列を含む細菌二本鎖RNAまたはオリゴヌクレオチドも、免疫刺激性であることが示された。CpG配列は、ホスホロチオエート修飾などのヌクレオチド修飾/類似体を含むことができ、二本鎖または一本鎖であり得る。場合により、グアノシンは、2’−デオキシ−7−デアザグアノシンなどの類似体で置換されていてもよい。可能な類似体置換の例に関しては、Kandimallaら(2003)Nucl.Acids Res.31(9):2393−2400;国際公開公報第WO02/26757号;および同第WO99/62923号参照。CpGオリゴヌクレオチドのアジュバント作用はさらに、Krieg(2003)Nat.Med.9(7):831−835;McCluskieら(2002)FEMS Immunol.Med.Microbiol.32:179−185;国際公開公報第WO98/40100号;米国特許第6,207,646号;同第6,239,116号;および同第6,429,199号において論じられている。
【0188】
CpG配列は、モチーフGTCGTTまたはTTCGTTなどのTLR9を対象とし得る。Kandimallaら(2003)Biochem.Soc.Trans.31(第3部):654−658参照。CpG配列は、CpG−A ODNなどのTh1免疫応答を誘導することに特異的であり得るか、またはCpG−B ODNなどのB細胞応答を誘導することにより特異的であり得る。CpG−AおよびCpG−B ODNは、Blackwellら(2003)J.Immnol.170(8):4061−4068;Krieg(2002)TRENDS Immunol.23(2):64−65;および国際公開公報第WO01/95935号において論じられている。好ましくは、CpGはCpG−A ODNである。
【0189】
好ましくは、CpGオリゴヌクレオチドは、5’末端が受容体認識のためにアクセス可能であるように構築される。場合により、2個のCpGオリゴヌクレオチドがそれらの3’末端で結合して、「イムノマー」を形成し得る。例えばKandimallaら(2003)BBRC 306:948−953;Kandimallaら(2003)Biochem.Soc.Trans.31(part3):664−658;Bhagatら(2003)BBRC 300:853−861;および国際公開公報第WO03/035836号参照。
【0190】
免疫刺激オリゴヌクレオチドおよびポリマー分子はまた、ポリビニル骨格(Pithaら(1970)Biochem.Biophys.Acta 204(1):39−48;Pithaら(1970)Biopolymers 9(8):965−977)、およびモルホリノ骨格(米国特許第5,142,047号;同第5,185,444号)などの、しかしこれらに限定されない、選択的ポリマー骨格構造を含む。様々な他の荷電および非荷電ポリヌクレオチド類似体が当技術分野において公知である。非荷電結合(例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホアミデート、カルバメート)および荷電結合(例えばホスホロチオエートおよびホスホロジチオエート)を含むが、これらに限定されない、数多くの骨格修飾が当技術分野において公知である。
【0191】
(4)ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体:細菌ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体は、本発明におけるアジュバントとして使用し得る。好ましくは、タンパク質は、大腸菌(すなわち大腸菌易熱性エンテロトキシン「LT」)、コレラ菌(「CT」)または百日咳菌(「PT」)に由来する。粘膜アジュバントとしての無毒化ADP−リボシル化毒素の使用は国際公開公報第WO95/17211号に、および非経口アジュバントとしての使用は国際公開公報第WO98/42375号に述べられている。好ましくは、アジュバントは、LT−K63、LT−R72およびLTR192Gなどの無毒化LT突然変異体である。ADP−リボシル化毒素およびその無毒化誘導体、特にLT−K63およびLT−R72のアジュバントとしての使用は、以下の参考文献に見出される:Beignonら(2002)Infect.Immun.70(6):3012−3019;Pizzaら(2001)Vaccine 19:2534−2541;Pizzaら(2000)Int.J.Med.Microbiol.290(4−5):455−461;Scharton−Kerstenら(2000)Infect.Immun.68(9):5306−5313;Ryanら(1999)Infect.Immun.67(12):6270−6280;Partidosら(1999)Immunol.Lett.67(3):209−216;Peppoloniら(2003)Vaccines 2(2):285−293;およびPineら(2002)J.Control Release 85(1−3):263−270。アミノ酸置換についての数字参照は、好ましくは、Domenighiniら(1995)Mol.Microbiol.15(6):1165−1167に示されているADP−リボシル化毒素のAおよびBサブユニットのアラインメントに基づく。
【0192】
「ER 803058」、「ER 803732」、「ER 804053」、「ER 804058」、「ER 804059」、「ER 804442」、「ER 804680」、「ER 804764」、「ER 803022」または「ER 804057」などの、国際公開広報第WO03/011223において定義される、式I、IIまたはIIIの化合物、またはそれらの塩:
【0193】
【化1】

例えば:
【0194】
【化2】

も、アジュバントとして使用することができる。
【0195】
F.ヒト免疫調節剤
アジュバントとしての使用に適するヒト免疫調節剤は、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−12等)、インターフェロン(例えばインターフェロン−γ)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)および腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカインを含む。
【0196】
G.生体接着剤および粘膜接着剤
生体接着剤および粘膜接着剤もアジュバントとして使用し得る。適切な生体接着剤は、エステル化ヒアルロン酸ミクロスフェア(Singhら(2001)J.Cont.Release.70:267−276)、またはポリアクリル酸の架橋誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、多糖およびカルボキシメチルセルロースなどの粘膜接着剤を含む。キトサンおよびその誘導体も、本発明におけるアジュバントとして使用し得る(国際公開公報第WO99/27960号参照)。
【0197】
H.リポソーム
アジュバントとしての使用に適するリポソーム製剤の例は、米国特許第6,090,406号;同第5,916,588号;および欧州特許公開第0626169号に述べられている。
【0198】
I.ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステル製剤
本発明における使用に適するアジュバントは、ポリオキシエチレンエーテルおよびポリオキシエチレンエステルを含む(例えば国際公開公報第WO99/52549号参照)。そのような製剤は、オクトキシノールと組み合わせたポリオキシエチレンソルビタンエステル界面活性剤(国際公開公報第WO01/21207号)ならびにオクトキシノールなどの少なくとも1つの付加的な非イオン性界面活性剤と組み合わせたポリオキシエチレンアルキルエーテルまたはエステル界面活性剤(国際公開公報第WO01/21152号)をさらに含む。
【0199】
好ましいポリオキシエチレンエーテルは、以下の群:ポリオキシエチレン−9−ラウリルエーテル(ラウレス9)、ポリオキシエチレン−9−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−8−ステオリルエーテル、ポリオキシエチレン−4−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−35−ラウリルエーテル、およびポリオキシエチレン−23−ラウリルエーテルから選択される。
【0200】
J.ポリホスファゼン(PCPP)
アジュバントとしての使用に適するPCPP製剤は、例えばAndrianovら(1998)Biomaterials 19(1−3):109−115;およびPayneら(1998)Adv.Drug.Del.Rev.31(3):185−196に述べられている。
【0201】
K.ムラミルペプチド
アジュバントとしての使用に適するムラミルペプチドの例は、N−アセチルムラミル−L−トレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミン(nor−MDP)、およびN−アセチルムラミル−l−アラニル−d−イソグルタミニル−l−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(MTP−PE)を含む。
【0202】
L.イミダゾキノリン化合物
アジュバントとしての使用に適するイミダゾキノリン化合物の例は、イミキモドおよびその類似体を含み、それらは、Stanley(2002)Clin.Exp.Dermatol.27(7):571−577;Jones(2003)Curr.Opin.Investig.Drugs 4(2):214−218;および米国特許第4,689,338号;同第5,389,640号;同第5,268,376号;同第4,929,624号;同第5,266,575号;同第5,352,784号;同第5,494,916号;同第5,482,936号;同第5,346,905号;同第5,395,937号;同第5,238,944号;および同第5,525,612号においてさらに説明されている。
【0203】
M.チオセミカルバゾン化合物
アジュバントとしての使用に適するチオセミカルバゾン化合物の例、ならびにそのような化合物を製剤する、製造する、およびスクリーニングする方法は、国際公開公報第WO04/60308号に述べられているものを含む。チオセミカルバゾンは、TNF−αなどのサイトカインの生産のためのヒト末梢血単核細胞の刺激において特に有効である。
【0204】
N.トリプタントリン化合物
アジュバントとしての使用に適するトリプタントリン化合物の例、ならびにそのような化合物を製剤する、製造する、およびスクリーニングする方法は、国際公開公報第WO04/64759号に述べられているものを含む。トリプタントリン化合物は、TNF−αなどのサイトカインの生産のためのヒト末梢血単核細胞の刺激において特に有効である。
【0205】
O.ヌクレオシド類似体
様々なヌクレオシド類似体、例えば(a)イサトラビン(Isatorabine)(ANA−245;7−チア−8−オキソグアノシン):
【0206】
【化3】

およびそのプロドラッグ;(b)ANA975;(c)ANA−025−1;(d)ANA380;(e)米国特許第6,924,271号;米国特許公開第2005/0070556号;および米国特許第5,658,731号に開示されている化合物;(f)式:
【0207】
【化4】

[式中、
およびRは、各々独立してH、ハロ、−NR、−OH、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
は、存在しないか、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
およびRは、各々独立してH、ハロ、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリル、−C(O)−R、C1−6アルキル、置換C1−6アルキルであるか、または一緒に結合してR4−5
【0208】
【化5】

[結合は
【0209】
【化6】

によって示される結合で達成される]
として5員環を形成し;
およびXは、各々独立してN、C、OまたはSであり;
は、H、ハロ、−OH、C1−6アルキル、C2−6アルケニル、C2−6アルキニル、−OH、−NR、−(CH−O−R、−O−(C1−6アルキル)、−S(O)、または−C(O)−Rであり;
は、H、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、ヘテロシクリル、置換ヘテロシクリルまたはR9aであり、R9aは:
【0210】
【化7】

[結合は
【0211】
【化8】

によって示される結合で達成される]
であり;
10およびR11は、各々独立してH、ハロ、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NR、または−OHであり;
各々のRおよびRは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)R、C6−10アリールであり;
各々のRは、独立してH、リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、C1−6アルキル、または置換C1−6アルキルであり;
各々のRは、独立してH、ハロ、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C1−6アルコキシ、置換C1−6アルコキシ、−NH、−NH(C1−6アルキル)、−NH(置換C1−6アルキル)、−N(C1−6アルキル)、−N(置換C1−6アルキル)、C6−10アリール、またはヘテロシクリルであり;
各々のRは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、C6−10アリール、置換C6−10アリール、ヘテロシクリル、または置換ヘテロシクリルであり;
各々のRは、独立してH、C1−6アルキル、置換C1−6アルキル、−C(O)R、リン酸塩、二リン酸塩、または三リン酸塩であり;
各々のnは、独立して0、1、2または3であり;
各々のpは、独立して0、1、2または3である]
を有する化合物;または(g)(a)−(f)のいずれかの医薬的に許容される塩、(a)−(f)のいずれかの互変異性体、または互変異性体の医薬的に許容される塩
が、アジュバントとして使用できる。
【0212】
P.リン酸含有非環式骨格に連結された脂質
リン酸含有非環式骨格に連結された脂質を含むアジュバントは、TLR4拮抗物質E5564(Wongら(2003)J.Clin.Pharmacol.43(7):735−742;米国特許出願第2005/0215517号):
【0213】
【化9】

を含む。
【0214】
Q.低分子免疫増強剤(SMIP)
SMIPは以下を含む:
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−エチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・1−(2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−ペンチル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N2−プロプ−2−エニル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・1−(2−メチルプロピル)−2−[(フェニルメチル)チオ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;
・1−(2−メチルプロピル)−2−(プロピルチオ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−4−アミン;
・2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エタノール;
・2−[[4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−イル](メチル)アミノ]エチルアセテート;
・4−アミノ−1−(2−メチルプロピル)−1,3−ジヒドロ−2H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2−オン;
・N2−ブチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−ブチル−N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2−メチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・N2,N2−ジメチル−1−(2−メチルプロピル)−N4,N4−ビス(フェニルメチル)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン;
・1−{4−アミノ−2−[メチル(プロピル)アミノ]−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル}−2−メチルプロパン−2−オール;
・1−[4−アミノ−2−(プロピルアミノ)−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−1−イル]−2−メチルプロパン−2−オール;
・N4,N4−ジベンジル−1−(2−メトキシ−2−メチルプロピル)−N2−プロピル−1H−イミダゾ[4,5−c]キノリン−2,4−ジアミン。
【0215】
R.プロテオソーム
1つのアジュバントは、第二のグラム陰性細菌に由来するリポ糖製剤と組み合わせた第一グラム陰性細菌から作製される外膜タンパク質プロテオソーム製剤であり、外膜タンパク質プロテオソームとリポ糖製剤は、安定な非共有結合アジュバント複合体を形成する。そのような複合体は、髄膜炎菌外膜とリポ多糖から成る複合体、「IVX−908」を含む。それらはインフルエンザワクチンのためのアジュバントとして使用されてきた(国際公開広報第WO02/072012号)。
【0216】
S.他のアジュバント
免疫刺激剤として働く他の物質は、Burdman,J.R.ら(編集)(1995)(Vaccine Design:Subunit and Adjuvant Approach(Springer)(第7章)およびO’Hagan,D.T.(2000)(Vaccine Adjuvants:Preparation Methods and Research Protocols(Humana Press)(Methods in Molecular Medicineシリーズの第42巻)に開示されている。
【0217】
さらなる有用なアジュバント物質は以下を含む:
・メチルイノシン5’−一リン酸(“MIMP”)(SignorelliとHadden(2003)Int.Immunopharmacol.3(8):1177−1186)。
・式:
【0218】
【化10】

[式中、Rは、水素、直鎖または分枝、非置換または置換、飽和または不飽和アシル、アルキル(例えばシクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基、あるいはそれらの医薬的に許容される塩または誘導体を含む群から選択される]
を有するものなどの、ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物(国際公開広報第WO2004/064715号)。例は、カジュアリン(casuarine)、カジュアリン−6−α−D−グルコピラノース、3−エピ−カジュアリン、7−エピ−カジュアリン、3,7−ジエピ−カジュアリン等を含む。
・γイヌリン(Cooper(1995)Pharm.Biotechnol.6:559−580)またはアルガムリンなどのその誘導体。
・国際特許出願第PCT/US2005/022769号に開示されている化合物。
・アシルピペラジン化合物、インドールジオン化合物、テトラヒドロイソキノリン(THIQ)化合物、ベンゾシクロジオン化合物、アミノアザビニル化合物、アミノベンズイミダゾールキノリノン(ABIQ)化合物(米国特許第6,605,617号;国際公開広報第WO02/18383号)、ヒドロフタルアミド化合物、ベンゾフェノン化合物、イソキサゾール化合物、ステロール化合物、キナゾリノン化合物、ピロール化合物(国際公開広報第WO2004/018455号)、アントラキノン化合物、キノキサリン化合物、トリアジン化合物、ピラゾロピリミジン化合物、およびベンズアゾール化合物(国際公開広報第WO03/082272号)を含む、国際公開広報第WO2004/87153号に開示されている化合物。
・ロキソリビン(7−アリル−8−オキソグアノシン(米国特許第5,011,828号)。
・アミノプロピル−ジメチル−ミリストレイルオキシ−プロパナミニウムブロマイド−ジフィタノイルホスファチジル−エタノールアミン(「Vaxfectin(商標)」)またはアミノプロピル−ジメチル−ビス−ドデシルオキシ−プロパナミニウムブロマイド−ジオレオイルホスファチジル−エタノールアミン(「GAP−DLRIE:DOPE」)などの、カチオン脂質と(通常は中性の)共脂質の製剤。(±)−N−(3−アミノプロピル)−N,N−ジメチル−2,3−ビス(シン−9−テトラデセネイルオキシ)−1−プロパナミニウム塩を含む製剤が好ましい(米国特許第6,586,409号)。
【0219】
本発明はまた、上記で特定したアジュバントの1またはそれ以上の態様の組合せを含み得る。例えば以下のアジュバント組成物は本発明において使用し得る:(1)サポニンおよび水中油型乳剤(国際公開広報第WO99/11241号);(2)サポニン(例えばQS21)+非毒性LPS誘導体(例えば3dMPL)(国際公開広報第WO94/00153号参照);(3)サポニン(例えばQS21)+非毒性LPS誘導体(例えば3dMPL)+コレステロール;(4)サポニン(例えばQS21)+3dMPL+IL−12(場合により+ステロール)(国際公開広報第WO98/57659号);(5)例えばQS21および/または水中油型乳剤と3dMPLの組合せ(欧州特許第0835318号;同第0735898号;および同第0761231号参照);(6)10% スクアラン、0.4%トゥイーン80、5%プルロニックブロックポリマーL121、およびサブミクロン乳剤にマイクロフルイダイズされるかまたはより大きな粒径の乳剤を生成するためにボルテックスされたthr−MDPを含有する、SAF;(7)2%スクアレン、0.2%トゥイーン80、およびモノホスホリル脂質A(MPL)、トレハロースジミコレート(TDM)および細胞壁骨格(CWS)から成る群からの1またはそれ以上の細菌細胞壁成分、好ましくはMPL+CWS(Detox(商標))を含有する、Ribi(商標)アジュバント系(RAS)(Ribi Immunochem,Hamilton,MT);(8)1またはそれ以上の無機塩(アルミニウム塩など)+LPSの非毒性誘導体(例えば3dPML);(9)1またはそれ以上の無機塩(アルミニウム塩など)+免疫刺激オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むヌクレオチド配列など)。
【0220】
アルミニウム塩およびMF59は、注射用インフルエンザワクチンに関する使用のための好ましいアジュバントである。細菌毒素および生体接着剤は、鼻内ワクチンなどの経粘膜送達ワクチンに関する使用のための好ましいアジュバントである。
【0221】
3.カチオン性多糖
本発明における使用のためのカチオン性多糖は、数ある中でも特に、以下の適切な成員から選択される1またはそれ以上の官能基を有するまたは有することができる(例えばプロトン化によって)多糖を含む:中でも特に、荷電した第一級(−NH)、第二級および第三級アミノ基を含む荷電アミノ基、アミジニウム基、グアニジニウム基、トリアゾリウム基、イミダゾリウム基、イミダゾリニウム基、ピリジニウム基、第一級(−SH)および第二級スルホニウム基を含むスルホニウム基、ヒドロスルフィド基、第一級(−PH)、第二級および第三級ホスホニウム基を含むホスホニウム基、イソチオウロニウム基、ニトロシル基、ニトリル基、トロピリウム基、ヨードニウム基、アンチモン基、オキソニウム基、およびアニリニウム基。
【0222】
ある実施形態では、カチオン性多糖は、その骨格に沿って多数のアミノ基を含み、6−7の範囲にわたるpKaを有する。その結果として、これらの種のアミノ基の分画だけが生理的pHでイオン化される。
【0223】
アミノ置換カチオン性多糖の具体例は、1またはそれ以上のアルドサミンまたはケトサミンモノマー単位、例えばD−グルコサミンモノマー単位を含有するカチオン性多糖を含む。例えばカチオン性多糖は、D−グルコサミンとN−アセチル−D−グルコサミンモノマー単位の組合せを含む、公知の、おそらく最も顕著なキトサンである。
【0224】
キトサンは、特に、無作為に分布するβ−(1−4)連結D−グルコサミンおよびN−アセチル−D−グルコサミンモノマー単位を含み、主としてN−アセチル−D−グルコサミンの非分枝鎖から成るセルロース様ポリマーである、キチンのアルカリ処理によるN−脱アセチル化によって商業的に生産される。市販のキトサンのアセチル化の程度は、一般に60−70−80−90−100%にわたるが、基本的にはいかなる程度のアセチル化も可能である。キトサンは生体適合性であり、生分解性である。キトサンは、酸性から中性の溶液中で正に荷電し、電荷密度はpHと脱アセチル化の程度に依存する。キトサンのpKa値は一般に、脱アセチル化の程度に依存して、6.1−7.0の範囲である。それ故、蒸留水には実質的に不溶性であるが、キトサンは希酸水溶液(例えばpH=6.5またはそれ以下)中では一般に可溶性である。キトサンは、典型的には無機酸(すなわち塩酸)に比べて有機酸(すなわち酢酸)により可溶性である。分子量は広い範囲をとることができ(例えば1,000未満から2,500−5,000−10,000−25,000−50,000−100,000−250,000−500,000−1,000,000−2,500,000−5,000,000−10,000,000g/molまたはそれ以上)、市販のキトサンは、典型的には分子量100,000−1,200,000g/molの範囲である。キトサンの具体例は、100,000g/molまたはそれ以下から150,000g/mol−250,000g/mol−500,000g/mol−750,000g/mol−1,000,000g/molまたはそれ以上の範囲の分子量、60%またはそれ以下から75%−85%−95%またはそれ以上の範囲の脱アセチル化の程度、またはその両方の組合せを有するものを含む。
【0225】
4.ミクロ粒子組成物
ここで述べるミクロ粒子組成物を形成するために有用なポリマーは、以下から誘導されるホモポリマー、コポリマーおよびポリマーブレンドを含む:数ある中でも特に、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトンを含むポリラクトン、ポリジオキサノンおよびポリバレロラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリシアノアクリレート、チロシン由来のポリカーボネートおよびポリエステルアミド。ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−ラクチド)(ここではどちらも「PLA」として知られる)、ポリ(ヒドロキシブチレート)などのポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(ここでは「PLG」と称する)などのラクチドとグリコリドのコポリマー、またはD,L−ラクチドとカプロラクトンのコポリマーがより典型的である。
【0226】
上記ポリマーは様々な分子量で入手可能であり、所与の用途のための適切な分子量は、当業者によって容易に決定される。それ故、例えばPLAについての適切な分子量は、約2,000−5,000であり得る。PLGについての適切な分子量は、約5,000−約200,000の範囲であり得る。
【0227】
コポリマーを使用する場合、様々なモノマー比を有するコポリマーが使用可能であり得る。例えばミクロ粒子を形成するためにPLGを使用する場合、様々なラクチド:グリコリドのモル比がここで使用でき、その比率は、一部には同時投与される吸着および/または封入種および所望分解速度に依存するが、主として選択の問題である。例えば50%D,L−ラクチドと50%グリコリドを含む50:50PLGポリマーはより速やかな吸収性コポリマーを提供するのに対し、75:25PLGはより緩やかに分解し、85:15および90:10は、ラクチド成分の上昇により、さらに一層緩やかに分解する。多様なラクチド:グリコリド比を有するミクロ粒子の混合物も、所望放出速度を達成するためにここで使用され得る。本発明のミクロ粒子の分解速度はまた、ポリマーの分子量およびポリマーの結晶度などの因子によっても制御され得る。
【0228】
様々なラクチド:グリコリド比と分子量を有するPLGコポリマーは、Boehringer Ingelheim,GermanyおよびBirmingham Polymers,Inc.,Birmingham,AL.を含む多くの供給源から市販のものを容易に入手し得る。一部の例示的なPLGコポリマーは、(a)RG502、50:50のラクチド/グリコリドモル比および12,000Daの分子量を有するPLG;(b)RG503、50:50のラクチド/グリコリドモル比および34,000Daの分子量を有するPLG;(c)RG504、50:50のラクチド/グリコリドモル比および48,000Daの分子量を有するPLG;(d)RG752、75:25のラクチド/グリコリドモル比および22,000Daの分子量を有するPLG;および(e)RG755、75:25のラクチド/グリコリドモル比および68,000Daの分子量を有するPLGを含む。PLGポリマーはまた、Tabataら(1988)(J.Biomed.Mater.Res.22:837−858)に述べられているような、当技術分野で周知の手法を使用して乳酸成分の簡単な重縮合によっても合成できる。
【0229】
使用する場合、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーは、典型的には20:80−80:20、より典型的には40:60−60:40の範囲のラクチド/グリコリドモル比を有し、および10,000−100,000ダルトン、より典型的には20,000ダルトン−70,000ダルトンの範囲の分子量を有するものである。
【0230】
ミクロ粒子は、当技術分野で周知のいくつかの方法のいずれかを用いて作製し得る。例えば一部の実施形態では、米国特許第3,523,907号およびOgawaら、Chem.Pharm.Bull.(1988)36:1095−1103に述べられているような、二重乳化/溶媒蒸発手法が、ミクロ粒子を作製するためにここで使用できる。これらの手法は、ポリマー溶液の小滴から成る一次乳剤の形成を含み、一次乳剤はその後、粒子安定剤/界面活性剤を含む連続水相と混合される。
【0231】
他の実施形態では、ミクロ粒子はまた、例えばThomasinら(1996)J. Controlled Release 41:131;米国特許第2,800,457号;Masters,K.(1976)Spray Drying 第2版、Wiley,New Yorkに述べられているような噴霧乾燥およびコアセルベーション;Hallら(1980)The “Wurster Process”in Controlled Release Technologies:Methods,Theory,and Applications(A.F.Kydonieus編集)、第2巻、p.133−154 CRC Press,Boca Raton,FloridaおよびDeasy,P.B.(1988)Crit.Rev.Ther.Drug Carrier Syst.S(2):99−139によって述べられているような、パンコーティングおよびWursterコーティングなどの気中懸濁被覆手法;および、例えばLimら(1980)Science 210:908−910によって述べられているようなイオンゲル化を使用して形成され得る。
【0232】
一部の実施形態では、水中油中水型(w/o/w)溶媒蒸発システムは、O’Haganら、(1993)Vaccine11:965−969、O’Haganら、国際公開広報第WO00/06123号、およびJefferyら(1993)Pharm.Res.10:362によって述べられているように、ミクロ粒子を形成するために使用できる。
【0233】
この方法では、PLGなどの対象とするポリマーを、典型的には、酢酸エチル、ジメチルクロリド(塩化メチレンおよびジクロロメタンとも呼ばれる)、アセトニトリル、アセトン、クロロホルム等のような有機溶媒に溶解する。ポリマーは、典型的には有機溶媒中約1−30%、より典型的には約2−15%、さらに一層典型的には約3−10%、最も典型的には約4−8%溶液w/vで提供される。次に、ポリマー溶液を第一容積の水溶液と併合し、乳化してo/w乳剤を形成する。水溶液は、例えば脱イオン水、生理食塩水、緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはクエン酸ナトリウム/エチレンジアミン四酢酸(クエン酸ナトリウム/EDTA)緩衝液であり得る。後者の溶液は、(a)通常の生理的液体と基本的に同じ張度、すなわち浸透圧を提供し、および(b)通常の生理的条件と適合性のpHを維持することができる。あるいは、本発明の組成物の張度および/またはpH特性は、ミクロ粒子形成のために所望に応じて最適化でき、投与のために所望に応じてミクロ粒子形成後に調整できる。好ましくは、ポリマー溶液対水溶液の容積比は、約10:1−約2:1、より好ましくは約5:1の範囲である。乳化は、この作業のための適切な装置を使用して実施され、典型的には、例えばホモジナイザーなどの高せん断装置である。
【0234】
一部の実施形態では、1またはそれ以上の付加的な成分がミクロ粒子内に封入される。例えば抗原および免疫アジュバントなどの免疫学的種ならびに以下で述べるような他の任意の補足成分を、(a)油溶性または油分散性形態であれば、ポリマー溶液に、または(b)水溶性または水分散性形態であれば、水溶液に添加することによって導入できる。
【0235】
一部の実施形態では、追加成分(例えば、中でも特に、CpGオリゴヌクレオチドなどの負に荷電した成分)は、1またはそれ以上のカチオン性多糖と複合して、水溶液中で提供される。これらの実施形態では、カチオン性多糖対追加成分の重量比は、例えば0.0001:1−0.01:1の範囲であり得、およびカチオン性多糖対生分解性ポリマーの重量比は、例えば0.00005:1−0.005:1の範囲であり得る。
【0236】
一定容積のo/w乳剤を、次に、例えば1またはそれ以上のカチオン性多糖および/または1またはそれ以上の界面活性剤を含み得る、より大きな第二の容積の水溶液と併合する。水溶液は、数ある可能性の中で特に、例えば脱イオン水、生理食塩水、緩衝液、例えばリン酸緩衝生理食塩水(PBS)またはクエン酸ナトリウム/エチレンジアミン四酢酸(クエン酸ナトリウム/EDTA)緩衝液であり得る。後者の溶液は、(a)通常の生理的液体と基本的に同じ張度、すなわち浸透圧を提供し、および(b)通常の生理的条件と適合性のpHを維持することができる。あるいは、本発明の組成物の張度および/またはpH特性は、ミクロ粒子形成のために所望に応じて最適化でき、投与のためにミクロ粒子形成後に調整できる。例えばキトサンをカチオン性多糖として使用する場合、溶液は1%(v/v)酢酸を含み得る。ある実施形態では、カチオン性多糖および/または界面活性剤は、水溶液の代わりにまたは水溶液に加えて、上記有機溶液に添加し得る。水溶液対o/w乳剤の容積比は、典型的には約2:1−10:1、より典型的には約4:1の範囲である。
【0237】
キトサンなどのカチオン性多糖がこの段階で供給される場合、典型的には約0.1−1w/w%溶液、より典型的には約0.4−0.6%w/w溶液中で提供される。約0.0001:1−約0.1:1の範囲内の多糖対ポリマー重量比が典型的に使用され、より典型的には約0.0005:1−約0.025:1、より典型的には約0.001:1−約0.01:1の重量比が使用される。
【0238】
CTABなどのカチオン性多糖がこの段階で供給される場合、典型的には約0.00025−1%溶液、より典型的には約0.0025−0.1%溶液中で提供される。DSSなどのアニオン性界面活性剤が使用される場合、典型的には約0.00001−0.025%溶液、より典型的には約0.0001−0.0025%溶液中で提供される。PVAなどの非イオン性界面活性剤が使用される場合、典型的には約2−15%溶液、より典型的には約4−10%溶液中で提供される。カチオン性界面活性剤については、約0.00001:1−約0.5:1の範囲内の界面活性剤対ポリマー重量比が典型的に使用され、より典型的には約0.001:1−約0.1:1、さらに一層典型的には約0.0025:1−約0.05:1の重量比が使用される;DSSなどのアニオン性界面活性剤については、約0.00001:1−約0.025:1の範囲内の界面活性剤対ポリマー重量比が典型的に使用され、より典型的には約0.0001:1−約0.0025:1の重量比が使用される;PVAなどの非イオン性界面活性剤については、約0.001:1−約0.1:1の範囲内の界面活性剤対ポリマー重量比が典型的に使用され、より典型的には約0.0025:1−約0.05:1の重量比が使用される。
【0239】
次に、安定なw/o/w二重乳剤を生成するためにこの混合物を均質化する。上記均質化工程の各々は、典型的には室温(すなわち25℃)またはそれ以下で、より典型的にはそれ以下で、例えば氷浴内で冷却しながら実施される。
【0240】
製剤パラメータは、約0.05μm(50nm)の小さなミクロ粒子から50μmまたはさらに一層大きなミクロ粒子までの作製を可能にするように操作され得る。例えばJefferyら(1993)Pharm.Res.10:362−368;McGeeら(1996)J.Microencap.参照。例えば攪拌の減弱は、内部相容積の上昇およびポリマー濃度の上昇と同様に、典型的にはより大きなミクロ粒子を生じさせる。小さな粒子は、典型的には攪拌の増大ならびに低い水相容積、高濃度の乳剤安定剤およびポリマー濃度の低下によって生産される。
【0241】
その後有機溶媒を蒸発させる。作製後、ミクロ粒子はそのままで使用できるかまたは将来の使用のために凍結乾燥することができる。
【0242】
粒径は、上述したように測定できる。
【0243】
作製後、抗原および免疫アジュバントなどの免疫学的種ならびに以下で述べるような他の任意の補足成分を含む、様々な成分をミクロ粒子と混合することができ、生じた製剤を、所望する場合は、使用前に凍結乾燥することができる。しばしば、これらの成分は水溶液または分散としてミクロ粒子に添加される。一部の場合には、これらの種はミクロ粒子の表面に吸着される(例えば、様々な種がミクロ粒子表面に吸着されている以下の実施例参照)。吸着された種の含量は、標準的な手法を用いて測定できる。
【0244】
吸着種の放出特徴は、凍結乾燥後に特性決定され得る。例えばある実施形態では、凍結乾燥組成物10mgを水1mlに再構成したとき、本発明の組成物は、吸着された免疫アジュバントの総量の10%−20%−30%−40%−50%が再構成後15日間を超えてにわたってミクロ粒子から放出される放出プロフィールを示す。
【0245】
そこで、上記のような手法を用いて、本発明のポリマーミクロ粒子は、その上に吸着された様々な成分ならびにその中に封入または被包された様々な成分を有し得る。
【0246】
5.補足成分
本発明の免疫原性組成物は、極めて多様な任意の補足成分を含有し得る。そのような補足成分は、数ある成分の中でも特に以下を含む:(a)抗生物質および抗ウイルス薬、非ステロイド系抗炎症薬、鎮痛薬、血管拡張薬、心臓血管薬、向精神薬、神経弛緩薬、抗うつ薬、抗パーキンソン薬、β遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬、ブラジキニン阻害薬、ACE阻害薬、血管拡張薬、プロラクチン阻害薬、ステロイド、ホルモン拮抗物質、抗ヒスタミン薬、セロトニン拮抗物質、ヘパリン、化学療法剤、PDGF、EGF、KGF、IGF−1およびIGF−2、FGFを含むがこれらに限定されない抗腫瘍薬および増殖因子などの薬剤、(b)インスリン、プロインスリン、成長ホルモン、GHRH、LHRH、EGF、ソマトスタチン、SNX−111、BNP、インスリノトロピン、ANP、FSH、LH、PSHおよびhCG、性腺ステロイドホルモン(アンドロゲン、エストロゲンおよびプロゲステロン)、甲状腺刺激ホルモン、インヒビン、コレシストキニン、ACTH、CRF、ダイノルフィン、エンドルフィン、エンドセリン、フィブロネクチンフラグメント、ガラニン、ガストリン、インスリノトロピン、グルカゴン、GTP結合タンパク質フラグメント、グアニリン、ロイコキニン、マガイニン、マストパラン、デルマセプチン、システミン、ニューロメジン、ニューロテンシン、パンクレアスタチン、膵ポリペプチド、サブスタンスP、セクレチン、サイモシン等のようなペプチドホルモンを含むホルモン、(c)酵素、(d)転写または翻訳メディエイタ、および(e)代謝経路における中間体。
【0247】
そのような補足成分は、例えばミクロ粒子の表面に吸着される、ミクロ粒子内に封入される、ミクロ粒子に結合せずに溶液中に溶解または分散する、もう1つ別の群のミクロ粒子に吸着または封入される、等であり得る。
【0248】
5.投与
ひとたび製剤(および必要に応じて再懸濁)されれば、本発明のミクロ粒子組成物は非経口的に、例えば注射によって(無針でもよい)投与することができる。これに関して、ミクロ粒子組成物は、再懸濁媒質(例えば注射用蒸留水)を供給するためおよび生じた懸濁液を回収するための隔壁または他の適切な手段と共に供給されるバイアルまたは他の容器において凍結乾燥形態で供給され得る。適切な注射器も、注射のために供給され得る。
【0249】
組成物は、例えば皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内または腹腔内経路で注入され得る。他の投与方法は、鼻、眼内、直腸、膣、経口および肺投与、および経皮適用を含む。
【0250】
一部の実施形態では、本発明の組成物は部位特異的標的送達のために使用できる。例えば組成物の静脈内投与は、肺、肝臓、脾臓、血液循環または骨髄を標的するために使用できる。
【0251】
本発明のミクロ粒子組成物は、一般に1またはそれ以上の医薬的に許容される賦形剤を含む。例えば水、生理食塩水、グリセロール、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、エタノール等のようなビヒクルが使用され得る。湿潤剤または乳化剤、生物学的緩衝物質等のような他の賦形剤も存在し得る。生物学的緩衝剤は、薬理的に許容され、所望pH、すなわち生理的範囲内のpHを有する製剤を提供する、実質的にいかなる溶液でもあり得る。例は、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、トリス緩衝生理食塩水、ハンクス緩衝生理食塩水等を含む。最終投与形態に依存して、結合剤、崩壊剤、充填剤(希釈剤)、潤滑剤、すべり剤(流動促進剤)、圧縮補助剤、着色料、甘味料、防腐剤、懸濁化/分散剤、薄膜形成剤/被覆剤、香味料および印刷インクを含む、当技術分野で公知の他の賦形剤も導入できる。
【0252】
治療は、単回投与スケジュールまたは多回投与スケジュールに従って実施し得る。多回投与スケジュールは、一次投与課程を、例えば1−10回の別々の投与で実施し、次いで、治療応答を維持するおよび/または補強するように選択される、その後時間間隔を置いて、例えば2回目の投与については1−4ヵ月後に、別途の投与を行い、必要に応じて数ヵ月後にその後の投与を実施するものである。投与計画はまた、少なくとも一部には、被験者の必要性によって決定され、医師の判断に依存する。
【0253】
さらに、疾患の予防を所望する場合、組成物は一般に、対象とする感染または疾患の一次発生の出現前に投与される。他の治療形態、例えば症状または再発の軽減または排除を所望する場合は、組成物は一般に、対象とする感染または疾患の一次発生の出現後に投与される。
【0254】
6.キット
本発明は、被験者への適切な量の有効成分の投与を簡単にすることができるキットを含む。典型的な本発明のキットは、好ましくは密封容器中に、本発明の組成物の単位投与形態を含む。本発明のキットは、1またはそれ以上の有効成分を投与するために使用できる、医薬的に許容されるビヒクルをさらに含み得る。例えば本発明の組成物が、投与のために再構成しなければならない固体形態で提供される場合、キットは、投与に適する微粒子不含無菌溶液を形成するために組成物を溶解することができる適切なビヒクルの密封容器、および有効成分を投与するために使用できる装置をさらに含む。そのような装置の例は、注射器、点滴袋、パッチおよび吸入器を含むが、これらに限定されない。
【0255】
C.実験
以下は、本発明を実施するための特定実施形態の例である。これらの例は説明のためにのみ提供されるものであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定することは意図されていない。
【0256】
使用する数(例えば量、温度等)に関しては正確さを保証するように努力を払ったが、ある程度の実験誤差および偏差は、言うまでもなく、許容されるべきである。
【実施例】
【0257】
(実施例1)
ミクロ粒子の作製
比較用の生分解性ミクロ粒子を、アニオン性粒子(Singh,M.ら(2004) J.Pharm.Sci.93(2):273−282)およびカチオン性粒子(Singh,M.ら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 97(2):811−816)についてこれまでに確立されている方法と類似の溶媒蒸発法によって作製した。より詳細には、水/油/水乳剤手法を、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)(PLG)ミクロ粒子を作製するために使用した。アニオン性粒子は、Sigma Chemicals,St.Louis,MO,USAより入手可能な0.05%スルホコハク酸ジオクチルナトリウム(DSS)で作製し、カチオン性粒子は、外部水相においてSigmaより入手可能な1%(w/w)臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)で作製した。
【0258】
PLG、すなわちBoehringer Ingelheimより入手可能な、50:50のラクチド/グリコリドモル比および〜30kDaの分子量を有するPLGポリマー、RG503をジクロロメタン(6%w/v)に溶解し、リン酸緩衝生理食塩水の水相(1:5 水:油)に添加して(10mlを50mlと併合)、ホモジナイザー(Ultra−Turrax T25 IKA−Labortechnik,Germany)の10mmプローブを15,000rpmで使用して2分間均質化した。次にこの油中水型乳剤を、アニオン性またはカチオン性粒子を含む水250mlに添加し、ホモジナイザー(Ultra−Turrax T50 IKA−Labortechnik,Germany)の45mmプローブを使用して高速で20分間均質化した。溶媒を蒸発させるために懸濁液を磁気攪拌で攪拌した。
【0259】
本発明に従ったキトサン含有ミクロ粒子は、2番目の乳化工程における水相250mlを、酢酸に溶解した、Sigmaより入手可能なキトサン保存溶液5mg/mlを水に添加することによって形成したことを除き、上述した手順を用いて形成した。適切な比率(すなわち0.1%対1%w/wPLG)を生成するために十分な量でキトサンを添加した。酢酸の量は、水相250mLのpHを5.0−5.5にするために充分な量であった。0.25%(PLGに対してw/w)から1.0%(w/w)にわたるキトサン濃度で安定な粒子が形成された。Sigmaより入手可能な比較的低分子量のキトサン(平均分子量=150,000g/mol、脱アセチル化の程度=75%−85%)を、上述したすべての実験のために使用した。
【0260】
Sigmaより入手可能なもう1つのより溶解度が低く、高分子量のキトサン(分子量=600,000g/mol、脱アセチル化の程度=75%−85%)も、安定な粒子を形成するために使用し、それらの粒子は低分子量キトサンで形成されるものと非常に類似した性質を有する。キトサン塩化物(水に易溶で、粘性溶液を形成し、最終的にはより高濃度でペーストになる)で粒子を形成する試みは、安定な乳剤を生じなかった。より詳細には、これらの化合物は、明らかにそれらの高い溶解度の故に油−水界面に有意の量で蓄積しなかったため、乳剤安定剤として機能しなかった。
【0261】
生じたミクロ粒子の粒径分布を、粒径分析器(Horiba LA−930,Irvine,CA)を用いて測定した。
【0262】
ζ電位を、pH4−pH7の範囲の緩衝液に希釈した試料に関してZetasizer (Zetasizer 3000HSA Malvern Instruments,UK)で測定した。
【0263】
ペレットと結合したキトサンのパーセントを、96穴プレート形式に適合させたニンヒドリン−ヒドリンダンチンアッセイによって測定した(Prochazkova,S. “Quantitative determination of chitosans by ninhydrin”Carbohydrate Polymers 38:1 15−122)。
【0264】
上記粒子の性質を表1Aおよび1Bに要約する。
【0265】
【表1】

(実施例2)
CpGオリゴヌクレオチドの吸着と放出
CpGオリゴヌクレオチドは強力なアジュバントであり、ミクロ粒子とのその共送達は広い製剤選択肢を提供する。
【0266】
可溶性CpG溶液(実施例7参照)を実施例1のミクロ粒子懸濁液に添加し、実験室用揺動器(lab rocker)にて4℃で一晩攪拌した。ミクロ粒子を遠心分離によって分離した。上清中に残存する(吸着されない)量を、260nmの吸光度で紫外分光法によって測定した。
【0267】
図1は、3つの異なる粒子型に関して吸着されたCpGの放出プロフィールを比較する。CpGは、キトサン−PLG粒子からは緩やかな放出を有し、一方DSS−PLG粒子からは100%放出され(CpG吸着なしに等しい)、CTAB−PLG粒子からは基本的に全部が即時放出される。
【0268】
CpGの吸着と放出およびキトサン−PLG粒子からの放出はまた、PLGミクロ粒子と結合するキトサンの量によっても変化する。表2参照。キトサンの濃度が上昇すると共に、粒子から放出されるCpGの量は低下する。1%キトサン−PLGに関しては、1週間後でさえも、CpGはごくわずかしか放出されなかった。
【0269】
【表2】

(実施例3)
粒子への多糖の吸着
髄膜炎菌血清型C群(MenC)からのオリゴ糖(Chiron Vaccines (IRIS,Chiron,S.r.l.,Siena,Italy);P.Costantinoら(1992)Vaccine 10:691−698)に述べられている)を、粒子へのその吸着に関して検討した。MenCを実施例1のミクロ粒子懸濁液に添加し、実験室用揺動器にて4℃で一晩攪拌した。多糖の濃度を、シアル酸の検出のために修正Svennerholm法(Biochem.Biophys.Acta(1957) 24:604)によって定量した。
【0270】
懸濁液を凍結乾燥し、蒸留水1mLと共に25℃で1時間またはそれ以上揺動してインビトロでの放出を測定した。ミクロ粒子を遠心分離によって分離し、ペレットを0.2N NaOHで一晩加水分解した。MenCの放出を定量するために上清およびペレット中のシアル酸の濃度を測定した。
【0271】
0.5%(w/wPLG)の標的負荷において、MenCは、ほぼ100%の効率で0.5%キトサン−PLGミクロ粒子に、および70%の効率で0.25%キトサン−PLGに吸着するが、DSS−PLG粒子には低い効率で吸着する。表3参照。標的MenC負荷を上昇させると共に、キトサン−PLG粒子への吸着効率は低下し、キトサン−PLG粒子の濃度が低いほど急激に低下する。
【0272】
【表3】

図2からわかるように、放出プロフィールは、0.5%キトサン−PLG粒子からのMenCの安定した放出を示し、一方DSS−PLG粒子からはすべてのMenCが基本的に即時放出される。
【0273】
(実施例4)
粒子へのタンパク質吸着
キトサン−PLGミクロ粒子はまた、タンパク質を吸着するためにも使用できる。髄膜炎菌血清型B群タンパク質MB961(Chiron Vaccines(IRIS,Chiron,S.r.l.,Siena,Italy);Pizzaら(2000)Science 287:1816−1820)に述べられている)を実施例1のミクロ粒子懸濁液に添加し、実験室用揺動器にて4℃で一晩攪拌した。吸着タンパク質を有するミクロ粒子を遠心分離によって分離し、上清中に残存する結合していないタンパク質の量をゲルろ過クロマトグラフィーによって測定した。基本的には、Waters 2690/432装置(Bedford,MA)を備えるTSK3000SWXL(TOSOH Bioscience,Japan)に上清100μlを注入した。MenBタンパク質に関して10−200μg/mlの範囲内で直線検量線を作成し、上清中に存在するタンパク質の量を算定した。次に、非結合タンパク質の総量を最初に添加したタンパク質の総量から差し引き、その差を、実際の負荷効率を算定するために使用した。
【0274】
表4からわかるように、タンパク質MB961は、DSS−PLG粒子と比較してキトサン−PLG粒子にはるかに高い効率で吸着する。
【0275】
【表4】

(実施例5)
アニオン性ミクロ粒子の作製
タンパク質吸着のためのアニオン性PLGミクロ粒子を、溶媒蒸発手法を用いて作製した。簡単に述べると、塩化メチレン中の6%w/vポリマー(RG503)溶液30mLをPBS 6mLと共にIKAホモジナイザーを使用して高速で乳化することによって作製した。次に一次乳剤を、DSS(0.6%w/v)を含む蒸留水144mLに添加し、Omniホモジナイザーを使用して均質化した。これはw/o/w乳剤の形成を生じさせ、生じた乳剤を室温で12時間攪拌して、塩化メチレンを蒸発させた。
【0276】
(実施例6)
アニオン性ミクロ粒子へのMenB 287の吸着
大腸菌由来の組換え髄膜炎菌血清型B群ワクチン候補物質、MenB 287(Chiron Vaccines(IRIS,Chiron,S.r.l.,Siena,Italy);Pizzaら(2000)Science 287:1816−1820)に述べられている)をこの実施例で使用した。
【0277】
吸着タンパク質を有するミクロ粒子を作製するため、実施例5からのPLG 100mgを含むミクロ粒子懸濁液を総容量10mL中でMenB 287 1mgと共にインキュベートした。次に懸濁液を実験室用揺動器(Aliquot Mixer,Miles Laboratories)にて4℃で一晩攪拌した。糖(マンニトール45mg/mlおよびスクロース15mg/ml)を添加し、次に懸濁液のアリコート(MenB 287 2μgまたは10μgまたは20μg/動物)を小さなガラスバイアルに入れて凍結乾燥した(「PLG/287 2μgバイアル」、または「PLG/287 10μgバイアル」または「PLG/287 20μgバイアル」)。
【0278】
(実施例7)
可溶性CpG
CpGオリゴヌクレオチド、5’−TCC ATG ACG TTC CTG ACG TT−3’(配列番号1)は、Oligos Etc.(Wilsonville,OR,HPLCにより99%純度)によってホスホロチオエート骨格で合成され、凍結乾燥形態で供給された。これを10mMトリス(pH7.0)、1mM EDTAに懸濁し、−80℃で保存した(「可溶性CpG溶液」)。
【0279】
(実施例8)
CpGが封入された荷電ミクロ粒子の作製
50%封入CpGを有するアニオン性PLGミクロ粒子を、溶媒蒸発手法を用いて作製した。簡単に述べると、塩化メチレン中の12%w/vポリマー溶液5mLをTE 0.700mLおよびCpG−キトサン複合体0.300mlと共にIKAホモジナイザーを使用して高速で乳化することによって作製した。CpG−キトサン複合体は、1%(v/v)酢酸中2.2mg/mlキトサンのキトサン溶液を、実施例7で述べた可溶性CpG溶液にそれぞれ1:1000のw/w比で添加することによって作製した。ミクロ粒子製剤のために使用したCpGの量は、PLGに対して0.5%w/wであった。次に一次乳剤を、DSS(0.9%w/v)を含む蒸留水32mLに添加し、Omniホモジナイザーを使用して均質化した。これはw/o/w乳剤の形成を生じさせ、生じた乳剤を室温で12時間攪拌して、塩化メチレンを蒸発させた。糖(マンニトール45mg/mlおよびスクロース15mg/ml)を添加し、次に懸濁液のアリコート(CpG 10μg/動物)を小さなガラスバイアルに入れて凍結乾燥した(「PLG/CpG 50%封入バイアル」)。
【0280】
100%封入CpGについての工程は、キトサン:CpG比をそれぞれ1:1.4w/wに変更して凍結乾燥したことを除いて上記と同様であった(「PLG/CpG 100%封入バイアル」)。
【0281】
50%封入CpGの標的を有するミクロ粒子はまた、PVA(分子量15,000、ICN Biomedicals,Aurora,Ohioより)を粘度付与剤として使用することによっても形成された。ミクロ粒子を、CpGとPVA溶液[0.5%CpGw/wPLGおよび7.5%PVAw/wPLG]を混合し、その混合物を水相に添加した後均質化することによって上記のように作製した。このアプローチに関しては、封入効率は50%で横ばい状態に達した。
【0282】
ミクロ粒子へのCpGの封入/吸着効率を以下のように評価した。PLG/CpGミクロ粒子を、1N水酸化ナトリウムを使用して加水分解し、試料を260nmでの紫外吸収によって読み取り、CpGの負荷を生じさせた。PLG/CpGミクロ粒子を遠心分離し、上清を分離して、260nmでの紫外吸収によって検出した。上清とCpG負荷におけるCpGの差が封入/吸着効率を示した。
【0283】
上記で指摘したように、CpGとキトサン複合体に関して1000:1の比率で50%の封入効率(0.5%標的負荷w/wPLG)を得た。CpGの封入効率を高めるために努力を払い、1.4:1のCpGとキトサン複合体が白色沈殿物を生じることを認めた。複合体を遠心分離し、上清の分析は、CpGとキトサンの完全な複合体化を示唆する、CpGとキトサンの不在を示した。さらに、CpGは、一晩のタンパク質吸着の間、粒子中に残存すると思われた(下記参照)。いずれの分子も(CpGもキトサンも)、タンパク質吸着後に実施したHPLCアッセイによって測定されたように、水相に分配しないと思われた。これは、これらの分子がキトサンと複合し、主としてミクロ粒子内に残存する傾向があるという事実に起因すると考えられる。
【0284】
(実施例9)
CpGオリゴヌクレオチドの放出
インビトロでの放出プロフィールを3つのミクロ粒子製剤に関して測定した(図5)。最初の製剤では、吸着されたCpGを有するCTAB−PLGミクロ粒子(すなわち実施例1からのCTAB−PLGミクロ粒子、1%標的負荷w/wPLG、実験室用揺動器にて4℃で一晩攪拌した)(以下「吸着」と称する)を再構成するために注射用蒸留水を添加した。2番目の製剤では、実施例8からのCpGを有するPLGミクロ粒子(「PLG/CpG50%封入バイアル」)(0.5%標的負荷w/wPLG)(以下「0.5%標的負荷w/wPLGで50%封入」と称する)を再構成するために注射用蒸留水を添加した。3番目の製剤では、実施例8からのCpGを有するPLGミクロ粒子(「PLG/CpG100%封入バイアル」)(0.5%標的負荷w/wPLG)(以下「0.5%標的負荷w/wPLGで100%封入」と称する)を再構成するために注射用蒸留水を添加した。0、7、14および28日目に各々の製剤についてCpG放出を測定した。放出測定のために、ミクロ粒子を遠心分離によって分離し、上清中に残存する(PLGミクロ粒子と結合していない)CpGの量を、260nmの吸光度で紫外分光法によって測定した。
【0285】
図5は、3つの異なる粒子型に関するCpGの放出プロフィールを比較する。「吸着」製材は最も速い放出を有し、「0.5%標的負荷w/wPLGで100%封入」製材は最も緩やかな放出を有し、「0.5%標的負荷w/wPLGで50%封入」製材は中間の放出を有していた。さらに、吸着製剤は、ゼロ時点で約80−85%の放出を有していた。初期50%封入を有するCpG製剤は徐々にCpGを放出し、4週間かけて総放出が達成された。約100%封入を有するCpG製剤は、6週間を終えた時点でもCpGを放出せず、平坦な放出プロフィールを生じた。
【0286】
(実施例10)
さらなる放出試験
PLG/DSSミクロ粒子を作製し、D.O’Hagan,M.Singh,Microparticles as vaccine adjuvants and delivery systems,Expert Review Vaccines 2(2003)269−283に述べられているように特性決定した。実施例1におけるように、CpG放出を上記実施例8におけるように評価した。タンパク質吸着は、上記実施例4におけるように評価した。
【0287】
得られた結果を表5に示す。MenBタンパク質のPLGミクロ粒子への吸着は、標的負荷の89−99%で極めて効率的であった。初期CpG放出は、50%および100%封入CpGミクロ粒子について予想されたものと一致した。放出は、吸着CpGに関するよりもPLGミクロ粒子についてより高かった。
【0288】
【表5】

(実施例11)
吸着されたタンパク質の完全性
吸着されたタンパク質をSDS PAGE分析、ウエスタンブロット法およびHPLC分析によって完全性に関して評価した。タンパク質を、封入CpGを有するまたは有さないミクロ粒子10mg[実施例1および4]からSDS試料緩衝液200μlで抽出し、SDS PAGE分析のために30μlを4−20%勾配のトリス/グリシンポリアクリルアミドゲル(Novex,San Diego,CA)に負荷した。ゲルをコロイダルブルー染色(Novex)で染色し、脱染色して、乾燥した。
【0289】
ミクロ粒子に吸着されたタンパク質の完全性は、凍結乾燥後も良好に保存されることが認められた。ミクロ粒子から抽出され、SDS−PAGEで泳動させたタンパク質は、吸着前のタンパク質と分子量が同じであり、見掛け上の凝集または分解を伴わなかった(データは示していない)。さらに、ミクロ粒子中のCpGの存在は、表面に吸着されたMen Bタンパク質の完全性に影響を及ぼさないと思われた。これはワクチン製剤の重要な態様である。ワクチンが機能性抗体および強力な免疫応答を誘導するためには、無傷抗原を含むことが必要である。過去10年間に、PLGミクロ粒子に封入された抗原を送達することがより一般的になってきた;しかしこのアプローチは、タンパク質の完全性に対する封入工程の有害作用という問題を抱える。D.T.O’Hagan,Prospects for the development of new and improved vaccines through the use of microencapsulation technology,New Generation Vaccines; Marcel Dekker,Inc.:New York(1997)pp 215−228。H.Okada,H.Toguchi,Biodegradable microspheres in drug delivery,12(1995)1−99。我々は以前に、ミクロ粒子の表面に吸着された抗原の送達が、封入抗原に比べてはるかに強力な免疫応答を生じさせることを明らかにした。J.Cheskoら、Pharm Res.2004年12月;21(12):2148−52。
【0290】
(実施例12)
インビボ試験
以下の表6の第1群(「PLG/287、2μg」)および第4群(「PLG/287、20μg」)に関しては、それぞれMen B287 2μgおよび20μgを含むPLG/287バイアル(すなわち実施例6のPLG/287 2μgおよびPLG/287 20μgバイアル)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成した。第2群(PLG/287+可溶性CpG、2μg)および第5群(PLG/287+可溶性CpG、20μg)については、それぞれPLG/287バイアル、Men B287 2μgおよび20μg/動物(実施例6より)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、可溶性CpGを添加した(10μg/動物)。第3群(PLG/287+PLG/0.5%キトサン/封入CpG、2μg)については、PLG/287(Men B287 2μg/動物)(実施例6より)およびCpGを封入したPLG(封入CpG)(CpG 10μg/動物)のバイアル(すなわち実施例8のPLG/CpG 50%封入バイアル)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、一緒に混合した。第6群(PLG/287+PLG/0.5%キトサン/封入CpG、20μg)に関しては、PLG/287(Men B287 20μg/動物)(実施例6より)およびCpGを封入したPLG(封入CpG)(CpG 10μg/動物)のバイアル(実施例8より)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、一緒に混合した。
【0291】
すべての群について、0、21および35日目に10匹の雌性CD−1マウスの群に試料を筋肉内注射した。39日目と56日目に、血清ELISA力価をSingh,M.ら(2004)J.Pharm.Sci.93(2):273−282に述べられているように分析した。酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)マイクロタイタープレートをNunc,Denmarkより入手した。56日目に、血清殺菌活性(SBA)をPizza,M.ら(2000)Science 287(5459):1816−1820に述べられているように分析した。2996は、SBA分析のために使用したMenBの菌株である。SBAアッセイは、抗体が補体を細菌の表面に固定し、細菌溶解の引き金を引く能力を測定する。TH1およびTH2型サイトカイン応答の検出のために、個々の動物から収集した脾臓からの単細胞懸濁液(SP)を、10μg/mlおよび2.5μg/ml抗マウスCD28抗体(BD)の最終濃度のMenB組換えタンパク質の存在下または不在下に1,000,000細胞/穴の濃度で96穴プレート中にて17時間培養した。上清を収集し、−80℃で保存した。Multiplex Luminexアッセイを、製造者のプロトコールに従って(Millipore)サイトカインの同時検出のために上清50μlに関して実施した。
【0292】
結果を表6および図3および4に示す。[新しい図4参照]図3および4からわかるように、図3では「PLG/287+PLG/0.5%キトサン/封入CpG、2μg」と称され、図4では「PLG/287+PLG/0.5%キトサン/CpG(2μg)または「PLG/287+PLG/0.5%キトサン/CpG(20μg)」と称される、PLGへのCpGの封入は、吸着MenB 287単独および吸着MenB 287と可溶性CpGに比べて、同時投与した吸着MenB 287に対するIFN−γ(IFNγ)およびTNF−α(TNFα)応答を有意に増強した。抗体力価(IgG)の表6も、「PLG/287+PLG/0.5%キトサン/封入CpG」群(2μgまたは20μg)が吸着MenB 287単独および吸着MenB 287と可溶性CpGに比べて高い応答を有することを示す。可溶性または封入CpGを伴わない吸着PLG−287(2μg)単独は、有意に高いIL−5応答を誘導した。比較的低いIL−13応答が検出可能であったが、データは示していない。CpGはTH1型サイトカイン応答を上昇させることが示され、一方、それぞれ広く確立されているTH1およびTH2型サイトカインである、IFNγとTNFα、ならびにIL−5とIL−13を低下させることが測定された。
【0293】
【表6】

(実施例13)
インビボ試験
以下の表7の第1群(PLG/MenB 2μg)に関しては、MenB 287 2μgを含むPLG/287バイアル(すなわち実施例6のPLG/287 2μgバイアル)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成した。第2群(PLG/MenB 2μg+可溶性CpG)については、PLG/287のバイアル(MenB 287 2μg/動物、実施例6より)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、可溶性CpGを添加した(10μg/動物)。第3群(PLG/MenB 2μg+PLG/CTAB/吸着CpG)については、PLG/287のバイアル(MenB 287 2μg/動物、実施例6より)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、CpGを吸着したCTAB−PLGミクロ粒子(実施例9参照)を添加した。第4群(PLG/MenB 2μg+キトサン/CpG 50%封入)については、PLG/287のバイアル(MenB 287 2μg/動物)(実施例6より)および封入CpGを有するPLG(封入CpG)(CpG 10μg/動物)(すなわち実施例8のPLG/CpG 50%封入バイアル)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、一緒に混合した。
【0294】
すべての群について、0、21および35日目に10匹の雌性CD−1マウスの群に試料を筋肉内注射した。49日目(3回目の免疫の2週間後)に、血清ELISA力価をSingh,M.ら(2004)J.Pharm.Sci.93(2):273−282に述べられているように分析し、血清殺菌活性(SBA)をPizza,M.ら(2000)Science 287(5459):1816−1820に述べられているように分析した。2996は、SBA分析のために使用したMenBの菌株である。
【0295】
結果を表7に示す。表7からわかるように、カチオン性PLGミクロ粒子を形成するためにキトサンを使用して、吸着形態のCpGを添加することは、可溶性形態のCpGを添加することに比べて有意の改善をもたらさなかった。同様の傾向が殺菌活性に関して認められた。別のPLGミクロ粒子に吸着されている、同時投与した髄膜炎菌血清型B群と、キトサンを複合化剤として使用してPLGミクロ粒子に封入したCpGは、2μg用量の可溶性CpG群と比較したとき、抗体力価と殺菌力価の3倍以上の増強を示した。これらのデータは、封入CpGがワクチン抗原に対する免疫応答を改善するために使用できることを明らかにする。MenB特異的抗体の力価が有意に上昇したのみならず、より重要な点として、MenBワクチンに関する防御効果の信頼し得る相関物である、血清中の補体媒介性殺菌活性によって測定したとき、機能性抗体の産生も大きく増強された。M.Pizzaら、Science 287(2000)1816−1820およびR.A.Wall,Meningococcal disease:treatment and prevention,Ann.Med.34(2002)624−634.
【0296】
【表7】

(実施例14)
インビボ試験
以下の表8の第1群(PLG/MenB 10μg)に関しては、MenB 287 10μgを含むPLG/287バイアル(すなわち実施例6のPLG/287 10μgバイアル)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成した。第2群(PLG/MenB 10μg+可溶性CpG)については、PLG/287のバイアル(MenB 287 10μg/動物、実施例6より)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、可溶性CpGを添加した(10μg/動物)。第3群(PLG/MenB 10μg+CpG/キトサン)については、PLG/287のバイアル(MenB 287 10μg/動物、実施例6より)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、キトサン−CpG複合体を添加した(CpG 10μg/動物をそれぞれ1.4:1に比率でキトサンと複合した)。第4群(PLG/MenB 10μg+キトサン/CpG 100%封入)については、PLG/287のバイアル(MenB 287 10μg/動物)(実施例6より)および封入CpGを有するPLG(封入CpG)(CpG 10μg/動物)(すなわち実施例8のPLG/CpG 100%封入バイアル)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、一緒に混合した。第5群(PLG/MenB 10μg+キトサン/CpG 50%封入)については、PLG/287のバイアル(MenB 287 10μg/動物)(実施例6より)および封入CpGを有するPLG(封入CpG)(CpG 10μg/動物)(すなわち実施例8のPLG/CpG封入バイアル)を免疫の時点で注射用蒸留水によって再構成し、一緒に混合した。
【0297】
すべての群について、0、21および35日目に10匹の雌性CD−1マウスの群に試料を筋肉内注射した。49日目(3回目の免疫の2週間後)に、血清ELISA力価をSingh,M.ら(2004)J.Pharm.Sci.93(2):273−282に述べられているように分析し、血清殺菌活性(SBA)をPizza,M.ら(2000)Science 287(5459):1816−1820に述べられているように分析した。2996は、SBA分析のために使用したMenBの菌株である。
【0298】
結果を表8に示す。表8からわかるように、CpGを約100%の封入効率でミクロ粒子の内部に封入することは、抗体力価に関して可溶性CpGで得られるものよりも応答を増強した。CpG−キトサン複合体群は、可溶性CpGより低いまたは匹敵する応答を示した。これは、CpG−キトサン複合体をPLGミクロ粒子に封入することの重要性を明らかにする。しかし、10μg用量の封入製剤のIgG2a力価および血清殺菌力価は統計的に有意の作用を示さず、50%封入製剤だけが血清殺菌力価の2倍の上昇を示した。この結果はMenB 287 2μg用量で認められた結果と異なっており、10μgの抗原用量から始まるプラトー効果が認められ得るので、MenB 287の用量選択の重要性を強調する。マウスでは、IgG2a抗体アイソタイプの産生はTh1応答の特徴として広く認識されている。例えばC.M.Snapper,Science 236(1987)944−947参照。
【0299】
【表8】

本発明の好ましい実施形態を少し詳しく説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく明らかな変化を施し得ることは了解される。
【図面の簡単な説明】
【0300】
【図1】図1は、1%の吸着CpGw/wPLGの初期標的負荷を有する様々な粒子型についての28日間のCpG放出のプロットである。
【図2】図2は、0.5%の吸着MenCw/wPLGの初期標的負荷を有する様々な粒子型についての28日間のMenC多糖放出のプロットである。
【図3】図3は、CpGオリゴヌクレオチドなしで、可溶性CpGオリゴヌクレオチドと共に、または封入CpGオリゴヌクレオチドと共に、MenB 287タンパク質(2または20μg)を負荷したミクロ粒子製剤でワクチン接種したマウスについての免疫応答を示す。
【図4】図4は、CpGオリゴヌクレオチドなしで、可溶性CpGオリゴヌクレオチドと共に、または封入CpGオリゴヌクレオチドと共に、MenB 287タンパク質(2または20μg)を負荷したミクロ粒子製剤でワクチン接種したマウスについての免疫応答を示す。
【図5】図5は、吸着製剤については1%CpGw/wPLGおよび封入製剤については0.5%CpGw/wPLGの初期標的負荷を有する吸着および封入製剤を比較した28日間のCpG放出のプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性ポリマーを含有するポリマーミクロ粒子を含み、カチオン性多糖、ならびに抗原、免疫アジュバントおよびそれらの組合せから選択される免疫学的種をさらに含む、免疫原性ミクロ粒子組成物。
【請求項2】
前記カチオン性多糖がアミン置換カチオン性多糖を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記カチオン性多糖がD−グルコサミンモノマー単位を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記カチオン性多糖がD−グルコサミンおよびN−アセチル−D−グルコサミンモノマー単位の組合せを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記カチオン性多糖が、無作為に分布するβ−(1−4)連結D−グルコサミンおよびN−アセチル−D−グルコサミンモノマー単位を含むポリマー鎖を含有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記カチオン性多糖がキトサンを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記カチオン性多糖が、100,000g/mol〜1,250,000g/molの範囲の分子量を有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記カチオン性多糖が。6.0〜7.0の範囲のpKaを有する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記免疫学的種が前記ミクロ粒子の少なくとも一部に吸着される、請求項1に記載の免疫原性ミクロ粒子組成物。
【請求項10】
前記組成物が凍結乾燥組成物である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
請求項10に記載の凍結乾燥組成物10mgを水1mlに再構成したとき、生じる懸濁液が、吸着された免疫アジュバントの総量の10%以上が再構成後15日間を超えて前記ミクロ粒子から放出される放出プロフィールを示す、請求項10に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記カチオン性多糖対前記生分解性ポリマーの重量比が0.0005:1から0.05:1までの範囲である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項13】
前記カチオン性多糖対前記生分解性ポリマーの重量比が0.0025:1から0.01:1までの範囲である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記免疫学的種対前記生分解性ポリマーの重量比が0.0005:1から0.05:1までの範囲である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記免疫学的種対前記生分解性ポリマーの重量比が0.001:1から0.025:1までの範囲である、請求項9に記載の免疫原性組成物。
【請求項16】
前記免疫学的種が、前記ミクロ粒子の少なくとも一部の中に封入されている、請求項1に記載の免疫原性ミクロ粒子組成物。
【請求項17】
前記免疫学的種と前記カチオン性多糖を含む複合体が、前記ミクロ粒子の少なくとも一部の中に封入されている、請求項16に記載の免疫原性ミクロ粒子組成物。
【請求項18】
前記カチオン性多糖対前記免疫学的種の重量比が0.0001:1から0.01:1までの範囲である、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
前記カチオン性多糖対前記生分解性ポリマーの重量比が0.000005:1から0.005:1までの範囲である、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項20】
前記免疫学的種が、正に荷電した免疫アジュバントである、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項21】
前記免疫学的種がCpGオリゴヌクレオチドである、請求項17に記載の免疫原性組成物。
【請求項22】
前記組成物が合成生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項23】
前記組成物が、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリヒドロキシ酪酸、ポリラクトン、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリシアノアクリレート、チロシン由来ポリカーボネート、チロシン由来ポリエステル−アミド、およびそれらの組合せから選択される生分解性ポリマーを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項24】
前記生分解性ポリマーがポリ(α−ヒドロキシ酸)を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項25】
前記生分解性ポリマーが、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)およびそれらの組合せから選択されるポリ(α−ヒドロキシ酸)を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項26】
前記生分解性ポリマーが、40:60から60:40までの範囲のラクチド:グリコリドモル比を有するポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項27】
前記組成物が少なくとも90重量%の生分解性ポリマーを含む、請求項26に記載の免疫原性組成物。
【請求項28】
前記ミクロ粒子のD(v,0.5)粒径が0.1−50ミクロンの範囲である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項29】
前記ミクロ粒子のD(v,0.5)粒径が0.5−10ミクロンの範囲である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項30】
前記免疫学的種が抗原を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項31】
前記抗原がポリペプチド含有抗原である、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項32】
前記抗原がポリヌクレオチド含有抗原である、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項33】
前記抗原が糖含有抗原である、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項34】
前記抗原が腫瘍細胞に由来する、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項35】
前記抗原が病原体に由来する、請求項30に記載の免疫原性組成物。
【請求項36】
前記病原体が、ウイルス、細菌、真菌および寄生生物から選択される、請求項35に記載の免疫原性組成物。
【請求項37】
病原体が、HIV、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、B型髄膜炎、インフルエンザ菌B型、百日咳、ジフテリア、破傷風およびインフルエンザA型ウイルスから選択される、請求項35に記載の免疫原性組成物。
【請求項38】
前記免疫学的種が免疫アジュバントを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項39】
前記免疫学的種が、CpGオリゴヌクレオチドおよびモノホスホリル脂質A類似体から選択される免疫アジュバントを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項40】
(a)水、有機溶媒、生分解性ポリマーおよびカチオン性多糖を含む乳剤を提供すること;(b)ミクロ粒子を形成するために該乳剤から該有機溶媒を除去すること;および(c)該免疫学的種を該ミクロ粒子に吸着させることを含む、請求項9に記載のミクロ粒子組成物を生産する方法。
【請求項41】
前記ミクロ粒子が、前記抗原の吸着前に、5−6.5の範囲のpHで25−100mVの範囲のζ電位を有する、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記乳剤が水中油中水型乳剤である、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記水中油中水型乳剤が、
(a)前記生分解性ポリマーと前記有機溶媒を含む有機相を、水を含む第一水相で乳化し、それによって油中水型乳剤を形成する工程;および
(b)該水中油中水型乳剤を形成するために、前記カチオン性多糖と水を含む第二水相を、工程(a)で形成された乳剤で乳化する工程
を含むプロセスによって形成される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記第二水相のpHが4.5−6.0の範囲である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
(a)生分解性ポリマーと有機溶媒を含む有機相を、水、カチオン性多糖および免疫学的種を含む第一水相で乳化し、それによって油中水型乳剤を形成すること;および
(b)水中油中水型乳剤を形成するために、界面活性剤と水を含む第二水相を、工程(a)で形成された乳剤で乳化すること;および
(c)該水中油中水型乳剤から該有機溶媒を除去すること
を含む、請求項16に記載のミクロ粒子組成物を生産する方法。
【請求項46】
前記界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
生分解性ポリマーとカチオン性多糖を含み、その少なくとも一部に抗原、免疫アジュバントおよびそれらの組合せから選択される免疫学的種が吸着されているミクロ粒子からの免疫学的種の放出速度を調節する方法であって、該ミクロ粒子内の該生分解性ポリマーに対する該カチオン性多糖の比率を変化させることを含む方法。
【請求項48】
前記ミクロ粒子内の前記生分解性ポリマーに対する前記カチオン性多糖の比率を上昇させることによって前記放出速度が低下する、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項1に記載の免疫原性組成物を宿主脊椎動物に投与することを含む、宿主脊椎動物において免疫応答を刺激する方法。
【請求項50】
前記宿主脊椎動物がヒトである、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
請求項1に記載の組成物を宿主脊椎動物に投与することを含む、宿主脊椎動物を病原体または腫瘍に対して免疫する方法。
【請求項52】
前記宿主脊椎動物がヒトである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
請求項1に記載の免疫原性組成物を含むワクチン。
【請求項54】
請求項10に記載の凍結乾燥組成物を含む第一容器を含むキット。
【請求項55】
前記第一容器内の凍結乾燥組成物を再懸濁するために有用な滅菌液体媒体を含む第二容器をさらに含む、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
注射器をさらに含む、請求項54に記載のキット。
【請求項57】
前記抗原と前記免疫アジュバントを含み、該抗原が前記ミクロ粒子の少なくとも一部に吸着されており、および該免疫アジュバントが該ミクロ粒子の少なくとも一部の中に封入されている、請求項1に記載の免疫原性ミクロ粒子組成物。
【請求項58】
前記抗原が同じミクロ粒子に吸着されており、および前記免疫アジュバントが同じミクロ粒子内に封入されている、請求項57に記載の免疫原性ミクロ粒子組成物。
【請求項59】
前記抗原が異なるミクロ粒子に吸着されており、および前記免疫アジュバントが異なるミクロ粒子内に封入されている、請求項57に記載の免疫原性ミクロ粒子組成物。
【請求項60】
前記免疫アジュバントと前記カチオン性多糖を含む複合体が、前記ミクロ粒子の少なくとも一部の中に封入されている、請求項57に記載の免疫原性ミクロ粒子組成物。
【請求項61】
前記抗原がポリペプチド含有抗原であり、および前記ポリマーミクロ粒子の少なくとも一部がアニオン性界面活性剤をさらに含む、請求項60に記載の免疫原性ミクロ粒子組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−527572(P2009−527572A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−556452(P2008−556452)
【出願日】平成19年2月24日(2007.2.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/004798
【国際公開番号】WO2007/100699
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】