説明

免疫原性HIV組成物および関連する方法

本発明は、哺乳動物において免疫応答の持続時間および強さを増進する免疫原性組成物を提供する。免疫原性組成物は、HIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含む。上記HIV抗原は、外側エンベロープタンパク質gp120を欠失する不活化全HIVウイルスであり得る。あるいは、上記HIV抗原は、不活化全HIVウイルスまたはp24抗原であり得る。キットもまた提供され、その構成要素は組合わせた場合に本発明の免疫原性組成物を産生する。本発明はまた、免疫原性組成物を、HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントを組み合わせる工程により製造する方法を提供する。本発明は、哺乳動物にHIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントを含む免疫原性組成物を投与してこの哺乳動物における免疫応答を増進することにより哺乳動物を免疫する方法を、さらに提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(背景情報)
本発明は、後天性免疫不全症候群(AIDS)ならびに、より詳細にはAIDSを予防および処置における使用のための免疫原性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、全世界で3000万人を超えるヒトが、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、AIDSの原因であるウイルスに感染している。HIVの流行は急速に全世界に広まっているが、HIV感染個体の約90%は、サハラ以南のアフリカおよび東南アジア地域を含む開発途上国に住んでいる。ウイルス負荷量を減少させ、かつAIDSへの進行を遅延する抗ウイルス治療薬物が、最近入手できる。しかしながら、これらの薬物は、開発途上国で使用されるには、非常に高すぎる。このように世界的なAIDSの流行を抑えるために効果的な予防ワクチンおよび治療ワクチンを開発する差し迫った必要性が依然としてある。
【0003】
今日まで、HIVは、効果的なワクチンの開発には困難な標的であることが証明されている。HIVの早い変異性向のために、現在世界の様々な地域において優勢なエピトープが異なる多くの株が存在する。さらに、特定の感染個体において、HIVウイルスは、エピトープに変異を発現させて宿主免疫系の制御から免れ得る。p24コア抗原由来のエピトープを含む、広いスペクトルの保存されたエピトープを認識する免疫系を刺激する改良されたHIVワクチンを開発する必要性が依然としてある。
【0004】
1990年代に30を超える異なるHIV−1ワクチン候補が、ヒト臨床試験に参入した。これらのワクチンは、種々の体液性および細胞性の免疫応答を誘発し、これらの免疫応答は、特定のワクチン成分に依存して、型および強さが異なる。HIV感染に対する防御と関連する特定の免疫応答を強く誘発するHIVワクチン組成物の開発の必要性が依然としてある。
【0005】
防御的HIV応答の性質は、HIVに繰返し曝露されているにもかかわらず感染されないままの個体、またはAIDSの発生がなく、長年HIVに感染している個体の研究により扱われてきた。これらの研究は、CD4+Tヘルパー細胞がHIV感染および引き続く疾患の進行に対する防御とよく相関することを示してきた。抗原特異的CD4+ヘルパーT細胞応答に加えて、CD8+細胞傷害性T細胞応答がHIV初期感染および疾患の進行を予防するのに重要であると考えられる。効果的な抗ウイルス免疫応答の間、活性化されたCD8+T細胞がウイルス感染細胞を直接屠殺し、そして抗ウイルス活性を有するサイトカインを分泌する。
【0006】
βケモカイン系はまた、HIV初期感染および疾患の進行に対する防御に重要であると考えられる。HIVのほとんどの一次単離物による免疫細胞の感染は、ウイルスCCR5との相互作用を必要とし、その通常の生物学的役割は、βケモカインRANTES、MIP−1αおよびMIP−1βに対する主要なレセプターである。CCR5レセプターの発現の減少を生じる遺伝子多型は、HIV感染に対する抵抗性を提供することを示した。さらに、曝露された個体および培養された細胞の両方において、βケモカインレベルとHIV感染に対する抵抗性との間に有意な相関が示された。βケモカインは、HIVのCCR5への結合と競争するか、または干渉して表面CCR5をダウンレギュレートすることを含む、いくつかの機序によりHIV感染性をブロッキングし得ることが示唆されている。
【0007】
HIV初期感染および疾患の進行の予防におけるβケモカインの重要性のために、有効なHIV免疫原性組成物は、高レベルのβケモカイン産生を、感染前および感染性ウイルスへの応答の両方において誘導すべきである。βケモカイン産生を誘導することができるHIV免疫原性組成物が記載されている。しかしながら、高レベルのβケモカイン産生を刺激し、強くかつ耐久性のあるHIV特異的Th1細胞性免疫応答およびHIV特異的細胞傷害性活性のある体液性免疫応答を誘導する免疫原性組成物は、記載されていない。
【0008】
特定の型のHIV特異的免疫応答を誘発する組成物は、他の重要な防御的応答を誘発しないかも知れない。例えば、非特許文献1(Demlら、Clin.Chem.Lab.Med.37:199〜204(1999))は、HIV−1gp160エンベロープ抗原、免疫刺激性DNA配列およびミョウバンアジュバントを含有するワクチンを記載し、それは、抗原特異的Th1型サイトカイン応答を誘導するにもかかわらず、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球応答を誘導することはできなかったことを記載する。さらに、エンベロープ抗原のみを含有するワクチンは、より高度に保存されたHIVのコアタンパク質に対する免疫応答を誘導するとは考えられない。
【非特許文献1】Demlら、Clin.Chem.Lab.Med.37.1999 ,p199〜204
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、感染個体においてHIV感染を予防すること、または少なくともAIDSへの進行を遅延させることのいずれかを補助する、免疫原性組成物および方法についての必要性は存在する。本発明は、この必要性に応え、そしてさらに関連する利点も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、哺乳動物において免疫応答能力を増進するために使用され得る免疫原性組成物を提供する。本発明の免疫原性組成物は、誘導される免疫応答の広範さ、型、強さおよび持続時間を増進し得る。上記免疫原性組成物は、最適化されたHIV抗原、イミュノマーを含有する単離された核酸分子および必要に応じてアジュバントを含む。上記HIV抗原は、外側エンベロープタンパク質gp120を欠失する不活化全HIVウイルスであり得る。上記HIV抗原はまた、L2粒子のようなプロテアーゼ欠損HIV粒子であり得る。あるいは、上記HIV抗原は、不活化全HIVウイルスであり得るか、またはp24抗原、nef、gp41などを含む、選択されたHIV抗原もしくはペプチドの組合せであり得る。
【0011】
アジュバントが存在する本発明の免疫原性組成物においては、そのアジュバントは、ヒトへの投与に適切であり得る。例示的なアジュバントは、フロイント不完全アジュバントである。
【0012】
本発明の免疫原性組成物は、哺乳動物においてβケモカインレベル、インターフェロン−γ(IFMγ)、インターロイキン2(IL2)、腫瘍壊死因子α(TNFα)およびインターロイキン15(IL15)の産生、および/またはHIV特異的IgG2b抗体産生をさらに増進し得る。本発明の免疫原性組成物はまた、哺乳動物においてHIV特異的ヘルパーCD4+T細胞を増大し、HIV特異的細胞傷害性Tリンパ球応答および非細胞傷害性の抑制的Tリンパ球応答を増進し得る。
【0013】
HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントを含むキットもまた提供される。そのキットの成分は、組合わされた場合に本発明の免疫原性組成物を産生する。
【0014】
本発明はまた、HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントを組合わせる工程により免疫原性組成物を製造する方法を提供する。上記成分は、免疫原性組成物に到達するまでエクスビボで、またはインビボで組合わされ得る。
【0015】
本発明はまた、HIV抗原、単離されたイミュノマー含有核酸分子および必要に応じてアジュバントを含む免疫原性組成物を哺乳動物に投与することにより、その哺乳動物を免疫する方法を提供する。HIV抗原、単離されたイミュノマー含有核酸分子および必要に応じてアジュバントを含む免疫原性組成物を哺乳動物に投与して、その哺乳動物における免疫応答を増進することによりAIDSを阻害する方法もまた、提供される。本発明の方法にいて、上記哺乳動物は、ヒトのような霊長類、または齧歯類であり得る。上記方法の特定の実施形態では、上記霊長類は妊娠している母親または幼年である。ヒトは、HIVセロネガティブまたはHIVセロポジティブであり得る。上記免疫原性組成物は、哺乳動物に2回以上そして皮下、筋肉内および粘膜内を含む種々の投与経路により、有利に投与され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
本発明は、HIV抗原、イミュノマー含む単離された核酸分子および必要に応じてアジュバントを含む免疫原性HIV組成物を、提供する。一緒に使用するための、そのような組成物の成分を含むキットもまた、提供される。本発明はまた、HIV抗原単独と比較して、免疫された哺乳動物において、免疫応答を増強するように、そのような組成物、またはそのような組成物の成分で哺乳動物を免疫する方法を提供する。有利なことに、本発明の組成物はまた、HIV特異的CD4Tヘルパー細胞およびCD8+T細胞を誘導し得、広いスペクトルのHIVエピトープに対して強力なTh1免疫応答を生じ、強いHIV特異的細胞傷害性Tリンパ球応答を提供する。従って、本発明の免疫原性組成物は、HIV感染の予防および/または感染した個体においてAIDSへの進行を遅延させるために有用である。上記組成物および方法は、保存されたHIVエピトープに特異的な強力なTh1細胞性免疫応答および液性免疫応答を誘発し、HIV特異的CD4Tヘルパー細胞、HIV特異的細胞傷害性Tリンパ球活性を誘発し、ケモカインおよびサイトカイン(例えば、βケモカイン、インターフェロンγ、インターロイキン2(IL2)、インターロイキン7(IL7)、インターロイキン15(IL15)、αデフェンシンなど)の産生を促進し、そして記憶細胞を増加させるために使用され得る。そのようなワクチンは、種々の投与経路で投与され得る。そのようなワクチンは、HIVの母児感染を予防するため、新生児、幼仔および危険性の高い個体のワクチン接種のため、ならびに感染した個体のワクチン接種のために使用され得る。そのようなワクチンはまた、他のHIV治療(ヌクレアーゼインヒビターとプロテアーゼインヒビターと、例えばT20のようなウイルスの侵入をブロッキングする因子との種々の組合わせによる坑レトロウイルス治療を含む(ART))と組合わせて使用され得る(Baldwinら、Curr.Med.Chem.10:1633〜1642(2003))。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「HIV」とは、HIVの全ての形態、亜種および変種をいい、より古い用語 HTLVIIIおよびLAVと同義である。HIVを伝播する能力を有するか、またはHIVウイルスに永久に感染した種々の細胞株が開発され、ATCCに寄託されている。これらの細胞株は、HuT78細胞およびHuT78誘導体H9ならびに受託番号CCL 214、TIB 161、CRL 1552およびCRL 8543を含み、それらは米国特許第4,725,669号およびGallo、Scientific American 256:46(1987)に記載される)。
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「不活化全HIVウイルス」とは、未処理で不活化されたHIVウイルスをいう。不活化HIVとは、感染および/または複製ができないウイルスをいう。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「外側エンベロープタンパク質」とは、膜貫通タンパク質gp41に対して、膜を超えて突出しているレトロウイルスの膜糖タンパク質の部分をいう。
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「外側エンベロープタンパク質を欠失するHIVウイルス」とは、HIV粒子の調製物または外側エンベロープタンパク質gp120を欠失するが上記ウイルスの遺伝的により保存された部分(例えば、p24およびgp41)を含有するHIV遺伝子産物をいう。外側エンベロープタンパク質gp120を欠失するHIVはまた、本明細書でREMUNETMともいう。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「HIV p24抗原」とは、HIVのgag領域の遺伝子産物をいい、p24と命名される約24,000ダルトンの見かけの相対的分子量を有することで特徴づけられる。用語「HIV p24抗原」とはまた、p24の免疫学的活性を有するp24の改変体および断片をいう。当業者は、例えば、その免疫学的活性を破壊せずに、その安定性またはバイオアベイラビリティーを増加させるか、またはその精製を容易にする天然のアミノ酸もしくはアミノ酸アナログの付加、欠失または置換などのようなp24の適切な改変を決定し得る。同様に、当業者は、p24の免疫学的活性を有するp24の適切な断片を決定し得る。p24の免疫学的に活性な断片は、6残基のポリペプチドから完全長から1個のアミノ酸を引いたポリペプチドを有し得る。他のHIV遺伝子産物によりコードされる他のHIV抗原としては、HIV p24抗原についての上記の抗原と同様な断片または改変体が挙げられ得る。他の例示的なHIV抗原としては、例えば、gp41、nefなどが挙げられる。
【0022】
本明細書で使用される場合、「イミュノマー」とは、3’末端で結合され、結果として2つの5’末端を有するオリゴヌクレオチドになる、より小さな2つのオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドをいう。上記より小さい2つのイミュノマーのオリゴヌクレオチドは、同一配列または非同一配列および/あるいは同一長または非同一長であり得るが、一般には同一である。その免疫促進活性に加えて、イミュノマーは、3’−3’結合を含み、従って遊離の3’末端はなく、ヌクレアーゼ消化に対する抵抗性を増加する。上記のイミュノマーのより小さいオリゴヌクレオチドは、一般に2つの5’末端を形成するよう一緒に結合された少なくとも約5または6ヌクレオチドであるが、例えば7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または上記イミュノマーのより小さいオリゴヌクレオチドより長くさえあり得る。当業者は、抗原単独で見られるよりはより大きな免疫応答を刺激するのに十分なイミュノマーの長さおよび/または配列を容易に決定し得る。従って、1つの実施形態では、イミュノマーは、それらの3’末端を介して結合される2つの同一のオリゴヌクレオチドを含む。イミュノマーはまた、改変塩基を含み得る。イミュノマーは、例えば以下に記載される:
【0023】
【化1】

【0024】
これらの各々は、本明細書に参考として援用されている。そのようなイミュノマーは、CpGを含む免疫刺激的配列より、より強力な免疫刺激性を有し得る。イミュノマーは、抗原と組合わせで投与される場合、哺乳動物において免疫応答を増進する。イミュノマーは、下に記載のようにCpGイミュノマーまたはCpGフリーのイミュノマーであり得る。例示的なイミュノマーは実施例XおよびXIに記載される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「CpGイミュノマー」とは、上に記載したように、具体的にはCpGモチーフを含むイミュノマーをいう。従って、CpGイミュノマーは、2つの同一または非同一のより小さなオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであって、そこではより小さいオリゴヌクレオチドの少なくとも1つは、少なくとも1つのCpGモチーフを含む。
【0026】
本明細書で使用される場合、「CpGフリーのイミュノマー」とは、具体的にはCpGモチーフを除外したイミュノマーである。従って、CpGフリーのイミュノマーとは、同一または非同一のより小さな2つのオリゴヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドであり、このより小さいオリゴヌクレオチドのいずれもCpGモチーフを含まない。
【0027】
イミュノマーは、改変塩基を含み得る(Kandimallaら、上述、2001)。例えば、イミュノマーは,CpGのアナログを含み得る。例えば、イミュノマーは、Yと命名されるデオキシシトシンのピリミジンアナログを含み得る。イミュノマーの使用に特に有用なデオキシシチジンアナログは、デオキシ−5−ヒドロキシシチジンまたはデオキシ−N4−エチルシチジンである。別の実施形態では、イミュノマーは、Rと命名されるグアニンのプリンアナログを含み得る。特に有用なデオキシグアニンアナログは、7−デアザグアニンである。従って、イミュノマーは、YpGモチーフ、CpRモチーフ、またはYpRモチーフを含み得るが、ここでYおよびRは、それぞれシトシンおよびグアニンのアナログである。
【0028】
イミュノマーを形成するためのより小さな2つのオリゴヌクレオチドを結合する方法は、以前に以下に記載されている:
【0029】
【化2】

【0030】
当業者は、これらおよび他の方法が、その3’末端を介して、2つの遊離の5’末端を生成するオリゴヌクレオチドを結合するのに使用され得ることを、容易に認識する。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「免疫刺激的配列」または「ISS」とは、抗原と組合わせて投与される場合、哺乳動物において免疫応答を増進する能力を有するメチル化されていないCpGモチーフを含有するヌクレオチド配列をいう。免疫促進的配列とは、例えば国際公開公報第98/55495号に記載されている。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「イミュノマー含有核酸分子」とは、イミュノマーを含有する、線状、環状、分枝状単鎖もしくは二本鎖のDNA核酸またはRNA核酸をいう。イミュノマー含有核酸分子は、単一のイミュノマーを含み得る。核酸分子はまた、もし遊離の5’末端の1つもしくは両方が別の核酸配列の5’末端と結合して、付加的イミュノマーの結合に別の潜在的な3’末端を生成する場合、1より多いイミュノマーを含み得る。そのような核酸分子は、イミュノマーに加えて、6塩基または6塩基対より長い長さであり得、そして一般に約15塩基または塩基対より大きく、例えば約20塩基または約20塩基対より大きく、長さが数kbであってもよい。そのようなイミュノマー含有核酸が環状である場合、または5’−5’結合を必要とする複数のイミュノマーを含んでいる場合、遊離の5’末端が、5’−5’結合が、短いイミュノマー(Kandimallaら、Bioconjugate Chem.13:966〜974(2002)およびYuら、Bioorgan.Med.Chem.10:2585〜2588(2000))に見られるように、核酸に埋めこまれたイミュノマーの免疫刺激的活性に干渉しない限り例えば、以下に記載されるように結合されることが理解される:Kadimallaら、上述、2002およびYuら、上述、2000。イミュノマー含有核酸は、DNAワクチンとしての使用のための1以上のHIV抗原をコードする核酸配列を、さらに含む。
【0033】
イミュノマーまたはイミュノマー含有核酸分子は、本明細書で開示されるように例えば、化学的にオリゴヌクレオチドを合成することにより、および、3’末端を介してオリゴヌクレオチドを化学的に結合することにより生成され得る。さらにイミュノマーまたはイミュノマー含有核酸分子は、イミュノマーまたはイミュノマー含有核酸2つの半分を、組換え的に合成することおよび3’末端を介して2つの半分を化学的に結合することにより生成され得る。
【0034】
イミュノマーは、天然のもしくは改変されたヌクレオチド、または天然のもしくは非天然のヌクレオチド結合を含み得る。当業者に既知の改変としては、例えば、3’OH基または、5’OH基の改変、ヌクレオチド塩基の改変、糖成分の改変およびリン酸基の改変が挙げられる。非天然のヌクレオチド結合としては、例えばホスホジエステル結合の代わりにホスホロチオエート結合があり得、この結合は、ヌクレアーゼ分解に対する核酸分子の耐性を増加させる。種々の改変および結合が、例えば国際公開公報第98/55495号に記載されている。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「アジュバント」とは、免疫原性因子に添加される場合、その混合物に暴露されたときに受容宿主における因子に対する免疫応答を、非特異的に増進または増強する物質をいう。アジュバントとしては、例えば、水中油滴型エマルジョン、油中水滴型エマルジョン、ミョウバン(アルミニウム塩)、リポソームおよびマイクロ粒子(例えば、ポリスチレン、デンプン、ポリホスファゼン、およびポリ乳酸/ポリグリコール酸)が挙げられ得る。アジュバントはまた、例えばスクワレン混合物(SAF−I)、ムラミルペプチド、サポニン誘導体、マイコバクテリウム細胞壁調製物、モノホスホリル脂質A、ミコール酸誘導体、非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤、Quil A、コレラトキシンBサブユニット、ポリホスファゼンおよび誘導体、ならびに免疫刺激複合体(ISCOM)(例えば、Takahashiら(1990)Nature 344:873〜875に記載されている免疫刺激複合体)が挙げられ得る。獣医学的使用のためおよび動物における抗体産生のために、フロイントのアジュバント(完全および不完全の両方)のマイトジェン成分が使用され得る。ヒトにおいて、フロイント不完全アジュバント(IFA)は、特に有用なアジュバントである。種々の適切なアジュバントが当該分野では周知であり、例えば、WarrenおよびChedid、CRC Critical Reviews in Immunology 8:83(1988)に概観されている。
【0036】
本明細書で使用される場合、「AIDS」とは、HIV感染の症候期をいい、後天性免疫不全症候群(通常AIDSとして公知)およびAdler、Brit.Med.J.294:1145(1987)に記載されているような「ARC」またはAIDS関連症候群挙げられる。AIDSの免疫学的症状発現および臨床的症状発現は、当該分野で周知であり、例えば免疫不全から発生する日和見感染および癌が挙げられる。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「AIDSを阻害する」とは、HIV感染またはAIDSの症状に関連して免疫原性組成物の有益な予防的効果または治療的効果をいう。そのような有益な効果としては、例えば、HIVに曝露された個体の初期感染を予防または遅延させること;HIVに感染した個体においてウイルス負荷を低減させること;HIV感染の無徴候相を延長させること;ウイルスレベルが抗レトロウイルス治療(ART)を介して低下されたHIV感染患者において低いウイルス負荷を維持すること;薬物未処置患者およびARTで処置された患者において、HIV特異的および非特異的の両方でCD4T細胞のレベルを増加させるか、またはCD4T細胞の減少を抑制し、AIDSの個体において全体として健康またはクオリティオブライフを増強すること;ならびにAIDSの個体の寿命予測を延ばすことが挙げられる。臨床医は、処置がAIDSを阻害するのに有効かどうかを決定するために、免疫の効果を、処置前の患者の状態または未処置患者の予測される状態とを比較する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語、免疫応答に関して「増進する」とは、免疫原性組成物が、HIV抗原単独を含む組成物が誘発するより大きな免疫応答を誘発することを意味することが企図されている。免疫原性組成物が3つの成分、HIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含む場合、この免疫原性組成物は、免疫原性組成物の3成分のうちのいずれかの2成分を含む組成物が同じ量および続く同じ免疫スケジュールで投与されるより大きな免疫応答を誘発する。本発明の免疫原性組成物の成分は、相乗的に作用し得る。増進された免疫応答は、例えば、記憶細胞を増進するケモカインおよび/またはサイトカイン産生の増加、記憶細胞の増加、IgG2b産生の増加、細胞傷害性Tリンパ球の活性の増大、βケモカインもしくはIL15などの産生増加があり得る。増進された免疫応答の例として、本発明の免疫原性組成物は、CD4細胞(ヘルパー機能)およびCD8細胞(細胞傷害性Tリンパ球;CTL)の両方によりγインターフェロンの産生を増加させ得る。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「βケモカイン」とは、RANTES,マクロファージ炎症性タンパク質1β(MIP−1β)およびマクロファージ炎症性タンパク質1α(MIP−1α)を含む、小さい化学誘引性ポリペプチドのクラスのメンバーをいう。βケモカインの物理的性質および機能的性質については、当該分野において周知である。
【0040】
増進されたβケモカイン産生の場合において、そのβケモカイン産生は、「HIV特異的βケモカイン産生」であり得、それはHIV抗原によるT細胞の刺激への応答におけるβケモカインの産生をいう。あるいは、またはさらに、増進されたβケモカイン産生は、「非特異的βケモカイン産生」であり得、それはHIV抗原によるT細胞の刺激の不存在下におけるβケモカインの産生をいう。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「キット」は、一緒に使用されるために包装されまたは特徴づけられた成分をいう。例えば、キットは、3つの別個の容器にHIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含み得る。あるいは、キットは1つの容器に任意の2つの成分を含み得、そして1つ以上の別個の容器に第3成分および任意の付加的な成分を含み得る。必要に応じて、キットは、哺乳動物への投与に適切な免疫原性組成物を配合するために成分を組合わせる説明書をさらに含む。
【0042】
本発明は、HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントを含む免疫原性組成物を提供する。上記免疫原性組成物は、その組成物を投与された哺乳動物において免疫応答を増進する。一つの実施形態では、上記免疫原性組成物は、哺乳動物においてHIV特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を増進する。別の実施形態では、上記免疫原性組成物は、HIV特異的CD4+ヘルパーT細胞を増進する。
【0043】
一つの実施形態では、上記免疫原性組成物のHIV抗原は、不活化全HIVウイルスであり、それは当該分野で公知の方法により調製され得る。例えば、HIVウイルスは、感染個体の末梢血の標本から培養により調製され得る。HIVウイルスの例示的な培養方法において、末梢血からの単核細胞(例えばリンパ球)は、Ficoll−Hypaque密度勾配の間ヘパリン化された静脈血の標本を重層化することおよびその標本を遠心分離することにより得られ得る。上記単核細胞は、次いで収集され、植物性ヘマトグルチニンで2、3日間活性化され、そして適切な培地で、好ましくはインタ−ロイキン2(IL2)で補填された培地で、培養される。上記ウイルスは、細胞中のウイルス粒子の存在を検出する、逆転写酵素のアッセイ、p24についての抗原補足アッセイ、免疫蛍光または電子顕微鏡により検出され得るが、これらの全ては、当業者には周知の方法である。
【0044】
不活化全HIV粒子を単離する方法は、例えばRichieriら、Vaccine 16:119〜129(1998)および米国特許第5,661,023号および同第5,256,767号に記載されている。1つの実施形態では、上記HIVウイルスは、1976年ザイールにおいて感染した個体由来のHZ321単離体であり、それについてはChoiら、AIDS Res.Hum.Retroviruses 13:357〜361(1997)に記載されている。
【0045】
ウイルスを非感染性にする種々の方法は、当該分野においては公知である(例えば、Hanson,MEDICAL VIROLOGY II(1983)de la MazaおよびPeterson、編、Elsevierを参照のこと)。例えば、上記ウイルスは化学品または加熱もしくは照射などの物理的条件での処理により不活性化され得る。好ましくは、上記ウイルスは、因子またはそのウイルスの免疫原性的性質を維持する因子で処理される。例えば、上記ウイルスは、βプロピオラクトンまたはγ線照射あるいはβプロピオラクトンおよびγ線照射の両方で処理され得、ウイルスを不活化するのに十分な用量および時間で処理され得る。
【0046】
別の実施形態では、上記免疫原性組成物におけるHIV抗原は、外側エンベロープを欠失している不活化全HIVウイルスであり、それは当該分野で公知の方法により調製され得る。外側エンベロープタンパク質を欠失している不活化全ウイルスを調製するために、上記単離されたウイルスは、外側エンベロープタンパク質を除去するように処理される。そのような除去は好ましくは、ウイルス粒子の膨潤および収縮の原因となる物理的な方法と組合わせてウイルスを繰返し凍結および解凍することにより達成され得るが、他の物理的方法または非物理的方法、例えば超音波など単独または組み合わせによってもまた、用いられ得る。
【0047】
さらに別に実施形態では、免疫原性組成物のHIV抗原は、1つ以上の実質的に精製されたHIVの遺伝子産物である。そのような遺伝子産物としては、gag遺伝子(p55、p39、p24、p17およびp15)、pol遺伝子(p66/p51およびp31〜34)および膜貫通糖タンパク質gp41;ならびにnefタンパク質によりコードされるそれらの産物が挙げられる。これらの遺伝子産物は、単独または他のHIV抗原との組合わせで使用され得る。上記HIV抗原はまた、免疫応答を発現しないHIV遺伝子産物のペプチド断片であり得る。
【0048】
実質的に精製されたHIV遺伝子産物は、実質的に精製されたHIVp24抗原または他のHIV抗原および遺伝子産物であり得る。p24および他のHIV抗原は、当該分野において公知の生化学的方法によりウイルスから実質的に精製され得るか、または当該分野において周知の方法により細菌細胞、真菌細胞または哺乳動物細胞のような宿主生物における適切な遺伝子をクローニングおよび発現することにより、調製され得る。あるいは、p24抗原またはp24の免疫学的活性を維持する改変体もしくは断片および他のHIV抗原またはそれらの改変もしくは断片は、自動ペプチド合成のような当該分野で周知の方法を使用して、合成され得る。p24の改変体もしくは断片がp24の免疫学的活性を維持するか否か、または他のウイルス抗原が、それぞれの免疫学的活性を維持するか否かの決定は、例えば当該分野で公知の従来のリンパ球増殖アッセイ(LPA)(実施例IIIを参照のこと)によるか、哺乳動物を免疫し、そして生じた免疫応答を比較するか、またはp24抗体に結合することに関してp24と競争する改変体あるいは断片の能力または他のHIV抗原のそれぞれの抗体に対する結合に関してHIV抗原と競争する改変体あるいは断片の能力を試験することにより分析されるような以前に免疫されたPBMCのインビトロでの増殖を刺激する能力により、なされ得る。
【0049】
さらに別の実施形態では、上記免疫原性組成物のHIV抗原は、プロテアーゼ欠損HIV(米国特許第6,328,976号および同第6,557,296号を参照のこと)の実質的に精製された遺伝子産物である。
【0050】
HIV−1の複製プロセスは、5〜10塩基対あたり約1のエラー率である。全体のウイルスゲノムが、ちょうど10,000より少ない塩基対であるので、複製周期当たり、約1塩基対のエラー率で生じる。この高い変異率は、任意のヒト体内でのウイルスの広範な可変性および集団全体に一様にひろがる広い可変性に寄与する。
【0051】
この可変性は、記載された3種のHIV−1改変体を生じ、「クレード」と呼ばれる約10の亜種のウイルスを生じた。これらの識別は、エンベロープタンパク質(特に可変性である)の構造に基づいている。M(主要な)改変体は、世界的規模で最も流行性のあるものである。M改変体内では、クレードA、B、C、D、E、F、G、H、I、JおよびKがあり、このAからEまでのクレードは世界的に広く主要な感染を示す。クレードA、CおよびDは、アフリカで優勢である。クレードBは、ヨーロッパ、南北アメリカおよび東南アジアで、最も流行性である。クレードEおよびCは、アジアで優勢である。これらのクレードは、35%ほど相互と異なる。
【0052】
流行について根深い因果関係を有するHIV−1の非常に高い変異率から二つの重要な結果が存在する。第1に、高い変異率は、ウイルスが薬物治療による制御から逃れることが可能になる機序の1つである。これらの新しいウイルスは、耐性種を示す。高い変異率はまた、ウイルスが、免疫成分により認識される構造を変化させることにより、患者の免疫系から逃れることができるようにする。この広範の可変性について加えられるべき重要性は、上記ウイルスがまた、ワクチンによる制御から逃れることができ、エンベロープタンパク質に基づくワクチンは効果がないようになることである。
【0053】
構造において最も大きな改変は、エンベロープタンパク質gp120およびgp41に見られる。より少ない改変は、種々の内部タンパク質で見られる。本明細書で開示されるように、REMUNEは、そのgp120タンパク質なしの全ウイルスから作製された免疫原であるが、HIV−1ウイルスの高度に保存されたエピトープのほとんどを含有する免疫原である。これらのエピトープの数および変異のより低い頻度は、REMUNEのような外側エンベロープタンパク質を欠失しているHIVウイルスが個体内で、より大きな成功の機会を有する免疫応答を刺激することを意味する。さらに、上記HuT78細胞株は、保存された抗原(世界的に見られるクレードにおけるほとんどの改変体に渡って維持されている)に関してクレードAおよびGの両方を含む、非常に早期の種のHIVウイルスに故意に感染させられ、そしてこのHuT 78 HIV感染細胞株は、HIV抗原として使用されるウイルスを提供した。従って、外側エンベロープタンパク質も欠失する複数の早期クレードを有するHIVウイルスを免疫のために使用することは、ほとんどの患者に認識され得る保存された抗原を提供することにより、クレード間で有効であり得る。
【0054】
上記HIV抗原およびイミュノマーは一緒に混合され得、共有結合または非共有結合により結合され得る。抗原と核酸分子とを結合する方法は、当該分野で公知であり、例示的な方法は、国際公開公報第98/55495号に記載され入ている。
【0055】
イミュノマーのオリゴヌクレオチド成分は、例えば、オリゴヌクレオチド合成、PCR、大きな核酸分子の酵素的分解または化学的分解および従来のポリヌクレオチド単離手順を含む、当該分野で周知の方法を使用して調製され得る。1以上の改変塩基または結合を含むオリゴヌクレオチドを含む、イミュノマーのオリゴヌクレオチド成分を産生する方法は、例えば、国際公開公報第98/55495号に記載されている。
【0056】
当業者は、特定のイミュノマーが同じ種、または同様の免疫応答を示す当該分野で公知の種の哺乳動物を、特定のイミュノマー含有組成物で免疫することにより特定の哺乳動物における所望の免疫応答を増進するのに有効であるか否かを、容易に決定し得る。次いで、当該分野において公知の種々のアッセイは、誘導される免疫応答の特性を特徴づけるためおよび比較するために使用され得る。例えば、ヒトへの投与のための免疫原性組成物を含有する最適化されたイミュノマーは、ヒトまたはヒヒ、チンパンジー、マカクザルまたはサルのような非ヒト霊長類のいずれかにおいて例えば,LPA、ELISPOTおよび/または産生されるIgG1/G2の比により、その免疫活性を評価することにより、決定され得る。
【0057】
本発明の免疫原性組成物は、ヒトにおいて安全であることが実証されているアジュバントのようなアジュバントをさらに含み得る。例示的なアジュバントとしては、フロイント不完全アジュバント(IFA)がある。別の例示的なアジュバントは、マイコバクテリウムの細胞壁成分および市販されているアジュバントDETOXTMのようなモノホスホリル脂質Aがある。別の例示的なアジュバントは、ミョウバンである。免疫原性組成物においてアジュバントの調製および処方は、当該分野で周知である。
【0058】
必要に応じて、本発明の免疫原性組成物は、滅菌水もしくは緩衝化生理食塩水を含む、他の薬学的に受容可能な成分を含み得るか、またはそれらとともに処方され得る。薬学的に受容可能な成分は、例えば安定化、溶解化、乳化、緩衝化または免疫原性組成物の滅菌性を維持するように作用する任意の化合物であり得、哺乳動物への投与に適合性があり、その免疫原性組成物を、企図する目的について無効にはしない。そのような成分および使用は当該分野では周知である。
【0059】
本発明はまた、HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントを含むキットを提供する。そのキットの成分は、組合わされる場合、哺乳動物において免疫応答を増進する免疫原性組成物を産生する。
【0060】
上記キットの成分は、エクスビボで組合わされ、HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントを含む免疫学的組成物を産生する。あるいは、任意の2つの成分が、エクスビボで組合わされ、第3成分は、インビボで免疫組成物が形成されるように投与される。例えば、HIV抗原をアジュバントに乳化し、溶解し、混合しもしくは吸着させ、イミュノマーの注入に先立って、またはその後に、哺乳動物に注入し得る。同様に、上記キットの各成分は、別々に投与され得る。当業者は、HIV抗原と、イミュノマーと、必要に応じてアジュバントとを、哺乳動物において免疫応答を増進するように組合わせおよび投与する種々の方法があることを理解する。以下に、さらに詳細に議論されるが、本発明の免疫学的組成物は、当該分野で周知の方法(筋肉内、静脈内、皮下、腹腔内、鼻内、経口もしくは粘膜経由を含むが、限定されない)で局所的にまたは全身的に投与される得る。
【0061】
本明細書に開示されるように、REMUNEは、大多数の患者において、強度および持続時間の程度は変わるが、免疫原性であることが見出されている(実施例VIII)。従って、外側エンベロープタンパク質を欠失するHIVを含む免疫原性組成物は、REMUNEのようなIFAアジュバントと組合わせて、HIVに感染した患者の大多数において免疫応答を誘導するために使用され得る。本発明の免疫原性組成物は、REMUNETMのようなHIV免疫原に対する免疫応答の強さおよび能力を増進し、それによりワクチンの治療的および/または予防的効能を増進する。増進された免疫応答は、例えば、HIV−1特異的CD4+ヘルパーT細胞、ケモカインおよび/またはサイトカインの産生を増加し得、記憶細胞の増加、全体的な抗体産生の増加、より詳細にはIgG2b産生の比率、細胞傷害性Tリンパ球活性の増加、βケモカインの増加またはIL15産生などがあり得る。従って、本発明の免疫原性組成物は、TH1サイトカインプロフィール(高いIFN−γ、高いIgG2/IgG1比率)を増進するために使用され得る。本明細書で開示される場合に、本発明の免疫原性組成物は、相乗的に作用し得る。例えば、本発明の免疫原性組成物は、上記免疫原性組成物成分のペアの組合せの効果を追加することにより、期待されていたよりもβケモカインのより高濃度の産生を誘発することにより、βケモカイン産生を増進する。
【0062】
記憶細胞は、感染の初期の急性状態に続き、長期間の免疫を維持するために必要である。感染の初期急性段階に引き続き、収縮期の間に、感染性因子に対して誘導された顕著な量の免疫細胞が、アポトーシスにより破壊され、わずかに生存する細胞のみが記憶細胞になり得る。従って、アポトーシスからHIV特異的CD4T細胞およびCD8T細胞を保護することは、HIV特異的CD4ヘルパーT記憶細胞およびCD8 CTL記憶細胞の両方の増加を促進する。本発明の免疫原性組成物は、記憶細胞を増加するために使用され得、それにより長期間のヘルパー機能および細胞性免疫を促進する。本発明の免疫原性組成物は、アポトーシスを減少させることによるか、または記憶細胞の生存を促進する因子を刺激することにより、記憶細胞の数を増加するのに使用され得る。
【0063】
本発明の免疫原性組成物は、TH2応答をTH1応答へシフトするために使用され得、それにより、より強力なCD8+応答を含む、細胞性免疫応答を増加した。従って、本発明の免疫原性組成物は、患者において免疫応答を強化し、そうでなければ弱く応答するのみ、その応答を細胞性免疫に変換するために使用され得る。本発明の免疫原性組成物は、従って、免疫原性組成物において使用される類似したHIV抗原に弱く応答した患者において免疫応答の強さおよび持続時間を増加するのに使用され得る。
【0064】
本発明の免疫原性組成物は、その組成物を投与した哺乳動物において、免疫応答、例えば増進したβケモカイン、および/またはIL15、IFN、IL2、TNFα産生、増加したHIV特異的CD4ヘルパー細胞、IgG2b抗体産生,HIV特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)産生、CD4+細胞およびCD8T細胞によるIFN−γ産生などを増進するのに有効である。2000年5月5日に出願された米国特許出願第09/565,906号および国際公開公報第00/67787号(それぞれ本明細書に参考として援用されている)、そして以下の実施例IおよびIIIに記載されているように、βケモカインRANTESの生産は、上記組成物を投与した哺乳動物由来のT細胞(例えばリンパ節細胞または末梢血細胞)の上清のELISAアッセイを使用して検出および定量され得る。抗原特異的βケモカイン産生を決定するために、免疫哺乳動物由来のT細胞は、抗原提示胸腺細胞との組合わせによりHIV抗原で刺激され、その上清においてβケモカインレベルを測定し得る。非特異的βケモカイン産生を決定するために免疫哺乳動物からのT細胞上清または血液サンプルまたは血漿サンプルのいずれかがアッセイされ得る。同様に、他のβケモカイン(例えばMIP−1αおよびMIP−1β)の産生は、市販のELISAアッセイを使用して製造者の説明に従って検出および定量され得る。
【0065】
サイトカイン(例えば、インターフェロン、IL15、IL2、TNFα、IL10およびIL7)産生を、ELISPOT、ELISAまたは細胞内サイトカイン染色により測定する方法は、当業者には周知である(例えば、Robbinsら、AIDS 17:1121〜1126(2003)を参照のこと)。
【0066】
本発明の免疫原性組成物は、上記組成物を投与した哺乳動物においてHIV特異的IgG2b抗体産生を、さらに増進し得る。IgG2b抗体の高いレベルは、Th1型応答と関連するが、HIV感染およびAIDSへの進行に対する防御と関連する。従って、本発明はTH1応答を増加し得る組成物を提供する。
【0067】
本発明の免疫原性組成物は、その組成物を投与した哺乳動物において、HIV特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を、さらに増進する能力を有し得る。本発明の免疫原性組成物は、CD4+T細胞およびCD8+T細胞によるIFN−γ産生を増加し得る。
【0068】
CD+4T細胞によるIFN−γ産生は、細胞性免疫に重要な古典的CD4ヘルパー応答として特徴づけられる。IFNおよびIL2の両方を産生するCD4+T細胞は、もっとも効果的であり得る。CD8+T細胞によるIFN−γ産生は、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の代表であり、細胞溶解活性に非常に相関性がある。IFNおよびTFNαを産生する細胞は、非常に効果的であり得る。CTL活性は、有効な予防的または治療的坑HIV免疫応答の重要な成分である。CTL応答が、本発明の免疫原性組成物を投与した後に増進されるか否かを決定する方法は、当該分野において周知であり、細胞溶解アッセイ、およびLPAアッセイ(例えば、Demlら、上述(1999)に記載されている;実施例IIIを参照のこと)、ならびにCD8特異的IFN−γ産生のためのELISAアッセイおよびELISPOTアッセイ(米国出願第09/565,906号および国際公開公報第00/67787号および下記の実施例IおよびIIを参照のこと)、細胞表面マーカーに対する種々の抗体を使用する細胞内染色およびFACS分析を使用することを含む。
【0069】
本発明はまた、個体を免疫する方法を提供する。本方法は、HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントを含む免疫原性組成物を、哺乳動物に投与することにより個体における免疫応答を増進する工程から構成される。上記免疫原性組成物の成分は、如何なる順序、組み合わせにても、免疫原性組成物がエクスビボまたはインビボで形成されるように投与され得る。
【0070】
特定の実施形態では、上記HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバントは、ほぼ同じ時間、およびほぼ同じ部位に投与される。しかしながら、相互に数分内にまたは数時間内にこの組成物を投与することはまた、免疫応答を誘導する免疫原性組成物を提供することにおいて有効であり得る。さらに哺乳動物において異なる部位に上記成分を投与することはまた、免疫応答を増進する免疫原性素晴雨物を提供するのに有効であり得る。当業者は、成分を個別に投与するのに適切な時間および部位について、即ち、HIV抗原、イミュノマーおよび必要に応じてアジュバント成分を十分な免疫応答を提供するために、種々の時間および部位に別々に成分を投与し、そしてその免疫応答を測定することにより、容易に決定し得る。上記免疫原性組成物はまた、所望の場合、複数回、例えば2回以上、3回以上、4回以上、5回以上、6回以上、7回以上、8回以上、9回以上、10回以上または所望の回数、HIV特異的免疫応答を刺激および増進するために投与され得る。
【0071】
本発明の免疫原性組成物は、AIDSを阻害する(例えば、HIVに曝露された個体の初期感染を予防すること、HIVに感染した個体におけるウイルス負荷を減少すること、HIV感染の無症状相を延長すること、AIDSを有する個体の全体的な健康またはクオリティオブライフを増加すること、またはAIDSを有する個体の予測寿命を延長すること)ために、ヒトに投与され得る。本明細書で開示される場合、HIV抗原、イミュノマーを含む単離された核酸分子および必要に応じてアジュバントを含む免疫原性組成物の哺乳動物への投与は、HIV感染およびAIDSへの進行に対する防御に関連する免疫応答を刺激する。
【0072】
特に、上記免疫原性組成物は、任意の個別の成分の組み合わせにより、またはHIV抗原、イミュノマーおよびアジュバンドを含む3成分組成物中の、その免疫原性組成物の任意の2成分により期待されるより、より有効に免疫応答を増進する。さらに、上記免疫原性組成物は、Th1型サイトカイン(例えば、IFN−γ)およびTh1型抗体同型(例えば、IgG2b)を含む、強力なTh1免疫応答を促進する。従って、本発明の免疫原性組成物は、セロネガティブな個体に投与される場合、HIV感染を予防し、ウイルス負荷を減少し、感染の無症状相を延長し、セロポジティブの個体の健康および寿命に対して良い方に影響するワクチンとして有効である。
【0073】
HIVウイルスに曝露された個体は、通常血清においてHIVに特異的な特定の抗体を発現する。そのような個体を、HIVに対して「セロネガティブ」である個体と対比して、「セロポジティブ」という。現在のHIV特異的抗体の存在は、市販のアッセイシステムにより決定され得る。
【0074】
現在、上記ウイルスに対する抗体の存在を検出する血清学的な試験が、感染を決定するのに最も広く使用される方法である。そのような方法は、しかしながら、個体がウイルスにかかったがまだ免疫応答を作動していない場合には、偽陰性であり、そして胎仔が抗体を獲得し、母親からウイルスを獲得していない場合には偽陽性という結果になる。血清学的な試験が、感染の徴候を提供する場合、事実上感染したとしてセロポジティブを試験する全てのヒトを考慮することが必要である。さらに、セロネガティブということが分かった特定の個体は、公知のキャリアと接触するような特定の他の感染の徴候が、満たされた場合、事実上感染したものとして処置され得る。
【0075】
本発明の免疫原性組成物は、HIVセロネガティブまたはセロポジティブである個体に投与され得る。セロポジティブ個体において、プロテアーゼインヒビターのように、抗ウイルス剤での処置を含む、処置法の1部分として上記組成物を投与することが望ましくあり得る。処置法における抗ウイルス剤およびその使用は、当該分野で周知であり、特定の個体に対する適切な処置法は、熟練した臨床医により決定され得る。
【0076】
米国特許出願第09/565,906号および国際公開公報第00/67787号に記載され、そして本明細書に、および以下の実施例IVに開示されるように、本発明の上記免疫原性組成物の霊長類胎仔または霊長類新生児への投与は、強い坑HIV免疫応答を生じ、胎仔および幼児の免疫系が、HIV感染およびAIDSへの進行から子供を防御するべきであるこのような組成物に対して免疫応答を作動することができることを示している。従って、本発明の免疫原性組成物は、胎仔、幼仔、小児または成人に対してHIV伝播を阻害するために、予防的ワクチンまたは治療的ワクチンとしてHIV感染妊婦の母体に、投与され得る。
【0077】
本発明の方法において、投与されるべき上記免疫原性組成物の用量、またはそれらの成分は、所望の免疫応答が刺激されるのに有効であるように選択される。一般に、単回投与のために処方された免疫原性組成物は、約1〜200μgのタンパク質抗原の間の量を含む。免疫原性組成物は一般的に、ヒトのような霊長類に投与するために約100μgのタンパク質抗原を含む。米国特許出願第09/565,906号および国際公開公報第00/67787号に記載され、そして本明細書に開示され、以下の実施例IVに示されるように、免疫原性組成物中約100μgのHIV抗原は、霊長類において強力な免疫応答を誘発する。約10μgのHIV抗原は、齧歯類に対する投与には適切である。当業者は、本発明の免疫原性組成物中に含まれるHIV抗原の免疫応答を刺激するのに十分な適切な量を、容易に決定でき得る。
【0078】
本発明の免疫原性組成物は、約5μgから約100μgのイミュノマーをさらに含み得、および所望の場合には10mgまでのイミュノマーを、含み得る。例えば、ヒトへの投与の用量には、以下があり得る:
【0079】
【化3】

【0080】
米国特許出願第09/565,906号および国際公開公報第00/67787号に以前に記載されているように、HIV抗原1に対して少なくとも5の核酸分子の重量比は、免疫応答を誘発するより低い率より有効であった。当業者は、免疫応答を誘発するHIV抗原に対するイミュノマーの適切または最適化された比率を、容易に決定できる。例えば、HIV抗原に対するイミュノマーの適切または最適化された比率を決定するためにその比率は、変えられ得るし、その免疫応答は、本明細書に開示する方法で、測定され得る。齧歯類において、免疫原性組成物中のイミュノマーの有効な量は、5μgから、50μgより多く(例えば約100μg)である。霊長類においては、約500μgのイミュノマーは、免疫原性組成物において適切である。当業者は、所望の免疫応答を誘発するためのイミュノマーの適切な量を、容易に決定し得る。
【0081】
全ての免疫原性組成物と同様、免疫学的に有効な量は、実験的に決定されるが、例えば、齧歯類および非ヒト霊長類のような動物モデルにおいて免疫学的に有効な量に基き得る。考慮されるべき要因としては、抗原性、処方(例えば、アジュバントの容量、型)、投与経路、投与されるべき免疫容量の数、物理的状態、固体の体重および年齢などが挙げられる。そのような要因は、ワクチン分野においては周知であり、過度な実験をしなくても、そのような決定をすることができる免疫学者の熟練の範囲内である。
【0082】
本発明の免疫原性組成物は、当該分野で任意の公知の方法(例えば、筋肉内、皮内、静脈内、皮下、腹腔内、鼻内、経口または他の粘膜内が挙げられるが、限定されない)により局所的に、または全身的に投与され得る。上記免疫原性組成物は、適切な非毒性の薬学的キャリアにより投与され得るか、またはマイクロカプセル化にまたは徐放性インプラントとして処方され得る。本発明の免疫原性組成物は、所望により、所望の免疫応答を得るために複数回投与され得る。適切な投与経路、処方および免疫スケジュールは当業者により決定され得る。
【0083】
本発明の種々の実施形態の活性を実質的に影響しない改変はまた、本明細書で提供される発明の定義の範囲内であることが理解される。従って、以下の実施例は本発明を説明するよう意図され、限定されないよう企図される。
【実施例】
【0084】
(実施例1 HIV免疫原性組成物によるサイトカイン、抗体およびケモカイン応答の誘発)
本実施例は、HIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含む免疫原性組成物が、哺乳動物において,IFN−γ産生(Th1(CD8)およびTh2(CD4ヘルパー)サイトカイン)、抗体応答、およびβケモカイン産生の強力な刺激剤であることを示すことが企図される。従って、HIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含む免疫原性組成物は、HIV感染および疾患の進行に対して防御するために重要である型の強力な免疫応答を媒介し、これはこれらの組成物が有効な予防ワクチンおよび治療ワクチンであることを示す。
【0085】
(イミュノマー)
【0086】
【化4】

【0087】
(免疫)
上記HIV−1抗原を、本質的に以前に記載されているように調製する(国際公開公報第00/67787号)。簡単にいうと、HIV抗原を、envA/gagG組換えウイルス(Choiら、AIDS Res.Hum.Retrovirus 13:357〜361(1997))を含む、亜型「M」として特性付けられたZairianウイルス単離物(HZ321)で慢性的に感染したHut78の培養物から得られたウイルス粒子から調製する。上記gp120は、2工程の精製プロセスの間に欠損する。上記抗原を、βプロピオラクトンの添加および50kGγでのガンマ照射により、不活化する。ウエスタンブロットおよびHPLC分析を、この抗原の調製(Priorら、Pharm.Tech.19:30〜52(1995))において、gp120の非検出レベルを示すのに使用する。インビトロ実験のために、ネイティブなp24を、好ましくは、精製HIV−1抗原から2%トリトンX−100で溶解し、そして次いで、Pharmacia SepharoseTM Fast Flow S樹脂で精製する。クロマトグラフィーを、pH=5.0で行い、p24は、直線塩勾配で溶出する。最終生成物の純度を、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)電気泳動および逆相高速液体クロマトグラフィーの両方で評価し、一般に>99%であることを見出す。上記イミュノマーを最終容量の少なくとも5%の容量に希釈したHIV−1抗原に添加する。
【0088】
CFA(フロイント完全アジュバント)を、IFA(DIFCO、Detroit、Michigan)中、10mg/mlのmycobacterium tuberculosis H37RA(DIFCO、Detroit、Michigan)を再懸濁して、調製する。1部の表面活性剤Montanide80(高純度マンニドモノレート(mannide monoleate)、Seppie、Paris)を、9部のDrakeol 6VR軽鉱物油(Panreco、Karnes City、Pennsylvania)に添加して、IFAまたはISA51(登録商標)を、配合する。上記gp120欠損HIV−1抗原を、PBSで200μg/mlに希釈し、等容量のCFAまたはIFAでイミュノマーと共にか、またはイミュノマーなしで乳化する。
【0089】
病原体フリーの施設で維持されたC57B1マウスに、皮内に100μlの乳化液を注入する。各動物に、CFA、IFAのいずれかの中で1〜10μgの不活化HIV−1抗原、10〜100μgのイミュノマーまたはIFA+10〜100μgのイミュノマーを投与する。CFA中のHIV−1抗原で感作された動物は、代わりにIFA中のHIV−1抗原で追加免疫される以外は、おなじ処置法を使用して、2週間後、尾の根元に皮下で追加免疫をする。マウスを感作し、イミュノマーの存在下で、HIV−1抗原で追加免疫する。ネガティブコントロールに、生理食塩水または生理食塩水中のIFAを投与する。28日目に、上記動物をサイトカイン、ケモカインまたは抗体分析のために屠殺する。
【0090】
(抗原特異的抗体についてのELISA)
研究の最後に、免疫された動物から心臓穿刺により全血を収集する。そのSST試験管を800rpmで20分間遠心分離する。血清を、等分し、−20℃でアッセイまで保存する。PVCプレート(polychlorinated biphenyl plates、Falcon、Oxnard、Califonia)を、PBS中に希釈した1μg/mlのネイティブp24でコートし、4℃で一晩保存する。プレートを、各ウエルに200μlの4%BSAのPBSを加え、1時間ブロッキングする。血清を、PBS中1%BSAで、1:100で希釈し、その後4倍ごと順次、希釈をする。2連で、100μlの希釈血清を添加し、室温で2時間インキュベートする。プレートをPBS中0.05%Tween20で3回洗浄し、ブロットして乾燥した。検出2次抗体(ヤギまたはラットの抗マウスIgGビオチン、ヤギまたはラットの抗マウスIgG1ビオチン、ヤギまたはラットの抗マウスIgG2aビオチン、例えば、Zymed、San Francisco、California)をPBS中1%BSAで希釈する。100μlの希釈した2次抗体を各ウエルに添加し、室温でさらに1時間インキュベートする。過剰の2次抗体を洗浄した後、ストレプトアビジンビオチンHRP(Pierce、Rockford、Illinois)を各ウエルに50μlづつ加え30分間インキュベートする。プレートをPBS中0.05%Tween20で、3回洗浄する。ABTS基質(KPL、Gaithersburg、Maryland)を青がかった緑色に発色するまで添加する。1%SDSを添加してその反応を停止し、そしてそのプレートの405nmの吸収を読む。
【0091】
50%抗体力価として報告される抗体応答は、各所定のサンプルについての最大結合(最高光学読取り)の50%に等しい希釈の逆数である。その吸光度の値(405nmにおけるOD)を、対数目盛りで抗体希釈に対してプロットし、シグモイド様の用量応答曲線を得る。最大結合の50%を、最高OD値に0.5を掛けて計算する。その50%値は、曲線上に位置し、それに対応するx軸の値が、抗体希釈として報告される。
【0092】
(サイトカインおよびケモカイン分析のためのELISAアッセイ)
排液管系リンパ節(浅鼡径リンパ節および膝窩リンパ節)を追加免疫後2週間で免疫動物から単離する。これらのリンパ節の単一細胞懸濁液を、滅菌70μmメッシュスクリーンを使用して機械的解離により調製する。T細胞をリンパ節細胞からパンニング法により精製する。簡単に言うと、ペトリ皿(100×15mm)を、20μg/mlのウサギ抗マウスIgGで、室温で45分間、予備コートする。そのペトリ皿を氷冷PBSで2回、そして氷冷2%ヒトAB血清PBS溶液で1回洗浄する。1×10個のリンパ節細胞を、予備洗浄したプレートに加え、そして4℃で90分間インキュベートする。非接着性細胞(富化されたT細胞)を、その後収集し、そして滅菌50ml円錐形試験管に移す。上記プレートを、2回洗浄し、非接着細胞と組合わせる。上記細胞を、次いで遠心分離し、細胞ペレットを完全培地に4×10細胞/mlで再懸濁する(25mM hepes、2mM Lグルタミン、100μgストレプトマイシンおよび5×10−6M βメルカプトエタノールを含むRPMI 1640中、5%ヒトAB血清)。
【0093】
C57BLマウス由来のγ線照射胸腺を、抗原提示細胞として使用する。2×10個の富化されたT細胞および5×10胸腺細胞を、96丸底プレートの各ウエルに添加する。上記HIV−1抗原およびネイティブp24を、完全培地に10μg/mlに希釈する。一方、con Aは5μg/mlである、100μlの各抗原またはT細胞変異原を、3連で添加する。それらのプレートを、5%CO、37℃で、72時間インキュベートする。上清を回収し、−70℃でアッセイまで保存する。上記サンプルについて、マウスサイトカインおよびケモカインに特異的な市販のキット(例えば、Biosource、Camarillo、California)を使用して、IL−4、IFNーγおよびRANTESについてのアッセイをする。
【0094】
(統計的方法)
マンホイットニー U ノンパラメトリック統計を、群を比較するために使用する。全てのp値は、両側検定である。
【0095】
フロイント完全アジュバント(CFA)は、現在、細胞性免疫応答を刺激することが知られている最も強力なアジュバントである。しかしながら、CFAは、安全性の面からヒトにおける使用には適切なアジュバントではない。従って、HIV免疫原性組成物における使用のためのイミュノマーとIFAとの組合わせは、ヒト治療に安全で有効なワクチンを提供する。
【0096】
IFN−γに対する用量に関連する免疫応答を試験するために、異なる濃度のイミュノマーを含むIFA中で乳化した不活化gp120欠損HIV−1抗原でC57BLマウスを免疫する。
【0097】
HIV−1抗原に対してもまた、抗体応答を追加免疫し得るか否かを試験するために、血清を、p24抗原に対する、全IgGおよびTh2アイソタイプ(IgG1およびIgG2a)抗体応答についてアッセイする。
【0098】
従って、本発明の免疫原性組成物は、個体におけるβケモカイン産生を増進するために使用され得る。βケモカインレベルとHIV感染および疾患の進行からの防御との強い関連性のために、本発明の組成物は、AIDSを阻害する他に記載されている組成物より有効であり得る。
【0099】
(実施例2 HIV免疫原性組成物によるCD4およびCD8免疫応答の誘発)
本実施例は、HIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含む免疫原性組成物で免疫した後に、強力なCD4ヘルパー機能、CD8HIV特異的Th1型免疫応答およびIgG2a/IgG1抗体の高い比率へのシフトを誘導することを示すことが企図されている。CD8+、細胞傷害性Tリンパ球による抗原特異的応答は、HIVの初期感染および疾患の進行を予防するのに重要な因子である。従って、この実施例は、本発明の免疫原性組成物が、有効な予防的ワクチンおよび治療的ワクチンである証拠を、さらに提供する。
【0100】
HIV抗原、イミュノマーおよびIFAを、実施例Iで記載されるように、本質的に調製される。C57BLマウスを、実施例Iに記載のように本質的に免疫し、そしてELISPOTおよびp24抗体分析のために28日目に屠殺する。p24抗体分析を、本質的に実施例Iに記載のように行う。
【0101】
(バルクT細胞および精製されたT細胞集団由来のγインターフェロンについてのELISPOT)
RPMI 1640(Hyclone、Logan、Utah)中で細かく刻みそして滅菌した細かいメッシュのナイロンスクリーンを通すことにより単一細胞懸濁液を、免疫したマウスの脾臓から調製する。上記脾細胞をフィコール勾配遠心分離法により精製する。CD4細胞およびCD8細胞を磁気ビーズ減耗法(magnetic beads depletion)により単離する。2×10個の細胞を、ウサギ抗マウスCD4またはラット抗マウスCD4あるいはウサギ抗マウスCD8またはラット抗マウスCD8のいずれかの5μgで染色する。細胞を氷上で30分間インキュベートし、氷冷PBS中2%ヒトAB血清で洗浄する。ヤギ抗マウスIgGでコートした、予備洗浄したDynabeads(DYNAL、Olso、Norway)を、細胞懸濁液に添加し、一定の速さで混合しながら4℃で20分間インキュベートする。
【0102】
精製したCD4脾細胞、CD8脾細胞および非欠損脾細胞を完全培地(Pen−strep、LグルタミンおよびβMEを含むRPMI 1640中5%不活化ヒトAB血清)に5×10細胞/mlで再懸濁し、ELISPOTアッセイについて使用して、個別のIFN−γ分泌細胞を数える。簡単にいうと、96ウエルのニトロセルロース底ミクロ力価プレート(Millipore Co.,Bedford、U.K.)を、1ウエルあたり400ngウサギ抗マウスIFN−γ(Biosource、Camarillo、California)でコートする。4℃で一晩インキュベーションの後、プレートを滅菌PBSで洗浄し、pen−strep、Lグルタミンおよびβ−MEを含むRPMI 1640中5%ヒトAB血清で、室温で1時間ブロッキングする。プレートを滅菌PBSで洗浄し、各ウエルに5×10個の脾細胞(精製したCD4、精製したCD8または非欠損)を3連で添加し、一晩、37℃、5%COでインキュベートした。細胞を培地、OVA(トリたまご卵白アルブミン、Sigma−Aldrich、St.Louis、Missouri)、ネイティブp24またはgp120−欠損HIV−1抗原と共に培養する。CD4精製脾細胞およびCD8精製脾細胞を、20単位/mlの組換えラットIL−2(Pharmingen、San Diego、CA)を含む完全培地でアッセイする。
【0103】
結合していない細胞を洗浄したあと、1ウエル当たり400ngのポリクローナルウサギ抗マウスIFNγを添加し、室温で2時間インキュベートし、次いで洗浄し、ヤギ抗ウサギIgGビオチン(Zymed、San Francisco、California)で染色する。滅菌PBSで十分に洗浄をしたあと、アビジンアルカリホスファターゼ複合体(Sigma−Aldrich、St.Louis、MO)を添加し、そして室温でさらに1時間インキュベートする。上記スポットに発色性アルカリホスファターゼ基質(Sigma、St.Louis、MO)を添加して発色させ、IFN−γ細胞を、明るい3000光源を装備した解剖顕微鏡(Olympus、Lake Success、NY)(40倍)を使用して計数する。
【0104】
(統計的方法)
マンホイットニー U ノンパラメトリック 統計を、群を比較するために使用する。Spearman順位相関を、CD4γインターフェロン産生とCD8γインターフェロン産生との関係を調べるために実施する。全てのpは、両側検定である。
【0105】
非欠損脾細胞によるIFN−γ産生および精製CD4+または精製CD8+集団によるIFN−γ産生を調べる。CD4+細胞によるIFN−産生は、特徴的なTh1免疫応答であり、一方CD8+細胞によるIFN−γ細胞は細胞傷害性Tリンパ球(CTL)細胞溶解性活性と相互に関連がある。p24に特異的な全IgG,IgG1およびIgG2bもまた、調べる。
【0106】
要約すれば、この実施例は、HIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含む免疫原性組成物が、強力なHIV特異的CD4およびCD8HIV特異的免疫応答を生成するために使用され得ることを示す。CD4Tヘルパー細胞の誘導は、CD8エフェクター細胞の生成のために重要であり得る。CD8T細胞は、いくつかの機序により、HIVウイルスに対してエフェクターとして機能し得、この機序には直接的な細胞溶解(CTL)活性およびβケモカインおよび他のよく特定されていない因子のような抗ウイルス抑制因子の放出によることなどが挙げられる。従って、本明細書に記載される組成物は、HIVワクチンとしての使用について他に記載された組成物より優れている。
【0107】
(実施例III 異なる免疫原性組成物および免疫スケジュールにより誘発される免疫応答の比較)
本実施例は、イミュノマー含有核酸が、(HIV抗原とアジュバントの投与1週間前に、哺乳動物を感作するのに使用される場合より、HIV抗原とアジュバントを同時に投与した場合に防御的な免疫応答RANTES産生およびHIV特異的IgG2b抗体産生を含む)を誘発するのにより有効であることを示すことが企図される。この実施例はまた、HIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含む組成物が、抗原依存性リンパ球増殖を、HIVおよびIFAのみを含む組成物より、より有効に促進することを示す。
【0108】
HIV抗原、イミュノマーおよびIFAは、本質的に実施例Iに記載されるように調製される。C57bBLマウス(少なくとも1群3匹)を、表1に示される以下の組成物で7日目に免疫する。表1に示されるように、0日目に感作する。
【0109】
【表1】

【0110】
本質的には、実施例Iに記載されるように、サイトカイン、ケモカイン、および抗体分析、ならびにリンパ球の増殖の分析のために21日目で動物を屠殺する。
【0111】
(リンパ球増殖アッセイ)
単一細胞懸濁液を、免疫動物の排液管系リンパ節から調製する。B細胞を、パンニングによりリンパ節細胞から消失させる。簡単に言うと、リンパ節細胞を、抗マウスIgGをプレコートしたペトリ皿で90分間インキュベートする。非接着性細胞(富化されたT細胞)を収集し、完全組織培養培地に4×10細胞/mlで再懸濁する。富化されたT細胞を、p24またはHIV−1抗原と共にγ照射した胸腺細胞の存在下で、37℃、5%COで、40〜48時間、培養する。サンプルをトリチウム化チミジンでパルスし、さらに16時間インキュベートする。細胞を回収し、トリチル化チミジンの取り込みをβシンチレーションカウンターで計数する。
【0112】
T細胞におけるサイトカイン産生(例えば、RANTES、MIP−1βおよびMIP−1αのようなIFN−γおよびβケモカイン)を、当業者に周知の方法で決定され得る。p24に特異的なIgG,IgG1およびIgG2bの全ての血清レベルもまた、調べる。さらに、p24抗原およびpg120欠損HIVに対するT細胞増殖応答を調べる。
【0113】
従って、本発明の免疫原性組成物は、HIV特異的Th1サイトカイン(IFN−γ)および体液性応答(IgG2抗体)を有効に誘発し得、かつ非特異的およびHIV特異的βケモカイン産生の両方を増進し得る。上記免疫原性組成物に対するこれらの応答は、強いHIV特異的リンパ球増殖応答と相関する。
【0114】
(実施例IV HIV免疫原性組成物による霊長類の免疫)
本実施例は、HIV抗原、イミュノマーおよびアジュバントを含む免疫原性組成物が、霊長類においてHIV特異的免疫応答を増進するのに有効であることを示すことが企図されている。
【0115】
3匹のヒヒの胎仔に、500μgのイミュノマーを有するIFA中にgp120欠損HIV−1(100μg全タンパク質、10p24単位と等価)を含む免疫原性組成物を、子宮内に注入する。4週間後、胎仔を同じ処置法を使用して追加免疫する。
【0116】
新生ヒヒからの末梢血単核細胞を収集し、そしてp24およびHIV−1抗原に対する増殖的応答をアッセイする。
【0117】
HIV特異的抗体、サイトカインおよびβケモカインの産生もまた、同じヒヒで測定する。これらの結果は、齧歯類についての上述の実施例I〜IIIに記載の免疫原性組成物により誘発される免疫応答の型が、霊長類においてもまた誘発されることを示す。
【0118】
これらの結果は、本発明のHIV免疫原性組成物および方法が、霊長類においてHIV特異的免疫応答を刺激するのに有効であることを実証する。さらにこれらの結果は、胎仔および幼仔が本発明の免疫原性組成物に対する強いHIV免疫応答を誘発することができることを実証する。これはこれらの組成物が、HIVの母仔伝染を予防し、幼仔ワクチンとしても有用であることを示す。
【0119】
(実施例V マウスモデルにおけるイミュノマーとの組合わせた不活化gp120欠損HIV免疫原によるワクチン接種に対する免疫応答)
本実施例は、マウスモデルにおけるHIV−1抗原およびHIV−1免疫原(IFA中に乳化された抗原)の免疫原性を増進するイミュノマーの能力の特性分析を記載する。
【0120】
C57BL/6マウス(6〜8週齢)に、以下に示すように注入する。1群あたりの数は、一般に少なくとも8〜10マウスである。
【0121】
1)PBS
2)マウス1匹当たり30μgのイミュノマー=1.5mg/kg
3)イミュノマー(90μgの最高用量)=4.5mg/kg
4)HIV−1免疫原(10μg)
5)HIV−1免疫原+イミュノマー(10μg、30μg、90μg)
6)HIV−1免疫原+イミュノマー30μg
上記gp120欠損HIV−1抗原を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中で200μg/mlの濃度に希釈し、イミュノマーと共にまたはイミュノマーなしで、等容量のIFAで乳化する。上記イミュノマーを、乳化前に最終容量の少なくとも5%の容量で、希釈HIV−1抗原に添加する。
【0122】
初期の単回皮内注入を、0時間に行い、2週間後に皮内注入を行う。上記マウスを追加免疫後2週間後に屠殺する。使用したHIV−1免疫原は、IFA中の不活化gp120欠損HIV抗原である。
【0123】
(免疫学的分析)
新鮮な脾臓単核細胞を単離し、そしてインビトロで4日間刺激する(Davisら、J.Immunol.160:870〜876(1998)。その単離された細胞を、培地において単独;ネイティブp24抗原とともに;またはHIV−1抗原とともに、刺激する。
【0124】
種々のサイトカインの産生についてELISA法を使用して評価する。アッセイされる例示的なサイトカインとしては、例えば、本明細書に開示されるようにおよび以前に記載されたようにIFN−γ、IL−12、IL−4、IL−5、IL−10、MIP1α、MIPβ、RANTES、αデフェンシンが挙げられ、これらは当業者に周知の方法によりアッセイされる。
【0125】
CD4リンパ球およびCD8リンパ球におけるp24抗原およびHIV−1抗原特異的IFN−γ産生を、実施例IおよびIIに記載のようにELISPOTアッセイで評価する。
【0126】
p24抗原、HIV−1抗原およびLPS特異的リンパ球増殖を、周知の方法を使用して標準的な増殖アッセイにおいて評価する。
【0127】
(実施例VI 予めHIV−1免疫原で免疫したHIV感染患者由来のPBMCにより生成されたHIV特異的免疫応答に対するイミュノマーのインビトロ効果)
本実施例は、IFA中の不活化gp120欠損HIV−1抗原(REMUNE)で処置された患者の末梢血単核細胞(PBMC)において、インビトロでのHIV特異的免疫応答を増進するイミュノマーの能力についての評価を記載する。
【0128】
以下の群の患者を試験する:15人のHIV感染し、かつHAART+REMUNEで処置された患者;15人のHIV感染し、かつHAART処置された患者。上記患者について、疾患の期間、CD4計数、HIVウイルス血症、プロテアーゼインヒビター(PI)の不存在/存在について整合する。全血(530ml)を、EDTA含有試験管に、引き続く分析のために静脈穿刺により採血する。イミュノマーを以下の濃度でPBMCに添加する:0.1μg/ml、1μg/ml、10.0μg/ml。
【0129】
種々の抗原(例えばHIV抗原、p24抗原、HIV−1抗原、envペプチド、gagペプチド;およびフルー(コントロール抗原))に特異的な応答を測定する。他のHIV抗原もまた、所望により測定し得る。CD4リンパ球およびCD8リンパ球における抗原特異的IFN−γ産生を、実施例IおよびIIに記載されるようにELISPOTアッセイにより評価する。抗原特異的リンパ球増殖をまた、標準的増殖アッセイにおいて評価する。
【0130】
RANTES、αデフェンシンの産生を、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)法で,CD8+において細胞内染色をすることにより評価する。所望であれば、他のサイトカインまたは他の細胞型を、アッセイし得る。
【0131】
(実施例VII トリメラ(Trimera)マウスモデルにおけるHIV特異的免疫応答に対するイミュノマーのインビボでの効果)
本実施例は、イミュノマーを含むHIV免疫原性組成物の効果を決定するためのトリメラマウスの使用を記載する。
【0132】
トリメラマウスモデルを、HIV抗原との組み合わせられる場合のイミュノマーの効果を試験するために使用する。誘導された免疫応答および防御的免疫の両方を、モニターし得る。トリメラマウスを、以前に記載されたように生成する(ReisnerおよびDagan、Trends Biotechnol.16:242〜246(1998);Ilanら、Curr.Opin.Mol.Ther.4:102〜109(2002);米国特許第6,254,867号;WO 97/47654)。簡単に言うと、正常マウス宿主を、致死的な分割用量の全身照射により、免疫不全にする。そのマウスを、次いでT細胞欠損マウスSCID骨髄により、放射線防御にし、ヒト末梢血単核白血球(PBMC)の腹腔内注入により、トリメラマウスに変換する。トリメラマウスにおいて、ヒト細胞の移植を、CD3または他のようなヒトT細胞マーカーの蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)分析により証明する。
【0133】
トリメラマウスを、AIDSのモデルとしてHIVで感染させる。簡単に言うとトリメラマウスを1以上の株のHIV−1で感染させる。コントロール動物は、培地のみ(HIV−1なし)を注入したマウスであり、かつPBMCを注入していないマウスである。マウスを、共培養実験において、血漿中のHIV−1 RNAレベル、プロウイルスDNAの存在および活性ウイルスを決定することにより,HIV−1感染について種々の時点で評価する。プロウイルスHIV−1 DNAの存在を、gagのようなHIV−1配列のPCRにより実証する。
【0134】
免疫応答を刺激するためのイミュノマーを含む免疫原性組成物を試験するために、トリメラマウスに、gp120欠損HIV−1を、少なくとも1つのイミュノマーとともに、またはイミュノマーなしで、およびアジュバントと共にまたはアジュバントなしで注入する。抗原とイミュノマーの種々の比率を、例えば、実施例Vに記載されるように使用し、最適化された免疫応答について試験し得る。あるいは、上の組成物を、ヒト自己単球由来の樹状細胞(DC)にパルスし、そしてこれらDCをトリメラマウスに注入する。必要に応じて、マウスを類似の組成物で追加免疫し得る。
【0135】
免疫に引き続いて、血液および腹膜リンパ球を収集する。HIV抗原特異的免疫グロブリンの存在を、決定する。さらに特定の細胞性抗HIV応答を、上記マウスから単離されたヒトリンパ球において決定する。例えば、トリメラマウスから回収したヒトリンパ球におけるIFN−γ産生を、HIV−1抗原に曝露した後で決定する。イミュノマー存在下でのHIV抗原に対する増進した免疫学的な応答を、決定する。
【0136】
感染性HIVでの接種前に、マウスを種々の組成物で免疫すること以外は、同様な様式で防御的免疫を、モニターする。その後のウイルス血症のレベルに影響する種々の組成物の能力を、上述のように測定する。最も有効なワクチンは、ウイルスの循環の最も有効な制御をおよび/または生存を延ばすことを提供するワクチンである。
【0137】
(実施例VIII HIV感染患者のREMUNETMによる免疫)
本実施例は、HIV感染患者のREMUNETM(IFAにおけるGP120欠損HIV−1抗原)による免疫を記載し、大多数の患者が、強さおよび持続期間は異なるが、免疫応答を作動することを実証する。この特定の研究の目的は、非常に活性の強いレトロウイルス治療(HAART)(インジナビル/ZDV/3TC)と組合わせて、REMUNEで処置した後、HIV−1特異的免疫応答をフロイント不完全アジュバント(IFA)+HAARTと比較して、評価することであった。
【0138】
研究プロトコルは、ランダマイズされ、2重盲検、2腕(two arm)、平行群の、アジュバントコントロールされた多中心性研究(multicentre study)であった。被験体数(全体および各処置について)は、分析処理する意図のある43人の評価し得る患者(22 REMUNE+HAART;21 IFA+HAART)を含む52人の患者でランダマイズされた。診断および包括の基準は、CD4計数が>350細胞/μLで、以前にHIVプロテアーゼインヒビターまたはラミブジン(3TC)の使用が以前にないHIV−1感染患者であった。試験製品の用量および試験製品の投与の様式は、REMUNE(HIV−1免疫原);10単位(10μg/ml p24含有量に等しい)、1.0ml容量で提供されるIM(バッチ番号8155〜015および8155〜017)であった。処置の時間については、患者がHAARTを32週間受けた。REMUNEまたはIFAプラセボ(コントロール)を、4週目、16週目および28週目に投与された。参考治療の用量および参考治療の投与の様式は、アジュバントコントロールであった;IFAプラセボ(バッチ番号:8144〜006および8160〜005)を使用した。
【0139】
1次有効性の基準は、末梢血単核細胞(PBMC)におけるHIV−1抗原刺激に対するリンパ球の増殖(LP)応答であった。2次有効性の基準としては、PBMCにおけるネイティブp24およびBaL HIV−1抗原刺激に対するLP応答;PBMCにおけるネイティブp24およびHIV抗原刺激に対するケモカイン応答;gag CTL活性(一サブセットの患者);CD4細胞計数およびCD4の割合の変化;血漿RNAおよびPBMC DNAとして測定されるウイルス容量の変化;ならびにHIV−1抗原およびp24抗原に対するDTH皮膚試験応答が挙げられる。使用した統計方法は、処置が意図された患者におけるフィッシャー正確検定(両側)および両側マンホイットニー検定であった。
【0140】
1次分析は、応答比率を、2つの時点において、基礎と比較して5倍のHIV−1抗原に対する刺激インデックス(SI)として定義した。結果は、REMUNE+HAART群において14/22(64%)応答者およびIFA+HAART群で4/21(19%)の応答者がいたことを示した(p=0.005)。2次分析は、応答比率を、2つの時点において、基礎と比較して3倍のBAL型HIV−1抗原および/またはp24抗原に対するSIとして定義する。結果は、REMUNE+HAART群において15/22(68%)応答者およびIFA+HAART群で5/21(24%)の応答者がいたことを示した(p=0.006)。REMUNE+HAARTを受けた被験体の中でHIV−1(HZ321)抗原に対するLP応答の大きさは、IFA+HAARTを受けた被験体のものより大きく(p=0.0028)、処置前値の幾何学的平均に対して、最初の注入後に測定されたSIの幾何学的平均の各被験体の比率として定義される。
【0141】
IFA+HAART群と比較して、REMUNE+HAARTにおけるネイティブp24(p=0.0002)およびHIV−1 BaL抗原(p=0.007)に対して統計的に有意なLP応答があった。上記の2つの群の間には、抗原(カンジダ、ストレプトキナーゼ、破傷風)を回復するLP応答に差はなかった。HIV−1抗原に刺激されたPBMCによるMIP−1β産生は、IFA+HAART群と比較して、REMUNE+HAART群において有意に(32週目においてp+0.0007)増強された。IFA+HAART群と比較して、REMUNE+HAART群においてより大きなDTH皮膚応答率であり、HIV−1については(53%対9%)ネイティブp24抗原については(47%対0%)であった。
【0142】
REMUNE+ZDV/3TC/インジナビルの投与は、応答者の数および応答の大きさの両方に関してHIV−1抗原に対するリンパ球増殖(LP)応答の有意な刺激となった。応答比率を、2つの時点において、基礎と比較して5倍のHIV−1抗原に対する刺激インデックスとして定義し、IFA+ZDV/3TC/インジナビル群(4/21、19%)より、REMUNE+ZDV/3TC/インジナビル群(14/22、64%)の方が有意に高い応答者の数(p=0.005)であった。
【0143】
REMUNEを受けた被験体の高い割合が、ネイティブp24抗原に対して強いLP応答を生じた。これは、REMUNEが、より保存されたHIVコア抗原に、特異的に応答し得ることを実証した。IFAでの処置は、如何なる抗原に対しても、HIV−1特異的免疫応答を刺激しなかった。REMUNE+ZDV/3TC/インジナビルは、精製ネイティブp24に対して、有意に(p=0.0002)高いリンパ球増殖応答を、生じた。
【0144】
REMUNEの投与は、HIV−1(HZ321)免疫抗原および、クレードBであるHIV−1抗原、HIV−1 BaL抗原に対するLP応答を刺激した。これは、REMUNEにより生成された免疫応答がクレードを交差しており(cross−clade)、免疫因子に限らないことを実証した。REMUNE+ZDV/3TC/インジナビルは、IFA+ZDV/3TC/インジナビルと比較して、HIV−1 BaL抗原に対して、有意に(p=0.007)高いリンパ球増殖応答比率を産生した。
【0145】
抗原刺激MIP−1βの産生は、REMUNE+ZDV/3TC/インジナビル群において、研究期間全体にわたり有意に増加し(32週でp=0.0007)、IFA+ZDV/3TC/インジナビル群においては研究期間に変化しなかった。両群の被験体は、CD4細胞計数において有意に増加し、血漿HIV RNAおよびプロウイルスHIV DNAコピー数において有意に減少することを示した。REMUNE+ZDV/3TC/インジナビル群において、HIV RNA再発に対する時間分析において再発の危険性がより少ない傾向であった;16週目と32週目との間で、IFA+ZDV/3TC/インジナビル被験体の12/21(57%)に対して、再発したREMUNE+ZDV/3TC/インジナビル被験体は6/22(27%)であった(p=0.08、対数順位試験)。REMUNEのようなHIV抗原および1以上のイミュノマーを含む本発明の免疫原性組成物を投与することにより、より強い、より時間の長い応答が期待される。
【0146】
これらの結果は、大多数の患者において、REMUNEが、免疫応答を刺激することを実証する。
【0147】
(実施例IX HIV感染患者のREMUNETMおよびイミュノマーによる免疫)
本実施例は、HIV感染患者のREMUNEおよびイミュノマーによる免疫を記載する。
【0148】
REMUNEとイミュノマーおよび/または高度に活性なレトロウイルス治療(HAART)(インジナビル/ZDV/3TC)との組み合わせで処置した後、HIV−1特異的免疫応答を、フロイント不完全アジュバント(IFA)+イミュノマーおよび/またはHAARTと比較して、評価する目的で研究を行う。
【0149】
方法論は、ランダマイズされた、2重盲検、2腕(two arm)、平行群の、アジュバントコントロールされた研究を使用する。HIV−1感染患者の診断および包括の基準は、CD4計数が>350細胞/μLで、HIVプロテアーゼインヒビターまたはラミブジン(3TC)の使用が以前にない患者である。患者の選択の他の基準も使用し得る。投与の上記試験製品、用量および様式は、REMUNE(HIV−1免疫原);10単位(10μg/ml p24含有量に等しい)、1.0ml容量の提供されるIM。イミュノマーの用量、約1〜5mg/kgで投与する。高いかまたは低い他の用量のイミュノマーもまた、免疫応答の有効な増進のために試験し得る。HAARTによる患者の処置の期間については、患者はHAARTを32週間受ける。REMUNEまたはIFAプラセボ(コントロール)およびイミュノマーを、4週目、16週目および28週目に投与する。参考治療の用量および参考治療の投与の様式は、アジュバントコントロールであり、そこではIFAプラセボを使用する。
【0150】
評価の基準は、有効性および安全性について、実施例VIIIに記載される基準と同様である。さらに、免疫応答を決定するためのアッセイとしては、本明細書で開示され、実施例I〜IIIおよびVに記載されるように、例えばインターフェロンELISPOT、IgG1/IgG2抗体比、サイトカイン産生のELISAアッセイ、リンパ球増殖アッセイ、脾細胞刺激などが挙げられ得る。
【0151】
イミュノマーとREMUNEまたは他のHIV抗原の組合わせは、イミュノマーなしのHIV抗原と比較して免疫応答を増進することが期待される。従って、本実施例の免疫応答は、実施例VIIIで観察される応答より、より強いおよび/またはより長い持続期間が期待される。
【0152】
本実施例は、HIV感染患者において、免疫応答を刺激するために、HIV抗原をイミュノマーと共に投与する、増進した効果を記載する。
【0153】
(実施例X HIV−1抗原とイミュノマーは、HIV特異的免疫を誘発する)
本実施例は、HIV特異的免疫を刺激するためのHIV抗原とイミュノマーの使用を記載する。
【0154】
HIV−1免疫原は、HIV−1特異的免疫応答を誘導すること;免疫刺激的シトシン−グアニン(CpG)ジヌクレオチドモチーフを含む合成オリゴヌクレオチドが、細胞性免疫応答の強力な刺激剤であることが以前に報告されている、フロイント不完全アジュバントIFA)と共に配合されたgp120欠損不活化全ウイルスワクチン候補である。イミュノマーアジュバント(AmplivaxTM)との組合わせで、HIV−1免疫原を増進した免疫原性を生成する可能性を、マウスモデルにおいて研究した。引き続く実験において,HIV特異的免疫応答が、IFA(HIV−1抗原)+AmplivaxTMなしで、gp120欠損不活化全ウイルスにより誘発され得ることを証明した。
【0155】
これらの研究において、使用されたHIV−1免疫原は、フロイント不完全アジュバント(IFA)と共に配合したgp120欠損不活化全ウイルスワクチンであった。本実験を、実施例Vに記載のように、本質的に実施した。この免疫原は、HIV特異的免疫応答を誘導する。AmplivaxTMは、免疫刺激的オリゴヌクレオチドであり、また本明細書ではイミュノマーといい、新規な構造および合成免疫改変モチーフを含んでいた。このイミュノマーは、明らかな免疫刺激的プロフィールを誘導する。
【0156】
図2は、AmplivaxTMイミュノマーの概略図を示し、またHYB2055ともいう。HYB2055は、新規構造および合成免疫刺激的モチーフCpRからなる第2世代免疫刺激的オリゴヌクレオチド(IMO)である。このイミュノマーは、TLR9によるシグナル伝達により免疫系を刺激し、Th1免疫応答を誘導する。上記イミュノマーは、増進した代謝安定性を示す。健康なボランティアにおけるフェーズI試験を、終了した。
【0157】
これらのマウス研究は、マウスモデルにおける、IFA(HIV−1免疫原)中のHIV−1不活化全ウイルスワクチンの免疫原性を増進する、AmplivaxTM(HYB2055)の能力を評価することから始められた。これらの研究はまた、HIV特異的免疫応答が、AmplivaxTMとの組合せで使用されるIFA(HIV−1抗原)なしで、不活化全ウイルスにより誘発され得るか否かについて試験した。
【0158】
簡単に言うと、C57/BL6マウスを、皮下(SC)または筋肉内(IM)(0日および14日)に、フロイント不完全アジュバント(IFA)(HIV−1抗原)+3用量のAmplivaxTM(90、30、または10μg/マウス)中、10μgのHIV不活化全ウイルスと共に、あるいはHIV不活化全ワクチン(IFAなしのHIV−1抗原、10μg/マウス)およびAmplivaxTM(90μg/マウス)とで免疫した。HIV−1免疫原単独、AmplivaxTM単独またはPBSで免疫した動物をコントロールとして使用した(1群当たり8〜10)。マウスイミュノマー(HYB 2048)を、参考化合物として使用した。マウスを28日目に屠殺した。HIV−1抗原、p24刺激サイトカイン産生およびIFN−γ分泌T細胞について、新鮮な脾臓単核細胞を評価した。p24抗体産生について、血清で評価した。
【0159】
図3に示されるように、HIV−1免疫原は、HIV特異的RANTES、MIP1α,MIP1β、IL−10およびIL−5産生を誘導する。表2は、HIV−1免疫原とAmplivaxTMとの組合わせが、Th1型応答の方向へサイトカインプロフィールを変化させたことを示す。免疫原を、SCで投与した。示される値は平均値である。
【0160】
【表2】

【0161】
同様な分析が表3に示され、それはまたIL−5に対するIFN−γの比率を示す。刺激は、HIV−1抗原であった。IFN−γおよびIL−5を、ELISAにより測定した。
【0162】
【表3】

【0163】
図4は、HIV特異的IFN−γ産生が、AmplivaxTMにより用量依存性の様式で増進することを示す。使用したイミュノマーの量を、カッコ内(μg/マウス)に示す。同様な結果が、RANTES、MIP1α、MIP1βおよびIL−10について見られた。図5は、HIV−1免疫原誘導のRANTES、MIP1α、MIP1β、IL−10およびIL−5の産生レベルに対するAmplivaxTMの効果を示す。図6は、HIV特異的IFN−γ産生が、AmplivaxTM(マウス1匹当たり90μgのAmplivaxTMについて示されたデータ)により増進されるのを示す。同様な結果が、RANTES、MIP1α、MIP1βおよびIL−10について見出された。図7に示されるように、AmplivaxTMは、ElispotアッセイにおいてHIV特異的IFN−γ分泌T細胞に対する増進効果を有する。免疫原は、皮下に投与された。使用されたイミュノマーの量はカッコ内に示される(μg/マウス)。
【0164】
図8は、HIV特異的IFN−γ産生が、AmplivaxTMにより用量依存的な様式で増進されたことを示す。使用したイミュノマーの量を、カッコ内に示す(μg/マウス)。図9は、HIV特異的RANTES産生が、AmplivaxTMにより用量依存的な様式で増進されたことを示す。図10は、HIV特異的MIP1α産生が、AmplivaxTMにより用量依存的な様式で増進されたことを示す。使用したイミュノマーの量を、カッコ内に示す(μg/マウス)。図11は、HIV特異的MIP1β産生が、AmplivaxTMにより用量依存的な様式で増進されたことを示す。使用したイミュノマーの量を、カッコ内に示す(μg/マウス)。図12は、HIV特異的IL−10産生が、AmplivaxTMにより用量依存的な様式で増進されたことを示す。使用したイミュノマーの量を、カッコ内に示す(μg/マウス)。図13は、HIV特異的IL−5産生が、皮下投与されたAmplivaxTMにより減少したことを示す。使用されたイミュノマーの量を、カッコ内に示す(μg/マウス)。
【0165】
図14は、マウスにおけるAmplivaxTMのHIV−1免疫原誘導p24抗体力価に対する効果を示す。使用されたイミュノマーの量は、括弧内に示される。図15は、IFA(HIV−1免疫原)中の不活化全HIV−1ワクチンが、皮下(SC)投与および筋肉内(IM)投与の際にHIV特異的サイトカイン産生を誘導したことを示す。
【0166】
図16は、AmplivaxTMが、IFAでの乳化前または乳化後に添加され得、そしてIFN−γ産生を増進し得ることを示す。図17は、AmplivaxTMがIFAでの乳化前、または乳化後に添加され得、そしてRANTES産生を増進し得ることを示す。表4に示されるように、HIV−1免疫原とAmplivaxTMとの組合わせは、Th1型応答の方向へサイトカインプロフィールをシフトさせる。
【0167】
【表4】

【0168】
図18は、不活化全HIV−1ワクチンとAmplivaxTMとで、IFAなしで皮下的に免疫したマウスにおいてHIV特異的IFN−γ産生を惹起したことを示す。図19は、不活化全HIVワクチンとAmplivaxTMとで、IFAなしで皮下的に免疫したマウスにおいてHIV特異的IFN−γ分泌CD8+T細胞活性を惹起したことを示す。図20は、不活化全HIV−1ワクチンとAmplivaxTMとで、IFAなしで皮下的に免疫したマウスにおいてHIV特異的RANTES産生を惹起したことを示す。
【0169】
HIV−1抗原とAmplivaxTMとの組合わせで、皮下に免疫したC57/BL6マウスは、HIV−1免疫原単独、またはAmplivaxTM単独と比較した場合、p24抗体、HIV特異的IFN−γ(CD4およびCD8T細胞がHIV特異的IFN−γを産生する量および数の両方)、ケモカイン(RANTES、MIP−1α,MIP−1β)およびIL−10のHIV特異的産生を有意に増進したことを示した。重要なことには、AmplivaxTMによる増進は、HIV−1抗原がIFAと乳化していなかった場合でも観察された。
【0170】
AmplivaxTM+HIV−1免疫原およびAmplivaxTM+HIV−1抗原の組合わせの両方による免疫は、HIV−1免疫原単独、またはAmplivaxTM単独と比較して、HIV特異的IFN−γおよびp24特異的IFN−γ,RANTES、MIP−1α、MIP−1βおよびIL−10の産生ならびにIFN−γ産生細胞の数を、有意に増進した。HIV−1免疫原と、またはHIV−1抗原とAmplivaxTMとの組合わせにより免疫したマウスにおいて、観察された免疫応答の大きさは比較し得るものであった。
【0171】
これらの結果は、HIV−1免疫原+AmplivaxTMによる免疫が、HIV−1免疫原単独、またはAmplivaxTM単独と比較して、HIV特異的IFN−γ,RANTES、MIP−1α、MIP−1βおよびIL−10の産生ならびにIFN−γ産生細胞の数を、増進したことを示す。HIV−1抗原とAmplivaxTM(IFAなしで)とで免疫したマウスにおいて観察された免疫応答の大きさは、HIV−1免疫原(HIV−1抗原+IFA)とAmplivaxTMとで得られた応答に匹敵した。AmplivaxTMは、不活化全ウイルスワクチンと共同して、IFAの使用に依存せずに強いHIV特異的免疫応答を誘発する。
【0172】
Amplivaxは、HIV−1免疫原またはHIV−1抗原と共同してIFAの使用に依存せずに強いウイルス特異的免疫応答を誘発する。HIV−1+Amplivaxの組合わせの強い免疫原性は、HIV感染患者のための治療用ワクチンとしてのその使用を保証する。
【0173】
(実施例XI ヒト末梢血単核細胞を使用したインビトロHIV特異的免疫応答に対する、HIV免疫源とイミュノマーとの組み合わせの効果)
本実施例は、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)におけるインビトロHIV特異的免疫応答に対する、AmplivaxTMの効果を記載する。
【0174】
これらの研究は、AmplivaxTMが、抗レトロウイルス処置HIV感染患者由来のヒトPBMCのインビトロHIV特異的免疫応答を増加するか否かを評価するために開始された。ここでその患者は、不活化全HIV−1ワクチンで免疫したか、または免疫されなかった。
【0175】
AmplivaxTMの、抗レトロウイルス治療(ART)で処置したHIV+患者から単離されたPBMCのHIV抗原刺激を増進する能力についてエクスビボで調査した。患者は、免疫されていないか、またはHIV−1免疫原で以前に免疫されていた。両方の患者群は、比較し得るCD4計数、HIV血漿ウイルス血症、感染期間およびARTを有した。結果は、AmplivaxTMが、HIV−1免疫原でワクチン接種した患者において、IFN−γ ELISPOTアッセイにおいて産生される全スポットにより測定されたように、より強いHIV特異的細胞媒介性免疫応答およびαデフェンシン産生細胞のより高い割合を、誘導したことを示した。両方の効果は、1μg/mlのAmplivaxTMを使用したときに、最も明確であった。
【0176】
簡単に言うと、患者に、6〜24用量の不活化全HIVワクチン(REMUNE(登録商標)=HIV−1免疫原)を接種した。最後の用量は、採血の6〜8ヶ月前に与えた。非接種患者については、CD4、HIVウイルス血症およびHAART曝露について整合させた。AmplivaxTMを、PBMCに4種の濃度(0、0.1、1.0および10μg/ml)で添加した。細胞をHIV−1、np24、gagおよびフルー抗原で刺激した。CD8+、IFN−γ産生細胞の評価を、ELIspotにより行った。αデフェンシン産生細胞の分析は、蛍光活性化細胞ソーティング(FACS)法により行った。
【0177】
図21は、αデフェンシン産生CD8+T細胞の割合が、エクスビボで添加したAmplivaxTMにより増加することを示す。図22は、REMUNE(登録商標)により処置した患者およびHIV陽性コントロール(AmplivaxTMなし)における、HIV特異的IFN−γ産生CD8+T細胞を示す。図23は、エクスビボで添加した0.1μg/mlのAmplivaxTMの存在下におけるHIV特異的IFN−γ産生CD8+T細胞を示す。図24は、エクスビボで添加した1μg/mlのAmplivaxTMの存在下におけるHIV特異的IFN−γ産生CD8+T細胞を示す。図25は、エクスビボで添加した10μg/mlのAmplivaxTMの存在下におけるHIV特異的IFN−γ産生CD8+T細胞を示す。
【0178】
図26は、末梢血単核細胞(PBMC)におけるIFN−γ ELIspotアッセイを示す。HYB2055を1μg/mlで使用した。
【0179】
予備的なデータを、HAARTナイーブ患者においてREMUNE(登録商標)(HIV−1免疫原+IFA)について生成した。その試験が、完了する場合、10,000〜40,000コピー/mlの範囲のHIV−1 RNAおよび350細胞/μLより上のCD4細胞を有する、50人のHIV−1陽性被験体を、モニターする。患者を以下の3群にランダマイズした:REMUNE(登録商標)(IFA中のHIV−1免疫原);IFAアジュバント;または生理食塩水。
【0180】
CD4T細胞における表現型の変化(図27)およびCD8T細胞についての表現型の変化(図28)を、抗レトロウイルス治療(ART)ナイーブ患者における(REMUNE(登録商標))1回目の注入の後に観察した。最初の2、3人の患者の予備的データが示される。さらなる患者について同様に分析した。
【0181】
薬物ナイーブHIV+患者における進行中の臨床試験からの予備的データは、HIV−1免疫原がまた、この患者集団においてHIV特異的免疫応答の生成についてのポジティブな効果を有することを示唆する。AmplivaxTMの潜在的な増進効果を、これらの同じ患者における回転臨床試験(roll over trial)においてAmplivaxTMをHIV−1免疫原にワクチンの一部として添加することにより試験する。
【0182】
この出願の全体を通して、種々の刊行物を参考としている。これらの刊行物の全体の開示は、本願の明細書で、本発明に属する技術の状態をより完全に記載するために、参考として援用される。
【0183】
本発明は、開示された実施形態を参考として記載されているが、当業者は、詳細な特定の実験が本発明の単なる説明的なものであることを容易に理解する。種々の改変が本発明の趣旨から離れずになされ得ることは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0184】
【図1−1】図1−1は、イミュノマーを形成するためにオリゴヌクレオチドと結合する例示的なリンカーの化学構造を示す(Yuら、J.Med.Chem.45:4540〜4548(2002);Yuら、Nucl.Acids Res.30:4460〜4469(2002)。
【図1−2】図1−2は、図1−1の続き。
【図2】図2は、AmplivaxTMとしても知られている、イミュノマーHYB2055の概略図を示す。
【図3】図3は、HIV−1免疫原によるHIV特異的サイトカイン、RANTES、MIP1α、MIP1β、インターロイキン10(IL−10)およびIL−5の誘導を示す。上記免疫原を、皮下投与した。「」は、生理食塩水に対する有意性を示す。
【図4】図4は、HIV−1免疫原誘導のHIV特異的インターフェロンγ(IFN−γ)の産生がAmplivaxTMにより容量依存的な様式で増進されるのを示す。「」は、HIV免疫原単独に対する有意性を示す。
【図5】図5は、AmplivaxTMのRANTES、MIP1α、MIP1β、IL−10およびIL−5の産生レベルに及ぼす効果を示す。上記免疫原を、皮下投与した。「」は、生理食塩水に対する有意性を示す。
【図6】図6は、AmplivaxTMにより増進されたHIV特異的IFN−γ産生を示す。同様な結果が、RANTES、MIP1α、MIP1ΒおよびIL−10について見出された。上記免疫原を、皮下投与した。「」は、生理食塩水に対する有意性を示す。
【図7】図7は、ElispotアッセイにおけるHIV特異的IFN−γ分泌T細胞に関するAmplivaxTMの増進された効果を示す。上記免疫原を、皮下投与した。「」は、HIV免疫原単独に対する有意性を示す。
【図8】図8は、HIV特異的IFN−γ産生がAmplivaxTMにより容量依存的な様式で増進されたことを示す。上記免疫原を、皮下投与した。「」は、HIV−1免疫原単独に対する有意性を示す。
【図9】図9は、HIV特異的RANTES産生が、AmplivaxTMにより容量依存的な様式で増進されたことを示す。免疫原は皮下に投与された。「」は、HIV−1免疫原単独に対する有意性を示す。
【図10】図10は、HIV特異的MIP−1α産生がAmplivaxTMにより容量依存的な様式で増進されたことを示す。免疫原を、皮下投与した。「」は、HIV−1免疫原単独に対する有意性を示す。
【図11】図11は、HIV特異的MIP−1β産生がAmplivaxTMにより容量依存的な様式で増進されたことを示す。免疫原を、皮下投与した。「」は、HIV−1免疫原単独に対する有意性を示す。
【図12】図12は、HIV特異的IL−10産生がAmplivaxTMにより容量依存的な様式で増進されたことを示す。免疫原を、皮下投与した。「」は、HIV−1免疫原単独に対する有意性を示す。
【図13】図13は、HIV特異的IL−5産生が、AmplivaxTMを皮下(SC)で与えることにより、減少したことを示す。「」は、HIV−1免疫原単独に対する有意性を示す。
【図14】図14は、マウスにおけるHIV−1免疫原誘導p24抗体力価に関するAmplivaxTMの効果を示す。免疫原を、皮下投与した。
【図15】図15は、IFA(HIV−1免疫原)中の不活化全HIV−1ワクチンが、皮下(SC)投与および筋肉内(IM)投与の際にHIV特異的サイトカイン産生を誘導したことを示す。
【図16】図16は、AmplivaxTMがIFAによる乳化前または乳化後に添加され得、そしてIFN−γ産生を増進し得ることを示す。
【図17】図17は、AmplivaxTMがIFAによる乳化前または乳化後に添加され得、そしてRANTES産生を増進し得ることを示す。
【図18】図18は、不活化全HIV−1ワクチン抗原が、AmplivaxTMと共に、IFAなしで皮下に免疫したマウスにおいてHIV特異的IFN−γ産生を惹起したことを示す。「」は、HIV−1免疫原(IM)に対する有意性を示す。HIV抗原は、IFAなしの不活化全HIVワクチンである。
【図19】図19は、不活化全HIV−1ワクチン抗原が、AmplivaxTMと共に、IFAなしで皮下に免疫したマウスにおいてHIV特異的IFN−γ分泌CD8+T細胞活性を惹起したことを示す。「」は、HIV−1免疫原(IM投与)に対する有意性を示す。HIV抗原は、IFAなしの不活化全HIVワクチンである。
【図20】図20は、不活化全HIV−1ワクチン抗原が、AmplivaxTMと共に、IFAなしで皮下に免疫したマウスにおいてHIV特異的RANTES産生を惹起したことを示す。「」は、HIV−1免疫原(IM投与)に対する有意性を示す。HIV抗原は、IFAなしの不活化全HIVワクチンである。
【図21】図21は、αデフェンシン産生CD8+T細胞の割合が、エクスビボで添加されたAmplivaxTMにより増加することを示す。
【図22】図22は、REMUNE(登録商標)処置患者およびHIVポジティブコントロール(0μg/ml AmplivaxTM)におけるHIV特異的IFN−γ産生CD8+T細胞を示す。
【図23】図23は、エクスビボで添加された0.1μg/ml AmplivaxTMの存在下におけるHIV特異的IFN−γ産生CD8+T細胞を示す。
【図24】図24は、エクスビボで添加された1μg/ml AmplivaxTMの存在下におけるHIV特異的IFN−γ産生CD8+T細胞を示す。
【図25】図25は、エクスビボで添加された10μg/ml AmplivaxTMの存在下におけるHIV特異的IFN−γ産生CD8+T細胞を示す。
【図26】図26は、末梢血単核細胞(PBMC)におけるIFN−γELIspotアッセイを示す。HYB2055を、1μg/mlで使用した。
【図27】図27は、抗レトロウイルス治療(ART)ナイーブ患者におけるREMUNE(登録商標)の初回注入後のCD4T細胞における表現型変化を示す。
【図28】図28は、ARTナイーブ患者におけるREMUNE(登録商標)の初回注入後のCD8T細胞における表現型変化を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫原性組成物であって、以下:
(a)外側エンベロープタンパク質gp120を欠失する不活化全HIVウイルス
(b)イミュノマー;および
(c)アジュバント
を含む、組成物。
【請求項2】
前記HIVウイルスがHIV−1である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項3】
前記HIVウイルスがHZ321株ウイルスである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項4】
前記単離された核酸分子が、ホスホロチオエート骨格を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項5】
前記HIVウイルスが前記核酸分子と結合体化する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項6】
前記イミュノマーがCpGイミュノマーである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項7】
前記イミュノマーがCpGを含まないイミュノマーである、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項8】
前記アジュバントがヒトでの使用に適切である、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項9】
前記アジュバントがフロイント不完全アジュバント(IFA)を含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項10】
前記アジュバントがマイコバクテリア細胞壁成分およびモノホスホリル脂質Aを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項11】
前記アジュバントがミョウバンを含む、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項12】
前記組成物がβケモカイン産生を増進する、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記増進されたβケモカイン産生が非特異的βケモカイン産生である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項14】
前記増進されたβケモカイン産生がHIV特異的βケモカイン産生である、請求項12に記載の免疫原性組成物。
【請求項15】
前記βケモカインがRANTESである、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が哺乳動物においてHIV特異的IgG2b抗体産生を増進する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項17】
前記組成物が哺乳動物においてHIV特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を増進する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項18】
前記組成物がHIV特異的CD4+ヘルパーT細胞を増進する、請求項1に記載の免疫原性組成物。
【請求項19】
キットであって、以下:
(a)外側エンベロープタンパク質gp120を欠失する不活化全HIVウイルス;
(b)イミュノマー;および
(c)アジュバント
を備え、該キット成分は、組合わせた場合に請求項1に記載の免疫原性組成物を産生する、キット。
【請求項20】
請求項1に記載する免疫原性組成物を製造する方法であって、以下:
(a)外側エンベロープタンパク質gp120を欠失する不活化全HIVウイルス;
(b)イミュノマー;および
(c)アジュバント
を組み合わせる工程を包含する、方法。
【請求項21】
前記組合せる工程がエクスビボにおいてである、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組合せる工程がインビボにおいてである、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
哺乳動物を免疫する方法であって、請求項1に記載の免疫原性組成物を該哺乳動物に投与することより、該哺乳動物の免疫応答を増進する工程を包含する、方法。
【請求項24】
AIDSを阻害する方法であって、請求項1に記載の免疫原性組成物を哺乳動物に投与することにより、該哺乳動物において免疫応答を増進する工程を包含する、方法。
【請求項25】
前記哺乳動物が霊長類である、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記霊長類が幼仔の固体である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記霊長類が妊娠している固体である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記霊長類がヒトである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒトがHIVセロネガティブである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒトがHIVセロポジティブである、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記哺乳動物が齧歯類である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記組成物が前記哺乳動物に2回以上投与される、請求項30または請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記組成物が前記哺乳動物に2回以上投与される、請求項23または請求項24に記載の方法。
【請求項34】
前記組成物が皮下、筋肉内または粘膜内に投与される、請求項23または請求項24に記載の方法。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公表番号】特表2007−523884(P2007−523884A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524902(P2006−524902)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【国際出願番号】PCT/US2004/027995
【国際公開番号】WO2005/021726
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(506064234)ザ イミューン レスポンス コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】