説明

免疫活性化剤および飲食品

【課題】本発明の目的は、効果的であり、かつ安全性が高く継続的に摂取可能な免疫活性化剤または感染症予防剤を提供することである。
【解決手段】本発明により、サラシア属植物またはその抽出物を有効成分として含む免疫活性化剤、例えば、サラシア・キネンシス、サラシア・レティキュラータおよびサラシア・オブロンガから選択される植物の抽出物を有効成分として含む免疫活性化剤または感染症予防剤が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サラシア属植物またはその抽出物を含む免疫活性化剤、感染症予防剤、飲食品および動物飼料に関する。
【背景技術】
【0002】
生体には、細菌やウイルスなどの悪影響を未然に防止するための防御機構として免疫系が備わっている。補体は、免疫反応を媒介する血中タンパク質の一群で、9つの成分のタンパク質(C1〜C9)からなり、抗体によるC1の活性化後に、連鎖的に活性化反応が進行し、マクロファージなどによる貪食の促進(オプソニン作用、C3bなど)、好中球などに対しての走化作用(C5aなど)、細胞膜に結合し細胞融解をもたらす膜侵襲複合体の形成(C5b〜C9)などが起こり、感染症に対する生体防御に寄与している。
【0003】
感染症や癌などの疾患の治療または予防を目的とした免疫活性化剤について、いくつかの報告がなされている(特許文献1〜7)。
また、免疫系に関与するサイトカインであるインターロイキン類は、免疫担当細胞により産生される生理活性タンパク質であり、例えば、インターロイキン18(IL−18)は、リンパ球におけるインターフェロンγの産生の誘導、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の細胞傷害活性の増強に関与する。
【0004】
ところで、サラシア・オブロンガ(Salacia oblonga)、サラシア・レティキュラータ(Salacia reticulata)、サラシア・キネンシス(Salacia chinensis;サラシア・プリノイデス(Salacia prinoides)と同種)などのサラシア属の植物は、インド、スリランカ、タイ、ベトナム、中国南部地域などに生育するニシキギ科のつる性多年生植物である。これらのサラシア属植物は、インド、スリランカ、東南アジア諸国の伝承医学では天然の薬物として利用されてきており、さらに近年になって、これらの植物の抽出物が血糖降下作用、リパーゼ阻害作用などの薬効を有することが報告されている(特許文献8〜12)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−213765号公報
【特許文献2】特開2002−241286号公報
【特許文献3】特開2006−104068号公報
【特許文献4】特開2006−124383号公報
【特許文献5】特開2006−137719号公報
【特許文献6】特開2007−308419号公報
【特許文献7】特開2008−74709号公報
【特許文献8】特開平9−301882号公報
【特許文献9】特開平11−116496号公報
【特許文献10】特開平11−29472号公報
【特許文献11】特開2001−261569号公報
【特許文献12】特開2005−8572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、効果的であり、かつ安全性が高く継続的に摂取可能な免疫活性化剤、または感染症予防剤、特に補体系のタンパク質およびインターロイキン類などの発現量を増加させることを特徴とするサラシア属植物およびその抽出物を含有する免疫活性化剤または感染症予防剤を提供することである。
【0007】
また、本発明のさらなる目的としては、免疫活性作用または感染症予防作用を有する、サラシア属植物およびその抽出物を含有する飲食品および動物飼料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記の課題解決のために鋭意研究を進めたところ、サラシア属植物由来の成分に補体系タンパク質およびインターロイキン類の発現量増加作用を見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の1つの側面によれば、サラシア属植物またはその抽出物を含む免疫活性化剤が提供される。本発明の1つの態様において、サラシア・キネンシス、サラシア・レティキュラータおよびサラシア・オブロンガからなる群から選択されるサラシア属植物またはその抽出物を含有する免疫活性化剤が提供される。ここで、前記抽出物としては、例えば熱水抽出物を使用することができる。本発明の1つの態様において、前記免疫活性化剤は、成人1日当たり300〜3000mgのサラシア属植物またはその抽出物を摂取するために使用される。
【0010】
本発明の1つの側面によれば、サラシア属植物またはその抽出物を含む感染症予防剤が提供される。本発明の1つの態様において、サラシア・キネンシス、サラシア・レティキュラータおよびサラシア・オブロンガからなる群から選択されるサラシア属植物またはその抽出物を含有する感染症予防剤が提供される。ここで、前記抽出物としては、例えば熱水抽出物を使用することができる。本発明の1つの態様において、前記感染症予防剤は、成人1日当たり300〜3000mgのサラシア属植物またはその抽出物を摂取するために使用される。
【0011】
本発明の別の側面によれば、免疫活性化または感染症予防のために摂取される、サラシア属植物またはその抽出物を含有する飲食品が提供される。本発明の1つの態様において、前記飲食品は、成人1日当たり300〜3000mgのサラシア属植物またはその抽出物を摂取するために使用される。
【0012】
本発明のさらに別の側面によれば、補体系タンパク質の発現量増加のために使用する、サラシア属植物またはその抽出物を含む組成物が提供される。
【0013】
[発明を実施するための形態]
本発明の有効成分であるサラシア属植物またはその抽出物として、サラシア属植物体そのもの、例えば、採取後に乾燥した幹、根、もしくはそれらの皮、花部、葉、または幹を裁断または粉砕したものを使用することができる。当該植物体は、抽出物を得るための原料としても使用することができる。
【0014】
抽出は慣用の方法を適宜利用して行うことができ、例えば、連続抽出、浸漬抽出、向流抽出、超臨界抽出などの方法により行ってもよい。
抽出溶媒としては特に限定されないが、水、低級アルコール(メタノールおよびエタノール)、アセトンなどの親水性溶媒、またはそれらの混合溶媒を用いることが好ましく、特に水を使用することが好ましい。抽出時には加熱することが好ましく、例えば、抽出溶媒の還流温度で抽出を行うことができる。水を溶媒として使用する場合は、例えば60〜100℃、好ましくは80〜98℃の温度下、例えば1〜24時間、好ましくは1〜4時間の抽出時間で抽出を行うことができる。
【0015】
本発明で使用する抽出物として、抽出液の原液、抽出液の濃縮液または抽出液濃縮物を乾燥して得られる固体を使用することができ、摂取の効率性の観点から固体化した濃縮物を使用するのが好ましい。抽出液の濃縮方法としては従来技術を適宜利用することができ、例えば、減圧乾燥法、凍結乾燥法、噴霧乾燥法などを行うことができる。
【0016】
サラシア属植物の抽出液は精製処理に付してもよい。精製処理としては、例えば、活性炭、イオン吸着樹脂などの吸着剤による処理、液−液向流分配処理などが挙げられる。
サラシア属植物の抽出物は市販品を購入したものを使用してもよい。
【0017】
本発明の免疫活性化剤または感染症予防剤は、その免疫活性化作用または感染症予防作用が有効に利用できる限りにおいてはいずれの用途に使用されてもよい。本発明の免疫活性化剤または感染症予防剤は、好ましくは、医薬品や飲食品などの経口組成物として使用される。また、本発明の免疫活性化剤を医薬品や飲食品などに配合するための成分として使用してもよい。
【0018】
本発明の免疫活性化剤、感染症予防剤および飲食品として、サラシア属植物またはその抽出物をそのまま(100重量%)使用することができる。また本発明には、薬学上または食品衛生上許容される担体又は添加物等の他の成分が配合されていてもよい。本発明の免疫活性化剤、感染症予防剤および飲食品は、例えば1〜100重量%、好ましくは10〜100重量%、より好ましくは30〜100重量%のサラシア属植物またはその抽出物を含有する。
【0019】
本発明の摂取量は、対象の体型、年齢、体調などにより、適宜調節することができる。例えば、体重60kgの成人に対して、サラシア属植物またはその抽出物を、水抽出物の乾燥物相当量で、300mg/日以上、好ましくは450mg/日以上、より好ましくは600mg/日以上の用量で、かつ例えば3000mg/日以下、好ましくは2400mg/日以下、より好ましくは1800mg/日以下の用量とすることができる。
【0020】
本発明は、補体系タンパク質、特にC2、C3、C4、C5、C6および/またはC8の発現量の増加、インターロイキン類(例えば、IL18、IL27など)の発現量の増加、それに伴うT細胞、B細胞などの免疫担当細胞の活性化、マクロファージの活性化、抗体産生の増加などを促進する作用を有する。当該作用を有する本発明は、ウイルスによる感染症(例えば、かぜ、インフルエンザ、単純性疱疹、帯状疱疹など)、細菌による感染症(例えば、細菌性肺炎、細菌性腸炎、ペスト、敗血症、破傷風など)、癌(例えば、大腸癌および胃癌などの消化器癌、骨髄腫、肝臓癌、白血病、メラノーマ、前立腺癌、乳癌、子宮癌、肺癌、口腔癌、脳腫瘍などの癌もしくは悪性腫瘍)などに対する治療、改善および/または予防に用いられる。
【0021】
本発明の免疫活性化剤、感染症予防剤および飲食品は、必要に応じ、従来公知の着色剤、保存剤、香料、風味剤、コーティング剤などの成分を配合して調製してもよく、さらに1以上の追加成分を配合して調製してもよい。
【0022】
上記追加成分の例としては、別の免疫活性化剤、抗酸化剤、ビタミン、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、ミネラル分(鉄、亜鉛、マグネシウム、ヨードなど)、脂肪酸(EPA、DHAなど)、抗菌剤、抗ウイルス剤などを挙げることができる。
【0023】
ここで、別の免疫活性化剤の例としては、特に限定はされないが、ラクトフェリン、アルギニン、トリプトファン、バリン、ロイシン、キチン、キトサン、サメ軟骨、プロポリス、ローヤルゼリー、菌類由来成分(例えば、アガリクス、冬虫夏草、シイタケ、シイタケ菌糸体、メシマコブ、霊芝、鹿角霊芝、マイタケ、ハナビラタケ、カバノアナタケ、酵母、乳酸菌またはそれらの抽出物)、および植物由来成分(例えば、アロエ、キダチアロエ、エキナセア、オウギ、キャッツクロー、クコ、スピルリナ、ハトムギ、紅花、マカ、マコモ、ラフマ、タヒボ、ノニ、フコイダン、またはそれらの抽出物)などが挙げられる。
【0024】
抗酸化剤の例としては、特に限定はされないが、乾燥酵母、グルタチオン、リポ酸、ケルセチン、カテキン類、コエンザイムQ10、エンゾジノール、プロアントシアニジン類、アントシアニジン、アントシアニン、カロチン類、リコピン、フラボノイド、リザベラトロール、イソフラボン類、亜鉛、メラトニン、および植物由来成分(例えば、イチョウ葉、月桃葉、ハイビスカス、またはそれらの抽出物)などが挙げられる。
【0025】
ビタミンの例としては、特に限定はされないが、ビタミンA群に属するビタミン[例えば、レチナール、レチノール、レチノイン酸、カロチン、デヒドロレチナール、リコピンおよび薬学上または食品衛生上許容されるそれらの塩類(例えば、酢酸レチノール、パルミチン酸レチノールなど)など]、ビタミンB群に属するビタミン[例えば、チアミン、チアミンジスルフィド、ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン、プロスルチアミン、ベンフォチアミン、フルスルチアミン、リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチド、ピリドキシン、ピリドキサール、ヒドロキソコバラミン、シアノコバラミン、メチルコバラミン、デオキシアデノコバラミン、葉酸、テトラヒドロ葉酸、ジヒドロ葉酸、ニコチン酸、ニコチン酸アミド、ニコチニックアルコール、パントテン酸、パンテノール、ビオチン、コリン、イノシトール、パンガミン酸および薬学上または食品衛生上許容されるそれらの塩類(例えば、塩酸チアミン、硝酸チアミン、塩酸ジセチアミン、塩酸フルスルチアミン、酪酸リボフラビン、フラビンアデニンジヌクレオチドナトリウム、塩酸ピリドキシン、リン酸ピリドキサール、リン酸ピリドキサールカルシウム、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウムなど)など]、ビタミンC群に属するビタミン[アスコルビン酸およびその誘導体、エリソルビン酸およびその誘導体、および薬学上または食品衛生上許容されるそれらの塩類(例えば、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウムなど)など]、ビタミンD群に属するビタミン[例えば、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール、ヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロキシコレカルシフェロール、ジヒドロタキステロール、および薬学上または食品衛生上許容されるそれらの塩類など]、ビタミンE群に属するビタミン[例えば、トコフェロールおよびその誘導体、ユビキノン誘導体およびそれらの薬学上または食品衛生上許容される塩類(酢酸トコフェロール、ニコチン酸トコフェロール、コハク酸トコフェロール、コハク酸トコフェロールカルシウムなど)など]、その他のビタミン[例えば、カルニチン、フェルラ酸、γ−オリザノール、オロチン酸、ルチン(ビタミンP)、エリオシトリン、ヘスペリジン、および薬学上または食品衛生上許容されるそれらの塩類(塩化カルニチンなど)など]などが挙げられる。
【0026】
アミノ酸の例としては、特に限定はされないが、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、トレオニン、アラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、グリシン、アスパラギン、アスパラギン酸、セリン、グルタミン、グルタミン酸、プロリン、チロシン、システイン、ヒスチジン、オルニチン、ヒドロキシプロリン、ヒドロキシリジン、グリシルグリシン、アミノエチルスルホン酸(タウリン)、シスチン、または薬学上または食品衛生上許容されるそれらの塩類(例えばアスパラギン酸カリウム、アスパラギン酸マグネシウム、塩酸システインなど)などが挙げられる。好ましい例は、バリン、ロイシンおよびイソロイシンなどの分枝鎖アミノ酸、グルタチオン、システイン、グルタミン酸、グリシン、セリン、トリプトファン、チロシン、フェニルアラニン、ヒスチジン、メチオニン、スレオニン、リジン、シスチン、アルギニン、アラニン、アスパラギン酸、プロリン、アミノエチルスルホン酸である。
【0027】
抗菌剤の例としては、特に限定されないが、β−ラクタム系、アミノグリコシド系、テトラサイクリン系、クロラムフェニコール系、マクロライド系、ケトライド系、グリコペプチド系、核酸系、ニューキノロン系などが挙げられる。
【0028】
抗ウイルス剤の例としては、特に限定されないが、アシクロビル、ガンシクロビル、オセルタミビル、ザナミビル、ラミブジン、リバビリン、インターフェロンなどが挙げられる。
【0029】
継続的な摂取が行いやすいように、本発明を製剤化して摂取してもよく、例えば顆粒剤(ドライシロップを含む)、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、錠剤(チュアブル剤などを含む)、散剤(粉末剤)、丸剤などの各種の固形製剤、または内服用液剤(液剤、懸濁剤、シロップ剤を含む)などの液状製剤などの形態で調製することができる。成分の安定性や摂取の簡便さの点からカプセル剤または錠剤の形態が好ましいが、特に限定されるものではない。
【0030】
また、本発明が飲食品である場合には、機能性食品、健康食品、特定保健用食品、特別用途食品、サプリメントなどの形態で本発明を実施することができる。本発明の好適な態様により、免疫活性化作用または感染症予防作用を有する量のサラシア属植物またはその抽出物を含有する特定保健用食品又は特別用途食品である飲食品が提供される。ここで、当該食品の包装、パッケージ、添付文書または広告に、その作用効果(免疫活性化作用または感染症予防作用)に関する記載が付されていてもよい。
【0031】
本発明をカプセル剤または錠剤の形態とする場合、医薬または飲食品の分野で採用されている通常の製剤化手法を適用することができる。例えば、錠剤は、公知の添加物などとともに各成分を処方に従って添加配合し、粉砕、混合、造粒、乾燥、整粒などを行い、得られた調製混合物を打錠することによって調製することができる。
【0032】
製剤化のための添加物としては、限定はされないが、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、分散剤、湿潤剤、防腐剤、粘稠剤、pH調整剤、着色剤、矯味矯臭剤、界面活性剤、溶解補助剤などが挙げられる。また、液剤の形態にする場合は、ペクチン、キサンタンガム、グアガムなどの増粘剤を配合することができる。また、コーティング剤を用いてコーティング錠剤にしたり、ペースト状の膠剤とすることもできる。さらに、他の形態に調製する場合であっても、従来の方法に従えばよい。
【0033】
さらに、本発明の免疫活性化剤または感染症予防剤は、医薬品や飲食品、動物飼料の添加成分としても使用することができる。これらの製造方法は、本発明の効果を損なわないものであれば特に限定されず、各用途で当業者によって使用されている方法に従えばよい。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、補体系タンパク質およびインターロイキン類の発現量の増加による免疫活性化作用および感染症予防作用を有する。本発明の免疫活性化剤は、安全性が高く継続的に摂取することに適している。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、本明細書において示されるパーセンテージは特に言及がなければ重量%を意味する。
【0036】
サラシア抽出物の調製
試験に使用したサラシア抽出物は以下の方法で調製した。サラシア・キネンシス(タイにおいて採取)の幹の部分を5mm角に裁断したチップ(1kg)に熱水(20kg)を加え、98℃で120分攪拌抽出した。得られた抽出液を、ロータリーエバポレーターを用いて減圧濃縮(濃縮温度45℃、Brix=30になるまで)し、濃縮液を凍結乾燥して本発明のサラシア・キネンシス抽出物(98.5g)を得た。得られた抽出物の一般栄養成分分析結果は以下の通りであった(厚生労働省の通知「平成15年4月24日厚生労働省告示第176号 最終改正平成17年7月1日」中の「別表第2」に基づいて測定):水分4.0%、タンパク質2.4%、脂質0.6%、灰分8.7%、食物繊維23.0%、糖質61.3%(100%−水分−タンパク質−脂質−灰分−食物繊維として算出)、ナトリウム515mg/100g。
【0037】
実験動物への投与
KKAyマウス(日本エスエルシー株式会社より購入)に通常飼料(AIN−93M、非投与群、n=6)、または通常飼料にサラシア抽出物を0.126%含有する飼料(投与群、n=6)を与えて4週間飼育した。4週間後、麻酔下で開腹し、約150mgの肝臓組織を採取して1.5mlのRNAlater(Applied Biosystems社製)に浸漬し、−80℃で保存した。
【0038】
検体からのRNA抽出
検体(約15mg)を秤量し、RNAlater液を吸い取った後、QIAzol(Qiagen社製)(750ml)を添加し、サンプルを2mlチューブに移した。ジルコニアビーズ(1個)を入れ、TissueLyser(Qiagen社製)で25Hz、2分間で粉砕した後(2回)、クロロホルムを加え、十分に懸濁させた。遠心分離によって分離し、液層を分取した後、RNeasy Mini Kit(Qiagen社製)を用いてRNA精製を行った。
【0039】
マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析
Agilent Technologies社が推奨する一色法のプロトコール(One-Color Microarray-Based Gene Expression Analysis (Quick Amp Labeling), ver 5.7, May 2008)に準じて実施した。まず、一色法に用いる内部スパイクOne-Color Spike-Mix(Agilent Technologies社製)を所定の方法により調製した。次に、必要量のOne-Color Spike-Mixと供試検体RNA(300ng)を鋳型として、MMLV-RT (Moloney Murine Leukimia Virus Reverse Transcriptase)(Agilent Technologies社製)を用いた逆転写反応(40℃、2時間)によりT7 Promoter primer(Agilent Technologies社製)を付加させたcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として、T7 RNA polymeraseによるcRNA合成反応(40℃、2時間)を実施した。この反応においてCyanine 3 (Cy-3)-CTP(Agilent Technologies社製)を取り込ませることにより、Cy−3ラベル化cRNAを合成した。合成されたCy−3ラベル化cRNAをRNeasy Mini Kit(Qiagen社製)を用いて精製し、NanoDrop ND-1000(NanoDrop社製)によりcRNA濃度を測定して、増幅効率やCy−3の取り込み効率を算出した。この際、精製したCy−3ラベル化cRNAの増幅効率が10倍以上、かつ取り込み効率が9pmol/mg以上であることを確認して、次のステップに進んだ。1.65mg分のCy−3ラベル化cRNAを断片化反応(60℃、30分間)させた後、蛍光標識プローブとしてマイクロアレイとのハイブリダイゼーションに供した。
【0040】
ハイブリダイゼーションは以下の手順で実施した。予めハイブリダイゼーションチャンバーベースにセットされたガスケットスライド上に蛍光標識プローブを均一に広がるように滴下した。この場合、各供試検体由来の蛍光標識プローブは1つのアレイ上(n=1)で反応させた。適下後、マイクロアレイをガスケットスライド上に載せ、ハイブリダイゼーションチャンバーを組み立てた。次いで、チャンバーをハイブリダイゼーションオーブンにセットし、回転させながら(10rpm)、65℃で17時間反応させた。
【0041】
ハイブリダイゼーション後のマイクロアレイは、10% Triton X-102を終濃度0.005%になるように添加したGene Expression Wash Buffer 1(Agilent Technologies社製)およびGene Expression Wash Buffer 2(Agilent Technologies社製)で洗浄した後、DNA Microarray Scanner(Agilent Technologies社製)でスキャニングを行った。得られた画像データをFeature Extractionソフトウエア(Agilent Technologies社製)を用いて数値化した。
【0042】
結果
マイクロアレイに搭載されているプローブをGeneSpringによるノーマライズ処理後、コントロールスポットを排除し、さらに同一プローブIDのものを平均化した。各遺伝子の発現量について、投与群/非投与群の比を表1に示す。発現の変動を確認した遺伝子のうち、補体成分(C2、C3、C4、C5、C6、C8a、C8b)、およびインターロイキン(IL18、IL27)、およびインターロイキン受容体(IL1R1、IL2Rβ、IL10Rα、IL13Rα2、IL27Rα、IL28Rα)の遺伝子発現は上昇が確認された。当該遺伝子発現の変動について、非投与群と投与群の2群間でWelch’s t-testを行ったところ、統計学的有意性(p<0.05)が確認された。
【0043】
なお、補体成分のうち、C3とC4が分解して生じるC4bはオプソニン化および抗体によるウイルスの中和作用増強等の働き、C3とC5はマスト細胞や好塩基球に作用してヒスタミンを放出させる働き、C5、C6、C8aおよびC8bは細菌膜、細胞膜に結合して孔を作り、細菌、細胞を融解させる働きなどが知られている。
【0044】
【表1】

【0045】
以上のことから、これらの遺伝子の発現を上昇させ、補体系およびインターロイキンのタンパク質発現を増強させたサラシア抽出物は免疫活性化作用を有し、ウイルスや細菌による感染症などの疾患の予防、改善または治療などに効果が期待できることが分かった。また、サラシア・キネンシスに代えて、サラシア・オブロンガまたはサラシア・レティキュラータから得られた抽出物についても同様に免疫活性化作用を示した。
【0046】
また、サラシア抽出物を処方(表2)に従って賦形剤と混合した後に打錠して、食品(錠剤)を調製した。
【0047】
【表2】

【0048】
上記の錠剤を食後に2粒、1日3回(計6粒(サラシアエキスとして300mg〜3000mg/日))を30代の男性(n=6)に5日間摂取させた後採血し、血清補体価(U/ml)及び補体成分(C3およびC4)量(mg/dl)を測定したところ、摂取前と比較していずれの値においても上昇(1.2以上)が認められた。
【0049】
なお、血清補体価及び補体成分量は免疫学的検査の検査項目であり、血清補体価はMayer法相対比濁法により、補体成分量はTIA法により検査した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サラシア属植物またはその抽出物を含む免疫活性化剤。
【請求項2】
サラシア属植物またはその抽出物を含む感染症予防剤。
【請求項3】
サラシア属植物が、サラシア・キネンシス、サラシア・レティキュラータおよびサラシア・オブロンガからなる群から選択される請求項1に記載の免疫活性化剤または請求項2に記載の感染症予防剤。
【請求項4】
サラシア属植物またはその抽出物を含有する免疫活性化用または感染症予防用飲食品。

【公開番号】特開2010−235544(P2010−235544A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−87149(P2009−87149)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】