説明

入出力一体型表示装置及び保護ガラス板

【課題】保護ガラス板の撓み発生による保護ガラス板と表示パネル等の保護ガラス板と対向する部材との接触が起きにくい入出力一体型表示装置を提供することを課題とする。
【解決手段】手書き入力手段を備えた入出力一体型表示装置であり、該表示装置は保護ガラス板が視認側最外にあり、且つ該保護ガラス板と対向する部材とで空隙部が形成されたものであり、前記保護ガラスは、フロート法で製造されたヤング率が71〜74GPa、ポアソン比が0.22〜0.24であるガラスが化学的に強化されもので、表面圧縮応力が200〜650MPa、反りが0.15〜0.18%であり、ガラスのトップ面側が前記空隙部側に配置されてなること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タブレット板を使用することで、入力ペン等で手書き入力を可能とした入出力一体型表示装置に関し、特には該表示装置を長期に使用せしめるための保護ガラス板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルや有機ELパネル等の平面表示パネル等の表示パネルにタブレット板を設けることで、文字、パターン等を入力ペン等のデータ入力装置で手書き入力できるようにするとともに、その入力内容を表示パネルに表示するようにした表示装置が市販されている。
【0003】
該表示装置は、入力時に生ずる局所的な圧力を回避して表示品位を保つために視認側に透明な保護板が設けられている(例えば、特許文献1の図4、又は特許文献2の図1を参照)。そして、強度、耐光性、透光性等を考慮して、該保護板には、ガラス板を使用することが好まれている。
【0004】
そして、前記表示装置には、表示面積の大面積化、携帯のための軽量化等が要求されており、それに応じて前記表示装置に使用される保護ガラス板も、大面積化、軽量化のためのガラス厚みの減少化等が求められている。
【特許文献1】特開平6−75213号公報
【特許文献2】特開2004−240548号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保護ガラス板は、特許文献1の図4、又は特許文献2の図1で開示されているように、表示パネル等の保護ガラス板と対向する部材とは、空隙を設けて設置される。表示装置は、水平〜斜めに置かれた状態で使用されるので、表示装置の表示面積が広い場合や保護ガラス板の厚みが薄い場合、保護ガラス板に自重により撓みが発生しやすい。
【0006】
そしてその撓みにより保護ガラス板が表示パネル等の保護ガラス板と対向する部材により接触、又は撓みに保護ガラス板と表示パネル等との距離が短くなるので、データ入力装置を保護ガラスに接触させたときに保護ガラス板が表示パネル等に接触し、表示パネル等の保護ガラス板と対向する部材と接触が発生する等の問題が発生する。この接触を回避するために前記空隙間隔を長くする等の対策をとりうるが、この対策は、前記表示装置の肥大化、重量化等をもたらすので解決手段とはなりにくい。
【0007】
前記したようなガラスの撓みは、保護ガラス板の対角線距離が30〜55cmである場合、保護ガラス板の厚みが0.3〜1.1mmの場合に特に顕著な問題となりやすい。従って、本発明では、保護ガラス板の撓み発生による保護ガラス板と表示パネル等の保護ガラス板と対向する部材との接触がおきにくい入出力一体型表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明の手書き入力手段を備えた入出力一体型表示装置は、保護ガラス板が視認側最外にあり、且つ該保護ガラス板と対向する部材とで空隙部が形成されたものあり、前記保護ガラスは、フロート法で製造されたヤング率が71〜74GPa、ポアソン比が0.22〜0.24であるガラスが化学的に強化されもので、表面圧縮応力が200〜650MPa、反りが0.15〜0.18%であり、ガラスのトップ面側が前記空隙部側に配置されてなることを特徴とする。
【0009】
尚、上記表面圧縮応力及び反りは、JIS R3222(2003年)に準拠した方法で得られたものである。
【0010】
フロート法で製造される所謂ソーダライムガラスと呼ばれるSiO−NaO−KO−CaO−MgO−Al系ガラスは、ヤング率が71〜74GPa、ポアソン比が0.22〜0.24の値を有している。そして、このガラスを溶融塩に浸漬させる化学強化処理を行うことでガラス中のナトリウムイオンと溶融塩中のカリウムイオンとが交換されるガラス表層に圧縮層が形成される。
【0011】
フロート法で製造されたガラスの場合、ガラス製造過程中で錫浴に接した側、所謂ボトム面側と、その反対側、所謂トップ面側とでは、イオンの交換速度が異なる。その結果、トップ面側の方が、表面圧縮応力が大きくなる傾向がある。本発明では、この現象に着目した。
【0012】
化学的に強化がなされたガラスのトップ面を前記空隙部側に配置することにより、本発明の入出力一体型表示装置は垂直に置かれた状態では、保護ガラスは、視認側に凸状となるが、水平乃至斜めに置かれた状態となった際のガラスの撓み発生が生じても、該保護ガラス板と対向する部材との接触を回避しやすくなる。
【0013】
そして、前記した接触の回避と表示装置の視認性、及び収納性の観点より、保護ガラスの反りは、0.15〜0.18%とされなければならない。0.15%未満では、前記した接触の回避の効果が十分でなく、0.18%超では、保護ガラス板への周囲からの写り込みが多くなるので表示装置の視認性が悪くなる、又はノートパソコン等に本発明の表示装置を適用した場合に収納性が悪くなる等の問題が生じる。又、保護ガラスの反りを確保するためには、ガラスのトップ面側の圧縮応力をボトム面側の圧縮応力の1.03以上、より好ましくは1.03倍以上1.15倍以下とすることが好ましい。
【0014】
保護ガラス板が薄い場合、又は面積が広い場合に特にガラスの撓みに起因する前記したような接触が問題となりやすくなるので、本発明の表示装置の場合、保護ガラス板の厚みが、0.3mm〜1.1mmの場合、及び/又は、対角線距離が30〜55cmの比較的大きな面積を有する保護板ガラスとした場合に特に有効となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の入出力一体型表示装置は、それに使用される保護ガラス板に生じる撓みによって生じる保護ガラス板と保護ガラス板と対向する部材との接触と回避を行いやすいので、該表示装置を長期使用せしめることに効果があり、又、該対向による空隙部の距離を短くできる等の効果を発揮するので、該表示装置の軽量化に奏功する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の手書き入力手段を備えた入出力一体型表示装置は、保護ガラス板が視認側最外にあり、且つ該保護ガラス板と対向する部材とで空隙部が形成されたものである。図1は、本発明による入出力一体型表示装置1を模式的に表した断面図で、(a)は、水平に置かれた状態、(b)は垂直に置かれた状態を表している。表示装置1は、保護ガラス板2、ディスプレイパネル(保護ガラス板と対向する部材)3、デジタイザー等によるタブレット板よりなる手書き入力手段4a、入力ペン4bを有している。
【0017】
保護ガラス板2は、フロート法で製造される所謂ソーダライムガラスと呼ばれるSiO−NaO−KO−CaO−MgO−Al系ガラスが使用され、その表面は、化学強化処理により圧縮層が形成されたものである。この圧縮層は、圧縮応力値において、200〜650MPaの値を有するもので、当該値を有するように、ガラスを化学強化する際に、浸漬させるための溶融塩の温度を450〜550℃、浸漬時間を1時間〜3時間とすることが好ましい。
【0018】
本発明の保護ガラス板のために使用されるガラスは、JIS R3103−2(2001年)に準拠した方法で得られる歪点温度が500℃〜520℃であるので、ガラスの変形が生じやすい当該温度付近、すなわち溶融塩の温度を490〜530℃とすることが好ましい。
【0019】
保護ガラス板2には、必要に応じ、低反射機能、アンチグレア機能を有する膜、表示のコントラストを向上させるための偏光子膜が設けられてもよい。これら機能を有する膜は、前記した機能を有するプラスチックシートを保護ガラス2に貼付して設けてもよいし、塗布や蒸着等の手段で設けてもよい。
【0020】
表示装置1は、保護ガラス板2とディスプレイパネル3等を一体化させるための部材を有している。この部材や表示装置1の周縁側に設けられた配線を覆い隠すために、保護ガラス板2の周縁には、覆い隠すに足る幅を有するマスキング層、好ましくは吸光度が3、より好ましくは4以上のマスキング層が設けられることが好ましい。
【0021】
このマスキング層は、熱硬化性合成樹脂と、顔料、染料とを含む調合物を塗布し、乾燥、加熱等することで形成することができる。前記熱硬化合成樹脂としては、エポキシ樹脂、アクリルシリコン樹脂、アルキッド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等を用いることができる。
【0022】
前記顔料としては、酸化鉄、酸化銅、酸化クロム、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、クロム酸鉛、硫酸鉛、モリブデン酸鉛等から選ばれる1種または複数の材料を混合したもうを使用できる。
【0023】
前記染料としてはジオキサジン系、フタロシアニン系、アントラキノン系の有機物等を用いることができる。塗布のためにこの混合物をペースト状にするための媒体としては、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルなどの溶剤を用いることができる。また硬化反応促進剤として変性脂肪族ポリアミン樹脂、N−ブタノールなどを混合してもよい。
【0024】
前記マスキング層の厚さは35μm以下、特に30μm以下であることが好ましい。マスキング層の厚さが35μmよりも大きいと、マスキング層表面とガラス基板表面との境界部の段差が大きくなり、前記したようなフィルムを設けた場合、この段差部分に気泡が残留し易くなる。
【0025】
ディスプレイパネル3は、通常は液晶表示パネルが使用されるが、場合によっては、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイパネル等の他の表示パネルが使用されることもある。
【0026】
手書き入力手段4a、及び入力ペン4bによる機能発現例は、特許文献2で紹介されている。図2に一例として、特許文献2で紹介されているタブレットの回路等を紹介する。図2におけるタブレット回路41は、次ぎに示す符号30〜40で示されるデバイスにより構成される。30は位置検出部であり、複数のループコイルがX軸方向およびY軸方向にそれぞれ、ループコイルX1〜X40およびループコイルY1 〜Y40として配置されている。これらのループコイルは各ループコイルを選択する選択回路31に接続されている。
【0027】
上記選択回路31は送受切替回路32に接続され、該送受切替回路32の受信側(R)は加算増幅回路(加算回路)34の一方の入力端子に接続され、この加算増幅回路34の出力は検波回路35に接続されている。検波回路35の出力はAD変換回路36に接続され、AD変換回路36の出力はCPU(中央処理装置)37に接続されている。
【0028】
発振器33は一定周波数f0の交流信号を発生するものであり、この交流信号は送受切替回路32の送信側(T)に接続されており、位置検出部30中の選択された1本のループコイルから周波数f0の交流磁界が放射される。又、38はノイズ検出コイルであり、可変利得増幅回路39に接続されている。可変利得増幅回路39の出力は加算増幅回路34の他方の入力端子に接続されている。
【0029】
さらに、CPU37にはメモリ40が接続されていおり、該CPU37は制御信号(情報)を、選択回路31、送受切替回路32および可変利得増幅回路39にそれぞれ送出する。
【0030】
一方、入力ペン42(4b)は、その内部にコイルおよびコンデンサを含む、周波数f0で共振する共振回路が設けられている。このような構成を有するタブレット回路41および位置指示器(ペン)42において、指示位置の座標値は、該位置指示器(ペン)42からの信号は検波回路35により直流電圧に変換され、AD変換回路36によりデジタル値に変換された後、CPU37において座標計算されて求めることができる。
【実施例】
【0031】
実施例1
珪砂、長石、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、ドロマイト、石灰石、およびガラスカレットよりなる調合原料を用い、商業規模のフロート法により厚みが1.1mm、25.5cm×16.5cmで対角線距離が30.5cmである表1に示す性状を有するSiO−NaO−KO−CaO−MgO−Al系ガラス、所謂ソーダライムガラスとされるものを硝酸カリウム溶融塩中に表2に記した条件で化学強化処理を行った。このガラスの周縁端部のトップ面側にマスキング層を得るための薬液「GLS−912墨;帝国インキ製造(株)製」を塗布し、150℃で加熱して周縁端部に10mm幅で25μm厚のマスキング層が形成された保護ガラス板を得た。該保護ガラス板で得られた圧縮応力値、反りを表2に示す。
【0032】
該保護ガラス板とディスプレイパネル3として液晶表示パネルを用い図1の構造を有する入出力一体型表示装置を組み立て、該表示装置を水平に置いたときの、保護ガラス板とディスプレイパネルとで形成される空隙間距離を市販のレーザー距離計を用いて測定した。前記空隙距離については、ガラス端部で2.5mmとなるように設計されている。結果を表3に示す。該表示装置は水平に置かれた状態で空隙距離が2.5mm未満となる箇所がなく、又、人の手でもって入力ペンで圧をかけつつデータ入力を行った際にも保護ガラス板とディスプレイパネルとの接触が発生することはなかった。
【0033】
【表1】

【0034】
【表2】

【0035】
【表3】

実施例2
ガラスの厚みを0.55mmとし、ガラスを化学強化する条件を表2に示したものとした以外は実施例1と同様とした。保護ガラス板の結果を表2、入出力一体型表示装置で得られた結果を表3に示す。該表示装置は水平に置かれた状態で空隙距離が2.5mm未満となる箇所がなく、又、人の手でもって入力ペンで圧をかけつつデータ入力を行った際にも保護ガラス板とディスプレイパネルとの接触が発生することはなかった。
【0036】
実施例3
ガラスを化学強化する条件を表2に示したものとした以外は実施例2と同様とした。保護ガラス板の結果を表2、入出力一体型表示装置で得られた結果を表3に示す。該表示装置は水平に置かれた状態で空隙距離が2.5mm未満となる箇所がなく、又、人の手でもって入力ペンで圧をかけつつデータ入力を行った際にも保護ガラス板とディスプレイパネルとの接触が発生することはなかった。
【0037】
比較例1
ガラスを化学強化する条件を表2に示したものとした以外は実施例2と同様とした。保護ガラス板の結果を表2、入出力一体型表示装置で得られた結果を表3に示す。該表示装置は水平に置かれた状態で空隙距離が2.5mm未満となる箇所がなく、又、人の手でもって入力ペンで圧をかけつつデータ入力を行った際にも保護ガラス板とディスプレイパネルとの接触が発生することはなかった。しかしながら、表示装置を垂直に置いたときに、視認性が周囲からの写りこみが多く、視認性が悪くなった。又、該表示装置をノートパソコンの表示装置とすると、折りたたんだとき、すなわち収納したときに保護ガラス板とパソコンのキーボードが接触する等の問題が生じた。
【0038】
比較例2
ガラスを化学強化する条件を表2に示したものとした以外は実施例1と同様とした。保護ガラス板の結果を表2、入出力一体型表示装置で得られた結果を表3に示す。該表示装置は水平に置かれた状態で中央部の空隙距離が2.5mm未満となり、人の手でもって入力ペンで圧をかけつつデータ入力を行った際にも保護ガラス板とディスプレイパネルとの接触が発生した。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明による入出力一体型表示装置を模式的に表した断面図で、(a)は水平に置かれた状態、(b)は垂直に置かれた状態を表している。
【図2】手書き入力手段4a、及び入力ペン4bによる機能発現のためのタブレットの回路例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 入出力一体型表示装置
2 保護ガラス板
3 ディスプレイパネル(保護ガラス板と対向する部材)
4a 手書き入力手段
4b 入力ペン
5 保護ガラス板と保護ガラス板と対向する部材との間に生じる空隙部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手書き入力手段を備えた入出力一体型表示装置であり、該表示装置は保護ガラス板が視認側最外にあり、且つ該保護ガラス板と対向する部材とで空隙部が形成されたものであり、前記保護ガラスは、フロート法で製造されたヤング率が71〜74GPa、ポアソン比が0.22〜0.24であるガラスが化学的に強化されもので、表面圧縮応力が200〜650MPa、反りが0.15〜0.18%であり、ガラスのトップ面側が前記空隙部側に配置されてなることを特徴とする入出力一体型表示装置。
【請求項2】
ガラスのトップ面側の圧縮応力がボトム面側の圧縮応力の1.03倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の入出力一体型表示装置。
【請求項3】
保護ガラス板の厚みが0.3mm〜1.1mmであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の入出力一体型表示装置。
【請求項4】
保護ガラス板の対角線距離が30〜55cmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の入出力一体型表示装置。
【請求項5】
入出力一体型表示装置に使用される保護ガラス板であり、該保護ガラス板は、フロート法で製造されたヤング率が71〜74GPa、ポアソン比が0.22〜0.24である厚みが0.3mm〜1.1mmのガラスが化学的に強化されもので、表面圧縮応力が200〜650MPa、反りが0.15〜0.18%であることを特徴とする保護ガラス板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−11210(P2007−11210A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195014(P2005−195014)
【出願日】平成17年7月4日(2005.7.4)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】