説明

入力システムおよびコンピュータ

【課題】キーボードのキーに電子ペーパで入力モードの表示をする。
【解決手段】キー・トップ103の表面には電子ペーパ101が配置されている。電子ペーパは表示スイッチ113の電極109に接続されている。電極109はキー10が押下されたときに電極111と接触する。電極111には配線パターンから電圧が印加される。キーが押下されるとキー・スイッチ119が動作して入力モードが変更されるとともに表示スイッチが閉じて電子ペーパの表示が変化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はキーボードや押しボタンのような押下式の入力システムにおいてキー・トップの表示を変更する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータの入力装置としてはマウスやキーボードが代表的である。キーボードは、文字キーの入力モードを変更する入力モード操作キーを含む。たとえばノートブック型携帯式コンピュータ(以下、ノートPCという。)のキーボードにおいて、入力モード操作キーの代表例として〔Insert〕キー、〔CapsLk〕キー、および〔ScrLk/NmLk〕キーがある。〔Insert〕キーは、入力モードを挿入モードと上書きモードの間で変更し、〔CapsLk〕キーは、入力モードを大文字モードと小文字モードの間で変更し、〔ScrLk/NmLk〕キーは、入力モードをテン・キー・モードと通常モードの間で変更する。
【0003】
特許文献1は、1つのキーの表面に電子ペーパで形成した複数の入力表記をして、操作者の入力切換操作で決定された機能に対応する入力表記が表示されるように電子ペーパの電圧を制御するキー操作装置を開示する。コンピュータは、キーに与えられた複数の機能のうち特定の機能だけを有効にするために、キー操作者による操作に基づいてキー入力モードを切り替えるキー入力モード切替部を含む。また、キー操作装置は、キー入力モード切替部が決定した現在のキー入力モードで有効な機能を示す入力表記を視認表示させる表示切替部を含む。
【0004】
特許文献2は、必要なときにキー釦部の機能が電子ペーパによって判るようにするとともに、表示用の配線が破損したり、クリック感が損なわれたりする問題を解消したキー釦構造を開示する。このキー釦構造では、キー釦が押下されていないときは、ケースに設けられた表示部用配線と表示部となる電子ペーパの端子が電気的に接続されてセグメント・タイプの電子ペーパに電圧が印加される。
【0005】
電子ペーパの表示内容は、モード・キーによる選択モードやメニュー・キーによる選択メニューに応じて所定のタイミングで書き換えられる。キー釦部が押下されたときは、電子ペーパの端子と表示部用配線が非接続状態となるが、電圧が印加されなくなっても電子ペーパの特質としてそれまでの表示は維持される。同文献には、表示部は押圧したときに端子とつながって表示データを書き換えられるようにしてもよいと記載されている。
【0006】
特許文献3は、アクティブ・マトリクス式の電気泳動的ディスプレイにおいて蓄電キャパシタを利用して、画素がアドレス指定されない間の画素の電圧を維持することによりアドレス指定を短時間で終了できるようにして高速なアドレス指定を可能にした電子ディスプレイを開示する。この発明を適用した薄膜トランジスタ・アレイでは、電子インクで構成された画素の画素電極に蓄電キャパシタの一方の端子が接続され他方の端子が隣接するゲート・ラインに接続されている。
【0007】
特許文献4は、セグメント方式の電気泳動表示装置において、コモン振り駆動をするためにセグメント電極および共通電極へ印加した電圧を停止してそれらをハイインピーダンスに設定し電気泳動粒子の移動を停止して表示パターンを保持する際に発生するキックバック現象を抑制する発明を開示する。この発明では、キックバック現象の原因が、共通電極とセグメント電極の電極面積に起因する静電容量の差にあることに着目して、セグメント電極の静電容量を補うためにセグメント電極と低電位電源との間に容量素子を接続する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−262420号公報
【特許文献2】特開2009−87865号公報
【特許文献3】特開2009−878765号公報
【特許文献4】特開2008−242382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
これまでのキーボードでは、一部の入力モード操作キーを操作したときの入力モードをキーボードまたはディスプレイの下縁に設けたLEDに表示していた。しかし、LEDの表示では入力モードを認識しにくいために、誤った入力をするという問題があった。また、すべての入力モードに対してLEDを設けることはスペースやコストの点で難点があった。さらに、入力モードの影響を受けるキーについては入力モードが表示されないため、たとえば、テン・キーと文字キーを共用するノートPCがテン・キー・モードに変化したときには、いずれがテン・キーであるかをキー・トップの印字だけでは認識しにくく、テン・キー・モードがほとんど使用されないといった事情も存在していた。
【0010】
特許文献1のキー操作装置では、表示切替部と電子ペーパの間が複数の制御コードで接続されているため、長期間のキー操作により制御コードの破損をもたらしたりキーの機械的な運動に影響を与えてタッチ感を損なったりする。この点、特許文献2のキー釦構造ではそのような問題を解決するために、電子ペーパの電極とケースの表示部用配線とがキー釦の操作により離れてもよい構造になっている。
【0011】
しかし、電子ペーパをコンピュータ用のキーボードのキー・トップに設けるには、既存のキーボードの構造をできるだけ変えないようにする必要がある。この点で特許文献2は、発明にかかるキー構造を携帯電話に適用した例を示しているが、各キーの周辺に表示部用配線を設けるケースが必要となるため、一般的なコンピュータ用のキーボードに適用することは困難で、隣接するキーとの間のスペースが少ないノートPCに適用することは一層困難である。
【0012】
また、特許文献2のキー釦構造では、表示部用配線に印加される電圧のパターンは、表示の対象となるキー以外の他のモード・キーやメニュー・キーにより決定され、表示の対象となるキーの押下により生成されるものではないため、キーを押下して変更した入力モードの表示を当該キーの電子ペーパに表示するというコンピュータの入力モード操作キーに適用することはできない。
【0013】
特許文献2には、押圧したときに電子ペーパの端子と配線側の端子が接続されてもよいことが記載されている。しかし、電子ペーパの表示を変更するには所定値以上の電圧を所定時間以上印加する必要があるため、キー釦の押下速度が電子ペーパの表示を変更するために確保すべき時間の制限を受けるため、コンピュータのキーボードに適用するためにはこの問題を解決する必要がある。
【0014】
この点において特許文献3または特許文献4は電子ペーパにコンデンサを利用することは記載しているが、キーに実装された電子ペーパに印加する電圧の印加時間を補うためにコンデンサを使用することは示唆していない。さらに、入力モード操作キーに設けた電子ペーパの表示をキーの押下に連動して変更する際に、これまでのようにコンピュータ・システムが入力モードの決定を行うと、高速でキー入力をするユーザが使用するキーボード、ノートPCのようにキーのストロークが短いキーボード、またはスキャン・コードの転送にシリアル転送を介在する外付けのキーボードなどでは十分に電子ペーパに対する電圧の印加時間を確保できないという問題がある。
【0015】
そこで本発明の目的は、既存のキーボードのアーキテクチャに与える影響を最小限にしながら、キー・トップに設けた電子ペーパによる入力モードの表示を可能にしたコンピュータの入力システムを提供することにある。さらに本発明の目的は、電子ペーパによる入力モードの表示が可能な電気機器のスイッチ回路を提供することにある。さらに本発明の目的は、そのような入力システムを備えたコンピュータを提供することにある。さらに本発明の目的は、キーボードのキーに配置された電子ペーパに入力モードを表示する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
コンピュータの入力システムは、一般に各キーのタッチ部分の間に所定のスペースを設けて押し間違えがないようにしたり、押下する操作に対して特有の反発力を与えて快適なクリック感を実現したりするための特有のアーキテクチャに基づいて製作されている。本発明は、このような操作性に関する既存のアーキテクチャの有利な点を損なわないようにしながらキー・トップに電子ペーパによる入力モードの表示を可能にする入力システムを提供する。
【0017】
入力システムは、入力モードを変更する入力モード操作キーと、入力モード操作キーの表面に配置され入力モードの表示をすることができる電子ペーパと、複数のキーにそれぞれ対応して設けられ各キーの押下により接点が閉じるキー・スイッチを含む。さらに、電子ペーパに所定の電圧パターンを供給する電源側の接点と、電子ペーパに接続され入力モード操作キーの押下により電源側の接点に接触する表示側の接点を含む。
【0018】
このような構成により、入力モード操作キーを押下することで、当該キーに配置された電子ペーパに電圧が供給されて所定の表示が行われる。電子ペーパはセグメント方式の表示回路で構成することができる。また、電子ペーパはマイクロ・カプセルと対向電極とセグメント電極を含む電気泳動方式の電子ペーパとすることができる。電子ペーパの対向電極とセグメント電極の間には、電源側の接点と表示側の接点が開いた後も電子ペーパに印加する電圧を維持するコンデンサを設けることができる。
【0019】
その結果、電源側の接点と表示側の接点が接触している時間が短くてもその間にコンデンサの充電を完了して、その後コンデンサの電圧で電子ペーパに電圧を印加する時間を確保することができる。入力システムはさらに現在の入力モードを反転する反転信号に基づいて電源側の接点に所定の電圧パターンを出力する電圧パターン生成回路と、入力モード操作キーに対応するキー・スイッチの動作を検出して反転信号を電圧パターン生成回路に送る入力モード判定回路を含むようにしてもよい。
【0020】
入力モード判定回路は、キー・マトリクスの入力モード操作キーに対応するスキャン・ラインとデコーダ・ラインに接続され入力モード操作キーが押下されたことを検出するハードウェア論理回路を含むようにしてもよい。また入力モード判定回路は、スキャン・コード生成回路から受け取ったスキャン・コードに基づいて入力モード操作キーが押下されたことを検出するハードウェア論理回路を含むようにしてもよい。
【0021】
このような入力モード判定回路によれば、キー・スッチが動作してから短時間で当該入力モード操作キーの電子ペーパに変更後の入力モードに対応する電圧パターンを出力することができる。したがって、電圧パターンが現れた状態の電源側の接点と表示側の接点が接触している時間を確保することができる。入力モード判定回路は、入力モード操作キーの押下により生成されたスキャン・コードに基づいて入力モードを判断するコンピュータ・システムと、第1のハードウェア論理回路または前記第2のハードウェア論理回路により設定される入力モードを示すビットを含む状態レジスタと、コンピュータ・システムが判断した入力モードと状態レジスタのビットが示す入力モードを比較する検出回路と、検出回路に接続された表示回路を含んでもよい。
【0022】
このような構成によれば、先にハードウェア論理回路が判断した入力モードの結果が、後からコンピュータ・システムが判断した結果と相違する場合に表示回路でユーザに通知することができる。電子ペーパは入力モード操作キーにより変更された入力モードの影響を受ける入力モード反映キーに配置することができる。そして、電圧パターン生成回路は入力モード操作キーの電子ペーパと入力モード反映キーの電子ペーパに対して所定の電圧パターンを出力することができる。
【0023】
入力モード操作キーによる入力モードの変更は、2つのキーの押下の組み合わせにより実現するようにしてもよい。本発明の入力システムは、ノートブック型コンピュータおよびデスクトップ型コンピュータに適用することができる。さらに本発明のキー入力システムは、コンピュータ以外の電気機器のスイッチ回路に適用することもできる。
【発明の効果】
【0024】
本発明により、既存のキーボードのアーキテクチャに与える影響を最小限にしながら、キー・トップに設けた電子ペーパによる入力モードの表示を可能にしたコンピュータの入力システムを提供することができた。さらに本発明により、電子ペーパによる入力モードの表示が可能な電気機器のスイッチ回路を提供することができた。さらに本発明により、そのような入力システムを備えたコンピュータを提供することができた。さらに本発明によりキーボードのキーに配置された電子ペーパに入力モードを表示する方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ノートPCが備えるキーボードのキー配列の一例を示す図である。
【図2】キーボード10を構成するいずれかの入力モード操作キーまたは入力モード反映キーの断面図である。
【図3】「ScrLk/NmLk」キー52の表面に配置される電子ペーパ101と表示用配線125を説明する図である。
【図4】「ScrLk/NmLk」キー52にコンデンサを設ける様子を説明する図である。
【図5】ノートPCに搭載されたキーボード10を含む入力システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図6】キー100が押下されてから復帰するまでのキー・スイッチ119の動作、表示スイッチ113の動作、および電圧パターンが出力されるまでの時間的な関係を示す図である。
【図7】電圧パターン生成の準備を短時間で終了する入力システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図8】図7の入力システムの動作を説明するフローチャートである。
【図9】電子ペーパの表示内容の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[キー配列]
図1は、ノートPCが備えるキーボードのキー配列の一例を示す図である。キーボード10は、テン・キーが文字キーと共用となっているいわゆるテンキー・レス・キーボードといわれるタイプである。本発明にかかるキーボードは、PS/2インターフェースやUSBでデスクトップ型コンピュータに使用されるフル・キーボードであってもよい。フル・キーボードではテン・キーが独立して設けられる。各キーは上からみたときに、キー・トップが平坦な部分とその周辺に傾斜した部分を含む構造になっており、キー・トップの平坦な部分を押下する限り隣接するキーを押下することがないように構成されている。
【0027】
キーボード10は、入力モードを変更するキーの一例としての〔Insert〕キー51、〔ScrLk/NmLk〕キー52、および〔CapsLk〕キー53と、それらのキーと組み合わせて操作する〔Shift〕キー54および〔Fn〕キー55を含む。キーボード10はさらに点線で囲んだ10個の共用キー56を含む。共用キー56は、〔ScrLk/NmLk〕キー52の操作による入力モードの変更により文字キーまたはテン・キーとして機能する。
【0028】
テキスト入力が可能なアプリケーションに対して〔Insert〕キー51を1度押下するとキーボード10からの入力モードが上書きモードに変化し、再度押下すると挿入モードに変化する。このときある種のアプリケーションでは、ステータス・バーに現在の入力モードを表示する。また、〔Shift〕キー54を押下しながら〔CapsLk〕キー53を押下すると、文字キーからの入力モードが大文字モードに変化し、同様に再度押下すると小文字入力モードに戻る。
【0029】
〔Fn〕キー55を押下しながら〔ScrLk/NmLk〕キー52を押下すると、共用キー56がテン・キー・モードになり、再度押下すると通常モードとなる。キーボード10を搭載するノートPC10では、入力モードが大文字モードやテン・キー・モードに変化したときは、キーボード10またはディスプレイに設けたLEDが点灯してユーザに知らせるようになっているが、〔Insert〕キー51の押下による入力モードの状態はLEDには表示されない。さらに、〔ScrLk/NmLk〕キー52を単独で押下するたびに、表計算をするアプリケーションの入力モードがスクロールしたときに選択したセルが移動しないスクロール・ロック・モードに変化したりそれが解除されたりする。
【0030】
〔Insert〕キー51、〔ScrLk/NmLk〕キー52、および〔CapsLk〕キー53などは、キーボード10からの入力モードを変更することができるキーであり、以後このようなキーを入力モード操作キーということにする。入力モード操作キーは、キーを押下したときに入力モードが変更されその後解放しても変更した入力モードを維持するような操作をするキーをいう。入力モード操作キーは、キーを押下してから解放したときに入力モードを変更するタイプであってもよい。
【0031】
入力モード操作キーはさらに、全角入力と半角入力を切り換えるキーや、日本語キーボードにおけるローマ字入力とひらがな入力といったように入力文字モードを切り換えるキーも存在する。〔Shit〕キー54を押下してから文字キーを押下して大文字で入力する場合と、文字キーだけを押下して小文字で入力する場合との間でも入力モードが変化しているが、このように当該キーの操作のときだけ入力モードを変更する〔Shift〕キー54は入力モード操作キーには含めない。このようなキーは、入力モードの変更が一時的であるため、入力モードを表示する意義が少ないからである。ただし本発明は、このようなキーの現在の機能を電子ペーパに表示をすることを排除するものではない。
【0032】
入力モード操作キーには、上述のように単独で操作するものもあれば、〔Fn〕キー55または〔Shift〕キー54といったような補助キーと組み合わせて操作するものもある。また、キーの中には入力モードの影響を受けるキーと影響を受けないキーが存在する。たとえば、10個の共用キー56は、テン・キー・モードの影響を受ける。また、日本語キーボードでは、それぞれの文字キーのキー・トップにローマ字とひらがな文字が刻印されるが、そのような複数の文字キーは入力文字モードの影響を受ける。このように入力モードの影響を受けるキーを入力モード反映キーということにする。
【0033】
〔電子ペーパを実装したキーの構造〕
図2は、キーボード10を構成するいずれかの入力モード操作キーまたは入力モード反映キーの断面図である。本発明は、押下されたキー・トップが一定のストロークだけ変位してキー・スイッチを動作させる押下式のキーボードに適用する。押下式のキーボードにはキーの数に対応するメカニカル・スイッチを備える独立スイッチ式およびメンブレン・シートを備えるメンブレン式などがある。本発明は、操作時にキー・トップに機械的な変位またはストロークが生じないようなタッチ式の静電容量型キーボードは除く。また、メンブレン式には、アクチュエータ機構としてラバー・ドーム、パンタグラフ、またはバックリング・スプリング(座屈ばね)などを使用するものがあるが、本発明にはそれらのいずれの方式も適用できる。図2に例示するキー100は、ラバー・ドームとパンタグラフを組み合わせた機構を採用している。
【0034】
下部プレート121の上にはメンブレン・シート117が配置され、メンブレン・シート117の上には上部プレート115が配置されている。メンブレン・シート117は、表面に多数の配線パターンと接点がそれぞれ印刷された2枚のプラスチック・フィルムを、スペーサを挟んで重ね合わせた構造になっている。一方のプラスチック・フィルムの各接点は、スキャン・ラインに接続され、他方のプラスチック・フィルムの各接点はデコーダ・ラインに接続される。
【0035】
スキャン・ライン、デコーダ・ライン、および2つの接点で構成された各キー・スイッチ119は図5のキー・マトリクス161を構成する。スキャン・ラインは図5のスキャン・ドライバ13に接続され、デコーダ・ラインは図5のデコーダ15に接続される。メンブレン・シート117はキー100が押下されたときに、キー・スイッチ119が閉じてスキャン・ラインおよびデコーダ・ラインを通じてキーの物理的な位置を示すキー信号を出力する。上部プレート115はキー・スイッチ119の周辺に開口が形成されており、メンブレン・シート117はラバー・ドーム129から押下されたキー100の圧力を受けることができるように開口部分で露出している。
【0036】
メンブレン・シート117が露出している部分の上には、ラバー・ドーム129が配置される。ラバー・ドーム129はキー・トップ103の押下する際の圧力をリンク機構105から受けて下方向に沈み、圧力が解放されたときにその復元力でもとの形状に戻ることができるようになっている。パンタグラフ機構をなす一対のリンク機構105、107の中でリンク機構105は、ラバー・ドーム129の頂部を押圧する圧力部(図示せず。)を備えている。リンク機構105は、固定軸105bと可動軸105aを備え、リンク機構107は固定軸107aと可動軸107bを備えている。固定軸107aは、キー・トップ103の裏側に形成された軸受け部の中で回動できるようになっている。固定軸105bは上部プレート111に形成された軸受け部の中で回動できるようになっている。
【0037】
キー100が押下されたときに、可動軸105aはキー・トップ103の裏側に形成された軸受け部を摺動して位置105a‘まで移動し、可動軸107bは上部プレート111に形成された軸受け部を摺動して位置107b’まで移動する。リンク機構105、107はそれぞれの中央部分で互いに回動できるようにX字状に連結されている。ユーザがキー100を押下するとリンク機構105、107およびラバー・ドーム129は、キー・トップ103がほぼ押下前の姿勢を保ちながら変位する。
【0038】
リンク機構105の圧力部によりラバー・ドーム119の頂部が圧力を受けて変形するときに指に反発力を与える。ラバー・ドーム119は、変形の限界まで反発力を発揮するが限界まで到達すると頂部が凹んで急激に反発力が弱まってキー・トップ103が沈み込みキー・スイッチ119が動作する。このような反発力はユーザにキーが確実に動作したことの安心感と良好なクリック感を提供するため、キー100は電子ペーパを組み込む際にリンク機構105、107およびラバー・ドーム119の運動を妨げないようにする必要がある。
【0039】
キー・トップ103の表側には電子ペーパ101が配置され、電子ペーパ101の上には透明なキー・カバー127が配置されている。電子ペーパ101からは複数の配線が表示スイッチ113の一方の接点109に接続される。接点109は、各キーにおいて電子ペーパ101の表示に必要な配線の数だけ設けられる。上部プレート115には、表示スイッチ113の他方の接点111が設けられている。接点111は、接点109に対応する数だけ設けられている。
【0040】
接点111に接続される配線123は、上部プレート115を貫通してメンブレン・シート117の上に形成された表示用配線125に接続されている。表示用配線125は、図5で参照番号125a〜125cとして示すように電圧パターン生成回路19に接続される。キー100が押下されたときにキー・スイッチ119の接点が閉じて出力されたキー信号により入力モードが判定され、表示用配線125には変更後の入力モードに対応する電圧パターンが現れる。電圧パターンの生成方法は後に詳述する。
【0041】
キー・スイッチ119を動作させる1回のキー100の操作の中で接点109が接点111と所定の時間接触すると、電圧が印加された電子ペーパ101は表示用配線125に現れる電圧パターンに基づいて入力モードの表示を変更または反転する。表示スイッチ113の構造は、電子ペーパ101に電圧を印加するための配線および接点が、リンク機構105、107およびラバー・ドーム129の運動をあまり妨げることがないので、良好な操作性を維持することができる。
【0042】
〔電子ペーパ〕
図3は、「ScrLk/NmLk」キー52の表面に配置される電子ペーパ101と表示用配線125を説明する図である。キー・トップ103は表面が一例として黒色に着色されている。図3(A)に示すように「ScrLk/NmLk」キー52の周囲には、表示用スイッチ113a〜113cで電子ペーパ101に接続可能なように、3本の表示用配線125が配置されている。
【0043】
図3(B)に示すようにキー・トップ103の表面の位置151、153には、それぞれ図3(C)に示す電気泳動方式の電子ペーパ155、157が配置される。電子ペーパ155、157は、セグメント・タイプの反射型表示媒体で、文字を構成する領域に複数のマイクロ・カプセルが配置される。電子ペーパ155、157の文字を構成する領域以外の背景領域には、マイクロ・カプセルは配置されておらず、かつ、キー・トップ103の表面と同じ黒色に着色されている。マイクロ・カプセルには、透明な液体の中に負に帯電した黒色微粒子と正に帯電した白色微粒子が充填され、さらに表示側に透明な対向電極が設けられ裏側にセグメント電極が設けられる。
【0044】
電子ペーパ155はセグメント電極に負の電圧を印加すると白色の泳動粒子が対向電極側に移動して背景の色との対比で文字「ScrLk」が認識できるようになり、正の電圧を印加すると黒色の泳動粒子が対向電極側に移動して背景の色との対比で文字「ScrLk」を認識できなくなる。したがって、電子ペーパ155は、背景の色との対比でセグメント電極に負の電圧を印加すると文字を表示し、正の電圧を印加すると表示が消える。電子ペーパ157も同様の原理で表示する。
【0045】
「ScrLk/NmLk」キー52では、文字「ScrLk」と文字「NmLK」を独立して表示または非表示にする2つのセグメント電極と対向電極に合計で3本の配線が必要となる。なお、電子ペーパ155の背景領域にもマイクロ・カプセルを設けて、バック・グランを常に黒に表示したり、文字領域と背景領域の色を同時に変えたりすることもできるが、その場合は背景領域のセグメント電極に対する配線も含めて合計で4本の配線が必要となる。
【0046】
電子ペーパ155、157は、白と黒の2色で背景領域の色との対比で文字を表示するため、背景領域の色と文字を表示しないときの文字領域の色を一致させると、文字が消えて当該キーの機能を認識できなくなる。それを防ぐために、背景領域の色を白色または黒色からわずかに変えたり、キー・カバー127に電子ペーパの文字が消えても視認できるように薄い着色や凹凸を加えたりすることが望ましい。なお、背景領域の色と文字領域の色を同時に反転させるように電圧を印加して文字が消えないようにすることもできる。
【0047】
電子ペーパには、2つの文字が重なるようにしてマイクロ・カプセルを配置していずれか一方の文字だけを表示することもできる。たとえば、図9(A)に示すように電子ペーパに文字「A」と文字「O」が重なるようにマイクロ・カプセルを配置する。セグメント電極は、文字「A」だけを表示する部分と、文字「O」だけを表示する部分と、文字「A」および文字「O」の表示に共通する部分に分けることでいずれか一方の文字を表示することができる。
【0048】
図8(B)は、電子ペーパをキーではなくて、音量を変化させる押しボタンに適応した例を示す。押しボタンには、キー・スイッチに対応する主スイッチと表示スイッチを設けることで図2のキー100と同様に構成することができる。そして、押しボタンが押下されるたびに現在の音量レベルが変化したときに、電子ペーパの表示が変わるようにすることができる。なお、電子ペーパには、電気泳動式だけでなく半球ごとに白色と黒色に塗り分けられた球形微粒子を使用するツイスト・ボール式や着色した液体に1色の帯電微粒子だけを詰め込んだ方式などの他の原理のものを使用することもできる。
【0049】
〔補助コンデンサ〕
電子ペーパ155、157は、帯電した微粒子を対向電極まで移動させるために、絶対値で15V以上の直流電圧を約200m秒以上継続して印加する必要がある。電子ペーパ155、157を搭載したキーを通常の速度で操作したときは、表示スイッチ113が閉じて電子ペーパに電圧が印加される時間が、この条件を満たすことは困難である。本実施の形態では、電圧パターンが現れている表示用配線125側の接点111と電子ペーパ側の接点109が短時間で離れても電子ペーパの表示が可能なように、対向電極とセグメント電極の間にコンデンサを接続する。
【0050】
図4は、「ScrLk/NmLk」キー52に設けるコンデンサを説明する図である。電子ペーパ155、157は、それぞれ対向電極155a、155b、セグメント電極155b、157b、カプセル・モジュール155c、157cを含んでいる。対向電極155aと対向電極157aは相互に接続されて、さらに、接点109aに接続されている。セグメント電極155bは接点109cに接続され、セグメント電極157bは接点109bに接続されている。
【0051】
そして、対向電極155a、157aとセグメント電極155bとの間には、コンデンサ155dが接続され、対向電極155a、157aとセグメント電極157bとの間には、コンデンサ157dが接続される。コンデンサ155d、157dの静電容量は一例として4.7μFとしている。コンデンサ155d、157dの電圧は、絶対値が18Vの直流電圧が4ミリ秒程度の間印加されると充電が完了する。
【0052】
表示用配線125に電圧パターンが現れているときに表示スイッチ113が閉じると、最初にコンデンサ155d、157dが充電される。コンデンサ155d、157dの充電が相当進行するまで電子ペーパ155、157には表示を変更するに必要な電圧は印加されない。しかし、電子ペーパ155,157はほとんど電力を消費しない。
【0053】
したがって、コンデンサ155d、157dの充電が完了して端子電圧が18Vまで上昇すると、コンデンサ155d、157dは対向電極155a、157aとセグメント電極155b、157bの間の電圧を200ミリ秒以上の間15V以上に維持して電子ペーパの表示をすることができる。これは、コンデンサ155d、157dにすでに充電されている電圧と逆極性の電圧を印加する場合にもほぼあてはまる。したがって、キーボード10を高速でタイピングするような場合にも対応して電子ペーパの表示は反転することができる。コンデンサ155d、157dは、キー・トップ103の裏側に取り付ける。
【0054】
〔キー入力システム〕
図5は、ノートPCに搭載されたキーボード10を含む入力システムの構成を示す機能ブロック図である。LED表示回路11はコンピュータ・システム33からのコマンドに基づいて、キーボード10の入力モードを示すScrLk、CapsLk、およびNmLkの表示をする。キー・マトリクス161は、16本のスキャン・ライン163でスキャン・ドライバ13に接続され、8本のデコーダ・ライン165でデコーダ15に接続される。キー・マトリクス161のデコーダ・ラインの中でデコーダ15に接続されない方の端部は電圧源に接続される。スキャン・ドライバ13では、各スキャン・ライン163とグラウンドとの間にそれぞれスキャン・スイッチが接続されている。
【0055】
スキャン・ドライバ13は、ある瞬間はいずれか1本のスキャン・ライン163がグランドに接続されるようにスキャン・スイッチを順番にオン/オフする。スキャン・ドライバ13は、1番目のスキャン・ラインから16番目のスキャン・ラインまで順番にスキャン・スイッチをオン/オフに切り換えたあとにまた1番目のスキャン・ラインに戻り以後この動作を繰り返す。スキャン・ドライバ13がスキャン・ライン163を一巡する時間をスキャン・サイクルという。
【0056】
キー・マトリクス161は、スキャン・ライン163とデコーダ・ライン165を通じてスキャン・ドライバ13とデコーダ15に、押下されたキーの物理的な位置を特定するためのキー信号を送る。デコーダ15は、スキャン・ドライバ13の動作とタイミングを一致させながら、同時に8本のデコーダ・ライン165の電位を読み取る。スキャン・コード生成回路17は、ある瞬間に電位がグラウンド・レベルになっているスキャン・ライン163と、同じタイミングでグラウンド・レベルになっているデコーダ・ライン165を認識することで、押下されたキーの物理的な配置を認識してそれに対応するスキャン・コードを生成する。
【0057】
スキャン・コードは、各キーに割り当てられた1バイト〜4バイトのデータでキーボード10上におけるキーの物理的な位置を示すデータである。スキャン・コードは、キー・スイッチ119が閉じたときに生成されるメイク・コードと解放されたときに生成されるブレーク・コードで構成されている。インターフェース23は、I/Oポートが60hと64hにマッピングされた8ビットのレジスタと、割り込みコントローラを含む。
【0058】
コンピュータ・システム33は、CPU27、OS29、アプリケーション31および図示しないメイン・メモリ、デバイス・ドライバ、BIOSなどで構成されている。インターフェース23は、スキャン・コード生成回路17によりI/Oポート60hのレジスタにスキャン・コードが書き込まれるとCPU27に割り込みを発生させる。割り込みを受けたCPU27では、OS29およびアプリケーション31が実行される。
【0059】
OS29のキーボード・ドライバは、I/Oポート60hから読み取ったスキャン・コードをコンピュータ・システム33の内部で使用する文字コードに変換してアプリケーション31に送る。コンピュータ・システム33は、入力モード操作キーが押下されると当該キーのスキャン・コードから入力モードが変更されたことを認識する。OS29はたとえば、入力モードが大文字モードに変更されると以後文字キーからの入力を、大文字を示す文字コードに変換してその時点でアクティブなウインドウを有するアプリケーションに送る。
【0060】
OS29はまた、変更された入力モードをキーボード10に通知するために、I/Oポート60hにLED11を表示させるコマンドとデータを書き込む。インターフェース23がレジスタにたとえば大文字モードを示すコマンドとデータを受け取ると、スキャン・コード生成回路17はLED表示回路11のCapsLkに対応するLEDを点灯する。
【0061】
電子ペーパ101a、101b、101cはそれぞれ〔Insert〕キー51、〔CapsLk〕キー53、および〔ScrLk/NmLk〕52キーに配置されている。OS29は入力モード操作キーの押下によりメイク・コードが生成されたときに変更された入力モードを認識する。〔Insert〕キー51、〔CapsLk〕キー53は、入力モードを示す文字が1つなので、電子ペーパ101a、101bのセグメント電極はそれぞれ1つである。〔ScrLk/NmLk〕キー52は、入力モードを示す文字が2つあるのでセグメント電極は2つある。図5には記載していないが、操作モード反映キーである共有キー56にも電子ペーパを設けて、電子ペーパ101cと同じグループになるように接続してもよい。その結果、〔ScrLk/NmLk〕キー52が操作されて、テン・キー・モードが有効になったときに共有キー56の電子ペーパの表示も変更することができる。
【0062】
電子ペーパ101a〜101cは、表示用配線125a〜125cで電圧パターン生成回路19に接続されている。電圧パターン生成回路19には電子ペーパ101a〜101cの電圧源となるDC/DCコンバータ25が接続され、所定の電子ペーパに入力モードに応じた電圧パターンを出力するハードウェア論理回路である。DC/DCコンバータ25は、DC±18Vの電圧を電圧パターン生成回路19に供給する。入力モード操作キーの押下によりメイク・コードが生成されて入力モードが変更されたことを認識したOS29は電子ペーパ101a〜101cの表示を変更するために、LEDを点灯させるときと同じようにインターフェース23のレジスタに変更された入力モードを示すコマンドとデータを書き込む。
【0063】
コマンドを受け取ったスキャン・コード生成回路17は、電圧パターン生成回路19に入力モードを変更する信号を送る。LEDを点灯させるコマンドを受け取る場合は、スキャン・コード生成回路17はそのときのデータを送る。電圧パターン生成回路19は、入力モードを変更するデータを受け取ると、対応するキーを特定して電圧パターンを生成し出力する。なお、キーボード10が、システム本体から分離してUSBやPS/2などのキーボード・インターフェースで接続される場合には、キー・マトリクス161とスキャン・コード生成回路17との間に、スキャン・コードをシリアル信号に変換する回路を含み、さらにスキャン・コード生成回路17は、シリアル信号をパラレル信号に変換する回路を含むように構成することができる。
【0064】
〔キー入力システムの他の例〕
図5のキー入力システムでは、変更された入力モードを示すデータを、スキャン・コード生成回路17からスキャン・コードを受け取ったOS29が生成していた。このときの時間的な様子を、図6を参照して説明する。図6は、キー100が押下されてから復帰するまでのキー・スイッチ119の動作、表示スイッチ113の動作、および電圧パターンが出力されるまでの様子を左から右への時間の流れとして示している。
【0065】
押下前にはキー・トップ103が時刻t1で上死点に位置している。キー100が押下されると時刻t2で表示スイッチ113の接点が閉じ、時刻t3でキー・スイッチ119の接点が閉じる。キー・スイッチ119が閉じると、メイク・コードが生成されてコンピュータ・システム33は入力モードの変更を認識する処理を開始する。表示スイッチ113がキー・スイッチ119より先に閉じる必要はないが、表示スイッチ113はメイク・コードが生成されてからできるだけ長い時間接点が閉じていることが望ましいため、先に閉じるようにした方が有利である。
【0066】
メイク・コードが生成されるとその後それを受け取ったCPU27が、キーボード10が入力モードを変更する要求をしていることを認識して、インターフェース23にコマンドと変更された入力モードを示すデータを送る。そして時刻t3から電圧パターン生成回路19が電圧パターンを出力する時刻t5まで電圧パターンの生成のための準備時間となる。キー・スイッチ119が閉じてからわずかなラバー・ドーム129の弾力とキー・スイッチ119のストロークにより、時刻t4でキー・トップ103が下死点まで移動する。その後ユーザがキー100から指の力を抜くと、キー100はラバー・ドーム129の弾力により復帰する方向に変位する。
【0067】
時刻t5で電圧パターンの生成準備が完了すると電圧パターン生成回路19はただちに電圧パターンを出力し、所定の時間が経過した時刻t9で電圧パターンの出力を停止する。なお電子ペーパは表示を維持するための電力を消費しないため、電圧パターンの出力は、その後電子ペーパが書き換えられるまで維持しておいてもよい。キー・トップ103が下死点から上死点に向かうときには、時刻t6でキー・スイッチ119の接点が解放されてブレーク・コードが生成され、時刻t7で表示スイッチ113の接点が離れる。電圧パターンが生成されかつ表示スイッチ113が閉じている時間帯でコンデンサ155d、157dが充電される。
【0068】
このとき、コンデンサ155d、157dが完全に充電されるためには、充電時間tが4ミリ秒以上必要となる。しかし、電圧パターンを生成する準備時間が長くなって時刻t5が遅延すると、この充電時間tを確保できなくなる。時刻t7を遅らせて表示スイッチ113が閉じている時間を長くすることは、キー100のストロークや操作性の観点から限界がある。特に、PS/2やUSBのインターフェースを使ってキーボードをコンピュータに接続する場合は、シリアル転送に費やす時間も必要となり、タイプ速度の速いユーザに対応できない場合もある。また、ノートPCのようにキーのストロークが短いキーボードでも充電時間tの確保が難しくなる。したがって、入力モード操作キーが押下された後はできるだけ速く電子ペーパ101に対する電圧パターンを生成する必要がある。
【0069】
図7は、電圧パターン生成の準備を短時間で終了する入力システムを示す構成を示す機能ブロック図である。図7では、図5と同一の要素については同一の参照番号を付与して説明を省略する。また、図7からは図5に記載したLED表示回路11、OS29、アプリケーション33およびDC/DCコンバータ25を省略しているが、図7にはこれらの要素も含むものとする。さらにスキャン・ラインおよびデコーダ・ラインの数は、説明に必要な範囲だけを示している。
【0070】
入力モード判定回路205を構成する各要素は、いずれもハードウェア論理回路で形成されている。入力モード判定回路205は、キー操作検出回路201a〜201cを含む。キー操作検出回路201a〜201cは、それぞれ特定の入力モード操作キーに対応して設けられている。キー操作検出回路201a〜201cは入力がそれぞれ1対または2対の特定のスキャン・ラインと特定のデコーダ・ラインに接続され出力が反転回路211に接続されている。キー操作検出回路201a〜201cは1対のキー信号の入力が同時にグランド・レベルに遷移したときに当該キーの押下を検出して反転信号を出力する。
【0071】
キー操作検出回路201aは〔Insert〕キー51に対応しており、〔Insert〕キー51が押下されたときに現在の入力モードを上書きモードまたは挿入モードのいずれかに反転する反転信号を出力する。キー操作検出回路201bは〔Shift〕キー54と〔CapsLk〕キー53に対応し、〔Shift〕キー54と〔CapsLk〕キー53が同時に押下されたときに現在の入力モードを大文字モードまたは小文字モードのいずれかに反転する反転信号を出力する。
【0072】
キー操作検出回路201cは、〔Fn〕キー55と〔ScrLk/NmLk〕キー52に対応しており、〔Fn〕キー55と〔ScrLk/NmLk〕キー52が同時に押下されたときに、現在の入力モードをテン・キー・モードまたは通常モードのいずれかに反転する反転信号を出力する。キー操作検出回路201b、201cは、それぞれ2つのキーのキー信号を認識する順番も判定する。キー操作検出回路201bは、先に〔Shift〕キー54のキー信号を検出したときだけ反転信号を出力し、キー操作検出回路201cは、〔Fn〕キー55が先に押下されたときだけ反転信号を出力する。
【0073】
入力モード判定回路205はさらに、状態レジスタ207、検出回路209、反転回路211、出力回路213および表示回路215を含む。状態レジスタ207は、3つの入力モードに対応するように3ビットで構成され、それぞれが現在の入力モードを保持する不揮発性のレジスタである。検出回路209は、スキャン・コード生成回路17から受け取ったスキャン・コードに基づいてコンピュータ・システム33が認識した変更後の入力モードを示すデータをスキャン・コード生成回路17が受け取ったときに、状態レジスタ207の対応する入力モードのビットと比較して両者が一致するか否かを検査する。両者が一致しないと判断したときは表示回路215を点滅させてユーザに知らせる。
【0074】
反転回路211は、キー操作検出回路201a〜201cから反転信号を受け取ると状態レジスタ207の対応する位置のビットを反転させる。出力回路213は、状態レジスタ207のビットが反転されるたびに、対応するキーの電子ペーパのセグメント電極に印加する電圧パターンを反転させる。図7では、電子ペーパ101cと電子ペーパ101dが同じグループとなるように接続されている。電子ペーパ101dは共有キー56に設けられている。
【0075】
したがって、〔Fn〕キー55と〔ScrLk/NmLk〕キー52が同時に押下されて、入力モードがテン・キー・モードまたは通常モードのいずれかに変化したときは、入力モード操作キーである〔ScrLk/NmLk〕キー52と、入力モード反映キーである共有キー56の表示用配線125cの電圧パターンが反転する。入力モード反映キーの電子ペーパ101dの表示は、表示用配線125cの電圧パターンが変化した後であってもキーが押下されない限り変化しない。
【0076】
しかし、一旦押下されるとその後さらに変化した電圧パターンが表示用配線125cに現れかつキーが押下されるまで表示は維持される。ユーザは、〔ScrLk/NmLk〕キー52の表示が変更されたあとに一旦10個の共有キー56を仮に押下してからテン・キーとしての利用を開始することもできる。この場合、電圧パターン生成回路203は入力モード反映キーの表示用配線125cに対してつぎの電圧パターンを生成するまで最初の電圧パターンを出力し続ける。さらに、共有キー56には、電子ペーパ101dに電圧を印加するための機械的なアクチュエータを設けて、入力モードが変化したときにアクチュエータを動作させて表示スイッチ113を一時的に閉じることで表示を変更することもできる。
【0077】
スキャン・ドライバ13、デコーダ15は図5で説明したのと同じ動作をしてコンピュータ・システム33にスキャン・コードを送る。コンピュータ・システム33は押下されたキーのスキャン・コードを処理する。OS29は受け取ったスキャン・コードから入力モードが変更されたことを認識すると、インターフェース23に認識した入力モードを示すコマンドとデータを書き込む。スキャン・コード生成回路17は、OS29が認識した入力モードを示す信号を検出回路209に送る。なお、キー操作検出回路201a〜201cは、スキャン・コード生成回路17からスキャン・コードを受け取って、反転信号を生成するようにしてもよい。
【0078】
入力モードの中には、上書きモードと挿入モードのように特定のアプリケーションにだけ有効なものがある。このような入力モードに関しては、OS29は、当該入力モードを設定したアプリケーションのウインドウがアクティブなときは設定された入力モードを有効にし、当該ウインドウがバックグランドになったときは入力モードを復帰するようにインターフェース23にコマンドとデータを書き込むことができる。
【0079】
つぎに、図7の入力システムの動作を図8のフローチャートを参照して説明する。ブロック301では、ノートPCの電源が投入されたときに、状態レジスタ207はそれまで保持していたビット・パターンに対応する信号で電圧パターン生成回路203を設定する。電圧パターン生成回路203は、それぞれの電子ペーパ101a〜101dに対する表示用配線125a〜125cに対して電圧パターンを出力する。
【0080】
電子ペーパ101a〜101dは、ノートPCの電源が停止しても相当長い期間それまでの表示を維持するため、電子ペーパ101a〜101dの表示と表示用配線125a〜125cに現れる電圧パターンは一致している。ブロック303で、たとえば〔ScrLk/NmLk〕キー52キーに関する現在の入力モードが通常モードだとしたときに、ユーザが〔Fn〕キー55を先に押下しながら〔ScrLk/NmLk〕キー52を押下する。
【0081】
押下する前の電子ペーパ101cでは、入力モードが通常モードであったために文字〔NmLk〕が消えている。このキー操作に応じてキー・マトリクス161からキー信号が出力される。キー信号は入力モード判定回路205とシステム33で並行して処理される。ブロック305では入力モード判定回路205においてキー操作検出回路201cだけが反転信号を出力する。反転回路211は、状態レジスタ207のテン・キー・モードに対応するビットを反転する。
【0082】
出力回路213は、入力モードが通常モードからテン・キー・モードに反転したことを示す信号を電圧パターン生成回路203に送る。ブロック307で電圧パターン生成回路203が電圧パターンを反転させると、電子ペーパ101c、101dに対する表示用配線125cの電圧パターンが反転して、キー操作が行われた〔ScrLk/NmLk〕キー52キーの電子ペーパ101cには文字〔NmLk〕が表示される。共有キー56の電子ペーパ101dについては、表示用配線125cに変化後の入力モードを示す電圧パターンが現れる。
【0083】
ここまでの処理は、ハードウェア論理回路だけで処理されるため図6の時刻t5は早期に到来し、〔ScrLk/NmLk〕キー52はコンデンサ155d、157dの充電時間を十分に確保することができる。共用キー56の電子ペーパ101dは、対応する表示用配線125cの電圧パターンが変更されているので、それ以後押下された時点で表示が反転する。一方、コンピュータ・システム33の処理ルートでは、ブロック309でキー・マトリクス161が出力したキー信号をスキャン・ドライバ13とデコーダ15が処理してスキャン・コード生成回路17がスキャン・コードを生成する。
【0084】
コンピュータ・システム33は、受け取ったスキャン・コードから変更後の入力モードを認識して、ブロック311でスキャン・コード生成回路17に認識した入力モードを示すコマンドとデータをインターフェース23に送る。インターフェース回路23が受け取ったデータは、スキャン・コード生成回路17が読み取る。ブロック309、311の処理はコンピュータ・システム33によるソフトウェアの処理や、場合によってはシリアル転送のための時間を含むためブロック305、307の処理に比べて長い時間を必要とする。
【0085】
ブロック315では、検出回路209がスキャン・コード生成回路17から受け取った入力モードを示す信号と状態レジスタ207のビットが示す入力モードとを比較する。検出回路209が両方の入力モードが一致していると判断したときは、ブロック317で表示用配線101cの電圧パターンは維持される。検出回路が両方の入力モードが一致しないと判断したときはブロック319で表示ランプ215を点滅させる。
【0086】
上記の手順によれば、入力モード操作キーが押下されたときは、ハードウェア論理回路がキー信号から押下されたキーを検出して、先に現在の入力モードを反転させるために、電子ペーパに対する4ミリ秒の充電時間を十分に確保することができる。しかし、何らかの事情でコンピュータ・システム33が認識する入力モードと電子ペーパが表示する入力モードがずれることも予想される。
【0087】
また特定のアプリケーションに対してだけ有効な入力モードも存在し、当該アプリケーションのウインドウがバックグランドに変化する場合もある。これに対応するために、入力モード操作キーが押下されるたびにまたはアクティブなウインドウが変化するたびにコンピュータ・システム33が認識する現在有効な入力モードと電子ペーパの表示を比較する。表示ランプ215を確認してコンピュータ・システム33と電子ペーパの表示が一致しないと判断したユーザは再度入力モード操作キーを入力することができる。なお、入力モード操作キーが押下されて電子ペーパの表示が変更されてから表示ランプ215が点灯するまでの時間は短いのでユーザは直前に変更しようとした入力モードを容易に認識することができる。
【0088】
以上、ノートPCの入力システムに電子ペーパの表示を適用する例を説明したが、本発明は、エレベータや自動車の操作ボタンなどのストロークのあるスイッチにおける表示機能に広く適用可能である。これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0089】
10…キーボード
100…キー
101、101a〜101d、155、157…電子ペーパ
103…キー・トップ
109、109a〜109c…電子ペーパ側の接点
111…表示用配線側の接点
113…表示スイッチ
117…メンブレン・シート
119…キー・スイッチ
127…キー・カバー
155、157…電子ペーパ
155a、157a…対向電極
155b、157b…セグメント電極
155c、157c…マイクロ・カプセル
155d、157d…コンデンサ
161…キー・マトリクス
205…入力モード判定回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータの入力システムであって、
入力モードを変更する入力モード操作キーを含む複数のキーと、
前記入力モード操作キーの表面に配置され前記入力モードの表示をすることができる電子ペーパと、
前記複数のキーにそれぞれ対応して設けられ各キーの押下により接点が閉じるキー・スイッチと、
前記電子ペーパに所定の電圧パターンを供給する電源側の接点と、
前記電子ペーパに接続され、前記入力モード操作キーの押下により前記電源側の接点に接触する表示側の接点と
を有する入力システム。
【請求項2】
前記電子ペーパがセグメント方式の表示回路で構成されている請求項1に記載の入力システム。
【請求項3】
前記電子ペーパがマイクロ・カプセルと対向電極とセグメント電極を含む電気泳動方式の電子ペーパである請求項1または請求項2に記載の入力システム。
【請求項4】
前記対向電極と前記セグメント電極の間に前記電子ペーパに印加する電圧を維持するコンデンサを有する請求項3に記載の入力システム。
【請求項5】
現在の入力モードを反転する反転信号に基づいて反転した電圧パターンを前記電源側の接点に供給する電圧パターン生成回路と、
前記入力モード操作キーに対応するキー・スイッチの動作を検出して前記反転信号を前記電圧パターン生成回路に送る入力モード判定回路を有する請求項1から請求項4のいずれかに記載の入力システム。
【請求項6】
前記入力モード判定回路が、
前記入力モード操作キーに対応するキー・マトリクスのスキャン・ラインとデコーダ・ラインに接続され前記入力モード操作キーが押下されたことを検出する第1のハードウェア論理回路を含む請求項5に記載の入力システム。
【請求項7】
前記入力モード判定回路が、
スキャン・コード生成回路から受け取ったスキャン・コードに基づいて前記入力モード操作キーが押下されたことを検出する第2のハードウェア論理回路を含む請求項5に記載の入力システム。
【請求項8】
前記入力モード判定回路が、前記入力モード操作キーの押下により生成されたスキャン・コードに基づいて前記入力モードを判断するコンピュータ・システムと、
前記第1のハードウェア論理回路または前記第2のハードウェア論理回路により設定される入力モードを示すビットを含む状態レジスタと、
前記コンピュータ・システムが判断した前記入力モードと前記状態レジスタのビットが示す入力モードを比較する検出回路と、
前記検出回路に接続された表示回路と
を有する請求項6または請求項7に記載の入力システム。
【請求項9】
前記電子ペーパが前記入力モード操作キーにより変更された前記入力モードの影響を受ける入力モード反映キーに配置され、前記電圧パターン生成回路は前記入力モード操作キーの電子ペーパと前記入力モード反映キーのそれぞれの前記電源側の接点に供給する電圧パターンを反転する請求項5から請求項8のいずれかに記載の入力システム。
【請求項10】
前記入力モード操作キーによる入力モードの変更が、2つのキーの押下の組み合わせにより行われる請求項1から請求項9のいずれかに記載の入力システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかの入力システムが組み込まれたノートブック型コンピュータ。
【請求項12】
電気機器のスイッチ回路であって、
押下部と、
前記押下部の表面に配置され前記スイッチの機能を表示する電子ペーパと、
前記押下部が押下されたときに動作するメイン・スイッチと
前記押下部が押下されたときに接点が閉じて前記電子ペーパに電圧を印加する表示スイッチと、
前記表示スイッチの接点が閉じている間に充電され前記接点が開いたあとに前記電子ペーパに電圧を印加するコンデンサと
を有するスイッチ回路。
【請求項13】
前記電子ペーパがマイクロ・カプセルと対向電極とセグメント電極を含む電気泳動方式の電子ペーパである請求項12に記載のスイッチ回路。
【請求項14】
前記電子ペーパが表示する機能が前記メイン・スイッチの動作により決定される請求項12または請求項13に記載のスイッチ回路。
【請求項15】
コンピュータに入力するキーボードの入力モードを変更する入力モード操作キーの表面に配置された電子ペーパに前記入力モードを表示する方法であって、
前記入力モード操作キーの押下によりキー・スイッチが閉じるステップと、
前記入力モード操作キーの押下により前記電子ペーパと電圧源に接続された表示スイッチが閉じて前記電子ペーパが所定の前記入力モードを表示するステップと、
前記入力モード操作キーの解放により前記キー・スイッチが開くステップと、
前記入力モード操作キーの解放により前記表示スイッチが開いた後に前記電子ペーパが前記入力モードの表示を維持するステップと
を有する方法。
【請求項16】
前記入力モードを表示するステップが、
前記表示スイッチが閉じている間にコンデンサを充電するステップと、
前記表示スイッチが開いたあとに前記コンデンサの電圧を前記電子ペーパに印加するステップを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記入力モード操作キーの押下により前記入力モードを決定するステップと、
前記決定された入力モードに対応する電圧パターンを前記表示スイッチに供給するステップと
を有する請求項15または請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記入力モードを決定するステップが、前記キー・スイッチが出力するキー信号を検出するハードウェア論理回路が決定するステップを含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記入力モード操作キーの押下により生成されたスキャン・コードを受け取ったコンピュータ・システムが前記入力モードを決定するステップと、
前記コンピュータ・システムが決定した入力モードと前記ハードウェア論理回路が決定した入力モードが相違すると判断したときにユーザに表示するステップと
を有する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記決定された入力モードに関連する入力モード反映キーに電子ペーパが配置され、
前記入力モードを表示するステップが、前記決定された入力モードに対応する電圧パターンを前記入力モード反映キーの表示スイッチに供給するステップを含む請求項17から請求項19のいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−8115(P2013−8115A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−139012(P2011−139012)
【出願日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(505205731)レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド (292)
【復代理人】
【識別番号】100106699
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 弘道
【復代理人】
【識別番号】100077584
【弁理士】
【氏名又は名称】守谷 一雄
【Fターム(参考)】