説明

入力操作可否判別装置

【課題】操作可否判別に際して誤判別を生じ難くすることができる入力操作可否判別装置を提供する。
【解決手段】車両の運転席10には、生体通信用の電極材としてD席シート電極11が設けられている。タッチスイッチ5のタッチ操作部9には、シート電極11に対応する電極としてタッチ電極14が設けられている。運転席10に着座したドライバーがタッチ操作部9をタッチ操作すると、D席シート電極11及びタッチ電極14が人体を介して繋がり、座席側から識別信号Saが人体を介してスイッチ側の受信機23に送られる。受信機23は、識別信号Saが正規のものか認証し、この認証が成立すれば生体通信が成立したとみなして、この時のタッチ操作を許可する。一方、タッチ操作部9に水等の異物が付着した時は、生体通信が成立する状況とはならないことから、この場合はタッチ操作を取り込まない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席に座った着座者が機器の操作部をタッチ操作した際、当該タッチ操作に対してその操作可否を判別する入力操作可否判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両には、カーナビゲーション装置、エアーコンディショナー装置、オーディオ装置等の各種車載機器が搭載されている。これら車載機器の操作スイッチとしては、今日において種々のスイッチが用いられているが、これら操作スイッチの一種には、例えばスイッチ操作面をタッチ操作(指乗せ操作)するタッチスイッチがある。この種のタッチスイッチの一例は、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
図3にタッチスイッチの概略構造を示すと、タッチスイッチ81のタッチ操作部82には、金属製のセンサ電極83が操作面全域に亘って設けられている。センサ電極83には、このセンサ電極83の検出回路として静電容量検出回路84が接続されている。静電容量検出回路84は、このセンサ電極83に電極電圧Vcを印加して、この時に電気的に繋がった状態となるセンサ電極83を含めたセンサ回路を監視しつつ、その時の回路定数に応じた出力電圧Vxを出力する。
【0004】
ここで、操作者が車内ディスプレイに表示された項目ボタンやアイコンを指定操作すべく、タッチスイッチ81のタッチ操作部82を指等でタッチ操作(接近も含む)すると、操作者がコンデンサ容量として機能して、この時のセンサ電極83及び人体を含めたセンサ回路の合計のコンデンサ容量値がこの時のタッチ操作によって変化する。これにより、静電容量検出回路84から出力される出力電圧Vxは、タッチ操作時において電圧レベルが一定量低下することになり、この電圧低下を見ることによって、タッチ操作部82のタッチ操作有無が判別される。
【特許文献1】特開2000−230983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この種のタッチスイッチ81では、例えば仮に水等の異物85がタッチ操作部82に付着すると、この種の異物85も、指等によるタッチ操作時の容量変化と同様の影響をセンサ電極83に与えることから、この場合もセンサ回路のコンデンサ容量値が変化する現象が生じる。よって、タッチ操作部82に水等の異物85が付着した場合は、操作者がタッチスイッチ81をタッチ操作していないにも拘わらず、異物85がタッチ操作部82に異物付着することを以てこれがタッチ操作として検出されてしまうことになり、これはタッチ操作の誤検出に繋がることから、何らかの対策が必要であった。
【0006】
本発明の目的は、操作可否判別に際して誤判別を生じ難くすることができる入力操作可否判別装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、座席に座った着座者が機器の操作部をタッチ操作した際、当該タッチ操作に対してその操作可否を判別する入力操作可否判別装置であって、人体を経由可能な通知信号を発生する信号発生手段と、前記座席に設けられ、前記信号発生手段から前記通知信号の供給を受ける座席電極と、前記操作部に設けた操作電極と、前記座席電極及び前記操作電極が人体によって繋がる生体通信により、前記通知信号を前記座席側からその時の生体通信を介して取り込み、当該通知信号を用いてタッチ操作可否判別を行う判別手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
この構成によれば、機器を作動すべく操作者が操作部をタッチ操作した場合、この時は人体が通信媒体となって通知信号が座席電極から人体を経由して操作電極に至り、判別手段がこの通知信号を取り込んでタッチ操作可否判定を行う。そして、この時の通知信号が正規のものであれば生体通信が成立状態となり、この生体通信の成立を以てタッチ操作が許可されて機器の作動が実行される。一方、例えば操作部に水等の異物が付着した場合を考えると、この時は座席電極及び操作電極間の生体通信は成立しないことになるので、この際の判別手段はタッチ操作を不許可とする。このため、本構成においては、タッチ操作検出に際して操作部に異物が付着した場合をタッチ検出無しとしてみなすことが可能となるので、タッチ操作可否判別を行うに際して誤判別を生じ難くすることが可能となる。
【0009】
本発明では、前記信号発生手段は、前記通知信号を発生する際、当該通知信号が前記座席から出力されたものであることを通知する座席データを乗せて前記通知信号を発生し、
前記判別手段は、前記生体通信を介して前記通知信号を取得した際、前記通知信号に含まれる前記座席データを基に前記タッチ操作可否判別を行うことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、判別手段が操作者判別を行う際に用いる通知信号には、どの座席が信号発信元であるのかを表す座席データが含まれているので、この種の座席データを読み取ることができて初めてタッチ操作可と判別することになり、タッチ操作可否判別で誤判別をより生じ難くすることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、操作可否判別に際して誤判別を生じ難くすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した操作判別装置の一実施形態を図1及び図2に従って説明する。
図2に示すように、車両1には、カーナビゲーション装置、エアーコンディショナー装置、オーディオ装置等の各種車載機器の操作系として操作入力装置2が搭載されている。本例の操作入力装置2は、ボタン選択決定操作時における視認性や操作性の向上を目的としてグラフィカルユーザインターフェース(Graphical User Interface:GUI)が使用されている。この種のGUI式の操作入力装置2は、センタークラスター3に配置されたディスプレイ4に項目ボタンやアイコン等(図示略)をグラフィック表示し、ディスプレイ4の近くに位置するタッチスイッチ5をタッチ操作することで、ディスプレイ4上の項目ボタンやアイコンを選択決定操作することで入力操作が行われる。なお、タッチスイッチ5は、図2において1つのみ図示するが、各々の選択項目ごとに複数設けられている。
【0013】
操作入力装置2には、タッチスイッチ5がタッチ操作されたか否かを検出するタッチ操作検出装置6が設けられている。タッチ操作検出装置6は、ドライバー7やパッセンジャー8を信号通信経路として人体に微弱な識別信号S(図1参照)を流し、これを検出することによってタッチスイッチ5の操作可否を検出する生体通信式である。本例のタッチスイッチ5は、自身の操作箇所であるタッチ操作部9(即ち、ノブ部分:図1参照)に人体が触れた(接近も含む)ことを以てオン状態を検出するスイッチである。また、タッチ操作検出装置6は、識別信号Sをドライバー7とパッセンジャー8とで信号値を各々異ならせることで、その時のタッチ操作者がドライバー7及びパッセンジャー8のどちらであるのかも判別可能である。なお、ドライバー7及びパッセンジャー8が着座者を構成し、タッチ操作部9が操作部に相当する。また、識別信号Sが通知信号に相当する。
【0014】
運転席10のシート内部には、ドライバー7の人体を信号通信経路として生体通信を行う際にドライバー7が触れる箇所となるD席シート電極11が埋設されている。また、助手席12のシート内部には、パッセンジャー8の人体を信号通信経路として生体通信を行う際にパッセンジャー8が触れる箇所となるP席シート電極13が埋設されている。これらシート電極11,13は、例えば銅箔等を材質とした薄膜形状を成し、各々のシートにおいてそこに着座した着座者が接触可能となる位置に配置されている。
【0015】
一方、タッチスイッチ5のタッチ操作部9には、シート電極11,13に対応する電極として、各種電極材から成るタッチ電極14が埋設されている。タッチ電極14は、操作入力装置2が専用のタッチスイッチを持つ操作式の場合、銅材等を材質としてこれがタッチ操作部9の操作表面上に埋設され、操作入力装置2がタッチパネル式の場合、例えば透明電極から成るドット状の複数のタッチ電極14,14…がディスプレイ4のパネル全面に亘って敷設される。なお、運転席10及び助手席12が座席を構成し、シート電極11,13が座席電極を構成し、タッチ電極14が操作電極に相当する。
【0016】
図1に示すように、運転席10には、運転席10側の識別信号Sの発信源として運転席側発信機15が設けられている。運転席側発信機15には、この運転席側発信機15を統括制御する運転席側マイクロコンピュータ16が設けられている。運転席側マイクロコンピュータ16は、例えばCPUやメモリ等から成り、運転席側発信機15から固有の運転席識別信号Saが発信されるように運転席側発信機15の発信制御を司る。運転席側マイクロコンピュータ16は、運転席側マイクロコンピュータ16からの入力信号を無線伝送に適した周波数帯の波形に変調して出力する変調器17を介してD席シート電極11に接続されている。
【0017】
運転席側マイクロコンピュータ16は、例えば車両1のイグニッションスイッチがACC位置やIGオン位置に操作されたことを条件に待機状態から起動状態に動作状態が移り、P席シート電極13から運転席固有の運転席識別信号Saを発信させる信号発信動作を開始する。即ち、起動した運転席側マイクロコンピュータ16は、自身が運転席側発信機15である事を表す識別データDとして運転席識別データDaを、変調器17でオシレータ18の搬送波に重畳して無線伝送に適した周波数帯を持つ信号波に変調し、この変調後データを運転席識別信号SaとしてD席シート電極11に印加する。なお、本例の運転席識別データDaは、Hレベルの時のパルス幅WがW1をとるデータとして設定されている。運転席側発信機15は、運転席側マイクロコンピュータ16、変調器17及びオシレータ18が1部品としてユニット化されている。なお、識別データDが座席データに相当する。
【0018】
また、助手席12には助手席側発信機19が設けられるが、この助手席側発信機19は、運転席側発信機15と同様の構造をとることから詳しい説明を省略するが、運転席側発信機15と同様に助手席側マイクロコンピュータ20、変調器21、オシレータ22を持つ構造をとる。助手席側マイクロコンピュータ20は、信号発信動作を行うに際して、自身が助手席側発信機19である事を表す助手席識別データDbを、変調器21でオシレータ22の搬送波に重畳することで無線伝送に適した周波数帯を持つ信号波に変調し、この変調後のデータを助手席識別信号SbとしてP席シート電極13に印加する。なお、本例の助手席識別データDbは、Hレベルの時のパルス幅Wが運転席通知データのパルス幅W1よりも長いW2をとるデータとして設定されている。なお、発信機15,19が信号発生手段を構成する。
【0019】
車両1には、発信機15,19が発信した識別信号Sa,Sbを生体通信により受信可能な受信機23が設けられている。この受信機23は、タッチ操作部9のタッチ電極14に接続され、D席シート電極11及びタッチ電極14が生体通信で繋がった際には、運転席10から発信される運転席識別信号Saを生体通信により受信し、P席シート電極13及びタッチ電極14が生体通信で繋がった際には、助手席12から発信される助手席識別信号Sbを生体通信により受信する。なお、受信機23が判別手段に相当する。
【0020】
受信機23には、この受信機23を統括制御する受信機側マイクロコンピュータ24が設けられている。受信機側マイクロコンピュータ24は、例えばCPUやメモリ等から成り、発信機15,19から発信された識別信号Sa,Sbを生体通信によって受信すべく受信機23の受信制御を司る。受信機23には、タッチ電極14を介して取得した受信信号のうち特定周波数のみを通すバンドパスフィルタ25と、入力信号(受信信号)を増幅するオペアンプ26と、各種データを持つ変調波からその搬送波に乗せられたデータを抽出する検波器27と、低周波数の受信データのみ通してこれを受信機側マイクロコンピュータ24に送るローパスフィルタ28とが、記載順に直列接続された状態で設けられている。受信機23は、受信機側マイクロコンピュータ24、バンドパスフィルタ25、オペアンプ26、検波器27及びローパスフィルタ28が1部品としてユニット化されている。
【0021】
受信機側マイクロコンピュータ24は、発信機15,19から生体通信を介して識別信号S(Sa,Sb)を受信した際、識別信号Sに含まれる識別データDが正規データか否かの認証を行うことによってタッチ操作の操作可否判別を行う。即ち、受信機側マイクロコンピュータ24は、例えば識別データDのHレベルパルス幅Wが送信機及び受信機とで一致して認証が成立すれば、これを以て生体通信成立を認識し、この時のタッチ操作を許可してタッチ操作を認識し、一方でこの認証が不成立の場合は生体通信不成立と認識し、この時のタッチ操作を不許可としてタッチ操作を無視する。
【0022】
また、受信機側マイクロコンピュータ24は、発信機15,19から生体通信を介して識別データDを取得した際、この識別データDのHレベルのパルス幅Wがどれだけの値を持つかを見ることにより、その時に得た識別データDが発信機15,19のどちらが発信源であるかを見ることで操作者判別を行う。即ち、受信機側マイクロコンピュータ24は、生体通信で得た識別データDのHレベルパルス幅WがW1であれば、その時のタッチ操作がドライバー7により行われたと判別し、識別データDのHレベルパルス幅WがW2であれば、その時のタッチ操作がパッセンジャー8により行われたと判別する。受信機側マイクロコンピュータ24は、タッチ操作可否判別を行うに際して操作者判別結果も考慮に入れてこれを行う。
【0023】
次に、本例のタッチ操作検出装置6の動作を説明する。
車両1のイグニッションスイッチが例えばACC位置やIGオン位置に操作されると、タッチ操作検出装置6が待機状態から起動状態に動作状態が切り換わる。このとき、運転席側マイクロコンピュータ16は運転席識別データDaを変調器17に出力する動作を開始し、D席シート電極11から運転席識別信号Saを出力可能な状態とし、助手席側マイクロコンピュータ20は助手席識別データDbを変調器21に出力する動作を開始し、P席シート電極13から助手席識別信号Sbを出力可能な状態とする。なお、この時は運転席側マイクロコンピュータ16及び助手席側マイクロコンピュータ20の起動開始とともに、受信機側マイクロコンピュータ24も起動状態に動作状態が切り換わる。
【0024】
ここで、ドライバー7やパッセンジャー8の乗員がタッチスイッチ5をタッチ操作したとすると、この時のタッチ操作者を信号通信経路としてシート電極11(13)がタッチ電極14に生体通信で繋がった状態となる。このとき、シート電極11(13)に付与されている識別信号Sは、タッチ操作者を信号通信経路としてシート電極11(13)からタッチ電極14に流れる状態となる。タッチ電極14に至った識別信号Sは、受信機23に入り込み、バンドパスフィルタ25で特定の周波数信号のみ次段に通され、オペアンプ26で信号値が増幅される。そして、増幅処理後の識別信号Sは、この中に含まれる識別データDが検波器27で抽出され、更にローパスフィルタ28で高周波数信号が取り除かれて、受信機側マイクロコンピュータ24に至る。
【0025】
受信機側マイクロコンピュータ24は、タッチ操作者を信号通信経路とした生体通信を介して識別データDを取り込むと、この識別データDが正規データであるか否かの認証、即ちこの時の識別データDのHレベルパルス幅WがW1又はW2の値を取るか否かの認証を行う。受信機側マイクロコンピュータ24は、この認証が成立するとこの時の生体通信を成立とみなしてタッチ操作を許可し、車載機器をタッチ操作に応じた動作状態に作動させる。なお、受信機側マイクロコンピュータ24は、仮に外部から識別信号Sを受信しても、この時の認証が不成立の場合は生体通信不成立とみなしてタッチ操作を不許可とし、この時のタッチ操作を無視する。
【0026】
ここで、例えばタッチスイッチ5のタッチ操作部9に水等の異物が付着した場合を考える。本例の場合、タッチ操作の操作許可は、シート電極11(13)とタッチ電極14との間の生体通信を介して受信機23が座席側から正規の識別データDを取得することを条件としているので、例えば仮にタッチ操作部9に水等の異物が付着しても、この時の受信機23は識別データDを取得する状態にはならず、異物付着がタッチ操作として判別されることはない。よって、水等の異物付着はタッチ操作から省かれることになるので、タッチ操作検出に際して誤検出を生じ難くすることが可能となる。
【0027】
受信機側マイクロコンピュータ24は、生体通信を用いてタッチ操作可否判別を行うに際して、識別データDのHレベルパルス幅Wがどれだけの値を持つかを見ることにより、その時のタッチ操作者がドライバー7及びパッセンジャー8のどちらであるかの操作者判別も行う。即ち、受信機側マイクロコンピュータ24は、生体通信で取得した識別データDのHレベルパルス幅WがW1あると、この時のタッチ操作者がドライバー7であると認識し、一方でHレベルパルス幅WがW2であると、この時のタッチ操作者がパッセンジャー8であると認識する。
【0028】
ところで、近年の車両においては、車両運行時に運転者に対して画面上に現在位置や目的地への走行経路案内を行うカーナビゲーション装置を搭載するものが増えている。この種のカーナビゲーション装置は、安全面を考慮して走行中における目的地設定等のスイッチ操作を禁止しなければならないが、仮に走行中において全操作を禁止してしまうと、パッセンジャー8による各種設定操作も禁止することになる。そこで、カーナビゲーション装置の操作者がパッセンジャー8の場合は操作を全面的に許可し、操作者がドライバー7の場合は走行中の操作を禁止する動作をとらせることが好ましい。
【0029】
よって、本例の受信機側マイクロコンピュータ24は、タッチ操作者により操作されたタッチスイッチ5がカーナビゲーション装置のスイッチの場合、車両走行中にこのスイッチがタッチ操作されたことを認識すると、もし仮にこの時のタッチ操作者がパッセンジャー8であれば、この時のタッチ操作を無条件に許可する。一方、受信機側マイクロコンピュータ24は、この操作条件下においてタッチ操作者がドライバー7であると判別すると、この時はタッチ操作を無効とする。従って、車両走行中における運転者によるカーナビゲーション装置の操作を禁止することが可能となり、運転操作の安全性を確保することも可能となる。
【0030】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)タッチスイッチ5がタッチ操作されたか否かの操作可否判別は、シート電極11(13)とタッチ電極14との間の生体通信を介して受信機23が座席側から正規の識別データDを取得したか否かを見ることによって行う。このため、例えば仮にタッチ操作部9に水等の異物が付着しても、これをタッチ操作として検出せずに済むことになり、タッチ操作有無を検出するに際してこの検出精度を向上することができる。
【0031】
(2)識別信号Sには、自身がどの座席から発信されたのかを表す識別データDが含まれている。従って、タッチ操作の操作可否判別に際しては、識別信号Sに含まれる識別データDを読み取ることができて初めてタッチ操作が許可されることになるので、タッチ操作可否判別で誤判別をより一層生じ難くすることができる。
【0032】
(3)各座席から発信される識別信号Sに、座席ごとに各々異なる識別データDa,Dbを乗せ、タッチ操作可否判別に際しては、受信機23側でこれら識別データDa,Dbを読み取らせて、その時の信号発信元を区別する。このため、タッチスイッチ5のタッチ操作者がどの座席の着座者であるかを判別することができ、例えばドライバー7が車両走行中にカーナビゲーション装置のタッチスイッチ5をタッチ操作した場合に、この操作を無効とする処理をとらせれば、車両運転の安全性を確保することもできる。
【0033】
(4)受信機23にバンドパスフィルタ25やローパスフィルタ28を設けたので、受信機23が外部から受信信号を取得した際、タッチ操作の可否判別に不要な信号を、受信機側マイクロコンピュータ24に至らせる前段階で破棄することができる。
【0034】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ 送信機側のマイクロコンピュータ16,20は、運転席10及び助手席12とで別々に設けることに限らず、これらは一体のICであってもよい。
【0035】
・ 操作入力装置2は、必ずしもタッチ操作自体がオン操作であることに限定されない。例えば、タッチ操作部9のタッチ操作でスイッチ操作の許可及び不許可が判断され、スイッチ操作許可状態において、タッチ操作部9がそのタッチ状態から更に深く押し込まれるとオン操作となるスイッチ形式を採用してもよい。
【0036】
・ 操作入力装置2は、タッチ操作部9を押込操作するタッチ式に限定されず、例えば操作部位を回動操作するダイヤル式や、操作部位をスライド移動するスライド式等を採用してもよい。
【0037】
・ 操作入力装置2は、選択決定操作時にスイッチのノブ部分を操作するノブ式に限定されず、例えばこれはタッチパネル式でもよい。また、操作入力装置2は、タッチ操作部9がディスプレイ4の近傍に位置するものに限定されず、例えばこの種の操作部分がディスプレイ4から離れた位置、例えばセンターコンソール等に位置する遠隔入力形式でもよい。
【0038】
・ 識別信号Sは、必ずしも座席固有の識別データDが含まれる必要はなく、これを省略した単なる決められた周波数のみ持つ信号であってもよい。この場合、識別信号Sの検出は識別信号Sの周波数や振幅を見ることによって行う。
【0039】
・ 受信機23は、必ずしもバンドパスフィルタ25やローパスフィルタ28を持つ構造に限定されず、これらを省略して構造でもよい。
・ 識別データDa,Dbのデータ内容は、必ずしもHレベルパルス幅Wの間隔でデータ内容が決まる構造に限らず、例えば1周期当たりのパルス数を変えたりすることなどで、データ内容変更を行ってもよい。
【0040】
・ シート電極11,13にグランドパターンを設け、ドライバー7のボディーアースの有無が原因で生じる識別信号Sの電圧レベル変動を抑制してもよい。
・ 操作入力装置2の搭載対象は、必ずしも車両1に限らず、スイッチ操作箇所と座席を持つものであれば、これは特に限定されない。
【0041】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項1において、前記信号発生手段は、前記通知信号として特定の周波数帯を持つ周波数信号を発信し、前記判別手段は、前記生体通信を介して前記周波数信号を取得した際、前記周波数信号が持つ固有の特性値(例えば振幅値や周波数帯)が特定のものか否かを見ることで前記操作可否判別を行う。この構成によれば、通知信号に特定データを乗せる必要がないので、信号発生手段が通知信号を発生する際に要する処理を簡素なものとすることが可能となる。
【0042】
(2)請求項1,2及び前記技術的思想(1)のいずれかにおいて、前記座席電極は、前記座席ごとに各々設けられ、前記信号発生手段は、前記座席電極に前記通知信号の供給を行う際、複数の前記座席電極が各々個別の信号内容を持って前記通知信号を出力するように信号供給を行い、前記判別手段は、前記タッチ操作可否判別とともに、前記通知信号を用いて、どの座席に座った着座者が前記操作部を操作したのかを判別する操作者判別も行う。この構成によれば、操作部がどの着座者によって操作されたのかを判別することが可能となり、操作部の操作で機器を作動させるに当たって、例えばその時の操作者がドライバーの場合は機器操作を禁止し、操作者がパッセンジャーの場合は機器操作を許可する動作をとらせる処理を行うことも可能となる。
【0043】
(3)前記技術的思想(2)において、前記信号発生手段は、前記座席電極に前記通知信号の供給を行う際、複数の前記座席電極が各々個別の座席データを持って前記通知信号を出力するように信号供給を行う。この構成によれば、判別手段が操作者判別を行う際に用いる通知信号には、どの座席が信号発信元であるのかを表す座席データが含まれているので、操作者判別をより確実に行うことが可能となる。
【0044】
(4)請求項1,2及び前記技術的思想(1)〜(3)のいずれかにおいて、前記信号発生手段及び前記座席電極は、前記座席ごとに各々ユニット化されて設けられている。この構成によれば、信号発生手段及び座席電極のユニット部品は各々座席ごとの個別部品として取り扱えるので、この種の部品を管理するにあたってはこの作業が楽になる。
【0045】
(5)請求項1,2及び前記技術的思想(1)〜(4)のいずれかにおいて、表示手段の画面に、前記機器の具体的作動内容を視覚的に表す選択ボタンを表示する表示制御手段を備え、前記操作電極は、前記操作部においてその操作面全域に亘り複数敷設され、前記判別手段は、前記タッチ操作可否判別として複数の前記操作電極のうちどの操作電極がタッチ操作されているのかを判別し、前記操作部の操作入力形式をボタン選択式として取り扱うべく、前記操作部におけるタッチ操作位置と表示手段の画面座標位置とを比較して画面上のどの選択ボタンが選択指定されたのかを認識し、その時に選択状態にある前記選択ボタンに応じた機能を前記機器に実行させる。この構成によれば、操作部の操作入力形式が、表示手段に表示された選択ボタンの中の特定の1つを操作部の操作面をタッチ操作することによって選択指定するボタン選択式であっても、タッチ操作と異物付着とを区別することが可能となり、この種の操作入力形式においてもタッチ誤検出を発生し難くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一実施形態におけるタッチ操作検出装置の概略構成を示す構成図。
【図2】乗員が操作入力装置を操作した時の状態を示す平面図。
【図3】従来におけるタッチスイッチの概略構成図。
【符号の説明】
【0047】
7…着座者を構成するドライバー、8…着座者を構成するパッセンジャー、9…操作部としてのタッチ操作部、10…座席を構成する運転席、11…座席電極を構成するシート電極、12…座席を構成する助手席、13…座席電極を構成するシート電極、14…操作電極としてのタッチ電極、15…信号発生手段を構成する発信機、19…信号発生手段を構成する発信機、23…判別手段としての受信機、S(Sa,Sb)…通知信号としての識別信号、D(Da,Db)…座席データとしての識別データ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席に座った着座者が機器の操作部をタッチ操作した際、当該タッチ操作に対してその操作可否を判別する入力操作可否判別装置であって、
人体を経由可能な通知信号を発生する信号発生手段と、
前記座席に設けられ、前記信号発生手段から前記通知信号の供給を受ける座席電極と、
前記操作部に設けた操作電極と、
前記座席電極及び前記操作電極が人体によって繋がる生体通信により、前記通知信号を前記座席側からその時の生体通信を介して取り込み、当該通知信号を用いてタッチ操作可否判別を行う判別手段と
を備えたことを特徴とする入力操作可否判別装置。
【請求項2】
前記信号発生手段は、前記通知信号を発生する際、当該通知信号が前記座席から出力されたものであることを通知する座席データを乗せて前記通知信号を発生し、
前記判別手段は、前記生体通信を介して前記通知信号を取得した際、前記通知信号に含まれる前記座席データを基に前記タッチ操作可否判別を行うことを特徴とする請求項1に記載の入力操作可否判別装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−241576(P2008−241576A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−84793(P2007−84793)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】