入力装置およびその製造方法
【課題】より的確に導電体の接近を検知することが可能な入力装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】互いに平行に配置された複数の帯状電極111を対向面1b側に有する基板1と、帯状電極111に対して絶縁されているとともに、帯状電極111とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の帯状電極211を、対向面1bに対向する対向面2a側に有する基板2と、方向zにおいて、帯状電極111,211に対して指Fgが接近したときに生じる静電容量の変化によって指Fgの接近を検出するICチップ71と、を備える入力装置Aの製造方法であって、対向面1b,2aが複数のスペーサ32を挟んでいる状態で、対向面2bから方向zに向かって起立する壁部41を介在させ、基板1と基板2とを固定する工程を備える。
【解決手段】互いに平行に配置された複数の帯状電極111を対向面1b側に有する基板1と、帯状電極111に対して絶縁されているとともに、帯状電極111とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の帯状電極211を、対向面1bに対向する対向面2a側に有する基板2と、方向zにおいて、帯状電極111,211に対して指Fgが接近したときに生じる静電容量の変化によって指Fgの接近を検出するICチップ71と、を備える入力装置Aの製造方法であって、対向面1b,2aが複数のスペーサ32を挟んでいる状態で、対向面2bから方向zに向かって起立する壁部41を介在させ、基板1と基板2とを固定する工程を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば液晶表示パネルと積層されて用いられる、いわゆるタッチパネルを構成する入力装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来の入力装置の一例を示している。同図に示された入力装置Xは、液晶表示パネルYと重ね合わせられることにより、いわゆるタッチパネルを構成している。このタッチパネルは、たとえば携帯電話機Zの表示手段および操作手段として用いられる。入力装置Xは、平行に配置された透明基板91,92を有する。透明基板91には透明帯状電極93が、透明基板92には透明帯状電極94が、それぞれ形成されている。透明帯状電極93,94は、平行に配置された複数の帯状要素からなる。透明帯状電極93の帯状要素と透明帯状電極94の帯状要素は、互いに直角に配置されている。透明帯状電極93は、フレキシブル基板97を介して図示しないICチップに接続されている。透明帯状電極94は、図示しない複数の金属配線を介してフレキシブル基板98に接続されている。フレキシブル基板98は、上記の図示しないICチップに接続されている。上記の図示しない複数の金属配線は、たとえば、透明帯状電極94の外縁に沿って延びるように形成されている。
【0003】
携帯電話機Zは、筐体の一部を構成する透明カバー95を有している。入力装置Xは、透明接着剤96によって透明カバー95に接合されている。入力装置Xの図における下方には、液晶表示パネルYが配置されている。携帯電話機Zの使用者が携帯電話機Zを操作するときに、指Fgを透明カバー95に対して接近させ、あるいは接触させると、指Fgと透明帯状電極93,94との間に静電容量が生じる。この静電容量の大きさを上記ICチップによって検出することにより、指Fgが平面視においてどの位置に接近してきたかを検出することができる。
【0004】
入力装置Xを製造する際には、透明帯状電極93を備えた透明基板91と、透明帯状電極94を備えた透明基板92とを接着剤9aにより接着する必要がある。この接着作業をする際、接着剤9aは流体状である。そのため、組み立てが完了した入力装置Xにおいて、透明帯状電極93,94の間隔が均一となっておらず、傾いた状態となっているおそれがある。このことは、指Fgと透明帯状電極93,94との間に生じる静電容量が意図しない値になることにつながる。これは、入力装置Xにおいて指Fgの接近を的確に検出できなくなるといった不具合を招く。
【0005】
【特許文献1】特開2008−33777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より的確に導電体の接近を検知することが可能な入力装置の製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される入力装置の製造方法は、互いに平行に配置された複数の第1の帯状電極を第1の対向面側に有する第1の基板と、上記第1の帯状電極に対して絶縁されているとともに、上記第1の帯状電極とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の第2の帯状電極を、上記第1の対向面に対向する第2の対向面側に有する第2の基板と、上記第1および第2の基板が重なる方向において、上記第1および第2の帯状電極に対して導電体が接近したときに生じる静電容量の変化によって上記導電体の接近を検出する制御手段と、を備える入力装置の製造方法であって、上記第1および第2の対向面が複数のスペーサを挟んでいる状態で、上記第1または第2の対向面から上記重なる方向に向かって起立する壁部を介在させ、上記第1および第2の基板を固定する工程を備えることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、上記第1および第2の対向面のなす角度は、上記スペーサにより決定される。そのため、上記第1および第2の帯状電極の間隔を一定に保ちやすくなる。その結果、上記導電体の接近をより的確に検知することができる入力装置を製造することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記固定する工程の後に、上記壁部と上記第1および第2の対向面とに囲まれているとともに上記スペーサを収容する空間の開口部から、流体を上記空間に注入する工程をさらに備える。このような構成によれば、上記第1および第2の対向面が空気と接触することを抑制できる。これにより、上記第1および第2の対向面が空気によりダメージを受けることを抑制できる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記壁部により、上記第1の基板と上記第2の基板とが接着されている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記流体、上記第1の基板、および、上記第2の基板は、いずれも透明である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記流体は紫外線硬化性樹脂であり、紫外線を照射し上記流体を硬化させる工程をさらに備える。このような構成によれば、上記入力装置の使用中や運搬中などに、上記空間から上記流体が流れ出てしまう、といった不具合の生じる懸念がなくなる。これにより、上記入力装置の歩留まりの向上が期待できる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記硬化させる工程は、上記流体を上記開口部から露出させた状態で行われる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記流体は液体であり、上記注入する工程は、内圧が第1の気圧とされた圧力容器において、上記流体の溜まりに上記開口部を浸し、上記空間を密閉する工程と、上記流体の溜まりに上記開口部を浸している状態で、上記圧力容器の内圧を上記第1の気圧より大きい第2の気圧に変化させる工程と、を含む。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2の気圧は、大気圧である。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供される入力装置は、互いに平行に配置された複数の第1の帯状電極を第1の対向面側に有する第1の基板と、上記第1の帯状電極に対して絶縁されているとともに、上記第1の帯状電極とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の第2の帯状電極を、上記第1の対向面に対向する第2の対向面側に有する第2の基板と、上記第1および第2の基板が重なる方向において、上記第1および第2の帯状電極に対して導電体が接近したときに生じる静電容量の変化によって上記導電体の接近を検出する制御手段と、を備える入力装置であって、上記第1および第2の対向面のいずれにも接している複数のスペーサと、上記第1および第2の対向面の間に介在している、上記重なる方向に沿って起立する壁部と、上記壁部と上記第1および第2の対向面とに囲まれているとともに上記スペーサを収容する空間に形成されており、かつ、上記空間の開口部から露出している絶縁層と、をさらに備えていることを特徴としている。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態にかかる入力装置の一例を示した図である。同図に示された入力装置Aは、基板1,2、壁部41、スペーサ32、樹脂層31、ICチップ71、および、フレキシブル基板72を備えている。図2は、図1のII−II線に沿う平面から見た要部平面図である。図2においては、理解の便宜上、スペーサ32、樹脂層31を省略している。入力装置Aは、導電体である指Fgが接近したことを静電容量の変化により検出するためのものである。図1に示すように、入力装置Aは、液晶表示パネルBと重ね合わせられることにより、いわゆるタッチパネルを構成している。
【0020】
図1に表れているように、基板1は、透過板13および電極層11を備えている。基板1は、表面1aと裏面1bとを有する。表面1aは、接触面とされており、指Fgが接近したときに接する面である。この表面1aには、たとえばコーティング層(図示略)を形成してもよい。このコーティング層は、外来光が反射することにより、視認性が悪化することを抑制したり、透過板13に傷が生じることを防いだりする機能を果たす。裏面1bは、基板2の表面2aと対向している。裏面1bは、本発明における第1の対向面に相当する。透過板13は、たとえばポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENとする)、ポリカーボネイト(以下、PCとする)などの透明樹脂の単層樹脂体、またはこれらに代表される透明樹脂から選ばれた2種類の材料からなる積層樹脂体、あるいは、ガラスからなる透明な板である。透過板13の屈折率は、たとえば1.5である。
【0021】
電極層11は、基板1の裏面1b側に形成されている。図2に表れているように、電極層11は、複数の帯状電極111および配線112を有している。複数の帯状電極111は、互いに平行に配置されている。帯状電極111はそれぞれ、ほぼ菱形状に膨らんだ部分とくびれた部分とが、方向xに沿って交互に配置された形状である。この膨らんだ部分は、菱形状に限らず、丸型状、多角形状、その他の形状でも構わない。帯状電極111は、たとえばITO,IZOなどの透明な導電性材料からなる薄膜に対してパターニングを施したものである。帯状電極111の屈折率は、たとえば2.0である。
【0022】
図2に表れているように、配線112は、基板1の方向xにおける一方の端部の方向yの両端部に形成されている。配線112は、たとえばITO,IZOなどの透明導電性材料、あるいはAg,Au,Alなどの金属からなる。
【0023】
図1に表れているように、基板2は、透過板23、電極層21、およびシールド層25を備えている。基板2は、表面2aおよび裏面2bを有する。表面2aは、基板1の裏面1bに対向している。表面2aは、本発明における第2の対向面に相当する。透過板23は、透過板13と同様に、たとえばポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENとする)、ポリカーボネイト(以下、PCとする)などの透明樹脂の単層樹脂体、またはこれらに代表される透明樹脂から選ばれた2種類の材料からなる積層樹脂体、あるいは、ガラスからなる透明な板である。透過板23の屈折率は、たとえば1.5である。
【0024】
電極層21は、基板2の表面2a側に形成されている。図2に表れているように、電極層21は、複数の帯状電極211および配線212を有している。複数の帯状電極211は、互いに平行に配置されている。帯状電極211はそれぞれ、ほぼ菱形状に膨らんだ部分とくびれた部分とが、方向yに沿って交互に配置された形状である。この膨らんだ部分は、菱形状に限らず、丸型状、多角形状、その他の形状でも構わない。帯状電極211の膨らんだ部分は、帯状電極111の膨らんだ部分と方向z視において重ならないように配置されている。また、複数の帯状電極211の膨らんだ部分どうしの隙間には、複数の帯状電極111の膨らんだ部分がはまり込むように配置されている。帯状電極211は、たとえばITO,IZOなどの透明な導電性材料からなる薄膜に対してパターニングを施したものである。帯状電極211の屈折率は、たとえば2.0である。
【0025】
図2に示すように、配線212は、複数の帯状電極211のいずれかと導通している。配線212は、たとえばITO,IZOなどの透明導電性材料、あるいはAg,Au,Alなどの金属からなる。
【0026】
図1に示すように、シールド層25は、基板2の裏面2b側に形成されている。シールド層25は、たとえばITO,IZOなどの透明な導電性材料からなる薄膜であり、方向z視において、電極層11,21と重なる領域に形成されている。シールド層25は、外来の電磁ノイズを電極層11,21が拾ってしまうことを防止するためのものである。また、電極層11,21とシールド層25との間には、寄生容量が生じる。これにより、指Fgと電極層11,21との間に生じる静電容量が、入力装置Aが置かれる環境による変化を受けにくい。これにより、より正確な検出が可能となる。シールド層25は、図示しない配線によってグランド端子または電源電圧端子に接続されている。
【0027】
図1に表れているように、壁部41は、基板1および基板2の間に配置されている。壁部41は、基板2の縁近傍に形成されている。図2に表れているように、壁部41は、方向z視において、ほぼ四角形のリング状である。壁部41は、方向z視において液晶表示パネルBの表示領域と重ならない。壁部41は、透明または不透明な異方性導電接着剤である。壁部41は、基板1および基板2を接着しているとともに、配線112,212を導通させている。この異方性導電接着剤は、たとえば絶縁性樹脂に微小な導電粒子が混入されたものである。本実施形態では、上記異方性導電接着剤は、基板1,2を押し付けあう方向にのみ電気を流す性質を有する。壁部41は、方向z視において、配線112,212と重なるように配置されている。これにより、壁部41は、配線112,212を導通させている。
【0028】
図1、図2に表れているように、壁部41、基板1,2に囲まれることにより、空間s1が形成されている。空間s1は、開口部s2を有している。開口部s2は、入力装置Aの図2の右端、かつ、開口部s2は、方向yにおける壁部41のほぼ中央に形成されている。
【0029】
図1に表れているように、複数のスペーサ32は、空間s1に収容されている。スペーサ32は、基板1の裏面1bおよび基板2の表面2aに接している。スペーサ32は、方向z視において、たとえば1mm平方内に20〜40個程度の割合で散在している。各スペーサ32は、10μm以下の直径を有する球状である。スペーサ32の直径は、基板1,2の間隔を決定する。各スペーサ32は、シリカまたはアクリル樹脂(たとえば、清水化学工業:ミクロパールシリーズ)からなる。スペーサ32の屈折率は、たとえば、1.40〜1.60である。
【0030】
樹脂層31は、空間s1に形成されている。樹脂層31は、光を良好に透過するとともに、電極層11,21を互いに絶縁可能なものを用いればよい。本実施形態においては、樹脂層31は、硬化した紫外線硬化性樹脂(たとえば、積水化学工業:フォトレックシリーズ)である。樹脂層31の屈折率は、たとえば1.49〜1.51である。
【0031】
フレキシブル配線基板72は、方向xにおける基板1の端部に設けられている。ICチップ71は、フレキシブル基板72を介して、複数の帯状電極111,211と接続している。ICチップ71は、帯状電極111,211を、独立に、かつ、常に検出可能に構成されている。
【0032】
液晶表示パネルBは、たとえば互いに対向する透明基板およびTFT基板と、これらに挟まれた液晶層とを備えており、たとえば携帯電話機の操作に供する操作メニュー画面や、画像などを表示する機能を有する。液晶表示パネルBに表示された画像は、入力装置Aをとおして視認可能である。液晶表示パネルBの表示面は、方向z視において帯状電極111および帯状電極211と重なるように構成されている。
【0033】
入力装置Aおよび液晶表示パネルBは、携帯電話機などに組み込まれて、たとえば以下のようにして使用される。
【0034】
液晶表示パネルBには、たとえば携帯電話機の諸機能を発揮させるボタンを模したアイコンを含む操作メニュー画面を表示させる。使用者がなんら操作をしない状態においては、各帯状電極111,211には静電容量がほとんど生じていない。次いで、使用者は、選択したい機能に対応するアイコンを触るようにして、指Fgを基板1の表面1aに接近させる。このとき、各帯状電極111,211と指Fgの距離が短くなる。これにより、指Fgと各帯状電極111,211との間に静電容量が生じる。複数の帯状電極111,211のうち指Fgとの距離が近いものほど静電容量が大きい。すなわち、指Fgと複数の帯状電極111との静電容量を比較することによって、複数の帯状電極111が配列された方向における指Fgの位置を検出することができる。同様に、指Fgと複数の帯状電極211の静電容量を比較することによって、複数の帯状電極211が配列された方向における指Fgの位置を検出することができる。この結果、指Fgの方向z視における位置が確定され、使用者が触れようとしたアイコンが特定される。そして、携帯電話機は、このアイコンに対応する機能を発揮する。
【0035】
次に、図3〜図11を用いて、入力装置Aの製造方法について説明する。
【0036】
まず、図3、図4に示すように、電極層11を備えている基板1の裏面1bに、壁部41を形成する。図4に示すように、壁部41は、ロの字状に形成する。次に、壁部41の一部を切除して、開口部s2となるべき部分s2’を形成する。
【0037】
次に、図5に示すように、壁部41に囲まれた、基板1の裏面1bに、複数のスペーサ32を散布する。次に、図6、図7に示すように、接着剤である壁部41を介在させつつ、基板2を基板1にはり合わせる。基板1と基板2とのはり合わせは、裏面1bと表面2aとがスペーサ32を挟んだ状態を保ちつつ行われる。これにより、図7に示すように、樹脂層31が形成されていない入力装置A’が形成される。また、基板1の裏面1b、基板2の表面2a、および壁部41に囲まれた空間s1、および、開口部s2が形成される。
【0038】
次に、図8に示すように、チャンバー6を用いて、空間s1に図1に示した樹脂層31を構成する硬化前の樹脂31’を注入する。
【0039】
チャンバー6は、入力装置A’、および樹脂31’を貯めることのできる容器62を収容できる大きさである。チャンバー6の内部の圧力は、チャンバー6に接続された真空ポンプ(図示略)により変化する。チャンバー6には、樹脂31’が貯められた容器62が既に収容されている。なお、空間s1に注入しやすくするために、樹脂31’の粘度は、たとえば200mpa・s以下が望ましい。
【0040】
図8に示すように、入力装置A’をチャンバー6の内部に収容し、開口部s2が容器62に溜まっている樹脂31’の界面に対向するように、入力装置A’を配置する。次に、上記真空ポンプを駆動させ、チャンバー6内部の圧力をほぼ真空P1に減少させる。このときのチャンバー6内部の圧力は、本発明における第1の気圧に相当する。次に、図9に示すように、入力装置A’を降下させ、開口部s2を樹脂31’の溜まりに浸す。開口部s2は樹脂31’により塞がれ、空間s1は密閉される。
【0041】
次に、図10に示すように、チャンバー6の内部の圧力を大気圧P2まで上昇させる。密閉された空間s1の内部にわずかに存在する気体の圧力は大気圧P2より低いから、容器62に溜まっていた樹脂31’が空間s1に吸引される。これにより、空間s1に樹脂31’が注入される。なお、大気圧は、本発明における第2の気圧に相当する。
【0042】
次に、図11に示すように、入力装置A’を上昇させ、容器62に溜まっている樹脂31’から開口部s2を抜き出す。このとき、樹脂31’が開口部s2から露出している。次に、空間s1に充填した樹脂31’に紫外線を照射し、樹脂31’を硬化させる。その後、開口部s2から空間s1の外部にはみ出ている樹脂31’を切除する。これにより、図1で示した樹脂層31が形成される。その後、フレキシブル基板72およびICチップ71を配置するなどして、入力装置Aの製造が完成する。
【0043】
次に、入力装置Aおよびその製造方法の作用について説明する。
【0044】
本実施形態によれば、基板1の裏面1bおよび基板2の表面2aのなす角度は、スペーサ32により決定される。そのため、帯状電極111,211の間隔を一定に保ちやすくなる。その結果、指Fgの接近をより的確に検知することができる入力装置Aの製造が容易になる。
【0045】
スペーサ32によって、帯状電極111,211が離間している状態が保たれる。そのため、基板1,2の間に、さらに絶縁のためのガラス基板などを配置する必要がない。よって、帯状電極111,211の距離を小さくすることができる。これにより、入力装置Aの検出感度の向上を図ることができる。また、帯状電極111,211の感度差を小さくすることができ、ばらつきを抑えることができる。さらに、入力装置Aはスペーサ32を備えているから、指Fgで基板1の表面1aを押圧しても、基板1が変形しにくい。
【0046】
空間s1には、樹脂層31が形成されている。そのため、帯状電極111,211が空気と接触することがない。そのため、帯状電極111,211が空気と接触し、意図しない特性となってしまうことを防止できる。
【0047】
樹脂層31の屈折率は、空気よりも、透過板13,23や帯状電極111,211の屈折率に近い。そのため、基板1,2と空間s1との境界における光の反射率が小さくなる。これにより、ニュートンリングの発生を抑制できる。
【0048】
壁部41が接着剤により構成されているから、空間s1に基板1,2どうしを接着するための樹脂を形成する必要がない。
【0049】
空間s1に樹脂31’を注入するときは、樹脂31’は液体である。だが、その後、樹脂31’を硬化させる。そのため、入力装置Aの搬送中などに、空間s1から樹脂31’が流れ出てしまうおそれがない。これにより、入力装置Aの歩留まりの向上が期待できる。また、樹脂31’は硬化するから、樹脂31’を封入する蓋を形成する必要がない。
【0050】
樹脂31’を硬化した後に、開口部s2から空間s1の外部にはみ出ている樹脂を切除する。そのため、入力装置Aにおいて、硬化した樹脂31’により開口部s2の外部に突起した形状が形成されることを防止できる。
【0051】
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る入力装置のおよびその製造方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0052】
たとえば、本発明にかかる入力装置が液晶表示パネルBとともに用いられる必要はない。また、本発明にかかる第1および第2の電極層はいずれも、必ずしも透明である必要はない。これらの電極層は銅などの不透明な金属により構成されていてもよい。
【0053】
本発明にかかる壁部は接着剤である必要はない。たとえば、上記壁部と本発明にかかる第1の基板や第2の基板との間に、接着剤を塗布してもよい。このようにしても、上記第1および第2の基板は、上記壁部を介在させ固定されているといえる。
【0054】
本発明にかかる空間には紫外線硬化性樹脂などを充填させるのが好ましいが、本発明の範囲は必ずしもこれに限られない。たとえば上記空間に、上記第1および第2の基板と反応しにくいその他の流体を充填させてもよい。もしくは上記空間が空気層であってもよい。
【0055】
上記紫外線硬化性樹脂を硬化させる工程は、本発明にかかる開口部に蓋をした状態で行ってもよい。
【0056】
また、本発明にかかる入力装置は、携帯電話機に用いられるものに限られない。たとえば、デジタルカメラ、パーソナルナビゲーションデバイス、自動預入支払機、等その他のタッチパネルを用いる機器において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態にかかる入力装置の一例を示した図である。
【図2】図1のII−II線に沿う平面から見た要部平面図である。
【図3】本発明にかかる入力装置の製造方法の一工程を示した図である。
【図4】図3の要部平面図である。
【図5】図4に続く工程を示した図である。
【図6】図5に続く工程を示した図である。
【図7】図6に続く工程を示した図である。
【図8】図7に続く工程を示した図である。
【図9】図8に続く工程を示した図である。
【図10】図9に続く工程を示した図である。
【図11】図10に続く工程を示した図である。
【図12】従来の入力装置を示した図である。
【符号の説明】
【0058】
A 入力装置
B 液晶表示パネル
Fg 指
x 方向
y 方向
z (重なる)方向
1 (第1の)基板
1a 表面
1b 裏面(第1の対向面)
11 電極層
111 (第1の)帯状電極
112 配線
13 透過板
2 (第2の)基板
2a 表面(第2の対向面)
2b 裏面
21 電極層
211 (第2の)帯状電極
212 配線
23 透過板
25 シールド層
31 樹脂層
31’ 樹脂
32 スペーサ
41 壁部
s1 空間
s2 開口部
6 チャンバー(圧力容器)
62 容器
71 ICチップ(制御手段)
72 フレキシブル基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば液晶表示パネルと積層されて用いられる、いわゆるタッチパネルを構成する入力装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、従来の入力装置の一例を示している。同図に示された入力装置Xは、液晶表示パネルYと重ね合わせられることにより、いわゆるタッチパネルを構成している。このタッチパネルは、たとえば携帯電話機Zの表示手段および操作手段として用いられる。入力装置Xは、平行に配置された透明基板91,92を有する。透明基板91には透明帯状電極93が、透明基板92には透明帯状電極94が、それぞれ形成されている。透明帯状電極93,94は、平行に配置された複数の帯状要素からなる。透明帯状電極93の帯状要素と透明帯状電極94の帯状要素は、互いに直角に配置されている。透明帯状電極93は、フレキシブル基板97を介して図示しないICチップに接続されている。透明帯状電極94は、図示しない複数の金属配線を介してフレキシブル基板98に接続されている。フレキシブル基板98は、上記の図示しないICチップに接続されている。上記の図示しない複数の金属配線は、たとえば、透明帯状電極94の外縁に沿って延びるように形成されている。
【0003】
携帯電話機Zは、筐体の一部を構成する透明カバー95を有している。入力装置Xは、透明接着剤96によって透明カバー95に接合されている。入力装置Xの図における下方には、液晶表示パネルYが配置されている。携帯電話機Zの使用者が携帯電話機Zを操作するときに、指Fgを透明カバー95に対して接近させ、あるいは接触させると、指Fgと透明帯状電極93,94との間に静電容量が生じる。この静電容量の大きさを上記ICチップによって検出することにより、指Fgが平面視においてどの位置に接近してきたかを検出することができる。
【0004】
入力装置Xを製造する際には、透明帯状電極93を備えた透明基板91と、透明帯状電極94を備えた透明基板92とを接着剤9aにより接着する必要がある。この接着作業をする際、接着剤9aは流体状である。そのため、組み立てが完了した入力装置Xにおいて、透明帯状電極93,94の間隔が均一となっておらず、傾いた状態となっているおそれがある。このことは、指Fgと透明帯状電極93,94との間に生じる静電容量が意図しない値になることにつながる。これは、入力装置Xにおいて指Fgの接近を的確に検出できなくなるといった不具合を招く。
【0005】
【特許文献1】特開2008−33777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、より的確に導電体の接近を検知することが可能な入力装置の製造方法を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される入力装置の製造方法は、互いに平行に配置された複数の第1の帯状電極を第1の対向面側に有する第1の基板と、上記第1の帯状電極に対して絶縁されているとともに、上記第1の帯状電極とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の第2の帯状電極を、上記第1の対向面に対向する第2の対向面側に有する第2の基板と、上記第1および第2の基板が重なる方向において、上記第1および第2の帯状電極に対して導電体が接近したときに生じる静電容量の変化によって上記導電体の接近を検出する制御手段と、を備える入力装置の製造方法であって、上記第1および第2の対向面が複数のスペーサを挟んでいる状態で、上記第1または第2の対向面から上記重なる方向に向かって起立する壁部を介在させ、上記第1および第2の基板を固定する工程を備えることを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、上記第1および第2の対向面のなす角度は、上記スペーサにより決定される。そのため、上記第1および第2の帯状電極の間隔を一定に保ちやすくなる。その結果、上記導電体の接近をより的確に検知することができる入力装置を製造することができる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記固定する工程の後に、上記壁部と上記第1および第2の対向面とに囲まれているとともに上記スペーサを収容する空間の開口部から、流体を上記空間に注入する工程をさらに備える。このような構成によれば、上記第1および第2の対向面が空気と接触することを抑制できる。これにより、上記第1および第2の対向面が空気によりダメージを受けることを抑制できる。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記壁部により、上記第1の基板と上記第2の基板とが接着されている。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記流体、上記第1の基板、および、上記第2の基板は、いずれも透明である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記流体は紫外線硬化性樹脂であり、紫外線を照射し上記流体を硬化させる工程をさらに備える。このような構成によれば、上記入力装置の使用中や運搬中などに、上記空間から上記流体が流れ出てしまう、といった不具合の生じる懸念がなくなる。これにより、上記入力装置の歩留まりの向上が期待できる。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記硬化させる工程は、上記流体を上記開口部から露出させた状態で行われる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記流体は液体であり、上記注入する工程は、内圧が第1の気圧とされた圧力容器において、上記流体の溜まりに上記開口部を浸し、上記空間を密閉する工程と、上記流体の溜まりに上記開口部を浸している状態で、上記圧力容器の内圧を上記第1の気圧より大きい第2の気圧に変化させる工程と、を含む。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2の気圧は、大気圧である。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供される入力装置は、互いに平行に配置された複数の第1の帯状電極を第1の対向面側に有する第1の基板と、上記第1の帯状電極に対して絶縁されているとともに、上記第1の帯状電極とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の第2の帯状電極を、上記第1の対向面に対向する第2の対向面側に有する第2の基板と、上記第1および第2の基板が重なる方向において、上記第1および第2の帯状電極に対して導電体が接近したときに生じる静電容量の変化によって上記導電体の接近を検出する制御手段と、を備える入力装置であって、上記第1および第2の対向面のいずれにも接している複数のスペーサと、上記第1および第2の対向面の間に介在している、上記重なる方向に沿って起立する壁部と、上記壁部と上記第1および第2の対向面とに囲まれているとともに上記スペーサを収容する空間に形成されており、かつ、上記空間の開口部から露出している絶縁層と、をさらに備えていることを特徴としている。
【0017】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態にかかる入力装置の一例を示した図である。同図に示された入力装置Aは、基板1,2、壁部41、スペーサ32、樹脂層31、ICチップ71、および、フレキシブル基板72を備えている。図2は、図1のII−II線に沿う平面から見た要部平面図である。図2においては、理解の便宜上、スペーサ32、樹脂層31を省略している。入力装置Aは、導電体である指Fgが接近したことを静電容量の変化により検出するためのものである。図1に示すように、入力装置Aは、液晶表示パネルBと重ね合わせられることにより、いわゆるタッチパネルを構成している。
【0020】
図1に表れているように、基板1は、透過板13および電極層11を備えている。基板1は、表面1aと裏面1bとを有する。表面1aは、接触面とされており、指Fgが接近したときに接する面である。この表面1aには、たとえばコーティング層(図示略)を形成してもよい。このコーティング層は、外来光が反射することにより、視認性が悪化することを抑制したり、透過板13に傷が生じることを防いだりする機能を果たす。裏面1bは、基板2の表面2aと対向している。裏面1bは、本発明における第1の対向面に相当する。透過板13は、たとえばポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENとする)、ポリカーボネイト(以下、PCとする)などの透明樹脂の単層樹脂体、またはこれらに代表される透明樹脂から選ばれた2種類の材料からなる積層樹脂体、あるいは、ガラスからなる透明な板である。透過板13の屈折率は、たとえば1.5である。
【0021】
電極層11は、基板1の裏面1b側に形成されている。図2に表れているように、電極層11は、複数の帯状電極111および配線112を有している。複数の帯状電極111は、互いに平行に配置されている。帯状電極111はそれぞれ、ほぼ菱形状に膨らんだ部分とくびれた部分とが、方向xに沿って交互に配置された形状である。この膨らんだ部分は、菱形状に限らず、丸型状、多角形状、その他の形状でも構わない。帯状電極111は、たとえばITO,IZOなどの透明な導電性材料からなる薄膜に対してパターニングを施したものである。帯状電極111の屈折率は、たとえば2.0である。
【0022】
図2に表れているように、配線112は、基板1の方向xにおける一方の端部の方向yの両端部に形成されている。配線112は、たとえばITO,IZOなどの透明導電性材料、あるいはAg,Au,Alなどの金属からなる。
【0023】
図1に表れているように、基板2は、透過板23、電極層21、およびシールド層25を備えている。基板2は、表面2aおよび裏面2bを有する。表面2aは、基板1の裏面1bに対向している。表面2aは、本発明における第2の対向面に相当する。透過板23は、透過板13と同様に、たとえばポリエチレンテレフタレート(以下、PETとする)、ポリエチレンナフタレート(以下、PENとする)、ポリカーボネイト(以下、PCとする)などの透明樹脂の単層樹脂体、またはこれらに代表される透明樹脂から選ばれた2種類の材料からなる積層樹脂体、あるいは、ガラスからなる透明な板である。透過板23の屈折率は、たとえば1.5である。
【0024】
電極層21は、基板2の表面2a側に形成されている。図2に表れているように、電極層21は、複数の帯状電極211および配線212を有している。複数の帯状電極211は、互いに平行に配置されている。帯状電極211はそれぞれ、ほぼ菱形状に膨らんだ部分とくびれた部分とが、方向yに沿って交互に配置された形状である。この膨らんだ部分は、菱形状に限らず、丸型状、多角形状、その他の形状でも構わない。帯状電極211の膨らんだ部分は、帯状電極111の膨らんだ部分と方向z視において重ならないように配置されている。また、複数の帯状電極211の膨らんだ部分どうしの隙間には、複数の帯状電極111の膨らんだ部分がはまり込むように配置されている。帯状電極211は、たとえばITO,IZOなどの透明な導電性材料からなる薄膜に対してパターニングを施したものである。帯状電極211の屈折率は、たとえば2.0である。
【0025】
図2に示すように、配線212は、複数の帯状電極211のいずれかと導通している。配線212は、たとえばITO,IZOなどの透明導電性材料、あるいはAg,Au,Alなどの金属からなる。
【0026】
図1に示すように、シールド層25は、基板2の裏面2b側に形成されている。シールド層25は、たとえばITO,IZOなどの透明な導電性材料からなる薄膜であり、方向z視において、電極層11,21と重なる領域に形成されている。シールド層25は、外来の電磁ノイズを電極層11,21が拾ってしまうことを防止するためのものである。また、電極層11,21とシールド層25との間には、寄生容量が生じる。これにより、指Fgと電極層11,21との間に生じる静電容量が、入力装置Aが置かれる環境による変化を受けにくい。これにより、より正確な検出が可能となる。シールド層25は、図示しない配線によってグランド端子または電源電圧端子に接続されている。
【0027】
図1に表れているように、壁部41は、基板1および基板2の間に配置されている。壁部41は、基板2の縁近傍に形成されている。図2に表れているように、壁部41は、方向z視において、ほぼ四角形のリング状である。壁部41は、方向z視において液晶表示パネルBの表示領域と重ならない。壁部41は、透明または不透明な異方性導電接着剤である。壁部41は、基板1および基板2を接着しているとともに、配線112,212を導通させている。この異方性導電接着剤は、たとえば絶縁性樹脂に微小な導電粒子が混入されたものである。本実施形態では、上記異方性導電接着剤は、基板1,2を押し付けあう方向にのみ電気を流す性質を有する。壁部41は、方向z視において、配線112,212と重なるように配置されている。これにより、壁部41は、配線112,212を導通させている。
【0028】
図1、図2に表れているように、壁部41、基板1,2に囲まれることにより、空間s1が形成されている。空間s1は、開口部s2を有している。開口部s2は、入力装置Aの図2の右端、かつ、開口部s2は、方向yにおける壁部41のほぼ中央に形成されている。
【0029】
図1に表れているように、複数のスペーサ32は、空間s1に収容されている。スペーサ32は、基板1の裏面1bおよび基板2の表面2aに接している。スペーサ32は、方向z視において、たとえば1mm平方内に20〜40個程度の割合で散在している。各スペーサ32は、10μm以下の直径を有する球状である。スペーサ32の直径は、基板1,2の間隔を決定する。各スペーサ32は、シリカまたはアクリル樹脂(たとえば、清水化学工業:ミクロパールシリーズ)からなる。スペーサ32の屈折率は、たとえば、1.40〜1.60である。
【0030】
樹脂層31は、空間s1に形成されている。樹脂層31は、光を良好に透過するとともに、電極層11,21を互いに絶縁可能なものを用いればよい。本実施形態においては、樹脂層31は、硬化した紫外線硬化性樹脂(たとえば、積水化学工業:フォトレックシリーズ)である。樹脂層31の屈折率は、たとえば1.49〜1.51である。
【0031】
フレキシブル配線基板72は、方向xにおける基板1の端部に設けられている。ICチップ71は、フレキシブル基板72を介して、複数の帯状電極111,211と接続している。ICチップ71は、帯状電極111,211を、独立に、かつ、常に検出可能に構成されている。
【0032】
液晶表示パネルBは、たとえば互いに対向する透明基板およびTFT基板と、これらに挟まれた液晶層とを備えており、たとえば携帯電話機の操作に供する操作メニュー画面や、画像などを表示する機能を有する。液晶表示パネルBに表示された画像は、入力装置Aをとおして視認可能である。液晶表示パネルBの表示面は、方向z視において帯状電極111および帯状電極211と重なるように構成されている。
【0033】
入力装置Aおよび液晶表示パネルBは、携帯電話機などに組み込まれて、たとえば以下のようにして使用される。
【0034】
液晶表示パネルBには、たとえば携帯電話機の諸機能を発揮させるボタンを模したアイコンを含む操作メニュー画面を表示させる。使用者がなんら操作をしない状態においては、各帯状電極111,211には静電容量がほとんど生じていない。次いで、使用者は、選択したい機能に対応するアイコンを触るようにして、指Fgを基板1の表面1aに接近させる。このとき、各帯状電極111,211と指Fgの距離が短くなる。これにより、指Fgと各帯状電極111,211との間に静電容量が生じる。複数の帯状電極111,211のうち指Fgとの距離が近いものほど静電容量が大きい。すなわち、指Fgと複数の帯状電極111との静電容量を比較することによって、複数の帯状電極111が配列された方向における指Fgの位置を検出することができる。同様に、指Fgと複数の帯状電極211の静電容量を比較することによって、複数の帯状電極211が配列された方向における指Fgの位置を検出することができる。この結果、指Fgの方向z視における位置が確定され、使用者が触れようとしたアイコンが特定される。そして、携帯電話機は、このアイコンに対応する機能を発揮する。
【0035】
次に、図3〜図11を用いて、入力装置Aの製造方法について説明する。
【0036】
まず、図3、図4に示すように、電極層11を備えている基板1の裏面1bに、壁部41を形成する。図4に示すように、壁部41は、ロの字状に形成する。次に、壁部41の一部を切除して、開口部s2となるべき部分s2’を形成する。
【0037】
次に、図5に示すように、壁部41に囲まれた、基板1の裏面1bに、複数のスペーサ32を散布する。次に、図6、図7に示すように、接着剤である壁部41を介在させつつ、基板2を基板1にはり合わせる。基板1と基板2とのはり合わせは、裏面1bと表面2aとがスペーサ32を挟んだ状態を保ちつつ行われる。これにより、図7に示すように、樹脂層31が形成されていない入力装置A’が形成される。また、基板1の裏面1b、基板2の表面2a、および壁部41に囲まれた空間s1、および、開口部s2が形成される。
【0038】
次に、図8に示すように、チャンバー6を用いて、空間s1に図1に示した樹脂層31を構成する硬化前の樹脂31’を注入する。
【0039】
チャンバー6は、入力装置A’、および樹脂31’を貯めることのできる容器62を収容できる大きさである。チャンバー6の内部の圧力は、チャンバー6に接続された真空ポンプ(図示略)により変化する。チャンバー6には、樹脂31’が貯められた容器62が既に収容されている。なお、空間s1に注入しやすくするために、樹脂31’の粘度は、たとえば200mpa・s以下が望ましい。
【0040】
図8に示すように、入力装置A’をチャンバー6の内部に収容し、開口部s2が容器62に溜まっている樹脂31’の界面に対向するように、入力装置A’を配置する。次に、上記真空ポンプを駆動させ、チャンバー6内部の圧力をほぼ真空P1に減少させる。このときのチャンバー6内部の圧力は、本発明における第1の気圧に相当する。次に、図9に示すように、入力装置A’を降下させ、開口部s2を樹脂31’の溜まりに浸す。開口部s2は樹脂31’により塞がれ、空間s1は密閉される。
【0041】
次に、図10に示すように、チャンバー6の内部の圧力を大気圧P2まで上昇させる。密閉された空間s1の内部にわずかに存在する気体の圧力は大気圧P2より低いから、容器62に溜まっていた樹脂31’が空間s1に吸引される。これにより、空間s1に樹脂31’が注入される。なお、大気圧は、本発明における第2の気圧に相当する。
【0042】
次に、図11に示すように、入力装置A’を上昇させ、容器62に溜まっている樹脂31’から開口部s2を抜き出す。このとき、樹脂31’が開口部s2から露出している。次に、空間s1に充填した樹脂31’に紫外線を照射し、樹脂31’を硬化させる。その後、開口部s2から空間s1の外部にはみ出ている樹脂31’を切除する。これにより、図1で示した樹脂層31が形成される。その後、フレキシブル基板72およびICチップ71を配置するなどして、入力装置Aの製造が完成する。
【0043】
次に、入力装置Aおよびその製造方法の作用について説明する。
【0044】
本実施形態によれば、基板1の裏面1bおよび基板2の表面2aのなす角度は、スペーサ32により決定される。そのため、帯状電極111,211の間隔を一定に保ちやすくなる。その結果、指Fgの接近をより的確に検知することができる入力装置Aの製造が容易になる。
【0045】
スペーサ32によって、帯状電極111,211が離間している状態が保たれる。そのため、基板1,2の間に、さらに絶縁のためのガラス基板などを配置する必要がない。よって、帯状電極111,211の距離を小さくすることができる。これにより、入力装置Aの検出感度の向上を図ることができる。また、帯状電極111,211の感度差を小さくすることができ、ばらつきを抑えることができる。さらに、入力装置Aはスペーサ32を備えているから、指Fgで基板1の表面1aを押圧しても、基板1が変形しにくい。
【0046】
空間s1には、樹脂層31が形成されている。そのため、帯状電極111,211が空気と接触することがない。そのため、帯状電極111,211が空気と接触し、意図しない特性となってしまうことを防止できる。
【0047】
樹脂層31の屈折率は、空気よりも、透過板13,23や帯状電極111,211の屈折率に近い。そのため、基板1,2と空間s1との境界における光の反射率が小さくなる。これにより、ニュートンリングの発生を抑制できる。
【0048】
壁部41が接着剤により構成されているから、空間s1に基板1,2どうしを接着するための樹脂を形成する必要がない。
【0049】
空間s1に樹脂31’を注入するときは、樹脂31’は液体である。だが、その後、樹脂31’を硬化させる。そのため、入力装置Aの搬送中などに、空間s1から樹脂31’が流れ出てしまうおそれがない。これにより、入力装置Aの歩留まりの向上が期待できる。また、樹脂31’は硬化するから、樹脂31’を封入する蓋を形成する必要がない。
【0050】
樹脂31’を硬化した後に、開口部s2から空間s1の外部にはみ出ている樹脂を切除する。そのため、入力装置Aにおいて、硬化した樹脂31’により開口部s2の外部に突起した形状が形成されることを防止できる。
【0051】
本発明の範囲は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る入力装置のおよびその製造方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0052】
たとえば、本発明にかかる入力装置が液晶表示パネルBとともに用いられる必要はない。また、本発明にかかる第1および第2の電極層はいずれも、必ずしも透明である必要はない。これらの電極層は銅などの不透明な金属により構成されていてもよい。
【0053】
本発明にかかる壁部は接着剤である必要はない。たとえば、上記壁部と本発明にかかる第1の基板や第2の基板との間に、接着剤を塗布してもよい。このようにしても、上記第1および第2の基板は、上記壁部を介在させ固定されているといえる。
【0054】
本発明にかかる空間には紫外線硬化性樹脂などを充填させるのが好ましいが、本発明の範囲は必ずしもこれに限られない。たとえば上記空間に、上記第1および第2の基板と反応しにくいその他の流体を充填させてもよい。もしくは上記空間が空気層であってもよい。
【0055】
上記紫外線硬化性樹脂を硬化させる工程は、本発明にかかる開口部に蓋をした状態で行ってもよい。
【0056】
また、本発明にかかる入力装置は、携帯電話機に用いられるものに限られない。たとえば、デジタルカメラ、パーソナルナビゲーションデバイス、自動預入支払機、等その他のタッチパネルを用いる機器において用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態にかかる入力装置の一例を示した図である。
【図2】図1のII−II線に沿う平面から見た要部平面図である。
【図3】本発明にかかる入力装置の製造方法の一工程を示した図である。
【図4】図3の要部平面図である。
【図5】図4に続く工程を示した図である。
【図6】図5に続く工程を示した図である。
【図7】図6に続く工程を示した図である。
【図8】図7に続く工程を示した図である。
【図9】図8に続く工程を示した図である。
【図10】図9に続く工程を示した図である。
【図11】図10に続く工程を示した図である。
【図12】従来の入力装置を示した図である。
【符号の説明】
【0058】
A 入力装置
B 液晶表示パネル
Fg 指
x 方向
y 方向
z (重なる)方向
1 (第1の)基板
1a 表面
1b 裏面(第1の対向面)
11 電極層
111 (第1の)帯状電極
112 配線
13 透過板
2 (第2の)基板
2a 表面(第2の対向面)
2b 裏面
21 電極層
211 (第2の)帯状電極
212 配線
23 透過板
25 シールド層
31 樹脂層
31’ 樹脂
32 スペーサ
41 壁部
s1 空間
s2 開口部
6 チャンバー(圧力容器)
62 容器
71 ICチップ(制御手段)
72 フレキシブル基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行に配置された複数の第1の帯状電極を第1の対向面側に有する第1の基板と、
上記第1の帯状電極に対して絶縁されているとともに、上記第1の帯状電極とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の第2の帯状電極を、上記第1の対向面に対向する第2の対向面側に有する第2の基板と、
上記第1および第2の基板が重なる方向において、上記第1および第2の帯状電極に対して導電体が接近したときに生じる静電容量の変化によって上記導電体の接近を検出する制御手段と、
を備える入力装置の製造方法であって、
上記第1および第2の対向面が複数のスペーサを挟んでいる状態で、上記第1または第2の対向面から上記重なる方向に向かって起立する壁部を介在させ、上記第1および第2の基板を固定する工程を備えることを特徴とする、入力装置の製造方法。
【請求項2】
上記固定する工程の後に、上記壁部と上記第1および第2の対向面とに囲まれているとともに上記スペーサを収容する空間の開口部から、流体を上記空間に注入する工程をさらに備える、請求項1に記載の入力装置の製造方法。
【請求項3】
上記壁部により、上記第1の基板と上記第2の基板とが接着されている、請求項2に記載の入力装置の製造方法。
【請求項4】
上記流体、上記第1の基板、および、上記第2の基板は、いずれも透明である、請求項2または3に記載の入力装置の製造方法。
【請求項5】
上記流体は紫外線硬化性樹脂であり、
紫外線を照射し上記流体を硬化させる工程をさらに備える、請求項4に記載の入力装置の製造方法。
【請求項6】
上記硬化させる工程は、上記流体を上記開口部から露出させた状態で行われる、請求項5に記載の入力装置の製造方法。
【請求項7】
上記流体は液体であり、
上記注入する工程は、
内圧が第1の気圧とされた圧力容器において、上記流体の溜まりに上記開口部を浸し、上記空間を密閉する工程と、
上記流体の溜まりに上記開口部を浸している状態で、上記圧力容器の内圧を上記第1の気圧より大きい第2の気圧に変化させる工程と、
を含む、請求項2ないし6のいずれかに記載の入力装置の製造方法。
【請求項8】
上記第2の気圧は、大気圧である、請求項7に記載の入力装置の製造方法。
【請求項9】
互いに平行に配置された複数の第1の帯状電極を第1の対向面側に有する第1の基板と、
上記第1の帯状電極に対して絶縁されているとともに、上記第1の帯状電極とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の第2の帯状電極を、上記第1の対向面に対向する第2の対向面側に有する第2の基板と、
上記第1および第2の基板が重なる方向において、上記第1および第2の帯状電極に対して導電体が接近したときに生じる静電容量の変化によって上記導電体の接近を検出する制御手段と、
を備える入力装置であって、
上記第1および第2の対向面のいずれにも接している複数のスペーサと、
上記第1および第2の対向面の間に介在している、上記重なる方向に沿って起立する壁部と、
上記壁部と上記第1および第2の対向面とに囲まれているとともに上記スペーサを収容する空間に形成されており、かつ、上記空間の開口部から露出している絶縁層と、
をさらに備えていることを特徴とする、入力装置。
【請求項1】
互いに平行に配置された複数の第1の帯状電極を第1の対向面側に有する第1の基板と、
上記第1の帯状電極に対して絶縁されているとともに、上記第1の帯状電極とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の第2の帯状電極を、上記第1の対向面に対向する第2の対向面側に有する第2の基板と、
上記第1および第2の基板が重なる方向において、上記第1および第2の帯状電極に対して導電体が接近したときに生じる静電容量の変化によって上記導電体の接近を検出する制御手段と、
を備える入力装置の製造方法であって、
上記第1および第2の対向面が複数のスペーサを挟んでいる状態で、上記第1または第2の対向面から上記重なる方向に向かって起立する壁部を介在させ、上記第1および第2の基板を固定する工程を備えることを特徴とする、入力装置の製造方法。
【請求項2】
上記固定する工程の後に、上記壁部と上記第1および第2の対向面とに囲まれているとともに上記スペーサを収容する空間の開口部から、流体を上記空間に注入する工程をさらに備える、請求項1に記載の入力装置の製造方法。
【請求項3】
上記壁部により、上記第1の基板と上記第2の基板とが接着されている、請求項2に記載の入力装置の製造方法。
【請求項4】
上記流体、上記第1の基板、および、上記第2の基板は、いずれも透明である、請求項2または3に記載の入力装置の製造方法。
【請求項5】
上記流体は紫外線硬化性樹脂であり、
紫外線を照射し上記流体を硬化させる工程をさらに備える、請求項4に記載の入力装置の製造方法。
【請求項6】
上記硬化させる工程は、上記流体を上記開口部から露出させた状態で行われる、請求項5に記載の入力装置の製造方法。
【請求項7】
上記流体は液体であり、
上記注入する工程は、
内圧が第1の気圧とされた圧力容器において、上記流体の溜まりに上記開口部を浸し、上記空間を密閉する工程と、
上記流体の溜まりに上記開口部を浸している状態で、上記圧力容器の内圧を上記第1の気圧より大きい第2の気圧に変化させる工程と、
を含む、請求項2ないし6のいずれかに記載の入力装置の製造方法。
【請求項8】
上記第2の気圧は、大気圧である、請求項7に記載の入力装置の製造方法。
【請求項9】
互いに平行に配置された複数の第1の帯状電極を第1の対向面側に有する第1の基板と、
上記第1の帯状電極に対して絶縁されているとともに、上記第1の帯状電極とは異なる方向に沿って互いに平行に配置された複数の第2の帯状電極を、上記第1の対向面に対向する第2の対向面側に有する第2の基板と、
上記第1および第2の基板が重なる方向において、上記第1および第2の帯状電極に対して導電体が接近したときに生じる静電容量の変化によって上記導電体の接近を検出する制御手段と、
を備える入力装置であって、
上記第1および第2の対向面のいずれにも接している複数のスペーサと、
上記第1および第2の対向面の間に介在している、上記重なる方向に沿って起立する壁部と、
上記壁部と上記第1および第2の対向面とに囲まれているとともに上記スペーサを収容する空間に形成されており、かつ、上記空間の開口部から露出している絶縁層と、
をさらに備えていることを特徴とする、入力装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【公開番号】特開2010−128648(P2010−128648A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300710(P2008−300710)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】
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