説明

入力装置

【課題】コストダウンおよび小型化が図れ、操作者に違和感を与えることなく確実に触感を呈示できる入力装置を提供する。
【解決手段】タッチセンサ11、圧電素子13、圧電素子駆動部15、圧電素子13の出力信号に基づいてタッチセンサ11に対する押圧荷重を検出し、押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、押圧対象に対して触感を呈示するように圧電素子駆動部15により圧電素子13を駆動する制御部17、圧電素子13を制御部17または圧電素子駆動部15に選択的に接続する接続切換部14、圧電素子13の電荷を放電する放電回路16を備え、制御部17は、押圧荷重が基準を満たした際に、接続切換部14により圧電素子13を圧電素子駆動部15に接続して圧電素子13を駆動し、その後、放電回路16により圧電素子16の電荷を放電するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチセンサを備える入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の携帯端末、電卓、券売機等の情報機器、電子レンジ、テレビ、照明器具等の家電製品、産業用機器(FA機器)等には、ユーザによる入力操作を受け付ける操作部やスイッチ等の入力装置として、タッチパネルやタッチスイッチ等のタッチセンサを備える入力装置が広く使用されている。
【0003】
このようなタッチセンサには、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の種々の方式が知られている。しかしながら、いずれの方式のタッチセンサにおいても、指やスタイラスペンによるタッチ入力を受け付けるものであって、タッチセンサ自体は、タッチされても、押しボタンスイッチのようには物理的に変位しない。
【0004】
このように、タッチセンサがタッチされても、タッチセンサ自体が物理的に変位しないので、操作者は、タッチ入力が受け付けられても、入力に対するフィードバックを得ることができない。このため、操作者は、同じ位置を何度もタッチする等の繰り返し入力が生じ易く、操作者にストレスを与える場合がある。
【0005】
このような繰り返し入力を防止するものとして、例えば、タッチ入力を受け付けて、音を鳴らしたり、当該入力位置に対応して表示部に画像表示されている入力ボタン等の入力用オブジェクトの表示色を変更する等の表示態様を変更したりして、聴覚や視覚により入力操作を確認できるようにしたものが知られている。
【0006】
しかし、聴覚に働きかけるフィードバック方法の場合は、騒音環境下での確認が困難になるとともに、使用機器がマナーモード等で消音状態にある場合は、対応できないことになる。また、視覚に働きかけるフィードバック方法の場合は、表示部に表示されている入力用オブジェクトのサイズが小さいと、特に指入力の場合は、指の下に入力用オブジェクトが隠れて表示態様の変化が確認できない場合がある。
【0007】
また、聴覚や視覚によらず、タッチセンサが入力を受け付けると、タッチセンサを振動させて、操作者の指先に触覚を発生させるようにしたフィードバック方法も提案されている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−288158号公報
【特許文献2】特開2008−130055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示の技術は、単に、タッチセンサが入力を受け付けると、タッチセンサを振動させているに過ぎない。このため、特に、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のようなボタンスイッチがタッチセンサ上部に描画されている場合、タッチセンサの入力を受け付ける閾値が低い場合は、タッチセンサに指等が軽く触れた(タッチした)だけで触感が呈示される。これにより操作者がプッシュする前の意図しない動作(タッチ)に反応して誤操作を誘発したり、操作者にプッシュする前の意図しない動作(タッチ)による違和感を与えたりすることになる。ここで、タッチセンサのタッチによる入力を受け付ける閾値とは、タッチセンサが反応する閾値で、例えば抵抗膜方式においては、上部導電膜が下部導電膜に接触する押圧力の閾値であり、静電容量方式においては、接触による電気的信号の検出閾値である。
【0010】
このような不都合を解決するため、本出願人は、タッチセンサのタッチ面に対するタッチによる押圧荷重を検出し、その検出荷重が触感を呈示する所定の閾値に達した際に、タッチセンサのタッチ面を振動させて指等の押圧対象に触感を呈示するようにした入力装置を開発している。
【0011】
この入力装置によれば、操作者がタッチ面をプッシュし、その押圧荷重が所定の閾値に達すると触感が呈示されるので、上述した意図しないタッチによる誤操作を誘発したり、違和感を与えたりするのを確実に防止して、操作者に対して入力が受け付けられたのを触感として認識させることができる。
【0012】
ところで、かかる入力装置を構成するには、タッチセンサやその制御部の基本構成の他に、タッチセンサに対する押圧荷重を検出する荷重センサや、タッチセンサを振動させるアクチュエータが必要となる。このため、その分、部品点数が増えてコストアップになるとともに、部品の設置スペースを確保する必要があることから、装置の大型化を招くことになる。
【0013】
そこで、本出願人は、コストダウンおよび装置の小型化を図るために、圧電素子の圧電正効果および圧電逆効果を利用して、圧電素子を、タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重センサおよびタッチ面を振動させるアクチュエータとして共用した装置を開発している。
【0014】
ところが、本発明者による種々の実験検討によると、圧電素子を荷重センサおよびアクチュエータとして共用する場合は、以下に説明するような改良すべき点があることが判明した。すなわち、タッチセンサを押しボタンキーの連続入力(連打)のように連続的に押圧すると、押圧毎に圧電素子が撓むことになる。その結果、図6に示すように、押圧による撓みによって圧電素子に生じた電荷が、放電しきれないうちに、次の押圧による撓みによって圧電素子に電荷が発生し、圧電素子の出力電圧が上昇することになる。
【0015】
このため、圧電素子の出力電圧すなわち押圧荷重が、増加しながら所定の閾値Vrefを超えたのを検出して、圧電素子をアクチュエータとして機能させてタッチ面を振動させるようにすると、閾値Vrefの設定によっては、1回目の押圧時のみ、あるいは、1回目および2回目の押圧時のみ(図6の場合)、圧電素子の出力電圧が閾値Vrefを超えたのが検出され、その後の押圧においては、圧電素子の出力電圧が閾値Vrefを超えた状態のままとなって、出力電圧が閾値Vrefを超えたのが検出されなくなる。
【0016】
その結果、図6の場合、1回目および2回目の押圧に対しては、圧電素子をアクチュエータとして機能させてタッチ面を振動できるが、それ以降の連続押圧に対しては、圧電素子をアクチュエータとして機能させることができなくなる。このため、1回目および2回目の押圧に対しては、操作者に触感を提示できるが、それ以降の連続押圧に対しては触感を呈示できないため、操作者に違和感を与えることになる。
【0017】
したがって、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、コストダウンおよび小型化が図れるとともに、操作者がタッチセンサを操作した際に、操作者に違和感を与えることなく確実に触感を呈示できるように適切に構成した入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成する第1の観点に係る入力装置の発明は、
タッチ入力を検出するタッチセンサと、
前記タッチセンサに装着された圧電素子と、
前記圧電素子を駆動する圧電素子駆動部と、
前記圧電素子の出力信号に基づいて前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出し、該検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記圧電素子駆動部により前記圧電素子を駆動する制御部と、
前記圧電素子を前記制御部または前記圧電素子駆動部に選択的に接続する接続切換部と、
前記圧電素子に蓄積された電荷を放電する放電回路と、を備え、
前記制御部は、前記接続切換部を介して入力される前記圧電素子の出力信号に基づいて検出される前記押圧荷重が前記基準を満たした際に、前記接続切換部により前記圧電素子を前記圧電素子駆動部に接続して、該圧電素子駆動部により前記圧電素子を駆動し、
その後、前記制御部は、前記放電回路により前記圧電素子に蓄積されている電荷を放電するように制御する、
ことを特徴とするものである。
【0019】
第2の観点に係る発明は、第1の観点に係る入力装置において、
前記放電回路は、前記圧電素子とアースとの間に接続されたスイッチング素子を有し、
前記制御部は、前記圧電素子駆動部により前記圧電素子を振動させた直後に、前記スイッチング素子を所定時間導通させて、前記圧電素子に蓄積されている電荷を放電させる、
ことを特徴とするものである。
【0020】
第3の観点に係る発明は、第1の観点に係る入力装置において、
前記放電回路は、前記圧電素子とアースとの間に接続された抵抗素子を有する、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る入力装置は、圧電素子の圧電正効果および圧電逆効果を利用して、圧電素子を、タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重センサおよびタッチ面を振動させるアクチュエータとして利用して、部品を共用している。これにより、部品点数を削減できてコストダウンが図れるとともに、部品の設置スペースを少なくできて装置の小型化が図れる。また、圧電素子を駆動した後は、圧電素子を圧電素子駆動部から電気的に切り離した状態で、圧電素子に蓄積されている電荷(残留電荷)を放電回路により放電している。これにより、圧電素子に電荷が蓄積され続けるのを防止でき、連続入力の場合においても、操作者に違和感を与えることなく確実に触感を呈示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施の形態に係る入力装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示した接続切換部および放電回路の一例の構成を示す回路図である。
【図3】図1に示した入力装置の概略動作を示すタイミングチャートである。
【図4】本発明の第2実施の形態に係る入力装置の要部の回路構成図である。
【図5】本発明に係る入力装置の実装構造の一例を示す要部断面図および要部平面図である。
【図6】本発明が解決しようとする課題を説明する圧電素子の蓄積電荷の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して説明する。
【0024】
(第1実施の形態)
図1は、本発明の第1実施の形態に係る入力装置の概略構成を示す機能ブロック図である。この入力装置は、タッチセンサ11、表示部12、圧電素子13、接続切換部14、圧電素子駆動部15、放電回路16、および、各部の動作を制御する制御部17を有する。
【0025】
タッチセンサ11は、制御部17に接続し、制御部17による制御のもとに、該タッチセンサ11のタッチ面に対する指などの押圧対象によるタッチ入力を検出して、そのタッチ位置の位置情報を制御部17に供給する。このタッチセンサ11は、抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の公知のもので構成して、表示部12上に配置する。
【0026】
表示部12は、制御部17に接続し、制御部17による制御のもとに、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のような入力ボタン等の入力用オブジェクトを表示する。この表示部12は、例えば、液晶表示パネルや有機EL表示パネル等を用いて構成する。表示部12に表示された入力用オブジェクトに対するタッチ入力は、タッチセンサ11から出力される位置情報に基づいて制御部17により検出される。
【0027】
圧電素子13は、タッチセンサ11のタッチ面の押圧により撓む(歪む)ように、タッチセンサ11に装着する。この圧電素子13は、接続切換部14に接続して、該接続切換部14を介して制御部17または圧電素子駆動部15に選択的に接続する。
【0028】
接続切換部14は、後述するようにスイッチ回路等を有して構成し、制御部17による制御のもとに、圧電素子13を制御部17または圧電素子駆動部15に選択的に接続する。また、圧電素子駆動部15は、電力増幅器等を有して構成し、制御部17による制御のもとに、圧電素子13を振動させる所定の駆動信号を出力する。
【0029】
そして、圧電素子13が、接続切換部14を介して制御部17に接続されている状態で、圧電素子13の出力信号、すなわち、タッチセンサ11のタッチ面の押圧により生じた電荷による電圧が、制御部17に供給される。また、圧電素子13が、接続切換部14を介して圧電素子駆動部15に接続されている状態で、圧電素子駆動部15からの駆動信号が圧電素子13に供給されて圧電素子13が駆動される。これにより、タッチセンサ11が振動して、タッチ面を押圧している押圧対象に触感を呈示する。
【0030】
放電回路16は、後述するように、圧電素子13に接続されたスイッチング素子を有して構成され、制御部17による制御のもとに、圧電素子13に蓄積されている電荷(残留電荷)を放電する。
【0031】
制御部17は、例えばCPU等からなり、タッチセンサ11からの位置情報、表示部12への表示情報、圧電素子13の出力信号、等に基づいて各部の動作を制御する。
【0032】
図2は、図1に示した接続切換部14および放電回路16の一例の構成を示す回路図である。接続切換部14には、半導体リレー等からなる2個のスイッチ回路21,22と、インバータ23とを設ける。スイッチ回路21,22は、それぞれオン/オフ接点を有し、スイッチ回路21のオン/オフ接点を、圧電素子13の正極側端子と圧電素子駆動部15の出力端子(図示せず)との間に接続し、スイッチ回路22のオン/オフ接点を、圧電素子13の正極側端子と制御部17のアナログ/デジタル変換入力端子(図示せず)との間に接続する。
【0033】
スイッチ回路21は、制御部17から出力されるスイッチ切換信号aにより、インバータ23を経てオン/オフ接点をオン/オフ制御する。また、スイッチ回路22は、上記のスイッチ切換信号aにより、オン/オフ接点をオン/オフ制御する。したがって、スイッチ回路21,22のオン/オフ接点は、一方がオン状態にあるとき、他方はオフ状態にある。
【0034】
また、放電回路16には、AND(論理積)回路25、抵抗26、および放電用のスイッチングトランジスタ27を設ける。AND回路25には、制御部17から出力される放電制御信号bと、上述したスイッチ切換信号aとを入力し、その出力を、抵抗26を経てスイッチングトランジスタ27のベースに供給する。また、圧電素子13の正極側端子は、スイッチングトランジスタ27のコレクタ−エミッタ通路を経てアースに接続する。
【0035】
図3は、本実施の形態に係る入力装置の概略動作を示すタイミングチャートである。なお、図3は、制御部17から出力されるスイッチ切換信号aおよび放電制御信号bと、タッチセンサ11のタッチ面を連続的に押圧して連続入力(連打)した場合の圧電素子13の出力信号(電圧)とを示している。制御部17は、常時、スイッチ切換信号aをハイ(H)レベル、放電制御信号bをロー(L)レベルとする。これにより、切換制御部14のスイッチ回路21をオフ、スイッチ回路22をオンとして、圧電素子13を制御部17に接続する。また、放電回路16は、AND回路25の出力をLレベルとして、スイッチングトランジスタ27をオフとする。
【0036】
この状態で、制御部17は、タッチセンサ11の出力を監視するとともに、圧電素子13の出力信号(電圧)を監視する。そして、タッチセンサ11からの位置情報が、表示部12に表示されている入力用オブジェクトに対する入力で、かつ、圧電素子13の出力電圧が、触感を呈示する基準の荷重(例えば、1N)に相当する閾値Vrefに達したのを検出すると、スイッチ切換信号aをLレベルとする。これにより、切換制御部14のスイッチ回路21をオン、スイッチ回路22をオフに切換えて、圧電素子13を圧電素子駆動部15に接続する。
【0037】
そして、制御部17は、この状態で、圧電素子駆動部15から所定の駆動信号を出力させて圧電素子13を駆動する。これにより、タッチパネル11を振動させて、タッチ面を押圧している押圧対象に触感を呈示する。また、制御部17は、表示部12内の当該入力用オブジェクトに対する所定の処理、例えば表示態様の変更処理や入力用オブジェクトに対応するキャラクタの所定の表示領域への表示処理、オブジェクトに対応するアプリケーションの実行処理等を行う。
【0038】
制御部17は、圧電素子駆動部15による圧電素子13の駆動が終了したら、スイッチ切換信号aをHレベルにして、スイッチ回路21をオフ、スイッチ回路22をオンに復帰させる。これにより、圧電素子13を圧電素子駆動部15から切り離して、圧電素子13を制御部17に接続する。ここで、スイッチ切換信号aのLレベルの時間Tは、圧電素子13の駆動時間を含む時間で、固定的(例えば、5ms程度)に設定するか、あるいは呈示する触感に対応する駆動信号による駆動時間に応じて自動的に設定する。
【0039】
その後、制御部17は、スイッチ切換信号aがHレベルにある状態で、放電制御信号bを所定の放電時間Tの間、Hレベルとする。これにより、放電時間Tの間、放電回路16のAND回路25の出力をHレベルにしてスイッチングトランジスタ27を導通させて、圧電素子13に蓄積されている残留電荷を、スイッチングトランジスタ27を経て放電させる。
【0040】
ここで、スイッチ切換信号aがLレベルからHレベルに切換わった時点、すなわちスイッチ切換信号aのLレベルの時間Tが終了した時点から、放電制御信号bがHレベルとなるまでの時間、すなわち放電時間Tが開始されるまでの時間は、接続切換部14におけるスイッチ回路21の応答時間、すなわちスイッチ回路21のオン/オフ接点が、オン状態から確実にオフ状態になる時間等を考慮して設定する。また、放電制御信号bをHレベルとする放電時間Tは、圧電素子13に蓄積されている残留電荷がほぼ完全に放電されて、圧電素子13の出力電圧がほぼ0ボルトとなるように、閾値Vref、圧電素子13の駆動信号、連続入力の際の順次の押圧の時間間隔、等に応じて適宜設定(例えば、1ms程度)する。
【0041】
圧電素子13の放電処理後、制御部17は、圧電素子13の出力信号を監視し、その出力信号に基づいて上述したと同様に各部を制御する。
【0042】
以上のように、本実施の形態に係る入力装置によれば、圧電素子13の圧電正効果および圧電逆効果を利用して、圧電素子13を、タッチセンサ11のタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重センサおよびタッチ面を振動させるアクチュエータとして利用して、部品を共用している。したがって、部品点数を削減できることから、コストダウンが図れるとともに、部品の設置スペースを少なくできることから、装置の小型化が図れる。
【0043】
また、圧電素子13を駆動して触感を呈示した後は、圧電素子13を圧電素子駆動部15から電気的に切り離した状態で、圧電素子13に蓄積されている残留電荷を放電回路16により放電している。したがって、圧電素子13に電荷が蓄積され続けるのを防止できるので、図3に示したように、連続入力の場合においても、順次の各押圧において確実に触感を呈示することができ、操作者に違和感を与えることもない。しかも、圧電素子13を放電する際、圧電素子駆動部15は、圧電素子13との接続が遮断されているので、圧電素子駆動部15を構成する電力増幅器等の出力端子が接地されることがない。したがって、圧電素子駆動部15に何らの悪影響を及ぼすこともない。
【0044】
(第2実施の形態)
図4は、本発明の第2実施の形態に係る入力装置の要部の回路構成図である。この入力装置は、図2に示した回路構成において、放電回路16を、圧電素子13の正極側端子とアースとの間に接続した抵抗素子28をもって構成したもので、その他の構成は図2と同様である。したがって、図2と同様の構成要素には、同一参照符号を付して、その説明を省略する。
【0045】
本実施の形態に係る入力装置においては、圧電素子13の残留電荷を、抵抗素子28を経て放電するため、圧電素子駆動部15により圧電素子13を駆動する際、図3に示した時間Tのみ、圧電素子13を圧電素子駆動部15に接続する。これにより、圧電素子駆動部15による圧電素子13の駆動後に、直ちに、圧電素子13の残留電荷の放電を開始させる。
【0046】
したがって、本実施の形態によれば、第1実施の形態と同様の効果が得られる。また、第1実施の形態と比較して、放電回路16の構成が簡単となり、また、放電制御信号bも不要となることから、構成および制御が簡単となり、よりコストダウンが図れる。
【0047】
次に、上述した第1実施の形態や第2実施の形態に係る入力装置の実装構造の一例について、図5を参照して説明する。
【0048】
図5は、図1に示したタッチセンサ11、表示部12および圧電素子13の実装構造の概略構成例を示すもので、図5(a)は要部断面図、図5(b)は要部平面図である。表示部12は、筐体31内に収納保持する。表示部12上には、弾性部材からなるインシュレータ32を介して、タッチセンサ11を保持する。なお、本実施の形態では、タッチセンサ11を、図5(b)に仮想線で示す表示部12の表示領域Aから外れた4隅に配設したインシュレータ32を介して表示部12上に保持する。
【0049】
また、筐体31には、表示部12の表示領域から外れたタッチセンサ11の表面領域を覆うようにアッパカバー33を設け、このアッパカバー33とタッチセンサ11との間に、弾性部材からなる防塵用のインシュレータ34を配設する。
【0050】
なお、図5に示すタッチセンサ11は、タッチ面11aを有する表面部材が、例えば透明フィルムやガラスで構成され、裏面部材がガラスやアクリルで構成されて、インシュレータ34を介してタッチ面11aが押圧されると、押圧部分が押圧力に応じて微少量撓む(歪む)とともに、裏面部材を含むタッチセンサ11の全体が微少量撓む構造のものを用いる。
【0051】
タッチセンサ11には、その裏面上で、アッパカバー33で覆われる一辺または複数辺の近傍、ここでは3辺の近傍に、タッチセンサ11のタッチ面11aに対する押圧荷重を検出するとともに、タッチセンサ11を振動させて、タッチ面11aを押圧している押圧対象に触感を呈示するための圧電素子13をそれぞれ装着する。なお、図5(b)においては、図5(a)に示した筐体31、アッパカバー33およびインシュレータ34の図示を省略している。
【0052】
ここで、3個の圧電素子13は、接続切換部を介して圧電素子駆動部に接続して、共通の駆動信号により駆動するか、あるいは、独立した駆動信号により駆動する。また、制御部に対して、3個の圧電素子13の出力は、接続切換部を介して並列に供給する。また、放電回路については、3個の圧電素子13の各々に対応して設ける。
【0053】
そして、制御部は、3個の圧電素子13の出力信号に基づいて押圧荷重を演算する。この押圧荷重は、好ましくは、タッチ面11aの各位置において、操作者が感じる圧覚(物の硬さや柔らかさ等の感覚)がほぼ同じ場合に、ほぼ等しい演算結果が得られるように、例えば、3個の圧電素子13の出力信号の平均値や、重み付けした加算値等に基づいて演算する。また、3個の圧電素子13は、好ましくは独立した駆動信号で駆動するようにして、タッチ面11aの各位置において、操作者がほぼ同じ圧覚でほぼ同じ触覚(物の手触り等の感覚)が得られるように、すなわち、圧覚と触覚とが複合されたほぼ同じ触感が得られるように、各駆動信号の振幅や位相等を、タッチ面11aの位置や場所に応じて適宜変更する。
【0054】
次に、上記各実施の形態における触感を呈示する押圧荷重の基準、および圧電素子13を駆動する駆動信号について説明する。
【0055】
触感を呈示する押圧荷重の基準は、例えば、表現したい押しボタンスイッチの押下時の荷重特性に応じて適宜設定することができる。例えば、この基準は、タッチセンサ11がタッチ入力に反応する荷重と同じに設定(タッチセンサ11のタッチ入力の反応と触感を呈示するタイミングを同じに設定)してもよいし、タッチセンサ11がタッチ入力に反応する荷重よりも高い荷重に設定(タッチセンサ11のタッチ入力の反応よりも触感を呈示するタイミングを遅くする設定)してもよい。例えば、本実施の形態に係る入力装置を携帯端末に適用する場合においては、好ましくは、タッチセンサ11がタッチ入力に反応する荷重以上(タッチセンサ11のタッチ入力の反応よりも触感を呈示するタイミングを遅くする設定)に設定するとよい。また、さらに、この荷重設定も、年配のユーザは重めに(より遅く)、頻繁にメールをするユーザは軽めに(より早く)設定できるように、ユーザにおいて自由に設定できるようにするとよい。
【0056】
また、圧電素子駆動部15により圧電素子13を駆動する駆動信号は、呈示する触感に応じて適宜設定することができる。例えば、携帯端末に使用されている押しボタンスイッチを押下した際に得られる「カッ」と感じられるリアルなクリック触感を呈示する場合は、上記の基準の荷重が加わった時点で、例えば、100Hz〜200Hz、好ましくは170Hzの一定周波数のSin波1周期分を、駆動信号として圧電素子13に印加して、タッチセンサ11のタッチ面を、基準の押圧荷重が加わった状態で約15μm振動させる。これにより、タッチセンサ11のタッチ面を押圧している押圧対象(押圧物)を介して、操作者にリアルなクリック触感を呈示して、入力操作が完了したことを認識させることができる。同様に、「カッ」よりも硬質な「カチ」と感じられるクリック触感を呈示する場合は、駆動信号として、200Hz〜500Hz程度の正弦波信号または矩形波信号を1周期分印加する。
【0057】
クリック触感以外の触感を呈示する場合、例えば、「ブル」や「ブニ」と感じられる軟質的な触感を呈示する場合は、駆動信号として、200Hz〜500Hz程度の正弦波信号を2〜3周期分印加する。あるいは、「ブルル」と感じられる振動として認知できる触感を呈示する場合は、駆動信号として、200Hz〜500Hz程度の正弦波信号を4周期分以上印加する。
【0058】
これらの種々の触感を呈示する駆動信号情報は、図示しない記憶部に記憶して、ユーザにより所望の触感を呈示する駆動信号を適宜設定できるようにするのが好ましい。そして、設定された駆動信号に応じて、図3に示したスイッチ切換信号aのLレベルの時間Tを自動的に設定するのが好ましい。
【0059】
このように、圧電素子13の出力に基づいて演算されるタッチセンサ11に加わる荷重が、触感を呈示する基準(例えば、1N)を満たすまでは圧覚を刺激するようにし、基準を満たすと、圧電素子13を所定の駆動信号で駆動してタッチ面11aを振動させて触覚を刺激する。これにより、操作者に対して触感を呈示して、当該入力操作が完了したことを認識させる。したがって、操作者は、例えば、押しボタンスイッチ(プッシュ式ボタンスイッチ)のようなボタンスイッチがタッチセンサ上部に描画されていた場合、タッチセンサ11を、押しボタンスイッチを操作した場合と同様のリアルなクリック触感を得ながら、入力操作を行うことができるので、違和感を覚えることがない。また、タッチセンサ11を「押した」と言う意識との連動で入力操作を行うことができるので、単なる押圧による入力ミスも防止することができる。
【0060】
また、触感を呈示する基準の押圧荷重を、タッチセンサ11がタッチ入力に反応する荷重よりも高く(タッチセンサ11のタッチ入力の反応よりも触感を呈示するタイミングを遅く)設定した場合は、タッチ面11aへのタッチ操作に応じて入力位置を決定して、表示部12の対応する箇所の入力用オブジェクトの表示態様を変更し、その後、圧電素子13の出力に基づいて検出されるタッチ面11aへの押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、圧電素子13を駆動してクリック触感を呈示するとともに、その入力位置を確定して所定の処理(例えば、オブジェクトに対応するプログラムの実行処理)を実行させることが可能となる。この場合、操作者は、表示部12に表示された入力用オブジェクトの表示態様の変更により入力用オブジェクトの選択を確認でき、さらにタッチ面11aを押圧してクリック触感が呈示されることにより、選択した入力用オブジェクトが決定(実行)されたことを認識することができる。これにより、いわゆる迷い指による誤入力を防止することができる。
【0061】
なお、押しボタンスイッチのクリック触感を呈示する場合は、リリース時においても、押圧荷重が所定の基準を下回った際に、押圧時と同様の駆動信号により圧電素子13を駆動して同上のクリック触感(この場合はリリース触感)を呈示することができる。勿論、リリース触感は、必ずしもクリック触感と同一の駆動信号でなくてもよい。
【0062】
この場合は、押圧時のクリック触感呈示後、圧電素子13の残留電荷を放電することなく、リリース時のリリース触感の呈示後に、圧電素子13の残留電荷を放電回路16により放電するように構成する。このようにすれば、押下時に「カッ」、リリース時に「チッ」と感じられるよりリアルなクリック触感を呈示することができる。
【0063】
ここで、リリース触感を呈示する荷重基準は、押圧時にクリック触感を呈示する上記の荷重基準と同じに設定することもできるが、好ましくは、押圧時にクリック触感を呈示する荷重基準よりも50%〜80%低い値に設定する。このようにすれば、同一位置(入力用オブジェクト)を連続入力(連打)する場合に、順次の入力と触感呈示タイミングとが合致し、違和感のないリアルなクリック触感を呈示することができる。すなわち、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を、押圧時に触感を呈示する基準の荷重よりも小さくすることにより、違和感を与えないようにし、かつ、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を、押圧時に触感を呈示する基準の荷重のおよそ50%以上とすることにより、連続入力時の操作性を格段に向上できる。また、リリース時に触感を呈示する基準の荷重を、押圧時に触感を呈示する基準の荷重のおよそ80%以下とすることにより、連続入力時のホールド状態での微小な荷重変化にも対応できる。
【0064】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、図2において、スイッチ回路21,22は、2接点を有する一つのスイッチ回路で構成することもできる。また、図2に示す放電回路16において、スイッチングトランジスタ27は、半導体リレー等を用いて構成することもできる。さらに、圧電素子12は、タッチセンサ11の面積や、振動振幅等に応じて、モノモルフ、ユニモルフ、バイモルフ、積層型等の公知の構造とすることができる。
【0065】
また、本発明は、タッチセンサがオン・オフ動作を行うタッチスイッチとして機能する入力装置にも有効に適用することができる。さらに、本発明に係る入力装置は、圧電素子の出力に基づいて検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、当該圧電素子を駆動する。ここで、圧電素子の出力に基づいて検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際とは、検出される押圧荷重が触感を呈示する基準値に達した際であってもよいし、検出される押圧荷重が触感を呈示する基準値を超えた際でもよいし、圧電素子の出力に基づいて触感を呈示する基準値が検出された際でもよい。
【符号の説明】
【0066】
11 タッチセンサ
11a タッチ面
12 表示部
13 圧電素子
14 接続切換部
15 圧電素子駆動部
16 放電回路
17 制御部
31 筐体
32 インシュレータ
33 アッパカバー
34 インシュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチ入力を検出するタッチセンサと、
前記タッチセンサに装着された圧電素子と、
前記圧電素子を駆動する圧電素子駆動部と、
前記圧電素子の出力信号に基づいて前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出し、該検出される押圧荷重が触感を呈示する基準を満たした際に、前記タッチ面を押圧している押圧対象に対して触感を呈示するように前記圧電素子駆動部により前記圧電素子を駆動する制御部と、
前記圧電素子を前記制御部または前記圧電素子駆動部に選択的に接続する接続切換部と、
前記圧電素子に蓄積された電荷を放電する放電回路と、を備え、
前記制御部は、前記接続切換部を介して入力される前記圧電素子の出力信号に基づいて検出される前記押圧荷重が前記基準を満たした際に、前記接続切換部により前記圧電素子を前記圧電素子駆動部に接続して、該圧電素子駆動部により前記圧電素子を駆動し、
その後、前記制御部は、前記放電回路により前記圧電素子に蓄積されている電荷を放電するように制御する、
ことを特徴とする入力装置。
【請求項2】
前記放電回路は、前記圧電素子とアースとの間に接続されたスイッチング素子を有し、
前記制御部は、前記圧電素子駆動部により前記圧電素子を振動させた直後に、前記スイッチング素子を所定時間導通させて、前記圧電素子に蓄積されている電荷を放電させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。
【請求項3】
前記放電回路は、前記圧電素子とアースとの間に接続された抵抗素子を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−48692(P2011−48692A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197377(P2009−197377)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】