説明

入浴装置及び入浴システム

【課題】浴槽をコンパクトな寸法に抑えて湯量を削減し、給湯のための時間・費用を低減することができる入浴装置及び入浴システムを提供することにある。
【解決手段】浴槽1と、該浴槽1内の底部1aに支持されていて担架30を載せるための支持台3とが備えられる入浴装置10であって、前記底部1aは水平線に対して傾斜させられており、前記支持台3は、水平状態と、前記底部1aに沿って傾斜した状態とを選択的に取り得るようにしたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、病人や寝たきりの老人、身体障害者等の要介助者を入浴させるための入浴装置及び入浴システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、寝たきりの老人や身体障害者や手術直後の患者のような要介助者を入浴させる入浴装置として、要介助者が載せられた担架をストレッチャーで浴槽に横付けし、このストレッチャー上から浴槽内の支持台に移動させるよう構成される入浴装置が知られている。この入浴装置は、浴槽或いは支持台のうち何れか一方を平行移動によって昇降させて、要介助者を湯に浸からせるようになっている(例えば特許文献1参照)。
このような入浴装置によれば、要介助者を介護する介護者が、比較的労力を必要とせず要介助者を入浴させられるようになっている。
【特許文献1】特開平11−206841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、このような入浴装置において昇降を行うためには、この入浴装置の浴槽は要介助者を載置した担架を十分に収容可能な間口・奥行き寸法を有するとともに、この要介助者に肩口までゆったりと湯に浸かってもらうために必要な平行移動で昇降するための高さを確保する必要がある。そのため浴槽が大きくなって入浴に必要な湯量が増え、この浴槽に湯を張るための時間・費用が増大し、また昇降用の装置も大掛かりなものになるという課題があった。
【0004】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、浴槽をコンパクトな寸法に抑えて湯量を削減し、給湯のための時間・費用を低減することができる入浴装置及び入浴システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明は、浴槽と、該浴槽内の底部に支持されていて担架を載せるための支持台とが備えられる入浴装置であって、前記底部は水平線に対して傾斜させられており、前記支持台は、水平状態と、前記底部に沿って傾斜した状態とを選択的に取り得るようにしたことを特徴とする。
【0006】
この発明における入浴装置によれば、入浴時には、支持台に要介助者を載せた担架を載置し、この支持台を底部に沿って傾斜状態とし、要介助者を十分湯に浸からせることができる。また入浴前及び入浴後には、支持台を水平状態として要介助者を容易に入出浴させることができる。このように傾斜された底部に沿って支持台を傾け入浴を行うことにより、入浴に必要な湯の容積を削減することができる。
【0007】
本発明の入浴装置において、支持台は、担架を案内させるガイドレールと、底部の比較的高い位置近傍に設けられた回転支軸と、ガイドレールを回転支軸を中心に回動させる昇降部とを備えていることとしてもよい。これにより、支持台の昇降は回転支軸を中心とした回転動作により行われるため、支持台の昇降のための移動距離が極力少なく抑えられるとともに、要介助者を十分に湯に浸かる位置まで昇降させることができる。また、入浴装置本体を昇降させたり或いは支持台を平行移動によって昇降させたりするための大掛かりな昇降機構が不要となり、これらを構成する部材費用を低減できるとともに、入浴装置のコンパクト化を図ることができる。
【0008】
本発明の入浴装置において、底部の下方には、浴槽内へ移送可能な湯を溜めるタンクが設けられていることとしてもよく、これにより、浴槽への給湯を装置外の給湯設備から時間をかけて少しずつ行うことなくタンクから短時間に浴槽内へ供給することができるので、給湯時間が短縮され、浴槽内の要介助者を迅速に湯に浸からせることができる。
【0009】
本発明の入浴装置において、浴槽の第一側壁の上部には開口部が設けられ、開口部を開閉させる扉部が備えられていることとしてもよく、これにより、担架に載せられた要介助者をこの開口部で水平移動させて浴槽内又は浴槽外へ入出浴させることができるので、要介助者を浴槽の最上端まで持ち上げたり、或いは浴槽の深さを確保するために装置を床下まで掘り下げたりすることなく、安全且つ簡便に要介助者の入出浴を行うことができる。
【0010】
本発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の入浴装置と、前記浴槽の側方に横付けされるストレッチャーと、前記支持台及び前記ストレッチャーの間を移動可能に載置される前記担架とから構成される入浴システムであって、前記入浴装置に前記ストレッチャーが横付けされた状態で、前記ストレッチャーに備えられる車輪が前記浴槽の下方に進入すると共に、前記担架の一端部が、前記浴槽内に突出して配置されることを特徴とする。
【0011】
この発明における入浴システムによれば、車輪は浴槽の下方に、担架の一端部は浴槽内に突出して配置されるようになっている。よって要介助者を介護する介護者が、ストレッチャーの入浴装置側と反対側に立った状態で要介助者を載せた担架を浴槽とストレッチャーとの間で移動させる際に移動距離が短くてすみ、容易且つ安全に移送を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る入浴装置及び入浴システムによれば、浴槽をコンパクトな寸法に抑えて湯量を削減し、給湯のための時間・費用を低減するとともに、昇降機構を簡便・安価に構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る入浴装置を示す平面図、図2は入浴装置の側面図、図3は図2における支持台の拡大図である。図4は本発明の一実施形態に係る入浴システムにおいて支持台が降下した状態を示す概略断面図、図5は図4における支持台と担架との関係を示す拡大図である。図6は担架を載置した状態のストレッチャーを示す正面図、図7はストレッチャーを示す側面図、図8は入浴システムを示す平面図である。図9は入浴システムを示す正面図、図10は担架が入浴装置に移送された状態の入浴システムを示す平面図、図11は図10の入浴システムを示す側面図である。
【0014】
図1及び図2において、入浴装置10は、入浴装置本体2と、この入浴装置本体2の上部に開口して設けられる浴槽1と、浴槽1の底部1aに配置される支持台3と、入浴装置本体2の第一側壁2aに設けられる扉部4と、入浴装置10の操作を行うための操作部5とを備えている。
【0015】
図2において、第一側壁2aの上部には開口部2bが形成されており、扉部4は、第一側壁2aの高さ方向に沿って移動可能に構成され、開口部2bを開閉させるようになっている。この扉部4が上方へと移動され開口部2bを閉じた状態において、扉部4の浴槽1側の面に設けられる不図示のシール部材が、この開口部2bの上方を除く周囲3方を液密に密閉させることができるよう構成されている。またこの第一側壁2aの下部には、凹状の2つのポケット7が下方に開口されて形成されており、入浴装置10の長手方向の一方と他方とに夫々設けられている。第一側壁2aと反対側の壁部は第二側壁2cとされており、この第二側壁2c側の下方の入浴装置本体2の内部には、浴槽1に張るために十分な湯を蓄えることのできるタンク8が内蔵されている。
【0016】
図2に示すように、底部1aは、浴槽1の長手方向に傾斜されて形成されている。底部1aは、操作部5の側を傾斜の上方として、操作部5の反対側に向かうにつれ徐々に深くなるよう形成されている。また壁部1bは、この浴槽1の長手方向の操作部5の側と反対側の側板を形成している。壁部1bは前記長手方向に傾斜されており、該長手方向の操作部5側と反対側を傾斜の上方として、操作部5側に向かうにつれ徐々に深くなるよう形成され、底部1aとこの浴槽1の最深部で繋がっている。
【0017】
底部1aの上面には、支持台3が配置されている。この支持台3は、図1に示すように、例えば浴槽1の長手方向と直交する向きに平行に離間して延在する2本のガイドレール3a,3bと、このガイドレール3a,3bを上面に固定し前記長手方向に平行に離間して延在する2本の角形基材3cと、これら角形基材3cの操作部5側の端部に配設される2つの回転支軸3dとを備えている。ガイドレール3a,3bは、その形状が互いに向かい合わされた対称形とされて、角形基材3cの上面に固定されて配置されている。これらのガイドレール3a,3bはその本体が角棒状の形状を有しており、その扉部4側の端部は先端がテーパ状に形成されている。
【0018】
図1及び図3に示すように、ガイドレール3a,3bは、その先端のテーパ状の上面が、扉部4側からその反対側に行くにしたがって徐々に上方へと向かって傾斜するように形成されている。また、これら向かい合うガイドレール3a,3bの先端外側に形成されるテーパ状の外面は、夫々扉部4側からその反対側に行くにしたがって徐々に外方へと向かって傾斜するように形成されている。ガイドレール3a,3bの内側には、これらガイドレール3a,3bに沿うようにしてLアングル3i,3jが夫々のガイドレールにその断面L字状の一の外面を接合されて、他の外面を上方へ向けた状態で対向配置されている。
【0019】
また図1に示すように、2本の角形基材3cの回転支軸3d近傍には、これら角形基材3cに架設されるようにして角形基材3eが固定されている。また2本の角形基材3cは、その両ガイドレール3a,3bの配置される位置の略中央部にロック支持板3fを架設し固定している。また前記ロック支持板3fの上面には、フック付きのツメを有するロック部材3gがそのツメを扉4側へ向けて配設されている。2つの回転支軸3dは、略円柱状の形状を成し、前記2本の角形基材3cの向かい合う内面の操作部5側の夫々の端部に、互いの軸線を同一線上となるように向かい合わされて配置され、固定されている。
【0020】
回転支軸3dの下方には、支軸受板3hが、この入浴装置10の長手方向と直交する方向に延在して底部1aに固定されている。支軸受板3hの両端には、回転支軸3dが軸線回りに回動可能に支持されている。また、図2に示すように、ガイドレール3bの下方には、昇降部6が設けられている。この昇降部6は、昇降動作を行うためのシリンダ6bと、シリンダ6bから上方に延び浴槽1の前記最深部を液密に貫通する昇降ロッド6aとを備えている。シリンダ6bは、入浴装置本体2に固定支持されており、昇降ロッド6aを上下方向に昇降させるようになっている。昇降ロッド6aは、その上端をガイドレール3bの裏面に設けられるロッド軸支部3kに回転可能に軸支させており、シリンダ6bの昇降駆動をガイドレール3bに伝達させるようになっている。図2、図3における支持台3は入浴準備・入浴終了状態を示しており、図4、図5における支持台3は入浴状態を示している。図4及び図5において、支持台3は底部1aに沿った位置まで傾けられている。
【0021】
図6及び図7において、担架30は、要介助者を載せるための台であり、ストレッチャー20は、担架30をその上面に載置し、要介助者を浴室から脱衣室、脱衣室から浴室或いは脱衣室から病室(居室)、病室(居室)から脱衣室へと移送させるためのものである。また図8〜図11に示すように、入浴システム50は、入浴装置10と、ストレッチャー20と、担架30とから構成されている。図8及び図9において、入浴システム50は担架30を載置したストレッチャー20が入浴装置10の第一側壁2aの側に横付けされた状態である。また図10及び図11において、入浴システム50は担架30が入浴装置10に移送された状態である。
【0022】
図6及び図7に示すように、ストレッチャー20は、担架30を載置するための天板21と、この天板21を水平状態に保ちつつ上下方向に昇降させるための昇降装置25と、このストレッチャー20を支持し自在に移動させるための4つの車輪24とを備えている。昇降装置25は、フレーム22とシリンダ23とにより構成されている。フレーム22は、天板21を水平状態に保ちつつ上下方向に昇降可能に支持しており、シリンダ23は、フレーム22を可動させる動力源である。また図6に示すように、このストレッチャー20は、担架30を天板21上に載置した状態で正面視コ字状に形成されている。天板21及び昇降装置25は前記コ字の柱部を形成し図6の正面視右方へ極力寄せられるようにして配置されている。
【0023】
図10に示すように、天板21の上面には、天板21の長手方向と直交する方向に平行に離間して延在する2本のガイドレール21a,21bが固定されている。これらのガイドレール21a,21bの配置される間隔は、ガイドレール3a,3bの配置される間隔と同一とされている。両ガイドレール21a,21bはその本体が角棒状の形状を有しており、図6に示す正面視コ字の開口側のその端部先端がテーパ状に形成されている。
【0024】
ガイドレール21a,21bは、その先端のテーパ状の上面が、正面視コ字の開口側の端部からその反対側に向かうにつれ徐々に上方へと傾斜するように形成されている。また、これら向かい合うガイドレール21a,21bの先端外側に形成されるテーパ状の外面は、夫々正面視コ字の開口側の端部からその反対側に向かうにつれ徐々に外方へと傾斜するように形成されている。両ガイドレール21a,21bの内側には、これらガイドレール21a,21bに沿うようにしてLアングル21d,21eが夫々のガイドレールにその断面L字状の一の外面を接合されて、他の外面を上方へ向けた状態で対向配置されている。また天板21の上面には、両ガイドレール21a,21bの配置される略中央部にフック付きのツメを有するロック部材21cがそのツメを正面視コ字の開口側へ向けて配設されている。
【0025】
また、図7、図8に示すように、担架30は、その長手方向の一方の端部にヘッドレスト31を設けている。またヘッドレスト31の他方の側には背もたれ32が設けられており、さらにその他方の側には座面33が設けられている。そして要介助者が、ヘッドレスト31にその頭部を載せ、長手方向の他方の側に足部を向けるようにして座面33と背もたれ32とに体重を預けこの担架30に載せられるようになっている。
【0026】
この担架30の座面33の裏面には、図7に示すように、ローラー34a,34bが夫々複数ずつ設けられている。これらのローラー34a,34bは担架30の長手方向と平面視直交する方向に同一線上に並べられ、ローラー34aの列とローラー34bの列とが互いに平行に離間するように設けられている。またこれら両ローラー34a,34bの配置される間隔は、ガイドレール21a,21bが離間して配置される間隔と同一とされている。両ローラー34a,34bは、ローラー支持体36により軸支されその軸線を中心に回転可能とされ配設されている。
【0027】
また両ローラー34a,34bの外側には、複数のサイドローラー35がローラー支持体36に垂設されている。サイドローラー35は、その軸線を鉛直方向に向け軸線回りに回転可能とされている。また両ローラー34a,34bの内側にあるローラー支持体36の夫々の内面には、Lアングル37が設けられている。このLアングル37は、ストレッチャー20のLアングル21d,21eと若干の隙間を設けて嵌め合わされている。また、両ローラー34a,34bの内側の略中央部にはロック部材21cのツメと係合するためのピンを設けるロック受部38が備えられ、ロック部材21cとロックされ、固定されている。
【0028】
次に、上記のように構成される入浴装置10及び入浴システム50の作用について説明する。
図6、図7に示すように、ストレッチャー20の天板21の上面に、担架30を載置する。詳しくは、図7においてローラー34aがガイドレール21aの上面に載置され、ローラー34bがガイドレール21bの上面に載置される。そしてこの担架30は、その長手方向と直交する方向に往復移動可能とされている。このようにして担架30がストレッチャー20上に載置された状態において、サイドローラー35は、両ガイドレール21a,21bの外側の面に夫々摺接されるようにして配置され、両ローラー34a,34bが両ガイドレール21a,21bから担架30の長手方向に脱落するのを防止するようになっている。これにより担架30はストレッチャー20に対し担架30の長手方向に不可動とされている。
【0029】
またLアングル37は、ガイドレール21a,21bに配設されるLアングル21d,21eと遊嵌状態に配設されており、この担架30がストレッチャー20から上方へと跳ね上がって脱落するのを防止している。そしてロック受部38がロック部材21cとロックされ固定された状態で、担架30の上面に要介助者を載せる。
【0030】
また図2に示すように、入浴装置10は、予め扉部4を下げ開口部2bを開口状態とし、支持台3を水平状態にしておく。タンク8には、入浴に適した温度の湯を溜めておく。次に図8、図9に示すようにして、担架30を載置したストレッチャー20を、入浴装置10の第一側壁2aの側へ横付けし固定する。
【0031】
ストレッチャー20が入浴装置10へと横付けされた状態で、図9に示すように、このストレッチャー20の入浴装置10側に配置される2つの車輪24は、夫々ポケット7に収納されるようになっている。これにより、これらの車輪24が第一側壁2aにぶつかりそれ以上入浴装置10側へ接近できなくなることを防止している。
【0032】
また、図8に示すように、担架30の入浴装置10側の一端部は、浴槽1内へと突出されて配置されている。入浴装置10のガイドレール3aとストレッチャー20のガイドレール21aとは平面視同一線上となるよう配置されており、ガイドレール3bとガイドレール21bとも、平面視同一線上となるよう配置されている。そしてストレッチャー20は、ガイドレール3aとガイドレール21a及びガイドレール3bとガイドレール21bの夫々の上面の高さを合わせるようにして、昇降装置25により予め高さを調整されている。そして担架30は、支持台3の方向へと水平に移送可能なようになされている。
【0033】
具体的には、担架30の裏面に備えられる複数のローラー34aがガイドレール3a,21aの上面に夫々載置され、同様にしてローラー34bがガイドレール3b,21bの上面に夫々載置されている。また複数のサイドローラー35がガイドレール3a,3b及びガイドレール21a,21bの外側の面に夫々摺接されるようにして配置され、両ローラー34a,34bがガイドレール3a,3b及びガイドレール21a,21bから担架30の長手方向に脱落するのを防止するようになっている。これにより、担架30はその長手方向に不可動とされている。また図7、図11に示すように、Lアングル37は、Lアングル3i,3j及びLアングル21d,21eと遊嵌状態に配置されており、この担架30が上方へと跳ね上がって脱落するのを防止している。
【0034】
このようにしてストレッチャー20が入浴装置10へ横付けされた状態において、図7におけるストレッチャー20のロック部材21cと担架30のロック受部38とのロックを、不図示のロック解除レバーにより解除し、担架30を浴槽1へと水平に押し出し移送する。そして担架30を、ガイドレール3a,3bの延在する方向に所定の位置まで移動させていくと、図11に示すようにロック受部38が入浴装置10のロック部材3gと係合されてロックされ、担架30はその長手方向と直交する向きに不可動とされ支持台3上に固定される。
【0035】
また、図10において、担架30が支持台3上に乗り替わりロックされた状態を確認後、扉部4を上方へと移動させ、開口部2bを閉じてこの開口部2bの上方を除く周囲3方を液密に密閉させる。そしてタンク8に溜められた湯を浴槽1内に給湯させる。
【0036】
浴槽1内に湯が満たされた後、介護者はさらに要介助者を肩口まで湯に浸からせるため支持台3を降下させる。この降下は、昇降部6によりなされる。図4及び図5に示すように、シリンダ6bは、昇降ロッド6aを降下させ、昇降ロッド6aはガイドレール3bを降下させる。この降下により、支持台3は、水平状態から回転支軸3dを回転支点としてガイドレール3b側を降下させるように回転移動させられて傾斜させられていく。このようにして支持台3が降下されると、支持台3に載置される担架30及び要介助者も同様にして回転支軸3dを中心として回転移動し傾斜させられていく。
【0037】
降下された状態において、要介助者は腰から肩口までゆったりと湯に浸かれるようになされている。この状態で担架30の座面33と底部1aとは略平行となされており、背もたれ32と壁部1bとも略平行となされている。また座面33と背もたれ32とが成す角度、底部1aと壁部1bとが成す角度は夫々略同一とされている。そして担架30の座面33の裏面と背もたれ32の裏面とが、夫々底部1a、壁部1bに近接されて配置されている。このように構成されることにより、この浴槽1の湯の容積は必要最小限に抑えられているとともに、要介助者をゆったりと湯に浸からせることができる。また降下の前後において、座面33と背もたれ32とが成す角度を特に調整する必要はなく、この調整作業による介護者の負荷を軽減することができる。
【0038】
また降下の下端において、サイドローラー35は、両ガイドレール3a,3bの外側の面に摺接されるようにして配置され、両ローラー34a,34bが両ガイドレール3a,3bから担架30の長手方向に脱落するのを防止するようになっている。これにより、担架30はその長手方向へ不可動とされている。またLアングル37は、Lアングル3i,3jと遊嵌状態とされており、この担架30が支持台3から上方へと跳ね上がり脱落することがないようになされている。また、ロック受部38はロック部材3gと係合されロックされているので、担架30はその長手方向と平面視直交する方向にも不可動とされている。よって、この担架30は全方向へ対し不可動の状態とされているため、この傾斜した支持台3から脱落する虞がない。
【0039】
入浴が行われた後は、支持台3を水平状態に戻す。そして、浴槽1に溜められている湯を不図示の排水口から排水させる。入浴に使用された湯は使いまわされることなく入浴ごとに排出されるため、衛生的であり、要介助者の精神的ストレスを低減することができる。湯が排出されると、扉部4が下方へと移動され、開口部2bを開放させる。その後の工程は、前述の入浴工程と逆の工程により行われ、出浴作業がなされるようになっている。
【0040】
以上説明したように、本実施形態における入浴装置及び入浴システムによれば、支持台3の昇降の移動距離が極力少なく抑えられつつ、要介助者に腰から肩口までゆったりと湯に浸かってもらえる位置まで支持台3の回動により昇降させることができる。また、底部1aを水平線に対して傾斜して構成したので、浴槽1に張られる湯の容積を極力低減することができ、水道費用が削減されるとともに、湯の入れ替えに要する時間を短縮し要介助者への精神的負荷を低減することができる。またこの機構によれば、浴槽自体を昇降させたり或いは支持台3を平行移動によって昇降させたりするための大掛かりな昇降機構は不要であり、これらを構成する部材費用を低減できるとともに、入浴装置10のコンパクト化を図ることができる。
【0041】
また、浴槽1に湯を供給するためのタンク8から、短時間で浴槽1へ給湯するので、浴槽1内で要介助者が湯に浸かるまでの時間を極力短縮でき、要介助者への精神的・体力的負荷を低減させることができる。また、開口部2bを開閉させる扉部4が備えられており、担架30に載せられた要介助者はこの開口部2bを開口させた状態で水平移送されて浴槽1へ入出浴されるので、この要介助者の入浴を安全且つ簡便に行うことができる。
【0042】
また、入浴装置10にストレッチャー20が横付けされた状態で、ストレッチャー20に備えられる車輪24が浴槽1の下方に収納され、担架30の浴槽1側の一端部が浴槽1内に突出して配置されるようになっている。よってストレッチャー20の要する幅が極力抑えられ、介護者がストレッチャー20の入浴装置10側と反対側に立った状態においても、担架30に載置される要介助者を浴槽1へ入出浴させる際に移動距離が短くてすみ、容易且つ安全に入出浴作業を行うことができる。
【0043】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、本実施形態では昇降部6はシリンダ6bにより昇降される構成としたが、昇降が可能な構成であればこれに限られることなく、モータにより昇降させる構成としてもよい。また、本実施形態では浴槽1内に給湯を行った後、担架30を降下させるとしたがこれに限らず、担架30を降下させた後に給湯を行うこととしてもよい。
【0044】
また本実施形態では、ストレッチャー20は担架30に載せられる要介助者を搬送させるためのものであるが、本発明に係るストレッチャーは、担架30に載せられる要介助者の身体を洗浄するための洗浄台や、座位した要介助者を移送するための車椅子状のリクライナーも含む概念である。また本発明に係る担架は、リクライナーに使用される座部も含む概念である。よって、ストレッチャー20に代えて前記洗浄台や前記リクライナーを使用することとしてもよい。或いは、車椅子から浴槽1内の担架30へ要介助者を移送して入浴させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の一実施形態に係る入浴装置を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る入浴装置を示す側面図である。
【図3】図2における支持台の拡大図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る入浴システムにおいて支持台が降下した状態を示す概略断面図である。
【図5】図4における支持台と担架との関係を示す拡大図である。
【図6】担架を載置した状態のストレッチャーを示す正面図である。
【図7】担架を載置した状態のストレッチャーを示す側面図である。
【図8】本発明の一実施形態に係る入浴システムを示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る入浴システムを示す正面図である。
【図10】担架が入浴装置に移送された状態の入浴システムを示す平面図である。
【図11】図10の入浴システムを示す側面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 浴槽
1a 底部
2a 第一側壁
2b 開口部
3 支持台
3a,3b ガイドレール
3d 回転支軸
4 扉部
6 昇降部
7 ポケット
8 タンク
10 入浴装置
20 ストレッチャー
24 車輪
30 担架
50 入浴システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、該浴槽内の底部に支持されていて担架を載せるための支持台とが備えられる入浴装置であって、
前記底部は水平線に対して傾斜させられており、
前記支持台は、水平状態と、前記底部に沿って傾斜した状態とを選択的に取り得るようにしたことを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
前記支持台は、担架を案内させるガイドレールと、前記底部の比較的高い位置近傍に設けられた回転支軸と、前記ガイドレールを前記回転支軸を中心に回動させる昇降部とを備えていることを特徴とする請求項1記載の入浴装置。
【請求項3】
前記底部の下方には、浴槽内へ移送可能な湯を溜めるタンクが設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の入浴装置。
【請求項4】
前記浴槽の第一側壁の上部には開口部が設けられ、
前記開口部を開閉させる扉部が備えられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の入浴装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の入浴装置と、前記浴槽の側方に横付けされるストレッチャーと、前記支持台及び前記ストレッチャーの間を移動可能に載置される前記担架とから構成される入浴システムであって、
前記入浴装置に前記ストレッチャーが横付けされた状態で、
前記ストレッチャーに備えられる車輪が前記浴槽の下方に進入すると共に、
前記担架の一端部が、前記浴槽内に突出して配置されることを特徴とする入浴システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−278980(P2008−278980A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124067(P2007−124067)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)
【Fターム(参考)】