説明

入浴装置

【課題】入浴者を載せた車椅子を可動浴槽内に移送する際に介助者の労力を軽減する。
【解決手段】入浴装置は、固定台に対して回転軸18回りに回動可能な可動浴槽14を設けた。可動浴槽14の一端から内部に延びる切欠31を設け、車椅子の着座部8を支持する支持ロッド7を切欠31に通して可動浴槽14内に移動させる。切欠31には開閉可能な一対のシール部材を設け、支持ロッド7を切欠31内の仮保持位置と正規の保持位置に選択的に保持する。車椅子の支持ロッド7が可動浴槽14内の仮保持位置に進入するとリミットスイッチ38で検知し、駆動シリンダ28によって可動浴槽14を入出位置から基準位置に回動させ、可動浴槽14に設けたガイド部40で車椅子3を仮保持位置から正規の保持位置に押して嵌合凹部で支持ロッド7を液密に保持する。可動浴槽14を車椅子と一体に基準位置から入浴位置まで回動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば身体の不自由な人等の入浴者を車椅子に載せた状態で入浴できるようにした入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、体が不自由で介助が必要な者(以下、要介助者と記す。)を車椅子に載せて浴槽に入浴させる装置として、例えば下記特許文献1、2に記載された入浴装置が提案されている。
特許文献1に記載された入浴装置は、浴槽の側部に開閉可能な扉を設けると共に、車椅子のキャスターを設けた台座から支持ロッドを起立させてその上部に入浴者を着座させる椅子部を設けている。そして、浴槽の扉を開けた状態で、車椅子に載せられた入浴者が、浴槽の底部に設けた底部シール部材でシールされた線状の切欠内を支持ロッドが移動することで、車椅子を浴槽内に進入させるようにしている。そして、支持ロッドが切欠内の最奧部に到達した状態で、扉を閉めて浴槽内に湯を満たすことで入浴できる。
この入浴装置では、車椅子のキャスターが浴槽の底部から下方に出ているので、浴槽内の清潔を維持できる。
【0003】
特許文献2に記載された入浴装置は、回動可能な浴槽を傾斜位置に保持した状態で、浴槽内に移動可能に設けたチェアーに入浴者を載せ、チェアーの着部下面に設けたローラーとコロによって浴槽内の底部に設けたガイド溝に沿ってチェアーを浴槽内に移送させる。その後、浴槽を水平位置に戻して湯を満たすことで入浴できる。
この入浴装置では、チェアーが浴槽内に移動可能に備え付けられているので、浴槽内の清潔を維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2572559号公報
【特許文献2】特許第2628567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された入浴装置は固定保持された浴槽の側部に扉を設けた構成であるため、浴槽が大型化するという欠点がある。また、特許文献2に開示された入浴装置は側断面視略V字状の浴槽を傾斜可能に形成したため、上述の特許文献1と比較して浴槽が大型化せず小型の入浴装置を提供できる利点があるが、入浴者を着座させるためのチェアーが浴槽に備え付けのものであるため、浴室で通常の車椅子や担架からチェアーに入浴者を乗り換えさせる必要があり、浴室が狭い場合には車椅子を浴室内に移送できないために、介助者によって身体の不自由な要介助者を持ち運ばなければならず、煩雑である上に入浴の都度多くの人手を要するという欠点があった。
しかも、上述した入浴装置はいずれも要介助者が載った車椅子を浴槽内の正規の保持位置まで介助者が押し込まなければならないため、介助者の負担が大きかった。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みて、要介助者が載せられた車椅子を可動浴槽内に移送する際に介助者の労力を軽減できるようにした入浴装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による入浴装置は、車椅子に載せた入浴者を入出位置に傾けた可動浴槽内に移送し、車椅子を保持した可動浴槽を略水平状態の入浴位置に回動させて湯を満たすことで入浴者を入浴させるようにした入浴装置において、可動浴槽の一端部から内部に延びて形成されていて車椅子の着座部を支持する支持部材を可動浴槽内に移動可能な切欠と、切欠を開閉可能であって支持部材を途中の仮保持位置と正規の保持位置に保持可能なシール部材と、車椅子の支持部材が可動浴槽内の仮保持位置に進入することを検知する検知手段と、検知手段で車椅子の進入を検知することで可動浴槽を回動させて入出位置から基準位置に回動させて車椅子の支持部材を可動浴槽内の仮保持位置から正規の保持位置に移動させる駆動手段とを備えたことを特徴とする。
本発明による入浴装置によれば、入出位置に傾けた可動浴槽内に介助者が車椅子を移送することで、切欠から支持部材を進入させて車椅子の着座部を可動浴槽内の仮保持位置に移送させると、検知手段で支持部材が仮保持位置にあることを検知して駆動手段を作動させて可動浴槽を回動させることができ、可動浴槽を入出位置に傾いた状態から比較的入浴位置に近い基準位置に回動させることで、車椅子とその支持部材を可動浴槽内の仮保持位置から正規の保持位置に移動させて着座部を可動浴槽内の正規の保持位置に支持できる。そして、パネルスイッチ等の作動スイッチを操作することで、可動浴槽を駆動手段によって更に回動させて略水平状態の入浴位置に保持でき、この状態で可動浴槽内に湯を供給することで車椅子の着座部に着座する入浴者は入浴状態になる。
【0008】
また、可動浴槽の回転軸は可動浴槽の切欠とは反対側に設けることが好ましい。
可動浴槽を基準位置から入浴位置に回動させる際、閉塞したシール部材によって車椅子が保持されており、回転軸を可動浴槽の切欠と反対側に設けることで、車椅子のキャスターは持ち上げる方向に回動されるから、床面と干渉することはなくスムーズに可動浴槽を回動できる。
【0009】
また、切欠に設けたシール部材を開閉可能な開閉手段が設けられ、開閉手段は支持部材が正規の保持位置に保持されたことを検知して、シール部材を閉鎖させることが好ましい。
車椅子の支持部材が正規の保持位置に保持されたことを検知して、開閉手段によってシール部材で形成した切欠を閉鎖させることで可動浴槽を液密に支持することができ、入浴位置で湯を供給しても漏水することを防止できる。しかも、切欠をシール部材で液密に閉鎖することで、車椅子の支持部材を強固に保持できるから、可動浴槽を回動させると車椅子を一体に回動できる。
【0010】
また、可動浴槽の底面にはガイド部が設けられ、入出位置にある可動浴槽を基準位置まで回動させることでガイド部が車椅子の着座部を仮保持位置から正規の保持位置に押し込むようにしてもよい。
仮保持位置に保持された車椅子の着座部に対して、可動浴槽を回動することで着座部にガイド部が当接して押すことによって着座部を可動浴槽の内奧部側に移動させて車椅子の着座部と支持部材を可動浴槽の奧側に押し込んで着座部と支持部材を正規の保持位置に保持できる。
【0011】
また、車椅子の仮保持位置で、車椅子に設けた第一当接部が可動浴槽の第一当接面に当接して車椅子を停止させ、車椅子の正規の保持位置で、車椅子に設けた着座部が可動浴槽の内壁に当接して車椅子を停止させるようにしてもよい。
車椅子の支持部材を切欠に沿って可動浴槽内に移送させ、第一当接部が可動浴槽の第一当接面に当接して車椅子を停止させ、その後、駆動手段によって可動浴槽を基準位置まで回動させることで、車椅子の支持部材が正規の保持位置に保持され、車椅子に設けた着座部が可動浴槽の内壁に当接して車椅子を正規の保持位置に停止させる。
【発明の効果】
【0012】
本発明による入浴装置によれば、可動浴槽内に車椅子の着座部を進入させる際、介助者は車椅子の支持部材を切欠に沿って進入させて仮保持位置まで移送させればよく、検知手段で仮保持位置に送られた車椅子を検知手段で検知して駆動手段を駆動させることで自動的に車椅子を正規の保持位置まで移送できるから、従来、車椅子を浴槽内の正規の保持位置まで押し込んでいた介助者の負担を軽減できる。
【0013】
また、本発明による入浴装置は、可動浴槽を回動させることで、車椅子が出入り可能な入出位置と入浴可能な入浴位置との間で可動浴槽の姿勢を変更できるから、可動浴槽が固定型のものと比較して小型であり湯量が少なくて済むという利点がある。しかも、入浴用の車椅子を可動浴槽と別個に設けて着脱可能としたことで、狭い浴室でも入浴者を通常の車椅子から浴槽に取り付けられた車椅子に移し替えて入浴させる必要がなく、車椅子の着座部と背もたれ部を可動浴槽内に保持してキャスターは支持部材を介して可動浴槽の切欠より下側に位置させたから入浴時に可動浴槽内が汚れるおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態による入浴装置を示すものであり、入浴用の車椅子と入出位置に傾斜させられた浴槽とを示す側面図である。
【図2】可動浴槽が水平状態で入浴状態にある入浴装置を示す側面図である。
【図3】入出位置にある可動浴槽内に車椅子が進入した状態を示す側断面図である。
【図4】可動浴槽に設けた支持ロッドのシール部材付き切欠の斜視図である。
【図5】可動浴槽のシール部材付き切欠を可動浴槽の裏面側から見た要部斜視図である。
【図6】シール部材付き切欠に車椅子の支持ロッドが進入して正規の保持位置に保持された状態を示す斜視図である。
【図7】車椅子を収納した可動浴槽が入出位置から基準位置に至る途中工程を示す側断面図である。
【図8】可動浴槽を基準位置に保持した側断面図である。
【図9】可動浴槽を入浴位置に保持した側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態による入浴装置について、図面に基づいて説明する。
図1及び図2に示す入浴装置1は、床面に設置された回動可能な浴槽2と浴槽2内に移送可能な入浴用の車椅子3とが設けられている。
車椅子3は、例えば四角形枠に形成された台座5とこの台座5の四隅に設けられたキャスター6とを備えている。台座5の進行方向の端部には支持部材として支持ロッド7が支持され、その上部には入浴者が着座するための着座部8と背もたれ部9及び頭部載せ部9aとが設けられている。着座部8の前方には足を載せるフットレスト10が連結されて設けられ、着座部8の両側部には肘掛け部11が形成されている。着座部8の中央部分にはコロ12が回転可能に支持されている。
【0016】
また、浴槽2は、床面に支持される固定台13と固定台13に対して回動可能で車椅子3を受け入れ可能な可動浴槽14とが設けられている。固定台13の下部には可動浴槽14内の湯を排出する排湯ペダル15が設けられている。
次に、図3乃至図6により浴槽2の内部構造を説明する。
図3に示す浴槽2には、固定台13の外筺が省略された内部構造と可動浴槽14の断面とが開示されている。可動浴槽14の下部には側面視略L字形状に形成された基部16が設けられ、その背面側(図中、右側)には湯を溜めるタンク17が設けられている。基部16の起立支柱の上端部には可動浴槽14の回転軸18が取り付けられ、この回転軸18には支持部19を介して板状の基台20が前方(図中、左側)に向けて配設されており、この基台20は平板部分とその先端側の上方へ屈曲する屈曲部分とで断面視略への字状に屈曲して形成されている。なお、基台20は屈曲に代えて湾曲する板状でもよいし、屈曲しない単一の平板でもよい。
【0017】
基台20の上面には可動浴槽14が取り付けられている。可動浴槽14は側断面視で略V字状に形成されており、一方の内壁21aと他方の内壁21bとの交差角が90度を超えた鈍角に設定されている。可動浴槽14の一方の内壁21aには、車椅子3を可動浴槽14内に移送させた際に車椅子3の頭部載せ部9aの背面に設けた第一当接軸23が当接可能な第一当接面24が設けられている。
また、可動浴槽14内の正規の保持位置に車椅子3が収容されると、他方の内壁21bに着座部8が当接し載置されることになる。
また、基部16には、駆動手段として油圧等の駆動シリンダ28が取り付けられ、駆動シリンダ28の進退可能なロッド29は基台20に連結されている。そのため、駆動シリンダ28を駆動させてロッド29を進退させることで基台20を押動させて回転軸18周りに可動浴槽14を回動可能としている。
【0018】
ところで、浴槽2は、固定台13内の回転軸18に対して可動浴槽14が回動可能とされている。例えば、可動浴槽14の上面14aが、水平面に対して反時計回りに所定角度、例えば28度傾斜させられた図3に示す位置を、車椅子3が移送して可動浴槽14内に入出可能な入出位置とする。そして、図8に示すように、入出位置から回転軸18を中心に可動浴槽14が時計回りに例えば8度回転した位置、即ち可動浴槽14の上面14aが水平面に対して反時計回りに−20度傾斜した位置を、基台20が水平状態にある基準位置とする。
更に、基準位置から回転軸18を中心に可動浴槽14が時計回りに20度回転した水平位置を、図9に示すように、可動浴槽14の上面14aが水平状態にある入浴位置とする。
【0019】
また、基台20の他方の内壁21bには、その前端側(図3で左端側)から可動浴槽14の一方の内壁21aとの交差部に向けて途中まで車椅子3の支持ロッド7を移動させるための略直線状の切欠31が形成されている。図4乃至図6に示す切欠31の拡大図において、切欠31を形成する両側面にはシール部材32、32が対向して開閉可能に配設され、その内奧部には支持ロッド7を受け入れて保持するための正規の保持位置として略半円形の嵌合凹部33がそれぞれ形成されている。
特に図5において、シール部材32、32の両側には各シール部材32を開閉作動させるための開閉手段として開閉シリンダ35、35が複数、例えば2組ずつ配設されている。また、切欠31の最奧部の嵌合凹部33に支持ロッド7が到達して当接した位置でONするスイッチ36が検知手段として設けられている。このスイッチ36がONすると、図6に示すように、開閉シリンダ35が作動してシール部材32、32を互いに当接させて嵌合凹部33内に支持ロッド7を液密に挟んで切欠31を閉鎖する。支持ロッド7が嵌合凹部33内に位置しないスイッチOFFの状態では、シール部材32、32が開放状態に保持されて、切欠31内を支持ロッド7が進入及び退出可能とされている。
【0020】
また、基台20の下面には、車椅子3の台座5が浴槽2の固定台13の下側に進入した際に、支持ロッド7が嵌合凹部33に到達する少し前の仮保持位置で台座5によってON作動させられるリミットスイッチ38が設けられている。リミットスイッチ38のONによって駆動シリンダ28が作動させられ、基台20及び可動浴槽14を、下方に傾斜した入出位置から基準位置まで例えば8度上昇させることになる。
また、基台20において、嵌合凹部33近傍の上面には例えば断面略直角三角形で長辺の斜面40aを設けたガイド部40が設けられている。可動浴槽14が入出位置から回動して上昇する際、車椅子3の着座部8に設けたコロ12がガイド部40の斜面40aに当接して押されることで、車椅子3が可動浴槽14の奥側の正規の保護位置へ移動するようにガイドされる。
【0021】
本実施形態による入浴装置1は上述の構成を備えており、次にその作用として入浴方法を説明する。
要介助者を入浴させる場合、図1に示す入浴装置1の可動浴槽14は固定台13に対してタンク17と反対側、例えば左側が下方に傾斜した入出位置にある。この状態で、可動浴槽14は上面14aが水平面に対して例えば−28度傾斜した状態にある。この状態で、可動浴槽14はシール部材32、32が開いていて切欠31が開放された状態にあるため、図示しない入浴者が着座された車椅子3を後ろ向きにして介助者が可動浴槽14に誘導する。
【0022】
車椅子3を可動浴槽14内に移動させると、台座5が固定台13の下側に潜り込み、着座部8及び背もたれ部9は可動浴槽14内に進入し、支持ロッド7は切欠31内を最奧部に向けて進入する。そして、図3に示すように、車椅子3の着座部8と背もたれ部9が可動浴槽14内に進入して、背もたれ部9に設けた第一当接軸23が可動浴槽14の一方の内壁21aの第一当接面24に当接した位置で止まる。
この位置で、支持ロッド7は切欠31の最奧部の凹部33に到達していない位置にあり、車椅子3の着座部8の背部は一方の内壁21aとの間に隙間Kが形成されている。車椅子3のこの位置を仮保持位置とする。
【0023】
しかも、車椅子3の台座5が固定台13の下方に潜り込んで進入することで、仮保持位置で台座5の先端が基台20の下方に垂下するリミットスイッチ38を押すことになる。すると、図示しない制御手段を介して駆動シリンダ28が駆動して伸張するロッド29に押され、基台20及び可動浴槽14は回転軸18を中心にして時計回りに微少角度、例えば8度回動する。
基台20とその上に設置された可動浴槽14とが回転軸18を中心に時計回りに回転することで、図7に示すように、基台20に設けたガイド部40の斜面40aが着座部8のコロ12に当接して押動させて、車椅子3を可動浴槽14内の奥側に移動させて押し込む。
これによって、車椅子3が切欠31の内奧部側に進んで、支持ロッド7が切欠31の最奧部である嵌合凹部33、33内に到達して保持される。支持ロッド7が嵌合凹部33、33に到達すると切欠31の最奧部に設けたスイッチ36を押すため、図示しない制御手段を介して開閉シリンダ35が閉作動し、シール部材32、32が切欠31を液密に閉鎖させて嵌合凹部33、33で支持ロッド7を液密に保持することになる。車椅子3のこの位置を正規の保持位置とする。
【0024】
可動浴槽14の奧側に車椅子3が押し込まれた正規の保持位置で、可動浴槽14の回動を伴って、第一当接軸23が第一当接面24から離間する。この位置で、基台20が水平に保持され、可動浴槽14の上面14aが水平面に対して例えば約20度傾斜した基準位置にある。
この状態で、図8に示すように、車椅子3の着座部8は、可動浴槽14内の他方の内壁21bに当接した基準位置に保持される。しかも、車椅子3は、当接するシール部材32、32と支持ロッド7が凹部33、33によって嵌合保持されることで可動浴槽14に液密に固定保持される。この状態で、車椅子3は可動浴槽14内の正規の保持位置に位置決めされて保持される。
【0025】
次に、可動浴槽14の上面14aに設けた図示しないパネルスイッチ内の作動スイッチを押すことで、駆動シリンダ28が更にロッド29を伸張させて、基台20及び可動浴槽14を回転軸18を中心に時計回りに20度回動させ、図9に示すように可動浴槽14の上面14aが略水平になる。
これによってシール部材32、32によって挟持された車椅子3も可動浴槽14と一体に持ち上げられて回動する。このとき、回転中心をなす回転軸18が基台20及び可動浴槽14の背面側(図中、右側)に位置するため、可動浴槽14に保持された車椅子3は時計回りに持ち上げ方向に回動するため、固定台13の下方に位置する台座5及びキャスター6が床面に衝突することはなく、スムーズに回動して持ち上げられる。
【0026】
可動浴槽14の上面14aが略水平に保持された入浴位置で、タンク17から湯を可動浴槽14内に供給することで車椅子3の着座部8に着座した入浴者は入浴状態になる。このとき、可動浴槽14の他方の内壁21bに設けた切欠31と支持ロッド7はシール部材32,32及びその嵌合凹部33、33によって液密にシールされているため、湯漏れを生じない。
そして、入浴終了後に、入浴者を可動浴槽14から退出させるには、上述の動作と逆の動作を行えばよい。即ち、可動浴槽14内の湯をタンク17に戻し、基台20及び可動浴槽14を駆動シリンダ28によって基準位置まで反時計回りに回動させる。そして、更に可動浴槽14を入出位置まで反時計回りに回動させ、シール部材32、32を開いて切欠31を開放させることで、回動する可動浴槽14の一方の内壁21aの第一当接部24で車椅子3の第一当接軸23が押されて、車椅子3は支持ロッド7が嵌合凹部33、33に保持された保持位置から切欠31に沿って仮保持位置に移動させられる。
その後、介助者が車椅子3を押して、切欠31を通して可動浴槽14の外部に移動させる。
【0027】
上述のように本実施形態による入浴装置1によれば、入出位置にある可動浴槽14内へ車椅子3を進入させるに際し、基台20及び可動浴槽14の他方の内壁21bは下向きの傾斜角(水平面に対して28度)を有するため着座部8及び背もたれ部9の仮保持位置への移送が容易である。
そして、可動浴槽14に車椅子3の着座部8を進入させる際、介助者は車椅子3の支持ロッド7を切欠31に沿って仮保持位置まで移送させればよく、その後の正規の保持位置までの移送は、リミットスイッチ38で仮保持位置の車椅子3を検知して駆動シリンダ28を駆動させて可動浴槽14の姿勢を基準位置まで変化させることで、着座部8と支持ロッド7を自動的に可動浴槽14の内奧に押し込んで正規の保持位置まで移送できるから、従来、車椅子3を正規の保持位置まで押し込んでいた介助者の腰等にかかる負担を軽減できる。
その後は、可動浴槽14の上面14aのパネルスイッチの作動スイッチを押すことで、駆動シリンダ28を更に駆動させて上面14aが略水平状態になるまで可動浴槽14及び基台20を回動させて入浴位置に保持できる。
【0028】
しかも、可動浴槽14は縦断面視で二面の内壁21a、21bが鈍角をなす略V字状に形成されているために、小型で比較的少ない湯量で入浴することができる。
また、本実施形態による入浴装置1は、基台20及び可動浴槽14を入出位置と入浴位置との間で回動させる際、可動浴槽14の背面側即ち車椅子3の進入方向と反対側の背面に回転軸18を設けたから、可動浴槽14を基準位置から入浴位置まで回動させる際、可動浴槽14に保持されて一体に回動する車椅子3のキャスター6は床面に干渉することなく上方に回動させることができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で適宜変更可能である。
例えば、可動浴槽14の回転軸18から降ろした垂線に対して、正規の保持位置にある車椅子3の後部のキャスター6が少なくとも回転軸18の垂線上、あるいはこの垂線よりも切欠31側に位置すればよい。
また、駆動シリンダ28や開閉シリンダ35は油圧シリンダやエアシリンダ等、各種の駆動手段を採用できる。
【0030】
また、上述の実施形態では、車椅子3の仮保持位置で、車椅子3に設けた第一当接軸23(第一当接部)が可動浴槽14の一方の内壁21aの第一当接面24に当接し、正規の保持位置で、車椅子3の着座部8が可動浴槽14の他方の内壁21bに当接することで、車椅子3を停止させるようにしたが、必ずしもこの構成に限定されない。第一当接軸23(第一当接部)と第一当接面24以外の位置(これも第一当接部とする)で車椅子3と一方の内壁21aが当接するようにしてもよい。或いは、第一当接軸23、第一当接面24を設けなくてもよく、仮保持位置と正規の保持位置とで可動浴槽14の一方の内壁21aと他方の内壁21bにそれぞれ車椅子3の対向する部分を当接させて停止できる構成、形状であればよい。
【符号の説明】
【0031】
1 入浴装置
2 浴槽
3 車椅子
5 台座
7 支持ロッド
8 着座部
9 背もたれ部
9a 頭部載せ部
14 可動浴槽
14a 上面
16 基部
18 回転軸
20 基板
21a 一方の内壁
21b 他方の内壁
23 第一当接軸
24 第一当接部
28 駆動シリンダ
31 切欠
32 シール部材
33 嵌合凹部
35 開閉シリンダ
36 スイッチ
38 リミットスイッチ
40 ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車椅子に載せた入浴者を入出位置に傾けた可動浴槽内に移送し、前記車椅子を保持した可動浴槽を略水平状態の入浴位置に回動させて湯を満たすことで入浴者を入浴させるようにした入浴装置において、
前記可動浴槽の一端部から内部に延びて形成されていて前記車椅子の着座部を支持する支持部材を可動浴槽内に移動可能な切欠と、
前記切欠を開閉可能であって前記支持部材を途中の仮保持位置と正規の保持位置に保持可能なシール部材と、
前記車椅子の支持部材が可動浴槽内の仮保持位置に進入することを検知する検知手段と、
前記検知手段で車椅子の進入を検知することで前記可動浴槽を回動させて入出位置から基準位置に回動させて前記車椅子の支持部材を可動浴槽内の仮保持位置から正規の保持位置に移動させる駆動手段とを備えたことを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
前記可動浴槽の回転軸は前記可動浴槽の切欠とは反対側に設けた請求項1に記載された入浴装置。
【請求項3】
前記切欠に設けたシール部材を開閉可能な開閉手段が設けられ、該開閉手段は前記支持部材が正規の保持位置に保持されたことを検知して、前記シール部材を閉鎖させるようにした請求項1または2に記載された入浴装置。
【請求項4】
前記可動浴槽の底面にはガイド部が設けられ、入出位置にある前記可動浴槽を基準位置まで回動させることで前記ガイド部が前記車椅子の着座部を仮保持位置から正規の保持位置に押し込むようにした請求項1乃至3のいずれか1項に記載された入浴装置。
【請求項5】
前記車椅子の仮保持位置で、前記車椅子に設けた第一当接部が前記可動浴槽の第一当接面に当接して車椅子を停止させ、
前記車椅子の正規の保持位置で、前記車椅子に設けた着座部が前記可動浴槽の内壁に当接して車椅子を停止させるようにした請求項1乃至4のいずれか1項に記載された入浴装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−231947(P2012−231947A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102386(P2011−102386)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000182373)酒井医療株式会社 (46)
【Fターム(参考)】