説明

入退出管理システム

【課題】ホストコンピュータを必要としない入退出管理システムを提供する。
【解決手段】照合端末V1〜V6の処理部11は、上記第1あるいは第2読み取り部8,9のいずれかが個人情報を読み取ったとき、その読み取り情報に応じて当該個人情報で特定された人がいずれのエリアに所在するかを判定する機能と、その判定したエリア情報と上記個人特定情報とを対応付けて全ての照合端末V1〜V6に通信する機能と、各照合端末V1〜V6が送受信したエリア情報と上記個人特定情報とを対応付けた情報を記憶部10に記憶させる機能と、上記特定の人が所在するエリアを特定するとともに、その特定されたエリアから、上記記憶部10に記憶された出入り口で結ばれたエリアへの通行のみを許可する機能とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部屋等からなる複数のエリア間の通行を制御する入退出管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
部屋等の複数のエリア間における出入り口に端末を設け、これら端末をシステム的に連係して各エリア間の通行を制御する入退出管理システムとして、図3に示すものが従来から知られている。
【0003】
この従来のシステムは、図2に示す各部屋E1〜E3に出入り口G1〜G6を設けた建造物に用いるもので、図3からも明らかなように、上記出入り口G1〜G6には、カードや携帯端末に記憶された情報あるいは生体情報等からなる個人情報を読み取るリーダー端末R1〜R6を設け、これらリーダー端末R1〜R6をホストコンピュータCに接続するとともに、各リーダー端末R1〜R6には電気錠1〜6を接続している。
【0004】
また、上記リーダー端末R1〜R6は、出入り口G1〜G6を通過した人が、どの方向から来たかを認識できるようにしている。例えば、部屋E1の出入り口G1に設けたリーダー端末R1であれば、外から部屋E1に入ったのか、あるいは部屋E1から外に出ていったのかを認識できるようにしている。
上記のようにしてリーダー端末R1〜R6が認識した情報は、すべてホストコンピュータCに入力されるが、このホストコンピュータCはリーダー端末R1〜R6からその情報が入力したとき、次のように機能する。
【0005】
ホストコンピュータCに、例えば出入り口G1から部屋E1に特定の個人Xが入室したという情報がリーダー端末R1から入力したとする。
ホストコンピュータCは、出入り口G1〜G4のリーダー端末R1〜R4に対して、個人Xの情報を認識したときには電気錠1〜4を解錠せよという命令を出力するが、他の出入り口G5,G6のリーダー端末R5,G6に対しては、そのような命令を出力しない。
その結果として、個人Xは出入り口G1〜G4を通行することができるが、出入り口G5,G6は通行できなくなる。
【0006】
つまり、ホストコンピュータCには、どのリーダー端末が当該個人の入退出情報を認識したかに応じて、どの出入り口のリーダー端末に対して上記命令を出力するかという制御体系をあらかじめすべて記憶させている。このようにすべての制御体系をあらかじめ記憶しているので、ホストコンピュータCは、いずれのリーダー端末が、特定の個人の入退出情報を認識したとき、その特定の個人が現在いる場所から通行できる部屋を認識できることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−242819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにした従来の入退出システムでは、リーダー端末以外にホストコンピュータCを必要とするので、それがコストアップの要因になっていた。
また、ホストコンピュータCに制御体系のすべてを記憶させなければならないので、管理すべき個人の数や出入り口の数が多くなると、ホストコンピュータCの処理速度が遅くなってしまうという問題があった。
この発明の目的は、ホストコンピュータを必要とせず、しかも、管理すべき情報量が多くなっても処理速度が遅くならない入退出管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、複数の部屋等からなる各エリアの出入り口に、相互に接続された照合端末を設置する。そして、これら照合端末は、出入り口の一方から他方に向かう人の個人特定情報を読み取る第1読み取り部と、出入り口の他方から一方に向かう人の個人特定情報を読み取る第2読み取り部と、当該照合端末を設置した出入り口で結ばれたエリアを特定するエリア情報をあらかじめ記憶する記憶部と、処理部とを備えている。
【0010】
上記処理部は、第1あるいは第2読み取り部のいずれかが個人情報を読み取ったとき、その読み取り情報に応じて当該個人情報で特定された人がいずれのエリアに所在するかを判定する機能と、その判定したエリア情報と上記個人特定情報とを対応付けて全ての照合端末に通信する機能と、各照合端末が送受信したエリア情報と上記個人特定情報とを対応付けた情報を記憶部に記憶させる機能と、上記特定の人が所在するエリアを特定するとともに、その特定されたエリアから、上記記憶部に記憶された出入り口で結ばれたエリアへの通行のみを許可する機能とを備えている。
【0011】
上記照合端末の両読み取り部は、例えば磁気カードやICチップを埋め込んだカードの識別情報を読み取るものであってもよいし、携帯電話のID等を読み取るものであってもよい。さらに、テンキーやパスワード入力装置を用いてもよし、生体情報識別装置をもちいてもよい。
【0012】
この発明の入退出管理システムは、照合端末が各出入り口に設けられていることに着目したものである。すなわち、各出入り口で、特定の個人の出入りを識別できれば、その特定の個人が今現在どのエリアにいるのかを認識できる。しかも、当該エリアを起点にした移動可能エリアも、エリアとその出入り口の物理的な配置等から決められることになる。
【0013】
したがって、特定の照合端末が特定の個人の入退出を認識したとき、システム的には、その特定の個人がどのエリアにいるのかを認識できるとともに、その情報をすべての照合端末に記憶させることによって、個々の照合端末は、自分が特定の個人の現在の所在から移動可能エリアにいるかどうかを論理的に判別できる。
【0014】
そこで、この入退出管理システムでは、当該照合端末を設置した出入り口で結ばれたエリアを特定するためのエリア情報を、照合端末にあらかじめ記憶させている。そして、照合端末は、個人が今現在所在する上記エリアを起点にして、出入り可能なエリア間でのみの通行を許可する機能を保持させている。なお、その出入りの方向は、第1読み取り部あるいは第2読み取り部のいずれの読み取り部で個人情報を読み取ったかによって判定できる。
【発明の効果】
【0015】
上記のようにした入退出管理システムによれば、ホストコンピュータを必要としないので、その分コストダウンを図ることができる。
また、各照合端末が記憶すべき情報量、すなわち通行を許可するかどうかを決めるための情報量は、エリアとその出入り口の物理的な配置等から必然的に決められるエリア情報と個人情報とを基にして最小限にとどめておくことができるので、その分、記憶容量を大きくしなくても高速処理を実現できる。
【0016】
さらに、上記のように照合端末の相互関係を特定するための情報量は最小限に保てるので、その分、管理すべき個人の情報量を相対的に多くすることができる。したがって、全体的には、エリア数が多い中でも、多人数の管理が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】システム図である。
【図2】各エリアの配置と出入り口の設置状況を示した説明図である。
【図3】図3は従来のシステム図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の実施形態も図2に示す建造物に用いるもので、この建造物の構造は、従来と同様である。ただし、この発明は、建造物の部屋の管理だけではなく、エリアを区画したもので、その区画されたエリア間の入退出を制御するものであればどのようなものにも用いることができる。
【0019】
図2に示した建造物の各部屋E1〜E3のそれぞれの出入り口G1〜G6には、ランケーブル7で相互に接続された照合端末V1〜V6を設けているが、これら照合端末V1〜V6は、第1,2読み取り部8,9と、記憶部10と、これら第1,2読み取り部8,9および記憶部10を接続した処理部11とからなる。
なお、上記ランケーブルに代えて、無線などあらゆる通信手段を用いてもよい。
また、図中符号12は、照合端末V1〜V6の信号に応じて施解錠する電気錠である。
上記記憶部10には、照合端末V1〜V6を設置した出入り口G1〜G6で結ばれた部屋E1〜E3を特定するエリア情報があらかじめ記憶されている。
【0020】
例えば、出入り口G1,G2に設けた照合端末V1,V2の記憶部10には、外のエリアE0と中の部屋E1とが出入り口G1,G2を介して結ばれているという情報が記憶されている。また、出入り口G3に設けた照合端末V3の記憶部10には出入り口G3を介して部屋E1とE2とが結ばれている旨の情報が記憶されている。その他の出入り口G4〜G6に設けた照合端末V4〜V6の記憶部10にも、それら出入り口G4〜G6を介してどの部屋が結ばれているかという情報が記憶されている。
【0021】
上記第1,2読み取り部8,9は、例えば磁気カードやICチップを埋め込んだカードの識別情報を読み取るものであってもよいし、携帯電話のID等を読み取るものであってもよい。さらに、生体情報を識別するものであってもよい。いずれにしても、個人を特定するための情報を読み取る機能さえあれば、いずれであってもよい。
【0022】
そして、上記第1読み取り部8は、出入り口の一方から他方に向かう人の個人特定情報を読み取り、第2読み取り部9は、出入り口の他方から一方に向かう人の個人特定情報を読み取るようにしている。例えば、図2において第1読み取り部8は、(入→出)の方向に向かう人の情報を読み取り、第2読み取り部9は(出→入)の方向に向かう人の情報を読み取る。
【0023】
さらに、処理部11は、上記第1あるいは第2読み取り部8,9のいずれかが個人情報を読み取ったとき、その個人情報と読み取り部8あるいは9のいずれで読み取ったかを対応付けて自らの記憶部10に記憶させるとともに、他の照合端末の処理部11にもそれら対応付けられた情報を、ランケーブル7を介して伝達する。例えば、照合端末V1の第1読み取り部8が上記情報を読み取ったら、その処理部11は、当該個人情報と照合端末V1の第1読み取り部8が読み取ったことを示す情報とを対応付けて自らの記憶部10に記憶させる。これと合わせて、上記照合端末V1の処理部11は、他のすべての照合端末V2〜V6の処理部11にも、上記対応付けられた情報を、ランケーブル7を介して伝達する。
そして、上記の情報を受け取った照合端末V2〜6の処理部11は、自らの記憶部10に、その対応付けられた情報を記憶させる。
【0024】
いずれにしても、どの照合端末の第1読み取り部8あるいは第2読み取り部9が、誰の個人情報を読み取ったのかという情報、例えば照合端末V1の第1読み取り部8が特定の個人が(入→出)の方向に向かったという情報があれば、当該個人が部屋E1にいることを、システム的には判定できることになる。
【0025】
そして、ランケーブル7を介して照合端末V1〜V6が上記のような情報を受け取ったときには、この情報は、照合端末V1〜V6のうち、特定の個人が今現在所在する部屋を起点にして出入りが可能な部屋の出入り口に設けられた照合端末が、第1読み取り部あるいは第2読み取り部のいずれの読み取り部で読み取ったかを条件にして通行を許できることになる。
【0026】
例えば、出入り口G1に設置した照合端末V1の第1読み取り部8に読み取られた個人情報が照合端末V1〜V6に伝達されたときには、その特定の個人が部屋E1にいることを処理部11が認識するとともに、この部屋E1を起点して出入り可能な、出入り口G1〜G4に設置した照合端末V1〜V4の処理部11にとっては、上記情報が、いずれの読み取り部で読み取ったかを条件にした通行許可命令となる。
【0027】
したがって、部屋E1にいる特定の個人が、出入り口G1,G2から退出するために第2読み取り部9に個人情報を読み取らせれば、それらの照合端末V1,V2はそれに接続した電気錠12を解錠することになる。また、出入り口G3あるいはG4から部屋E2あるいはE3に入るために、そこに設置した照合端末V3あるいはV4の第1読み取り部8に個人情報を読み取らせれば、それらの照合端末V3,V4はそれに接続した電気錠12を解錠することになる。
【0028】
これに対して、例えば部屋E1にいわゆる共連れによって入った者は、上記出入り口G1の照合端末V1によって個人情報が読み取られていないので、その共連れで入場した者は、出入り口G3に設けた照合端末V3の記憶部10に上記対応付けられた情報が記憶されていないことになる。したがって、この照合端末V3の第1読み取り部8に、上記共連れ者の個人情報を読み取らせたとしても、照合端末V3の処理部11はエラーとして処理し、電気錠12を解錠することはない。
【0029】
また、例えば部屋E1に正規の個人情報を読み取らせて入った後に、その個人情報の媒体を、部屋E1の外にいる者に何らかの方法で手渡し、それを手渡された者が、出入り口G1,G2,G6に設けた照合端末V1,V2,V6の第1読み取り部8で、上記媒体を読み取らせたとしても、各照合端末V1,V2,V6は、当該媒体にかかわる個人が、実質的には部屋E1にいるものと認識しているので、この部屋E1を起点にして図2の(入→出)に向かうという概念はないことになる。したがって、出入り口G1,G2,G6の電気錠12が解錠されることはない。
【0030】
なお、上記実施形態では、一台の照合端末に第1読み取り部と第2読み取り部とを設けたが、図2に入と出とで別々の照合端末を設け、その別々に設けた照合端末の読み取り部で、個別に個人情報を読み取ってもよい。そして、この場合の各照合端末にも、処理部と記憶部とを設けることになる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
建物の部屋の入退出管理に最適である。
【符号の説明】
【0032】
E1〜E3 エリアを示す部屋
G1〜G6 出入り口
V1〜V6 照合端末
8 第1読み取り部
9 第2読み取り部
10 記憶部
11 処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部屋等からなる各エリアの出入り口に、相互に接続された照合端末を設置する一方、これら照合端末は、出入り口の一方から他方に向かう人の個人特定情報を読み取る第1読み取り部と、出入り口の他方から一方に向かう人の個人特定情報を読み取る第2読み取り部と、当該照合端末を設置した出入り口で結ばれたエリアを特定するエリア情報をあらかじめ記憶する記憶部と、処理部とを備え、この処理部は、上記第1あるいは第2読み取り部のいずれかが個人情報を読み取ったとき、その読み取り情報に応じて当該個人情報で特定された人がいずれのエリアに所在するかを判定する機能と、その判定したエリア情報と上記個人特定情報とを対応付けて全ての照合端末に通信する機能と、各照合端末が送受信したエリア情報と上記個人特定情報とを対応付けた情報を記憶部に記憶させる機能と、上記特定の人が所在するエリアを特定するとともに、その特定されたエリアから、上記記憶部に記憶された出入り口で結ばれたエリアへの通行のみを許可する機能とを備えた入退出管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−44082(P2011−44082A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193156(P2009−193156)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(303046554)株式会社アート (25)
【Fターム(参考)】