説明

全反射蛍光測定のための顕微鏡

広視野顕微鏡では、これまでは低い光強度しか有さない比較的弱い光源を使用していた。その際、瞳平面内への合焦は、光源の出力を非常に大きな試料領域へと分散させるので、必然的に試料内での光強度を低くする。しかしながら、非常に高い強度を必要とする広視野技術もあり、例えばPAL顕微鏡検査である。本発明は、試料内の照明光強度を少しの手間で柔軟に調整できるようにする。このために、光源としてレーザ(2)が使用され、かつ照明用ビーム経路内に、中間画像平面内での照明光のビーム断面の調整を変えられる可変光学系(10)が配置され、その際、ビーム断面が異なっても照明光の発散度は同じである。これにより、顕微鏡の視野の大きさを柔軟に変えることができる。こうして試料(5)内のレーザ照明光の強度を、大きな変域内で変化させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光により試料を照明するために、光源と、対物レンズと、対物レンズの瞳平面内に照明光を合焦する光学系とを備えた照明用ビーム経路を有し、かつ試料の蛍光を受光するために検出器、特に2次元で位置分解する検出器を備えた検出用ビーム経路を有する顕微鏡ならびにこのような顕微鏡の動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このような顕微鏡は、瞳平面内への(点状の)合焦に基づき比較的狭義における広視野顕微鏡と呼ぶことができる。これに対し走査型(英語「scanning」)顕微鏡の場合、照明用ビーム経路は瞳平面内でライン状に合焦しているだけか(ライン走査、英語「line scanning」)、またはそれどころかコリメートされているだけである(点走査、英語「point scanning」)。
【0003】
いわゆる全反射蛍光(英語「total internal reflection fluorescence」、TIRF)を適用した顕微鏡検査は、蛍光顕微鏡検査の特別な形式である。この顕微鏡検査は、例えば(特許文献1)において(そこでは例えば図9および図10Cにおいて)開示されている。図1が仕組みを説明している。蛍光体Fの試料5は、エバネセント照明野Eにより、カバーガラス16と試料5の境界面の後ろの薄層内でのみ蛍光Fが励起される。試料5内のエバネセント照明野Eは、カバーガラス16内の励起放射Tが、カバーガラスと試料の境界面に、全反射が起こる角度θ>θで導かれることにより生成される。ここでθは臨界角であり、この臨界角以上で全反射が起きる。薄層だけが蛍光を励起されることにより、特に高い軸方向解像度を達成することができる。TIRF顕微鏡の光軸方向解像度は、試料内へのエバネセント場の侵入深度dから明らかである。軸方向解像度は入射角θに関連して下式から導かれる。
【0004】
【数1】

式中、λは励起波長であり、nはカバーガラスの屈折率であり、nは試料の媒体の屈折率である。
【0005】
照明は、典型的には図2に概略的に示したように顕微鏡対物レンズ4を通り抜け、対物レンズの縁領域内で、照明光が対物レンズ4を出た後に対物レンズ4の光軸を全反射臨界角θ以上の角度で交差するように行われる。励起光Tに必要な大きな入射角を可能にするため、顕微鏡対物レンズ4は高い開口数を有さなければならない。発生した蛍光は、同じ対物レンズ4によって集束され、カメラ(図示されていない)、例えば電荷結合素子(英語「charge coupled device」、CCD)に結像される。
【0006】
同様に(特許文献1)からは、顕微鏡の分解能を向上させるため、光スイッチング可能な蛍光色素を使用することが知られている(英語「Photo−activated Localization Microscopy」、PALM、PAL−Mとも)。活性化波長の際に強度が非常に低い光により、ランダムに分布した蛍光体の極めて少ない数を励起可能な状態へと遷移(活性化)し、続いて既知のやり方で、励起波長の光により蛍光を励起する。残りの活性化されていない蛍光体は、励起波長で蛍光を励起することはできない。分布がランダムなことから、活性化されて励起された蛍光体は一般的に、蛍光現象から生じて回折限界により広がった点光源像の強度分布が互いに重なり合わないほど空間的に離れている。PAL顕微鏡検査では、このような重なり合わない蛍光現象をそれぞれ少数含んだ単一画像をたくさん撮影する。単一画像の撮影中、蛍光体のもう1つのグループは、予め脱色された蛍光体の代わりになるように活性化することができる。単一画像内では、蛍光現象の強度分布は回折の広がりにより複数の画素(英語「picture elements」、Pixel)にわたっている。これらの単一画像内で、回折により広がった強度分布に基づき、サブピクセル解像度による補正計算を用いて個々の蛍光現象の本来の部分を位置特定し、これを高解像度の結果画像内に記入する。
【0007】
最近の比較的狭義における広視野顕微鏡では、走査型レーザ顕微鏡(そのうち特に非線形の蛍光励起の場合)とは違い、低い光強度しか有さない比較的弱い光源だけを使用する。その際、瞳平面内への合焦は、光源の出力を非常に大きな試料領域へと分散させるので、必然的に試料内での光強度を低くする。しかし低い強度は、一般的には複数の理由から是非とも望まれることである。一方では量子収率の高い蛍光体を使うことができるし、他方で試料の放射線負荷はできるだけ低く保たれるべきである。これに加え接眼レンズによる直接的な観察では、光強度が高いと観察者の目を損傷させる危険がある。照明光強度が低いことは、特にTIRF顕微鏡検査において望ましい。なぜなら強度が高いとカバーガラス付近の領域内の色素が飽和してしまい、これにより試料のより深い領域からの色素が画像により強く反映されるおそれがあるからである。ただしTIRF顕微鏡検査では、全反射により出力の大部分はまったく試料内に到達しないので、試料内での高い強度を達成するのはどのみち困難である。
【0008】
しかしながら、非常に高い強度を必要とする広視野技術もある。例えばPAL顕微鏡では、測定時間を短くするため、既に観察された蛍光体を非常に速く暗状態に移さなければならず、これは退色によって行うことができる。その際、照明光強度が高ければ高いほど、活性化された蛍光体がそれだけ速く退色する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の課題は、冒頭に挙げた種類の顕微鏡および方法を、試料内の照明光強度を少しの手間で柔軟に調整できるように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1に提示した特徴を有する顕微鏡および請求項10に提示した特徴を有する動作方法によって解決される。
本発明の有利な形態は従属請求項に提示されている。
【0011】
本発明によれば、光源はレーザであり、かつ照明用ビーム経路内に、中間画像平面内での照明光のビーム断面を調整可能な可変光学系が配置され、変更する際、ビーム断面が異なっても照明光の発散度は同じである。言い換えると、特に試料に当たる際および中間画像平面内では、照明光の発散度は中間画像平面内のビーム断面に左右されない。このビーム断面とは、照明光の光線束が占める、伝播方向を横切る面である。画像平面内での、様々な調整において同一の発散度は、考え得るあらゆる値を取ることができるが、特にゼロであることができ、つまりコリメートされた光である。
【0012】
励起用レーザビームにおけるビーム断面を可変調整するための可変光学系を配置することにより、試料のうち蛍光励起が起こる空間領域、つまり顕微鏡の視野の大きさを柔軟に変えることができる。ビーム断面を可変調整するための光学系は、伝達された照明光の出力に影響を及ぼさないので、励起用ビーム経路内のビーム断面(したがってこれに対応する試料上での光束直径)を変化させることにより、試料内のレーザ照明光の強度(ここでは単位面積当たりの出力として近似された)を、大きな変域内で変化させることができる。これにより同じ顕微鏡を少しの手間で、低い照明光強度での測定にも、その代わりに高い照明光強度での測定にも用いることができる。その際、例えば既知のやり方で照明用ビーム経路および検出用ビーム経路を横切るように試料を変位させることで、試料の様々な部位を照明および検査することができる。
【0013】
好ましくは、可変光学系は検出用ビーム経路の外に配置される。これにより、照明用ビーム経路の断面を、検出用ビーム経路の断面とは関係なく調整することができる。
照明用ビーム経路は、照明光が対物レンズを出た後に対物レンズの光軸を全反射角以上の角度で交差するように形成し得ることが有利である。これにより、例えばPALMおよびTIRFを可変の照明強度で動作させることができる。
【0014】
第1の形態では、可変光学系が、少なくとも2つの倍率調整の間で切替可能なテレスコープを含んでいる。その際、テレスコープの倍率調整が1未満の倍率を有することが好ましい。1未満の倍率への切替を可能にすると、同じレーザ出力が明らかに小さい領域に作用し、つまり視野を犠牲にする代わりに試料内での強度を上げられるようになる。例えば、倍率が0.5倍のテレスコープは試料の領域内の光強度を4倍にする。
【0015】
第2の形態では、可変光学系の倍率を無段階で調整することができる(ズーム光学系)。その際、ズーム光学系が1未満の倍率に調整できることが好ましい。(テレスコープの代わりに)ズーム光学系を使用すると、視野、したがって試料内の照明強度を連続的に調節することができる。
【0016】
照明用ビーム経路のビーム断面が縮小することによる視野の制限は、PALMのような技術の場合、観察される構造がサブマイクロメートルの範囲内なので少しだけ厄介である。視野が縮小するという欠点を緩和するため、このシステムを自動的に比較的小さな視野に適合させることができる。このためさらなる一実施形態では、検出用ビーム経路が、検出用ビーム経路中の位置と検出用ビーム経路外の位置の間で移動することを調整可能な、特に拡大作用をもつ結像レンズか、またはこれに対応して調整可能なズーム光学系を含んでいることが有利である。視野が縮小調整される場合は、拡大作用をもつ結像レンズまたはこれに対応して調整可能なズーム光学系により、検出器全体を照らし出すことができる。代替策として、ソフトウェアを用いて関心領域(英語「region of interest」、ROI)の方式で検出器画像を裁断することができる。裁断にあたって、検出器により撮影された画像の部分領域、つまり検出器ピクセルの真部分集合だけを検出器から読み出すならば、これは、データ量が比較的少ないので比較的速く画像を記録できることが有利である。
【0017】
検出用ビーム経路が、照明用ビーム経路と同じ対物レンズを通って延びていることが好ましい。このことは、特にTIRF照明の場合に当てはまる。
本発明による顕微鏡の動作は、可変光学系を複数の調整のうちの1つに設定する工程と、照明光の調整されたビーム断面に対応する視野を検出器に結像するため、検出用ビーム経路内の調整可能な結像レンズを調整する工程と、対物レンズの瞳平面内に照明光を合焦する工程と、試料からの蛍光を検出器により受光する工程とにおいて行われることが好ましい。
【0018】
代替策として本発明による顕微鏡の動作は、可変光学系を複数の調整のうちの1つに設定する工程と、対物レンズの瞳平面内に照明光を合焦する工程と、試料からの蛍光を検出器により受光し、その際、検出器のピクセルのうち、照明光のビーム断面を用いて調整された視野に対応する真部分集合だけを画像内に記録する工程とにおいて行うことができる。その際、検出器ピクセルの部分集合だけの記録とは、検出器を完全に読み出し、ただしそのうちの部分領域だけをメモリ上の像に記録することを意味することができる。その代わりにこの表現により、検出器を部分的にのみ読み出すことを指すことができる。
【0019】
本発明は、本発明による方法を実施するために適応された制御ユニットおよびコンピュータプログラムも含んでいる。
以下に、本発明を例示的実施形態に基づきさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】TIRFの機能方式の概略図。
【図2】現況技術に基づくTIRF照明の1可能性の概略図。
【図3】本発明による顕微鏡の概略図。
【図4】ズーム光学系を備えた第2の顕微鏡を示す図。
【図5】TIRF照明のための第3の顕微鏡を示す図。
【図6】縮小した視野を補償するための検出器画像の裁断の結果を示す図。
【図7】縮小した視野を補償するための拡大結像レンズにより受像された画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
すべての図面で、一致している部分には同じ符号が付されている。
図3は、とりわけ光源2と、ビームスプリッタ3と、光源2の照明光により試料5を照明するための顕微鏡対物レンズ4とが配置された照明用ビーム経路を有する顕微鏡1を示している。光源2は、GFP(英語「green−fluorescent protein」)のような特定種の蛍光体を励起するのに適したレーザである。ビームスプリッタ3は、試料5から同じ対物レンズ4を通って検出器6まで延びている検出用ビーム経路を脱結合する。ビームスプリッタ3は、例えば、試料5から供給される光を照明光の励起波長と試料5の蛍光波長に分離する2色性カラースプリッタとして形成することができる。励起光の反射部分または散乱部分は光源2に導かれ、蛍光部分は検出器6に導かれる。検出器6は、例えば2次元で位置分解するCCD(英語「charge coupled device」)である。
【0022】
照明用ビーム経路内では、レーザ2の後ろに図示されていない光ファイバ、および光ファイバの後ろにコリメーション光学系8が配置されており、代替的には、(図示されていない)光ファイバを備えていない実施形態では、場合によってコリメーション光学系8をなくすことができる。コリメーション光学系8の後ろには、照明光のビーム断面を可変調整するための手段として可変テレスコープ10が配置されており、この可変テレスコープ内では、第1の光学系9および無限遠結像のための第2の光学系10.1により、(図示されていない)中間画像平面が生成される。このテレスコープは、駆動装置11により、第2の光学系10.1の代わりに第3の光学系10.2を、例えば旋回させて配置することによって移動させ得るという意味で可変である。どの時点でも、光学系10.1/10.2のうちの一方だけが照明用ビーム経路内にある。第3の光学系10.1は、第2の光学系10.2より焦点距離が短い。その際、光学系10.1、10.2は、光学系の照明側の焦点平面が、当該光学系10.1/10.2を照明用ビーム経路内に旋回させた状態で、第1の光学系9の試料側の焦点平面と重なるように配置されており、かつそのように移動することができる。テレスコープの倍率は、例えば、図示したように第2の光学系10.1を用いた場合が0.9であり、これに対し第3の光学系10.2を用いた場合が0.5である。その代わりに、第2の光学系10.1を用いたテレスコープの倍率が1以上とすることができる。
【0023】
ビーム経路の共通区間(ビームスプリッタ3と対物レンズ4の間)内に、照明側の結像レンズ7(照明用結像レンズ)が配置されており、この結像レンズは、照明用ビーム経路を対物レンズ4の瞳平面P内にまたは少なくとも瞳平面Pの付近に点状に合焦する。これにより照明光は、顕微鏡対物レンズ4により、コリメートされた光束として試料5上に投射される。対物レンズ4の試料側の焦点平面内にある試料の点は、結像レンズ13A/13Bにより検出器6に結像される(広視野顕微鏡)。この広視野システムは共焦点システムではない。
【0024】
照明光が照明用結像レンズ7内に入る際の発散度は、テレスコープ10の倍率調整に左右されない。
結像レンズ13Aおよび13Bは、駆動装置11により、どちらか一方を検出用ビーム経路内に移動、例えば旋回させることができる。第2の結像レンズ13Bは、第1の結像レンズ13Aとは異なり検出器6上の画像をより大きく拡大する。第2の結像レンズ13Bの焦点距離は、第2の結像レンズ13Bが検出用ビーム経路内にある場合に、第3のテレスコープ光学系10.2による顕微鏡の視野(第2のテレスコープ光学系10.1によるより小さい視野)が検出器6のほぼ全体に結像されるように選択されている。これに対応して第1の結像レンズ13Aの焦点距離は、第1の結像レンズ13Bが検出用ビーム経路内にある場合に、第2のテレスコープ光学系10.1による顕微鏡のより大きな視野が検出器6に結像されるように選択されている。
【0025】
制御ユニット14は、駆動装置11を介し、テレスコープ10および検出用結像レンズ13A/13Bの倍率を調整することができる。第2の光学系10.1と第3の光学系10.2を切り替えることにより、照明用ビーム経路のビーム断面を変化させることができる。これは結果的に試料5の照らし出される領域を変化させ、したがって試料5内の照明強度を変化させる。さらに制御ユニット14は、検出器6のピクセルの集合またはそのうちの真部分集合を読み出すことができ、さらなる処理のためにインターフェイス(図示されていない)を介して出力することができる。
【0026】
部分図3Aでは、テレスコープ10の第2の光学系10.1が照明用ビーム経路内に旋回して配置されている。部分図3Bではその代わりにテレスコープ10の第3の光学系10.2が照明用ビーム経路内に旋回して配置されている。照明用ビーム経路内のビーム断面および試料5内の光束直径は、第2の光学系10.1の場合の方が第3の光学系10.2の場合より大きいことが認識できる。したがって顕微鏡1の視野は、第1に挙げた場合の方が第2に挙げた場合より大きい(試料5の部分拡大図により示唆されている)。試料5内の照明光強度は、第2に挙げた場合の方が第1に挙げた場合より高い。
【0027】
例えば、ユーザが制御ユニット14に比較的小さい視野の調整を設定する(図3Bを参照)。これに基づき制御ユニット14は、例えば自動的に、比較的小さい視野に属する第2の検出用結像レンズ13Bを検出用ビーム経路内に移動させることができる。これに対応して大きな視野が設定されると、制御ユニットは例えば自動的に、比較的大きな視野に属する第1の検出用結像レンズ13Aを検出用ビーム経路内に移動させることができる。どの時点でも、検出用結像レンズ13A/13Bのうちの一方だけが検出用ビーム経路内にある。
【0028】
これに代わる実施形態(図示されていない)では、(例えば第1の光学系9および第2の光学系10.1から成る)テレスコープ10全体を、別の倍率を有する別のテレスコープと自動的に交換することができる。3つ以上のテレスコープを相互に自動的に交換することもできる。
【0029】
図4に示した顕微鏡1は、図3に基づく顕微鏡1とほぼ一致している。ただし照明用ビーム経路内にはテレスコープ10に代わって、結像倍率の調整を変えられるズーム光学系15が配置されている。特に1未満の倍率を調整することができる。この顕微鏡1も、照明用ビーム経路内のビーム断面、したがって視野を変化させることができる。こうして達成され得る強度適合は、ズーム光学系により無段階で調節することができる。照明光が照明用結像レンズ7内に入る際の発散度は、ズーム光学系15の倍率調整に左右されない。
【0030】
視野の変化は、検出用ビーム経路内で自動的に考慮することができる。これは制御ユニット14により、例えばズーム光学系15による1未満の倍率の際に、検出器6のピクセルのうち、1未満の倍率の結果として生じる縮小した視野に対応する真部分集合だけを処理することで行うことができる。伝達すべきデータ量を最小限にするため、制御ユニット14がピクセルのこの部分集合だけを検出器から読み出すこともできることが好ましい。こうすることで、縮小した視野で撮影する場合に、通常の視野(ズーム光学系15の倍率1)での撮影よりも高いフレームレートを可能にする。焦点距離が固定の検出用結像レンズ13の代わりに、図3に基づく調整可能な検出用結像レンズ13A/13Bを設けることができる。
【0031】
図5は、TIRF用の配置での図4に基づく顕微鏡1を示しており、図5の場合、照明用ビーム経路は、照明光が対物レンズ4を出た後に対物レンズ4の光軸OAを全反射角以上の角度で交差するように形成されている。
【0032】
図6では、検出器画像を裁断することによる関心領域の選択が示唆されている(拡大結像レンズ13Bが存在しないかまたは使用されない)。部分図6Aは、(第2の光学系10.1が照明用ビーム経路内にあるか、またはズーム光学系15が1:1の倍率に調整された)大きな視野での通常撮影の検出器ピクセルを示している。部分図6Bは、(第3の光学系10.2が照明用ビーム経路内にあるか、またはズーム光学系15が1未満の倍率に調整された)減少した視野で撮影された検出器ピクセルを示している。検出器ピクセルの真部分集合は、例えば検出器全体の画像サイズに換算することができる。部分図6Cから、関心領域が通常画像(図6A)と同じ解像度で記録されたことが分かる。
【0033】
図7は、拡大結像レンズ13Bを用いて検出用ビーム経路の結像倍率を拡大することによる関心領域の範囲内の縮小した視野の補償を示唆している。部分図7Aは、(図6Aのように)大きな視野での通常撮影の検出器ピクセルを示している。部分図7Bは、(第3の光学系10.2が照明用ビーム経路内にあるか、またはズーム光学系15が1未満の倍率に調整された)拡大結像レンズ13Bによる、減少した視野で撮影された検出器ピクセルを示している。関心領域が通常画像(図7A)より高い解像度で記録されたことが分かる。
【図3A】

【図3B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡(1)であって、
照明光により試料(5)を照明するために、光源(2)と、対物レンズ(4)と、該対物レンズ(4)の瞳平面(P)内に照明光を合焦する光学系(7)とを備えた照明用ビーム経路を有し、
該試料(5)の蛍光を受光するために検出器(6)を備えた検出用ビーム経路を有する顕微鏡(1)において、
該光源(2)は、レーザであり、
該照明用ビーム経路内には、中間画像平面内での照明光のビーム断面を調整可能な可変光学系(10、15)が配置され、その変更する際、ビーム断面が異なっても照明光の発散度が同じである、顕微鏡(1)。
【請求項2】
ビーム断面を調整するための前記可変光学系(10、15)は、前記検出用ビーム経路の外に配置されている、請求項1に記載の顕微鏡(1)。
【請求項3】
前記照明用ビーム経路は、照明光が前記対物レンズ(4)から出射された後に前記対物レンズ(4)の光軸を全反射角以上の角度で交差するように形成されている、請求項1または2に記載の顕微鏡(1)。
【請求項4】
前記可変光学系は、少なくとも2つの倍率調整の間で切替可能なテレスコープ(10)を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の顕微鏡(1)。
【請求項5】
前記テレスコープ(10)の倍率調整は、1未満の倍率を有する、請求項4に記載の顕微鏡(1)。
【請求項6】
前記可変光学系(15)の倍率は無段階で調整可能である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の顕微鏡(1)。
【請求項7】
前記無段階に調整可能な光学系(15)は1未満の倍率に調整可能である、請求項6に記載の顕微鏡(1)。
【請求項8】
前記検出用ビーム経路は、前記検出用ビーム経路中の位置と前記検出用ビーム経路外の位置の間で移動することを調整可能な結像レンズ(13A、13B)か、または前記結像レンズに対応して調整可能なズーム光学系を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の顕微鏡(1)。
【請求項9】
前記検出用ビーム経路が、前記照明用ビーム経路と同じ対物レンズ(4)を通って延びている、請求項1〜8のいずれか1項に記載の顕微鏡(1)。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の顕微鏡(1)の動作方法であって
前記可変光学系(10、15)を複数の調整のうちの1つに設定する工程と、
照明光の調整されたビーム断面に対応する視野を前記検出器(6)に結像するため、前記検出用ビーム経路内の前記調整可能な結像レンズ(13A、13B)を調整する工程と、
前記対物レンズ(4)の瞳平面(P)内に照明光を合焦する工程と、
前記試料(5)からの蛍光を前記検出器(6)により受光する工程とを備える、顕微鏡(1)の動作方法。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の顕微鏡(1)の動作方法であって、
前記可変光学系(10、15)を複数の調整のうちの1つに設定する工程と、
前記対物レンズ(4)の瞳平面(P)内に照明光を合焦する工程と、
前記試料(5)からの蛍光を前記検出器(6)により受光し、その際、前記検出器(6)のピクセルのうち、照明光のビーム断面を用いて調整された視野に対応する真部分集合だけを画像内に記録する工程とを備える、顕微鏡(1)の動作方法。
【請求項12】
請求項10または11に記載の方法を実施するために適応された制御ユニット(14)またはコンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載の制御ユニットを備えた顕微鏡。

【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−501951(P2013−501951A)
【公表日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−524133(P2012−524133)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004778
【国際公開番号】WO2011/018181
【国際公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(506151659)カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー (71)
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
【Fターム(参考)】