説明

全固体電池

【課題】本発明は体積エネルギー密度、安全性および信頼性に優れた全固体電池を提供することを主目的としている。
【解決手段】上記目的を達成するために、本発明は、一対の集電体と、上記集電体に挟持され、正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に挟持された硫黄を含む固体電解質層と、を有する発電要素と、上記一対の集電体間、かつ、上記発電要素の周囲の少なくとも一部に配置された硫化水素ガス吸収剤を含む硫化水素ガス吸収部と、を有し、上記正極層、固体電解質層および負極層の少なくともいずれか一つが硫黄を含む硫化物系固体電解質を含むものであることを特徴とする全固体電池を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体積エネルギー密度、安全性および信頼性に優れた全固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。現在、種々の電池のなかでも、エネルギー密度が高いという観点から、リチウム電池が注目を浴びている。
【0003】
現在市販されているリチウム電池は、可燃性の有機溶剤を溶媒とする有機電解液が使用されているため、短絡時の温度上昇を抑える安全装置の取り付けや短絡防止のための構造・材料面での改善が必要となる。
【0004】
これに対し、液体電解質を固体電解質に換えて、電池を全固体化した全固体型リチウム電池(全固体電池)は、電池内に可燃性の有機溶媒を用いないので、安全装置の簡素化が図れ、製造コストや生産性に優れると考えられている。
固体電解質としては、イオン伝導性が高い材料が求められ、例えば、酸化物系固体電解質や硫化物系固体電解質が知られている。なかでも、硫化物系固体電解質は、イオン伝導性が高いものとして知られているが、水分と反応し硫化水素ガスを発生するといった問題があった。硫化物系固体電解質を含む発電要素内で発生した硫化水素は、上記発電要素および集電体等を覆う外装材等が破損しない限り外部に漏れ出すことはないが、発生した硫化水素により外装材内の部材が劣化するといった問題があった。
このため、硫化物系固体電解質を含む発電要素を用いた全固体電池の製造は上記発電要素に水分が混入しないようにドライ環境下で行われ、また、周囲から上記発電要素への水分混入を抑えるためにラミネートで覆われ密閉される。
【0005】
しかしながら、製造時の僅かな水分混入や、ラミネート封止部分からの水分透過を完全に抑えることは難しく、このような水分の混入を完全に抑えるとすると過大な生産設備や全固体電池の大型化等が必要となるといった問題があった。
【0006】
このような問題に対して、上記発電要素および集電体を含む単電池の外部に硫化水素ガスを吸収する吸収剤を設ける方法が開示されている(例えば、特許文献1〜3)。
しかしながら、このような方法では、硫化水素ガスを吸収することにより安全性を向上できるものの、単電池内の部材が硫化水素ガスにより劣化する可能性があり、信頼性が低いといった問題があった。また、吸収剤設置により全固体電池の体積が増加し、体積エネルギー密度が低下するといった問題があった。
【0007】
また、特許文献4には、バイポーラ型電池において高分子ゲル電解質の液絡を防止するために単電池の周囲にシール層により密封し、密封による内圧上昇を抑えるために、シール層の内側に多孔質材を設ける方法が開示されている。しかしながら、発電要素内で硫化水素ガスが発生しても、ガスを無毒化できるものではないことから、単電池内の部材劣化を抑えることができず、信頼性が低いといった問題があった。
さらに、特許文献5には、集電体間の接触等を防止することを目的として、集電体間の隙間に絶縁材部材を配置する方法等が開示されている。しかしながら、このような絶縁部材は上述したような硫化水素ガスを吸収するものではないことから、上記発電要素から硫化水素ガスが発生した場合に単電池内の部材劣化等を防ぐことができず、信頼性が低いといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−87152号公報
【特許文献2】特開2008−103245号公報
【特許文献3】特開2008−103288号公報
【特許文献4】特開2004−319156号公報
【特許文献5】特開2004−327374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、体積エネルギー密度、安全性および信頼性に優れた全固体電池を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、一対の集電体と、上記集電体に挟持され、正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に挟持された固体電解質層と、を有する発電要素と、上記一対の集電体間、かつ、上記発電要素の周囲の少なくとも一部に配置された硫化水素ガス吸収剤を含む硫化水素ガス吸収部と、を有し、上記正極層、固体電解質層および負極層の少なくともいずれか一つが硫黄を含む硫化物系固体電解質を含むものであることを特徴とする全固体電池を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記硫化水素ガス吸収部が、上記集電体間、かつ、上記発電要素の周囲の少なくとも一部に配置されることにより、上記集電体および発電要素を含む単電池またはこのような単電池を含む全固体電池の体積を増大させることなく、発生した硫化水素ガスを吸収するものとすることができる。
また、上記単電池内の硫化水素ガスの発生源近くで硫化水素ガスを吸収することができるため、硫化水素ガスによる部材劣化を抑えることができる。
さらに、上記硫化水素ガス吸収部が、集電体間に配置されているため、二つの集電体間の接触や、振動等による正極層または負極層端部の滑落による正極層および負極層間の接触を防止することができる。
このようなことより、体積エネルギー密度、安全性および信頼性に優れたものとすることができる。
【0012】
本発明においては、上記発電要素が集電体を介して複数積層されており、上記複数積層された発電要素が、外装材により封止されてなることが好ましい。より実用的な全固体電池とすることができるからである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、体積エネルギー密度、安全性および信頼性に優れた全固体電池を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の全固体電池に含まれる単電池の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の全固体電池の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の全固体電池に含まれる単電池の他の例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の全固体電池に含まれる単電池の他の例を示す概略平面図である。
【図5】本発明の全固体電池に含まれる単電池の他の例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の全固体電池の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の全固体電池について、以下詳細に説明する。
本発明の全固体電池は、一対の集電体と、上記集電体に挟持され、正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に挟持された固体電解質層と、を有する発電要素と、上記一対の集電体間、かつ、上記発電要素の周囲の少なくとも一部に配置された硫化水素ガス吸収剤を含む硫化水素ガス吸収部と、を有し、上記正極層、固体電解質層および負極層の少なくともいずれか一つが硫黄を含む硫化物系固体電解質を含むものであることを特徴とするものである。
【0016】
このような本発明の全固体電池を図を参照して説明する。図1は、本発明の全固体電池に含まれる単電池の一例を示す概略断面図であり、図2はこのような単電池を含む全固体電池の一例を示す概略断面図である。図1および2に例示するように、単電池10は、一対の集電体(負極層側集電体5aおよび正極層側集電体5b)と、上記集電体(5aおよび5b)に挟持され、正極層3と、負極層1と、上記正極層3および上記負極層1の間に挟持された硫黄を含む硫化物系固体電解質を含む固体電解質層2と、を有する発電要素4と、上記一対の集電体間、かつ、上記発電要素4の周囲の少なくとも一部に配置された硫化水素ガス吸収剤を含む硫化水素ガス吸収部6とを有するものであり、全固体電池20は、このような単電池10の周囲が外装体7により覆われたものである。
また、この例においては、上記全固体電池20は、複数の発電要素4が集電体(中間集電体5c)を介して直列に積層したバイポーラ構造を有するものであり、複数の単電池10を含むものである。また、上記集電体(5aおよび5b)に取り出し電極8が接続するものある。
【0017】
本発明によれば、上記硫化水素ガス吸収部が、上記集電体間、かつ、上記発電要素の周囲の少なくとも一部に配置されることにより、上記集電体および発電要素を含む単電池またはこのような単電池を含む全固体電池の体積を増大させることなく、発生した硫化水素ガスを吸収するものとすることができる。このため、体積エネルギー密度および安全性に優れたものとすることができる。
また、上記単電池内の硫化水素ガスの発生源近くで硫化水素ガスを吸収することができるため、硫化水素ガスによる外装体内部の部材劣化、例えば、銅等の金属部材等と反応すること等を抑えることができ、信頼性に優れたものとすることができる。
【0018】
さらに、全固体電池においては、集電体、正極層、固体電解質層、負極層、集電体をこの順で積層することで単電池が構成されるが、正極層および負極層の面積より固体電解質層の面積を大きくする必要がある。これは正極および負極の短絡を防ぐためであり、結果として、一般的な全固体電池では、各層の面積は集電体>固体電解質層>負極層≧正極層、または、集電体>固体電解質層>正極層≧負極層となる。
したがって、単電池の断面をみると集電体間に隙間ができることになる。隙間がある場合、集電体の端部の曲がり等による集電体同士の接触や、正極層または負極層の端部が振動等により滑落して正極層および負極層間が接触し、短絡を生じる可能性がある。
しかしながら、本発明によれば、上記硫化水素ガス吸収部が集電体間に配置されているため、二つの集電体同士の接触や、正極層または負極層の端部が滑落することによる正極層および負極層間の接触を防止することができる。このため、信頼性に優れたものとすることができる。
このようなことより、本発明によれば、体積エネルギー密度、安全性および信頼性に優れたものとすることができるのである。
【0019】
本発明の全固体電池は、硫化水素ガス吸収部、集電体、および発電要素を少なくとも含むものである。
以下、本発明の全固体電池の各構成について詳細に説明する。
【0020】
1.硫化水素ガス吸収部
本発明に用いられる硫化水素ガス吸収部は、硫化水素ガス吸収剤を含み、上記集電体間、かつ、上記発電要素の周囲の少なくとも一部に配置されるものであり、さらに絶縁性を有するものである。
【0021】
本発明に用いられる硫化水素ガス吸収剤としては、絶縁性を有し、硫化水素ガスを吸収することができ放出しないものであれば特に限定されるものではなく、例えば、物理吸着により吸収するものや化学吸着により吸収するものを挙げることができる。
本発明に用いられる物理吸着により吸収するものとしては、具体的にはシリカゲル等のガス体を吸着できるものを挙げることができる。
また、化学吸着により吸収するものとしては、具体的には、NaOH、KOH、Ca(OH)、およびMg(OH)等の周期律表I族、II族の水酸化物等のアルカリ性含有物質を挙げることができる。
本発明においては、なかでも、北炭化成工業株式会社製S−Cat(スターコール)を好ましく用いることができる。
【0022】
本発明に用いられる硫化水素ガス吸収部としては、上記硫化水素ガス吸収剤を有するものであれば良いが、例えば、硫化水素ガス吸収剤を保持する保持部材等を有していても良い。
【0023】
このような保持部材としては、上記硫化水素ガス吸収剤による上記発電要素より発生した硫化水素ガスの吸収を妨げるものでなければ特に限定されるものではないが、例えば、上記硫化水素ガス吸収剤を保持するバインダ樹脂や、上記硫化水素ガス吸収剤を収納する収納部材等を挙げることができる。
【0024】
本発明に用いられるバインダ樹脂としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂等を挙げることができる。
また、上記収納部材としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、多孔質体や収納ケース等を挙げることができる。
【0025】
本発明における硫化水素ガス吸収部の上記発電要素の周囲に対する配置箇所としては、上記発電要素の周囲の少なくとも一部に配置され、発生した硫化水素ガスを吸収することができるものであれば特に限定されるものではない。
具体的には、図3(a)に例示するように、上記発電要素4の周囲に対して点在するように配置されるものであっても良く、図3(b)に例示するように、上記発電要素4の全周囲に配置されるものであっても良い。
なお、図3(a)および(b)は、本発明の全固体電池における単電池を集電体(正極層側集電体(図示せず。))方向から平面視した場合における概略平面図であり、図中の符号については、図1のものと同一のものである。
【0026】
本発明に用いられる硫化水素ガス吸収部の上記一対の集電体間の配置箇所としては、発生した硫化水素ガスを吸収することができるものであれば特に限定されるものではなく、既に説明した図1に示すように、断面視上、上記一対の集電体間の空間の全てに充填されるものであっても良く、図4に例示するように、断面視上、上記集電体間の空間の一部に配置されるものであっても良い。
なお、図4中の符号については、図1のものと同一のものである。
【0027】
上記硫化水素ガス吸収部が、断面視上、上記一対の集電体間の空間の一部に配置される場合、上記発電要素の端部に対する配置箇所としては、発生した硫化水素ガスを吸収することができるものであれば特に限定されるものではなく、図4(a)に例示するように上記発電要素4の端部と上記硫化水素ガス吸収部との間に隙間が形成される、すなわち、上記発電要素4の端部に接しないように配置されるものであっても、図4(b)に例示するように上記発電要素4の端部に接するように配置されるものであっても良い。
本発明においては、なかでも、上記硫化水素ガス吸収部が、上記発電要素の端部に接するように配置されるものであることが好ましい。硫化水素ガスの発生源近くで硫化水素ガスを吸収することができるため、硫化水素ガスによる部材劣化を抑えることができるからである。
なお、上記発電要素の端部とは、上記発電要素のうち他の部材と接していない露出した表面をいうものである。
【0028】
上記硫化水素ガス吸収部が、断面視上、上記一対の集電体間の空間の一部に配置される場合、上記硫化水素ガス吸収部の厚みとしては、発生した硫化水素ガスを吸収することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、既に説明した図4に示すように、上記一対の集電体の間隔と同一であり、断面視上、上記発電要素を封止するもの、すなわち、上記発電要素の全周囲が上記集電体および硫化水素ガス吸収部により囲まれるものであっても良く、図5に例示するように、上記一対の集電体の間隔より薄く、断面視上、上記発電要素を封止しないものであっても良い。
本発明においては、なかでも、上記一対の集電体の間隔と同一であることが好ましい。上記厚みが上記間隔と同一であることにより、硫化水素ガスを効率的に吸収することができ、安全性により優れたものとすることができるからである。また、上記集電体間の接触を効率的に抑制することができ、信頼性に特に優れたものとすることができるからである。
なお、図5中の符号については、図1のものと同一のものである。
【0029】
2.発電要素
本発明に用いられる発電要素は、少なくとも、正極層、固体電解質層および負極層がこの順で積層されてなる全固体型の発電要素であり、上記正極層、固体電解質層および負極層の少なくともいずれか一つが硫黄を含む硫化物系固体電解質を含むものである。
【0030】
また、本発明の全固体電池におけるイオン伝導体の種類は、特に限定されるものではないが、なかでもLiイオンであることが好ましい。すなわち、本発明の全固体電池は、全固体型リチウム電池であることが好ましい。エネルギー密度が高い電池とすることができるからである。また、本発明の全固体電池は、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、なかでも二次電池であることが好ましい。例えば車載用電池として有用だからである。以下、発電要素の材料等について、リチウム電池の場合を中心にして説明する。
【0031】
(1)硫化物系固体電解質
本発明に用いられる硫化物系固体電解質としては、硫黄を含むものであれば特に限定されるものではなく、一般的な全固体電池に用いられるものを使用することができる。
例えば、Li、S、および第三成分を有するもの等を挙げることができる。第三成分としては、例えばP、Ge、B、Si、I、Al、GaおよびAsからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。
このような硫化物系固体電解質としては、具体的には、LiS−P、70LiS−30P、80LiS−20P、LiS−SiS、LiGe0.250.75等を挙げることができ、なかでもLiS−Pが好ましい。イオン伝導度が高いからである。
【0032】
上記硫化物系固体電解質の製造方法としては、例えば、Li、S、および第三成分を含んだ原料に対して、遊星型ボールミルでガラス化させる方法、または溶融急冷でガラス化させる方法等を挙げることができる。なお、上記硫化物系固体電解質の製造の際に、性能向上を目的として、熱処理を行っても良い。
【0033】
本発明に用いられる硫化物固体電解質は、上記正極層、固体電解質層および負極層の少なくともいずれか一つに含まれるものである。本発明においては、これらの部材のいずれに含まれるものであっても良いが、通常、少なくとも上記固体電解質層に含まれるものである。
【0034】
(2)正極層
本発明に用いられる正極層は、上記固体電解質層の一方の表面に形成されるものである。
このような正極層を形成するために用いられる正極層形成用材料としては、一般的な全固体電池における正極層に用いられるものと同様とすることができ、例えば、少なくとも正極活物質を有し、必要に応じてさらにLiイオン伝導性向上材および導電化材を有するものとすることができる。
【0035】
上記正極活物質としては、例えばLiCoO、LiMn、LiNiMn、LiVO、LiCrO、LiFePO、LiCoPO、LiNiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3等を挙げることができ、なかでもLiCoOが好ましい。上記Liイオン伝導性向上材としては、例えば、上記固体電解質層に用いられる固体電解質と同様の材料を用いることができる。上記導電化材としては、例えばアセチレンブラック、ケッチェンブラック、カーボンファイバー等を挙げることができる。
【0036】
上記正極層の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常1μm〜100μmの範囲内である。また、上記正極層の形成方法としては、例えば粉末の正極層形成用材料を圧縮成形する方法等を挙げることができる。
【0037】
(3)負極層
本発明に用いられる負極層は、上述した正極層が形成されていない固体電解質層の表面に形成されるものである。
このような負極層を形成するために用いられる負極層形成用材料としては、一般的な全固体電池における負極層と同様のものとすることができ、例えば、少なくとも負極活物質を有し、必要に応じてさらにLiイオン伝導性向上材および導電化材を有するものとすることができる。
【0038】
上記負極活物質としては、例えば金属系活物質およびカーボン系活物質を挙げることができる。上記金属系活物質としては、例えばIn、Al、Si、Sn等を挙げることができる。また、上記金属系活物質は、LiTi12等の無機酸化物系活物質であっても良い。一方、上記カーボン系活物質としては、例えば黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、高配向性グラファイト(HOPG)、ハードカーボンおよびソフトカーボン等を挙げることができる。また、Liイオン伝導性向上材および導電化材としては、上述した正極層形成用材料に用いられる材料と同様のものを用いることができる。
【0039】
上記負極層の厚さとしては、特に限定されるものではないが、通常1μm〜100μmの範囲内である。また、上記負極層の形成方法としては、例えば負極層形成用材料を圧縮成形する方法等を挙げることができる。
【0040】
(4)固体電解質層
本発明における固体電解質層は、上記正極層および負極層の間に形成される層である。
このような固体電解質層に用いられる固体電解質としては、イオン伝導性を有するものであれば特に限定されるものではなく、一般的な全固体電池に用いられる固体電解質を用いることができる。例えば、上記硫化物系固体電解質、リン酸系固体電解質、ガーネット系固体電解質等を挙げることができる。本発明のおいては、なかでも、上記硫化物固体電解質であることが好ましい。イオン伝導性が高いからである。
【0041】
本発明に用いられる固体電解質層の膜厚としては、短絡することなく所望のエネルギー密度を有するものとすることができるものであれば良く、例えば0.1μm〜1000μmの範囲内であり、なかでも0.1μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。また、上記固体電解質層の形成方法としては、例えば、粉末の固体電解質を一軸圧縮成形によりペレット化する方法等を挙げることができる。
【0042】
3.集電体
本発明に用いられる一対の集電体は、上記発電要素および硫化水素ガス吸収部を挟持するものであり、それぞれ上記発電要素に含まれる正極層または負極層に接続し、正極層および負極層の集電を行うものである。
【0043】
本発明における集電体の材料としては、上記正極層および負極層から集電することができるものであれば特に限定されるものではなく、例えばステンレス(SUS)等を挙げることができ、上記集電体の厚みや形状としては、本発明の全固体電池の用途等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば箔状およびメッシュ状等を挙げることができる。
【0044】
4.全固体電池
本発明の全固体電池は、上記集電体、発電要素、および硫化水素ガス吸収部を有するものであるが、通常、上記発電要素および集電体を含む単電池の周囲を覆う外装体や、上記集電体に接続された取り出し電極を有するものである。
【0045】
(1)外装体
上記外装体としては、上記単電池の周囲を覆うことができるものであれば特に限定するものではない。
このような外装体の材料としては、絶縁性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂等を用いることができる。
【0046】
(2)取り出し電極
上記取り出し電極としては、導電性を有するものからなるものであれば良く、全固体電池に一般的に用いられるものと同様とすることができる。
このような取り出し電極の材料としては、具体的には、ステンレス(SUS)等を挙げることができる。
また、形状としては、箔状およびリード状等を挙げることができる。
【0047】
(3)全固体電池
本発明の全固体電池は、少なくとも一つの発電要素を含むものであれば特に限定されるものではないが、本発明においては、なかでも、上記発電要素が集電体を介して複数積層されており、上記複数積層された発電要素が、外装材により封止されてなるもの、すなわち、外装材内に単電池を複数含むものであることが好ましい。より実用的な全固体電池とすることができるからである。
具体的には、既に説明した図2に示すように外装材7内に複数の発電要素4が中間集電体5cを介して直列に積層されているバイポーラ構造の全固体電池20や、図6に例示するように、外装材7内に複数の発電要素4が集電体を介して並列に積層されているモノポーラ構造の全固体電池20であることが好ましい。
なお、この場合、積層される発電要素の数は、例えば1個以上が好ましく、なかでも2個以上がより好ましく、10個以上がさらに好ましく、50個以上が特に好ましい。一方、積層される発電要素の数は、通常100個以下である。
なお、図6中の符号については、図2のものと同一のものである。
【0048】
本発明の全固体電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型および角型等を挙げることができる。
【0049】
また、本発明の全固体電池の製造方法は、上述した全固体電池を得ることができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な全固体電池の製造方法と同様の方法を用いることができる。例えば、正極層を構成する材料、固体電解質層を構成する材料、および負極層を構成する材料を順次プレスすることにより、発電要素を作製し、この発電要素および硫化水素ガス吸収部を構成する材料を集電体により挟持したものの周囲を外装体で被覆する方法等を挙げることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0051】
1 … 負極層
2 … 固体電解質層
3 … 正極層
4 … 発電要素
5 … 集電体
6 … 硫化水素ガス吸収部
7 … 外装材
8 … 取り出し電極
10 … 単電池
20 … 全固体電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の集電体と、
前記集電体に挟持され、正極層と、負極層と、上記正極層および上記負極層の間に挟持された固体電解質層と、を有する発電要素と、
前記一対の集電体間、かつ、前記発電要素の周囲の少なくとも一部に配置された硫化水素ガス吸収剤を含む硫化水素ガス吸収部と、
を有し、
前記正極層、固体電解質層および負極層の少なくともいずれか一つが硫黄を含む硫化物系固体電解質を含むものであることを特徴とする全固体電池。
【請求項2】
前記発電要素が集電体を介して複数積層されており、前記複数積層された発電要素が、外装材により封止されてなることを特徴とする請求項1に記載の全固体電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−124084(P2011−124084A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280477(P2009−280477)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】