説明

全方位噴射ボタンユニット、および噴射器

【課題】正立状態であらゆる方向に噴射可能であり、使い勝手がよく、しかも内容物漏れの心配もない噴射器を提供する。
【解決手段】噴射装置取付部22とステム嵌合部21と指掛け部23が設けられ、ステム12から噴射された容器内容物が導かれる噴射通路25が形成されているキャップ20と、それに取り付けられて同一軸線L2上で噴射通路に連通して設けられるパイプ連結部37が形成されているジョイント30と、それに軸線を中心として外部操作で回動自在に取り付けられているローターカバー50と、それとジョイントとで保持されて、軸線を中心としてローターカバーとともに回動自在に保持され、軸線と直交する方向の支点軸L3を支点として倒れ起こし自在に保持されている筒状のローター60と、基端部がジョイントに連結されてキャップの噴射通路に連通され、ローター内を通して先端部がその筒部61から突出されている可撓性パイプ40とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、容器の口部にエアゾール式やポンプ式の噴射装置が組み付けられ、その噴射装置のステムを押し込むことにより容器の内容物がステムを通して外部に噴射される、ヘアスプレー等の噴射器に関する。および、そのような噴射器において、ステム嵌合部がステムに嵌合されて容器口部の噴射装置に取り付けられ、容器内容物をあらゆる方向に噴射可能とする全方位噴射ボタンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘアスプレー等の噴射器では、多くは、容器の口部にエアゾール式やポンプ式の噴射装置が組み付けられ、その噴射装置のステムに噴射ボタンが取り付けられて、その噴射ボタンを押し下げることにより、ステムを押し込んで、容器内の内容物がステムを通して吐出されて、噴射ボタンの噴口から外部に向けて噴射されていた。しかし、この種の噴射器では、噴口の向きが固定されていることから、噴射対象部位によっては、噴射器を斜めにしたり倒立させたりして使用しなければならず、使い勝手が悪い問題があった。
【0003】
このような問題を解決すべく、従来の噴射器の中には、噴口にスプレー管を取り付け、そのスプレー管を上下に180度または左右に180度の範囲で回動可能とするものがあった。
【特許文献1】実開昭56−44866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、このような噴射器にあっても、噴射対象部位によっては、噴射器を横向きにしたり逆さにしたりして使用しなければならず、なお使い勝手が悪い問題があった。また、スプレー管を回動させるために、スプレー管の取付部などで内容物漏れを発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、正立状態であらゆる方向に噴射可能であり、使い勝手がよく、しかも内容物漏れの心配のない噴射器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そのため、請求項1に係る発明は、全方位噴射ボタンユニットであって、
容器口部の噴射装置に取り付けられる噴射装置取付部と、その噴射装置取付部が噴射装置に取り付けられたとき、その噴射装置のステムに嵌合されるステム嵌合部と、指を掛けて前記ステムを押し込む指掛け部とが設けられているとともに、その指掛け部に指を掛けて前記ステムを押し込んだとき前記ステムから噴射された容器内容物が導かれる噴射通路が形成されているキャップと、
そのキャップに取り付けられて同一軸線上で前記噴射通路に連通して設けられているパイプ連結部が形成されているジョイントと、
そのジョイントに前記軸線を中心として外部操作により回動自在に取り付けられているローターカバーと、
そのローターカバーと前記ジョイントとで保持されて、前記軸線を中心として前記ローターカバーとともに回動自在に保持されているとともに、前記軸線と直交する方向の支点軸を支点として倒れ起こし自在に保持されている筒状のローターと、
基端部が前記ジョイントのパイプ連結部に連結されて前記キャップの噴射通路に連通されているとともに、前記ローター内を通して先端部がその筒部から突出されている可撓性パイプと、
からなることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の全方位噴射ボタンユニットにあって、前記可撓性パイプの基端部が前記ジョイントのパイプ連結部にパイプ抜け防止用のブッシュを介して連結されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の全方位噴射ボタンユニットにあって、前記キャップに、一部を切り離して回動したとき、前記ステム嵌合部を押さえ付けて前記ステムを押し込み状態で保持するガス抜きタブが一体に設けられていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、噴射器であって、前記ステム嵌合部が前記ステムに嵌合されて、請求項1ないし3のいずれか1に記載の全方位噴射ボタンユニットが前記噴射装置に取り付けられ、前記指掛け部に指を掛けて前記ステムを押し込むことにより前記容器の内容物が前記ステムを通して噴射されることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項4に記載の噴射器にあって、前記噴射装置が、前記ステムを押し込むことにより開弁して、前記容器内の噴射剤の圧力で容器内容物をステムを通して外部に噴射するエアゾール式のものであることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項4に記載の噴射器にあって、前記噴射装置が、前記ステムを押し込むとともにその押し込みを解除することによりピストンを往復動して、容器内容物をいったんポンプ室内に汲み上げてからステムを通して外部に噴射するポンプ式のものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、中に可撓性パイプを通す筒状のローターが、ローターカバーとジョイントとで保持されて、噴射通路の軸線を中心として外部操作によりローターカバーとともに回動自在に保持されているとともに、その軸線と直交する方向の支点軸を支点として倒れ起こし自在に保持されているので、容器内容物を正立状態であらゆる方向に噴射可能とすることができ、使い勝手をよくすることができる。また、ステムからパイプ先端までの噴射流路を形成するキャップ、ジョイント、可撓性パイプが、いずれも固定であり、回動しないから、特にそれらの接続部間での内容物漏れの心配をなくすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態につき説明する。
図1には、この発明による噴射器に取り付けられている全方位噴射ボタンユニット100の縦断面を示す。
【0014】
図中符号10は、ボトル形状の容器である。容器10の口部には、エアゾール式の噴射装置が収納され、巻き締め部11で巻き締めて取り付けられている。そして、噴射装置からは、上向きにステム12が突出されている。
【0015】
ステム12の先端にはステム嵌合部21が嵌合されて噴射装置取付部22が巻き締め部11にはめ付けるようにして取り付けられ、容器口部の噴射装置にキャップ20が取り付けられている。キャップ20には、噴射装置取付部22が噴射装置に取り付けられたとき、その噴射装置のステム12に嵌合される上記ステム嵌合部21と、指を掛けてそのステム嵌合部21を押さえ付けてステム12を押し込む指掛け部23とが設けられているとともに、その指掛け部23に指を掛けてステム12を押し込んだときステム12から噴射された容器内容物が導かれる連通路24および噴射通路25が形成されている。
【0016】
連通路24は、ステム12と同一軸線L1上に設けられ、噴射通路25は、その軸線L1と直交する軸線L2上に設けられている。軸線L2を中心として噴射通路25のまわりには、ジョイント嵌合穴26が筒状に形成されている。
【0017】
図2(A)には、キャップ20を上から見て示し、(B)には、その中央の縦断面を示す。
この図2から判るとおり、キャップ20には、一部27を切り離して、(B)中矢示方向に回動したとき、ステム嵌合部21を押さえ付けてステム12を押し込み状態で保持するガス抜きタブ28が一体に設けられている。
【0018】
図3(A)には、キャップ20のジョイント嵌合穴26に挿入されるジョイント30を正面から見て示し、(B)には左側面から見て示す。
図示するように、ジョイント30には、細径の嵌合筒部31と、その嵌合凸部31の外周面の先端寄りに形成されている2つの円周突起32と、その円周突起32の基端寄りに形成されている鍔部33と、嵌合筒部31の基端に一体に形成されている大径部34と、その大径部34から軸方向に突出されている一対の押え突起35が設けられている。
【0019】
そして、ジョイント30は、嵌合筒部31がジョイント嵌合穴26に挿入されて鍔部33がキャップ20に突き当てられ、円周突起32がジョイント嵌合穴26内の内周溝に係合して抜け止めされ、キャップ20に取り付けられている。図1に示すように、ジョイント30には、嵌合筒部31内の貫通孔36の大径部34側にパイプ連結部37が形成されており、同一軸線L2上で噴射通路25に連通している。そのパイプ連結部37には、パイプ抜け防止用のブッシュ38を介して可撓性パイプ40の基端部が圧入されている。
【0020】
図4には、ジョイント30の大径部34の外周に、軸線L2を中心として外部操作により回動自在に取り付けられているローターカバー50を示す。図4(A)はそのローターカバー50の左側面とその中央縦断面であり、(B)は正面とその中央縦断面であり、(C)は右側面である。
【0021】
図に示すとおり、ローターカバー50は、外周に滑り止め用のローレットを有する筒状で、対向する位置に切欠き51が設けられ、左側面にはその切欠き51間を除いて側板部52が設けられ、右側面には一対のヤジリ53が対向して設けられている。内部には、2組の縦リブ54が対向して形成されている。そして、図1に示すように、ヤジリ53を大径部34に掛けてローラーカバー50がジョイント30に取り付けられている。
【0022】
図5には、ジョイント30とローターカバー50とで保持されているローター60を示し、(A)は上から見て、(B)は正面から見て示す。
図から判るように、ローター60は、筒部61の一端に耳状に一対の支点部62を設けて形成されている。
【0023】
図6には、図1に示す全方位噴射ボタンユニット100を上から見て一部を破断して示す。
図示するとおり、ジョイント30の押え突起35とローターカバー50の側板部52とでローター60の支点部62を挟み込んでいる。筒部61には、可撓性パイプ40が挿通されており、可撓性パイプ40は、図1に示すようにローター60内を通して先端部が筒部61から突出されている。そして、ローター60は、ジョイント30とローターカバー50とで保持されて、軸線L2を中心としてローターカバー50とともに回動自在に保持されているとともに、軸線L2と直交する方向の支点軸L3を支点として倒れ起こし自在に保持されている。すなわち、ローター60は、軸線L2に対して支点軸L3を中心として倒したり、または逆方向に起こしたりすることができるようになっている。
【0024】
図7には、180度の範囲でローター60が倒れ起こし自在に保持されている状態を示す。図8には、ローター60を下向きに直角に倒した状態を示す。
なお、ローター60は、倒したり起こしたりしたときの角度を、ジョイント30の押え突起35とローターカバー50の側板部52とでローター60の支点部62を挟み込んで、摺動抵抗を付けることにより、保持し得るようになっている。
【0025】
また、ジョイント30とローターカバー50とでローター60を保持しているときの状態では、図1に示すように、ローター60の各支点部62が、ローターカバー50の各1組の縦リブ54で挟み込まれるようになっている。これにより、ローターカバー50を回動すると、それにともないローター60が回動するようになっている。
【0026】
図9には、図1のローターカバー50を可撓性パイプ40の先端側から見て示す。ローターカバー50を回動して(A)に示す状態とすると、ローター60を180度の範囲で垂直方向に倒れ起こし可能となり、(B)に示す状態とすると、ローター60を180度の範囲で水平方向に倒れ起こし可能となる。すなわち、図8は、図9(A)に示す状態において、ローター60を下向きに倒した状態を示す。このように、ローターカバー60の回動度合いを調整することにより、(C)に示すように360度の範囲で容器内容物がすべての方向に噴射可能となる。
【0027】
なお、この例では、ジョイント30とローターカバー50とは、ある程度の力で嵌合させて摺動抵抗を付けることにより、ローター60を回動したときの角度を保持することができるようになっている。また、ジョイント30側には不図示の突起が、キャップ20側にはその突起が入り込む不図示のキー溝が形成されており、ローターカバー50を回動したときジョイント30が連れ回りしないようになっている。
【0028】
図10には、ガス抜き状態を示す。
ガス抜きを行うときには、指掛け部23に指を掛け、ステム嵌合部21を押さえ付けてステム12を押し込みながら、ガス抜きタブ28を矢示方向に回動してステム12を押し込み状態で保持し、容器10内に残留する内容物を完全に噴射する。
【0029】
ところで、上述した例では、噴射装置が、ステム12を押し込むことにより開弁して、容器10内の噴射剤の圧力で容器内容物をステム12を通して連通路24から噴射通路25に入れ、可撓性パイプ40の先端から外部に向けて噴射するエアゾール式のものである場合について説明したが、噴射装置が、ステムを押し込むとともにその押し込みを解除することによりピストンを往復動して、容器内容物をいったんポンプ室内に汲み上げてからステムを通して外部に噴射するポンプ式のものである場合にも、同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明による噴射器に取り付けられている全方位噴射ボタンユニットの縦断面図である。
【図2】(A)は図1の全方位噴射ボタンユニットに設けるキャップの平面図、(B)はその中央縦断面図である。
【図3】(A)は図1の全方位噴射ボタンユニットに設けるジョイントの正面図、(B)はその左側面図である。
【図4】図1の全方位噴射ボタンユニットに設けるローターカバーを示し、(A)はその左側面図とその中央縦断面図であり、(B)は正面図とその中央縦断面図であり、(C)は右側面図である。
【図5】(A)は図1の全方位噴射ボタンユニットに設けるローターの平面図であり、(B)は正面図である。
【図6】図1に示す全方位噴射ボタンユニットの一部破断平面図である。
【図7】180度の範囲でローターが倒れ起こし自在に保持されている状態を示す図である。
【図8】ローターを下向きに直角に倒した状態を示す図である。
【図9】図1のローターカバーを可撓性パイプの先端側から見て示す図であり、(A)はローターカバーを回動してローターを180度の範囲で垂直方向に倒れ起こし可能とした状態を示し、(B)はローターを180度の範囲で水平方向に倒れ起こし可能とした状態を示し、(C)はローターカバーの回動度合いを調整することにより、360度の範囲で容器内容物がすべての方向に噴射可能であることを説明するものである。
【図10】図1の全方位噴射ボタンユニットをガス抜き状態とした図である。
【符号の説明】
【0031】
10 容器
12 ステム
20 キャップ
21 ステム嵌合部
22 噴射装置取付部
23 指掛け部
25 噴射通路
27 ガス抜きタブの一部
28 ガス抜きタブ
30 ジョイント
37 パイプ連結部
38 ブッシュ
40 可撓性パイプ
50 ローターカバー
60 ローター
61 ローターの筒部
62 ローターの支点部
100 全方位噴射ボタンユニット
L2 軸線
L3 支点軸



【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部の噴射装置に取り付けられる噴射装置取付部と、その噴射装置取付部が噴射装置に取り付けられたとき、その噴射装置のステムに嵌合されるステム嵌合部と、指を掛けて前記ステムを押し込む指掛け部とが設けられているとともに、その指掛け部に指を掛けて前記ステムを押し込んだとき前記ステムから噴射された容器内容物が導かれる噴射通路が形成されているキャップと、
そのキャップに取り付けられて同一軸線上で前記噴射通路に連通して設けられているパイプ連結部が形成されているジョイントと、
そのジョイントに前記軸線を中心として外部操作により回動自在に取り付けられているローターカバーと、
そのローターカバーと前記ジョイントとで保持されて、前記軸線を中心として前記ローターカバーとともに回動自在に保持されているとともに、前記軸線と直交する方向の支点軸を支点として倒れ起こし自在に保持されている筒状のローターと、
基端部が前記ジョイントのパイプ連結部に連結されて前記キャップの噴射通路に連通されているとともに、前記ローター内を通して先端部がその筒部から突出されている可撓性パイプと、
からなることを特徴とする全方位噴射ボタンユニット。
【請求項2】
前記可撓性パイプの基端部が前記ジョイントのパイプ連結部にブッシュを介して連結されていることを特徴とする、請求項1に記載の全方位噴射ボタンユニット。
【請求項3】
前記キャップに一体に、一部を切り離して回動したとき、前記ステム嵌合部を押さえ付けて前記ステムを押し込み状態で保持するガス抜きタブが設けられていることを特徴とする、請求項1または2に記載の全方位噴射ボタンユニット。
【請求項4】
前記ステム嵌合部が前記ステムに嵌合されて、請求項1ないし3のいずれか1に記載の全方位噴射ボタンユニットが前記噴射装置に取り付けられ、前記指掛け部に指を掛けて前記ステムを押し込むことにより前記容器の内容物が前記ステムを通して噴射されることを特徴とする噴射器。
【請求項5】
前記噴射装置が、前記ステムを押し込むことにより開弁して、前記容器内の噴射剤の圧力で容器内容物をステムを通して外部に噴射するエアゾール式のものであることを特徴とする、請求項4に記載の噴射器。
【請求項6】
前記噴射装置が、前記ステムを押し込むとともにその押し込みを解除することによりピストンを往復動して、容器内容物をいったんポンプ室内に汲み上げてからステムを通して外部に噴射するポンプ式のものであることを特徴とする、請求項4に記載の噴射器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−111407(P2010−111407A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283934(P2008−283934)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】