説明

全方位画像生成方法、画像生成装置およびプログラム

【課題】複数の画像から奥行きのあるシーンの全方位画像を生成する。
【解決手段】複数の画像から奥行きのあるシーンの全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得するステップと、取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影するステップと、画像が投影されたレイヤ面上における被写体の色情報または輝度情報とを算出するステップと、取得した画像上の被写体の点をレイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出するステップと、信頼度に基づき、被写体の信頼度が最も高いレイヤを中心として複数のレイヤを選択するステップと、選択されたレイヤ面上における被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、奥行きのあるシーンの全方位画像を生成するステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
全方位画像生成方法、画像生成装置およびプログラムに係り、特に、互いに重なりあうように方向を変えて撮像した複数の画像から、任意の視点を中心とした全方位画像を生成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラの近くに人物などの被写体が存在する奥行きのあるシーンの全方位画像を複数の画像から生成する場合において、複数の画像を連続的に合成するためには、画像間の見え方の違い、すなわち、被写体の奥行き情報(3次元情報)を考慮して合成する必要がある。
【0003】
しかし、2次元の画像から奥行き情報(3次元情報)を推定することは難しく、様々な奥行き推定手法が提案されている。その1つに、撮像したシーンを多層のレイヤとして表現し、レイヤ上に被写体が存在する位置を信頼度として表すことで、高品質な3次元画像を生成する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4052331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法にあっては、被写体の奥行きに曖昧さを持たせているため、推定が良好な画素にも不要な情報が付加され、生成画像の品質が劣化するという問題がある。また、被写体をカバーするレイヤ数が多くなると、メモリなどの計算機リソースを多く消費すると同時に、計算時間が増加するという問題もある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、互いに重なり合うように撮像した画像から、全方位画像を生成する際に、計算機リソースを節約しつつ、適切に画像を生成することができる全方位画像生成方法、画像生成装置およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報とを算出する色輝度情報算出ステップと、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、前記信頼度に基づき、前記被写体の信頼度が最も高い前記レイヤを中心として複数のレイヤを選択するレイヤ選択ステップと、前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明は、複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報とを算出する色輝度情報算出ステップと、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の領域内の代表点を抽出する領域・代表点検出ステップと、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、前記代表点の信頼度に基づき、前記領域において、前記被写体の信頼度が高い前記レイヤ範囲を選択するレイヤ選択ステップと、前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明は、複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報とを算出する色輝度情報算出ステップと、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、前記信頼度に基づき、前記被写体の信頼度が所定値以上である前記レイヤを選択するレイヤ選択ステップと、前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップとを有し、前記レイヤ選択ステップは、前記被写体の信頼度が所定値を満たさない場合は、前記信頼度算出ステップの信頼度とすることを特徴とする。
【0010】
本発明は、複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報とを算出する色輝度情報算出ステップと、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の領域内の代表点を抽出する領域・代表点検出ステップと、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、前記代表点の信頼度に基づき、前記被写体の信頼度が最も高い前記レイヤが変化した場合のみに、前記信頼度に基づき複数のレイヤを選択するレイヤ選択ステップと、前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップとを有することを特徴とする。
【0011】
本発明は、複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報とを算出する色輝度情報算出ステップと、前記被写体の位置が変化する領域において、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、前記信頼度に基づき複数のレイヤを選択するレイヤ選択ステップと、前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップとを有し、前記信頼度算出ステップは、前記被写体の位置が変化しない領域には、取得した画像の各フレームの信頼度は初期フレームで算出した前記信頼度とすることを特徴とする。
【0012】
本発明は、複数の画像から被写体の全方位画像を生成する画像生成装置であって、複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得手段と、前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影手段と、前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報とを算出する色輝度情報算出手段と、前記画像取得手段による取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出手段と、前記信頼度に基づき、前記被写体の存在確率が最も高い前記レイヤを中心として複数のレイヤを選択するレイヤ選択手段と、前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成手段とを備えることを特徴とする。
【0013】
本発明は、複数の画像から被写体の全方位画像を生成する画像生成装置上のコンピュータに、全方位画像を生成させる全方位画像生成プログラムであって、複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報とを算出する色輝度情報算出ステップと、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影し画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、前記信頼度に基づき、前記被写体の存在確率が最も高い前記レイヤを中心として複数のレイヤを選択するレイヤ選択ステップと、前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップとを前記コンピュータに行わせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、互いに重なり合うように撮像した画像から、任意の視点の位置から撮像した全方位画像を生成する際に、計算機リソースを節約しつつ、適切に画像を生成することが可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示す装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図1に示すカメラ1の配置関係を示す説明図である。
【図4】第1の実施形態における信頼度の補正の様子を示す説明図である。
【図5】第2の実施形態での処理手順を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施形態における信頼度の補正の様子を示す説明図である。
【図7】第3の実施形態における信頼度の補正の様子を示す説明図である。
【図8】第4の実施形態での処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第5の実施形態における領域分割の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態による画像生成装置を説明する。図1は同実施形態の構成を示すブロック図である。この図において、符号1は、被写体Aの画像を撮像するカメラであり、撮像した画像をデジタルの画像データとして出力する。なお、カメラ1は、アナログ信号を出力するカメラであり、アナログ信号をデジタルデータに変換して出力するものであってもよい。符号2は、コンピュータ装置によって構成し、カメラ1から出力する複数の画像データを入力し、被写体Aの全方位画像を生成して出力する画像処理部である。符号3は、作業者が入力操作を行う入力部である。符号4は、画像の表示を行う表示部である。
【0017】
符号5は、被写体Aの全方位の画像をカメラ1によって撮像するために、カメラ1の視点を移動させるカメラ移動部であり、アクチュエータなどによって構成する。符号6は、画像処理部2からの指示に基づき、カメラ移動部5の移動量を制御するカメラ位置制御部である。なお、図1においては、カメラ移動部5によってカメラ1の視点を移動させる構成を示したが、被写体Aを移動できる場合は、被写体Aの向きを制御することにより、被写体Aの全方位からの画像を撮像する構成であってもよい。また、予め多数のカメラを被写体の周囲に配置しておき、それぞれのカメラにおいて撮像した画像の画像データを画像処理部に入力する構成であってもよい。
【0018】
次に、図3を参照して、カメラ1の配置関係について説明する。図3において、カメラ1の集合をC(i∈N)、カメラ1により撮像された元画像I(m)とする。ここで、Nは自然数の有限集合を表す。また、mは画像iの左上を原点とした画像座標系における画像の画素の位置を表している。
【0019】
次に、図2を参照して、図1に示す画像処理部2の処理動作を説明する。まず、画像処理部2は、カメラ位置制御部6に指示を出して、カメラ1を移動させて、複数の視点位置から、被写体Aを撮像した画像I(m)(i∈N)を取得する(ステップS1)。このとき、全ての領域において、少なくとも2枚以上の画像が重なるように撮像して得られた画像データを取得する。
【0020】
次に、画像処理部2は、全方位画像の基準となる視点位置に仮想カメラCを設定し、仮想カメラCから奥行き方向に多層レイヤL(m)(j∈M)を設定する。ここで、Mは自然数の有限集合を表す。このとき、レイヤの形状は、被写体Aの表現方法によって、平面、円筒面、球面など適切なものを選択する。次に、各レイヤに画像I(m)を投影する(ステップS2)。レイヤの形状が平面の場合、画像IからレイヤLへの変換は、射影変換となり、一般的にホモグラフィと呼ばれる行列によって対応付けられる。すなわち、カメラCの画像I上の点mから、投影面Lを介した画像Iprojij上の点mへの変換は、(1)式、(2)式によって表される。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、画像iの左上を原点とした画像座標系における、画像の画素の位置をm=[u,v]と表した場合において、m〜[u,v,1](〜はmの頭に付く)は拡張ベクトルを表す。またRv←i,tv←iは、カメラCのカメラ座標系から仮想カメラ座標系に変換する回転行列と並進ベクトル、Aは仮想カメラの内部行列、AはカメラCの内部行列を表す。
【0023】
なお、カメラの内部行列、外部行列は、公知のキャリブレーション手法により求められているものとする。キャリブレーション手法として、「Tsaiの方法」や「Zhangの方法」を用いることができる。dは、仮想カメラ座標系の原点からレイヤLまでの距離、nは平面レイヤの正規ベクトルを表す。なお、レイヤの形状が平面の場合、画像Iの特徴点と対応関係から、ホモグラフィ行列Hv←iを求めることも可能である。
【0024】
次に、画像処理部2は、レイヤ上の各点における被写体の色情報または輝度情報を表す色マップを算出する(ステップS3)。色マップIcolorは、ステップS2で各レイヤに投影した画像をブレンディングすることによって、(3)式によって生成する。
【0025】
【数2】

【0026】
重み係数wij(m)の代表的な例としては、各画像の寄与が均等であるとして、(4)式のように設定することができる。
【0027】
【数3】

【0028】
ここで、Num()は引数として集合を取り、その要素数を返す関数とする。また、重み係数wij(m)は、画像の位置関係により重みづけを設定することもできる。例えば、位置関係を角度によって表した場合、重み係数は(5)式により計算する。
【0029】
【数4】

【0030】
ここで、φij(m)は画像I(m)を撮像したカメラCの中心とレイヤ上の点mを結ぶ直線と、全方位画像の中心とレイヤ上の点mを結ぶ直線がなす角を表す。また、εは分母が0になるのを防ぐための微小値である。
【0031】
次に、画像処理部2は、レイヤ上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度マップを算出する(ステップS4)。信頼度マップIprobは、各レイヤ上に被写体が存在する確率を表し、この値が大きいほどその位置に被写体が存在する可能性が高いことを表す。具体的には、信頼度マップIprob上の点に対応する画像Iの点、すなわち、投影画像Iprojij上の点との類似度Sによって(6)式により求める。
【0032】
【数5】

【0033】
類似度S(m)は、レイヤ上の点に対応する投影画像上の点mとの類似度を表すものであり、対応点の画素値、および、近傍の画素値によって計算される。例えば、画素値の相関値を用いて、(7)式、(8)式によって求める。
【0034】
【数6】

【0035】
ここで、Bは画素mの近傍領域を表し、画像の特性に応じて決められる値である。εは分母が0になるのを防ぐための微小値、nは相関値のピークを調整するためのパラメータである。
【0036】
次に、画像処理部2は、ステップS4において算出された信頼度マップIprobの情報から被写体が存在する可能性が高いレイヤを選択する。シーン全体を表現するために必要なレイヤ数に対して、レイヤ上の点mが存在する可能性のあるレイヤ数は少なく、それ以外のレイヤでの推定誤差が合成品質を低下させる。ここでは、図4に示すように、レイヤ上の点mごとに、被写体Aが存在する可能性が高いレイヤ付近の情報を採用する。レイヤを手前から奥に(あるいはその逆に奥から手前)走査していき、信頼度Iprob(m)が最大となるレイヤ付近の複数のレイヤの値を採用し、それ以外のレイヤの値を0とする((9)式、(10)式、(11)式)。
【0037】
【数7】

【0038】
ここで、αは選択するレイヤ数を表し、0以上の整数値をとる。α=0の場合は、選択するレイヤは1枚のみで、これはデプスマップと同義である。α≠0の場合は、信頼度が最大となるレイヤを中心に複数のレイヤを選択する。この処理をレイヤ上の全ての点に施した後、信頼度マップIprobの情報を(12)式により再正規化する(ステップS5)。
【0039】
【数8】

【0040】
次に、画像処理部2は、各レイヤにおいてステップS5で求めた被写体が存在する可能性を表す信頼度マップIprob‘(m)と、ステップS3で求めた被写体の色情報または輝度情報を表す色マップIcolor(m)をブレンディングし、全レイヤの情報を加算することによって、全方位画像I(m)を(13)式により生成する(ステップS6)。
【0041】
【数9】

【0042】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態による画像生成装置を説明する。前述したステップS5において、第1の実施形態では、レイヤ上の点ごとに信頼度を採用するレイヤを決定したが、画素毎に処理を行うため計算機負荷が高い。そこで、元画像から被写体の領域を検出した後、その領域の代表的な点が存在する範囲のレイヤの信頼度を採用する。なお、複数の被写体が存在する場合は、被写体ごとに領域を分割し、各領域で最適なレイヤの範囲を決定する。
【0043】
本実施形態における処理動作を図5に示す。図5において、図2に示す処理動作と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。まず、元画像から画像間で共通に存在する被写体Aの領域f(f∈F)を検出する(ステップS7)。ここで、Fは領域の集合である。被写体Aの検出方法としては、例えば、背景差分を用いる方法、既知の背景色との色の違いを用いる方法、被写体の形状や色に仮定をおき、一致する領域を探す方法などが適用可能である。続いて、被写体Aの領域から画像間で共通に存在する複数の代表的な点を抽出する(ステップS8)。代表的な点の決定方法としては、例えば、複数のエッジが交差する点を用いる方法、色合いが急峻に変化する点を用いる方法、テクスチャが変化する点を用いる方法などが適用可能である。そして、元画像の代表的な点を(1)式、(2)式を用いて、最前レイヤ(あるいは最後レイヤ)から順番に手前から奥に(あるいはその逆に奥から手前)に投影した点mfk(k∈P)に対して、信頼度Iprob(mfk)が最大となるレイヤlを探索する(ステップS5a;(14)式)。ここで、Pは代表点を識別するためのインデクスの集合である。
【0044】
【数10】

【0045】
図6に示すように、被写体Aは、mink∈p<j<maxk∈pの間に存在する可能性が高いため、被写体Aが存在する領域fの全ての点において、この範囲のレイヤの値は採用し、それ以外のレイヤの値を0とする((15)式、(16)式)。
【0046】
【数11】

【0047】
この処理を元画像から抽出された全ての領域に施した後、信頼度マップIprobの情報を(17)式により再正規化する(ステップS5b)。なお、元画像から抽出されなかった被写体以外の領域については、ステップS4において算出した信頼度の値を採用する。
【0048】
【数12】

【0049】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態による画像生成装置を説明する。第1の実施形態および第2の実施形態においては、信頼度が最大値となるレイヤを中心に複数レイヤの信頼度の値を採用したが、信頼度のピークが複数ある場合や、信頼度のピークがない場合には、最大値を判定することが困難である。そこで、第3の実施形態では、図7に示すように、レイヤ上の点mについて手前から奥に(あるいはその逆に奥から手前)走査し、閾値Th以上の信頼度が1レイヤ以上ある場合は、閾値Thとなるレイヤの情報を採用する((18)式、(19)式)。レイヤ上の点mについて手前から奥に(あるいはその逆に奥から手前)走査し、閾値Th以上の信頼度を満たすレイヤがない場合は、ステップS4の信頼度の値とする。
【0050】
【数13】

【0051】
この処理を全領域に施した後、信頼度マップIprobの情報を(20)式により再正規化する。
【0052】
【数14】

【0053】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態による画像生成装置を説明する。第4の実施形態では、映像の各フレームに対して、信頼度を採用するレイヤを決定するのは、計算機負荷が大きいため、被写体の位置が大きく変動した場合のみ、ステップS5の処理を施す。
【0054】
本実施形態における処理動作を図8に示す。図8において、図2に示す処理動作と同一の部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。まず、元画像から被写体の領域を検出する(ステップS7)。被写体の検出方法としては、例えば、背景差分を用いる方法、既知の背景色との色の違いを用いる方法、被写体の形状や色に仮定をおき、一致する領域を探す方法などを適用できる。続いて、被写体の領域から複数の代表的な点を抽出する(ステップS8)。代表的な点の決定方法としては、例えば、複数のエッジが交差する点を用いる方法、色合いが急峻に変化する点を用いる方法、テクスチャが変化する点を用いる方法などを適用できる。そして、元画像の代表的な点を(1)式、(2)式を用いて、最前レイヤ(あるいは最後レイヤ)から順番に手前から奥に(あるいはその逆に奥から手前)に投影した点mfk(k∈P)に対して、信頼度Iprob(m)が最大となるレイヤ位置を記憶する。前フレームのレイヤ位置と、信頼度が最大となるレイヤ位置との差がβ以上となったとき、ステップS5c、S5dの処理を施す。βはフレーム間でのレイヤ位置の変化幅を表すパラメータであり、被写体の動き量に応じて決められる値である。ステップS5は、第1、第2、第3の実施形態のうち、適切な処理を選択すればよい。
なお、被写体Aは奥行き方向以外にも移動するため、被写体の領域検出、および、代表点の抽出は繰り返し実施する。被写体の領域、および、代表点が前フレームから変化した場合は、それらの値を記憶し、信頼度を補正する領域を変更する。
【0055】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態による画像生成装置を説明する。第5の実施形態では、映像の各フレームに対して、信頼度を採用するレイヤを決定するのは、計算機負荷が大きいため、図9に示すように、被写体が存在し奥行きが変動する領域と、静物体のみで奥行きが変動しない領域に分割し、ステップS4において、前者の領域は毎フレーム、後者の領域は初回フレームのみ信頼度を計算する。ステップS5は、第1、第2、第3の実施形態のうち、適切な処理を選択すればよい。
【0056】
以上説明したように、被写体Aが3次元空間中の各点に存在する確率を表す信頼度の情報のうち、信頼度の低い、すなわち、奥行きの推定精度の低い情報を補正することによって、生成画像の品質劣化を解決することができる。また、被写体およびシーンごとに必要なレイヤのみを計算することによって、メモリなどの計算機リソースと処理時間を削減することができる。
【0057】
なお、図1における画像処理部2の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより全方位画像生成処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)を備えたWWWシステムも含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0058】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
互いに重なりあうように方向を変えて撮像した複数の画像から、任意の視点を中心とした全方位画像を生成することが不可欠な用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0060】
A・・・被写体、1・・・カメラ、2・・・画像処理部、3・・・入力部、4・・・表示部、5・・・カメラ移動部、6・・・カメラ位置制御部、7・・・画像取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、
複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、
前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報を算出する色輝度情報算出ステップと、
前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、
前記信頼度に基づき、前記被写体の信頼度が最も高い前記レイヤを中心として複数のレイヤを選択するレイヤ選択ステップと、
前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップと
を有することを特徴とする全方位画像生成方法。
【請求項2】
複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、
複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、
前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報を算出する色輝度情報算出ステップと、
前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の領域内の代表点を抽出する領域・代表点検出ステップと、
前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、 前記信頼度に基づき、前記領域において、前記被写体の信頼度が高い前記レイヤ範囲を選択するレイヤ選択ステップと、
前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップと
を有することを特徴とする全方位画像生成方法。
【請求項3】
複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、
複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、
前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報を算出する色輝度情報算出ステップと、
前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、
前記信頼度に基づき、前記被写体の信頼度が所定値以上である前記レイヤを選択するレイヤ選択ステップと、
前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップとを有し、
前記レイヤ選択ステップは、前記被写体の信頼度が所定値を満たさない場合は、前記信頼度算出ステップの信頼度とすることを 特徴とする全方位画像生成方法。
【請求項4】
複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、
複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、
前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報を算出する色輝度情報算出ステップと、
前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の領域内の代表点を抽出する領域・代表点検出ステップと、
前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、
前記代表点の信頼度に基づき、前記被写体の信頼度が最も高い前記レイヤが変化した場合のみに、前記信頼度に基づき複数のレイヤを選択するレイヤ選択ステップと、
前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップと
を有することを特徴とする全方位画像生成方法。
【請求項5】
複数の画像から被写体の全方位画像を生成する全方位画像生成方法であって、
複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、
前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報を算出する色輝度情報算出ステップと、
前記被写体の位置が変化する領域において、前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の信頼度を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、
前記信頼度に基づき、前記信頼度に基づき複数のレイヤを選択するレイヤ選択ステップと、
前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップとを有し、
前記信頼度算出ステップは、前記被写体の位置が変化しない領域には、取得した画像の各フレームの信頼度は初期フレームで算出した信頼度とすることを特徴とする全方位画像生成方法。
【請求項6】
複数の画像から被写体の全方位画像を生成する画像生成装置であって、
複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得手段と、
前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影手段と、
前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報を算出する色輝度情報算出手段と、
前記画像取得手段による取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出手段と、
前記信頼度に基づき、前記被写体の信頼度が最も高い前記レイヤを中心として複数のレイヤを選択するレイヤ選択手段と、
前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成手段と
を備えることを特徴とする画像生成装置。
【請求項7】
複数の画像から被写体の全方位画像を生成する画像生成装置上のコンピュータに、全方位画像を生成させる全方位画像生成プログラムであって、
複数の視点位置から被写体を撮像した画像を取得する画像取得ステップと、
前記取得したそれぞれの画像を予め定義した複数のレイヤ面に投影する画像投影ステップと、
前記画像が投影された前記レイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報を算出する色輝度情報算出ステップと、
前記画像取得ステップによる取得した画像上の被写体の点を前記レイヤ面上に投影した画像の点との類似度を求めることにより、前記レイヤ面上の各点における被写体の存在確率を表す信頼度を算出する信頼度算出ステップと、
前記信頼度に基づき、前記被写体の存在確率が最も高い前記レイヤを中心として複数のレイヤを選択するレイヤ選択ステップと、
前記選択されたレイヤ面上における前記被写体の色情報または輝度情報と信頼度情報に基づき、前記被写体の全方位画像を生成する画像生成ステップと
を前記コンピュータに行わせることを特徴とする全方位画像生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−173858(P2012−173858A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33402(P2011−33402)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】