説明

全芳香族ポリアミド繊維構造物および処理方法

【課題】染色性・高耐光性・高湿潤堅牢性および染色後の各種洗浄工程での染料脱落による色相再現性阻害が著しく改善された全芳香族ポリアミド繊維構造物および該全芳香族ポリアミド繊維構造物の染色方法に関するものである。
【解決手段】限界酸素指数(LOI:Limiting Oxygen Index)が少なくとも27.0である全芳香族ポリアミド繊維構造物であって、下記要件を満足することを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物。
a)カチオン染料及び/又は分散染料で染色されたものであること。
b)全芳香族ポリアミド繊維構造物が座屈部を有する全芳香族ポリアミド繊維からなること。
c)天然および/または合成タンニン酸系化合物を含むこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた防火・防護性能を有し、優れた染色性および高染色堅牢性を有する全芳香族ポリアミド繊維構造物及びその染色再現性の良い染色方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全芳香族ポリアミド(以下アラミドと略記)繊維にはコーネックス、ノーメックスに代表されるメタ系アラミド繊維とテクノーラ、ケブラー、トワロンに代表されるパラ系アラミド繊維とがある。
これらのアラミド繊維は、ナイロン6、ナイロン66などの従来から広く使用されている脂肪族ポリアミド繊維と比較して、剛直な分子構造と高い結晶性のために耐熱性、耐炎性(難燃性)などの熱的性質、並びに耐薬品性、強力な耐放射線性、電気特性などの安全性に優れた性質を有している。従って耐炎性(難燃性)や耐熱性を必要とする防護服などの衣料用やバッグフィルターなどの産業資材用、カーテンなどのインテリア用として広く使用されている。
【0003】
しかしながら、アラミド繊維は分子鎖が剛直且つ高結晶性であるため、後加工染色し難く堅牢どや染色ロットでの色相安定性が悪いという欠点がある。このような欠点を解消しようとして従来よりアラミド繊維の染色法については数多く提案されている(Textile Research Journal Vol.56,P254〜261,1998、特公昭44−11168号公報、特公昭52−43930号公報、特開2001−181986号公報)。また原糸改質による染色可能なアラミド繊維も提案されている(特開平8−81827号公報、特開2002−302837号公報)確かに染色性はある程度向上するものの、染色堅牢度(耐光性および湿潤堅牢性等)が良好なアラミド繊維構造物及び該アラミド繊維構造物の色相再現性の高い染色方法及びは得られていないのが現状である。
【0004】
【非特許文献1】Textile Research Journal Vol.56,P254〜261,1998
【特許文献1】特公昭44−11168号公報
【特許文献2】特公昭52−43930号公報
【特許文献3】特開平8−81827号公報
【特許文献4】特開2002−302837号公報
【特許文献5】特開2001−181986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する問題点を解決し、高染色性・高耐光性・高湿潤堅牢性および染色後の各種洗浄工程での染料脱落による色相再現性阻害が著しく改善された全芳香族ポリアミド繊維構造物およびその染色方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記目的を達成するために鋭意検討した結果、全芳香族ポリアミド繊維構造物をカチオン及び/又は分散染料で染色を施した後、次いで天然および/または合成タンニン酸を用いて染色定着させることにより、所望の染色性・高耐光性・高湿潤堅牢性および染色後の各種洗浄工程での染料脱落による色相再現性阻害が著しく改善されることを究明し、本発明に達した。
【0007】
即ち、本発明によれば、
限界酸素指数(LOI:Limiting Oxygen Index)が少なくとも27.0である全芳香族ポリアミド繊維構造物であって、下記要件を満足することを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物。
a)カチオン染料及び/又は分散染料で染色されたものであること。
b)全芳香族ポリアミド繊維構造物が座屈部を有する全芳香族ポリアミド繊維からなること。
c)天然および/または合成タンニン酸系化合物を含むこと。
及び、
限界酸素指数(LOI:Limiting Oxygen Index)が少なくとも27.0である全芳香族ポリアミド繊維構造物を繊維のキャリヤー(膨潤剤)を共存下でカチオン染料及び/又は分散染料で染色し、その後天然および/または合成タンニン酸系化合物で処理をすることを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物の染色方法。
である。
【発明の効果】
【0008】
全芳香族ポリアミド繊維構造物をカチオン及び/又は分散染料で染色を施した後、次いで天然および/または合成タンニン酸を用いて染色定着させることにより、高耐光性・高湿潤堅牢性等の高染色堅牢度と同時に染色後の各種洗浄工程での染料脱落による色相再現性阻害が著しく改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の全芳香族ポリアミド繊維構造物とは、メタ系アラミド繊維及び/又はパラ系全芳香族ポリアミド繊維が30wt%以上含まれている、製綿あるいは混打綿工程を通過した原綿、ウエッブ、不織布、紡績糸、製編織物よりなる繊維構造物である。中でも紡績糸からなる繊維構造物が柔軟性又染色性の点で好ましい。
【0010】
ここでメタ系アラミド繊維とは、主骨格を構成する芳香環がアミド結合によりメタ型に結合されてなるものであるが、ポリマーの全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるものを対象とし、特にポリメタフェニレンイソフタルアミドホモポリマーが好ましい。全繰返し単位の15モル%以下、好ましくは5モル%以下で共重合し得る第3成分としては、ジアミン成分として、例えばパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラキシリレンジアミン、ビフェニレンジアミン、3,3’−ジクロルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが、また酸成分として、例えばテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸は、その芳香族環の水素原子の一部がハロゲン原子やメチル基等のアルキル基によって置換されていてもよい。
【0011】
尚、ポリマーの全末端の20%以上が、アニリン等の一価のジアミンもしくは一価のカルボン酸成分で封鎖されている場合には、特に高温下に長時間保持しても繊維の強力低下が小さくなるので好ましい。
【0012】
このようなメタ系芳香族ポリアミドは、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとを、例えば従来公知の界面重合させる方法により製造することができる。ポリマーの重合度としては、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として0℃で測定した固有粘度(IV)が0.8〜3.0、特に1.0〜2.0の範囲にあるものが好ましい。
【0013】
次にパラ系アラミド繊維とは主骨格を構成する芳香環がアミド結合によりパラ型に結合されてなるものであるが、ポリマーの全繰返し単位の85モル%以上がパラフェニレンテレフタルアミド単位であるものを対象とし、ポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)が好ましい。テレフタル酸とパラフェニレンジアミンを重縮合して得られる重合体であるが、少量の他のジカルボン酸およびジアミンを共重合したものも使用でき、重合体または共重合体の分子量は通常20,000〜25,000が好ましく、またPPTA繊維は、PPTAを濃硫酸に溶解し、その粘調な溶液を紡糸口金から押し出し、空気中または水中に紡出することによりフィラメント上にした後、水酸化ナトリウム水溶液で中和し、最終的には120〜500℃の乾燥・熱処理をして得られる。乾燥・熱処理前のPPTA繊維は結晶サイズ(110面)が50Å未満であり、乾燥・熱処理後では50Å以上となる一般的なPPTA繊維が好ましく用いられる。
【0014】
本発明者らは、上記全芳香族ポリアミド繊維特にパラ系全芳香族ポリアミド繊維を例えば製綿工程での押しこみ式捲縮などの物理的手段により座屈部(キンクバンド部)を形成させるならば、一般的にフィブリル化しやすく、染料が吸尽されやすい領域を有するものとなり、易染性を呈することを見出した。座屈部(キンクバンド部)を形成させる他の物理的手段としては、強打(叩く)、表面摩擦(しごく)、撚糸及び仮撚、レーザーによるミクロボイド形成など、いかなる手段も可能で、これらの物理的手段により座屈部(キンクバンド部)を形成(付与)されていることが好ましい。
【0015】
本発明において全芳香族ポリアミド繊維構造物を染色処理する染色方法は、特殊な設備や特殊な方法を必要とせず、既存の合成繊維の染色設備を用いることができる。また染料としては、カチオン染料、分散染料、また更にはカチオン/分散混合染料の何れも用いることが出来るが、緻密な構造に浸透しやすく、また染着性は一般的にイオン結合であり染色後の堅牢性や色相安定性がよいカチオン染料が望ましい。
【0016】
そのカチオン染料とは水に可溶性で、塩基性を示す基を有する水溶性染料をいい、アクリル繊維、天然繊維或いはカチオン可染型ポリエステル繊維等の染色に多く用いられており、ジ及びトリアクリルメタン系、キノンイミン(アジン、オキサジン、チアジン)系、キサンテン系、メチン系(ポリメチン、アザメチン)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ)、アントラキノン系などがある。また、最近では塩基性基を封鎖することにより水分散型にしたカチオン染料もあるが、両者とも用いることが出来る。
【0017】
分散染料としては、分散染料としては、公知のものを使用することができ、例えば、アントラキノン系,アゾ系,ニトロジフェニルアミン系,メチン系,アミノキトン系,ケトイミン系等の分散染料を用いることができ、特に、水に対する分散が容易で、かつ全芳香族ポリアミド繊維に対して親和力の大きいものを用いることが好ましい。
【0018】
染色温度は、115℃以上150℃以下が好ましく120℃以上がより好ましい。染色温度が115℃以下であると、染色性が不充分になる場合がある。また染色温度は高いほど染着性高まるものの、反面、染料の分解やアラミド繊維と他の素材を複合している場合には複合素材の劣化の問題も発生し始めるので、必ずしも高温にすればするほど良いわけではなく高くても140℃程度が好ましい。
【0019】
又該座屈部への染料吸尽性を助長させる一つの方法として、キャリヤ(膨潤剤)共存下染色することが好ましく、繊維結晶部位を膨潤等させることにより染料が浸透し易くなり相乗効果を発現させることができる。
【0020】
キャリヤー(膨潤剤)としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、アセトン、アセトフェノン、NMP、DMSO、DMF、エチレングリコール、アセトニトリルから選択された少なくとも1種以上用いて染色することか好ましく、染色環境に見合った(処理能力、作業環境など)環境負荷低減を考慮したキャリヤーを用いることが好ましい。
【0021】
以上の方法により、メタ、パラ系全芳香族ポリアミド、特にPPTA繊維において捲縮付与時など物理的手段により生じる座屈部(キンクバンド部)が良好に染色される。
更に染色後の各種洗浄工程における染料脱落抑制(色相再現性向上)、高耐光性および高湿潤堅牢性を満足させるために、染色および水洗後、速やかに天然および/または合成タンニン酸による染色定着処理を行うことが必要である。この処理により驚くべき色相再現性と品位の向上した染色物及び染色堅牢度が達成される。
【0022】
染料定着処理であるタンニン酸は、天然タンニン酸および/または合成タンニン酸のいずれを使用しても構わないが、天然タンニン酸を供した場合には、繊維表面層にタンニン酸を吸着させた後、吐酒石によってそのタンニン酸を水不溶性にする必要がある。
タンニン酸処理は染色終了後、染色機で十分水洗後タンニン酸処理を行うことが好ましい。
【0023】
また本発明において、染色及び機能性を損なわない範囲において他の繊維を混合しても構わない。該混合繊維として、特に限定はしないがアラミド繊維の機能特性を生かす上では難燃レーヨン、難燃加工綿、難燃ポリエステル、難燃ビニロン、ノポラックなどの難燃素材が好ましい。また快適性の点からは、難燃レーヨンなどのセルロース系を混合するとアラミド単独よりも高吸湿性となり、より快適な素材の提供が出来る。
【0024】
混合繊維とは、前記に示すような他の繊維素材と原綿で混紡してもよいし、紡績糸やフィラメント形状のものを交織或いは交編しても構わない。
更に、本発明の目的を損なわない範囲内で安定剤、酸化防止剤、難燃剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、触媒、着色剤、無機微粒子などを添加したものでもよい。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を挙げて、本発明の構成および効果を詳細に説明する。
尚、測定法は下記の方法に従って行った。
1)染色性
測色計はマクベス カラーアイ(Macbeth COLOR−EYE、Macbeth社製)モデルCE−3100を用いて行い、明度指数L*及びΔE値で表現した。明度指数L*は、JIS Z 8701法(2度視野XYZ系による色の表示方法)又はJIS Z 8728法(10度視野XYZ系による色の表示方法)に規定する三刺激値のYを用いて、次式より求められるものである。
L*=116(Y/Yn)1/3−16
Y/Yn>0.008856
Y :XYZにおける三刺激値の値
Yn:完全拡散反射面の標準の光によるYの値
但し、Y/Ynが0.008856以下の場合は、次式による。
L*=903.29(Y/Yn)
Y/Yn≦0.008856
L*:数値が小さい程、濃染化されていることを示す。
尚他の色調については下記の通りである。
ΔE値:ΔE=SQRT((ΔL*)+(Δa*)+(Δb*)
ΔL:タンニン酸化合物処理前後のL*値の差
ΔE:タンニン酸化合物処理前後のΔE値
2)限界酸素指数(LOI)防炎性(難燃性)の指標である
JIS K7201法に準拠して行った。
3)耐光性
JIS L0842法に準拠して行った。
4)湿潤堅牢性
JIS L0848法(汗堅牢性)およびJIS L0849法(湿摩擦堅牢性)に準拠して行った。
【0026】
[実施例1]
通常の工程で紡糸・延伸し・乾燥・捲縮・カットされたPPTA短繊維 TWARON(帝人トワロン製)を公知の方法で粗紡・精紡し紡績糸をえた。次いで合撚し30番手/2双糸の紡績糸を得た。また該紡績糸を供して製織し、(30/2×30/2)/(55本/inch×54本/inch)の平織物を得た。
次に該布帛をスコアロール400(花王製)で1g/l、80℃で20分間精錬した。水洗・乾燥後、190℃で1分間プレ・セットした。次いで、下記染浴で常温から2℃/分の速度で昇温し、135℃で60分間染色処理した。
・カチオン染料(C.I.Basic Blue9) 6 %owf
・硝酸Na 25 g/l
・酢酸 0.5 cc/l
・ベンジルアルコール(膨潤剤) 70 g/l
浴比1:30
次いで、染色された試料を下記タンニン酸化合物を含む処理浴で80℃×20分間、2段処理した。
一段処理:タンニンSS(天然タンニン オー・ジー製)10g/l(pH3.5)
二段処理:ニューパワロン(酒石酸 オー・ジー製)10g/l
十分水洗して乾燥、ファイナル・セット(180℃×1分間)した。
得られた評価結果を表1に示す。
【0027】
[実施例2]
実施例1において、処理浴を一段処理を5%SZ−9904(合成タンニン オー・ジー製)とし、二段処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に処理し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0028】
[実施例3]
実施例1において、一段処理をタンニン酸エキス(オー・ジー製)とした以外は、実施例1と同様に処理し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0029】
[実施例4]
実施例1において、一段処理をハイフィックスSW−A(天然タンニン オー・ジー製)とした以外は、実施例1と同様に処理し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0030】
[実施例5]
実施例1において、一段処理をハイフィックス45(合成タンニン オー・ジー製)とし、二段処理を行わなかった以外は、実施例1と同様に処理し評価した。得られた評価結果を表1に示す。
【0031】
[実施例6]
分散染料を用いた実施例を記入してください。
実施例1において、染浴を下記にて行った以外は、実施例1と同様に処理し評価した。
・ 分散染料(C.I.Disperse Red 60) 6%owf
・ 酢酸 0.3cc/l
・ 分散剤(ディスパーVG:明成化学製)0.5g/l
・ ベンジルアルコール(膨潤剤) 70g/l
浴比1:30
得られた評価結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
実施例1において、染色された試料をタンニン酸化合物を含まない下記処理浴で80℃×20分間、1回還元洗浄処理して不要な染料を処理した以外は、実施例1と同様に処理し評価した。タンニン酸処理を行わなかったので堅牢度が満足のいくものではなかった。
・NaOH 2g/l
・ハイドロサルファイト 2g/l
・アミラジンD(洗浄剤 第一工業製薬製)2g/l
得られた評価結果を表1に示す。
【0033】
[比較例2]
実施例1において、染色された試料をタンニン酸化合物を含まない比較例1と同様の処理浴で80℃×20分間、2回還元洗浄処理して不要な染料を処理した以外は、実施例1と同様に処理し評価した。タンニン酸処理を行わなかったので堅牢度が満足のいくものではなかった。
【0034】
[比較例3]
実施例1において、染色された試料をタンニン酸化合物を含まない下記処理浴で80℃×20分間1回洗浄処理して不要の染料を処理した以外は、実施例1と同様に処理し評価した。得られた評価結果を表1に示す。タンニン酸処理を行わなかったので堅牢度が満足のいくものではなかった。
・スコアロール#400(第一工業製薬製) 1g/l
・ソーダ灰 1g/l
【0035】
[比較例4]
実施例1において、染色された試料をタンニン酸化合物処理しなかった以外は、実施例1と同様に処理し評価した。得られた評価結果を表1に示す。汗及び摩擦堅牢度が非常に悪いものであった。
【0036】
実施例1〜6においては染色堅牢度が良好で且つタンニン酸化合物処理前後のL*値、ΔL、ΔEが、比較例1〜4のタンニン化合物処理を行わない他の処理前後のΔL、ΔEと比べて小さく、このことは色相再現性が顕著に良好であることを示している。
【0037】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の全芳香族ポリアミド繊維構造物は、染色性・高耐光性・高湿潤堅牢性および染色後の各種洗浄工程での染料脱落による色相再現性阻害が著しく改善されているので、今まで不可能であった一般衣料、家庭用品分野等に用途が拡大できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
限界酸素指数(LOI:Limiting Oxygen Index)が少なくとも27.0である全芳香族ポリアミド繊維構造物であって、下記要件を満足することを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物。
a)カチオン染料及び/又は分散染料で染色されたものであること。
b)全芳香族ポリアミド繊維構造物が座屈部を有する全芳香族ポリアミド繊維からなること。
c)天然および/または合成タンニン酸系化合物を含むこと。
【請求項2】
全芳香族ポリアミド繊維が繊維のキャリヤー(膨潤剤)を共存させて染色されたものである請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項3】
メタ系及び/又はパラ系全芳香族ポリアミド繊維が全繊維構造物に対して30%以上含まれている請求項1〜2いずれか記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項4】
繊維構造物が、紡績糸、仮撚り加工糸、撚り糸、編物、織物、不織布からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む請求項1〜3いずれか記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
【請求項5】
限界酸素指数(LOI:Limiting Oxygen Index)が少なくとも27.0である全芳香族ポリアミド繊維構造物を繊維のキャリヤー(膨潤剤)を共存下でカチオン染料及び/又は分散染料で染色し、その後天然および/または合成タンニン酸系化合物で処理をすることを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物の染色方法。
【請求項6】
タンニン酸系化合物処理が、染色・水洗後であり且つ染色・水洗後とタンニン酸処理後との繊維構造物の染色色差が下記式を満足する請求項5記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物の染色方法。
ΔL*≦1.5 ΔE≦2.5

【公開番号】特開2009−74197(P2009−74197A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243730(P2007−243730)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(303013268)帝人テクノプロダクツ株式会社 (504)
【Fターム(参考)】