説明

全血の病原性不活性化

この発明は、全血の病原性を不活性化するする方法に向けられている。そのステップは、全血をドナーからバックに収集するステップと、全血に十分なエネルギーの光を照明して、全血中に存在するあらゆる病原体を不活性化するように全血中に存在するアロサジン光感作薬を光分解させ、病原性を不活性化した全血を保管する。本発明は、病原性を不活性化した全血を成分に分離する方法を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の参照】
【0001】
本出願は、2007年9月1日出願された米国仮出願No. 60/953374、および2008年7月30日に出願された米国出願No. 12/182280に対して出願の利益及び優先権の利益を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、HIVや肝炎、他のウィルス、バクテリアなど、微生物的伝染性が付与される血液の汚染は、全血を輸血した人、および種々の血液成分、つまり、血小板、赤血球、血漿、ファクターVIII、プラスミノゲン、フィブロネクチン、アンチトロンビンIII、寒冷沈降物、人血漿タンパク断片、アルブミン、免疫血清グロブリン、プロトロンビン複合体、血漿成長ホルモン、その他血液から単離される成分、を投与された人に健康への深刻な危険をもたらす。血液のスクリーニング作業は、汚染物質を取り損なうことがあり、細胞血液成分にダメージを与えることなく、効果的にすべての伝染性ウィルスや他の微生物を不活性化する殺菌工程は、最近発達したばかりである。
【0003】
光感作薬、あるいは所定の波長の光を吸収したり、電子受容器に吸収したエネルギーを移したりする化合物は、上記問題への解決策となる。光感作薬は、望ましい血液の成分にダメージを加えることなく、伝染性の微生物や、その他の望ましくない成分である、例えば血液産物を汚染する白血球などの不活性化によく用いられる。
【0004】
望ましくない成分の不活性化に役立つ周知技術として、多くの光感作薬化合物が存在する。光感作薬の例には、ポルフィリン、ソラレン、染料として例えば、ニュートラルレッド、メチレンブルー、アクリジン、トルイジン、フラビン(塩酸アクリフラビン)、フェノチアジン誘導体、クマリン、キノリン(quinolones)、キノン、アントロキノン(anthroquinones)などや、内発的な光感作薬であるリボフラビンなどがある。
【0005】
輸血の受血者に対するボランティアのドナーから集められた全血は、一般に様々な周知の方法によって、血小板、血漿、赤血球に分離される。血液の病原性を不活性化するのに光感作薬を用いる場合には、全血は、通常、各成分が病原性を不活性化する工程を経る前に、個々の成分に分離される。これはなぜなら、ある光感作薬を活性化するのに必要な光のうち大部分を全血の赤血球成分が吸収し、病原体が不活性化されないで現れるチャンスが増加するからである。赤血球中に存在する病原体を不活性化するのに必要な量の光を全血に加えることは、全血中の他の成分にダメージを与えるのに十分である。本発明が向けられたのはこの問題であり、すなわち全血を成分に分離する前に病原体を減少させることである。
【発明の簡単な概要】
【0006】
この発明の目指すところは、全血の病原性を不活性化する方法である。そのステップは、ドナーから全血をバッグに集めて、全血に十分なエネルギー量の光を照射して、全血中に存在するアロサジン光感作薬が全血中に存在するあらゆる病原体を不活性化するように光分解し、病原体を不活性化した全血を保管する。この発明は、病原体を不活性化した全血を成分に分離する方法も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】複数のバッグのセットおよび本発明の工程を示す流れ図を示した概略図。
【図2】複数のバックの他のセットおよび本発明の他の工程を示した概略図。
【図3】本発明に用いることができる血液成分圧搾機を示した概略図。
【図4】本発明に用いることができる全血分離装置の断面図。
【図5】自動全血分離装置と協同して働くように設計された分離収集バッグのセットを概略的に示した部分断面図。
【図6】図4に示す装置を用いて病原体を不活性化した全血を成分に分離する工程を示した流れ図。
【図7】他の自動全血分離装置と協同して働くように設計された分離収集バッグの他のセットを示した概略図。
【図8】本発明に用いることができる他の全血分離装置を示した断面図。
【図9】図8に示す分離装置のローターを示した上面図。
【図10】図8に示す装置を用いて病原体を不活性化した全血を分離する工程を示した流れ図。
【図11A】照明されるエネルギーの作用に従って、包膜有りおよび包膜なしのウィルスが対数減少されることを示したグラフ。
【図11B】照明されるエネルギーの作用に従って、包膜有りおよび包膜なしのウィルスが対数減少されることを示したグラフ。
【図12】照明されるエネルギーの作用に従って、処置された赤血球を冷蔵保存する間に生ずる溶血を示したグラフ。
【図13】照明されるエネルギーの作用に従って、処置された赤血球を冷蔵保存する間のATPレベルを示したグラフ。
【図14】照明されるエネルギーの作用に従って、処置された赤血球を冷蔵保存する間の浸透圧の壊れ易さの平均値を示したグラフ。
【図15】照明されるエネルギーの作用に従って、処置された赤血球および処置されなかった赤血球を5日間室温で保存したときのカリウムのレベルを示したグラフ。
【図16A】照明されるエネルギーの作用に従って、冷凍保存される間の血漿の品質を示したグラフ。
【図16B】照明されるエネルギーの作用に従って、冷凍保存される間の血漿の品質を示したグラフ。
【図17】照明されるエネルギーの作用に従って、処置された血小板および処置されなかった血小板の血小板品質を測定した表。
【詳細な説明】
【0008】
この発明において有用な“光感作薬”は、一つまたはそれ以上の所定の波長の発光を吸収し、その後吸収したエネルギーを化学反応の実行に利用するあらゆる化合物として定義される。
【0009】
内発的な光感作薬は、この発明に用いることができる。“内発的”の語は、体内で合成される結果物であるか、必須な食料(ビタミン)の摂取によるか、代謝産物の形成か、および/または生体内の副産物として、ヒトや哺乳類の体内に普通に見られるという意味である。内発的な光感作薬は、特に、そのような光感作薬が本質的に有毒でない場合、光照射後に有毒な光化学反応の生成物を産生しない場合、浄化後に除去または精製のステップを必要としない場合、浄化された産物を直接患者に投与できる場合に、用いることができる。
【0010】
この発明で使用できるそのような内発的な光感作薬の例は、アロキサジン(alloxazines)であり、例えば、7,8-ジメチル-10-リビチルイソアロキサジン(リボフラビン)、7,8,10-トリメチルイソアロキサジン(ルミフラビン)、7,8-ジメチルアロキサジン(ルミクローム)、イソアロキサジンアデニンジヌクレオチド(フラビンアデニンジヌクレオチド[FAD])、アロキサジンモノヌクレオチド(フラビンモノヌクレオチド[FMN]やリボフラビン-5-リン酸としても知られている)。アロキサジンの語は、イソアロキサジンを包含する。
【0011】
血液および血液成分を不活性化するために内発的なイソアロキサジンを光感作薬として使用することは、Goodrichらによって発行された米国特許6, 258,577号と6,277,337号に記載されており、矛盾を生じない趣旨で引用によってここに取り込まれる。
【0012】
全血に混ぜられる光感作薬の量は、流体中に存在し、あらゆる病原体に付随した核酸を不活性化するのに十分な量で、(血液成分にとって)有毒な量よりも少なく、または、溶解しない量よりも少ない量である。病原体は、細菌、ウィルス、白血球などの血液中に見られる望ましくないあらゆる成分と定義される。
【0013】
もしリボフラビンが光感作薬として利用する場合には、50−500 μMの間の最終濃度になるように全血に加えることができる。病原体に付随した核酸とは、例えば、白血球や細菌、ウィルスに含まれる核酸など、あらゆる望ましくない核酸を含んでいる。核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)や、または両方を含んでいる。
【0014】
光感作薬が加えられた全血は、光感作薬を活性化し、且つ、病原体に付随した核酸を十分に不活性化するとともに、病原体に付随した核酸に永久的なダメージを引き起こすように、適切な波長の光にさらされる。実質的に永久的なダメージとは、受血者の免疫系によって除去される病原体、抗原となる可能性を維持しつつ、保管時またはドナーに注入中に、核酸が自己修復または複製できないことを意味する。
【0015】
図面中では、同一の構成は同一の数字で表されることに注意すべきである。
【0016】
図1に示すように、病原体を不活性化するのに用いる全血は、公知の技術の方法によってドナーから集められる。一般に、ドナー1から集められた全血の一単位(〜450 mL)は、全血収集バッグ3に集められる。収集バッグは、標準的な全血収集バッグ(図1に示される)であり、あるいは、図5に示されるバッグ11のように円形のバッグである。一旦全血が集められると、全血は分離照明バッグ(図2参照)に移されて、あるいは収集バッグの材質によっては収集バッグ3の中で光にさらされてもよい。収集バッグ中で光の照射が行なわれる場合には、収集バッグは、少なくとも光透過性で、且つ、光を照射中に全血と光感作薬とが混ざりあうことを許容する大きさでなければならない。バッグ5中に収納された、35 mLの500 μMリボフラビンは、バッグ3中の全血に加えられ、バッグ3中の全血+リボフラビンは、22−110 J/mLRBCの光に露光される。露光後に、不活性化された全血は、後の使用のために保管されるか、望ましい成分に分離され、この望ましい成分は、直ちに使用されるかまたは後の使用のために保存される。病原体を不活性化した全血は、1時間半よりも短い時間保管され、あるいは血液がこれ以上生存できない程度の時点までの時間分保管される。本発明では、光感作薬を加え、露光、および続いて起こる病原体の不活性化の前に、全血に白血球分解をする必要はないだけでなく、全血または病原体が分解された血液成分もまた患者に注入する前のあらゆるときに白血球分解をする必要はない。
【0017】
図2に示される他の実施形態では、全血は全血収集バッグ2に収集され、照明バッグ4に移される。バッグ2は、その後、配管のセットを残して除去される。それから光感作薬5が照明バッグ4中の全血に加えられて、そのバッグは照明器6内で露光される。露光後、病原体が不活性化された全血は、一体的に取り付けられるか、事前に接続される保管バッグ8に移される。
【0018】
もし、不活性化された全血を様々な血液成分に分離することを望む場合には、不活性化された全血は手動であるいは自動化された全血分離器を利用して分離することができる。
【0019】
全血は、最も一般的には手動で成分に分離される。患者から全血が収集された後に、全血は研究室で処置される。処置用の研究室では、技術者が全血のバッグを、振動するバケツ型の大型の遠心分離機に移す。この遠心分離機は、バッグを載せる際に注意深く均衡をとる必要がある。遠心分離が開始すると、バッグが高い速度で回転する。最初の遠心分離で、最も密集した成分である赤血球は、バッグの底部に集められる一方、血小板を多く含んだ血漿は、軽くて、頂部に上がってくる。
【0020】
技術者は、次に、ばね荷重されたヒンジ84によって結合された2枚の固い板81、82からなる圧縮機80(図3参照)内に各バッグを移す。板のうち一方は固定され、他方は可動できるようになっている。血液バッグ86は2枚の板の間に位置され、ばねの留め金を開放すると可動できる板がバッグに押し付けられる。バッグの頂部にあるポート87がそれから開放され、予め接続された空のバッグ88の内部に血小板を多く含んだ血漿が搾り出される。赤血球が出口ポートに到達したことを技術者が観察したとき、搾り出しを停止して配管をかすがいなどで締める。
【0021】
もし血小板を分離しようとする場合、血小板を多く含んだ血漿を再び遠心分離し、ローターのバランスを再びとり、二回目の回転を開始し、今度はより早い速度で行なう。この回転力は血小板をバッグの底に集め、より軽い血漿を頂部に集める。上述した圧縮工程が繰り返されその結果血小板が貯蔵用の分離バッグに迂回される。
【0022】
全血は、自動化された全血分離装置によっても成分に分離されることができる。全血の分離は、2つの成分の産物、例えば血漿および赤血球(RBCs)を得るためか、もしくは3つ(又はそれ以上)の成分の産物、例えば血漿、赤血球(RBCs)、軟膜または血小板の産物を得るために、に果たされる。完全に無菌状態の方法で病原性を減少した全血を成分に分離するのには、このシステムおよび方法が望ましい。
【0023】
図4は大量の混合液を遠心分離する装置の実施形態を示している。この装置は、図5に示す分離バッグで受容するように改造された遠心分離機と、分離された成分を衛星バッグに移動させる成分分離手段と、で構成される。
【0024】
遠心分離機は、垂直方向の回転軸(図示しない)に関して回転可能にベアリングアセンブリ30に支持されるローターを有している。ローターは円筒形のロータシャフト32、33と、ロータシャフト32、33に接続された衛星バッグを収納するための中心区画34と、中心区画34内の位置決めされた位置に少なくとも一つの衛星バッグを支持するための支持部材(図4には示していない)と、区画34に接続され、分離バッグを支持する円形のターンテーブル35と、を有している。
【0025】
ロータシャフトは、第1の上部32と、第2の下部33と、を有している。シャフトの上部32は、ベアリングアセンブリ30を貫くように延びている。滑車36は、シャフトの上部32の下端に接続されている。
【0026】
遠心分離機は、ベルト41を介してローターに連結されたモータ40を備えており、このベルト41は、中心縦軸に関してローターを回転させるように、滑車36の溝に嵌っている。
【0027】
分離装置は、さらに、第1、第2、第3のピンチバルブ部材(図示しない)を備えており、これら第1、第2、第3のピンチバルブ部材は、可撓性のチューブ内を通る液の流れを選択的に遮断したり、液の流れを許可したり、プラスチックチューブを選択的に密封したり切断したりするためにローター上にすえつけられる。
【0028】
ターンテーブル35は、その上部の小さなかどで区画34の縁に接続された中心切頭円錐部46と、中心切頭円錐部46の下部の大きなかどに接続された環状平面部47と、環状平面部47の外周縁から上側延びた外側円筒フランジ48と、を備えている。ターンテーブル35は、ヒンジを介して開位置と閉位置との間で旋回するようにフランジ48に固定されたアーチ形の円形蓋49を備えている。蓋49は、ロック51を備えており、ロック51によって蓋49は閉位置で閉塞される。蓋49は、その上部に大きな切り抜きを有し、この切り抜きは、ローターの中心区画34への通路を提供する。蓋49は、環状の内部表面を有しており、この内部表面は、蓋49が閉じ位置にある際に、ターンテーブル35の中心切頭円錐部46および環状平面部47とともに、切頭円錐環状区画53を規定するように形成され、切頭円錐環状区画53は、半径方向断面が実質的に平行四辺形である。切頭円錐環状区画53は、つまり後述する「分離区画」は、分離バッグ11を収納するように意図されている。
【0029】
成分移転手段は、分離区画53に保持された分離バッグを搾り、且つ衛星バッグに分離された成分を移すための圧搾システムを備えている。圧搾システムは、可撓性の環状のダイヤフラム54を備え、このダイヤフラム54は、ターンテーブル35の中心切頭円錐部46および環状平面部47に沿って並ぶように形成されており、ダイヤフラム54はターンテーブル35の円形の内側の端部と外側の端部とに固定されている。圧搾システムは、さらに、可撓性のダイヤフラム54とターンテーブル35との間で規定される膨張性の液圧チャンバーに水力用の液体を注入したり、これから排出したりする液圧ポンピングステーション60を備えており、この液圧ポンピングステーション60は、ローターを貫いてローターシャフトの下部33の下端からターンテーブル35まで延びるダクト37を経由して水力用の液体を注入したり、これから排出したりする。ポンピングステーション60は、回転式液継ぎ手38を介してローターダクト37と液的に接続された液圧シリンダ62中で移動できるピストン61を有したピストンポンプを備えている。ピストン61は、ピストンロッドにリンクしたリードねじ64を動かすステッピングモータ63によって駆動される。液圧シリンダ62は、バルブ66によって制御された通路を有する水力用の液の貯水槽65やローターダクト37、膨張可能な室とも接続されており、バルブ66は、液圧シリンダ62を含んだ液圧の回路に水力用の液を導入したり液圧の回路から液を回収したりすることを選択的に許可する。圧測定用計器67は、液圧の回路中の水圧を測定するために、液圧の回路に接続されている。
【0030】
分離装置は、さらに、コントローラ70を備えており、このコントローラ70は、コントロールユニット(マイクロプロセッサ)と、マイクロプロセッサに情報と、様々な分離プロトコルおよびそのような分離プロトコルに従った装置の運転に関連したプログラムされた指令とを供給するメモリと、を含んでいる。特に、分離プロセス中の様々なステージにおける、ローターが回転される遠心分離速度に関連した情報、および分離バッグ11から衛星バッグ12、14に移される分離された成分の様々な移転流量率に関する情報、を受容するようにマイクロプロセッサはプログラムされている。様々な移転流量率に関する情報は、例えば、液圧の回路中における水力用の液の流れる率や、液圧ポンピングステーション60のステッピングモータ63の回転速度として表現される。マイクロプロセッサは、さらに、選択的な分離プロトコルに沿って分離装置を作動させるため、圧測定用計器67、光電セル(図示しない)、およびピンチバルブ部材からの情報、遠心分離モータ40およびステッピングモータ63を制御するための情報、を直接に又はメモリを通して受容するようにプログラムされる。
【0031】
図5に本発明のシステム/機械装置に用いられる容器の二者択一的なセット10の取り合わせを示している。分離容器11は、実施形態におけるバッグセットの一部であり、分離容器11は、環状および/またはリング状の形状である。いくつかの実施形態においてこれは平らで、またはいくぶん切頭円錐分離容器11で、可撓性のプラスチック材料からなり、いくつかの例では慣例的な血液又は血液成分又はその他の生物学的な流体用のバッグに用いられるタイプのものと同一か類似していてもよい。もしバッグ11に照明する場合には、バッグは光透過性であってもよい。
【0032】
図5に実施形態の実質的に概略的に示すように、第1の成分収集容器12は、チューブ13によって分離容器11に接続され、第2の成分収集容器14は、同様に第2のチューブ15によって分離容器11に接続される。そのような両接続は、リング形バッグ11の内周面か、又は図示しないが、その外周面に接続されるか又はそれらの間のあらゆる望ましい半径位置のいずれかか、あるいはその両方であってもよい。成分収集容器12、14は、あらゆる多様な方法で形づくることができ、および/または、あらゆる多様な材料で形成でき、しかし成分収集容器はいくつかの実施形態では、実質的に慣例的なタイプの可撓性のあるプラスチックシート材料で実質的に長方形のバッグであり、プラスチックシート材料は、赤血球やそれぞれの容器に保存するために選ばれた血液成分産物のタイプを見込んで好んで選択される。図4の2個の成分(2C)セット10において、これら2個の成分収集バッグ12、14は、唯一の最終成分バッグであるが、しかしながら、3個の成分(3C)セットでは、三番目の成分収集バッグ(図示しない)は第3のチューブラインによって、リングバッグ11に接続される。病原性を不活性化した全血(WB)の分離は、第1の収集バッグ12は、血漿を受容するのに適用され、第2の収集バッグ14は、RBCsを受容するのに適用され、第3の収集バッグ(3Cセットにおける)は、血小板を受容するのに適用される。
【0033】
病原性を不活性化した全血の分離および病原性を不活性化した血液成分の調整において、バッグは最初空であるか、あるいは、1以上の最終成分収集容器あるいは製品バッグ、例えば、第2の成分容器14(図5に示す)であって、第2の成分容器14は最初に一定量充填された付加的なあるいは保管流体あるいは液体16で、この液体中に成分、例えば赤血球、が互いに離して配置される。そのような流体の例は、SAG、SAG-M、AS-1、AS-3、あるいはAS-5といった保管溶液に含まれる。
【0034】
例えば、図5の衛星バッグ26に見られるように、保管用あるいは付加的な溶液が随意に設置される分離バッグ中に予め配置されており、衛星バッグ26は、バッグ14に通じる付加的な溶液チューブ27を介してバッグ14および接続チューブ28に接続されるか接続することが可能である。ライン28上に概略的に表され、随意に設置される滅菌障壁あるいはフィルタ29は、これに含まれる。付加的あるいは保管用の溶液16は、ライン28、27を介して衛星容器から容器14に移される。いくつかの実施形態では、溶液容器26は、予めバッグ14に接続、すなわちセット10の製造プロセスの間に接続されるか、あるいは択一的、付加的な溶液バッグ26が、滅菌されたドッキングあるいはスパイク接続を介して、後から接続あるいはドッキングされ、従って事前にはセット10に含まれるかその一部として保管されることはないが、しかしその代わりに異なるとき、つまり血液成分分離/加工の前か後に付加される。成分容器14は、遠心分離がなされるまでやRBCsのような成分産物を受容する準備ができるまでといった望ましいときに使用されるまで溶液を密封状態で保存するために、例えば、壊れ易い、折れるピン17、あるいは剥がすことができるあるいは圧力で破裂する密封など他の密封手段によって、一時的に封がされる。
【0035】
他の成分バッグを用いて、保管用あるいは付加的な溶液は、同様に事前配置でされ、あるいはあとでそれに加えられる成分産物の利益のためにバッグに加えられる。もし血小板を収集するのに、第3の成分収集容器は、血小板用の保管用溶液、例えばPAS、PAS IIIあるいはComposolを内側に保持している。
【0036】
実施形態中で一つに表される、分離容器11は、接続チューブ19に備え付けてあり、接続チューブ19は、供給元である病原性を不活性化した全血20に滅菌ドッキング23によって接続されている。他の実施形態では、上述した図1、図2の原理に沿って、全血は分離容器11内で収集され病原性が不活性化される。この実施形態において、バッグ20とチューブライン19は不要である。
【0037】
図6中に示す一般的な工程110の第1のステップ121において、病原性を不活性化した全血は分離容器/バッグ11に供給される。それから、第2の一般的なステップ122において、病原性を不活性化した全血は回転され、それによって各成分が分離される。次に、ボックス123で示すように、第1の成分産物は、分離容器11から第1の成分容器12に移動あるいは搾り出される。第2の成分産物は、同様に分離容器11から第2の成分容器14に移動されるか搾り出される。これは工程図表110のボックス124で記述される。最後に、第1のおよび/または第2の成分容器12、14は、バルブ、シールおよび/または、例えばそれへのチューブラインなどの注入口の切断、によって閉じられる。これは、ボックス125に記述される。注意すべきは、一般的な概念で、第3、第4、第5のステップ123、124、125は、独立に起こり、且つ/または遠心分離の回転速度を減速し第2のステップ122の分離が終了した後に起こるか、またはより一般的には、ステップ122の回転/遠心分離は他のステップ123、124、および/または125、およびあらゆる択一的および/または中間のステップが実行する間も継続する。従って、回転/遠心分離、分離ステップ122は、通常、ステップ123、124および/または125、およびあらゆる中間および/または択一的なステップが完了後に、ここでは最も頻繁に中断する。第2のステップ122の中断は、通常の工程(注、取り出し、および/または他の管理上の操作工程、マーク付け、ラベル付け、保管および遠心分離工程の終了後のステップなど、後工程を実行するにもかかわらず)の終了を構成する。注意すべきは、第4のステップ124か、または第2の産物容器のバルブ閉め、シール付け、切断ステップなどのあらゆる行事に対して、第1の成分容器が優先するかあるいは第4のステップ124の間に行なわれることに関連して、択一的な、バルブ閉め、シール付け、および/または切断のステップ125が実現される点を強調するため、択一的な、付加的な工程の線123aも(破線で)図5に示されている。
【0038】
第3の産物が収集される場合には、中間ステップ126は、分離容器から第3の産物の容器に向けて第3の産物の移動あるいは搾り出しに用いられる。注意すべきは、中間の付加的なステップ126か、または第3の産物容器のバルブ閉め、シール付け、切断ステップなどのあらゆる行事に対して、第2の成分容器が優先するかあるいは中間の付加的なステップ126の間に行なわれることに関連して、択一的な、バルブ閉め、シール付け、および/または切断のステップ125が実現される点を強調するため、択一的、追加的な工程線124aも、同様に(破線で)示されている。
【0039】
図7は、病原性を不活性化した全血を遠心して成分産物に分離するのに用いられる他のシステム/機械装置に適したバッグセットの他の例を示している。このバッグセットは、可撓性の分離バッグ1000と、それに接続された三つの可撓性の衛星バッグ200、300、150を備えている。
【0040】
分離バッグ1000は、全血の収集バッグ、病原性を不活性化するバッグ、そして病原性を不活性化した全血を成分に分離するバッグ、として使用される。分離バッグ1000は、平らで一般的には長方形である。それは、2枚の長方形のプラスチック材料のシートを互いに溶着させて、それらの間に三角形の頂部下流部に接続した主たる長方形部を有する内部空間を規定するように形成される。第1のチューブ400は、三角形の部分の先端部に接続され、第2、第3のチュール500、600は、三角形の部分の側部の両かどのいずれかにそれぞれ接続される。3つのチューブ400、500、600の近い方の端部は、平行になるようにプラスチック材料の2枚のシートの間に埋め込まれている。分離バッグ1000は、さらに、穴800をチューブ400、500、600に隣接する各角部に有している。穴800は、分離バッグを分離区画に固定するのに用いられる。
【0041】
一定量の抗凝血剤(約450mlの献血に対して約63ml)を最初に分離バッグ加えておき、そして、第1および第3のチューブ400、600の近い方の端部に壊すことのできるストッパー90、100をそれぞれ嵌めて、それらの間で液が流れるのを阻止する。
【0042】
第2のチューブ500は、収集チューブで、その末端に接続された針120を有している。献血の開始には、針120がドナーの静脈に挿入され、血液が収集(分離)バッグ1000の中に集められる。望ましい量の血液が収集(分離)バッグ1000内に集められた後に、収集チューブ500は密封され切断される。全血が加えられる前にバッグ1000に光感作薬が最初に付加され、あるいはチューブ500を介して全血が加えられた後に光感作薬が加えられる。光感作薬は分離チューブ(図示しない)を介して加えられる。
【0043】
第1の分離バッグ200は、血漿成分を受容することが意図されている。第1の分離バッグ200は、扁平で実質的に長方形である。第1の分離バッグ200は、第1のチューブ400の末端に接続されている。
【0044】
第2の分離バッグ300は、赤血球成分を受容するように意図されている。第2の分離バッグ300は、扁平で実質的に長方形である。第2の分離バッグ300は、第3のチューブ600の末端に接続されている。第2の分離バッグ300には、赤血球を保管するための保管溶液が一定量入っており、第3のチューブ600には、その末端に壊すことができるストッパー140が取り付けられており液がそこを流れないように阻止している。
【0045】
第3の衛星バッグ150は、血小板成分を受容するように意図されている。第1、第2の衛星バッグ200、300のように、第3の衛星バッグ150は、扁平で実質的に長方形である。
【0046】
バッグセットは、第1のチューブ400を介して分離バッグ1000に接続された脚部を有した「T」字状の三方向継手160と、第4のチューブ170によって第1の分離バッグ200(血漿成分バッグ)に接続された第1の腕と、第5のチューブ180によって第3の衛星バッグ150(血小板成分バッグ)に接続された第2の腕と、を含んでいる。
【0047】
病原性を不活性化した全血を遠心分離によって4つの別々の量に同時に分離する装置は、図7に示すバッグセットを使用する。装置は、4つの分離バッグ内に収納された4つの別々の量で構成された液とともに、図7に示される4つのバッグセットを受容するのに適した遠心分離器と、各分離バッグからそれに接続された衛星バッグに向けて、分離された成分を少なくとも一つ移転させる成分移転システムと、4つの分離バッグの重さが異なるときに開始時にローターを釣り合わせる第1の釣り合いシステムと、衛星バッグに移転された分離成分の重さがローターのアンバランスを生ずるときにローターを釣り合わせる第2の釣り合いシステムと、を含んでいる。
【0048】
図8に示すように、遠心分離機は、回転軸310周りにローターが回転するのを許容する軸受けアセンブリ3000に支持されたローターを備えている。ローターは、滑車330に接続された円柱形のローター軸320と、システムと、を含み、システムは、ローター軸320の長軸と容器340の長軸とが回転軸310と合致するようにローター軸320の上端部で接続された、衛星バッグを収納するための中央円筒状容器340と、その中心軸が回転軸310と合致するように中央容器340の上部に接続された切頭円錐ターンテーブル350と、を有している。切頭円錐ターンテーブル350は、容器340の開口部の下に広がっている。4つの独立した分離小室4000は、回転軸310に関して対称配置を形成するようにターンテーブル350上に固定される。
【0049】
遠心分離機は、さらに、滑車330の溝内に係合したベルト370によってローターと結合され、回転軸310周りにローターを回転させるモータ360を備えている。
【0050】
分離小室4000は、一般的な形状の長方形で直方体形の容器410を備えている。分離小室4000は、ターンテーブル350上に固定され、その結果それらのそれぞれの中央長軸420が回転軸と交差し、その結果分離小室4000が回転軸310から実質的に同一の距離に配置され、そしてその結果それらの中央長軸420同士の角度が実質的に同一(90度)になる。ターンテーブル350上の分離小室4000の正確な位置は、分離小室4000が空になったときにターンテーブルの重さが均一に分布するように調整され、その結果ローターが釣り合わされる。ターンテーブル350上の分離小室4000の配置に起因して、分離小室4000は回転軸310に対して、ターンテーブル350を幾何的に規定する円錐台の角度と等しい鋭角の角度で傾いている
各容器410は、図4に示すタイプのように、液で満タンに満たされた分離バッグ1000を余裕をもって収容できるように形成される空洞430を備えている。空洞430(後で「分離区画」としても言及される)は、回転軸310から最も遠くに位置する底壁と、ターンテーブル350に最も近くにある下壁と、下壁の反対側に上壁と、2つの側壁と、によって規定される。空洞430は、底壁から延びて実質的に長方形の直方体で角が丸くなった主部と、収斂性の三角形の複数の底面を有した実質的にプリズム形の上部と、を有している。言い換えると、空洞430の上部は、空洞430の中央長軸420に向かって収斂する一対の対向する壁によって規定される。
【0051】
このデザインの1つの重要性は、遠心分離の終了後に全血の少ない成分(例えば、血小板)の薄い層の半径方向への拡張を生ずることと、分離バッグの上部をより一層容易に探知できるようにすることである。図8に示すように、分離小室4000の対向する2つの壁部のうちの上部は、容器410の頂部において開口した3つの円筒形の平行な水路440、450、460に向かって収斂しており、分離バッグ1000が容器410にセットされたときに、3本のチューブ400、500、600が水路440、450、460の中で延ばされる。
【0052】
容器410は、ちょうつがいで動くことができ、容器410の外壁の上部、すなわちターンテーブル350と対向する壁に含まれる側部蓋(図示しない)を備えている。その蓋は、開いたときに、液が満タンに入った分離バッグ1000を分離小室4000内に簡単に装填することを許容するのに必要な大きさにされる。容器410は、その蓋を容器410の残りの部分に固定する第1のロック手段(図示しない)を備える。
【0053】
容器410は、同様に、分離小室4000内に分離バッグ1000を固定する固定手段を備えている。バッグ固定手段は、その蓋の内面で分離小室4000の頂部に近い位置から突出した2つのピン(図示しない)と、容器410の頂部でこれに対応した2つの凹みと、を備えている。2つのピンは、間隔を置かれており、分離バッグ1000の上部角部の2つの穴に嵌るように形成される。
【0054】
分離装置は、さらに、それぞれの分離バッグからそれに接続された衛星バッグに少なくとも一つの分離された成分を移転させる成分移転手段を備えている。成分移転手段は、分離された成分が収められた分離バッグ1000を圧搾するとともに、分離された成分を衛星バッグ200、300、150に移転させるための圧搾システムを備えている。
【0055】
圧搾システムは、可撓性のダイヤフラム500を備え、ダイヤフラム500は、空洞中の膨張可能な室510を規定するように各容器410に固定される。特に、ダイヤフラム500は、ターンテーブル350に最も近い位置にある空洞430の底壁と空洞430の下壁の大部分とを線で区画するように形成される。
【0056】
圧搾システムは、さらに、ターンテーブル350の周辺部の近くで延びてターンテーブル350内で環を形成している周辺部循環マニホールド520を備えている。各膨張性の室510は、容器410の底の近くで、それぞれの容器410の壁部内を延びる供給チャンネル530を介してマニホールド520に接続される。
【0057】
圧搾システムは、さらに、分離小室4000内で膨張可能な室510に水力用の液体を注入したり、これから排出したりする液圧ポンピングステーション6000を備えている。水力用の液は、混成液中にあって分離されるべき成分(例えば、混成液が血液であるときの赤血球)の密度よりもかすかに高い密度を有するものが選択される。結果として、遠心分離の間、膨張可能な室510内の水力用の液体は、そこにおける体積がどんなものであっても、普通は分離小室4000の最も外側の部分に保持される。ポンピングステーション6000は、回転封止材690を通してダクト560によって、膨張可能な室510に接続されており、ダクト560は、ローター軸320内、中央容器340の低壁内および側壁内を延び、中央容器340の縁からターンテーブル350の内を半径方向に延びて、そこでマニホールド520に接続する。
【0058】
ポンピングステーション6000は、ローターダクト560に繋がった回転用の液を介して液的に連結された液圧シリンダー620内を移動できるピストン610を有するピストンポンプを備えている。ピストン610は、ピストンロッドとリンクしたリードねじ650を動かすステッピングモータ640によって駆動される。液圧シリンダ620は、水力用の液の貯水槽660にも接続されており、貯水槽660は、バルブ670によってその利用を制限されており、バルブ670は、液圧シリンダ620、ローターダクト560、膨張可能な室510を含んだ液圧の回路に水力用の液を導入したり液圧の回路から液を回収したりすることを選択的に許可する。圧測定用計器680は、液圧の回路中の水圧を測定するために、液圧の回路に接続されている。
【0059】
分離装置は、さらに中央容器340の開口の周囲のローターに上から固定される4組の第1、第2のピンチバルブ部材700、710を備えている。ピンチバルブ部材700、710の各組は、一つの分離小室4000に面しており、分離小室4000と関連付けられている。ピンチバルブ部材700、710は、可撓性のプラスチックチューブ内の液の流れの選択的な阻止あるいは許可、そしてプラスチックチューブの選択的な封止および切断を可能とするようにデザインされている。各ピンチバルブ部材700、710は、延長された円筒形の本体と、溝720を有した頭と、を有し、溝720は、静止した上顎と開閉位置の間で可動する下顎とによって規定される。溝720は、下顎が開位置にあるときに図7に示すバッグセットのチューブ400、170、180の一つが心地よく横たわってその内側に係合できるように設計される。延長された本体は、下顎を動かす機構を有し、その機構は、プラスチックチューブの封止(sealing)や切断に必要なエネルギーを供給する高周波発生器に接続されている。ピンチバルブ部材700、710は、ピンチバルブ部材700、710の長軸が回転軸310と平行になり、ピンチバルブ部材700、710の頭が容器340の縁よりも上側に突出するように、中央容器340の内側に固定されており、中央容器340の内面に隣接している。電力は、回転軸320の下部の周囲に取り付けられた滑りリング列によってピンチバルブ部材700、710に供給される。
【0060】
分離装置は、さらに分離小室4000に収納される4つの分離バッグ1000の重さが異なるときに開始時にローターを釣り合わせる第1の釣り合い手段を備えている。第1の釣り合い手段は、上述した成分移転手段の要素と実質的に同一の構造要素を有し、具体的には、膨張可能な液圧室510は、周辺部循環マニホールド520と、周辺部循環マニホールド520に接続されたローターダクト560を通して水力用の液を膨張可能な液圧室510に送り込む液圧ポンピングステーション6000とに相互に連絡している。4つの別々の体積の混成液で同一の重さを有しない混成液(なぜなら4つの体積が同一でなく、および/または、一つの体積と他のものとは液の密度もわずかに異なるからである)を分離小室4000が収納したローターを開始時に釣り合わせるために、ポンピングステーション6000は、分離工程の最初に、相互に連絡された液圧室510に液を送るように制御され、その制御は、ローターが最も不釣合いな状態にあるときにローターを釣り合わせるように選択された所定の体積の水力用の液を送ることでなされる。病原性を不活性化した全血において、この釣り合い用の体積の決定するには、2つの献血の間の体積の違いの最大値と、2つの献血の間のヘマトクリット(換言すれば、密度)の違いの最大値と、を勘定に入れる。遠心分離の力が作用する中で、分離バッグ1000の重さの違いによって、水力用の液は4つの分離小室4000内で不均一に配置され、ローターを釣り合わせる。望ましい開始時の釣り合いを得るため、いかなる体積の分離バッグ1000が空洞430に収納される場合でも、所定量の水力用の液がこれに接続された膨張可能な室510に送られた後に、空洞430が満タンにならないように、分離小室4000の空洞430の体積が選択されている。
【0061】
分離装置は、さらに、中央容器340内の衛星バッグ200、300、150内に移動された成分の重さが異なるときにローターを釣り合わせるための第2の釣り合い手段を備えている。例えば、2つの献血が同一のヘマトクリットと異なる体積を有するときに、各献血から抽出される血漿の体積が異なり、2つの献血が同一の体積と異なるヘマトクリットを有するときに、各献血から抽出される血漿の体積が異なる。
【0062】
図9に示すように、第2の釣り合い手段は、4つの可撓性の四角の小袋810、820、830、840を備えており、小袋810、820、830、840は、4つのチューブ節(図示しない)と相互に連結され、各チューブ節は、2つの隣接する小袋をその底部で接続する。小袋810、820、830、840は、混成液の密度と近い密度を有する一定量の釣り合い用の液を収納している。釣り合い用の液の体積は、ローターが最も不釣合いな状態で釣り合いをとれるように選択される。小袋810、820、830、840は、中央容器340の内表面に並び、且つ、あらゆる小袋810、820、830、840内で釣り合い用の液が自由に展開されるように、内部の体積が釣り合い用の液の体積よりも大きくなるように設計される。運転において、もし、例えば、4つの小袋810、820、830、840にそれぞれ隣接する4つの衛星バッグ200が異なる体積の血漿成分を受容したとき、4つの衛星バッグ200は、遠心分離の力によって4つの小袋810、820、830、840に向かって不均一に押され、それが4つの小袋810、820、830、840内で釣り合い用の液が不均一に分布され、衛星バッグ200間の重さの違いが補償される。
【0063】
分離装置は、さらに、コントローラ900を備えており、このコントローラ70は、コントロールユニット(マイクロプロセッサ)と、マイクロプロセッサに情報と、様々な分離プロトコル(例えば、血漿成分および赤血球成分を分離するプロトコル、あるいは血漿成分、血小板成分、および赤血球成分を分離するプロトコル)およびそのような分離プロトコルに従った装置の運転に関連したプログラムされた指令とを供給するメモリユニットと、を含んでいる。特に、分離工程(成分を分離するステージ、血漿成分を搾り出すステージ、血漿画分中で血小板を懸濁するステージ、血小板成分を搾り出すステージ)中の様々なステージにおける、ローターが回転される遠心分離速度に関連した情報、および分離バッグ1000から衛星バッグ200、300、150に移される分離された成分の様々な移転流量率に関する情報、を受容するようにマイクロプロセッサはプログラムされている。様々な移転流量率に関する情報は、例えば、液圧の回路中における水力用の液の流れる率や、液圧ポンピングステーション6000のステッピングモータ640の回転速度として表現される。マイクロプロセッサは、さらに、選択的な分離プロトコルに沿って分離装置を作動させるため、圧測定用計器680、4組の光電セル730、740からの情報、遠心分離モータ360、ポンピングステーション6000のステッピングモータ640、および4組のピンチバルブ部材700、710を制御するための情報、を直接に又はメモリを通して受容するようにプログラムされる。
【0064】
図10に示す分離プロトコルによれば、4つの別々の体積を有した病原性を減少した血液が、血漿成分と、血小板、白血球、多少の赤血球、少ない体積の血漿(以後、軟膜成分という)を有した第1の細胞成分と、主として赤血球で構成される第2の細胞成分に分離される。図7に代表されるバッグセットの分離バッグ1000には、それぞれの体積を有した血液が収納され、収集チューブ500を利用してドナーから事前に分離バッグ1000内に収集される。血液の収集後、収集チューブ500はシールされるとともに分離バッグに近い位置で切断される。一般に、血液の体積は4つの分離バッグ1000の間で同一ではなく、ヘマトクリットは一つの分離バッグ1000と他の分離バッグとの間で異なる。その結果、分離バッグ1000は、僅かに異なる重量を有する。
【0065】
図10に示すように、分離工程の第1のステージは、4つのバッグセットをローター上の4つの分離小室4000内に装填することで開始する。
【0066】
第2のステージでは、ローターは、分離バッグの重量の違いを補償するようにローターを釣り合わせる。
【0067】
第3のステージでは、分離バッグ1000内の病原性を不活性化した全血を望ましいレベルにまで沈降させる。
【0068】
第4のステージでは、血漿成分は、血漿成分バッグ200に移される。
【0069】
第5のステージでは、血小板成分は、血小板成分バッグ150に移される。
【0070】
第6のステージでは、遠心分離工程が終了する。
【0071】
第5のステージが完了したとき、赤血球は分離バッグ1000から赤血球成分バッグ300内に移される。
【0072】
病原性を不活性化した全血は、米国特許6,910,998に記載される全血分離装置に利用して血液成分に分離される。
【0073】
上記した全血を分離するあらゆる工程において、個々の成分に分離する前の病原性を不活性化した全血に対して事前に白血球を除去することは必要ない。同様に、分離後の赤血球に対して白血球を除去することも必要ない。全血の病原性を不活性化は、リボフラビンを用いて、光は、機能的に全血中の白血球を不活性化する。これを下記例1に示す。病原性を不活性化する工程は、白血球を含んだ軟膜が収集されたときに特に重要である。
【方法】
【0074】
対照単位に対して、全血は手動で処置され、緩やかな回転によって遠心分離され、血小板を多く含む血漿(PRP)の上清を搾り出し、保存のため分離された赤血球(RBCs)にAS-3添加液を全量(約100 mL)加える。PRPから血小板の濃縮液が形成され、血小板の濃縮液は、1日・5日血小板品質測定のため、Helmer社製のインキュベータで22℃で1日間および採取前の5日間保存される。残った血漿は凍らせて28日間保管され、0日・28日タンパク品質評価のサンプルになる。対照単位の血漿、血小板の濃縮液、赤血球(RBCs)は、処理単位のものと同一のテストを受ける。
【0075】
処理単位に対して、1 LのELP バッグ内に収納された470 ±10 mLの全血に対して35 mLのリボフラビンが添加され、CaridianBCT, Inc., Lakewood, CO から入手できるMirasol(登録商標) Whole Blood Illuminator R5.0.wb.12の照明器によって22, 33, 44, 80, 110 J/mLRBCの光が照明される。シャーレ内(in vitro)血漿品質を測定するためのサンプルが照明前に除去される。照明後に全血がUBBバッグに移されて、緩やかな回転で遠心分離され、PRP/リボフラビンの上清が搾り出され、AS-3添加液の全量(約100 mL)を保管のために赤血球に加える。血小板成分および血漿成分は上述したようにPRPから製造される。血小板成分は、1日・5日血小板品質測定のため、Helmer社製のインキュベータで22℃でサンプル採取前に保管される。
【0076】
血小板品質は、1日目、5日目におけるpH、渦巻き、乳酸塩の発生率、グルコースの消費率を測定することによって評価される。
【0077】
血漿品質は、冷凍保存状態で0日目、28日目における繊維素原(fibrinogen)、全タンパク、ファクターV, VIII ,XIを測定することによって評価される。
【0078】
赤血球の品質は、42日間4℃で保存することを通して、溶血、浸透圧の壊れ易さ、ATPの放出性をチェックされる。0日サンプリング用のサンプルは、それについで起こる28日、35日、42日に行なわれるサンプリング用のものとともに除去される。処置された全血は室温で保存され、溶血およびカリウム([K+])の濃度のパーセンテージが測定される。
【例1】
【0079】
全血を含む血液産物の輸血は、輸血を受けた受容者に否定的な影響を与える免疫反応を引き起こす。これら免疫学的な結果は、輸血関連移植組織対宿主疾患(transfusion-associated graft-versus-host disease (TA-GvHD))やサイトカインや同種(異系)抗体の産生を含んでいる。TA-GvHD、すなわちドナー対受容者の反応は、ほとんど常に致命的であるとともに、ドナーのTリンパ球の増殖に介在される。白血球を不活性化するとともにTA-GvHDを避けるための通常のアプローチは、血液産物をγ線にさらすことである。
【0080】
以下の分析では、新鮮な(収集から8時間以下の)全血の白血球を除去しない単位を22, 33, 44 J/mLRBCのエネルギーで処置した。処置される細胞に対しては、照明前の全血にリボフラビンを加えた。照明後に、全血の単位から白血球が単離され、白血球の機能性(1)PMA (ホルボール 12-ミリスチン酸塩 13-アセテート)に対する細胞活性の提示(CD69の発現)、(2)PHA(フィトヘマグルチニン)、同種免疫刺激細胞、CD3/CD28による刺激、に対する白血球の増殖、(3)同種免疫反応性細胞の抗原提示、(4)LPS(リポ多糖類)あるいはCD3/CD28抗体に対する白血球のサイトカインを生産する能力、が評価される。
【0081】
1.)PMAによって活性化された白血球の能力およびCD69の発現
CD69は、T細胞上の早期活性化マーカーで、抗CD69抗体を用いたフローサイトメトリーによって可視化される。4時間のT細胞の活性化で、CD69は探知され、細胞が活性化された状態にある間と同じくらい長く高い発現状態を維持する。グラフ1に示すように、リボフラビンと光の処置によって、テストされたすべてのエネルギーでPMAで活性化されたT細胞上のCD69の発現が抑制された。
【表1】

【0082】
グラフ1:処置後の全血のT細胞上におけるPMAで誘導されたCD69の過剰発現
2.)PHAおよび抗CD3/CD28抗体に対する白血球の増殖
処置された白血球の増殖能力は、3日間放置した後のチミジンの取り込みによって分析される。グラフ2に示すように、PHA(A)または血小板に結合した抗CD3+抗CD28抗体(B)は、処置されない白血球の増殖を誘導する。分裂促進剤物質にさらされたときに、33 J/mlRBCで上記のように処置された白血球は、増殖が誘導されることはなかった。
【表2】

【0083】
グラフ2:PHA(グラフA)又は抗CD8/CD29抗体(グラフB)に応じた増殖に対する処置の影響
3.)同種免疫刺激剤、および同種免疫反応性細胞への抗原提示に対する白血球の増殖
血液産物中の白血球は、受容細胞に対して抗原を提示でき、増殖および同種抗体の形成を誘導できる。処置された白血球は、リンパ球を混ぜた培養(MLC)によって、反応性の細胞(刺激によって増殖する)として、および刺激性の細胞(反応性のある赤血球の増殖を促進する)として、両面から評価される。処置された白血球がMLC中で、同種免疫刺激細胞に対して増殖できないか(グラフ3A)、増殖できるかによって、反応性のある細胞かどうかがテストされる。MLC中で検出される増殖量は、刺激性の細胞と反応性のある細胞との組合せに依存しており、従ってドナーに依存する。同種免疫刺激細胞は、マイトマイシンC(有糸分裂紡錘体の毒)で処置されて、培養中で刺激性の細胞の増殖が阻止されるが、この刺激性の細胞は、処置されない反応性の細胞および処置された反応性の細胞とともに培養されている。
【0084】
処置された白血球(刺激性の細胞)は、MLC中で同種免疫反応性細胞(グラフ3B)の増殖を誘導できる能力の有無が分析される。同種免疫反応性細胞から増殖が検出できないことは、リボフラビンおよび光による処置が白血球の抗原提示を阻害することを示している。
【0085】
要約すると、分裂促進物質(PHA)に対して、処置されない白血球が増殖されると、抗体(抗CD3/CD28)および同種免疫反応性細胞による表面受容体の架橋(crosslinking)がされる。対照的に、リボフラビンと、UV光によって処置された白血球は、どのエネルギー値のUV光でテストしたものであっても、あらゆるこれらの刺激に対して増殖することが抑制され、この処置によって抗原不特異的だけでなく抗原特異的な増殖の誘導がブロックされる。処置された白血球は、同種抗原反応性細胞の抗原提示および増殖の誘導を生じないが、これに対して処置されない白血球は、同種抗原反応性細胞の抗原提示および増殖の誘導を生じる。
【表3】

【0086】
グラフ3:同種免疫刺激細胞または同種免疫反応性細胞に対する処置の影響を処置しない細胞と対比したもの。点線は刺激性の細胞が存在しない状況で細胞の増殖率を示したもの。
【0087】
処置による増殖の抑制のレベルを、刺激されたコントロール細胞と刺激された処置された細胞とに対比しながら、表1に示している。増殖反応は93-99%減少された。刺激された処置された細胞の増殖レベルがPBS中で培養された細胞で検出されるレベルの増殖と同じ程度に低くなったため、処置された細胞の増殖は分析の検出限界まで下がった。PBSで培養された細胞に対する刺激されたコントロール細胞の比較は、増殖において99%減少した(データは示していない)。
【表4】

【0088】
表1:抑制のレベル
4.)抗CD3/CD28抗体又はLPSに対する白血球のサイトカインの産生能力
白血球の機能の他の測定は、LPS(リポ多糖類)や抗CD3/CD28抗体に対するサイトカインの産生を測定することである。抗CD3/CD28による刺激はT細胞にサイトカインの産生を誘導する(TH1/TH2サイトカイン)。LPSは、単核白血球やマクロファージを活性化して炎症性のサイトカインを放出するように導く。サイトカインはCBA(Cytometric Bead Assay:血球計算ビーズ分析)(キットはBD Biosciences, PharMingenから購入できる)を利用して検出される。標準的な溶液はキットで提供される。コンピュータプログラムの標準的なカーブのための得られた値は、個々のサンプルの直線的な回帰と結果を決定する。これらCBA分析の検出限界は約5-10 pg/mlである。
【0089】
表2Aに示すように、TH1/TH2サイトカインの誘導は、抗CD3/28を用いた刺激(表2A)は、LPS(表2B)を用いた刺激よりも高い。処置した又は処置しなかった細胞をすべてのエネルギーで評価した培地コントロールと比較して、この処置は、抗CD3/28を用いた刺激によって誘導されるTH1/TH2サイトカインの産生の有意に減少した。抗CD3/28抗体にさらしたときに、IL-2、TNF-α、IFN-γの産生は、33 J/mlRBCおよび上記のように処置した培地コントロールのレベルにまで減少しなかったが、処置しなかった細胞によって産生されるサイトカインのレベルと比較して、サイトカインの産生されるレベルは90%以上減少した。LPSによって誘導されるTH1/TH2サイトカインのレベルは、44 J/mlRBCで処置した後の培地コントロールのレベルにまで減少した。
【0090】
炎症性のサイトカインは、抗CD3/28の刺激だけでなく、LPSによっても誘導される。処置は、抗CD3/28抗体に応じておこる、炎症性のサイトカインの産生の有意な減少を生じた。培地コントロール中の高いレベルのIL-8は、新たに産生されるサイトカインというよりも、貯蔵されたサイトカインを表している。処置は、培地コントロール細胞のIL-8のレベルをも減少させる。LPSに応じた炎症性のサイトカインの産生は、処置によって減少されるが、抗CD3/28抗体の刺激によって見られる培地コントロールのレベルにまでは減少しなかった。
【0091】
抗CD3/抗CD28抗体に応じたサイトカインの産生は、22 J/mlRBCで処置したIL-4とIL -8を除いたテストされた全てのエネルギーで90%以上が抑えられた(表2A参照)。次に述べるサイトカインすなわちIL-5およびIL-2に関し33 J/mlRBCで処置したときにLPSに応じたサイトカイン産生の抑制は、90%を下回った。IL-5およびIL-2は、処置されない細胞においてLPSに応じてとても低いレベルで産生され、これらは処置後に検出されるレベルにまで減少した。TNF-αおよびIL-10は、炎症性のサイトカインやTH1/TH2サイトカインを検出するためのCBAキットを用いて測定される。
【0092】
LPSの刺激の後のサンプルの標準偏差の値は、抗CD3/28による刺激後に得られる値に比して高い。抗CD3/28による刺激は、T細胞受容体を通してTリンパ球を特異的に活性化する。これに対して、LPSはグラム陰性バクテリアの外側の膜の主要な成分で、多くの細胞種、主としてマクロファージに対してサイトカインの分泌を促進する。多クローン性の反応の引き金となるLPSのこの内毒素の機能は、観察されたドナー間での変わりやすさを説明している。
【表5】

【0093】
表2:処置後のサイトカイン産生の抑制
要約すると、同種免疫反応性細胞に対してテストされたすべての刺激および抗原提示に応じた白血球の増殖は、テストされた全てのエネルギーで90%以上抑制された。抗CD3/抗CD28抗体に応じたサイトカインの産生は、22 J/mlRBCで処置したときのIL-4およびIL-8を除くテストされた全てのエネルギーで90%以上抑制され、IL-4およびIL-8は、それぞれ84%および89%ずつ抑制された。
【例2】
【0094】
全血中に存在するウィルスを不活性化する点において全血の病原性を不活性化が有効かどうかをテストするために、包膜なしおよび包膜ありのモデルのウィルスの両方がテストされた。A型肝炎(Hepatitis A:HAV)、イヌパルボウィルス(canine parvovirus:CPV)、水疱性口内炎ウィルス(vesicular stomatitis virus :VSV)、半伝染性鼻腔気管炎(infectious bovine rhinotracheitis virus :IBR)などのウィルスが用いられた。
【0095】
図10に示されるように、包膜なし(図10A)および包膜あり(図10B)の両方のウィルスで、エネルギーに応じてlog減少が直線的に増加した。
【例3】
【0096】
全血中に存在する細菌を臨床に関連するレベルにまで不活性化する点において全血の病原性を不活性化が有効かどうかをテストするために、低い力価の細菌の調査を行なった。全血の病原性の不活性化を行なった後、全血は赤血球(RBC)成分、血小板(PRP)成分に分離される。結果を下の表3に示す。+のマークは5日間のパネル内成長によっていくらかの培養菌の複製が見られたことを意味する。−のマークは、5日間のパネル内成長によって培養菌の複製が見られなかったことを意味する。
【表6】

【0097】
a…2つ中1つが陰性
b…3つ中2つが陰性
c…8つ中7つが陰性
d…8つ中3つが陰性
e…8つ中1つが陰性
表3:低い力価の細菌での調査
表3に示すように、110 J/mLRBC で照明された赤血球中でS. epidermidisだけが成長した。
【例4】
【0098】
全血を20、33、44、60、80、および110 J/mLRBCで照明した。分離された赤血球成分を4℃で42日間AS-3中で保管した。28日、35日、および42日間の保管後に、赤血球の溶血のパーセンテージを測定した
図12に示すように、110 J/mLRBCで照明された全血は、42日間の保管で最も大きな量の溶血を生じた。他のエネルギーでの照明では、42日以上の保管で起こる溶血に有意な差は生じなかった
【例5】
【0099】
病原性を不活性化した全血から分離された赤血球のATPレベルあるいは濃度を測定した。ATPの濃度は、所定の時間内の細胞中におけるATPの存在量を測定した。
【0100】
図13に示すように、エネルギーレベルの増加に従って、細胞中のATPの全濃度は減少する。
【例6】
【0101】
病原性を不活性化した全血から分離された赤血球の保管中の浸透圧の壊れ易さを測定した。通常の赤血球は比較的不浸透性の両凹性のディスクで、周囲を取り囲んでいる媒体とともに浸透圧的な平衡を維持する。周囲を取り囲んでいる媒体が低浸透圧になると、液が細胞内に流入して安定性が維持する。過度の低浸透圧状態になると、ついには許容量が満たされて破裂する。膜に損傷のある赤血球は膨張の許容量が減少しており、通常の赤血球であれば溶解しないゆるやかな低浸透圧状態でも破裂する。それらは浸透圧の壊れ易さの増加を示している。浸透圧の壊れ易さの平均値(MOF)は、赤血球の膜の壊れ易さを測定したものである。MOFが高ければ、赤血球はより壊れ易い。MOFは、50%の赤血球が溶血するNaClの濃度である。
【0102】
図14に見られるように、照明された全血から分離された処置後の赤血球を42日間保管したものは、処置しない赤血球に比して平均して僅かに壊れ易くなる。
【例7】
【0103】
保管された赤血球中でのカリウム濃度の測定は、赤血球の生存能力を測るもう一つの尺度となる。赤血球の細胞膜中のカリウムポンプが正しく働いていないときに、赤血球からカリウムが漏れ出す。カリウムポンプの損傷は、病原性を不活性化する工程の間に起こる。
【0104】
室温で5日以上保管した全血(血液成分に分離されていない)のカリウム濃度を測定した。図15に示すように、赤血球の健全性に対するエネルギーの影響は、エネルギーが増加するにつれて増加する。
【例8】
【0105】
血漿は、病原性を不活性化した全血から分離され、血漿タンパクの品質は0日と28日とで測定される。
【0106】
図16Aおよび図16Bに見られるように、血漿タンパクの活性又は濃度のパーセンテージは、処置しない血漿および低いエネルギーで処置した血漿と比較して、110 J/mLRBCで処置した血漿で減少することが見られる。
【例9】
【0107】
血小板は病原性を不活性化した全血から分離され、血小板の品質に関するマーカーが測定される。図17に結果を示す。pHは5日間の保管において処置された細胞および処置されなかった細胞の両方の間で同一のままであったが、処置された血小板の5日間の保管ではエネルギーレベルが高くなるにつれて酸素の消費に増加が見られ、同様に乳酸塩の産生が増加し、一方、5日間の保管を通した二酸化炭素の産生およびグルコースの消費にはエネルギーレベルが高くなるにつれて減少が見られた。
【0108】
上記の結論によれば、病原性を不活性化した全血から分離された血液成分は様々なエネルギーレベルの照明を受けたときも生存可能と見られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドナーからバッグに全血を収集し、
前記全血に十分なエネルギーの光を照明し、全血中に存在するアロサジン光感作薬が全血中に存在するあらゆる病原体を不活性化するように光分解し、
病原性を不活性化した全血を保管する、
ことを特徴とする全血の病原性不活性化方法。
【請求項2】
前記全血を収集する前に前記アロサジン光感作薬を前記バッグに加えることを特徴とする請求項1に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項3】
前記全血を収集した後に前記アロサジン光感作薬を前記バッグに加えることを特徴とする請求項1に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項4】
前記アロサジン光感作薬は、リボフラビンであることを特徴とする請求項1に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項5】
前記アロサジン光感作薬を光分解するのに十分な前記エネルギーは、約22−110 J/mLrbcの間であることを特徴とする請求項1に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項6】
前記全血は、前記収集バッグ中で照明されることを特徴とする請求項1に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項7】
前記全血は、前記収集バッグから分離したバッグで照明されることを特徴とする請求項1に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項8】
前記保管された病原性を不活性化した全血を血液成分に分離する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項9】
前記全血は、前記収集バッグ内で成分に分離されることを特徴とする請求項8に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項10】
前記全血は、前記収集バッグとは分離したバッグ内で成分に分離されることを特徴とする請求項8に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項11】
前記分離された血液成分は、赤血球を有することを特徴とする請求項8に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項12】
前記分離された血液成分は、血小板を有することを特徴とする請求項8に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項13】
前記分離された血液成分は、血漿を有することを特徴とする請求項8に記載の全血の病原性不活性化方法。
【請求項14】
全血をバッグに収集し、
病原性を不活性化した全血をつくるために、前記全血中に存在するあらゆる病原体を不活性化するのに十分な時間前記全血およびアロサジン光感作薬に照明し、
病原性を不活性化した前記全血を少なくとも1つの血液成分に分離し、
少なくとも1つの血液成分を搾り出す、
ことを特徴とする全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項15】
前記アロサジン光感作薬は、リボフラビンであることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項16】
前記少なくとも1つの血液成分は、赤血球であることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの血液成分は、血小板であることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの血液成分は、血漿であることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項19】
前記全血を収集する前に前記光感作薬を前記バッグに加えることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項20】
前記全血を収集した後に前記光感作薬を前記バッグに加えることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項21】
前記分離は、遠心分離であることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項22】
前記収集、前記照明、前記分離および前記搾り出しは、同一のバッグ中で起こることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項23】
前記収集、前記照明、前記分離および前記搾り出しは、分離された複数のバッグ中で起こることを特徴とする請求項14に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項24】
前記赤血球は、患者に与える前に白血球を除去しないことを特徴とする請求項16に記載の全血を収集し病原性を不活性化し少なくとも1つの病原性を減少した血液成分に分離する方法。
【請求項25】
病原性を不活性化した全血を収めたバッグをローターに装填し、
前記病原性を不活性化した全血を少なくとも第1の成分および第2の成分に分離するように前記ローターを回転させ、
前記第1の成分を第1の衛星バッグに移すように前記バッグを搾る、
ことを特徴とする病原性を不活性化した全血を成分に分離する方法。
【請求項26】
前記第2の成分を第2の衛星バッグに移すように前記バッグを搾ることを特徴とする請求項25に記載の病原性を不活性化した全血を成分に分離する方法。
【請求項27】
前記第2の成分は前記バッグ中に残ることを特徴とする請求項25に記載の病原性を不活性化した全血を成分に分離する方法。
【請求項28】
前記病原性を不活性化した全血を第3の成分に分離するように前記ローターを回転することを特徴とする請求項25に記載の病原性を不活性化した全血を成分に分離する方法。
【請求項29】
前記バッグを搾ることは、前記ローター上で起こることを特徴とする請求項25に記載の病原性を不活性化した全血を成分に分離する方法。
【請求項30】
全血を収集するための収集バッグと、
移転用チューブを介して前記収集バッグに事前に接続された照明用バッグと、
移転用チューブを介して前記照明用バッグに事前に接続された保管バッグと、
を具備することを特徴とする事前に接続されたバッグおよび溶液セット。
【請求項31】
光感作薬を収めるとともに事前に移転用チューブを介して前記照明用バッグに接続された光感作薬用バッグを具備することを特徴とする請求項30に記載の事前に接続されたバッグおよび溶液セット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【公表番号】特表2010−535235(P2010−535235A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520146(P2010−520146)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/071541
【国際公開番号】WO2009/018309
【国際公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(506313866)カリディアンビーシーティ バイオテクノロジーズ,エルエルシー (9)
【Fターム(参考)】