説明

六方晶小板形晶相を含むカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナート

本発明は、六方晶小板形の結晶を有し、且つ以下の式(A):
【化5】


{式中、m=3.5〜4.5であり、且つAn=過塩素酸塩及び/またはトリフルオメタンスルホン酸塩(トリフレート)によって部分的に置換されていてもよい炭酸塩であり、n=0〜6である}を有するカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートの製造方法であって、
(a)酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムと、場合により活性化されたオキシ水酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムとを反応させ、そして同時にまたは続いて二酸化炭素またはアルカリ金属の(重)炭酸塩からなる炭酸塩供給源とを反応させ;そして
(b1)場合によりさらに、上記段階(a)で得られた生成物と、過塩素酸及び/またはトリフルオロメタンスルホン酸とを反応させるか、または
(b2)場合により上記段階(a)で得られた生成物を200℃〜900℃でカ焼して、続いて水中で、場合によりアルカリ金属の(重)炭酸塩の存在下、過塩素酸塩及び/またはトリフレート塩の存在下でイオンを交換する、
の各段階を含む、前記方法に関する。
本発明はさらに、組成物及び安定剤系におけるこのようにして得られたアルミン酸塩、ならびにその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六方晶小板形晶相をもつカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナート(calcium carbonate hydroxodialuminate)の製造方法、組成物及び安定剤系におけるこのようにして得られたアルミン酸塩、並びにその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
新規の無鉛PVC安定剤では、硬質PVC用途における長期安定化用の安定剤成分としてハイドロタルサイトが必要である。
【0003】
欧州特許出願第EP-A930 332号は、無鉛系用のトリカルシウムヒドロキシジアルミナート(tricalcium hydroxodialuminate)の使用についても記載している。その明細書にはカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートについては記載されていない。
【0004】
PCT国際出願国際公開第WO-A93/25613号は、加藤石(katoite)の製造について記載する。炭酸塩を含有する化合物については記載していない。水酸化カルシウムと水酸化アルミニウムから出発している加藤石の合成は、ドイツ特許出願第DE-A2 424 763号にも記載されている。熱可塑性樹脂、特にポリスチレン、HDPE、PVC、SBR及びEVAにおける難燃作用もその明細書には明示されている。
【0005】
PCT国際出願国際公開第WO-A92/13914号は、PVC安定剤としてハイドロカルマイト(hydrocalumite)を請求する。炭酸塩を含有する同族体はここでも記載されていない。この合成は共沈により実施し、これにより廃水中に塩のバラストがさらに発生する。
【0006】
ドイツ特許出願第DE-A1 952 6370号は、熱可塑性樹脂の製造用の酸掃去剤として混合アルカリ土類金属のアルミニウムヒドロキシドを開示する。この製造の過程では、モル量のNaOHを塩(salt burden)を介して廃棄しなければならない。
【0007】
テトラカルシウムモノカーボネートドデカヒドロオキソジアルミナートは、最初にTurriziani及びSchippa,Ric.Sci.26,2792,(1956年)により単離され、且つ特性決定された。この合成はコストがかかり、不便で(セメントペーストが滲出)、収率は低い(薄層が製造)。初期の研究において、テトラカルシウムテトラデカヒドロオキソジアルミナートが記載されている。ここでは後に炭酸塩(ヘミ-またはテトラカーボネート)が検出されたが、炭酸塩の形成はおそらく空気中の二酸化炭素で進行したものだろう。
【0008】
JPCA Res.&Devel.Lab.(Portland Cement Assoc.),2(1962年)は、水中でのCa3Al2O6とCa(OH)2との反応の過程でCa4Al2(OH)13(CO3)0.5*8H2Oの形成法を記載しており、空気中のCO2との副反応のため、6ヶ月の反応時間後に生成物が形成する。
【0009】
Act.Cryst.C54,1214(1998)は、120℃及び2kbarの圧力のもとでCa(OH)2、Al(OH)3及びCaCO3から進行する三成分固相合成におけるCa4Al2(OH)12CO3*5H2Oについて記載する。この反応時間は4週間である。この研究ではX線構造解析も含む。
【0010】
同様のプロセスが、Cem.Conc.Res.29,63(1999)に記載されている。さらなる合成は、J.Res.NBS(National Bureau of Standards),64A,333(1960)で公表されている。この文献では、1250℃で数時間にわたってAl(OH)2とCaCO3とを燃焼することによって得られたアルミン酸モノカルシウムを、Ca(OH)2及びNa2CO3と混合している。
【0011】
近年、テトラカルシウムモノカーボネートドデカヒドロキソジアルミナート水和物を製造するための実用的な方法が記されてきた。硝酸カルシウムを水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウム溶液との存在下、一段階で硝酸アルミニウムと反応させて、得られたゲルを65℃で24時間エージングさせる[J.Mater.Chem.6(1),103(1996)及びChem.Mater.13,3507(2001)]。しかしながらこの共沈プロセスは、かなりの量の塩(salt burden)が廃水中に発生するので、工業的には利用可能ではなく(反応体が高価)、非常に環境に優しくない。
【0012】
これらの合成法は、数週間もの反応時間、1000℃を超える反応温度や低収率であり、大多数のものが形成法として参照できるだけにすぎないので、いずれも工業的には全く重要ではない。
【0013】
従って、カルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートの製造プロセスの代替法及びそのような製品のさらなる活用可能性に対する需要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】欧州特許出願第EP-A930 332号
【特許文献2】PCT国際出願国際公開第WO-A93/25613号
【特許文献3】ドイツ特許出願第DE-A2 424 763号
【特許文献4】PCT国際出願国際公開第WO-A92/13914号
【特許文献5】ドイツ特許出願第DE-A1 952 6370号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Turriziani及びSchippa,Ric.Sci.26,2792,(1956年)
【非特許文献2】JPCA Res.&Devel.Lab.(Portland Cement Assoc.)4,2(1962年)
【非特許文献3】Act.Cryst.C54,1214(1998)
【非特許文献4】Cem.Conc.Res.29,63(1999)
【非特許文献5】J.Res.NBS(National Bureau of Standards),64A,333(1960)
【非特許文献6】J.Mater.Chem.6(1),103(1996)
【非特許文献7】Chem.Mater.13,3507(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、本発明の目的は、そのようなプロセス及びアルミン酸塩、並びにその使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の目的は、六方晶小板形の晶相を有し、且つ以下の式(A):
【化1】

{式中、m=3.5〜4.5であり、且つAn=過塩素酸塩及び/またはトリフルオメタンスルホン酸塩(トリフレート)によって部分的に置換されていてもよい炭酸塩であり、n=0〜6である}
のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートの製造方法であって、
(a)酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムと、場合により活性化されたオキソ水酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムとを反応させ、そして同時にまたは続いて二酸化炭素またはアルカリ金属の(重)炭酸塩からなる炭酸塩供給源とを反応させ;そして
(b1)場合によりさらに、上記段階(a)で得られた生成物と、過塩素酸及び/またはトリフルオロメタンスルホン酸とを反応させるか、または
(b2)場合により上記段階(a)で得られた生成物を200℃〜900℃でカ焼して、続いて水中で、場合によりアルカリ金属の(重)炭酸塩の存在下、過塩素酸塩及び/またはトリフレート塩の存在下でイオンを交換する、
の各段階を含む方法により達成される。
【0018】
好ましくは、m=3.8〜4.2、An=場合により過塩素酸塩により一部置換されていてもよい炭酸塩であり、及びn=0〜3である。
【0019】
さらに好ましくはアルカリ金属の(重)炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムを段階(a)で添加する。
【0020】
さらに好ましくは、段階(a)で前記炭酸塩供給源を続いて転換する。
【0021】
段階(a)の反応は、25〜180℃の温度、周囲圧力または12バール以下の圧力下で実施する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
炭酸塩または二酸化炭素を添加することによって、非常に効率的に沈降し、容易に濾過可能な六方晶が得られる。この現象は意外なことであった。というのも、炭酸塩を用いずに不活性ガス雰囲気中で操作するときには、濾過が難しいどろどろした生成物が形成するからである。この化合物は白色固体状で得られる。収率は殆ど定量的である。
【0023】
このプロセスのさらに好都合な点は、小板形または錠剤形の晶相をもつ化合物が得られ、その結果、作業場での健康上のリスク(針状晶の吸入によって生じるような呼吸器疾患)が最小限度に抑えることと考えられる。
【0024】
さらに、式(A)のアルミン酸塩を製造するための本発明に従った実際の方法は、
(c)段階(a)または場合により段階(b)で得られた生成物を、50〜700g/l、好ましくは100〜500g/l、より好ましくは150〜350g/lの固体懸濁液と、0.2〜2.0mm、好ましくは0.3〜1.0mm、より好ましくは0.3〜0.6mmの粉砕体を使用して湿潤粉砕する、粉砕生成物の平均粒径は<10μm、好ましくは<7μm、より好ましくは<3μm、最も好ましくは<1μmである、
のさらなる段階(c)を含むことができる。
【0025】
本出願はさらに、カルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートのコーティング方法であって、
(a)本発明に従った製造方法によりカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートを製造し;そして
(b)コーティング用に、コーティングすべき生成物をベースとして1〜10%のステアリン酸若しくはパルミチン酸またはそのアルカリ金属塩を使用して、50〜80℃で生成物をコーティングする、
の各段階を含む、前記方法を提供する。
【0026】
本発明はさらに、
・式(A)のアルミン酸塩を製造するための本発明のプロセスから得ることができる少なくとも一種のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートと、
・水酸化カルシウム及び/または水酸化アルミニウム
とを含む組成物に関する。
【0027】
本組成物はさらに合成ポリマーを含むことができる。
【0028】
この状況において、少なくとも一種の前記カルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートが、前記合成ポリマーをベースとして10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%の濃度で存在すると好都合である。
【0029】
本合成ポリマーは特に、熱可塑性及び/またはハロゲン化ポリマーであってもよい。
【0030】
特にハロゲン化ポリマー、好ましくはPVCの場合には、本発明のプロセスにより得ることが可能な式(A)の化合物は、特に高熱応力(加工)の場合に非常に優れた熱安定性を付与する。このことは意外であった。というのも、式(A){式中、An=PCT国際出願国際公開第WO92/13914号に従った炭酸塩(炭酸塩含有ハイドロカルミナート:hydrocaluminate)である}の化合物では、全く所望の安定剤作用が成し遂げられないからである。
【0031】
式(A)の化合物は、他の合成ポリマー若しくはコポリマー、たとえばHD(高密度)及びLD(低密度)ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポロブチレン(PB)、ポリイソブチレン(PIB)、ポリエステル(PET)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリスチレン(PS)またはABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、SBR(スチレン-ブタジエンゴム)、SAN(スチレン-アクリロニトリルコポリマー)及びEVA(エチレン-酢酸ビニルコポリマー)でも使用することができるが、PS、SBR及びEVAが好ましい。これに関連して、これらは突出して充填剤または難燃剤/防煙剤としての機能を満足する。工業界の要件に相当する高い充填剤レベル及びMFI(メルトフローインデックス)の場合でさえも、その機械的値は良好である。
【0032】
さらに、これらの化合物は、塩基触媒化反応(たとえばクライゼン縮合及びニトリル類のエポキシ化、及びエステル交換)で、並びにバイヤー-ビリガー酸化反応においても触媒として使用することができる。活性化形では、これらは、水素化、レドックス反応、マイケル付加、バイツ-シェーファーエポキシ化及びシアノエチル化用の他の触媒の担体として機能することができる。
【0033】
使用される触媒前駆体は、式(A)の化合物のか焼(活性化)類似体であってもよい。この活性化は、カルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナート(a)を温度200〜900℃でカ焼して、水または水と二酸化炭素とを除去することによって実施することができる。
【0034】
式(A)のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートの典型的な例としては、以下のものがある。
【化2】

これらの式中、nは上記定義の通りである。
【0035】
好ましいものは、化合物1、6、7、8、9、10、11、12、13、14及び15である。特に化合物1、6、7、9及び13が好ましい。
【0036】
原材料の不活化形または活性化形の酸化カルシウムまたは水酸化カルシウム及びアルミニウムオキソハイドロキシドまたは水酸化アルミニウムと、炭酸若しくは重炭酸ナトリウム(カリウム)または二酸化炭素から進行するが、炭酸ナトリウムまたはカリウムが好ましく、後段で添加するのがより好ましく、特に水性相中で激しく攪拌しながら(1000rpm以下)数時間加熱した後で且つ濾別除去後、式(A){式中、An=炭酸塩である}のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートを殆ど定量的な収率で得ることが可能である。この反応は、25〜98℃の周囲温度、または180℃以下の高温及び12バール以下の圧力で実施するのが好ましい。
【0037】
酸化カルシウムは、生石灰(quicklime)または生石灰(burnt lime)、水酸化カルシウムは、消石灰または石灰水若しくは乳状石灰の水性懸濁液、アルミニウムオキソヒドロキシドは、ボーキサイト、ダイアスポア若しくはベーマイト、水酸化アルミニウムは、ギブサイト、ヒドラギライトまたはバイエライトの状態で使用することができる。
【0038】
過塩素酸塩またはトリフレート塩は、室温で式(A)の化合物と、希水溶液の過塩素酸またはトリフルオロメタンスルホン酸とを反応させることにより得られる。別の合成では、式(A){式中、An=炭酸塩である}のカ焼(活性化)化合物から実施することも可能である。この場合、活性化後、水性塩溶液、特にアルカリ金属の過塩素酸塩またはトリフレート溶液を使用するアニオン交換により充填し、ここでアルカリ金属の(重)炭酸塩が存在してもよい。
【0039】
過塩素酸ナトリウムまたはトリフルオロ酢酸ナトリウムの吸着質は、式(A)の活性化または非活性化化合物上に好適な水性塩溶液を噴霧するか、またはこれと一緒に攪拌することによって得ることができる。
【0040】
非常に細かく狭い粒径分布をもつ生成物が好ましい。生成物の粒径分布は、攪拌ボールミルによって終了段階で調節することができる。この段階は好ましくは、50〜700g/lの固体濃度で反応体の懸濁液で実施し、サイズ0.2〜2mmの粉砕体を使用することができ、ミルベース(millbase)の平均粒径は<10μである。
【0041】
コーティング化生成物が特に好ましい。ステアリン酸若しくはパルミチン酸またはそのアルカリ金属塩を使用するコーティングは、50〜80℃で実施する。この段階は、濾過前、即ちプロセスの間、または乾燥後、即ちプロセスの後に、脂肪酸またはそのアルカリ金属塩を添加することにより実施し、その量はコーティングすべき生成物をベースとして1〜10重量%である。この段階は、ヘンシェルミキサーでも実施することができる。
【0042】
式(A)のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートは、特にPVC用の熱安定剤として、0.1〜10phrの量で使用することができる。0.5〜5.0phrが好ましく、1.0〜3.0phrがより好ましい。
【0043】
かくして本発明は、さらに、カルシウムカーボネートヒドロキソジアルミネートの製造に関する本発明のプロセスに従って得ることができる少なくとも一種のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートを含む、合成ポリマーの安定剤系を提供する。
【0044】
式(A)の化合物は、好ましくは0.1〜10phrの量で存在し、好ましくは0.5〜5.0phrであり、より好ましくは1.3〜3.0phrである。
【0045】
好ましい安定剤系は、以下の物質:水酸化カルシウム、亜鉛石鹸、Ca/Zn安定剤、1,3-ジケトン、そのCa、Mg、Zn若しくはAl塩を含む、ポリオール(たとえばマリトール、ラクチトール、パラチニトール、ペンタエリスリトール(PE)、ビス-PE、トリメチルロールプロパン(TMP)、ビス-TMPまたはトリス(ヒドロキシエチル)イソシアナート(THEIC))、リンのエステル、グリシジル化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、水または有機溶媒中に未溶解または溶解させた、アルカリ金属の過塩素酸塩/トリフレート、アルカリ土類金属の過塩素酸塩/トリフレートまたは亜鉛の過塩素酸塩/トリフレート、アミノウラシル、ジヒドロピリジン、アミノクロトン酸エステル、シアノアセチルウレアまたは過塩素酸塩の少なくとも一種を含む。
【0046】
本発明の安定剤系に含まれていてもよいこれら及びさらなる添加剤については後述する。
【0047】
特にPVCの熱安定化に関しては、以下の化合物または化合物群をさらに存在させてもよい。
・金属の水酸化物または石鹸(金属:Mg、Ca、Zn及びAl)
・ハイドロタルサイト、ドーソナイト及びゼオライト
・ベータ-ジケトンまたはベータ-ケトエステル類
・アミノウラシル及び-チオウラシル類
・グリシジル化合物
・ポリオール類(たとえばマリトール、ラクチトール、パラチニトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールまたはTHEIC)
・リンのエステル
・水または有機溶媒(たとえばBDG(ブチルジグリコール)、PEG(ポリエチレングリコール)またはポリオール)中に未溶解または溶解させたアルカリ金属、アルカリ土類金属または亜鉛の過塩素酸塩(またはトリフレート)。
【0048】
化合物及び化合物群の詳細(定義及び量)については、欧州特許第EP1 669 397号から得ることができる。
【0049】
さらに、以下の添加剤を場合により添加することができる:
・充填剤
・滑剤
・可塑剤
・顔料
・エポキシ化脂肪酸エステル
・酸化防止剤
・UV吸着剤及び光安定剤
・発泡剤。
【0050】
これに関する詳細情報は、欧州特許第EP1 669 397号に記載されている。
【0051】
追加の添加剤としては、蛍光増白剤、静電気防止剤、殺生物剤、加工助剤、防曇剤、ゲル化助剤(gelating aid)、耐衝撃性改良剤、金属失活剤、難燃剤、及び防煙剤、並びに相溶化剤がある。この問題に関する記載は、“Plastics Additives Handbook”,Dr.Zweifel編、Carl Hanser Verlag、第5版、2000年及び“Handbook of Polyvinyl Chloride Formulating”,E.J.Wickson、J.Wiley&Sons、1993年に知見することができる。
【0052】
安定化すべき塩素化ポリマーの例としては、塩化ビニル、塩化ビニリデンのポリマー、その構造中に塩化ビニル単位を含むビニル樹脂、たとえば塩化ビニルと脂肪酸のビニルエステル、特に酢酸ビニルとのコポリマー、塩化ビニルと、アクリル酸とメタクリル酸のエステルとアクリロニトリルとのコポリマー、塩化ビニルと、ジエン化合物及び不飽和ジカルボン酸またはその無水物とのコポリマー、たとえば塩化ビニルと、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチルまたは無水マレイン酸とのコポリマー、後塩素化(postchlorinated)ポリマー及び塩化ビニルのコポリマー、塩化ビニル及び塩化ビニリデンと不飽和アルデヒド、ケトン及び他のもの、たとえばアクロレイン、クロトンアルデヒド、ビニルメチルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどとのコポリマー;塩化ビニリデンのポリマー及び、塩化ビニル及び他の重合可能な化合物とのコポリマー;クロロ酢酸ビニルのポリマー及びジクロロビニルエーテルのポリマー;酢酸ビニルの塩素化ポリマー、アクリル酸の塩素化ポリマーエステル及びアルファ-置換アクリル酸の塩素化ポリマーエステル;塩素化スチレン、たとえばジクロロスチレンのポリマー;塩素化ゴム;エチレンの塩素化ポリマー;クロロブタジエンのポリマー及び後塩素化ポリマー並びにクロロブタジエンと塩化ビニル、塩素化天然及び合成ゴムとのコポリマー、並びに上記ポリマーと互いのまたは他の重合可能な化合物との混合物がある。本発明においては、PVCは、懸濁液、バルクまたはエマルションポリマーであってもよい、アクリロニトリル、酢酸ビニルまたはABSなどの重合可能な化合物と塩化ビニルとのコポリマーを意味するものと理解される。
【0053】
PVCホモポリマー、単独またはポリアクリレート若しくはポリメタクリレートとの組み合わせが好ましい。
【0054】
さらにPVCとEVA、ABS及びMBSとのグラフトポリマー、PVCとPMMA(ポリメチルメタクリレート)との同様のグラフトポリマーも有用である。好ましい基質は、上記のホモ-及びコポリマー、特に塩化ビニルホモポリマーと、他の熱可塑性及び/またはエラストマーポリマーとの混合物、特にABS、MBS(メチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、SAN、EVA、CPE(塩素化PE)、PMA(ポリメチルメタクリレート)、PMMA、EPDM(エチレン-プロピレン-ジエンエラストマー)及びポリラクトン類、特にABS、NBR、NAR(アクリロニトリル-アクリレートコポリマー)、SAN及びEVAの群由来のブレンドもある。コポリマーに関して使用される略号は当業者には公知であり、以下の通りである:ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン);SAN(スチレン-アクリロニトリル);NBR(アクリロニトリル-ブタジエン);NAR(アクリロニトリル-アクリレート);EVA(エチレン-酢酸ビニル)。特に、アクリレート(ASA)をベースとするスチレン-アクリロニトリルコポリマーも有用である。
【0055】
この状況において好ましい成分は、成分(i)及び(ii)として、PVC25〜75重量%と上記のコポリマー75〜25重量%との混合物を含むポリマー組成物である。特に成分として、(i)PVC100重量部と(ii)ABS及び/またはSAN-変性ABS0〜300重量部とコポリマーNBR、NAR及び/またはEVA、特にEVA0〜80重量部とから構成される組成物が重要である。
【0056】
本発明における安定化でさらに有用なものは、特に加工、使用または貯蔵の結果として損傷を受けた、詳細が上述されたポリマーであってもよい、塩素化ポリマーのリサイクレート(リペレットしたもの:recyclate)もある。PVCリサイクレートが特に好ましい。本発明の安定剤の組み合わせのさらなる使用は、静電気防止特性を硬質または軟質PVCで製造した完成品に付与できるということに基づいている。このようにして、高価な静電気防止剤の使用を軽減することが可能である。この使用に関しては、軟質PVCまたは半硬質PVCに使用するのが好ましい。軟質PVCまたは半硬質PVCに使用するのが特に好ましい。
【0057】
本発明の安定化は、非可塑化または可塑剤非含有または本質的に可塑剤非含有組成物を構成する塩素化ポリマー組成物、及び可塑化組成物の両方に適している。硬質PVCまたは半硬質PVCへの適用が特に好ましい。
【0058】
本発明の組成物は特に、硬質PVC用、中空体(ボトル)、包装フィルム(熱成形フィルム)、吹き込みフィルム、「安全パッド」フィルム(自動車)、パイプ、フォーム、重質外形(heavy profile)(窓枠)、半透明壁形(wall profile)、建築用プロファイル、フィルム(ルビサーム(Luvitherm)プロセスにより製造したものを含む)、プロファイル、羽目板(siding)、接続具、オフィスフィルム(office film)及び住宅用装置、断熱材、コンピューター及び家庭用電気器具の部品用の配合物用、並びに特に半導体部門における電子技術応用用に配合物の形態で適している。これらはとても白く表面光沢のある窓枠を製造するのに非常に適している。
【0059】
半硬質及び軟質PVC用配合物の形態での好ましい他の組成物は、外装鉄線、ケーブル絶縁、装飾用フィルム、屋根用フィルム、フォーム、農業用フィルム、ホース、封止材プロファイル、床、壁紙、自動車部品、軟質フィルム、射出成形、オフィスフィルム及び非膨張(anti-inflated)構造体用フィルム用である。プラスチゾルとしての本発明の組成物の使用例は、合成皮革、床、テキスタイルコーティング、壁紙、コイルコーティング及び自動車用の下腹部防護具(underbody protection)があり;本発明の組成物の焼結(sintered)PVC用途例としては、潤滑油、スラッシュ成形(slush mold)及びコイルコーティング、ルビサームプロセスにより製造したフィルム用のE-PVCがある。この点に関する詳細は、“KUNSTOSTOFFHANDBUCH PVC”「Plastics Handbook,PVC」、第2/2巻、W.Becker/H.Braun、第2版、1985年、Carl Hanser Verlag、1236〜1277頁を参照されたい。
【0060】
本発明はさらに、カルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートを製造するための本発明に従ったプロセスにより得ることができるカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナート{ここでm=3.8〜4.2、An=炭酸塩であり、n=0〜3である}を提供する。
【0061】
これらのカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナート及び本発明の組成物は、酵素固定化用の触媒(前駆体)として、HDPE、PET、PS、SBR、SANまたはEVA用の充填剤、難燃剤または防煙剤として使用することができる。
【実施例】
【0062】
実施例1:テトラカルシウムモノカーボネートドデカヒドロキソアルミナート水和物の製造
反応タンク(5m3)に、水酸化カルシウム(Nekablanc(登録商標)0、KFN製)296kg(4kmol)を脱イオン水3中に懸濁する。この懸濁液を攪拌しながら90℃に加熱する。
【0063】
900rpmのスターラー速度で、水酸化アルミニウム(Apyral(登録商標)40CD、NABALTEC製)156kg(2kmol)を、導入スクリューにより急速に添加する。続いて1時間かけて、脱イオン水1中の炭酸ナトリウム106kg(1kmol)の溶液を添加し、この混合物をさらに1時間、攪拌しながら90℃に放置する。冷却した懸濁液をフィルタープレスで濾過し、脱イオン水で事実上中性になるまで洗浄し、フィルターケーキをミル乾燥機中で乾燥する。微結晶質白色粉末は、六角小板形の晶相を有し、約98%の収率(506kg)で得られる。これは以下の分析値を有する:
【化3】

これは経験式:3.9CaO*Al2O3*CO2*8.4H2O(MW=516.2)またはCa3.9Al2(OH)11.8*CO3*2.5H2Oに対応する。
【0064】
XRD分析から、出発物質Ca(OH)2(ポートランダイト:portlandite)及びAl(OH)3(ギブサイト)が<5%のほんの少量だけ含まれることが判明している。
【0065】
格子パラメーターは2θ=11.8°(基底反射)であり、d=7.5Å(格子間間隔)である。
【0066】
実施例2〜4:市販品PM2及びPM3と比較した本発明製品PM1の性能試験
実施例1の物質サンプル(PM1、実施例2)をHYSAFE 549(M.J.HUBER Corp.製の市販のハイドロタルサイト−PM2、実施例3)及びZEOLON P 4A(MAL RT製の市販のナトリウムゼオライト−PM3、実施例4)と比較して180℃で動的熱試験(dynamic heat test)にかける。この試験は、COLLIN W110Eロールミル(ロール径:110mm、10rpm、摩擦:−10%)で実施する。
【0067】
この混合物は以下の組成を有している(表1)。
【表1】

【0068】
この混合物を180℃で5分間、ロールミルで均質化する。続いて、圧延(rolling)を180℃で継続し、試験片(d=0.3mm,25×38mm)を5分間隔で取り、その黄変(YI値)をASTM D1925に従ってBYK GARDNER(Spectro Guide Sphere Gloss)製熱量計で測定する。
【0069】
個々の試験片のYI値を以下の表2からとることができる(YI値が低ければ低いほど、有効性が高い)。
【表2】

【0070】
本発明の実施例2は、最初の色(AF)及び色の保持(FH)に関して、最近の従来法(PA)(実施例3及び4)よりも明らかに優れている。
【0071】
実施例5〜7:PM1の配合変形(表3参照)
【表3】

【0072】
この混合物を均質化し、上記実施例と同様に試験する。YI値は以下の表4からとることができる。
【表4】

【0073】
実施例2と実施例6とを比較すると、アミノウラシルをベースとする代替安定化剤は、AFとFHで大きく改善されていることを示す(YI:37.7/37.6及びYI:49.2/49.0でそれぞれ40及び18%)。同様に、実施例6とESBOを添加した実施例7との比較でもかなりの向上を示す。
【表5】

【0074】
実施例2と実施例5の比較から、ESBOを添加すると、性能が18または17%(YI:45.2/45.0及びYI:48.1/48.0)向上していることが示されている。
【0075】
DHC(DIN 53 581に従ったt10、t50及びt200値−方法B:導電率測定)(表5参照)において、Zn安定化剤の代わりに有機ベースの安定剤を使用すると、はっきりと改善を示す(t10、t50及びt200値において41%、55%及び75%の増加)。
【0076】
実施例9:試験片の水中貯蔵試験
1.コンパウンド材料の製造:
Henschelミキサー中、実施例2、3及び4に従ったコンパウンド化材料1000g(約15分、110℃、2500rpm)。
【0077】
2.圧縮スラブの製造:
ニーダー(PolyLab System、ThermoElectronCorp.製:ドライブ:Rheocord 300p、ニーダー:Rheomix 3000p、180〜185℃、40rpm、12〜15分);圧縮(Polystat 300S、Schwabenthan製:12分、175℃、100kp/cm2)、スラブ寸法:180×250×3mm。
【0078】
水貯蔵手順:圧縮スラブは、蒸留水(500ml、23℃)中で三週間、ISO 62:1999をベースとして貯蔵する(表6参照)。
【0079】
【表6】

【0080】
数字の値は、実施例2の水の吸収率が実施例4及び実施例3よりも増加していることを示す。即ち、従来法のものよりも本発明の化合物が改善されていることを示す。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
六方晶小板形の晶相を有し、且つ以下の式(A):
【化4】

{式中、m=3.5〜4.5であり、且つAn=過塩素酸塩及び/またはトリフルオメタンスルホン酸塩(トリフレート)によって部分的に置換されていてもよい炭酸塩であり、n=0〜6である}を有するカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミネートの製造方法であって、
(a)酸化カルシウムまたは水酸化カルシウムと、場合により活性化されたオキソ水酸化アルミニウムまたは水酸化アルミニウムとを反応させ、そして同時にまたは続いて二酸化炭素またはアルカリ金属の(重)炭酸塩からなる炭酸塩供給源とを反応させ;そして
(b1)場合によりさらに、上記段階(a)で得られた生成物と、過塩素酸及び/またはトリフルオロメタンスルホン酸とを反応させるか、または
(b2)場合により上記段階(a)で得られた生成物を200℃〜900℃でカ焼して、続いて水中で、場合によりアルカリ金属の(重)炭酸塩の存在下、過塩素酸塩及び/またはトリフレート塩の存在下でイオンを交換する、
の各段階を含む、前記方法。
【請求項2】
式中、m=3.8〜4.2、An=場合により過塩素酸塩により一部置換されていてもよい炭酸塩、及びn=0〜3であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルカリ金属の(重)炭酸塩、好ましくは炭酸ナトリウムまたはカリウムを段階(a)で添加することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階(a)で前記炭酸塩供給源を続いて転換することを特徴とする、請求項1〜3の一項に記載の方法。
【請求項5】
段階(a)の反応を、25〜180℃の温度、周囲圧力または12バール以下の圧力下で実施することを特徴とする、請求項1〜4の一項に記載の方法。
【請求項6】
さらに
(c)段階(a)または場合により段階(b)で得られた生成物を、50〜700g/lの固体懸濁液と、0.2〜2.0mmの粉砕体を使用して湿潤粉砕する、の段階を含み、粉砕生成物の平均粒径は<10μmである、請求項1〜5の一項に記載の方法。
【請求項7】
カルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートのコーティング方法であって、
(a)請求項1〜6の一項によりカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートを製造し;そして
(b)コーティング用に、コーティングすべき生成物をベースとして1〜10%のステアリン酸若しくはパルミチン酸またはそのアルカリ金属塩を使用して、50〜80℃で生成物をコーティングする、
の各段階を含む、前記方法。
【請求項8】
請求項1〜7の一項に記載の方法から得ることができる少なくとも一種のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートと、水酸化カルシウム及び/または水酸化アルミニウムとを含む組成物。
【請求項9】
さらに合成ポリマーを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記少なくとも一種のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートが、前記合成ポリマーをベースとして10〜70重量%の濃度で存在することを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記合成ポリマーが熱可塑性及び/またはハロゲン化ポリマーであることを特徴とする、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜7の一項に記載の方法から得ることができる少なくとも一種のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートを含む、合成ポリマーの安定剤系。
【請求項13】
前記式(A)の化合物を0.1〜10phr、好ましくは0.5〜5.0phr、より好ましくは1.3から3.0phrの量で使用することを特徴とする、請求項12に記載の安定剤系。
【請求項14】
以下の物質:水酸化カルシウム、亜鉛石鹸、Ca/Zn安定剤、1,3-ジケトンまたはそのCa、Mg、Zn若しくはAl塩、ポリオール(たとえばマリトール、ラクチトール、パラチニトール、ペンタエリスリトール(PE)、ビス-PE、トリメチルロールプロパン(TMP)、ビス-TMPまたはトリス(ヒドロキシエチル)イソシアナート(THEIC))、リンのエステル、グリシジル化合物、エポキシ化脂肪酸エステル、未溶解か、または水若しくは有機溶媒に溶解させたアルカリ金属の過塩素酸塩/トリフレート、アルカリ土類金属の過塩素酸塩/トリフレートまたは亜鉛の過塩素酸塩/トリフレート、アミノウラシル、ジヒドロピリジン、アミノクロトン酸エステル、シアノアセチルウレアまたは過塩素酸塩の少なくとも一つがさらに存在することを特徴とする、請求項12または13に記載の安定剤系。
【請求項15】
m=3.8〜4.2であり、An=炭酸塩であり、且つ0=0〜3であることを特徴とする、請求項1〜7の一項に記載の方法により得られるカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナート。
【請求項16】
酵素固定化用の触媒(前駆体)として、HDPE、PET、PS、SBR、SANまたはEVA用の充填剤、難燃剤若しくは防煙剤としての、請求項15に記載のまたは請求項8に記載の組成物のカルシウムカーボネートヒドロキソジアルミナートの使用。



【公表番号】特表2010−510149(P2010−510149A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−536651(P2009−536651)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009876
【国際公開番号】WO2008/061664
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【出願人】(503379760)ナバルテック アー・ゲー (5)
【Fターム(参考)】