説明

共役した不飽和酸のエステル(共役酸エステル)、それらの製造方法及びそれらの使用

一般式I:X(I)[式中、示数m及びnは1又は整数>1を表し、かつ変数X及びYは次の意味を有する:X 分子中に1個又は1個より多いカルボキシル基、炭素原子6〜60個及び少なくとも2個の共役二重結合を有するオレフィン系不飽和カルボン酸(共役酸)から誘導される基;及びY 少なくとも1個の化学線で活性化可能な結合を含有する一結合性又は多結合性の有機基;但し、(1)Xが分子中に1個より多いカルボキシル基を有する共役酸から誘導されている場合にm=1及びY=一結合性基、及び(2)Y=多結合性基の場合にn=1及びX=分子中に1個のカルボキシル基を有する共役酸から誘導される]の共役した不飽和カルボン酸のエステル(A)(共役酸エステル);それらの製造方法及び化学線で硬化可能な、熱的にかつ化学線で硬化可能な又は酸化的に硬化可能な材料として又はそれらの製造のためのそれらの使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規の共役した不飽和酸のエステル(共役酸エステル;Konjuensaeureester)、特に新規の共役した不飽和脂肪酸のエステル(共役脂肪酸エステル;Konjuenfettsaeureester)に関する。
【0002】
そのうえ本発明は共役酸エステル、特に共役脂肪酸エステルの新規製造方法に関する。
【0003】
さらに本発明は化学線で硬化可能な材料として又はそれらを製造するための新規の共役酸エステル、特に共役脂肪酸エステルの使用に関する。
【0004】
とりわけ本発明は被覆、塗膜、プライマー、接着層及びシーリングの製造のための塗料、接着剤及びシーリング材料として、並びに成形部材及び自立シート(freitragenden Folien)を製造するための、化学線で硬化可能な新規材料の使用に関する。
【0005】
脂肪酸、例えばラウリン酸、フェニルウンデカン酸及びウンデセン酸でのイタコン酸の酵素によるエステル化は、“Synthesen und Untersuchungen zum Polymerisationsverhalten von Itaconsaeurederivaten”の表題を有するChristine Ruedigerの学位論文, Fachbereich Naturwissenschaften II der Bergischen Universitaet Gesamthochschule Wuppertal, 1998から公知である。化学線で硬化可能な材料として、熱的にかつ化学線で硬化可能な材料として又は空気乾燥性(酸化的に硬化可能な)材料として、又はそれらの製造のための前記エステルの使用は記載されていない。
【0006】
化学線で、特に紫外線での硬化のためには、好ましくはいわゆる100%−系が化学線で硬化可能な材料として使用され、前記材料は、大幅に又は完全に有機溶剤を含まず、かつそれらの成分がほぼ完全に又は完全に、硬化される材料の硬化の際に生じる三次元ネットワーク中へ組み込まれるので、揮発性有機化合物の後燃焼が削減されることができる。それゆえこれらの100%−系は揮発性有機化合物、特に溶剤の放出の回避を目的とする厳密なVOC(揮発性有機分)−方針にも適合する。
【0007】
これらの本質的な利点にもかかわらず、化学線で硬化可能な100%−系もある程度の欠点を有する。例えば、それらの粘度はたいていの塗布法、特に吹付け塗布又はロール塗布のためにはしばしば高すぎる。周知のように、粘度は反応性希釈剤、例えばイソボルニルアクリレート(Roempp Online, 2002, “Reaktivverduenner”も参照)又は2−エチルヘキシルアクリレート(Roempp Online, 2002, “(2-Ethylhexyl)acrylat”も参照)の使用により低下されることができる。これらの反応性希釈剤は、硬化された材料に良好な性質、例えば良好な付着並びに高い耐水性及び耐引っかき性を付与することができる。しかし同時にこれらは硬化された材料の脆さを高める。反応性希釈剤は硬化の際に特に目の細かい三次元ネットワークを形成するので、これらは望ましくない重合収縮もまねく。とりわけ、公知の多数の反応性希釈剤は際立って強烈で不快な自己臭を有し、このことは化学線で硬化可能な当該材料の製造及び塗布の際に臭いにひどく悩まされることになる。
【0008】
故に、技術水準の欠点をもはやこれ以上有するのではなくて、100%−系の粘度を有効に低下させ、その結果常用かつ公知の方法を用いて容易に塗布されることができる、新規のオレフィン系不飽和モノマー、特に新規の共役酸エステル、殊に新規の共役脂肪酸エステルを提供するという課題が本発明の基礎となっていた。
【0009】
新規の共役酸エステル、特に共役脂肪酸エステルは、単純な方法で、安全にかつ再現可能に製造されうるべきであり、その際にオレフィン系不飽和エステルを製造するための熱的方法の公知の欠点、例えば副反応として重合の高いリスクを伴う時間集約的な合成が回避されるべきである。
【0010】
新規の共役酸エステル、特に新規の共役脂肪酸エステルを用いて製造された、化学線で硬化可能な新規材料、特に新規の100%−系は、化学線でだけでなく、熱的に及び/又は酸化的にも硬化されうるべきである。その際に硬化は迅速に行われるべきであり、かつ妨げになる重合収縮が付随されていないべきである。
【0011】
生じる新規の硬化された材料は、常用かつ公知の基材上への抜群の付着、抜群の耐水性、抜群の耐引っかき性及び高い防食効果を有するべきである。その際にこれらは脆化する傾向を有しないべきである。
【0012】
それに応じて、一般式I:
(I)
[式中、示数m及びnは1又は>1の整数を表し、かつ変数X及びYは次の意味を有する:
Xは、分子中に1個又は1個より多いカルボキシル基、6〜60個の炭素原子及び少なくとも2個の共役二重結合を有するオレフィン系不飽和カルボン酸(共役酸;Konjuensaeure)から誘導される基であり;かつ
Yは、化学線で活性化可能な少なくとも1個の結合を有する一結合性又は多結合性の有機基である;
但し、
(1)Xが分子中に1個より多いカルボキシル基を有する共役酸から誘導されている場合には、m=1であり、かつY=一結合性基であり、かつ
(2)Y=多結合性基である場合には、n=1であり、かつX=分子中に1個のカルボキシル基を有する共役酸から誘導されている]で示される共役した不飽和カルボン酸の新規エステル(A)(共役酸エステル)が見出された。
【0013】
以下に、共役した不飽和カルボン酸の新規エステル(A)は“本発明による共役酸エステル(A)”と呼ぶ。
【0014】
そのうえ、
(i)分子中に1個又は1個より多いカルボキシル基、6〜60個の炭素原子及び少なくとも2個の共役二重結合を有する少なくとも1つのオレフィン系不飽和カルボン酸(共役酸)、又はこの共役酸の少なくとも1つのエステルを
(ii)化学線で活性化可能な少なくとも1個の結合を有する少なくとも1つのヒドロキシル基含有化合物と、
触媒の存在で反応させることによる共役した不飽和カルボン酸のエステル(共役酸エステル)の新規製造方法が見出され、前記方法の場合に触媒としてエステル交換又はエステル化を触媒する少なくとも1つの酵素及び/又はエステル交換又はエステル化を触媒する少なくとも1つの生物が使用され、かつ前記方法は以下に“本発明による方法”と呼ぶ。
【0015】
さらなる発明対象は、詳細な説明から明らかになる。
【0016】
技術水準を考慮して、本発明の基礎となっている課題が、本発明による共役酸エステル(A)及び本発明による方法を用いて解決されることができたことは、意外であり、かつ当業者に予測不可能であった。
【0017】
特に、本発明による共役酸エステル(A)により、化学線で硬化可能な100%−系の粘度が有効に低下されることができたので、これらが常用かつ公知の方法を用いて容易に塗布されることができたことは意外であった。
【0018】
本発明による共役酸エステル(A)は単純な方法で安全にかつ再現可能に製造されることができ、その際にオレフィン系不飽和エステルを製造するための熱的方法の公知の欠点、例えば副反応として重合の高いリスクを伴う時間集約的な合成がもはや生じない。
【0019】
本発明による共役酸エステル(A)を用いて製造される本発明による硬化可能な材料、特に本発明による100%−系は、化学線でだけでなく、熱的に及び/又は酸化的にも硬化されることができた。その際に硬化は迅速に行われ、かつ妨げになる重合収縮が付随されていなかった。そのうえ、本発明による硬化可能な材料の製造、塗布及び硬化の際に臭いに悩まされることがないか、又は僅かに悩まされるに過ぎない。
【0020】
生じる本発明による硬化された材料は、常用かつ公知の基材上への抜群の付着、抜群の耐水性、高い防食効果及び抜群の耐引っかき性を有していた。その際に、これらは意外なことに脆化する傾向を有していなかった。
【0021】
本発明による共役酸エステル(A)は一般式Iを有する。
【0022】
一般式I中で、示数m及びnは1又は>1の整数、好ましくは1、2、3又は4、より好ましくは1、2又は3、特に好ましくは1又は2、特に1を表し、但し、
(1)以下に記載されるように、Xが、以下に記載されるように、分子中に1個より多いカルボキシル基、好ましくは2個、3個又は4個、より好ましくは2個又は3個及び特に2個のカルボキシル基を有する共役酸から誘導されている場合には、m=1であり、かつY=一結合性基であり、かつ
(2)Y=多結合性の基、好ましくは二結合性、三結合性又は四結合性の基、より好ましくは二結合性又は三結合性の基及び特に二結合性基である場合には、n=1であり、かつX=分子中に1個のカルボキシル基を有する共役酸から誘導されている。
【0023】
変数Xは、1個のカルボキシル基又は1個より多いカルボキシル基、好ましくは2個、3個又は4個、より好ましくは2個又は3個及び特に2個のカルボキシル基、6〜60個、好ましくは6〜40個及び特に炭素原子6〜30個並びに分子中に少なくとも2個及び特に2個ないし6個の共役二重結合を有する共役したオレフィン系不飽和カルボン酸又は共役酸から誘導される基を表す。特に基Xは1個のカルボキシル基を有する共役酸から誘導される。
【0024】
好ましくは変数Xは共役したオレフィン系不飽和脂肪酸又は共役脂肪酸から誘導される基を表す。
【0025】
共役脂肪酸及び以下に記載されるそれらのエステルは好ましくは、孤立した二重結合がアルカリ作用下に又は生物工学的に共役二重結合へ変換されるオレフィン系不飽和脂肪酸、例えばリノール酸、リノレン酸又はアラキドン酸から製造される。
【0026】
共役脂肪酸は常用かつ公知の製品であり、かつ例えばHarburger Fettchemie社から商標イソメルギン酸(Isomerginsaeure) (R) SF、SY又はSKで又はCognis社から商標Edenor (R) UKD 6010、5010及び5020で販売されている。
【0027】
一般式I中で変数Yは一結合性又は多結合性の基、好ましくは二結合性、三結合性又は四結合性の基、より好ましくは二結合性又は三結合性の基及び特に二結合性の基、しかし特に化学線で活性化可能な少なくとも1個、特に1個の結合を有する一結合性の有機基を表す。
【0028】
本発明の範囲内で、化学線は電磁放射線、例えば近赤外(NIR)、可視光線、紫外線、X線及びγ線、特に紫外線、及び粒子線、例えば電子線、陽子線、α線、β線及び中性子線、特に電子線であると理解される。
【0029】
化学線で活性化可能な結合は、化学線を照射する際に反応性になり、かつその種類の他の活性化された結合と、ラジカル及び/又はイオン機構に従って進行する重合反応及び/又は架橋反応をする。適している結合の例は、炭素−水素−単結合又は炭素−炭素−、炭素−酸素−、炭素−窒素−、炭素−リン−又は炭素−ケイ素−単結合又は−二重結合又は炭素−炭素−三重結合である。これらの中では、炭素−炭素−二重結合及び−三重結合が有利であり、故に本発明によれば好ましくは使用される。炭素−炭素−二重結合が特に有利であり、そのためにはこれらが特に好ましくは使用される。簡略のためにこれらは以下に“二重結合”と呼ぶ。
【0030】
好ましくは基Yは一般式III:
【0031】
【化1】

[式中、変数は次の意味を有する:
Rは、オレフィン系炭素原子と共役酸基のオキシカルボニル基の酸素原子との間の結合電子対又は共役酸基のオキシカルボニル基に対して結合する有機基であり;かつ
、R及びRは、互いに独立して水素原子又は有機基であり;その際に基R、R、R及びRの少なくとも2個は環状に互いに結合されていてよい]で示される一結合性基;
及び一般式IV:
【0032】
【化2】

[式中、変数は次の意味を有する:
、R、R及びRは、互いに独立してオレフィン系炭素原子と共役酸基のオキシカルボニル基の酸素原子との間の結合電子対又は共役酸基のオキシカルボニル基に対して結合する有機基であり、但し、結合する機能を有しない基R、R、R又はRは水素原子又は有機基、好ましくは水素原子であり、その際に有機基R、R、R又はRの少なくとも2個は環状に互いに結合されていてよい]で示される多結合性基、好ましくは二結合性、三結合性及び四結合性基、より好ましくは二結合性及び三結合性基及び特に二結合性基;
から選択される。
【0033】
好ましくは結合する有機基Rは、少なくとも1個のエーテル基、チオエーテル基、カルボン酸エステル基、チオカルボン酸エステル基、カーボネート基、チオカーボネート基、リン酸エステル基、チオリン酸エステル基、ホスホン酸エステル基、チオホスホン酸エステル基、ホスフィット基、チオホスフィット基、スルホン酸エステル基、アミド基、アミン基、チオアミド基、リン酸アミド基、チオリン酸アミド基、ホスホン酸アミド基、チオホスホン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド基、ヒドラジド基、ウレタン基、尿素基、チオ尿素基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホン基及び/又はスルホキシド基を有していてよい、脂肪族、環式脂肪族、芳香族、脂肪族−環式脂肪族、脂肪族−芳香族、環式脂肪族−芳香族及び脂肪族−環式脂肪族−芳香族の基からなる群から選択される。
【0034】
より好ましくは結合する有機基Rは少なくとも1個のカルボン酸エステル基及び/又はアミド基を有する。特に好ましくは二結合性の有機基Rは、カルボン酸エステル基及びアルキレン基、シクロアルキレン基及び/又はアリーレン基又はアミド基及びアルキレン基、シクロアルキレン基及び/又はアリーレン基からなる。
【0035】
好適なアルキレン基Rは炭素原子1個又は炭素原子2〜6個を有する。好適なシクロアルキレン基Rは炭素原子4〜10個、特に6個を有する。好適なアリーレン基Rは炭素原子6〜10個、特に6個を有する。
【0036】
特に変数Rは、カルボン酸エステル基及び少なくとも1個、特に1個のアルキレン基、シクロアルキレン基及び/又はアリーレン基、特に1個のアルキレン基、(−C(O)−O−アルキレン−)からの結合する有機基Rを表す。特に好ましくは変数Rは基
−C(O)−O−CH−、
−C(O)−O−(−CH−)−、
−C(O)−O−(−CH−)−及び
−C(O)−O−(−CH−)
を表す。
【0037】
適している有機基R、R及びRの例は、アルキル基、シクロアルキル基及び/又はアリール基を含有するか、又は前記の基はこれらからなる。好適なアルキル基は炭素原子1個又は炭素原子2〜6個を有する。好適なシクロアルキル基は炭素原子4〜10個、特に6個を有する。好適なアリール基は炭素原子6〜10個、特に6個を有する。
【0038】
有機基R、R、R及びRは置換又は非置換であってよい。しかしながら置換基は本発明による方法の実施を妨害してはならない及び/又は化学線での基の活性化を阻害してはならない。好ましくは有機基R、R、R及びRは非置換である。
【0039】
一般式IIIの特に好適な基Yの例は、
2−(ビニルカルボニルオキシ)−、
2−(1−メチルビニルカルボニルオキシ)−、
2−(1−エチルビニルカルボニルオキシ)−、
2−(プロペニルカルボニルオキシ)−、
2−(スチリルカルボニルオキシ)−、
2−(シクロヘキセニルカルボニルオキシ)−、
2−(エンドメチレンシクロヘキシルカルボニルオキシ)−、
2−(ノルボルネニルカルボニルオキシ)−及び
2−(ジシクロペンタジエニルカルボニルオキシ)−エト−1−イル−基、
3−(1−メチルビニルカルボニルオキシ)−、
3−(1−エチルビニルカルボニルオキシ)−、
3−(プロペニルカルボニルオキシ)−、
3−(スチリルカルボニルオキシ)−、
3−(シクロヘキセニルカルボニルオキシ)−、
3−(エンドメチレンシクロヘキシルカルボニルオキシ)−、
3−(ノルボルネニルカルボニルオキシ)−及び
3−(ジシクロペンタジエニルカルボニルオキシ)−プロプ−1−イル−基並びに
4−(ビニルカルボニルオキシ)−、
4−(1−メチルビニルカルボニルオキシ)−、
4−(1−エチルビニルカルボニルオキシ)−、
4−(プロペニルカルボニルオキシ)−、
4−(スチリルカルボニルオキシ)−、
4−(シクロヘキセニルカルボニルオキシ)−、
4−(エンドメチレンシクロヘキシルカルボニルオキシ)−、
4−(ノルボルネニルカルボニルオキシ)−及び
4−(ジシクロペンタジエニルカルボニルオキシ)−ブト−1−イル−基、特に
4−(ビニルカルボニルオキシ)−ブト−1−イル−基である。
【0040】
好ましくは結合する有機基R、R、R及び/又はRは、前記の結合する有機基Rからなる群から選択される。特に有利な結合する有機基R、R、R及び/又はRは、1個のカルボン酸エステル基及び少なくとも1個、特に1個又は2個のアルキレン基、シクロアルキレン基及び/又はアリーレン基、特に1個又は2個のアルキレン基、(−C(O)−O−アルキレン−又は−アルキレン−C(O)−O−アルキレン−)からなる。極めて特に好ましい結合する有機基R、R、R及び/又はRは、
−C(O)−O−CH−、
−C(O)−O−(−CH−)−、
−C(O)−O−(−CH−)−、
−C(O)−O−(−CH−)−、
−CH−C(O)−O−CH−、
−CH−C(O)−O−(−CH−)−、
−CH−C(O)−O−(−CH−)−及び
−CH−C(O)−O−(−CH−)−である。
【0041】
好ましくは、結合しない有機基R、R、R及び/又はRは前記の有機基R、R及びRからなる群から選択される。
【0042】
一般式IVの特に好適な基Yの例は、シス−及びトランス−形の、
−CH−O−(O)C−CH=CH−C(O)−O−CH−、
−(−CH−)−O−(O)C−CH=CH−C(O)−O−(−CH−)−、
−(−CH−)−O−(O)C−CH=CH−C(O)−O−(−CH−)−及び
−(−CH−)−O−(O)C−CH=CH−C(O)−O−(−CH−)
並びに
【0043】
【化3】

である。
【0044】
本発明による共役酸エステル(A)は一般式II:
Z (II)
[式中、示数mは1又は>1の整数、特に1又は2、特に2を表し、変数Xは前記の意味を表し、かつ変数Zは1又は>1、より好ましくは1又は2、特に2の結合度を有する飽和又は芳香族の、好ましくは飽和の、特に飽和環式脂肪族の有機基を表す]で示される少なくとも1つの共役酸エステル(B)を含有していてよい。
【0045】
特に好適な一結合性基Zの例は、4−ヒドロキシ−、3−ヒドロキシ−及び2−ヒドロキシ−シクロヘキサン及び−ベンゼン並びに炭素原子1〜10個、好ましくは2〜4個を有するω−ヒドロキシアルキル基、特に2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基及び4−ヒドロキシブチル基である。
【0046】
特に好適な二結合性基Zの例は、シクロヘキサン−1,4−、1,3−及び1,2−ジイル、1,4−、1,3−及び1,2−フェニレン並びに炭素原子1〜10個、好ましくは2〜4個を有するアルキレン基、特にエト−1,2−イレン、プロプ−1,3−イレン(トリメチレン)及びブト−1,4−イレン(テトラメチレン)である。
【0047】
本発明による共役酸エステル(A)及び共役酸エステル(B)からなる本発明による混合物は、共役酸エステル(B)を50質量%まで含有していてよい。
【0048】
本発明による共役酸エステル(A)及び本発明による共役酸エステル(A)と共役酸エステル(B)とからなる本発明による混合物は、根本においてはエステルを製造するための予備的有機化学の常用かつ公知の方法に従って製造されることができる。しかし、これらを本発明による方法により製造することが有利である。
【0049】
本発明による方法の場合に、
(i)少なくとも1つの前記の共役酸、特に共役脂肪酸、又はこれらの共役酸、特に共役脂肪酸の少なくとも1つのエステル、好ましくは少なくとも1つのシクロアルキルエステル、アルキルエステル及びアリールエステル、より好ましくはアルキルエステル、特に1〜10、より好ましくは1〜4を有する低分子量アルコール、殊にメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール又はイソブタノールのエステル、又はポリオール、殊にエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール又は糖アルコール、例えばソルビトール又はマンニトールのエステルは、
(ii)前記の、化学線で活性化可能な少なくとも1個、特に1個の結合を含有する少なくとも1つ、特に1つのヒドロキシル基含有化合物と、触媒の存在で反応される。
【0050】
本発明によれば、触媒として、エステル交換又はエステル化を触媒する少なくとも1つ、特に1つの酵素、及び/又はエステル交換又はエステル化を触媒する少なくとも1つ、特に1つの生物が使用される。
【0051】
酵素として、加水分解酵素[EC 3.x.x.x]、特にエステラーゼ[EC 3.1.x.x.]及びプロテアーゼ[EC 3.4.x.x]が使用される。カルボキシルエステル加水分解酵素[EC 3.1.1.x]が好ましい。特に好ましくは加水分解酵素としてリパーゼが使用される。特にアクロモバクター(Achromobacter sp.)、アスペルギルス(Aspergillus sp.)、ブルクホルデリア(Burholderia sp.)、カンジダ(Candida sp.)、ムコール(Mucor sp.)、ペニシリウム(Penicillium sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、リゾープス(Rhizopus sp.)、サーモマイセス(Thermomyces sp.)又はブタ膵臓由来のリパーゼが使用される。酵素及びそれらの機能は例えばRoempp Online, 2002, “Hydrolasen”、“Lipasen”及び“Proteasen”に記載されている。これらは固定化されていなくてよく、又は固定化されていてよい。
【0052】
生物として、加水分解酵素[EC 3.x.x.x]、より好ましくはエステラーゼ[EC 3.1.x.x.]又はプロテアーゼ[EC 3.4.x.x]、特に好ましくはカルボキシルエステル加水分解酵素[EC 3.1.1.x]及び特にリパーゼを用いてエステル交換又はエステル化を触媒する、天然に存在するか又は遺伝子工学的に改変された(veraenderten)全ての微生物、単細胞生物又は細胞が当てはまる。加水分解酵素を含む当業者に公知の全ての生物が使用可能である。より好ましくは加水分解酵素としてリパーゼを含む生物が使用される。特に、アクロモバクター(Achromobacter sp.)、アスペルギルス(Aspergillus sp.)、ブルクホルデリア(Burholderia sp.)、カンジダ(Candida sp.)、ムコール(Mucor sp.)、ペニシリウム(Penicillium sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、リゾープス(Rhizopus sp.)、サーモマイセス(Thermomyces sp.)及びブタ膵臓由来の細胞が使用される。これらは改変されていない生物自体又は、酵素を本来強く発現しないか又は不十分に強く発現するに過ぎず、かつ改変後に初めて十分に高い酵素力及び生産力を有する、遺伝子工学的に改変された生物であってよい。さらに生物は遺伝子工学的な改変により反応条件及び/又は培養条件に適合されることができる。
【0053】
酵素及び/又は生物の使用される量は、幅広く変えることができ、かつ個々の場合の必要条件、特に出発製品の反応能力及び酵素もしくは生物の触媒活性及び選択性及び選択される条件に依存する。
【0054】
好ましくは酵素はその都度出発製品の全量に対して、0.1〜20質量%、より好ましくは0.2〜16質量%、特に好ましくは0.2〜14質量%、極めて特に好ましくは0.3〜12質量%、特に0.5〜10質量%の量で使用される。
【0055】
本発明による方法の場合に、多種多様なヒドロキシル基含有化合物が使用されることができる。本質的であるのは、これらが反応の際に前記の基Y、特に一般式III又はIVの基Yを提供することである。好ましくはヒドロキシル基含有化合物は、一般式V〜X、より好ましくはV、VIII、IX及びX及び特にV:
【0056】
【化4】

[式中、変数R、R、R、R、R、R、R及びRは前記の意味を表し、かつ変数Qは酸素原子又は第一又は第二のイミノ基、好ましくは酸素原子を表し、かつ変数Rはヒドロキシル基含有の一結合性有機基を表す]で示されるカルボン酸エステル及びカルボン酸アミドからなる群から選択される。好ましくは一結合性有機基Rは少なくとも1個、特に1個の、第一及び/又は第二の、特に第一のヒドロキシル基を有する。そのうえ前記有機基は少なくとも1個、特に1個の、アルキル基、シクロアルキル基及び/又はアリール基、特に1個のアルキル基を含有する。
【0057】
好ましくはヒドロキシル基含有化合物は、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、シクロヘキセンカルボン酸、エンドメチレンシクロヘキサンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸、ジシクロペンタジエンカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸及びメチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、より好ましくはアクリル酸、フマル酸、マレイン酸及びイタコン酸、特にアクリル酸の、ヒドロキシル基含有のエステル及びアミドからなる群から選択される。
【0058】
極めて特に好適なヒドロキシル基含有化合物の例はN−メチロールアクリルアミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート又は4−ヒドロキシブチルアクリレート、特に4−ヒドロキシブチルアクリレートである。
【0059】
本発明による方法の場合に、共役酸もしくは共役酸エステル対ヒドロキシル基含有化合物のモル比は幅広く変えることができる。好ましくは共役酸もしくは共役酸エステル対ヒドロキシル基含有化合物のモル比は、0.5:1.0〜1.0:0.5、より好ましくは0.65:1.0〜1.0:0.65及び特に0.8:1.0〜1.0:0.8のカルボン酸基もしくはカルボン酸エステル基対ヒドロキシル基の当量比となるように調節される。
【0060】
本発明による方法による反応は、単相又は多相の、水性及び/又は有機性の反応媒体中で実施されることができる。その際に出発製品は溶解されて、懸濁されて又は乳化されて存在していてよい。反応は溶剤添加あり又はなしで実施されることができる。好ましくは、反応に対して不活性である溶剤が使用される。より好ましくは常用かつ公知の、特に非プロトン性で無極性の、有機溶剤が使用される。そのうえ、過剰量の共役酸もしくは共役酸エステル又は過剰量のヒドロキシル基含有化合物が反応媒体として使用されることができる。特に好ましくは、反応はバルクで、すなわち有機溶剤の不在又は僅少量の有機溶剤の存在で実施される。
【0061】
本発明による方法は多様な温度で実施されることができる。温度範囲の選択は、個々の場合の必要条件、特に出発製品の反応能力及びそれらの熱安定性並びに酵素及び/又は生物の触媒活性及び選択性及びそれらの熱安定性に依存する。好ましくは本発明による方法は0〜100℃、より好ましくは10〜80℃、特に好ましくは15〜75℃及び特に20〜70℃の温度で実施される。
【0062】
反応の期間も幅広く変えることができ、かつ同様に個々の場合の必要条件、特に出発製品の反応能力及び酵素及び/又は生物の触媒活性及び選択性に依存する。好ましくは期間は1時間ないし1週間、より好ましくは2時間〜5日間、特に好ましくは3時間ないし4日間及び特に4時間〜3日間である。
【0063】
本発明による方法は、全ての出発製品が適している反応容器中に装入されるバッチ−運転方式で、又は個々の又は全ての出発製品が反応の過程で反応媒体に計量供給されるセミバッチ−運転方式で実施されることができる。
【0064】
本発明による方法による反応の際に、水又は少なくとも1つ、特に1つのヒドロキシル基含有飽和化合物、例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールが形成される。ヒドロキシル基含有化合物もしくは水を、形成の間に又は直後に反応混合物から除去することが推奨される。その際に、常用かつ公知の全ての方法、例えば真空蒸留又は共沸蒸留、透析蒸発又は不活性ガスの導通が使用されることができる。その際に本質的であるのは、出発製品、触媒及び最終生成物が熱的に傷つけられないことである。反応混合物に、ヒドロキシル基含有飽和化合物及び/又は水を吸収する物質も添加されることができる。しかしながらこれらの物質は、例えば酵素及び/又は微生物の触媒活性を低下させる及び/又は特有の触媒活性を展開することによって、本発明による方法を妨害してはならない。適している吸着性物質の例は、適合する孔径を有するモレキュラーシーブである(Roempp Online, 2002, “Molekularsiebe”及び“Zeolithe”も参照)。
【0065】
生じる本発明による共役酸エステル(A)もしくは本発明による共役酸エステル(A)と共役酸エステル(B)とからなる本発明による混合物は、多数の特別な利点を有する。例えばこれらは既に、僅かな線量の化学線、特に紫外線又は電子線で架橋又は硬化されることができる。そのうえこれらは酸化的に乾燥される、すなわち架橋又は硬化されることができる。これらは臭いが乏しく、かつ晶出及びろう形成する傾向を有しない。さらにまたこれらは常用かつ公知で、化学線で、酸化的に及び/又は熱的に硬化可能な材料の全ての成分と良相溶性である。硬化された状態でこれらは金属表面上への抜群の付着を有する。
【0066】
故にこれらは多種多様な使用目的に供給されることができる。そのためにこれらは反応混合物から物質として単離されることができ、又は直接に溶液で使用されることができる。好ましくはこれらは、化学線で硬化可能な新規材料、熱的に及び化学線で(デュアル−キュア;Dual-Cure-)硬化可能な新規材料又は酸化的に硬化可能な新規材料として又は反応性希釈剤及び/又は接着促進剤(Haftvermittlern)の機能においてそれらの製造のために使用される。以下に、化学線で硬化可能な新規材料、熱的に及び化学線で(デュアル−キュア)硬化可能な新規材料又は酸化的に硬化可能な新規材料は“本発明による材料”と呼ぶ。
【0067】
それに応じて本発明による材料は、本発明による共役酸エステル(A)もしくは少なくとも1つの本発明による共役酸エステル(A)と少なくとも1つの共役酸エステル(B)とからなる本発明による混合物を100質量%まで含有する。好ましくは含量は、その都度本発明による材料に対して0.5〜80質量%、より好ましくは1〜60質量%、特に好ましくは1.5〜50質量%及び特に2〜40質量%である。
【0068】
本発明による材料は、化学線で、酸化的に及び/又は熱的に硬化可能な材料の常用かつ公知の全ての成分、例えば放射線硬化可能な結合剤及び熱的に硬化可能な結合剤、本発明による共役酸エステル(A)とは異なる付加的な放射線硬化可能な反応性希釈剤及び熱的に硬化可能な反応性希釈剤、熱的に硬化可能な反応性希釈剤及び光開始剤を含有していてよい。さらにまたこれらは常用かつ公知の助剤及び添加剤、例えば触媒、可塑剤、光安定剤、接着促進剤(Haftvermittler)(粘着付与剤)、スリップ添加剤、レベリング剤(Verlaufmittel)、重合防止剤、つや消し剤、ナノ粒子及び塗膜形成助剤を含有していてよい。
【0069】
化学線で硬化可能な材料の適している常用かつ公知の成分の例は例えばドイツ連邦共和国特許第DE 197 09 467 C1号明細書、4頁30行ないし6頁30行、又はドイツ連邦共和国特許出願公開第DE 199 47 523 A1号明細書から公知である。
【0070】
本発明による材料がさらに熱的に硬化可能でもある、すなわちデュアル−キュア−硬化可能である場合には、これは好ましくはさらに、付加的にさらに化学線で活性化可能な基を有していてよい常用かつ公知の熱的に硬化する結合剤及び架橋剤、及び/又は熱的に硬化する反応性希釈剤を含有し、これらは例えばドイツ連邦共和国特許出願公開第DE 198 187 735 A1及びDE 199 20 799 A1号明細書又は欧州特許出願公開第EP 0 928 800 A1号明細書に記載されているようなものである。
【0071】
本発明による材料の製造は、好ましくは適している混合装置、例えば撹拌釜、撹拌媒体ミル、押出機、ニーダー、ウルトラツラックス(Ultraturrax)、インライン−ディソルバー、スタティックミキサー、マイクロミキサー、リム分散機(Zahnkranzdispergatoren)、圧力放出ノズル及び/又はマイクロフルイダイザー中での前記成分の混合により行われる。好ましくはこの際に、本発明による材料の早期架橋を防止するために、波長λ<550nmの光の遮断下に又は光の完全な遮断下に操作される。
【0072】
本発明による材料は多種多様な形で存在していてよい。例えばこれらは、常用の、有機溶剤を含有する材料、水性材料、本質的に又は完全に溶剤及び水不含の液状材料(100%−系)、本質的に又は完全に溶剤及び水不含の固体粉末又は本質的に又は完全に溶剤不含の粉末懸濁液(粉末スラリー)である。そのうえこれらは、結合剤及び架橋剤が同時に存在する一成分系、又は結合剤及び架橋剤が塗布する直前まで互いに別個に存在する二成分系又は多成分系であってよい。特にこれらは100%−系である。
【0073】
本発明による材料は、化学線で硬化された材料、デュアル−キュア−硬化された材料及び酸化的に硬化された材料、好ましくは被覆、塗膜、プライマー、接着層、シーリング、成形部材及び自立シートの、特にプライマーの製造に利用される。
【0074】
本発明による成形部材及びシートの製造のためには、本発明による材料は常用かつ公知の一時的又は永続的な基材上に塗布される。好ましくは本発明によるシート及び成形部材の製造のためには常用かつ公知の一時的な基材、例えば、本発明によるシート及び成形部材が損傷されることなく容易に取り除かれることができる金属ストリップ及びプラスチックストリップ又は金属、ガラス、プラスチック、木材又はセラミックからなる中空体が使用される。
【0075】
本発明による材料が被覆、接着層、プライマー及びシーリングの製造に使用される場合には、永続的な基材、例えば飛行装置、水用車両、鉄道車両、筋力で運転される車両及び自動車を含めた移動手段及びこれらの部材、屋内領域及び屋外領域の建築物及びこれらの部材、ドア、窓、家具、ガラス中空体、コイル、コンテナ、包装物、工業用小部材、光学用構造部材、電気工学用構造部材、機械用構造部材及び大型家庭電化製品(weisse Ware)用の構造部材が使用される。本発明によるシート及び成形部材も同様に基材に利用されることができる。
【0076】
方法論的には本発明による液状材料の塗布は特殊性を有するのではなくて、常用かつ公知の全ての塗布法、例えば吹付け塗、スプレッディング(Spruehen)、ナイフ塗布、はけ塗、流し塗、浸し塗、トリクリング(Traeufeln)又はローラー塗により行われることができる。
【0077】
本発明による粉末状材料の塗布もまた、方法論的な特殊性を有するのではなくて、例えば常用かつ公知の流動層法に従って行われ、これらは例えばBASF Coatings AGのパンプレット、“Pulverlacke fuer industrielle Anwendungen”、Januar 2000、又は “Coatings Partner, Pulverlack Spezial”、1/2000、又は Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、New York、1998、187及び188頁、“Elektrostatisches Pulverspruehen”、“Elektrostatisches Spruehen”及び“Elektrostatisches Wirbelbadverfahren”、から公知である。
【0078】
塗布の際に、本発明による材料の早期架橋を回避するために化学線の遮断下に操作することが推奨される。
【0079】
好ましくは、塗布された本発明による材料は紫外線で硬化される。より好ましくは照射の際に100〜6,000mJcm−2、好ましくは200〜3,000mJcm−2、より好ましくは300〜2,000mJcm−2及び特に好ましく500〜1,800mJcm−2の放射線量が使用され、その際に<1,700mJcm−2の範囲が極めて特に好ましい。
【0080】
その際に放射線強度は幅広く変えることができる。これは特に、一方では放射線量及び他方では照射期間に依存する。照射期間は所定の放射線量で照射設備中の基材のベルト又は送り速度に依存し、かつ逆に所定のベルト又は送り速度で放射線量に依存する。
【0081】
紫外線のための放射線源として、常用かつ公知の全てのUVランプが使用されることができる。閃光灯も当てはまる。好ましくはUVランプとして水銀灯、より好ましくは低圧水銀灯、中圧水銀灯及び高圧水銀灯、特に中圧水銀灯が使用される。特に好ましくは、未修正の水銀灯プラス適しているフィルター又は修正された、特にドープされた水銀灯が使用される。
【0082】
好ましくはガリウムドープされた及び/又は鉄ドープされた、特に鉄ドープされた水銀灯が使用され、これらは例えばR. Stephen Davidson, “Exploring the Science, Technology and Applications of U.V. and E.B. Curing”、Sita Technology Ltd., London, 1999, Chapter I, “An Overview”、16頁、図10、又はDipl.-Ing. Peter Klamann, “eltosch System-Kompetenz, UV-Technik, Leitfaden fuer Anwender”, 2頁, Oktober 1998、に記載されている。
【0083】
適している閃光灯の例はVISIT社の閃光灯である。
【0084】
塗布された本発明による材料からのUVランプの距離は意外にも幅広く変えることができ、ひいては個々の場合の必要条件に極めて良好に調節されることができる。好ましくは距離は2〜200cm、より好ましくは5〜100cm、特に好ましくは10〜50cm及び特に15〜30cmである。そのうえそれらの配置は、基材の与えられた状況及びプロセスパラメーターに適合されることができる。自動車車体用に準備されているような複雑に成形された基材の場合に、直接放射の達することができない領域(影の領域)、例えば空隙、継ぎ目及び他の構造に制約された奥の切断面に、空隙又はエッジへの照射用の自動運動装置と組み合わされた、点放射体、小平面放射体又は周囲放射体を用いて硬化されることができる。
【0085】
照射は酸素の減損された雰囲気下で実施されることができる。“酸素の減損された”は、雰囲気の酸素含量が空気の酸素含量(20.95体積%)よりも少ないことを意味する。雰囲気は根本において酸素不含であってもよく、すなわち不活性ガスが当てはまる。しかし酸素の抑制効果がないので、これは放射線硬化の激しい促進を引き起こしうるので、それにより本発明による硬化された材料中に不均質さ及び応力が生じうる。故に雰囲気の酸素含量を0体積%に低下させないことが有利である。
【0086】
塗布された、デュアル−キュア−硬化可能な本発明による材料の場合に、熱硬化は例えば気体、液体及び/又は固体の熱い媒体、例えば熱い空気、加熱された油又は加熱されたローラーを用いて、又はマイクロ波放射、赤外線及び/又は近赤外線(NIR)を用いて行われることができる。好ましくは加熱は循環空気乾燥器中で又はIR及び/又はNIRランプでの照射により行われる。化学線での硬化の場合のように、熱硬化も段階的に行われることができる。有利には熱硬化は室温ないし200℃の温度で行われる。
【0087】
熱硬化並びに化学線での硬化は段階的に実施されることができる。その際にこれらは相前後して(逐次的に)又は同時に行われることができる。本発明によれば逐次硬化が有利であり、ひいては好ましくは使用される。その際に熱硬化を化学線での硬化後に実施することが特に有利である。
【0088】
化学線での硬化及び/又は熱硬化は、酸化的な硬化により補充もしくは助長されることができる。酸化的な硬化は、本発明による硬化可能な材料の相応する組成の場合に単独でも実施されることができる。
【0089】
生じた、本発明によるシート、成形部材、被覆、塗膜、プライマー、接着層及びシーリングは、飛行装置、水用車両、鉄道車両、筋力で運転される車両及び自動車を含めた移動手段、及びこれらの部材、屋内領域及び屋外領域における建築物及びこれらの部材、ドア、窓及び家具の被覆、接着、シール、カバー及びパックのために並びにガラス中空体、コイル、コンテナ、包装物、工業用小部材、例えばナット、ボルト又はホイールキャップ、光学用構造部材、電気工学用構造部材、例えば電動機用のコイル及びステータ及びロータを含めた線輪(Wickelgueter)、家庭電化製品、ボイラー及び放熱器を含めた機械用構造部材及び大型家庭電化製品用の構造部材の工業塗装の範囲において卓越して適している。
【0090】
しかしとりわけ、本発明による材料は被覆、塗膜及びプライマーを製造するため、好ましくはプライマーを製造するため、特に色及び/又は効果を与える重ね塗り塗膜、電気的に伝導性の重ね塗り塗膜、磁気遮蔽する重ね塗り塗膜又は蛍光の重ね塗り塗膜、殊に色及び/又は効果を与える重ね塗り塗膜の製造のためのプライマーを製造するための塗料として使用される。
【0091】
その際に、本発明による材料のさらなる本質的な利点は、これらがすなわち、層厚が極めて幅広く変えられることができる、被覆、塗膜及びプライマーを提供することであることが明らかになる。好ましくは層厚は2〜100μmである。
【0092】
生じる本発明によるプライマーは、かなり本質的に付着特性及び防食を決定する重ね塗り塗膜の最下層である。故にプライマーの欠損はまた特に激しい影響がはっきりと現れ、かつプライマー及び/又は重ね塗り塗膜の層間剥離及び/又は基材の腐食をまねきうる。しかし本発明によるプライマーは、重ね塗り塗膜の基材並びにその上にある層に対して特に高い接着強さを有する。そのうえこれらは金属基材を腐食から有効に保護する。
【0093】
本発明による被覆で被覆され、本発明による接着層で接着され、本発明によるシーリングでシールされ、及び/又は本発明によるシート及び/又は成形部材でカバー又はパックされている本発明による基材は、故に卓越した持続使用特性及び特に長い使用期間を有する。
【実施例】
【0094】
例1
共役酸エステル(A)及び共役酸エステル(B)からなる混合物の製造
2個の共役二重結合を有するオレフィン系不飽和C18:2−脂肪酸60質量%を含有するHarburger Fettchemie社のイソメルギン酸(Isomerginsaeure) (R) SF 196質量部を、4−ヒドロキシブチルアクリレート(94%濃度)100.9質量部、Novozym (R) 435 (Novozyme社、Daenemarkのカンジダ アンタルクチカ(Candida antarctica)由来の固定化されたリパーゼ)7.0質量部、p−メトキシフェノール0.05質量部及びフェノチアジン0.01質量部と混合した。生じる反応混合物真空中で(5mbar)60℃で24時間撹拌した。引き続いて酵素をろ別した。淡黄色で油状気味の液体250質量部が得られた。これはさらに後処理せずに直接に、このために準備される全ての使用目的に供給されることができた。
【0095】
分析調査は次の結果となった:
CDCl中でのH−核共鳴分光法は、4−ヒドロキシブチルアクリレートから誘導される4.18ppmでのエステル基の信号に加えて、別のエステル基の形成を指摘する4.08ppmでの新しい信号を示した。脂肪酸含量を、0.9ppmでのメチル基の信号に関して決定した。エステル基対脂肪酸の信号比から、97%のエステル化度となった。
【0096】
ゲル浸透クロマトグラフィー(UV−検出器、波長254nm)の場合に、600ダルトン及び1,200ダルトンの数平均分子量での2つのほぼ同じ大きさの主信号が得られた。これらは分別及び質量分析調査により、イソメルギン酸−1−ブチル−4−アクリロイル−エステル(A)(X−O−(−CH−)−O−(O)C−CH=CH)及び1,4−ブタンジオール−ジイソメルギン酸エステル(B)(X−O−(−CH−)−O−X)に分類されることができた。
【0097】
例2a)〜2d)
多様なリパーゼを用いる共役酸エステル(A)及び共役酸エステル(B)からなる混合物の製造
2a)〜2c)
その都度イソメルギン酸(Isomerginsaeure) (R) SF 5mmol(1.4g)を、その都度4−ヒドロキシブチルアクリレート5mmol(0.721g)、その都度固定化された酵素50mg及びその都度モレキュラーシーブ3Å 1gと混合し、40℃で6時間振とうした。引き続いて固定化された酵素及びモレキュラーシーブをろ別し、その後得られた油を、H−NMR(エステル化度)及びゲル浸透クロマトグラフィー(生成物分布)を用いて調べた。
【0098】
例2a)の場合にカンジダ アンタルクチカ(Candida antarctica)由来の固定化されたリパーゼ(Novozym (R) 435)を、例2b)の場合にムコール ミーハイ(Mucor miehei)由来の固定化されたリパーゼを、かつ例2c)の場合にアルカリゲネス(Alcaligenes sp.)由来の固定化されたリパーゼを使用した。
【0099】
試験結果は第1表に見出される。
【0100】
【表1】

【0101】
2d)
2個の共役二重結合を有するオレフィン系不飽和C18:2−脂肪酸58〜63%を含有するCognis社のEdenor (R) UKG 6010 1,075.2gを、4−ヒドロキシブチルアクリレート553.7g、4−メトキシフェノール277mg、フェノチアジン55mg及びムコール ミーハイ(Mucor miehei)由来の固定化されたリパーゼ38.4gと混合した。反応混合物を真空中で(20〜30mbar)40℃で8時間撹拌した。その際に周囲空気(40 l/時)を導通した。引き続いて酵素をろ別した。淡黄色の油状液体1,500gが得られ、これはさらに後処理せずにさらに加工されることができた。
【0102】
CDCl中でのH−核共鳴分光法は>98%のエステル化度及び共役脂肪酸エステルA 93%及び共役脂肪酸エステルB 7%の生成物分布となった。
【0103】
例2d)を3回繰り返し、その際に同じ結果が得られた。このことは本発明による方法の卓越した再現性の根拠を固める。
【0104】
例3a)〜3c)
紫外線で硬化可能な塗料及びプライマー(例3a)及び3b))及びこれらからの重ね塗り塗膜(例3c))の製造
塗料を、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート100質量部(Union Carbide社のCyracure (R) UVR 6105)、変性シリコーン0.5質量部(Dow Corning社のPaint Additive 57)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン10質量部(Union Carbide社のCyracure (R) UVR 6000)、例1の共役酸エステル(A)及び(B)からなる混合物20質量部、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート4質量部(Union Carbide社のCyracure (R) UVR 6990)及びヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1質量部(Ciba Specialty Chrmicals社のIrgacure (R) 184)の混合及び生じる混合物の均質化により製造した。
【0105】
塗料は有利に低い粘度を有し、かつ貯蔵安定であった。化学線の遮断下に1ヶ月の貯蔵後にも相分離は観察されることができなかった。
【0106】
塗料を、棒へらを用いてChemetall社の種類HDGの鋼板(熱亜鉛めっき(Feuerverzinkung)、前処理なし、脱脂された;例3a))及び種類Gardobond 901の鋼板(アルカリリン酸処理;例3b))上に塗布した。塗布後に、被覆された鋼板を50℃で12時間エージングした。塗布を、1,500mJ/cmの線量の紫外線での硬化後に5〜10μm(例3a)及び5〜6μm(例3b)の乾燥塗膜の厚さが生じる層厚で行った。
【0107】
例3a)及び3b)の生じるプライマーは基材に対する極めて良好な付着を有していた。
【0108】
例3c)の場合に、例3b)の被覆をBASF Coatings AG社の工業使用のための常用かつ公知の顔料着色されたトップコートで上塗りした。生じる重ね塗り塗膜は、基材に対する極めて良好な付着及び極めて良好な中間層付着を有していた。
【0109】
例4a)及び4b)
紫外線で硬化可能な塗料及びこれらからのプライマーの製造
塗料を、エポキシポリエーテルジアクリレート56.7質量部(BASF株式会社のLaromer (R) 8986)、試験用ベンジン中の10%濃度オクタン酸コバルト0.8質量部(Borchers GmbH社のD60中のOcta Solingen Kobalt 6)、例1の共役酸エステル(A)及び(B)からなる混合物18.9質量部、質量比80:20の4−ヒドロキシブチルアクリレート/ポリリン酸(五酸化二リン含量:84質量%)18.9質量部及びヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン4.7質量部(Ciba Specialty Chemicals社のIrgacure (R) 184)の混合及び生じる混合物の均質化により製造した。
【0110】
塗料は有利に低い粘度を有していた(粘度カップ、ノズル開口部6mm;フロー時間24s)。この塗料は貯蔵安定であった:化学線の遮断下に1ヶ月の貯蔵後でさえ相分離は観察されることができなかった。
【0111】
塗料を、棒へらを用いてChemetall社の種類HDGの鋼板(熱亜鉛めっき、前処理なし、脱脂された)上に塗布した。塗布後に、被覆された鋼板を50℃で12時間エージングした。塗布を、500mJ/cm(例4a))及び1,500mJ/cm(例4b))の線量の紫外線での硬化後に5〜9μm(例4a)及び4〜7μm(例4b))の乾燥塗膜の厚さが生じる層厚で行った。生じるプライマーは、基材に対して極めて良好な付着を有していた。
【0112】
例5a)〜5c)及び比較試験V1a)〜V1c)
塗料及びこれらからのプライマーの製造
例5a)〜5c)及び比較試験V1a)〜V1c)の塗料を、第2表に記載された成分の記載された量での混合及び生じる混合物の均質化により製造した。
【0113】
【表2】

a) BASF株式会社のエポキシポリエーテルジアクリレート;
b) 4−ヒドロキシブチルアクリレート80質量部及び84質量%の五酸化二リン含量のポリリン酸20質量部の反応により製造された;
c) 試験用ベンジン中10%濃度;
例5a)〜5c)及び比較試験V1a)の塗料は、化学線の遮断下に貯蔵安定であり、かつ1ヶ月の貯蔵後にも曇り又は相分離を示さなかった。これらは、有利に低い粘度を有し、かつ問題なく塗布されることができた。比較試験V1b)及びV1c)の塗料は、短時間後に、2−エチルヘキシルアクリレートと塗料のその他の成分との不相溶性に起因していた曇りを有していた。
【0114】
塗料を、棒へらを用いてChemetall社の種類HDGの鋼板(熱亜鉛めっき、前処理なし、脱脂された)上に塗布した。塗布後に、被覆された鋼板を50℃で12時間エージングした。塗布を、1,500mJ/cmの線量の紫外線での硬化後に5〜9μmの乾燥塗膜の厚さを有する被覆が生じる層厚で行った。
【0115】
紫外線での照射の際に、例5a)〜5c)の塗料の場合に臭いに悩まされることは起こらなかった。それに反して、比較試験V1a)の塗料の照射の際に不快なにおいが生じた。比較試験V1b)及びV1c)の塗料の場合にそれどころか、特にひどく臭いに悩まされた強力な刺激臭が生じた。これは、蒸発する2−エチルヘキシルアクリレートに起因されうるものであった。
【0116】
被覆の光沢を、DIN 67530に従って60°の角度で測定した。
【0117】
耐溶剤性を常用かつ公知の方法で、メチルエチルケトンに浸漬した綿球を用いる被覆の表面の処理により算出した。測定を、(i)被覆の製造直後及び(ii)それらの50℃での15時間の貯蔵後に実施した。表面の障害が始まった後の二重行程の数を記載した。
【0118】
そのうえメチルエチルケトン中に浸漬した被覆が膨潤した時間を決定した。
【0119】
基材上への被覆の付着を、DIN ISO 2409:1994-10に従って格子面試験を用いて決定した。
【0120】
防食効果を、DIN 53167:1985-12に従って引っ掻いた被覆上で噴霧試験(Spruehnebelpruefung)を用いて算出した。その際に72時間後に、層間剥離が生じていた(層間剥離=D)か又は生じていなかった(層間剥離なし=kD)かどうかを調べた。100及び120時間後に、目につく白色腐食が生じていた(擦り傷上での白色腐食>2mm=W)か又は白色腐食が生じていなかった又は取るに足りない白色腐食が生じていたに過ぎなかった(擦り傷上での白色腐食<1mm=kW)かどうかを調べた。
【0121】
試験結果は第3表に見出される。
【0122】
【表3】

【0123】
試験結果の比較は、共役酸エステル(A)が、従来の反応性希釈剤2−エチルヘキシルアクリレートの必要要件を全て満たした代用品を提供する結果となった。さらにまた共役酸エステル(A)は、当該の被覆の製造の際に成分が凝離せず、モノマーが蒸発せず、かつ臭いに悩まされることがなかったという本質的な利点を提供した。共役酸エステル(A)の卓越した相溶性はまさに、本例の被覆の卓越した光沢を生じさせた。それに反して、2−エチルヘキシルアクリレートのより高い濃度の場合に曇りを、及び比較試験の被覆の場合に光沢損失をまねいた。さらに共役酸エステル(A)は被覆の耐溶剤性を改善した。とりわけ例5b及び5cの被覆は、その後にさらに空気乾燥することができた。
【0124】
例6及び比較試験V2a)及びV2b)
塗料及びこれらからのプライマーの製造
例6及び比較試験V2a)及びV2b)の塗料は、第4表の成分の記載された量での混合及び生じる混合物の均質化により製造した。
【0125】
塗料を、棒へらを用いてChemetall社の脱脂されたむき出しの鋼板上に塗布した。塗布後に被覆された鋼板を50℃で12時間エージングした。塗布を、1,500mJ/cmの線量の紫外線での硬化後に8〜10μmの乾燥塗膜の厚さを有する被覆が生じる層厚で行った。
【0126】
基材上への被覆の付着を、DIN ISO 2409:1994-10に従って格子面試験を用いて決定した。
【0127】
防食効果を、DIN 53167:1985-12に従って引っ掻いた被覆上での噴霧試験を用いて算出した。その際に72、120及び144時間後に、層間剥離が生じていた(層間剥離=D)か又は生じていなかった(層間剥離なし=kD)どうか及び目につく腐食が生じていた(擦り傷上での腐食>2mm=K)か又は腐食が生じていなかった又は取るに足りない腐食が生じたに過ぎなかった(擦り傷上での腐食<1mm=kK)かどうかを調べた。
【0128】
結果は同様に第4表に見出される。これらは例6の被覆の卓越した付着及び極めて良好な防食効果を証明する。
【0129】
【表4】

【0130】
【表5】

a)層間剥離開始;
b)微小ブリスター、擦り傷上で5mm;

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
(I)
[式中、示数m及びnは1又は>1の整数を表し、かつ変数X及びYは次の意味を有する:
Xは、分子中に1個又は1個より多いカルボキシル基、6〜60個の炭素原子及び少なくとも2個の共役二重結合を有するオレフィン系不飽和カルボン酸(共役酸;Konjuensaeure)から誘導される基であり;かつ
Yは、化学線で活性化可能な少なくとも1個の結合を有する一結合性又は多結合性の有機基であり;
但し、
(1)Xが分子中に1個より多いカルボキシル基を有する共役酸から誘導されている場合には、m=1及びY=一結合性基であり、かつ
(2)Y=多結合性基である場合には、n=1及びX=分子中に1個のカルボキシル基を有する共役酸から誘導される]で示されるオレフィン系不飽和エステル(A)(共役酸エステル;Konjuensaeureester)。
【請求項2】
付加的に一般式II:
Z (II)
[式中、示数mは1又は>1の整数を表し、かつ変数X及びZは次の意味を有する:
Xは、共役酸から誘導される基であり;かつ
Zは、1又は>1の結合度を有し、ヒドロキシル基を有しないか又はヒドロキシル基を有する飽和又は芳香族の有機基である]で示される少なくとも1つの共役酸エステル(B)を含有している、請求項1記載の共役酸エステル(A)。
【請求項3】
共役酸が共役した不飽和脂肪酸(共役脂肪酸;Konjuenfettsaeure)である、請求項1又は2記載の共役酸エステル(A)。
【請求項4】
孤立した二重結合がアルカリ作用下に又は生物工学的に共役二重結合へ変換されるオレフィン系不飽和脂肪酸から共役脂肪酸が製造可能である、請求項3記載の共役酸エステル(A)。
【請求項5】
化学線で活性化可能な基Yの結合が炭素−炭素−二重結合及び/又は炭素−炭素−三重結合である、請求項1から4までのいずれか1項記載の共役酸エステル(A)。
【請求項6】
化学線で活性化可能な基Yの結合が炭素−炭素−二重結合である、請求項5記載の共役酸エステル(A)。
【請求項7】
基Yが、一般式III:
【化1】

[式中、変数は次の意味を有する:
Rは、オレフィン系炭素原子と共役酸基のオキシカルボニル基の酸素原子との間の結合電子対又は共役酸基のオキシカルボニル基に対して結合する有機基であり;かつ
、R及びRは、互いに独立して水素原子又は有機基であり;その際に基R、R、R及びRの少なくとも2個は環状に互いに結合されていてよい]で示される一結合性基;
及び一般式IV:
【化2】

[式中、変数は次の意味を有する:
、R、R及びRは、互いに独立してオレフィン系炭素原子と共役酸基のオキシカルボニル基の酸素原子との間の結合電子対又は共役酸基のオキシカルボニル基に対して結合する有機基であり、但し、結合する機能を有しない基R、R、R又はRは水素原子又は有機基であり、その際に有機基R、R、R又はRの少なくとも2個は環状に互いに結合されていてよい]で示される多結合性基;
から選択されている、請求項5又は6記載の共役酸エステル(A)。
【請求項8】
結合しない有機基R、R、R、R、R、R及びRが少なくとも1個のアルキル基、シクロアルキル基及び/又はアリール基を有しているか又はこれらからなっている、請求項7記載の共役酸エステル(A)。
【請求項9】
結合する有機基R、R、R、R及びRが、少なくとも1個のエーテル基、チオエーテル基、カルボン酸エステル基、チオカルボン酸エステル基、カーボネート基、チオカーボネート基、リン酸エステル基、チオリン酸エステル基、ホスホン酸エステル基、チオホスホン酸エステル基、ホスフィット基、チオホスフィット基、スルホン酸エステル基、アミド基、アミン基、チオアミド基、リン酸アミド基、チオリン酸アミド基、ホスホン酸アミド基、チオホスホン酸アミド基、スルホン酸アミド基、イミド基、ヒドラジド基、ウレタン基、尿素基、チオ尿素基、カルボニル基、チオカルボニル基、スルホン基及び/又はスルホキシド基を有していてよい、脂肪族、環式脂肪族、芳香族、脂肪族−環式脂肪族、脂肪族−芳香族、環式脂肪族−芳香族及び脂肪族−環式脂肪族−芳香族の基からなる群から選択されている、請求項7又は8記載の共役酸エステル(A)。
【請求項10】
結合する有機基R、R、R、R及びRが少なくとも1個のカルボン酸エステル基及び/又はアミド基を有している、請求項9記載の共役酸エステル(A)。
【請求項11】
結合する有機基R、R、R、R及びRがカルボン酸エステル基及び少なくとも1個のアルキレン基、シクロアルキレン基及び/又はアリーレン基からなっている、請求項10記載の共役酸エステル(A)。
【請求項12】
(i)分子中に1個又は1個より多いカルボキシル基、6〜60個の炭素原子及び少なくとも2個の共役二重結合を有する少なくとも1つのオレフィン系不飽和カルボン酸(共役酸)、又はこの共役酸の少なくとも1つのエステルを
(ii)化学線で活性化可能な少なくとも1個の結合を含有する少なくとも1つのヒドロキシル基含有化合物と
触媒の存在で反応させることにより、請求項1から11までのいずれか1項記載の共役酸エステル(A)を製造する方法において、
触媒が、エステル交換又はエステル化を触媒する少なくとも1つの酵素及び/又はエステル交換又はエステル化を触媒する少なくとも1つの生物であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の共役酸エステル(A)の製造方法。
【請求項13】
酵素を加水分解酵素[EC 3.x.x.x]の群から選択する、請求項12記載の方法。
【請求項14】
加水分解酵素[EC 3.x.x.x]が、エステラーゼ[EC 3.1.x.x]及びプロテアーゼ[EC 3.4.x.x]である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
加水分解酵素がカルボキシルエステル加水分解酵素[EC 3.1.1.x]である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
加水分解酵素がリパーゼである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
リパーゼが、アクロモバクター(Achromobacter sp.)、アスペルギルス(Aspergillus sp.)、ブルクホルデリア(Burholderia sp.)、カンジダ(Candida sp.)、ムコール(Mucor sp.)、ペニシリウム(Penicillium sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、リゾープス(Rhizopus sp.)、サーモマイセス(Thermomyces sp.)又はブタ膵臓から取得可能である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
生物が、エステル交換又はエステル化を触媒する少なくとも1つの酵素を含んでいる、天然に存在するか又は遺伝子工学的に改変された、微生物、単細胞生物又は細胞である、請求項12から18までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
生物を、アクロモバクター(Achromobacter sp.)、アスペルギルス(Aspergillus sp.)、ブルクホルデリア(Burholderia sp.)、カンジダ(Candida sp.)、ムコール(Mucor sp.)、ペニシリウム(Penicillium sp.)、シュードモナス(Pseudomonas sp.)、リゾープス(Rhizopus sp.)、サーモマイセス(Thermomyces sp.)及びブタ膵臓由来の細胞からなる群から選択する、請求項18記載の方法。
【請求項20】
ヒドロキシル基含有化合物(ii)を、一般式V〜X
【化3】

[式中、変数R、R、R、R、R、R及びRは前記の意味を表し、かつ変数Qは酸素原子又は第一又は第二のイミノ基、好ましくは酸素原子を表し、かつ変数Rはヒドロキシル基含有の一結合性有機基を表す]で示されるカルボン酸エステル及びカルボン酸アミドからなる群から選択する、請求項12から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
一結合性有機基Rが、ヒドロキシル基含有のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基からなる群から選択される少なくとも1個の基を含有するか又はこれらからなる、請求項20記載の方法。
【請求項22】
ヒドロキシル基含有アルキル基Rがヒドロキシエチル基、2−又は3−ヒドロキシプロピル基又は4−ヒドロキシブチル基である、請求項21記載の方法。
【請求項23】
ヒドロキシル基含有化合物(ii)を、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、シクロヘキセンカルボン酸、エンドメチレンシクロヘキサンカルボン酸、ノルボルネンカルボン酸、ジシクロペンタジエンカルボン酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸のヒドロキシル基含有のエステル及びアミドからなる群から選択する、請求項20から22までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
ヒドロキシル基含有化合物(ii)が4−ヒドロキシブチルアクリレートである、請求項22又は23記載の方法。
【請求項25】
反応の際に生じる水又は反応の際に生じるヒドロキシル基含有化合物を、形成の際にか又は形成直後に反応混合物から除去する、請求項21から24までのいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
化学線で硬化可能な材料、熱的にかつ化学線で硬化可能な材料又は酸化的に硬化可能な材料として、又はそれらを製造するための、請求項1から11までのいずれか1項記載の共役酸エステル(A)及び請求項12から25までのいずれか1項記載の方法により製造された共役酸エステル(A)の使用。
【請求項27】
化学線で硬化可能な材料、熱的にかつ化学線で硬化可能な材料又は酸化的に硬化可能な材料を、被覆、塗膜、プライマー、接着層、及びシーリングの製造のための塗料、接着剤又はシーリング材料として、並びに成形部材及び自立シートの製造のために使用する、請求項26記載の使用。

【公表番号】特表2006−518346(P2006−518346A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−501568(P2006−501568)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2004/000446
【国際公開番号】WO2004/069969
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(390008981)ビーエーエスエフ コーティングス アクチェンゲゼルシャフト (155)
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings AG
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D−48165 Muenster,Germany
【Fターム(参考)】