説明

共役ジエンの製造方法

【課題】 n−ブテン等のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応によりブタジエン等の共役ジエンを製造する方法において、より安全に運転ができ、更に高い収率で安定的にブタジエンの製造を行うことができる方法を提供する。
【解決手段】 炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを生成するにあたり、反応のスタートアップに際して、原料ガスの反応器への供給開始から100時間未満の間に、反応器への原料ガスの単位時間当たりの供給量を、許容最大供給量の80%以上とすることを特徴とする共役ジエンの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は共役ジエンの製造方法に係り、特にn−ブテン等の炭素原子数4以上のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応でブタジエン等の共役ジエンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
n−ブテン等のモノオレフィンを触媒の存在下に酸化脱水素反応させてブタジエン等の共役ジエンを製造する方法は、従来公知である。
この反応は例えば以下の反応式に従って進行し、水が副生する。
+1/2O→C+H
n−ブテンの接触酸化脱水素反応によるブタジエンの製造は、工業的にはナフサ分解で副生するC留分(C炭化水素混合物。以下、「BB」と称す場合がある。)からのブタジエンの抽出分離プロセスにおいて、抽出蒸留塔でブタジエンを分離して得られた、1−ブテンの他、2−ブテン、ブタン等を含む混合物(以下、この混合物を「BBSS]と称す場合がある。)中に含まれるブテンからブタジエンを製造する方法が提案されている。
【0003】
従来、n−ブテンの接触酸化脱水素反応によるブタジエンの代表的な製造方法としては、ブテンを気相接触酸化脱水素してブタジエンを生成させ、ブタジエンを含む生成ガスを冷却して生成ガス中から高沸点副生物を除去した後、生成ガス中のアルデヒド類を除去する工程を経て、生成ガスを圧縮して、圧縮された生成ガスからブタジエンを回収する方法が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、本発明で用いる後述の複合酸化物触媒については、特許文献3に記載され、この複合酸化物触媒をブテンの酸化脱水素反応によるブタジエンの製造触媒として用いることが記載されているが、具体的なブタジエンの製造方法の記載はなく、ましてやその触媒を用いて、多管式反応器を使って、ブテンからブタジエンを製造するにあたり、反応のスタートアップの方法については記載されていない。
【0005】
一方で、特許文献2には、多管式反応器を使用して、プロピレンを原料として、酸素含有ガスと気相接触酸化反応をおこない、アクリル酸及びアクロレインを製造する方法において、反応のスタートアップの際に、プロピレン供給量を開始より15時間で最大供給量の100%として運転を行った場合、運転開始から一ヶ月後に反応器を開放して反応管を検査すると、触媒の失活があったことが記載され、触媒の失活を抑制して、高収率でアクリル酸及びアクロレインを製造するには、反応のスタートアップの際に、反応器への原料の単位時間当たりの供給量が原料の単位時間当たりの許容最大供給量の30%以上に達してから、少なくとも20時間以上原料の単位時間当たりの供給量を許容最大供給量の30%以上80%未満に保つ方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−115532号公報
【特許文献2】特開2005−336085号公報
【特許文献3】特開2003−220335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1,3には、ブテンの酸化脱水素反応によりブタジエンを製造するにあたり、
その反応のスタートアップの方法については何ら記載されていない。例えば、特許文献2に記載されるように、ブテンの酸化脱水素反応によりブタジエンを製造する際にも、反応器への原料の単位時間当たりの供給量を、原料を反応器に供給開始してからの経過時間に対して、段階的に供給する量を上げていく方法が用いることが考えられるが、この方法によると、原料の反応器への単位時間当たりの供給量が、許容最大供給量(原料ガスの単位時間当たりの反応器に供給しても良い最大量で、反応器の生産能力と相関し、反応器の設計段階で決まる値)の80%以上とすると、反応器の差圧が上昇し、運転継続ができないという問題があった。そのため、度々運転をストップして、再び反応を開始することが必要となり、運転費用が高くなっていた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、n−ブテン等のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応によりブタジエン等の共役ジエンを製造する方法において、より安全に運転継続ができ、高い収率で安定的にブタジエンの製造を行うことができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、ブテンの酸化脱水素反応によりブタジエンを製造するにあたり、その反応のスタートアップに際して、原料ガスの反応器への供給開始から48時間未満の間に、反応器への原料ガスの単位時間当たりの供給量を、定常運転時における反応器への許容最大供給量の80%以上とすることにより、より安全に運転ができ、更に高い収率で安定的にブタジエンの製造を行うことができることを見出した。
【0010】
本発明はこのような知見に基いて達成されたものであり、以下の[1]〜[5]を要旨とする。
[1] 炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを生成するにあたり、反応のスタートアップに際して、原料ガスの反応器への供給開始から100時間未満の間に、反応器への原料ガスの単位時間当たりの供給量を、許容最大供給量の80%以上とすることを特徴とする共役ジエンの製造方法。
[2] 前記触媒が、少なくともモリブデン、ビスマス、およびコバルトを含有する複合酸化物触媒であることを特徴とする請求項1に記載の共役ジエンの製造方法。
[3] 前記触媒が、下記一般式(1)で表される複合酸化物触媒であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の共役ジエンの製造方法。
【0011】
MoaBibCocNidFeefghSiij (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
[4] 前記複合酸化物触媒が、該複合酸化物触媒を構成する各成分元素の供給源化合物を水系内で一体化して加熱する工程を経て製造する方法であって、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とシリカとを含む原料化合物水溶液又はこれを乾燥して得た乾燥物を加熱処理して触媒前駆体を製造する前工程と、該触媒前駆体、モリブデン化合物及びビスマス化合物を水性溶媒と
ともに一体化し、乾燥、焼成する後工程とを有する方法で製造されたものであることを特徴とする[3]に記載の共役ジエンの製造方法。
[5] 前記原料ガスが、エチレンの2量化により得られる1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン若しくはこれらの混合物を含有するガス、n−ブタンの脱水素若しくは酸化脱水素反応により生成するブテン留分を含むガス、又は重油留分を流動接触分解する際に得られる炭素原子数が4の炭化水素を多く含むガスであることを特徴とする[1]〜[4]のいずれかに記載の共役ジエンの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、モノオレフィンの接触酸化脱水素反応により共役ジエンを製造するに当たり、収率を落とすことなく、安定的に継続して共役ジエンを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の共役ジエンの製造方法の実施の形態を示す系統図である。
【図2】本発明の酸化脱水素反応に用いる多管式熱交換器型反応器の一つの実施の形態を示す概略断面図である。
【図3】実施例1での許容最大供給量に対するBBSSの供給量と反応器差圧の経過時間に対する推移を示すグラフ。
【図4】比較例1での許容最大供給量に対するBBSSの供給量と反応器差圧の経過時間に対する推移を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の共役ジエンの製造方法の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に限定されない。
本発明の共役ジエンの製造方法は、炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを生成するにあたり、反応のスタートアップに際して、原料ガスの反応器への供給開始から100時間未満の間に、反応器への原料ガスの単位時間当たりの供給量を、許容最大供給量の80%以上とすることを特徴とする。
【0015】
本発明において、「許容最大供給量」とは、従来から、原料ガスの単位時間あたりの反応器に供給してもよい最大量のことであることが知られており、反応器の生産能力と相関し、反応器の設計の段階で決定される。この値は、化学プロセスによって決め方が様々あり、種々の条件を基に決定されるが、一般的には、化学プロセスの設計の際、まず反応器内で行おうとする反応により得られる目的生成物の生産量の目標値(これを”反応器の公称能力”と呼ぶことがある)を定め、その反応に用いられる触媒によって決まる反応速度に応じて、反応器の滞留時間、反応温度、反応圧力などが決定され、使用する原料の組成や反応器の大きさなどから、定常状態において、反応器内でその反応が安定的に行われ、且つ反応器の公称能力を満足する時の原料の供給量を「許容最大供給量」と呼ぶ。本発明における「許容最大供給量」も同様な手順によって決定される。
【0016】
本発明では、前述したとおり、反応のスタートアップに際にして、原料ガスの反応器への供給開始から、100時間未満の間に、好ましくは48時間未満の間に、更に好ましくは36時間未満、特に好ましくは24時間未満、最も好ましくは、20時間未満、最も好ましくは、12時間未満の間に、反応器への原料ガスの単位時間当たりの供給量を、許容最大供給量の80%以上とする。反応器への原料ガスの単位時間当たりの供給量を、許容最大供給量の80%以上とする時間が短くなるほど、反応器の圧力上昇に繋がる触媒のコーキングや粉化が抑えられる傾向にある。触媒のコーキングや粉化が起こる原因については明らかではないが、スタートアップに際して、後述するように反応器の入口組成の爆発
範囲を回避するように運転することが起因していると考えられる。すなわち、反応ガス中の酸素濃度が低い状態で反応を行うことによりコークが生成し、触媒を劣化させると考えられる。これを回避するために酸素濃度が低い運転領域を短時間で通り抜けるように運転することが望ましい。
【0017】
本発明の共役ジエンの製造方法の中でも、代表的なものとして、n−ブテンからブタジエンを製造する場合の製造プロセスの系統図を示す図1を参照して本発明を詳細に説明するが、本発明はn−ブテン(1−ブテン、2−ブテン)からのブタジエンの製造に限らず、ペンテン、メチルブテン、ジメチルブテン等の炭素原子数4以上、好ましくは炭素原子数4〜6のモノオレフィンの接触酸化脱水素反応による対応する共役ジエンの製造に有効に適用される。これらのモノオレフィンは必ずしも単離した形で使用する必要はなく、必要に応じて任意の混合物の形で用いることができる。例えば1,3−ブタンジエンを得ようとする場合には高純度の1−ブテン又は2−ブテンを原料とすることもできるが、前述のナフサ分解で副生するC留分(BB)からブタジエン及びi−ブテンを分離して得られるn−ブテン(1−ブテン及び2−ブテン)を主成分とする留分(BBSS)やn−ブタンの脱水素又は酸化脱水素反応により生成するブテン留分を使用することもできる。また、エチレンの2量化により得られる高純度の1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン又はこれらの混合物を含有するガスを原料ガスとして使用しても差し支えない。尚、このエチレンはエタン脱水素、エタノール脱水、又はナフサ分解などの方法で得られるエチレンを使用することができる。更に、石油精製プラントなどで原油を蒸留した際に得られる重油留分を、流動層状態で粉末状の固体触媒を使って分解し、低沸点の炭化水素に変換する流動接触分解 (Fluid Catalytic Cracking)から得られる炭素原子数4
の炭化水素類を多く含むガス(以下、FCC−C4と略記することがある)をそのまま原料ガスとする、又は、FCC−C4からリンや砒素などの不純物を除去したものを原料ガスとして使用しても差し支えない。ここでいう、主成分とは、原料ガスに対して、通常40体積%以上、好ましくは60体積%以上、より好ましくは75体積%以上、特に好ましくは99体積%以上を示す。また、n−ブテン等のモノオレフィンの組成における1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテンの比率は限定されるものではなく、任意の値を取ることができる。
【0018】
また、原料ガス中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、任意の不純物を含んでいても良い。含んでいても良い不純物として、具体的には、イソブテンなどの分岐型モノオレフィン;プロパン、n−ブタン、i−ブタン、ペンタンなどの飽和炭化水素;プロピレン、ペンテンなどのオレフィン;1,2−ブタジエンなどのジエン;メチルアセチレン、ビニルアセチレン、エチルアセチレンなどのアセチレン類等が挙げられる。この不純物の量は、通常40体積%以下、好ましくは20体積%以下、より好ましくは10体積%以下、特に好ましくは1体積%以下である。この量が多すぎると、主原料である1−ブテンや2−ブテンの濃度が下がって反応が遅くなったり、好ましくない副生物が増える傾向にある。
【0019】
図1において、1は反応器、2はクエンチ塔、3,6,13は冷却器(熱交換器)、4,7,14はドレンポット、8A,8Bは脱水塔、9は加熱器(熱交換器)、10は溶媒吸収塔、11は脱気塔、12は溶媒分離塔を示し、符号100〜126は配管を示す。
本発明の酸化脱水素反応に用いられる反応器は特に限定されないが、多管式反応器が好ましく用いられる。多管式反応器は一般に工業的に用いられているものであり特に制限はない。
【0020】
本発明の酸化脱水素反応に用いる多管式熱交換型反応器の概略断面図を図2に示す。多管式反応器の反応器シェル22に反応管21a、21bが管板24a、24bに固定され配置されている。反応の原料ガスの入口である原料供給口、生成物の出口である生成物排
出口は23aまたは23bである。プロセスガスと熱媒体の流れが向流であれば、プロセスガスの流れ方向は何れでもかまわないが、図2においては、反応器シェル内の熱媒体の流れ方向が上昇流として矢印で記入されているので、23aが原料供給口である。また、この場合、熱媒体は熱媒体供給口26aから供給され、熱媒体抜出口26bより抜き出される。反応器シェルの内部には、熱媒体が均一に流れるようにすることを目的に邪魔板を設置することが望ましい。邪魔板の種類は特に限定されず公知のものが使用できる。例えば、図2に示すように邪魔板25a、25bを交互に設置し、熱媒体がシェルの中を蛇行して流しても良い。あるいは反応器シェルの中央部付近に開口部を有する穴あき邪魔板25aと、反応器シェルの外周部との間に開口部を有するように配置された穴あき邪魔板25bとを交互に複数配置しても良い。
【0021】
熱媒体の温度調節は、用いる触媒の性能にもよるが、熱媒体供給ライン26aと熱媒体抜き出しライン26bとの熱媒体の温度差が1〜10℃、好ましくは2〜6℃となるように行われる。
反応器シェル内に設置する邪魔板の数は特に制限はない。また、反応器内に配置された反応管の一部には、反応管内部に温度計が挿入され、1本の温度計では管軸方向に5〜20点の温度が測定される。
【0022】
原料となるn−ブテン或いは前述のBBSS等のn−ブテンを含む混合物を、気化器(図示せず)でガス化して、配管101より導入すると共に、配管102、103、104より、窒素ガス、空気(分子状酸素含有ガス)、及び水(水蒸気)を導入し、これらの混合ガスを予熱器(図示せず)で150〜250℃程度に加熱した後、配管100より触媒が充填された酸化脱水素反応器1に供給する。原料、窒素ガス、空気、及び水(水蒸気)を酸化脱水素反応器1に、直接別々の配管で供給してもよいが、均一に混合した状態で酸化脱水素反応器1に供給するのが好ましい。反応器内で不均一な混合ガスが部分的に爆鳴気を形成したり、多管式反応器で管毎に異なる組成の原料が供給されるという事態を防ぐことが出来るからである。
【0023】
分子状酸素含有ガスは、通常、分子状酸素が10体積%以上、好ましくは、15体積%以上、更に好ましくは20体積%以上含まれるガスのことであり、具体的に好ましくは空気である。なお、分子状酸素含有ガスを工業的に用意するために必要なコストという観点から、分子状酸素が50体積%以下、好ましくは、30体積%以下、更に好ましくは25体積%以下であることが好ましい。また、本発明の効果を阻害しない範囲で、分子状酸素含有ガスには、任意の不純物を含んでいても良い。含んでいても良い不純物として、具体的には、窒素、アルゴン、ネオン、ヘリウム、CO、CO、水等が挙げられる。この不純物の量は、窒素の場合通常90体積%以下、好ましくは85体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。窒素以外の成分の場合、通常10体積%以下、好ましくは1体積%以下である。この量が多すぎると、反応に必要な酸素を供給するのが難しくなる傾向にある。
【0024】
また、反応器1に原料ガスを供給するにあたり、窒素ガス、及び水(水蒸気)を供給してもよい。窒素ガスは、反応ガスが爆鳴気を形成しないようにブテン等の可燃性ガスと酸素の濃度を調整するという理由から、水(水蒸気)は窒素ガスと同様に可燃性ガスと酸素の濃度を調整するという理由と触媒のコーキングを抑制するという理由から、ブテン、及び分子状酸素含有ガスと共に原料ガスとして反応器1に供給するのが好ましい。
【0025】
本発明において、反応のスタートアップの際の原料ガス、窒素ガス、分子状酸素含有ガス、及び水(水蒸気)の供給順序は特に限定されないが、好ましくは、原料ガスを原料供給口3aに導入する前に、窒素ガス、分子状酸素含有ガス、及び水(水蒸気)を原料供給口3aに予め導入しておくことが好ましい。また、この場合、原料ガスを原料供給口3a
に導入する前に、熱媒体供給口6aから熱媒体を供給し、熱媒体抜出口6bから熱媒体を抜き出し、反応管外(反応器シェル側)の温度を予め上昇させておき、所定の温度になった時点で原料ガスを原料供給口3aに供給することが更に好ましい。この時の温度は反応温度付近であることが好ましいが、特に制限はない。反応器に熱媒体を供給する前に予熱器で加温された窒素ガス、分子状酸素含有ガス、及び水(水蒸気)を原料供給口3aに供給することにより予め反応器を加熱しても良い。
【0026】
また、本発明では、反応のスタートアップに際して、原料ガスの反応器への供給開始から100時間未満の間に、反応器への原料ガスの単位時間当たりの供給量を、許容最大供給量の80%以上とするが、その間、原料ガスと共に反応器へ供給する、窒素ガス、分子状酸素含有ガス、及び水(水蒸気)などの供給量は、後述するように原料ガスと窒素ガス、分子状酸素含有ガス、及び水(水蒸気)の混合ガスの組成が爆発範囲に入らないように調整される。
【0027】
この反応器1に供給する原料ガスは、分子状酸素含有ガスと混合されると、酸素と可燃性ガスの混合物となることから、爆発範囲に入らないように各々のガス(ブテン、空気、及び必要に応じて窒素ガスと水(水蒸気))を供給する配管に設置された流量計にて流量を監視しながら、反応器入り口の組成制御を行い、例えば、後述の原料ガス組成の範囲に調整される。なお、ここでいう爆発範囲とは、酸素と可燃性ガスの混合ガスが何らかの着火源の存在下で着火するような組成を持つ範囲のことである。可燃性ガスの濃度がある値より低いと着火源が存在しても着火しないことが知られており、この濃度を爆発下限界という。また可燃性ガスの濃度がある値より高いとやはり着火源が存在しても着火しないことが知られており、この濃度を爆発上限界という。各々の値は酸素濃度に依存しており、一般に酸素濃度が低いほど両者の値が近づき、酸素濃度がある値になったとき両者が一致する。このときの酸素濃度を限界酸素濃度と言い、酸素濃度がこれより低ければ可燃性ガスの濃度によらず混合ガスは着火しない。
【0028】
本発明の反応を開始するときは、最初に反応器に供給するエアーなどの分子状酸素含有ガス、窒素、水蒸気の量を調整して反応器入り口の酸素濃度が限界酸素濃度以下になるようにしてから可燃性ガスの供給を開始し、次いで可燃性ガス濃度が爆発上限界よりも濃くなるように可燃性ガスとエアーなどの分子状酸素含有ガスの供給量を増やしていくのが良い。可燃性ガスと分子状酸素含有ガスの供給量を増やしていくときに窒素および/または水蒸気の供給量を減らして混合ガスの供給量が一定となるようにしても良い。こうすることで、配管および反応器におけるガスの滞留時間を一定に保ち、圧力の変動を抑えることが出来る。
【0029】
なお、爆発範囲外であっても、ある温度、圧力条件下で、ある時間保持されると発火する場合がある。このときの保持時間を発火遅れ時間という。反応器周りを設計するときは原料配管や生成ガス配管の滞留時間が発火遅れ時間以下になるように設計する必要がある。発火遅れ時間は温度や圧力、組成に依存するので一概には言えないが、混合原料配管の滞留時間は1000秒以下、生成ガス配管の滞留時間は10秒以下もしくは生成ガスを10秒以内に350℃以下に冷却することが望ましい。
【0030】
以下に、原料ガスの代表的な組成を示す。
<原料ガス組成>
n−ブテン:C留分合計に対して50〜100vol%
留分合計:5〜15vol%
:C留分合計に対して40〜120vol/vol%
:C留分合計に対して500〜1000vol/vol%
O:C留分合計に対して90〜900vol/vol%
反応器1には、後述の酸化脱水素反応触媒が充填されており、触媒上でn−ブテンが酸素と反応し、ブタジエンと水が生成する。この酸化脱水素反応は発熱反応であり、反応により温度が上昇するが、反応温度は280〜400℃の範囲に調整することが好ましく、従って、反応器1は熱媒体(例えば、ジベンジルトルエンや亜硝酸塩など)を使用して触媒層の温度を一定に制御される。
【0031】
反応器1の圧力は、特に限定されないが、下限は、通常、0MPaG以上、好ましくは、0.002MPaG以上、更に好ましくは、0.02MPaG以上、特に好ましくは0.05MPaG以上である。この値が大きくなるほど、反応器に反応ガスを多量に供給できるというメリットがある。一方、上限は、0.5MPaG以下であり、好ましくは0.3MPaG以下、更に好ましくは、0.1MPaGである。この値が小さくなるほど、爆発範囲が狭くなる傾向にある。
【0032】
反応塔1の滞留時間は、特に限定されないが、下限は、通常0.36秒以上、好ましくは、0.72秒以上、更に好ましくは1.2秒以上である。この値が大きくなるほど、転化率が高くなるというメリットがある。一方、上限は、7.2秒以下であり、好ましくは3.6秒以下、更に好ましくは、1.8秒である。この値が小さくなるほど、反応器が小さくなる傾向にある。
【0033】
生成ガス中に含まれる原料ガス中のモノオレフィンに対応する共役ジエンの濃度は、原料ガス中に含まれるモノオレフィンの濃度に依存するが、通常1〜15vol%、好ましくは、5〜13vol%、更に好ましくは9〜11mol%である。共役ジエンの濃度が大きいほど、回収コストが低いというメリットがあり、小さいほど次工程で圧縮したときに重合などの副反応が起き難いというメリットがある。また、生成ガス中には未反応のモノオレフィンも含まれていてもよく、その濃度は、通常0〜7vol%、好ましくは、0〜4vol%、更に好ましくは0〜2vol%である。反応器1の入り口組成が爆発上限界以上である場合、反応器1出口の組成も通常は爆発上限界以上であり、爆発の恐れはない。しかし本発明では、生成ガスを吸収溶媒と接触させてオレフィンや共役ジエンなどの炭化水素を溶媒に吸収させる工程でガス中の炭化水素の濃度が低下して爆発範囲に入る可能性がある。これを回避するには生成ガスを窒素などのイナートガスで希釈してから吸収溶媒と接触させることが考えられるが、反応器1出口またはクエンチ塔2出口の組成が限界酸素濃度以下になるように反応器1入口条件や反応条件を調整した方が簡便である。例えばクエンチ塔2の出口に酸素濃度計を設置し、これが8%以下になるように反応器1に供給するエアー流量を調整する、又は反応温度を調整すれば良い。
【0034】
反応器1の入口と出口との流量差としては、原料ガスの反応器入口での流量、及び生成ガスの反応器出口での流量に依存するが、通常入口流量に対する出口の流量の比率が100〜110体積%、好ましくは、102〜107体積%、更に好ましくは103〜105体積%である。出口流量が増えるのはブテンが酸化脱水素されてブタジエンと水が生成する反応や副反応でCOやCOが生成する反応において化学量論的に分子数が増えるためである。出口流量の増加が少ないと反応が進行していないので好ましくなく、出口流量が増えすぎると副反応でCOやCOが増加しているため好ましくない。
【0035】
また、本発明では、反応器から排出される生成ガスを冷却する冷却工程を有していても良い。冷却工程については、生成ガスを冷却できる工程であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、図1に示すように、クエンチ塔により冷却できる。即ち、反応器1からの反応生成ガスは次いで配管105よりクエンチ塔2に送給され、20〜99℃程度に冷却される。このクエンチ塔2には配管106より冷却水が導入され、生成ガスとの向流接触で生成ガスを冷却した水は、配管107より排出される。なお、この冷却排水は、熱交換器(図示せず)で冷却されて再度クエンチ塔2において循環使用される。
【0036】
また、本発明では、反応器から排出される生成ガスに含まれる水分を除去する脱水工程を有していても良い。脱水工程については、生成ガスに含まれる水分を除去できる工程であれば、特に限定されない。脱水工程は反応器の後段の工程であれば、どこで行ってもよいが、冷却工程の後に脱水工程を行うことが好ましい。具体的には、例えば、図1に示すように、クエンチ塔2で冷却された生成ガスは塔頂から流出され、この冷却ガスは次いで配管108より冷却器3を経て室温(10〜30℃程度)に冷却される。冷却により発生した凝縮水は配管109よりドレンポット4に分離される。水分離後のガスは更に配管110を経て圧縮機5で0.1〜0.5MPa程度に昇圧され、配管111を経て冷却器6で再度10〜30℃程度に冷却される。冷却により発生した凝縮水は配管112よりドレンポット7に分離される。水分離後の圧縮ガスは、通常、水分含有量0.5〜2vol%程度、露点として0〜20℃程度の湿潤ガスであるが、このガスは、脱水塔8A,8Bに導入されて脱水処理される。
【0037】
図1において、脱水塔8A,8Bには、モレキュラーシーブ等の乾燥剤(水分吸着剤)が充填されており、これにより圧縮ガスの脱水と乾燥剤の加熱乾燥による再生とが交互に行われる。
即ち、圧縮ガスは、まず、配管113,113aを経て脱水塔8Aに導入されて脱水処理され、脱水ガスは配管114a,114を経て溶媒吸収塔10に送給される。この間に、脱水塔8Bには、配管122、加熱器9、配管123,123bを経て150〜250℃程度に加熱された窒素ガスが導入され、乾燥剤の加熱による水分の脱着が行われる。脱着した水分を含む窒素ガスは、配管124b、124を経て冷却器13で室温まで冷却され、凝縮水が配管125よりドレンポット14に分離された後、配管126より排出される。
【0038】
脱水塔8Aの乾燥剤が飽和に達したら、ガス流路を切り換え、脱水塔8Bで圧縮ガスの脱水処理を行い、脱水塔8A内の乾燥剤の再生を行う。
脱水工程における脱水塔内の乾燥剤の再生時間は、特に限定されないが、通常6〜48時間、好ましくは、12〜36時間、更に好ましくは18〜30時間である。
脱水塔では水以外にも反応ガスに含まれる高沸成分が吸着除去される。
【0039】
なお、脱水塔8A,8Bによる脱水処理は必ずしも必要とされないが、このような脱水処理を行うことにより、以下、詳述する溶媒吸収によるブタジエン回収工程における水分による機器腐食や溶媒の分解を防止することができ、好ましい。
通常、モレキュラーシーブ等の乾燥剤を用いる脱水処理で、溶媒吸収塔10に供給する脱水ガス中の水分含有量は、通常は10〜10000volppm、好ましくは、20〜1000volppmであり、露点としては、−60〜80℃、好ましくは、−50〜20℃である。
【0040】
本発明では、反応器から排出される生成ガスを溶媒に吸収させて回収する回収工程を有していてもよい。回収工程については、生成ガスを溶媒に吸収させて回収できる工程であれば、特に限定されない。回収工程は反応器の後段の工程であれば、どこで行っても良いが、脱水工程の後に回収工程を行うことが好ましい。具体的には、例えば、図1において、脱水塔8A,8Bからの脱水ガスは、必要に応じて冷却器(図示せず)で10〜30℃程度に冷却された後、溶媒吸収塔10に送給され、配管115からの溶媒と向流接触することで、ガス中のブタジエンと未反応のn−ブテン及びブタンが溶媒に吸収される。溶媒に吸収されなかった成分(残ガス)は溶媒吸収塔の塔頂より配管117を経て排出され燃焼廃棄される。
【0041】
溶媒吸収塔10内の圧力は、特に限定されないが、通常、0.1〜2.0MPaG,好
ましくは、0.2〜1.5MPaG、更に好ましくは0.25〜1.0MPaGである。この圧力が大きいほど、吸収効率が良くなるというメリットがあり、小さいほど建設費および運転に要するコストが下がるというメリットがある。
溶媒吸収塔10内の温度は、特に限定されないが、通常0〜50℃、好ましくは、10〜40℃、更に好ましくは20〜30℃である。この温度が大きいほど、酸素や窒素などが溶媒に吸収されにくいというメリットがあり、小さいほどブタジエンなどの炭化水素の吸収効率が良くなるというメリットがある。
【0042】
溶媒吸収液は溶媒吸収塔の塔底より抜き出され配管116より脱気塔11に送給される。
この溶媒吸収塔10で、ブタジエンの回収に用いる吸収溶媒としては、C〜C10の飽和炭化水素やC〜Cの芳香族炭化水素、アミド化合物などが用いられる。例えばジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を用いることができる。溶媒の使用量には特に制限はないが、多過ぎると不経済であり、少な過ぎるとブタジエンの回収効率が低下する。従って、得られる溶媒吸収液中のブタジエン濃度が1〜20重量%、好ましくは3〜10重量%程度となるような量で溶媒を供給することが好ましい。
【0043】
溶媒の種類にも依るがブタン類とブタジエンでは溶媒に対する溶解度が異なるので、溶媒の種類やC4ガスと溶媒の比率、溶媒の温度、圧力を選ぶとブタジエンを吸収しながらブタン類の少なくとも一部を溶媒吸収塔の塔頂からパージすることが出来る。本発明の原料としてBBSSを用い、本発明で得られた粗ブタジエンをブタジエン抽出プロセスに戻す場合は原料BBSS中にブタンが蓄積していくのでブタンを抜くプロセスを設ける必要がある。溶媒吸収塔でブタンを分離すれば新たに設備を設ける必要がないので経済的に有利である。
【0044】
本発明では、回収工程で得られるブタジエンの溶媒吸収液に、若干量の窒素、酸素も吸収されているため、溶媒吸収液中に溶存する窒素や酸素をガス化して除去する脱気工程を有していても良い。脱気工程では、溶媒吸収液中に溶存する窒素や酸素をガス化して除去できる工程であれば、特に限定されない。具体的には、例えば、図1において、溶媒吸収塔10で得られるブタジエンの溶媒吸収液を脱気塔11に供給して50〜150℃程度に加熱することにより、液中に溶存する窒素や酸素をガス化して除去することができる。この際、ブテンやブタジエン、溶媒の一部もガス化するため、この脱気塔11の塔頂に設けたコンデンサでこれを液化して吸収液中に回収する。凝縮しなかったブテン、ブタジエンは窒素、酸素の混合ガスとして配管118より抜き出され、ブタジエンの回収率を高めるために圧縮機5の入口側へ循環され再度処理が行われる。一方、脱気処理液は配管119より溶媒分離塔12へ送給される。
【0045】
このようにして得られたブタジエンの溶媒吸収液からブタジエンの分離を行う分離工程を経てブタジエンを得ることができる。分離工程としては、ブタジエンの溶媒吸収液からブタジエンを分離することができる工程であれば、特に限定されないが、通常、蒸留分離によりブタジエンを分離することができる。具体的には、例えば、図1において、溶媒分離塔12では、リボイラとコンデンサによりブタジエンの蒸留分離が行われ、塔頂より配管120を経てブタジエン留分が抜き出される。分離された溶媒は塔底より配管121を経て抜き出され、溶媒吸収塔10の吸収溶媒として循環使用される。
【0046】
溶媒は循環使用するうち不純物が蓄積する場合があり、一部を抜き出して蒸留やデカンテーション、沈降、吸着剤やイオン交換樹脂などとの接触処理などの公知の精製方法により不純物を除去することが望ましい。精製された溶媒は、再度ブタジエンの吸収溶媒として使用することが出来る。
ここで使用する蒸留塔の蒸留時の圧力は任意に設定することができるが、通常は、塔頂圧力を0.05〜2.0MPaGとすることが好ましい。より好ましくは塔頂圧力が0.1〜1.0MPaGであり、特に好ましくは0.15〜0.8MPaGの範囲である。この塔頂圧力が低すぎると、留出したブタジエンを低温で凝縮するために多大なコストが必要となり、また高すぎると蒸留塔の塔底部の温度が高くなり、蒸気コストの増大となってしまう。
【0047】
塔底温度は、通常50〜200℃であり、好ましくは80〜180℃、より好ましくは100〜160℃である。塔底温度が低すぎるとブタジエンを頂圧から留出させるのが困難となる。また温度が高すぎると、溶媒も塔頂から留出してしまう。還流比は1〜10で差し支えなく、好ましくは2〜4である。
蒸留塔としては充填塔、棚段塔のいずれもが使用できるが、多段蒸留が好ましい。ブタジエンと溶媒を分離するには、蒸留塔理論段を5段以上、特に10段〜20段とするのが好ましい。50段を越える蒸留塔は、蒸留塔建設の経済性、運転難易度、及び安全管理のためには好ましくない。また段数が小さすぎると分離が困難となる。
【0048】
[触媒]
以下に、本発明で好適に用いられる酸化脱水素反応触媒について説明する。
本発明で用いる触媒は、少なくともモリブデン、ビスマス、およびコバルトを含有する複合酸化物触媒であることが好ましく、中でも、下記一般式(1)で表される複合酸化物触媒であることが更に好ましい。
【0049】
MoaBibCocNidFeefghSiij (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、jは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
また、この複合酸化物触媒は、この複合酸化物触媒を構成する各成分元素の供給源化合物を水系内で一体化して加熱する工程を経て製造する方法であって、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とシリカとを含む原料化合物水溶液又はこれを乾燥して得た乾燥物を加熱処理して触媒前駆体を製造する前工程と、該触媒前駆体、モリブデン化合物及びビスマス化合物を水性溶媒とともに一体化し、乾燥、焼成する後工程とを有する方法で製造されたものであることが好ましく、このような方法で製造された複合酸化物触媒であれば、その高い触媒活性で高収率でブタジエン等の共役ジエンを製造することができ、アセチレン類含有量の少ない反応生成ガスを得ることができる。
【0050】
以下に本発明に好適な複合酸化物触媒の製造方法について説明する。
この複合酸化・BR>ィ触媒の製造方法においては、前記前工程で用いられるモリブデン
が、モリブデンの全原子比(a)の内の一部の原子比(a)相当のモリブデンであり、前記後工程で用いられるモリブデンが、モリブデンの全原子比(a)からaを差し引いた残りの原子比(a)相当のモリブデンであることが好ましい。また、前記aが1<a/(c+d+e)<3を満足する値であることが好ましい。さらに、前記aが0<a/b<8を満足する値であることが好ましい。
【0051】
上記成分元素の供給源化合物としては、成分元素の酸化物、硝酸塩、炭酸塩、アンモニウム塩、水酸化物、カルボン酸塩、カルボン酸アンモニウム塩、ハロゲン化アンモニウム塩、水素酸、アセチルアセトナート、アルコキシド等が挙げられ、その具体例としては、下記のようなものが挙げられる。
Moの供給源化合物としては、パラモリブデン酸アンモニウム、三酸化モリブデン、モリブデン酸、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸等が挙げられる。
【0052】
Feの供給源化合物としては、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、酢酸第二鉄等が挙げられる。
Coの供給源化合物としては、硝酸コバルト、硫酸コバルト、塩化コバルト、炭酸コバルト、酢酸コバルト等が挙げられる。
Niの供給源化合物としては、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、炭酸ニッケル、酢酸ニッケル等が挙げられる。
【0053】
Siの供給源化合物としては、シリカ、粒状シリカ、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等が挙げられる。
Biの供給源化合物としては、塩化ビスマス、硝酸ビスマス、酸化ビスマス、次炭酸ビスマス等が挙げられる。また、X成分(Mg,Ca,Zn,Ce,Smの1種又は2種以上)やY成分(Na,K,Rb,Cs,Tlの1種又は2種以上)を固溶させた、BiとX成分やY成分との複合炭酸塩化合物として供給することもできる。
【0054】
例えば、Y成分としてNaを用いた場合、BiとNaとの複合炭酸塩化合物は、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムの水溶液等に、硝酸ビスマス等の水溶性ビスマス化合物の水溶液を滴下混合し、得られた沈殿を水洗、乾燥することによって製造することができる。
また、BiとX成分との複合炭酸塩化合物は、炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムの水溶液等に、硝酸ビスマス及びX成分の硝酸塩等の水溶性化合物からなる水溶液を滴下混合し、得られた沈殿を水洗、乾燥することによって製造することができる。
【0055】
上記炭酸アンモニウム又は重炭酸アンモニウムの代わりに、炭酸ナトリウム又は重炭酸ナトリウムを用いると、Bi、Na及びX成分との複合炭酸塩化合物を製造することができる。
その他の成分元素の供給源化合物としては、下記のものが挙げられる。
Kの供給源化合物としては、硝酸カリウム、硫酸カリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム、酢酸カリウム等を挙げることができる。
【0056】
Rbの供給源化合物としては、硝酸ルビジウム、硫酸ルビジウム、塩化ルビジウム、炭酸ルビジウム、酢酸ルビジウム等を挙げることができる。
Csの供給源化合物としては、硝酸セシウム、硫酸セシウム、塩化セシウム、炭酸セシウム、酢酸セシウム等を挙げることができる。
Tlの供給源化合物としては、硝酸第一タリウム、塩化第一タリウム、炭酸タリウム、酢酸第一タリウム等を挙げることができる。
【0057】
Bの供給源化合物としては、ホウ砂、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸等を挙げることができる。
Pの供給源化合物としては、リンモリブデン酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸、五酸化リン等を挙げることができる。
Asの供給源化合物としては、ジアルセノ十八モリブデン酸アンモニウム、ジアルセノ十八タングステン酸アンモニウム等を挙げることができる。
【0058】
Wの供給源化合物としては、パラタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステン、タングステン酸、リンタングステン酸等を挙げることができる。
Mgの供給源化合物としては、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム等が挙げられる。
Caの供給源化合物としては、硝酸カルシウム、硫酸カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム等が挙げられる。
【0059】
Znの供給源化合物としては、硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸亜鉛等が挙げられる。
Ceの供給源化合物としては、硝酸セリウム、硫酸セリウム、塩化セリウム、炭酸セリウム、酢酸セリウム等が挙げられる。
Smの供給源化合物としては、硝酸サマリウム、硫酸サマリウム、塩化サマリウム、炭酸サマリウム、酢酸サマリウム等が挙げられる。
【0060】
前工程において用いる原料化合物水溶液は、触媒成分として少なくともモリブデン(全原子比aの内のa相当)、鉄、ニッケル又はコバルトの少なくとも一方、及びシリカを含む水溶液、水スラリー又はケーキである。
この原料化合物水溶液の調製は、供給源化合物の水性系での一体化により行われる。ここで各成分元素の供給源化合物の水性系での一体化とは、各成分元素の供給源化合物の水溶液あるいは水分散液を一括に、あるいは段階的に混合及び/又は熟成処理を行うことをいう。即ち、(イ)上記の各供給源化合物を一括して混合する方法、(ロ)上記の各供給源化合物を一括して混合し、そして熟成処理する方法、(ハ)上記の各供給源化合物を段階的に混合する方法、(ニ)上記の各供給源化合物を段階的に混合・熟成処理を繰り返す方法、及び(イ)〜(ニ)を組み合わせる方法のいずれもが、各成分元素の供給源化合物の水性系での一体化という概念に含まれる。ここで、熟成とは、工業原料もしくは半製品を、一定時間、一定温度等の特定条件のもとに処理して、必要とする物理性、化学性の取得、上昇あるいは所定反応の進行等を図る操作をいい、一定時間とは、通常10分〜24時間の範囲であり、一定温度とは通常室温〜水溶液又は水分散液の沸点範囲をいう。
【0061】
上記の一体化の具体的な方法としては、例えば、触媒成分から選ばれた酸性塩を混合して得られた溶液と、触媒成分から選ばれた塩基性塩を混合して得られた溶液とを混合する方法等が挙げられ、具体例としてモリブデン化合物の水溶液に、鉄化合物とニッケル化合物及び/又はコバルト化合物との混合物を加温下添加し、シリカを混合する方法等が挙げられる。
【0062】
このようにして得られたシリカを含む原料化合物水溶液(スラリー)を60〜90℃に加温し、熟成する。
この熟成とは、上記触媒前駆体用スラリーを所定温度で所定時間、撹拌することをいう。この熟成により、スラリーの粘度が上昇し、スラリー中の固体成分の沈降を緩和し、とりわけ次の乾燥工程での成分の不均一化を抑制するのに有効となり、得られる最終製品である複合酸化物触媒の原料転化率や選択率等の触媒活性がより良好となる。
【0063】
上記熟成における温度は、60〜90℃が好ましく、70〜85℃がより好ましい。熟成温度が60℃未満では、熟成の効果が十分ではなく、良好な活性を得られない場合がある。一方、90℃を超えると、熟成時間中の水の蒸発が多く、工業的な実施には不利である。更に100℃を超えると、溶解槽に耐圧容器が必要となり、また、ハンドリングも複雑になり、経済性及び操作性の面で著しく不利となる。
【0064】
上記熟成にかける時間は、2〜12時間がよく、3〜8時間が好ましい。熟成時間が2時間未満では、触媒の活性及び選択性が十分に発現しない場合がある。一方、12時間を
超えても熟成効果が増大することはなく、工業的な実施には不利である。
上記撹拌方法としては、任意の方法を採用することができ、例えば、撹拌翼を有する撹拌機による方法や、ポンプによる外部循環による方法等が挙げられる。
【0065】
熟成されたスラリーは、そのままで、又は乾燥した後、加熱処理を行う。乾燥する場合の乾燥方法及び得られる乾燥物の状態については特に限定はなく、例えば、通常のスプレードライヤー、スラリードライヤー、ドラムドライヤー等を用いて粉体状の乾燥物を得てもよいし、また、通常の箱型乾燥器、トンネル型焼成炉を用いてブロック状又はフレーク状の乾燥物を得てもよい。
【0066】
上記の原料塩水溶液又はこれを乾燥して得た顆粒あるいはケーキ状のものは空気中で200〜400℃、好ましくは250〜350℃の温度域で短時間の熱処理を行う。その際の炉の形式及びその方法については特に限定はなく、例えば、通常の箱型加熱炉、トンネル型加熱炉等を用いて乾燥物を固定した状態で加熱してもよいし、また、ロータリーキルン等を用いて乾燥物を流動させながら加熱してもよい。
【0067】
加熱処理後に得られた触媒前駆体の灼熱減量は、0.5〜5重量%であることが好ましく、1〜3重量%であるのがより好ましい。灼熱減量をこの範囲とすることで、原料転化率や選択率が高い触媒を得ることができる。なお、灼熱減量は、前記のように、次式により与えられる値である。
灼熱減量(%)=[(W−W)/W]×100
:触媒前駆体を150℃で3時間乾燥して付着水分を除いたものの重量(g)
:付着水分を除いた前記触媒前駆体を更に500℃で2時間熱処理した後の重量(g)
後工程では、上記の前工程において得られる触媒前駆体とモリブデン化合物(全原子比aからa相当を差し引いた残りのa相当)とビスマス化合物の一体化を、水性溶媒下で行う。この際、アンモニア水を添加するのが好ましい。X、Y、Z成分の添加もこの後工程で行うのが好ましい。また、この発明のビスマス供給源化合物は、水に難溶性ないし不溶性のビスマスである。この化合物は、粉末の形態で使用することが好ましい。触媒製造原料としてのこれら化合物は粉末より大きな粒子のものであってもよいが、その熱拡散を行わせるべき加熱工程を考えれば小さい粒子である方が好ましい。従って、原料としてのこれらの化合物がこのように粒子の小さいものでなかった場合は、加熱工程前に粉砕を行うべきである。
【0068】
次に、得られたスラリーを充分に撹拌した後、乾燥する。このようにして得られた乾燥品を、押出し成型、打錠成型、あるいは担持成型等の方法により任意の形状に賦形する。次に、このものを、好ましくは450〜650℃の温度条件にて1〜16時間程度の最終熱処理に付す。以上のようにして、高活性で、かつ目的とする酸化生成物を高い収率で与える複合酸化物触媒が得られる。
【0069】
このようにして得られる複合酸化物触媒は、通常、反応活性を調整するためのイナートボールと共に反応塔に充填されて固定床が形成される。
イナートボールとしては、アルミナ、ジルコニア等のセラミックの球状体が用いられる。イナートボールは通常、複合酸化物触媒と同等の大きさであり、その粒径は2〜10mm程度である。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
[製造例1:複合酸化物触媒の調製]
パラモリブデン酸アンモニウム54gを純水250mlに70℃に加温して溶解させた
。次に、硝酸第二鉄7.18g、硝酸コバルト31.8g及び硝酸ニッケル31.8gを純水60mlに70℃に加温して溶解させた。これらの溶液を、充分に攪拌しながら徐々に混合した。
【0071】
次に、シリカ64gを加えて、充分に攪拌した。このスラリーを75℃に加温し、5時間熟成した。その後、このスラリーを加熱乾燥した後、空気雰囲気で300℃、1時間の熱処理に付した。
得られた触媒前駆体の粒状固体(灼熱減量:1.4重量%)を粉砕し、パラモリブデン酸アンモニウム40.1gを純水150mlにアンモニア水10mlを加え溶解した溶液に分散した。次に、純水40mlにホウ砂0.85g及び硝酸カリウム0.36gを25℃の加温下に溶解させて、上記スラリーを加えた。
【0072】
次に、Naを0.45%固溶した次炭酸ビスマス58.1gを加えて、攪拌混合した。このスラリーを130℃、12時間加熱乾燥した後、得られた粒状固体を、小型成型機にて径5mm、高さ4mmの錠剤に打錠成型し、次に500℃、4時間の焼成を行って、触媒を得た。仕込み原料から計算される触媒は、次の原子比を有する複合酸化物であった。
Mo:Bi:Co:Ni:Fe:Na:B:K:Si=12:5:2.5:2.5:0.4:0.35:0.2:0.08:24
なお、触媒調製の際のモリブデンの原子比aとaは、それぞれ6.9と5.1であった。
【0073】
[実施例1:1,3−ブタジエンの製造]
図1に示す方法で1,3−ブタジエンの製造を行った。また、反応器としては、図2に示す多管式反応器と同様のものを用いた。なお、本発明では、ガスの分析に、ガスクロマトグラフィー((株)島津製作所製 GC−2014)を使用した。
内径27mm、長さ3500mmの反応管を113本備えた多管式反応器(反応器シェル(内径500mm)、原料供給口から生成物排出口までの長さ5332mm)に、反応管1本当たり、製造例1で製造された複合酸化物触媒1162mlとイナートボール(Tipton Corp.製)407mlとを充填した。また、この反応管のうち、3本の反応管には温度計が設置されており、反応器内温度を測定した。なお、用いた温度計は、多点式熱電対((株)岡崎製作所社製)で反応管入口から出口にかけての触媒層の温度分布を測定できるようにした。熱媒体はジベンジルトルエンを使用し、熱媒体供給口26aに設置した熱電対(山里産業株式会社製)で温度を測定した。邪魔板は図2に示すように邪魔板25a、25bを交互に設置し、熱媒体がシェルの中を蛇行して流れるようにした。この反応器の許容最大供給量は、16.5Nm3/hであった。
【0074】
反応器には予め空気(分子状酸素:21%)と窒素(純度99.99%以上)の混合ガスを供給してから熱媒体を流して昇温した。熱媒体供給口26aの温度が約300℃に到達したところで水蒸気を供給した。このときのガスの供給量は表1の経過時間0時間と同じである。
そして、反応器内温度が、302℃となった後、ナフサ分解で副生するC留分からのブタジエンの抽出分離プロセスから排出されたBBSSの供給を開始した。供給したBBSSの組成を表2に示す。
【0075】
表1に示す流量で、空気と窒素と水蒸気を、それぞれの供給ラインから供給して、これらを反応器へ供給する前に混合し、圧力30KGの水蒸気を加熱源とする予熱器で214℃に加熱した後、反応器1の原料供給口に供給した。
表1の経過時間とはBBSSの供給を開始してからの時間である。BBSSの供給量は6.25時間後に許容最大供給量の80%(12.6Nm3/h)に到達した。この後、BBSSの供
給量は許容最大供給量の80%のまま反応を継続した。反応塔1内の反応管の周囲には、
表2に示す温度の熱媒を流して反応管内部の温度を調整した。このときの反応器の入り口と出口の差圧は、表2に示すようにBBSS流量が増加するに伴い、上昇したが、BBSSの流量を一定とした後は増加しなかった。図3は、経過時間に対する、許容最大供給量に対するBBSSの供給量(%)と反応器差圧の推移を示すグラフである。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
反応器1からの生成ガスは、クエンチ塔2で水と接触させて75℃に冷却した後、更に冷却器3で室温まで冷却した。このガスを冷却器3の後ろに設置したサンプリング口からサンプリングして上述のガスクロマトグラフィーで分析した結果、171時間後の反応成績は
ブテン転化率 91.9%、ブタジエン選択率 86.4%であった。
[比較例1]
BBSSと、空気と窒素と水蒸気の流量を表3に示すように変化させた以外は実施例1と同様に実施した。BBSSの供給量は121.5時間後に許容最大供給量の80.6%に到
達した。反応器の差圧はBBSSの流量が一定となった後も上昇し続けたため、174.5時
間で反応を停止した。174時間後の反応成績はブテン転化率 92.8%、ブタジエン選択率 84.9%であった。
【0079】
【表3】

【0080】
実施例1と比較例1から、反応のスタートアップに際して、原料ガスであるBBSSを原料供給開始から短い時間で、許容最大供給量の80%以上とすることで、反応器の差圧の上昇が抑えられ、定常運転時も安定的に継続することができる。また、原料供給開始から短い時間で、許容最大供給量の80%以上とした場合と、比較的長い時間をかけて、許容最大供給量の80%以上とした場合でも、定常運転時における反応成績が同じであることからも、触媒の活性には影響がないことがわかる。
【符号の説明】
【0081】
1 反応器
2 クエンチ塔
3,6,13 冷却器
4,7,14 ドレンポット
8A,8B 脱水器
9 加熱器
10 溶媒吸収塔
11 脱気塔
12 溶媒分離塔
21a、21b 反応管
22 反応器シェル
23a 原料供給口
23b 生成物排出口
24a、24b 管板
25a、25b 穴あき邪魔板
26a 熱媒体供給口
26b 熱媒体抜出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素原子数4以上のモノオレフィンを含む原料ガスと、分子状酸素含有ガスとを、反応器に供給し、触媒の存在下、酸化脱水素反応により対応する共役ジエンを生成するにあたり、反応のスタートアップに際して、原料ガスの反応器への供給開始から100時間未満の間に、反応器への原料ガスの単位時間当たりの供給量を、許容最大供給量の80%以上とすることを特徴とする共役ジエンの製造方法。
【請求項2】
前記触媒が、少なくともモリブデン、ビスマス、およびコバルトを含有する複合酸化物触媒であることを特徴とする請求項1に記載の共役ジエンの製造方法。
【請求項3】
前記触媒が、下記一般式(1)で表される複合酸化物触媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の共役ジエンの製造方法。
MoaBibCocNidFeefghSiij (1)
(式中、Xはマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、セリウム(Ce)及びサマリウム(Sm)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Yはナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)及びタリウム(Tl)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素であり、Zはホウ素(B)、リン(P)、砒素(As)及びタングステン(W)からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素である。また、a〜jはそれぞれの元素の原子比を表し、a=12のとき、b=0.5〜7、c=0〜10、d=0〜10(但しc+d=1〜10)、e=0.05〜3、f=0〜2、g=0.04〜2、h=0〜3、i=5〜48の範囲にあり、またjは他の元素の酸化状態を満足させる数値である。)
【請求項4】
前記複合酸化物触媒が、該複合酸化物触媒を構成する各成分元素の供給源化合物を水系内で一体化して加熱する工程を経て製造する方法であって、モリブデン化合物、鉄化合物、ニッケル化合物及びコバルト化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種とシリカとを含む原料化合物水溶液又はこれを乾燥して得た乾燥物を加熱処理して触媒前駆体を製造する前工程と、該触媒前駆体、モリブデン化合物及びビスマス化合物を水性溶媒とともに一体化し、乾燥、焼成する後工程とを有する方法で製造されたものであることを特徴とする請求項3に記載の共役ジエンの製造方法。
【請求項5】
前記原料ガスが、エチレンの2量化により得られる1−ブテン、シス−2−ブテン、トランス−2−ブテン若しくはこれらの混合物を含有するガス、n−ブタンの脱水素若しくは酸化脱水素反応により生成するブテン留分を含むガス、又は重油留分を流動接触分解する際に得られる炭素原子数が4の炭化水素を多く含むガスであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の共役ジエンの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−280653(P2010−280653A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90395(P2010−90395)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】