説明

共役リノール酸組成物

【課題】食品、栄養補助食品、飼料等に使用できる酸価の高い、また、トランス−トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含有しない共役リノール酸の製造方法の提供。
【解決手段】ベニバナ油、ヒマワリ油、トウモロコシ油のようなリノール酸エステルを含む組成物をアルコラート触媒で処理して共役リノール酸エステル組成物を生成させた後、アルカリで鹸化し共役脂肪酸組成物を生成させ、その後、緩和酸(mild acid)洗浄により処理して遊離共役脂肪酸組成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、共役リノール酸の製造に関し、特に、共役リノール酸を含む飼料および食品に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
1978年にウィスコンシン大学の研究者らは、調理された牛肉に含まれ、突然変異誘発を抑制するように思われる物質の実体を明らかにした。この物質は、共役二重結合を有するリノール酸(C18:2)の複数の位置異性体(positional isomer)の混合物であることが判明した。c9,t11異性体およびt10,c12異性体が最も多く存在するが、どの異性体が観察された生物活性の原因であるかは不明である。標識取り込み試験により、9,11異性体が動物組織のリン脂質画分に幾分優先的に取り込まれて組み込まれ、それよりも10,12異性体は程度が落ちることが確認されている(Haら、Cancer Res., 50: 1097 [1990](非特許文献1))。
【0003】
共役リノール酸(CLAと呼ぶ)に付随してみられる生物活性は多様かつ複雑である。現在はその作用機序に関してはほとんどわかっていないが、進行中のいくつかの前臨床試験および臨床試験により、生理学的および生化学的な作用様式に対して新たな光が当てられる可能性が高い。CLAの抗発癌性は文献的に十分に立証されている。Birtら、Cancer Res., 52: 2035s [1992](非特許文献2)によって示されているように、CLAの投与はラット乳腺腫瘍の形成を抑制する。Haら、Cancer Res., 50: 1097 [1990](非特許文献1)は、マウス前胃新形成(forestomach neoplasia)モデルで同様の結果を報告している。CLAはインビトロで標的のヒト黒色腫細胞、結腸癌細胞、および乳癌細胞に対する強力な細胞毒性物質としても同定されている。最近の主な総説論文では、個々の研究から導かれた結論の妥当性を認めている(Ip, Am. J. Clin. Nutr., 66(6Supp): 1523s [1997](非特許文献3))。
【0004】
CLAの作用機序は未だに明確ではないが、少なくともインビボでは、免疫系の何らかの要素が関係しているという証拠が得られている。参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,585,400号(特許文献1)(Cookら)は、CLAを含む食事を与えることによる、動物におけるI型過敏性反応またはTgE過敏性反応により媒介されるアレルギー反応を減弱させるための方法を開示している。CLAは濃度約0.1%〜1.0%では白血球を保存する際の有効な補助物質となることも示されている。米国特許第5,674,901号(特許文献2)(Cookら、これは参照として本明細書に組み入れられる)は、遊離酸または塩の形態にあるCLAの経口投与または非経口的投与が、細胞性免疫に付随するCD-4およびCD-8リンパ球サブポピュレーションの増加をもたらすことを開示している。外因性腫瘍壊死因子の前処理によって生じる有害作用は、CLAを投与する動物におけるCD-4細胞およびCD-8細胞のレベルの上昇または維持によって間接的に軽減しうると考えられる。さらに、参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,430,066号(特許文献3)は、免疫刺激によって体重減少および食欲不振を防ぐCLAの効果を記載している。
【0005】
以上に示したようなCLAの治療的および薬理学的な利用に加えて、CLAを栄養補助食品として栄養学的に用いることに関しても大きな反響がある。CLAは身体組成に対して大きな全身的影響を及ぼすこと、特に脂肪量および除脂肪組織量の配分を変更させることが明らかになっている。参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,554,646号(特許文献4)(Cookら)は、0.5%CLAを含む食事をブタ、マウスおよびヒトに与えるという、CLAを栄養補助食品として利用する方法を開示している。それぞれの種で、脂肪含有量の有意な減少がタンパク質量の増加とともに観察された。これらの動物では、CLAの添加によって食事の脂肪酸含有量を増加させても体重は増加しなかったが、体内の脂肪および除脂肪組織の再分布がみられたことは興味深い。食事面で興味深いもう1つの現象は、飼料転換に対するCLA補充の効果である。米国特許第5,428,072号(特許文献5)(Cookら、これは参照として本明細書に組み入れられる)は、CLAを動物飼料(鳥類および哺乳動物)に混入することによって飼料転換効率が高まり、CLAを補充した動物の方がより大きい体重増加が得られたことを示すデータを提供している。食用動物飼育者にとってCLA補充に有益な効果がある可能性は明らかである。
【0006】
CLAに対する関心のもう1つの重要な源であり、その早期の商業的な可能性を強く示すものは、それがヒトおよび動物によって摂取される食物および飼料のいずれにも天然に存在するという点である。特にCLAは反芻動物による生産物に多く存在する。例えば、種々の酪農製品におけるCLAを調べた研究がいくつか行われている。Anejaら、J. Dairy Sci., 43: 231 [1990](非特許文献4)は、乳をヨーグルトに加工するとCLAが濃縮されることを観察しており(Shantaら、Food Chem., 47: 257 [1993](非特許文献5))、加工温度の上昇および乳清の添加の併用により、プロセスチーズの製造時にCLA濃度が上昇することを示している。別の研究で、Shantaら、J. Food Sci., 60: 695 [1995](非特許文献6)は、加工および保存の条件はCLA濃度の大きな低下をもたらさないが、何ら上昇も観察されなかったことを報告している。実際に、いくつかの研究では、季節変動または動物間の変動によって牛乳のCLA含有量に3倍もの差が生じうることが示されている(例えば、Parodiら、J. Dairy Sci., 60: 1550 [1977](非特許文献7)を参照)。また、Chinら、J. Food Camp. Anal., 5: 185 [1992](非特許文献8)によって指摘されているように、食事要因もCLA含有量の変動と関連付けられている。天然の源におけるCLA含有量のこのような変動のため、各種の食品を処方された量だけ摂取しても、その個人または動物が所望の栄養上の効果を確実に得られる適量を受けることは保証されないと考えられる。
【0007】
リノール酸は生体脂質の重要な成分の一つであり、トリグリセリドおよびリン脂質のかなりの割合を占める。リノール酸は「必須」脂肪酸として知られ、これは動物が自己合成を行えないため、外部の食物源から入手しなければならないことを意味する。CLA型のリノール酸が組み込まれると、非共役リノール酸が移動するはずであった脂質上の位置へのCLAの直接置換が起こる可能性がある。しかし、このことは証明されておらず、有益性は高いが未解明の観察された効果の一部は、脂質構造の内部における、非共役リノール酸が通常であれば移動しないと考えられる部位でのCLAの再配置に起因する可能性もある。動物CLAの源の一つは、特に酪農製品の場合には、まずリノール酸をCLAに異性化し、続いてそれをルーメンの腔内に分泌するという、天然のリノール酸に対するある種のルーメン細菌の生化学的作用によることが現在では明らかになっている。Keplerら、J. Nutrition, 56: 1191 [1966](非特許文献9)は、ルーメン細菌の一種であり、リノール酸の生体水素添加反応における中間体として9,11-CLAの生成を触媒するブチリビブリオ・フィブリソルベンス(Butyrivibrio fibrisolvens)を単離した。Chinら、J. Nutrition, 124: 694 [1994](非特許文献10)はさらに、対応する無菌ラットではCLAが生じなかったことから、齧歯類の組織中に認められたCLAが細菌に付随することを見いだした。
【0008】
治療的な用途および栄養学的な用途の双方を目的とするCLAの確定的な商業用の源の開発においては、規定の材料を大量に製造するための工程が必要である。従来のアプローチによって製造されるほとんどのCLA製品に伴う問題は、その不均質性およびバッチ毎にアイソフォームに大きなばらつきがあることである。動物脂の代わりに大量の硬化油およびショートニングを摂取するとトランス-脂肪酸の含有量の多い食事が得られるという事実に大きな注目が寄せられている。例えば、Holman, et al., PNAS, 88: 4830 [1991](非特許文献11)は、硬化油を与えたラットでは通常と異なる多価不飽和脂肪酸異性体が肝臓に蓄積し、それによって天然に存在する多価不飽和脂肪酸の正常な代謝が妨げられるように思われることを示した。これらの懸念に関しては、Am. J. Public Health, 84: 722 (1974)(非特許文献12)の初期の論説にまとめられている。このため、規定の組成を有し、生物活性を有するCLA製品に対しては高い需要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,585,400号
【特許文献2】米国特許第5,674,901号
【特許文献3】米国特許第5,430,066号
【特許文献4】米国特許第5,554,646号
【特許文献5】米国特許第5,428,072号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Haら、Cancer Res., 50: 1097 [1990]
【非特許文献2】Birtら、Cancer Res., 52: 2035s [1992]
【非特許文献3】Ip, Am. J. Clin. Nutr., 66(6Supp): 1523s [1997]
【非特許文献4】Anejaら、J. Dairy Sci., 43: 231 [1990]
【非特許文献5】Shantaら、Food Chem., 47: 257 [1993]
【非特許文献6】Shantaら、J. Food Sci., 60: 695 [1995]
【非特許文献7】Parodiら、J. Dairy Sci., 60: 1550 [1977]
【非特許文献8】Chinら、J. Food Camp. Anal., 5: 185 [1992]
【非特許文献9】Keplerら、J. Nutrition, 56: 1191 [1966]
【非特許文献10】Chinら、J. Nutrition, 124: 694 [1994]
【非特許文献11】Holman, et al., PNAS, 88: 4830 [1991]
【非特許文献12】Am. J. Public Health, 84: 722 (1974)
【発明の概要】
【0011】
本発明は、共役リノール酸の製造に関し、特に、共役リノール酸を含む飼料および食品に関する。いくつかの態様において、本発明は、酸価の高い共役リノール酸を製造するための方法であって、a)i)リノール酸のエステルを含む組成物、およびii)アルコラート触媒、を提供する段階;b)リノール酸のエステルを含む組成物をアルコラート触媒で処理して、共役リノール酸エステル組成物を生成させる段階;c)共役リノール酸エステル組成物をアルカリで処理して、鹸化された共役リノール酸組成物を生成させる段階;ならびにd)鹸化された共役リノール酸組成物を緩和酸(mild acid)洗浄により処理して遊離共役脂肪酸組成物を生成させる段階、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は約190〜210である。さらに他の態様において、緩和酸洗浄のpHは約5〜7である。さらに別の態様において、段階(d)はさらに、複数の緩和酸洗浄を含む。いくつかの態様において、緩和酸洗浄はクエン酸溶液によって行われる。本発明は、いかなる特定の出発原料油にも限定されない。実際には、リノール酸エステルを含む組成物は、ベニバナ油、ヒマワリ油、およびトウモロコシ油からなる群より選択される油から得られる。本発明は、いかなる特定のアルコラート触媒の使用にも限定されない。実際には、アルコラート触媒は、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、およびカリウムエチラートからなる群より選択される。さらに他の態様において、アルコールはエタノールである。
【0012】
いくつかの態様において、本発明は、前の段落に記載した方法によって製造される共役リノール酸組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、組成物の酸価は約190〜210である。さらに他の態様において、組成物は共役リノール酸のエステルを実質的に含まない。さらに別の態様において、組成物はトランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない。いくつかの態様においては、共役リノール酸組成物を含む食品またはカプセルが提供される。
【0013】
いくつかの態様において、本発明は、酸価の高い共役リノール酸を製造するための方法であって、a)i)リノール酸のエステルを含む組成物、およびii)アルコラート触媒、を提供する段階;b)リノール酸のエステルを含む組成物をアルコラート触媒で処理して共役リノール酸エステル組成物を生成させる段階;c)残留アルコールを含む鹸化された共役リノール酸組成物が生成される条件下で、共役リノール酸エステル組成物をアルカリで処理する段階;d)遊離共役脂肪酸を含む油相および水相が生じる条件下で、鹸化された共役リノール酸組成物に強酸溶液を注入する段階;ならびにe)残留アルコールと共役脂肪酸との間の再エステル化が実質的に防止されるような条件下で、油相および水相を直ちに分離する段階、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は約190〜210である。さらに他の態様において、緩和酸洗浄のpHは約5〜7である。いくつかの態様において、段階(e)における分離は遠心分離によって行われる。さらに別の態様において、強酸溶液のpHは約2〜3である。本発明はいかなる特定の出発原料油にも限定されない。実際には、リノール酸のエステルを含む組成物は、ベニバナ油、ヒマワリ油、およびトウモロコシ油からなる群より選択される油から得られる。本発明は、いかなる特定のアルコラート触媒の使用にも限定されない。実際には、アルコラート触媒は、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、およびカリウムエチラートからなる群より選択される。
【0014】
いくつかの態様において、本発明は、前の段落に記載した方法によって製造される共役リノール酸組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、組成物の酸価は約190〜210である。さらに他の態様において、組成物は共役リノール酸のエステルを実質的に含まない。さらに別の態様において、組成物はトランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない。いくつかの態様においては、共役リノール酸組成物を含む食品またはカプセルが提供される。
【0015】
いくつかの態様において、本発明は、鹸化された共役リノール酸を分解する方法であって、a)i)鹸化された共役リノール酸を含む組成物、およびii)緩和酸溶液、を提供する段階;ならびにb)鹸化された共役リノール酸を含む組成物を緩和酸溶液で処理して、遊離共役リノール酸を含む組成物を生成させる段階、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、本方法はさらに、段階c)遊離共役脂肪酸組成物を生成させるために段階(b)を少なくとも1回繰り返す段階を含む。いくつかの態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は約190〜210である。いくつかの態様において、緩和酸洗浄のpHは約5〜7である。本発明は、いかなる特定の出発原料油にも限定されない。実際には、リノール酸エステルを含む組成物は、ベニバナ油、ヒマワリ油、およびトウモロコシ油からなる群より選択される油から得られる。本発明は、いかなる特定のアルコラート触媒の使用にも限定されない。実際には、アルコラート触媒は、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、およびカリウムエチラートからなる群より選択される。
【0016】
いくつかの態様において、本発明は、前の段落に記載した方法によって製造された共役リノール酸組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、組成物の酸価は約190〜210である。さらに他の態様において、組成物は共役リノール酸のエステルを実質的に含まない。さらに別の態様において、組成物はトランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない。いくつかの態様においては、共役リノール酸組成物を含む食品またはカプセルが提供される。
【0017】
さらに他の態様において、本発明は、鹸化された共役リノール酸を分解する方法であって、a)i)鹸化された共役リノール酸および残留アルコールを含む組成物、およびii)強酸溶液、を提供する段階;b)遊離共役脂肪酸を含む油相および残留エタノールを含む水相が生じるような条件下で、鹸化された共役リノール酸組成物に強酸溶液を注入する段階;ならびにc)残留エタノールと共役脂肪酸との間の再エステル化が実質的に防止されるような条件下で、油相および水相を直ちに分離する段階、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は約190〜210である。いくつかの態様において、強酸溶液のpHは約2〜3である。本発明は、いかなる特定の出発原料油にも限定されない。実際には、リノール酸エステルを含む組成物は、ベニバナ油、ヒマワリ油、およびトウモロコシ油からなる群より選択される油から得られる。本発明は、いかなる特定のアルコラート触媒の使用にも限定されない。実際には、アルコラート触媒は、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、およびカリウムエチラートからなる群より選択される。
【0018】
いくつかの態様において、本発明は、前の段落に記載した方法によって製造される共役リノール酸組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、組成物の酸価は約190〜210である。さらに他の態様において、組成物は共役リノール酸のエステルを実質的に含まない。さらに別の態様において、さらに別の態様において、組成物はトランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない。いくつかの態様においては、共役リノール酸組成物を含む食品またはカプセルが提供される。
【0019】
いくつかの態様において、本発明は、酸価の高い共役リノール酸を製造するための方法であって、a)i)リノール酸のエステルを含む組成物、およびii)アルコラート触媒、を提供する段階;b)リノール酸のエステルを含む組成物をアルコラート触媒で処理して、共役リノール酸エステル組成物を生成させる段階;c)共役リノール酸エステル組成物をアルカリで処理して、残留アルコールを含む鹸化された共役リノール酸組成物を生成させる段階;d)鹸化された共役リノール酸組成物からエタノールを除去する段階;ならびにe)鹸化された共役リノール酸組成物を酸溶液で処理して、遊離共役脂肪酸組成物を生成させる段階、を含む方法を提供する。いくつかの態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、遊離共役リノール酸組成物の酸価は約190〜210である。いくつかの態様において、強酸溶液のpHは約2〜3である。本発明は、いかなる特定の出発原料油にも限定されない。実際には、リノール酸エステルを含む組成物は、ベニバナ油、ヒマワリ油およびトウモロコシ油からなる群より選択される油から得られる。本発明は、いかなる特定のアルコラート触媒の使用にも限定されない。実際には、アルコラート触媒は、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラートおよびカリウムエチラートからなる群より選択される。
【0020】
いくつかの態様において、本発明は、前の段落に記載した方法によって製造される共役リノール酸組成物を提供する。いくつかの態様において、組成物の酸価は190を上回る。また別の態様において、組成物の酸価は約190〜210である。さらに他の態様において、組成物は共役リノール酸のエステルを実質的に含まない。さらに別の態様において、組成物はトランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない。いくつかの態様においては、共役リノール酸組成物を含む食品またはカプセルが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
定義
本明細書で用いる場合、「共役リノール酸」または「CLA」とは、任意の共役リノール酸またはオクタデカジエン遊離脂肪酸のことを指す。この用語は、分子内のいずれかの位置に共役した2つの炭素-炭素二重結合を有する、リノール酸のすべての位置異性体および幾何異性体を含むとともにそれらを示すことを意図している。通常のリノール酸は炭素原子9および12に二重結合がある点で、CLAは通常のリノール酸とは異なる。CLAの例には、以下の位置異性体のシス異性体およびトランス型異性体(「E/Z異性体」)が含まれる:2,4-オクタデカジエン酸、4,6-オクタデカジエン酸、6,8オクタデカジエン酸、7,9-オクタデカジエン酸、8,10オクタデカジエン酸、9,11オクタデカジエン酸および10,12オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸。本明細書で用いる場合、「CLA」には、単一の異性体、2種類またはそれ以上の異性体の選択的混合物、および天然の源から得られた異性体の非選択的混合物、さらには合成性および半合成性のCLAが含まれる。
【0022】
本明細書で用いる場合、「異性化された共役リノール酸」という用語は、化学的方法(例えば、水性環境でのアルカリ異性化、非水性環境でのアルカリ異性化、またはアルカリアルコラート異性化)によって合成されたCLAのことを指す。
【0023】
本明細書で用いる場合、「共役リノール酸成分」という用語は、共役リノール酸または誘導体を含む、任意の1つまたは複数の化合物のことを指す。その例には、共役リノール酸の脂肪酸、アルキルエステル、およびトリグリセリドが非制限的に含まれる。
【0024】
本明細書で用いる場合、CLAの「トリグリセリド」は、CLAをトリグリセリド骨格の3つの位置(例えば、SN-1、SN-2またはSN-3の位置)の任意の位置またはすべての位置に含むことを意図している。したがって、CLAを含むトリグリセリドは、CLAの位置異性体および幾何異性体のうち任意のものを含みうる。
【0025】
本明細書で用いる場合、CLAの「エステル」には、生理的に許容される天然に存在するアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール)を非制限的に含む、アルコールまたは任意の他の化学基とエステル結合によって結合した、CLAの任意の、またはすべての位置異性体および幾何異性体が含まれることを意図している。したがって、CLAのエステルまたはエステル型CLAは、CLAの位置異性体および幾何異性体のうち任意のものを含みうる。
【0026】
CLAの「天然由来ではない異性体」には、オクタデカジエン酸のc11,t13;t11,c13;t11,t13;c11,c13;c8,t10;t8,c10;t8,t10;c8,c10異性体;およびトランス-トランス型異性体は含まれるが、オクタデカジエン酸のt10,c12およびc9,t11異性体は含まれないものとする。これらの異性体はCLAをアルカリ異性化によって合成した時に一般に少量生成されるため、「天然由来ではない異性体」をCLAの「微量異性体」と呼んでもよい。
【0027】
本明細書で用いる場合、「低純度」CLAとは、8,10オクタデカジエン酸、11,13オクタデカジエン酸、およびトランス-トランス型オクタデカジエン酸の含有率が合計1%未満である遊離脂肪酸、アルキルエステル、およびトリグリセリドを含む、CLA組成物のことを指す。
【0028】
本明細書で用いる場合、「c」はシス配向性の化学結合を包括的に含み、「t」はトランス配向性の化学結合のことを指す。CLAの位置異性体が「c」または「t」を伴わずに指定されているならば、その指定は考えられる4つの異性体すべてを含む。例えば、10,12オクタデカジエン酸にはc10,t12;t10,c12;t10,t12;およびc10,c12オクタデカジエン酸が含まれ、t10,c12オクタデカジエン酸またはCLAは、単一の異性体のみを指す。
【0029】
本明細書で用いる場合、「油」という用語は、長鎖脂肪酸(例えば、CLA)、トリグリセリド、またはその他の長鎖炭化水素基を含む、流動性の液体のことを指す。長鎖脂肪酸にはCLAの種々の異性体が非制限的に含まれる。
【0030】
本明細書で用いる場合、「生理的に許容される担体」という用語は、油性医薬品に一般に用いられる任意の担体または添加剤のことを指す。このような担体または添加剤には、油、デンプン、スクロース、およびラクトースが非制限的に含まれる。
【0031】
本明細書で用いる場合、「経口送達用媒体」という用語は、カプセル剤、丸剤、錠剤、およびシロップ剤を非制限的に含む、医薬品を経口的に送達するための任意の手段のことを指す。
【0032】
本明細書で用いる場合、「食品」という用語は、ヒト、非反芻動物、または反芻動物による摂取のために適した任意の食物または飼料のことを指す。「食品」は、加工されて包装された食品(例えば、マヨネーズ、サラダドレッシング、パン、またはチーズ食品)、または動物飼料(例えば、押出成形およびペレット化がなされた動物飼料または粗混合飼料)でもよい。「加工食品」とは、ヒトの摂取が承認されている包装済みの任意の食品のことを意味する。
【0033】
本明細書で用いる場合、「食品材料」という用語は、ヒトまたは動物の摂取に対する適合性のある任意の物質のことを指す。
【0034】
本明細書で用いる場合、「揮発性有機化合物」という用語は、所定の温度で部分的または完全にガス状態として存在する任意の炭素含有化合物のことを指す。揮発性有機化合物を、有機化合物(例えば、CLA)の酸化によって生成してもよい。揮発性有機化合物には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2-ブテナール、エタノール、3-メチルブタナール、4-メチルペンタノン、ヘキサナール、ヘプタナール、2-ペンチルフラン、オクタナールが非制限的に含まれる。
【0035】
本明細書で用いる場合、「金属酸化体キレート剤(metal oxidant chelator)」という用語は、金属をキレート化する任意の抗酸化剤のことを指す。その例には、レシチンおよびクエン酸エステルが非制限的に含まれる。
【0036】
本明細書で用いる場合、「アルコラート触媒」という用語は、カリウムメチラートおよびカリウムエチラートを非制限的に含む、任意の一価アルコールのアルカリ金属化合物のことを指す。
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の組成物は、高度に制御された異性化工程、および好ましい出発原料油であるヒマワリ油、ベニバナ油またはトウモロコシ油によって得られる。この組成物はこれまで産業規模への適用を目的としては得られておらず、その理由は、従来の工程では歴史上、共役リノール酸を全く異なる目的に、すなわち塗料産業における乾性油として製造していたためである。また、脂肪酸の特性分析のための分析方法が幅広く用いられてはいなかったため、最終生成物の異性体含量の意味も認識されていなかった。さらに、本発明は、保存中にCLAが酸化して揮発性有機化合物を形成するのを防止するための方法も提供する。
【0038】
I.リノール酸の共役化のための方法
以前の異性化工程では(そのいくつかはより今日的な形式で未だに用いられている)、共役脂肪酸の生成は水性アルカリ(一般にNaOH)中にて、200℃を超える高温で、通常は過圧下で行われてきた。例えば、米国特許第2,350,583号(Bradley)は、共役化および重合の両方が200〜250℃で数時間というかなり厳しい条件下で起こる、加工石鹸を用いる水性アルカリ工程を開示している。アマニ油を出発原料とする乾性油の画分が蒸留によって得られている(極めて類似した工程である英国特許第558,881号も参照されたい)。この工程の変法として、米国特許第4,381,264号は、種々の多価不飽和脂肪酸の二重結合の共役化を目的とする、低含水率の反応区画(水0.5%)がSO2の存在下で化学量論量の塩基を含む工程を教示している。この水性アルカリ工程は、米国特許第4,164,505号において、アルカリ金属水酸化物および水を200〜370℃の間に維持されたフローゾーンに連続的に投入する連続フロー工程に転用されている。これらの温度では、反応時間は大きく短縮されるはずであるが、異性化に対する制御は相対的に低くなる。この温度範囲の上端では、ほぼ完全にダブル-トランス(double trans)分子種への変換が起こることを当業者は予想するであろう。
【0039】
文献には、さまざまな非水性溶媒および触媒を用いてCLAを製造する方法が記載されている。Burr(米国特許第2,242,230号)は、メタノール、ブタノール、エタノール、およびグリコールなどの溶媒と種々の触媒との併用を開示している。これらの反応パラメーターを表1にまとめた。グリコールを除き、これらの反応は環流条件下または密封管内で行われている。これらの反応条件は、重要な反応パラメーターのうち2つ、すなわち温度および圧力の制御に不正確性を生じさせている。これらの反応パラメーターの制御が不正確であることは、不完全な共役化および望ましくない異性体の形成を招く可能性が高い。
【0040】
(表1)特許第2,242,230号

【0041】
同様に、Baltesら(米国特許第3,162,658号)は、非水性溶媒、および脂肪酸の共役化のための触媒としての種々の金属性塩基の使用を開示している。Baltesらにより記載された方法の種々の反応パラメーターを表2にまとめた。Baltesらはまた、種々の低沸点溶媒の使用も開示している。これらの反応の大部分は用いた溶媒の沸点を上回る温度で行われているため、反応が加圧下で行われたことは明らかであり、これはオクタデカジエン酸異性体の形成に影響を及ぼす独立した因子である。このため、これらの反応によって得られた生成物は望ましくない異性体を含むと考えられる。
【0042】
(表2)特許第3,162,658号

【0043】
II.アルコラート触媒を用いた異性化
本発明のCLAは、8,10異性体、11,13異性体および種々のトランス-トランス型異性体などの異性体を著しい量としては含まない。これらの組成物は、図1の流れ図に示された厳密に制御された非水性アルカリ異性化工程、およびアルカリアルコラート触媒を用いた異性化により、製造された。
【0044】
好ましい態様においては、ヒマワリ油、ベニバナ油、またはトウモロコシ油から得られたリノール酸エステルを、アルカリアルコラート触媒および少量の適した溶媒(例えば、メタノールまたはエタノール)の存在下で反応させる。すなわち、本発明は、CLAのアルキルエステルを製造するための方法を提供する。種子油の脂肪分解および脱水の後に、遊離脂肪酸をメタノールまたは別の一価低分子量アルコールと混合し、アルコールが沸騰する温度に加熱する。エステル化は、反応水をコンデンサーを用いて除去する環流条件下で進行させる。種子油を過剰量のアルコールおよびアルカリアルコラート触媒とともに、攪拌しながら65〜78℃で2時間環流させる。相を分離した後に、グリセロールおよび余剰アルコールを含む底層をデカントする。続いて、エステル化をさらに完了させるために、より少量のアルコールおよびアルカリアルコラート触媒を用いてエステル化工程を繰り返すことができる。続いてエステルを、クエン酸を溶かした熱水で洗浄し、減圧下で乾燥させる。好ましい態様においては、グリセロールの除去およびトリメトキシプロパンの形成防止のために、エステルを共役化の前に蒸留する。したがって、本発明の共役リノール酸組成物はトリメトキシプロパンを実質的に含まない。トリメトキシプロパンを実質的に含まないとは、最終生成物がトリメトキシプロパンを0.5%未満、より好ましくはトリメトキシプロパンを0.1%未満、最も好ましくはトリメトキシプロパンを0.05%未満しか含まないことを意味する。
【0045】
エステル化にはメタノールまたはエタノールが好ましいが、他の分枝鎖型または直鎖型の一価アルコールを用いてもよい。脂肪鎖のアルキル基が長いほど、材料はより脂質融和性になる。また、粘度も高くなる傾向がある。コンシステンシーの異なるさまざまな種類の飼料または食品を目的として、さまざまな粘度の生成物を、そのCLA成分に起因する治療上または栄養上の性質に影響を及ぼさずに、所望の流動特性または配合特性を得るために用いることができる。エステル化の理論および実践は従来からのものである。最も一般的な方法の基本的な説明は、McCraw-Hill Encyclopedia of Science & Technology, McGraw-Hill Book Co., N.Y.: 1996(5th ed.)に記載されている。動物およびヒトの体内にはさまざまなエステラーゼがあるため、CLA-エステルが分解されて遊離脂肪酸が容易に放出される。組織への取込みは、関係する組織および求める利益に応じて異なる動態を有することがある。
【0046】
上記のように、アルコラート触媒を用いる共役化のための好ましい出発材料は、ヒマワリ油、ベニバナ油、およびトウモロコシ油、またはリノール酸含有率の高い他の油から得られたリノール酸のエステルである。油のリノレン酸含有レベルは低いことが好ましい。リノレン酸の共役化は、生物学的性質が知られていない特性不明のいくつかの脂肪酸成分の形成をもたらす。従来の共役化工程は、生成物を乾性油、塗料、およびワニスに用いており、ヒトまたは動物が消費する生成物としては用いていなかったため、未知の化合物の生成に関しては懸念していなかった。このため、リノレン酸を高レベルに含む油を用いる工程によって製造されたCLAは栄養上の用途には適していなかった。
【0047】
いくつかの態様においては、さらに、脂肪酸のモノエステルを製造する前に、グリセロールおよびグリセロールのエステルを除去すべきと考えられる。共役化の過程に微量のグリセロールが存在すると、トリメトキシプロパンおよびトリエトキシプロパンの生成をもたらす。このため、共役化の前に、アルコール分解によって得られたモノエステルを蒸留することが好ましい。
【0048】
好ましい態様において、異性化は、リノール酸エステルを大量の一価アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールまたはブタノール)およびアルコラート触媒と反応させることによって行われる(例えば、米国特許第3,162,658号を参照されたい。これは参照として本明細書に組み入れられる)。典型的なアルコラート触媒は、ナトリウムエトキシドもしくはカリウムエトキシド、またはそれらのメチル、ブチルもしくはプロピル相当物である(例えば、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラートおよびカリウムエチラート)。いくつかの態様において、アルコラート触媒およびアルコールと脂肪酸エステルとの比は重量/重量比で約2〜5%であり、好ましくは、アルコラート触媒およびアルコールと脂肪酸エステルとの比は重量/重量比で約2.8%である。例えば、ベニバナ脂肪酸エステル100kgをカリウムエトキシド2.8kgおよびエタノール2.8kgと混合する。いくつかの態様においては、この結果得られた反応混合物を約2〜10時間、最も好ましくは約5時間にわたり、100〜130℃で、最も好ましくは約111〜115℃で攪拌する。いくつかの好ましい態様において、反応は密閉反応容器内で窒素中にて行われる。この異性化反応により、共役リノール酸アルキルエステルが生成される。
【0049】
いくつかの好ましい態様において、共役リノール酸アルキルエステルは遊離脂肪酸(すなわち、遊離共役脂肪酸)に変換される。これは好ましくは、まず共役リノール酸アルキルエステルを鹸化して共役リノール酸の石鹸を生成させた後、酸の添加によって石鹸を分解することによって行われる。いくつかの態様において、鹸化は共役リノール酸のアルキルエステルを適切な塩基と反応させることによって行われる。本発明はいかなる特定の塩基の使用にも限定されない。実際には、NaOHおよびKOHを非制限的に含む、種々の塩基を用いることができる。同様に、本発明はいかなる特定の酸の使用にも限定されない。実際には、HCl、クエン酸および酢酸を含む、種々の酸を用いることができる。
【0050】
本発明者らは、予想外のことに、共役アルキルエステルから遊離脂肪酸を生成させるための鹸化およびそれに続く酸の添加の際に、逆反応が起こることを見いだした。ある種の状況においては、アルキルエステルの鹸化によって生じた残留量のアルコール(例えば、メタノールまたはエタノール)が酸性条件下で遊離脂肪酸と反応して、CLAのエステル(例えば、エチルエステルまたはメチルエステル)が生成される。この結果、許容されないほど低い酸価の最終生成物が生じる。強酸を触媒として用いれば、エステル化が遊離脂肪酸とアルコールとの間に起こることは当業者には周知である。しかし、エタノールの含有率が低いことを考慮に入れて、エステル化が起こることは予想していなかった。その理由はおそらく、酸性水の添加によって、予想されたほどにはエタノールが遊離脂肪酸から除去されなかったためであると思われる。CLAはおそらく、二重結合領域の極性のため、他の脂肪酸よりもエタノールに溶解しやすいと考えられる。
【0051】
本発明は、本明細書に開示したアルコラート触媒による異性化を用いるCLA製造法に数回の緩和酸洗浄段階を加えることは、CLAのバッチ製造に特に有用であることを企図する。本発明の好ましい態様は、異性化段階および鹸化段階の後に、反応混合物から残留エタノールを確実に除去する目的で、複数回(例えば、1回、2回、3回またはそれ以上)の緩和酸洗浄を用いることにより、アルコラート触媒による異性化の際のCLAのエステル(例えば、メチルエステルまたはエチルエステル)の予想外の蓄積を克服する。残留量のエタノールの除去により、CLAのエチルエステル誘導体を生成するエステル化反応は防止されると考えられる。鹸化CLAの緩和酸洗浄時の反応混合物のpHは約5〜7に保たれることが好ましい。緩和酸洗浄段階に用いるのに適した酸には、クエン酸一水和物、クエン酸または有機穏和酸(酢酸など)が非制限的に含まれる。酸を溶媒(例えば、水)と混合して、pHが約5〜7の洗浄溶液を作製する。
【0052】
実施例2および3は、上記の緩和酸洗浄段階に関係した例示的な態様を示している。詳細には、実施例2は、アルコラート触媒異性化方法のある種の態様におけるバッチ規模製造レベルでのエチルエステル生成の問題を記載している。実施例3は、バッチ規模製造レベルでのアルコラート触媒製造方法における異性化段階および鹸化段階の後の緩和酸洗浄段階の追加を記載している。
【0053】
いくつかの態様において、石鹸分解のためにバッチ工程の代わりにインライン工程を用いることもできる。これらの態様においては、希酸溶液(好ましくはpHが約2〜3)の添加のために、CLA石鹸の流れをバッチ反応器からインライン反応槽に送る。CLA石鹸を遊離脂肪酸に分解するために高速混合機を用いる。石鹸が少量であればエマルションの形成を促進させうると考えられる。このため、希酸との高速混合に加えて、温度を好ましくは約80〜90℃に維持すべきである。酸添加した反応槽から、油および水相を含む流れを直ちに(例えば、酸添加から約20秒以内に)遠心分離機に送り、そこで油と水を分離する。油はこの段階では、水相における油の損失を最小限に抑えるために少量の水を含むことが好ましい。この段階での温度は、石鹸の迅速かつ完全な分解を促進し、エマルションの問題を最小限に抑えるために依然として約80〜90℃に維持すべきである。
【0054】
他の代替的な態様において、鹸化されたCLAを酵素的に加水分解することもできる。好ましい酵素には、Novozym 435、および、トリアシルグリセロール合成または加水分解に関して非特異的な(すなわち、グリセロールのすべてのヒドロキシ基(sn-1、sn-2およびsn-3)をエステル化/加水分解する)任意の他の酵素が非制限的に含まれる。なお別の代替的な態様において、再エステル化反応は、酸による処理の前に残留エタノールを除去することによって実質的に防止される。好ましい態様において、エタノールは石鹸から陰圧吸引によって除去される。
【0055】
上記の工程によって得られた組成物は、残留石鹸および二量体の存在のために幾分黄色を帯びていることがある。したがって、いくつかの好ましい態様においては、結果として得られた共役脂肪酸組成物を、不純物を除去するために蒸留する。好ましい態様において、最終生成物は本質的には無色であり、二量体および石鹸などの混入物を実質的に含まない。好ましい態様において、共役脂肪酸組成物は、石鹸を10ppm未満しか含まない、および/または共役脂肪酸の含有率に比して重量/重量比で二量体を0.1%未満しか含まない。好ましい態様において、上記の方法によって製造された最終CLA組成物の酸価は190を上回り、好ましくは約190〜210の範囲である。さらに、最終生成物はCLAのエステルを実質的に含まない。実質的に含まないとは、エチルエステルCLAの濃度がモル換算で遊離共役リノール酸の濃度の約1.0%未満しか含まないこと、好ましくはモル換算で遊離共役リノール酸の濃度の0.5%未満しか含まないことを意味する。好ましい態様において、結果として得られる組成物は、トランス-トランス型脂肪酸を他の脂肪酸に比してモル換算で1.0%未満しか含まず、好ましくはトランス-トランス型脂肪酸を他の脂肪酸に比してモル換算で0.5%未満しか含まない。
【0056】
これらの方法によって製造される遊離共役リノール酸は、さまざまな用途に適している。例えば、以下により詳細に説明するように、CLAを栄養補助食品として用いること、食品中に混入すること、または経口送達用に配合することができる。また、CLAを、アシルグリセロール、好ましくはトリアシルグリセロールのジアシルグリセロールの製造のため、経口投与のため、または食品もしくは粉末への混入のために利用することもできる。
【0057】
III.CLA化合物の安定化
本発明はまた、化合物の酸価を防止することによる、CLA、CLAのエステルおよびCLAのトリグリセリドを非制限的に含むCLA含有化合物の安定化も想定している。本発明はいかなる1つの機序にも限定されない。実際には、本発明の機序の理解は、本発明の組成物の製造のため、または本発明の方法を実施するために必ずしも必要ではない。しかしながら、非共役脂肪酸とは異なり、CLAは過酸化物分解産物を形成するとは思われない。このことは、クロリメトリック(chlorimetric)チオシアン酸第二鉄法によって過酸化物の値(PV)を分光光学的に測定することにより、実験的に示された。開口ガラス容器内で保管した後のCLAのPVは32であった。これに対してリノール酸での値は370であった。
【0058】
CLAは分解時にヘキサンを含む揮発性有機化合物を形成する。ドラム缶の中で数週間保存した生成物はヘキサンを最大25ppm含むことが明らかになっている。ヘキサンには、食品においては望ましくない特徴的な味および臭いがある。CLAの酸化は金属性混入物の存在によって引き起こされるように思われる。このため、精製時に酸化を促進するこのような化合物の除去のためのシステムが有益である。
【0059】
さらに、保存中の酸化を低下させる化合物をCLA調製物に添加することも有益である。酸化を防止する化合物(抗酸化物質)には一般に2種類の作用機序がある。第1のものは脂質過酸化物ラジカルの捕捉による酸化の防止である。この例にはトコフェロールおよびアスコルビン酸パルミテートが非制限的に含まれる。酸化を防止するための第2の機序は金属イオンのキレート化による。金属酸化体キレート剤の例には、クエン酸エステルおよびレシチンが非制限的に含まれる。いくつかの市販の化合物(例えば、Controx, Grunau(Henkel), Illertissen, DE)は、過酸化物捕捉剤および金属キレート剤の両方を含む(例えば、レシチン、トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、およびクエン酸エステル)。本発明のいくつかの態様においては、金属酸化体キレート剤を、酸化を防ぐためにCLA含有化合物に添加する。また別の態様において、金属酸化体キレート剤および過酸化物捕捉剤の配合物をCLA組成物に含める。
【0060】
いくつかの態様においては、ガスクロマトグラフィー/質量分析法を、CLAの揮発性有機性分解産物の存在の検出に用いる。また別の態様においては、油安定性指数(oil stability index)(OSI)の測定を、CLAの揮発性有機性分解産物の存在を検出するために用いる。本発明のいくつかの態様においては、CLA試料から酸化促進剤(例えば、鉄)を除去するための方法が提供される。これらの方法には、蒸留または吸着によるものが非制限的に含まれる。本発明のいくつかの態様においては、CLAの酸化を防ぐために化合物を添加する。揮発性有機化合物の例には、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2-ブテナール、エタノール、3-メチルブタナール、4-メチルペンタノン、ヘキサナール、ヘプタナール、2-ペンチルフランおよびオクタナールが非制限的に含まれる。出発材料および厳密な反応条件によっては試料がそのほかの揮発性有機化合物を含んでもよいことを当業者は理解している。
【0061】
好ましい態様においては、保存中の酸化を防止するために精製時に対策を講じる。これらの対策には、鉄または他の金属を非制限的に含む、酸化促進剤として作用する化合物の除去が含まれる。いくつかの態様において、金属は、漂白土、活性炭ゼオライト、およびシリカを非制限的に含む吸着剤で処理することによって除去される。また別の態様において、酸化促進剤は蒸留によって除去される。いくつかの態様においては、シリカを吸着剤として用いる。また別の態様において、酸化促進剤は蒸留工程で除去される。いくつかの態様において、CLAの酸化は金属酸化体キレート剤または過酸化物捕捉剤を最終生成物に添加することによって防止される。いくつかの態様において、酸化の量は油安定性指数(OSI)によって測定される。OSI(例えば、AOCSの公式な方法、Cd 12b-92を参照)は、油の酸化に対する抵抗性に関する測定値である。これは酸加速度が最大に変化する時点として数学的に定義される。この速度は数学的に決定することができる。実験的には、OSIは、揮発性有機酸(酸化産物)を溶解した脱イオン水の導電性の変化を測定することによって算出される。OSI測定を行う場合には、酸化過程を加速する恐れのある微量金属の混入を避けることが重要である。これは一般に、用いるすべてのガラス器具を、クロム酸および界面活性剤を含まない洗浄溶液で注意深く洗浄することによって行われる。水は脱イオン化されていなければならず、すべての溶媒は高純度グレードのものでなければならない。
【0062】
IV.CLA含有化合物の投与
本発明の共役リノール成分はさまざまな形態で提供することができる。いくつかの態様において、投与は経口的である。CLA成分を、デンプン、スクロースまたはラクトースなどの適した担体とともに、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、溶液、液体、スラリー、懸濁液および乳濁液として製剤化することができる。好ましくは、CLA製剤は、Controx、Covi-OX、レシチンおよび油溶性型ビタミンC(アスコルビン酸パルミテート)を非制限的に含む抗酸化剤を含む。CLAは水溶液、油性溶液または以上に考察した他の形態のいずれかとして提供しうる。本発明の錠剤またはカプセル剤に、pH約6.0〜7.0で溶解する腸溶コーティングを施してもよい。小腸内では溶解するが胃内では溶解しない適した腸溶コーティングには、酢酸フタル酸セルロースがある。いくつかの態様において、CLAは約750mgのCLAを含む軟ゼラチンカプセルとして提供される。また、CLAを、静脈内、筋肉内、動脈内、髄内、髄腔内、脳室内、経皮的、皮下、腹腔内、鼻内、腸内、局所外用、舌下または直腸内手段を非制限的に含む、他の任意のさまざまな経路によって提供してもよい。製剤化および投与のための技法ならびに投与に関するこれ以上の詳細は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Maack Publishing Co., Easton, PA)の最新版に記載されている。
【0063】
有効量のCLA成分(遊離脂肪酸、アルキルエステルまたはアシルグリセロールの形態にある)を、動物飼料および飲料を含む、さまざまな食品中の補給物として提供することもできる。この用途に関して、CLAを含む食品とは、外因性CLAが添加された任意の天然食品、加工食品、ダイエット食品または非ダイエット食品のことを意味する。CLA粉末を、ダイエット飲料、ダイエットバー(diet bar)、栄養補助食品、加工冷凍された肉、キャンディー、スナック製品(例えば、チップス)、加工肉製品、ミルク、チーズ、ヨーグルト、および、脂肪または油を含む任意の他の食品を非制限的に含む、さまざまな食品に直接混入してもよい。アルカリアルコラート触媒により生成されたアルキルエステルまたは共役リノール酸成分が配合された食品は、用いた溶媒および触媒によってはアルコール(例えば、メチルアルコールまたはエチルアルコール)を含む。一般に、アルコールは約1〜10ppm存在する。
【0064】
さらに、上記および実施例に示しているように、CLA組成物は、CLAを含む食品の味およびにおいに有害な影響を及ぼすレベルの揮発性有機化合物を含む可能性がある。揮発性有機化合物を100ppm未満、好ましくは揮発性有機化合物を5ppm未満しか有しないCLA組成物を含む本発明の食品は、より高レベルの揮発性有機化合物を含む食品よりも味およびにおいの点で優れると考えており、盲検下での味およびにおいの試験でも好まれると考えられる。したがって、本発明のいくつかの態様は、共役リノール酸成分を含む食品であって、共役リノール酸成分の揮発性有機酸化合物濃度が十分に低く、そのため食品の味およびにおいが影響を受けないような食品を提供する。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明のいくつかの好ましい態様および局面を示し、さらに例示するために提供されるものであり、その範囲を限定するものとみなされるべきではない。
【0066】
以下の実施例の開示においては以下の略号を用いる:M(モル濃度);mM(ミリモル濃度);μM(マイクロモル濃度);kg(キログラム);g(グラム);mg(ミリグラム);μg(マイクログラム);ng(ナノグラム);Lまたはl(リットル);ml(ミリリットル);μl(マイクロリットル);cm(センチメートル);mm(ミリメートル);nm(ナノメートル);℃(摂氏温度);KOH(水酸化カリウム);HCL(塩酸);Hg(水銀)。
【0067】
実施例1
共役ベニバナFAMEの大規模バッチ製造
ベニバナ共役FAMEの製造は、メタノリシスおよび共役化という2つの段階に分けることができる。メタノリシスを目的として、ベニバナ油6,000kgを密閉反応器に投入した。反応器に大気圧の窒素をパージし、メタノール1150リットルおよびNaOCH 160kg(30%溶液)を添加した。混合物を攪拌しながら65℃に加熱し、65℃で2時間反応させた。反応器に窒素ガスをパージしながら、この結果生じた最下層をデカントした。続いて、水1000リットル(40〜50℃、これにはクエン酸一水和物50kgが溶解されている)を攪拌しながら添加した。層を分離させ(約60min.)、反応器に窒素ガスをパージしながら最下層をデカントした。この結果生じたベニバナFAME生成物を真空下にて80℃で1時間乾燥させた。エチルエステルの製造にも同様の手順を用いることができる(実施例4参照)。
【0068】
実施例2
低pH洗浄を用いるバッチ製造法
本実施例では、酸価が予想外に低い最終生成物が得られるバッチ規模製造法について述べる。CLAのエチルエステル35kgを、350lの反応容器内で、水14.5kg中に溶解したKOH 9.8kgを用いて鹸化した。温度を75℃に1時間保った。発熱性鹸化反応に起因する温度のわずかな上昇時における石鹸形成を防ぐために、軽い過剰圧(0.2bar)を加えた。反応が完了した後に、高粘性の混合物の攪拌が容易になるように水10lを添加した。塩酸17.51を混合物に攪拌しながら添加し、混合物を80℃に加熱した。遊離脂肪酸を形成させ、底層を抜き取った。底層pHは約3.0〜2.0未満であった。クエン酸5kgを水50kgに溶かし、反応器に攪拌しながら添加した。乳化を避けるために温度を90℃に高めた。水を抜き取った後に、微量の石鹸をすべて分解するために、さらにクエン酸5kgを添加した。この結果得られた最終生成物の酸価は約186であり、これは予想した200という値よりも低かった。
【0069】
実施例3
緩和酸洗浄を用いるバッチ製造法
本実施例では、一連の緩和酸洗浄を用いるバッチ規模製造法について述べる。ベニバナ油のエチルエステル75.0kgをカリウムエトキシド1.5kgを用いて異性化した。鹸化を目的として、エチルエステルを、水32l中に溶解したKOH 16.6kgで処理した。混合物の温度は75〜80℃に保ち、反応物を圧力0.3barの窒素雰囲気下においた。発熱性反応混合物の温度は85℃に上昇した。鹸化反応を完了させた後、クエン酸一水和物8.0kg(固体)を激しく攪拌しながら添加し、遊離脂肪酸を形成させた。pH 6の底層の水を抜き取った。次に2回の水洗浄噴霧を攪拌せずに反応器内で行い、静置した後に抜き取った。次に、水に溶かしたクエン酸一水和物による3回の最終洗浄を、反応混合物を激しく攪拌しながら行った。これらの3回の最終洗浄液はそれぞれ1.0kg、2.0kgおよび7.0kgとした。油生成物を減圧下で乾燥させた。生成物の酸価は201であった。
【0070】
実施例4
共役ベニバナFAEEの実験室合成
ベニバナ油からのエチルエステルの形成は、ベニバナ油1000gを21%ナトリウムエチラート/エタノール溶液50mlおよび純エタノール230mlと丸底フラスコ内で混合することによって行った。この混合物を攪拌しながら78℃で1時間環流させた後、分液漏斗に移した。各層を分離した後に底層100mlをデカントした。エチルエステルを含む最上層を90℃の熱水で3回洗浄した後に、減圧下で乾燥させた。乾燥したエチルエステルを180℃の減圧下(約0.3mbar)で蒸留した。
【0071】
CLA FAEEの製造を目的とする、ベニバナ油由来の蒸留FAEEの共役化は、FAEE 100gをナトリウムエチラート粉末2.00gおよびエタノール0.66gを小型反応器内で混合することによって行った。空気を窒素に交換した上で、反応器を120℃に加熱した。混合物を120℃で3時間攪拌した後に反応器を80℃に冷却した。続いて共役油を、80〜90℃の熱水50gにより5回洗浄した。4回目の洗浄水にはクエン酸2gを溶解したものを用いた。続いてエチルエステルを減圧下で乾燥させた。CLAエチルエステルの最終的な酸価は0.9であった。非共役リノール酸の残留量は0.9%であった。
【0072】
以上より明らかと考えられることは、本発明により、動物飼料およびヒトの摂取に適した食品の配合に用いうる、高純度の共役リノール酸組成物が提供されることである。
【0073】
以上の明細書で言及したすべての刊行物および特許は参照として本明細書に組み入れられる。本発明の範囲および精神から逸脱することなく、本発明の説明された方法および系にさまざまな変更および変化を加えうることは当業者には明らかである。本発明は特定の好ましい態様とともに説明されたが、特許請求の範囲に記載される本発明は、このような特定の態様に過度に限定されないことが理解されるべきである。実際に、本発明を実施するための説明された様式に対するさまざまな改変は、医学、生化学または関連分野の当業者には明らかであり、それらは以下の特許請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、酸価の高い共役リノール酸を製造するための方法:
a)i)リノール酸のエステルを含む組成物、および
ii)アルコラート触媒、
を提供する段階;
b)該リノール酸のエステルを含む組成物を該アルコラート触媒で処理して、共役リノール酸エステル組成物を生成させる段階;
c)該共役リノール酸エステル組成物をアルカリで処理して、鹸化された共役リノール酸組成物を生成させる段階;ならびに
d)該鹸化された共役リノール酸組成物を緩和酸(mild acid)洗浄により処理して、遊離共役脂肪酸組成物を生成させる段階。
【請求項2】
遊離共役リノール酸組成物の酸価が190を上回る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
遊離共役リノール酸組成物の酸価が約190〜210である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
緩和酸洗浄のpHが約5〜7である、請求項1記載の方法。
【請求項5】
段階(d)が複数の緩和酸洗浄をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
緩和酸洗浄がクエン酸溶液によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
リノール酸のエステルを含む組成物が、ベニバナ油、ヒマワリ油、およびトウモロコシ油からなる群より選択される油から得られる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
アルコラート触媒が、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、およびカリウムエチラートからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
アルコールがエタノールである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法によって製造された、共役リノール酸組成物。
【請求項11】
組成物の酸価が190を上回る、請求項10記載の共役リノール酸組成物。
【請求項12】
組成物の酸価が約190〜210である、請求項10記載の共役リノール酸組成物。
【請求項13】
共役リノール酸のエステルを実質的に含まない、請求項10記載の共役リノール酸組成物。
【請求項14】
トランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない、請求項10記載の共役リノール酸組成物。
【請求項15】
請求項10記載の共役リノール酸組成物を含む食品。
【請求項16】
請求項10記載の共役リノール酸組成物を含むカプセル。
【請求項17】
以下の段階を含む、酸価の高い共役リノール酸を製造するための方法:
a)i)リノール酸のエステルを含む組成物、および
ii)アルコラート触媒、
を提供する段階;
b)該リノール酸のエステルを含む組成物を該アルコラート触媒で処理して、共役リノール酸エステル組成物を生成させる段階;
c)残留アルコールを含む鹸化された共役リノール酸組成物が生成されるような条件下で、該共役リノール酸エステル組成物をアルカリで処理する段階;
d)遊離共役脂肪酸を含む油相および水相が生じるような条件下で、該鹸化された共役リノール酸組成物に強酸溶液を注入する段階;ならびに
e)該残留アルコールと該共役脂肪酸との間の再エステル化が実質的に防止されるような条件下で、該油相と該水相を直ちに分離する段階。
【請求項18】
遊離共役リノール酸を含む油相の酸価が190を上回る、請求項17記載の方法。
【請求項19】
遊離共役リノール酸を含む油相の酸価が約190〜210である、請求項17記載の方法。
【請求項20】
段階(e)における分離が遠心分離によって行われる、請求項17記載の方法。
【請求項21】
強酸溶液のpHが約2〜3である、請求項17記載の方法。
【請求項22】
リノール酸のエステルを含む組成物が、ベニバナ油、ヒマワリ油、およびトウモロコシ油からなる群より選択される油から得られる、請求項17記載の方法。
【請求項23】
アルコラート触媒が、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、およびカリウムエチラートからなる群より選択される、請求項17記載の方法。
【請求項24】
請求項17記載の方法によって製造された共役リノール酸組成物。
【請求項25】
酸価が190を上回る、請求項24記載の共役リノール酸組成物。
【請求項26】
酸価が約190〜210である、請求項24記載の共役リノール酸組成物。
【請求項27】
共役リノール酸のエステルを実質的に含まない、請求項24記載の共役リノール酸組成物。
【請求項28】
トランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない、請求項24記載の共役リノール酸組成物。
【請求項29】
請求項24記載の共役リノール酸組成物を含む食品。
【請求項30】
請求項24記載の共役リノール酸組成物を含むカプセル。
【請求項31】
以下の段階を含む、鹸化された共役リノール酸を分解する方法:
a)i)鹸化された共役リノール酸を含む組成物、および
ii)緩和酸溶液、
を提供する段階;ならびに
b)該鹸化された共役リノール酸を含む組成物を該緩和酸溶液で処理して、遊離共役リノール酸を含む組成物を生成させる段階。
【請求項32】
遊離共役脂肪酸組成物を生成させるために段階(b)を少なくとも1回繰り返す段階c)をさらに含む、請求項31記載の方法。
【請求項33】
遊離共役リノール酸組成物の酸価が190を上回る、請求項31記載の方法。
【請求項34】
遊離共役リノール酸組成物の酸価が約190〜210である、請求項31記載の方法。
【請求項35】
緩和酸洗浄のpHが約5〜7である、請求項31記載の方法。
【請求項36】
請求項31記載の方法によって製造された共役リノール酸組成物。
【請求項37】
酸価が190を上回る、請求項36記載の共役リノール酸組成物。
【請求項38】
酸価が約190〜210である、請求項36記載の共役リノール酸組成物。
【請求項39】
共役リノール酸のエステルを実質的に含まない、請求項36記載の共役リノール酸組成物。
【請求項40】
トランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない、請求項36記載の共役リノール酸組成物。
【請求項41】
請求項36記載の共役リノール酸組成物を含む食品。
【請求項42】
請求項36記載の共役リノール酸組成物を含むカプセル。
【請求項43】
以下の段階を含む、鹸化された共役リノール酸を分解する方法
a)i)鹸化された共役リノール酸および残留アルコールを含む組成物、および
ii)強酸溶液、
を提供する段階;
b)遊離共役脂肪酸を含む油相および残留エタノールを含む水相が生じるような条件下で、該鹸化された共役リノール酸組成物に強酸溶液を注入する段階;ならびに
c)該残留エタノールと該共役脂肪酸との間の再エステル化が実質的に防止されるような条件下で、該油相と該水相を直ちに分離する段階。
【請求項44】
遊離共役リノール酸を含む油層の酸価が190を上回る、請求項43記載の方法。
【請求項45】
遊離共役リノール酸を含む油相の酸価が約190〜210である、請求項43記載の方法。
【請求項46】
強酸溶液のpHが約2〜3である、請求項43記載の方法。
【請求項47】
請求項43記載の方法によって製造された共役リノール酸組成物。
【請求項48】
酸価が190を上回る、請求項47記載の共役リノール酸組成物。
【請求項49】
酸価が約190〜210である、請求項47記載の共役リノール酸組成物。
【請求項50】
共役リノール酸のエステルを実質的に含まない、請求項47記載の共役リノール酸組成物。
【請求項51】
トランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない、請求項47記載の共役リノール酸組成物。
【請求項52】
請求項47記載の共役リノール酸組成物を含む食品。
【請求項53】
請求項47記載の共役リノール酸組成物を含むカプセル。
【請求項54】
以下の段階を含む、酸価の高い共役リノール酸を製造するための方法:
a)i)リノール酸のエステルを含む組成物、および
ii)アルコラート触媒、
を提供する段階;
b)該リノール酸のエステルを含む組成物を該アルコラート触媒で処理して、共役リノール酸エステル組成物を生成させる段階;
c)該共役リノール酸エステル組成物をアルカリで処理して、残留アルコールを含む鹸化された共役リノール酸組成物を生成させる段階;
d)該鹸化された共役リノール酸組成物からエタノールを除去する段階;ならびに
e)該鹸化された共役リノール酸組成物を酸溶液で処理して、遊離共役脂肪酸組成物を生成させる段階。
【請求項55】
遊離共役リノール酸組成物の酸価が190を上回る、請求項54記載の方法。
【請求項56】
遊離共役リノール酸組成物の酸価が約190〜210である、請求項54記載の方法。
【請求項57】
リノール酸のエステルを含む組成物が、ベニバナ油、ヒマワリ油、およびトウモロコシ油からなる群より選択される油から得られる、請求項54記載の方法。
【請求項58】
アルコラート触媒が、ナトリウムメチラート、カリウムメチラート、ナトリウムエチラート、およびカリウムエチラートからなる群より選択される、請求項54記載の方法。
【請求項59】
請求項54記載の方法によって製造された共役リノール酸組成物。
【請求項60】
酸価が190を上回る、請求項59記載の共役リノール酸組成物。
【請求項61】
酸価が約190〜210である、請求項59記載の共役リノール酸組成物。
【請求項62】
共役リノール酸のエステルを実質的に含まない、請求項59記載の共役リノール酸組成物。
【請求項63】
トランス-トランス型脂肪酸異性体をモル換算で1.0%未満しか含まない、請求項59記載の共役リノール酸組成物。
【請求項64】
請求項59記載の共役リノール酸組成物を含む食品。
【請求項65】
請求項59記載の共役リノール酸組成物を含むカプセル。

【公開番号】特開2011−190451(P2011−190451A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102764(P2011−102764)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【分割の表示】特願2004−539384(P2004−539384)の分割
【原出願日】平成15年9月24日(2003.9.24)
【出願人】(505027834)エイカー バイオマリン エイエスエイ (6)
【Fターム(参考)】