説明

共振型電力変換装置

【課題】高寿命で信頼性の高い共振型電力変換装置。
【解決手段】一次巻線n1と二次巻線n2と三次巻線n3とリセット巻線nRとを有するトランスT1、直流電源Vdcの両端に接続されたスイッチS1とスイッチS2との直列回路、S1に並列に接続されたコンデンサCr1及びダイオードD1、S2に並列に接続されたCr2及びD2、Vdcの両端に接続されたn1とダイオードDn1との直列回路、Vdcの両端に接続されたnRとダイオードDRとの直列回路、S1とS2との接続点とn2とn3との接続点とに接続されたリアクトルLr、Vdcの一端とn2の一端とに接続されたスイッチS10、Vdcの他端とn3の一端とに接続されたスイッチS20、S1及びS2がゼロ電圧スイッチングとなるように、S1とS2とを交互にオンさせ、S10とS20とを交互にオンさせる制御回路10を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド自動車用インバータや電気自動車用インバータなどに適用される共振型電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置に用いられるスイッチのスイッチングロスを低減させる方法として、共振型電力変換装置が知られている。共振型電力変換装置の代表例としては、補助共振回路の共振動作によりスイッチをソフトスイッチングさせることによりスイッチングロスを低減する補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータがある。
【0003】
図9は従来の補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータの一相分の回路図である(例えば、特許文献1参照)。図9において、直流電源Vdcの両端にはコンデンサC1とコンデンサC1と同容量のコンデンサC2との直列回路が接続され、コンデンサC1とコンデンサC2との接続点には、直流電源Vdcの電圧の1/2の電圧が生成される。
【0004】
スイッチS1,S2は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT)からなり、スイッチS1とスイッチS2との直列回路の両端は直流電源Vdcの両端に接続されている。スイッチS1のコレクタ−エミッタ間には、コンデンサCr1とダイオードD1とが接続され、スイッチS2のコレクタ−エミッタ間には、コンデンサCr2とダイオードD2とが接続され、スイッチS1とスイッチS2との接続点には負荷RLが接続されている。
【0005】
スイッチS1とスイッチS2との接続点とコンデンサC1とコンデンサC2との接続点との間には、リアクトルLrとダイオードDa1,Da2が接続された補助共振回路のスイッチSa1,Sa2との直列回路が接続されている。
【0006】
スイッチS1,S2は、補助共振回路による共振電流によりゼロ電圧,ゼロ電流ターンオンスイッチング動作を行うので、スイッチング損失が大幅に低減される。
【0007】
図10は図9に示す補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータの各スイッチの動作波形を示すタイミングチャートである。図11は図9に示す補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータにおけるステートAのモードM0からステートAのモードM2までのモード遷移図である。図12は図9に示す補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータにおけるステートAのモードM3−1からステートBのモードM1までのモード遷移図である。図13は図9に示す補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータにおけるステートBのモードM2からステートBのモードM3までのモード遷移図である。
【0008】
なお、図10において、S1gはスイッチS1のゲートに印加されるゲート信号、S2gはスイッチS2のゲートに印加されるゲート信号、Sa1gはスイッチSa1のゲートに印加されるゲート信号、Sa2gはスイッチSa2のゲートに印加されるゲート信号である。
【0009】
次に従来の共振型電力変換装置の動作を図10乃至図13を参照しながら説明する。まず、ステートAのモードM0において、スイッチS1がオン状態で、ダイオードD1がオンし、負荷RLからの電流がダイオードD1を流れて直流電源Vdc側に供給される。
【0010】
次に、ステートAのモードM1−1において、ゲート信号Sa1gによりスイッチSa1がオンし、負荷RLからの電流は分流し、ダイオードD1を流れて直流電源Vdc側に供給されるとともに、リアクトルLrとダイオードDa2とスイッチSa1とを流れてリアクトルLrに電力が蓄積される。次に、ステートAのモードM1−2において、スイッチS1からの電流と負荷RLからの電流とがリアクトルLrとダイオードDa2とスイッチSa1とを流れてリアクトルLrに電力が蓄積される。
【0011】
次に、ステートAのモードM2において、ゲート信号S1gによりスイッチS1がオフすると、リアクトルLrとコンデンサCr1,Cr2とで共振が起こる。この時、スイッチS2に並列に接続されているコンデンサCr2の電荷が放出し、スイッチS1に並列に接続されているコンデンサCr1に電荷が流入する。
【0012】
次に、ステートAのモードM3−1,M3−2において、コンデンサCr2の電荷がなくなると、ダイオードD2に電流が流れる。スイッチS2のドレイン−ソース間の電圧がゼロであるときに、ゲート信号S2gによりスイッチS2をオンさせる。即ち、スイッチS2をゼロ電圧スイッチングさせることができる。
【0013】
次に、ステートBのモードM0において、負荷RLからの電流がスイッチS2に流れる。次に、ステートBのモードM1において、ゲート信号Sa2gによりスイッチSa2をオンすると、Da1→Sa2→Lrの経路を流れる電流と負荷RLからの電流とがスイッチS2に流れる。
【0014】
次に、ステートBのモードM2において、ゲート信号S2gによりスイッチS2をオフすると、リアクトルLrとコンデンサCr1,Cr2とで共振が起こる。この時、スイッチS1に並列に接続されているコンデンサCr1の電荷が放出し、スイッチS2に並列に接続されているコンデンサCr2に電荷が流入する。
【0015】
次に、ステートBのモードM3において、コンデンサCr1の電荷がなくなると、ダイオードD1に電流が流れる。即ち、スイッチS1のドレイン−ソース間の電圧がゼロであるときに、スイッチS1をオンさせることで、スイッチS1をゼロ電圧スイッチングさせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開平8−340676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、図9に示す従来の共振型電力変換装置では、直流電源部をコンデンサC1とコンデンサC2とで分圧する電圧分圧点を有しており、負荷条件や温度変化による電圧分圧点の電位が変動する。このため、コンデンサC1,C2が劣化し、低寿命化してしまう。
【0018】
本発明は、高寿命で信頼性の高い共振型電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明は、一次巻線と二次巻線と前記二次巻線に直列に接続された三次巻線と前記一次巻線に直列に接続されたリセット巻線とを有するトランスと、直流電源の両端の間に接続され、第1スイッチと第2スイッチとからなる第1直列回路と、前記第1スイッチに並列に接続された第1コンデンサ及び第1ダイオードと、前記第2スイッチに並列に接続された第2コンデンサ及び第2ダイオードと、前記直流電源の両端の間に接続され、前記トランスの前記一次巻線と第3ダイオードとからなる第2直列回路と、前記直流電源の両端の間に接続され、前記トランスの前記リセット巻線と第4ダイオードとからなる第3直列回路と、前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続点と前記トランスの前記二次巻線と前記三次巻線との接続点との間に接続されたリアクトルと、前記直流電源の一端と前記トランスの前記二次巻線の一端との間に接続された第1補助スイッチと、前記直流電源の他端と前記トランスの前記三次巻線の一端との間に接続された第2補助スイッチと、前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがゼロ電圧スイッチングとなるように、前記第1スイッチと前記第2スイッチとを交互にオンさせ、前記第1補助スイッチと前記第2補助スイッチとを交互にオンさせる制御回路とを備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2つの分圧用のコンデンサに代えて、トランスを用いたので、コンデンサと同等の性能を得ることができる。また、第1補助スイッチ又は第2補助スイッチがオフ時にはトランスの励磁インダクタンスによる逆起電力が発生するが、この逆起電力を第4ダイオードとリセット巻線とにより直流電源に回生するので、第1補助スイッチ及び第2補助スイッチへの印加電圧が大幅に低減する。従って、高寿命化で信頼性の高い共振型電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1の共振型電力変換装置を示す回路図である。
【図2】実施例1の共振型電力変換装置のステートA,Bにおける動作波形を示すタイミングチャートである。
【図3】実施例1の共振型電力変換装置のステートA,Bにおけるモード遷移図である。
【図4】実施例1の共振型電力変換装置のステートC,Dにおける動作波形を示すタイミングチャートである。
【図5】実施例1の共振型電力変換装置のステートC,Dにおけるモード遷移図である。
【図6】本発明の実施例2の共振型電力変換装置を示す回路図である。
【図7】本発明の実施例3の共振型電力変換装置を示す回路図である。
【図8】本発明の実施例4の共振型電力変換装置を示す回路図である。
【図9】従来の補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータの一相分の回路図である。
【図10】図9に示す補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータの各スイッチの動作波形を示すタイミングチャートである。
【図11】図9に示す補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータにおけるステートAのモードM0からステートAのモードM2までのモード遷移図である。
【図12】図9に示す補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータにおけるステートAのモードM3−1からステートBのモードM1までのモード遷移図である。
【図13】図9に示す補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータにおけるステートBのモードM2からステートBのモードM3までのモード遷移図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の共振型電力変換装置の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は本発明の実施例1の共振型電力変換装置を示す回路図である。図1に示す共振型電力変換装置は、トランスを用いた補助共振転流ポール方式三相電圧型インバータの一相分の回路を示している。
【0024】
図1において、トランスT1は、一次巻線n1と二次巻線n2と二次巻線n2に直列に接続された三次巻線n3と一次巻線n1に直列に接続されたリセット巻線nRとを有する。トランスT1のリセット巻線nRと一次巻線n1と二次巻線n2と三次巻線n3との巻線比は、2:2:1:1である。
【0025】
直流電源Vdcの両端には絶縁ゲート型バイポーラトランジスタからなるスイッチS1(第1スイッチ)と絶縁ゲート型バイポーラトランジスタからなるスイッチS2(第2スイッチ)とからなる第1直列回路が接続されている。
【0026】
スイッチS1のコレクタ−エミッタ間にはコンデンサCr1(第1コンデンサ)及びダイオードD1(第1ダイオード)が接続されている。スイッチS2のコレクタ−エミッタ間にはコンデンサCr2(第2コンデンサ)及びダイオードD2(第2ダイオード)が接続されている。
【0027】
直流電源Vdcの両端にはトランスT1の一次巻線n1とダイオードDn1(第3ダイオード)とからなる第2直列回路が接続されている。直流電源Vdcの両端にはトランスT1のリセット巻線nRとダイオードDR(第4ダイオード)とからなる第3直列回路が接続されている。
【0028】
スイッチS1とスイッチS2との接続点とトランスT1の二次巻線n2と三次巻線n3との接続点とにはリアクトルLrが接続されている。スイッチS1とスイッチS2との接続点には負荷RLが接続されている。
【0029】
直流電源Vdcの正極とトランスT1の二次巻線n2の一端とには、電流が直流電源Vdcの正極ラインから流れる方向に動作するスイッチS10(第1補助スイッチ)が接続されている。このスイッチS10は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタからなるスイッチSa1(第3スイッチ)とダイオードDa1(第5ダイオード)との直列回路から構成されている。
【0030】
直流電源Vdcの負極とトランスT1の三次巻線n3の一端とには、電流が直流電源Vdcの負極ラインへ流れる方向に動作するスイッチS20(第2補助スイッチ)が接続されている。このスイッチS20は、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタからなるスイッチSa2(第4スイッチ)とダイオードDa2(第6ダイオード)との直列回路から構成されている。
【0031】
リセット巻線nRとダイオードDRとは、トランスT1の励磁インダクタンスのエネルギーを放出するリセット回路を構成し、スイッチSa1又はスイッチSa2がオフ時にトランスT1の励磁インダクタンスにより発生する逆起電力を直流電源Vdcに回生することで、スイッチSa1及びスイッチSa2への印加電圧を大幅に低減する。
【0032】
制御回路10は、スイッチS1とスイッチS2とを交互にオンさせ、スイッチSa1とスイッチSa2とを交互にオンさせ、スイッチS1とスイッチS2とがオフしている期間前にスイッチSa1とスイッチSa2とのどちらか一方をオンさせることでスイッチS1とスイッチS2とがオフしている期間にコンデンサCr1とコンデンサCr2とリアクトルLrとの共振動作によりスイッチS1,S2のゼロ電圧スイッチングを行う。
【0033】
次にこのように構成された実施例1の共振型電力変換装置の動作を、図2に示すステートA,Bにおける動作波形、図3に示すステートA,Bにおけるモード遷移図を参照しながら詳細に説明する。図3のモード遷移図では、動作している部分のみを実線で図示した。
【0034】
なお、図2において、S1gはスイッチS1のゲートに印加されるゲート信号、S2gはスイッチS2のゲートに印加されるゲート信号、Sa1gはスイッチSa1のゲートに印加されるゲート信号、Sa2gはスイッチSa2のゲートに印加されるゲート信号、Vdcは直流電源Vdcの電圧、iLrはリアクトルLrに流れる電流、ixは負荷RLに流れる電流、Vs1はスイッチS1のコレクタ−エミッタ間電圧、Vs2はスイッチS2のコレクタ−エミッタ間電圧、is1はスイッチS1あるいはダイオードD1に流れる電流、is2はスイッチS2あるいはダイオードD2に流れる電流である。
【0035】
まず、ステートAのモードM0においては、スイッチS1がオフし、スイッチS2がオンしている状態である。ダイオードD2に流れる電流is2(負の電流)は負荷RLに流れる。なお、負荷電流ixは一定値である。
【0036】
次に、ステートAのモードM1−1において、ゲート信号Sa1gによりスイッチSa1がオンし、Vdc→Sa1→Da1→n2→Lrの経路で電流iLrが流れ、電流iLrと電流is2(負の電流)とが負荷RLに流れる。このとき、n1→Vdc→Dn1→n1の経路で電流が流れる。一次巻線n1には直流電源Vdcの電圧が印加され、一次巻線n1と二次巻線n2と三次巻線n3との巻線比が2:1:1であるので、二次巻線n2と三次巻線n3との接続点には、直流電圧Vdcの1/2の電圧が印加される。ステートAのモードM1−2において、電流iLrが電流ixよりも大きくなると、電流iLrから電流ixを引いた電流is2(正の電流)がスイッチS2に流れる。
【0037】
次に、ステートAのモードM2において、ゲート信号S2gによりスイッチS2がオフすると、リアクトルLrとコンデンサCr1,Cr2とで共振が起こる。この時、コンデンサCr2に電荷が流入し、コンデンサCr1の電荷が放出する。このため、スイッチS2の両端電圧Vs2が上昇し、スイッチS1の両端電圧Vs1が下降していく。
【0038】
次に、ステートAのモードM3−1において、コンデンサCr2の両端電圧Vcr2が電圧Vdcより大きくなると、ダイオードD1がオンし、ダイオードD1に電流is1が流れる(負の電流)。このとき、ゲート信号S1gによりスイッチS1をオンさせる。これにより、スイッチS1のゼロ電圧スイッチングを実現することができる。ステートAのモードM3−2において、電流iLrが電流ixよりも小さくなると、電流ixから電流iLrを引いた電流is1(正の電流)がスイッチS1に流れる。
【0039】
次に、ステートBのモードM0において、電流iLrがゼロになると、ゲート信号Sa1gによりスイッチSa1がオフし、電流is1のみが負荷RLに流れる。また、スイッチSa1がオフすると、トランスT1の励磁インダクタンスによる逆起電力が発生するが、この逆起電力をダイオードDRとリセット巻線nRとにより直流電源Vdcに回生するので、スイッチSa1への印加電圧が大幅に低減する。
【0040】
次に、ステートBのモードM1において、ゲート信号Sa2gによりスイッチSa2がオンすると、S1→Lr→n3→Da2→Sa2の経路で電流iLrが流れる。このため、スイッチS1に流れる電流is1が上昇する。このとき、n1→Vdc→Dn1→n1の経路で電流が流れる。一次巻線n1には直流電源Vdcの電圧が印加され、一次巻線n1と二次巻線n2と三次巻線n3との巻線比が2:1:1であるので、二次巻線n2と三次巻線n3との接続点には、直流電圧Vdcの1/2の電圧が印加される。
【0041】
次に、ステートBのモードM2において、ゲート信号S1gによりスイッチS1がオフすると、リアクトルLrとコンデンサCr1,Cr2とで共振が起こる。この時、コンデンサCr1に電荷が流入し、コンデンサCr2の電荷が放出する。このため、スイッチS1の両端電圧Vs1が上昇し、スイッチS2の両端電圧Vs2が下降していく。
【0042】
次に、ステートBのモードM3において、コンデンサCr1の電圧Vcr1が電圧Vdcより大きくなると、ダイオードD2がオンし、ダイオードD2に電流is2が流れる(負の電流)。ゲート信号S2gによりスイッチS2がオンし、電流is2が流れる。そして、ステートAのモードM0において、電流iLrがゼロになると、ゲート信号Sa2gによりスイッチSa2がオフし、電流is2のみが負荷RLに流れる。また、スイッチSa2がオフすると、トランスT1の励磁インダクタンスによる逆起電力が発生するが、この逆起電力をダイオードDRとリセット巻線nRとにより直流電源Vdcに回生するので、スイッチSa2への印加電圧が大幅に低減する。
【0043】
次に、図4に示すステートC,Dにおける動作波形、図5に示すステートC,Dにおけるモード遷移図を参照しながら共振型電力変換装置の動作を詳細に説明する。図5のモード遷移図では、動作している部分のみを実線で図示した。
【0044】
まず、ステートCのモードM0においては、スイッチS2がオフし、スイッチS1がオンしている状態である。ダイオードD1に電流is1が流れるが、この電流is1は負荷RLに流れる電流と同じである。なお、負荷電流ixは一定値である。
【0045】
次に、ステートCのモードM1−1において、ゲート信号Sa2gによりスイッチSa2がオンし、Lr→n3→Da2→Sa2の経路で電流iLrが流れる。電流ixは電流iLrと電流is2とに分流される。このとき、n1→Vdc→Dn1→n1の経路で電流が流れる。一次巻線n1には直流電源Vdcの電圧が印加され、一次巻線n1と二次巻線n2と三次巻線n3との巻線比が2:1:1であるので、二次巻線n2と三次巻線n3との接続点には、直流電圧Vdcの1/2の電圧が印加される。ステートCのモードM1−2において、電流iLrが電流ixよりも大きくなると、電流iLrから電流ixを引いた電流is1(正の電流)がスイッチS1に流れる。
【0046】
次に、ステートCのモードM2において、ゲート信号S1gによりスイッチS1がオフすると、リアクトルLrとコンデンサCr1,Cr2とで共振が起こる。この時、コンデンサCr1に電荷が流入し、コンデンサCr2の電荷が放出する。このため、スイッチS1の両端電圧Vs1が上昇し、スイッチS2の両端電圧Vs2が下降していく。
【0047】
次に、ステートCのモードM3−1において、コンデンサCr1の両端電圧Vcr1が電圧Vdcより大きくなると、ダイオードD2がオンし、ダイオードD2に電流is2が流れる。このとき、ゲート信号S2gによりスイッチS2をオンさせる。これにより、スイッチS2のゼロ電圧スイッチングを実現することができる。ステートCのモードM3−2において、電流iLrが電流ixよりも小さくなると、電流ixから電流iLrを引いた電流is2がスイッチS2に流れる。
【0048】
次に、ステートDのモードM0において、電流iLrがゼロになると、ゲート信号Sa2gによりスイッチSa2がオフし、電流is2のみが負荷RLに流れる。また、スイッチSa2がオフすると、トランスT1の励磁インダクタンスによる逆起電力が発生するが、この逆起電力をダイオードDRとリセット巻線nRとにより直流電源Vdcに回生するので、スイッチSa2への印加電圧が大幅に低減する。
【0049】
次に、ステートDのモードM1において、ゲート信号Sa1gによりスイッチSa1がオンすると、Sa1→Da1→n2→Lr→S2の経路で電流iLrが流れる。このため、スイッチS2に流れる電流is2が上昇する。このとき、n1→Vdc→Dn1→n1の経路で電流が流れる。一次巻線n1には直流電源Vdcの電圧が印加され、一次巻線n1と二次巻線n2と三次巻線n3との巻線比が2:1:1であるので、二次巻線n2と三次巻線n3との接続点には、直流電圧Vdcの1/2の電圧が印加される。
【0050】
次に、ステートDのモードM2において、ゲート信号S2gによりスイッチS2がオフすると、リアクトルLrとコンデンサCr1,Cr2とで共振が起こる。この時、コンデンサCr2に電荷が流入し、コンデンサCr1の電荷が放出する。このため、スイッチS2の両端電圧Vs2が上昇し、スイッチS1の両端電圧Vs1が下降していく。
【0051】
次に、ステートDのモードM3において、コンデンサCr2の電圧Vcr2が電圧Vdcより大きくなると、ダイオードD1がオンし、ダイオードD1に電流is1が流れる。ゲート信号S1gによりスイッチS1がオンし、電流is1が流れる。そして、ステートCのモードM0において、電流iLrがゼロになると、ゲート信号Sa1gによりスイッチSa1がオフし、電流is1のみが負荷RLに流れる。また、スイッチSa1がオフすると、トランスT1の励磁インダクタンスによる逆起電力が発生するが、この逆起電力をダイオードDRとリセット巻線nRとにより直流電源Vdcに回生するので、スイッチSa1への印加電圧が大幅に低減する。
【0052】
このように実施例1の共振型電力変換装置によれば、従来の2つの分圧用のコンデンサC1,C2に代えて、トランスT1を用いたので、コンデンサと同等の性能を得ることができる。即ち、トランスT1の一次巻線n1と二次巻線n2と三次巻線n3との巻線比が2:1:1であるので、二次巻線n2と三次巻線n3との接続点には、直流電圧Vdcの1/2の電圧を印加することができる。
【0053】
また、スイッチSa1又はスイッチSa2がオフ時にはトランスT1の励磁インダクタンスによる逆起電力が発生するが、この逆起電力をダイオードDRとリセット巻線nRとにより直流電源Vdcに回生するので、スイッチSa1,Sa2への印加電圧が大幅に低減する。従って、スイッチSa1,Sa2の劣化や破壊を防ぎ高寿命化が図れ、信頼性の高い共振型電力変換装置を提供することができる。
【0054】
なお、ダイオードDRとリセット巻線nRとを設けない場合には、スイッチSa1又はスイッチSa2がオフ時に、トランスT1の励磁インダクタンスによる逆起電力により二次巻線n2と三次巻線n3に発生した電圧、即ち、サージ電圧がスイッチSa1,Sa2に印加されるため、スイッチSa1,Sa2の破壊が懸念されるが、本願発明ではこのような問題がなくなる。
【実施例2】
【0055】
図6は本発明の実施例2の共振型電力変換装置を示す回路図であり、この回路図は、ハーフブリッジ構成の共振型電力変換装置である。実施例2の共振型電力変換装置は、図1に示す実施例1の共振型電力変換装置に、さらに、コンデンサC10、コンデンサC20、リアクトルLf、コンデンサCfが追加されている。
【0056】
直流電源Vdcの両端にコンデンサC10とコンデンサC20との直列回路が接続されている。コンデンサC10とコンデンサC20との接続点とスイッチS1とスイッチS2との接続点との間にはリアクトルLfとコンデンサCfとの直列回路(高調波除去用フィルタ回路)が接続されている。コンデンサCfの両端には負荷RLが接続されている。負荷RLには単相の正弦波交流が供給される。
【0057】
このように構成された実施例2の共振型電力変換装置によっても、実施例1の共振型電力変換装置と同様な効果が得られる。
【実施例3】
【0058】
図7は本発明の実施例3の共振型電力変換装置を示す回路図である。図6に示す実施例2の共振型電力変換装置は、ハーフブリッジ構成であるのに対して、実施例3の共振型電力変換装置は、単相フルブリッジ構成であることを特徴とする。
【0059】
即ち、実施例3の共振型電力変換装置は、一次巻線n1と二次巻線n2,n4と三次巻線n3,n5とリセット巻線nRとを有するトランスT2と、ダイオードDR,Dn1とを有する。また、実施例3の共振型電力変換装置は、U相用として、スイッチSU1,SU2,Sa1,Sa2と、ダイオードDa1,Da2と、コンデンサCr1,Cr2と、リアクトルLr1とを有し、V相用として、スイッチSV1,SV2,Sa3,Sa4と、ダイオードDa3,Da4と、コンデンサCr3,Cr4と、リアクトルLr2とを有している。
【0060】
制御回路10bは、制御回路10と同一機能を有し、スイッチSU1,SU2,Sa1,Sa2と、スイッチSV1,SV2,Sa3,Sa4とのオン/オフを制御する。
【0061】
このように構成された実施例3の共振型電力変換装置によっても、実施例1の共振型電力変換装置と同様な効果が得られる。
【実施例4】
【0062】
図8は本発明の実施例4の共振型電力変換装置を示す回路図である。図1に示す実施例1の共振型電力変換装置は、1相分の構成であるのに対して、実施例4の共振型電力変換装置は、3相フルブリッジ構成であることを特徴とする。
【0063】
即ち、実施例4の共振型電力変換装置は、一次巻線n1と二次巻線n2,n4,n6と三次巻線n3,n5,n7とリセット巻線nRとを有するトランスT3と、ダイオードDR,Dn1とを有する。また、実施例4の共振型電力変換装置は、U相用として、スイッチSU1,SU2,Sa1,Sa2と、ダイオードDa1,Da2と、コンデンサCr1,Cr2と、リアクトルLr1とを有し、V相用として、スイッチSV1,SV2,Sa3,Sa4と、ダイオードDa3,Da4と、コンデンサCr3,Cr4と、リアクトルLr2とを有し、W相用として、スイッチSw1,Sw2,Sa5,Sa6と、ダイオードDa5,Da6と、コンデンサCr5,Cr6と、リアクトルLr3とを有している。
【0064】
制御回路10cは、制御回路10と同一機能を有し、スイッチSU1,SU2,Sa1,Sa2と、スイッチSV1,SV2,Sa3,Sa4と、スイッチSw1,Sw2,Sa5,Sa6とのオン/オフを制御する。
【0065】
このように構成された実施例4の共振型電力変換装置によっても、実施例1の共振型電力変換装置と同様な効果が得られる。
【0066】
なお、本発明は、実施例1乃至4の共振型電力変換装置に限定されるものではない。実施例1では、スイッチSa1のゲート信号Sa1gは、ステートAのモードM1,M2,M3の期間とステートDのモードM1,M2,M3の期間とにおいてオンとし、スイッチSa2のゲート信号Sa2gは、ステートBのモードM1,M2,M3の期間とステートCのモードM1,M2,M3の期間とにおいてオンとしたが、スイッチSa1のゲート信号Sa1gは、ステートAのモードM1,M2,M3及びステートBのモードM0の期間とステートDのモードM1,M2,M3及びステートCのモードM0の期間とにおいてオンとし、スイッチSa2のゲート信号Sa2gは、ステートBのモードM1,M2,M3及びステートAのモードM0の期間とステートCのモードM1,M2,M3及びステートDのモードM0の期間とにおいてオンとしても良い。このようにしても、実施例1の共振型電力変換装置と同様な効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、例えば、電気自動車用インバータに適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
Vdc 直流電源
S1,S2, S10,S20,Sa1,Sa2 スイッチ
Da1,Da2,DR,Dn1, D1,D2 ダイオード
Cr1,Cr2 コンデンサ
T1 トランス
n1 一次巻線
n2 二次巻線
n3 三次巻線
nR リセット巻線
Lr リアクトル
RL 負荷
10 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次巻線と二次巻線と前記二次巻線に直列に接続された三次巻線と前記一次巻線に直列に接続されたリセット巻線とを有するトランスと、
直流電源の両端の間に接続され、第1スイッチと第2スイッチとからなる第1直列回路と、
前記第1スイッチに並列に接続された第1コンデンサ及び第1ダイオードと、前記第2スイッチに並列に接続された第2コンデンサ及び第2ダイオードと、
前記直流電源の両端の間に接続され、前記トランスの前記一次巻線と第3ダイオードとからなる第2直列回路と、
前記直流電源の両端の間に接続され、前記トランスの前記リセット巻線と第4ダイオードとからなる第3直列回路と、
前記第1スイッチと前記第2スイッチとの接続点と前記トランスの前記二次巻線と前記三次巻線との接続点との間に接続されたリアクトルと、
前記直流電源の一端と前記トランスの前記二次巻線の一端との間に接続された第1補助スイッチと、
前記直流電源の他端と前記トランスの前記三次巻線の一端との間に接続された第2補助スイッチと、
前記第1スイッチ及び前記第2スイッチがゼロ電圧スイッチングとなるように、前記第1スイッチと前記第2スイッチとを交互にオンさせ、前記第1補助スイッチと前記第2補助スイッチとを交互にオンさせる制御回路と、
を備えることを特徴とする共振型電力変換装置。
【請求項2】
前記第1補助スイッチは、第3スイッチと第5ダイオードとを直列に接続し、前記第2補助スイッチは、第4スイッチと第6ダイオードとを直列に接続した構成であることを特徴とする請求項1記載の共振型電力変換装置。
【請求項3】
前記トランスの各巻線比は、
リセット巻線:一次巻線:二次巻線:三次巻線=2:2:1:1
であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の共振型電力変換装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の共振型電力変換装置を、ハーフブリッジ構成又は単相フルブリッジ構成又は3相フルブリッジ構成にして、負荷に交流電力を供給することを特徴とする共振型電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−55580(P2011−55580A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199505(P2009−199505)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000106276)サンケン電気株式会社 (982)
【出願人】(504155293)国立大学法人島根大学 (113)
【Fターム(参考)】