説明

共有結合した治療薬を有する重合体

少なくとも1つの重合体部位と少なくとも1つの治療薬を含有する治療用重合体について記載する。治療薬及び重合体部位は水性環境下で加水分解する1つ以上の結合を介して共有結合されており、例えば、1つ以上の結合はSi−N結合、Si−O結合、及びその組合せから選択される。本発明のその他の態様は上記の治療用重合体の生成方法についてのものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、治療薬が結合した重合体、より詳細には水性条件下で重合体から迅速に放出される結合した治療薬を有し、かつ医療器具での使用を含む、多数の環境で有用な重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
治療薬を体内に送達するために、数多くの重合体系の医療器具が開発されてきた。例えば、多くの最先端医療器具が1つ以上の治療薬の貯留部位として機能する生物学的安定性又は生分解性重合体コーティングを供えた器具から成る。コーティングからの治療薬の放出速度を変更する方法には、治療薬の装填量の変更、(例えば、コーティングの親水性/疎水性バランスを変更するための)別の重合体の添加、重合体バリア層の使用その他が含まれる。例にはBoston Scientific社(TAXUS)、Johnson&Johnson社(CYPHER)その他から市販の薬剤溶出冠状動脈ステントが含まれる。
【0003】
多くのタイプの重合体材料が、治療薬を内在させる貯留マトリクスとして使用されている。例にはポリイソブチレン(PIB)系ブロック共重合体、ポリ(ブチルメタクリレート)及びポリ(ビニルアセテート)その他が含まれる。ポリイソブチレン系のブロック共重合体が、薬剤溶出ステント開発で特に関心の高い冠状動脈において特に生物学的に安定性があり生体適合性が高いことが判明している。
【特許文献1】米国特許第6051657号
【特許文献2】米国特許第6469115号
【特許文献3】米国特許第6268451号
【特許文献4】米国特許第6268115号
【特許文献5】米国特許第6545097号
【特許文献6】米国特許第5733925号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
医療器具での使用を目的としたものを含め、治療薬の放出を調節する高性能の重合体材料への需要が依然としてある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様により、少なくとも1つの重合体部位と少なくとも1つの治療薬を含有する治療用重合体を提供する。治療薬及び重合体部位は水性環境下で加水分解する1つ以上の結合を介して共有結合されており、例えば、1つ以上の結合はSi−N結合、Si−O結合、及びその組合せから選択される。
【0006】
本発明のその他の態様は上記の治療用重合体の製造方法についてのものである。
【0007】
本発明のその他の態様により、上記治療用重合体を含む治療組成物を提供し、組成物は植物及び動物等の真核生物を含む広範囲に亘る被験対象に、様々な治療目的でもって投与可能である。
【0008】
本発明の利点は、多彩な治療薬を多彩な重合体へと結合可能な結合部分が提供されることである。
【0009】
本発明の別の利点は、重合体に水性条件下で迅速に放出される治療薬が結合している点である。
【0010】
本発明の更に別の利点は、広範囲に亘る植物及び動物に治療を目的として投与可能な重合体が得られることである。
【0011】
本発明のこれら及びその他の態様、実施形態及び利点は、以下の詳細な説明及び請求項を総覧することで当業者にはすぐに明白となる。
【0012】
本発明は、本発明の多数の態様及び実施形態についての以下の詳細な説明を参照することでより完全に理解できる。以下の本発明の詳細な説明は本発明の説明を目的としたものであって、本発明を限定するものではない。
【0013】
本願で引用の出版物、特許及び特許出願は全て、上記又は下記問わず、参照により全て本願に組み込まれる。
【0014】
上述したように、一態様において、本発明は少なくとも1つの重合体部位と少なくとも1つの共有結合した治療薬を含有する治療用重合体を提供する。治療薬及び重合体部位は水性環境下で加水分解する1つ以上の結合を介して(例えば、1つ以上のSi−N結合、1つ以上のSi−O結合、又はSi−N及びSi−O結合との組合せを介して)共有結合されており、これにより治療薬を放出する。
【0015】
本願で使用するところの「重合体」及び「重合体部位」とはそれぞれ分子及び分子の一部であり、通常は単量体と称される1つ以上の構成単位を複数、典型的には2〜5〜10〜25〜50〜100、又は更に多く含有する。一般的な線状重合体の例はポリスチレン

であり、ここでnは整数であり、重合体はスチレン単量体:

を含有する(つまり、重合体はスチレン単量体の重合、このケースではスチレン単量体の付加重合から生じる又は生じたような外観を有する)。
【0016】
本発明で使用の治療用重合体は、環状、直鎖、分岐構造を含む様々な構造を有することが可能である。分岐構造には星型構造(例えば、3つ以上の鎖が単一の分岐点から生じる構造)、櫛形構造(例えば、主鎖と複数の側鎖を有する構造)、樹枝状構造(例えば、樹枝状又は超分岐高分子)が含まれる。
【0017】
本発明で使用の治療用重合体は、例えば単一構成単位を複数個含有するホモポリマー、及び少なくとも2つの異なる構成単位を複数個含有し、その単位がランダム、統計的、グラジエント、周期的(例えば、交互)分布を含む様々な分布のいずれかで存在する共重合体を含有可能である。
【0018】
本願で使用するところの「低ガラス転移温度(T)単量体」とは、自己重合させた場合に常温、より典型的には約20℃、約0℃、約−25℃、又は約−50℃さえも下回るTを示すホモポリマーを形成するものである。「常温」は25℃から45℃、より典型的には体温(例えば、35℃から40℃)である。逆に、高温又は「高T単量体」とは、自己重合した際に常温より高く、更に典型的には50℃より高く、75℃より高く、更には100℃より高いガラス転移温度を示すホモポリマーを形成する単量体である。Tは示差走査熱量測定(DSC)、動的機械分析(DMA)、又は誘電解析(DEA)を含む数々の技法のいずれによっても測定可能である。低T単量体から形成される重合体は典型的には常温で軟性かつ弾性であり、高T単量体から形成される重合体は常温で硬質である。低T単量体の具体例はイソブチレンであり、ホモポリマー形状で約−73℃のTを有することが報告されている。高T単量体の具体例はスチレンであり、ホモポリマー形状で約100℃のTを有することが報告されている。
【0019】
本発明の治療用重合体が低及び高T単量体の双方を含有する実施形態において、これらは例えば50〜80重量%の低T単量体と20〜50重量%の高T単量体、又はその他の範囲の単量体を含有し得る。
【0020】
「ブロック共重合体」は、2つ以上の異なるホモポリマー又は共重合体鎖を含有する重合体である。特定の実施形態において、例えば、本発明の治療用重合体は(a)1つ以上の低T単量体を含有する1つ以上の重合体鎖(以下では「L」と表記)及び(b)1つ以上の高T単量体を含有する1つ以上の追加重合体鎖(以下では「H」と表記)を含有する。
【0021】
ブロック共重合体の構成は多彩であり、例えば、以下の構成を含む(H及びL鎖を示すが、当然のことながら異なる特性を有するその他の鎖で置換してもよい):(a)タイプ(HL)、L(HL)及びH(LH)の交互ブロックを有し、mが1以上の正の整数であるブロック共重合体、(b)X(LH)及びX(HL)等の多腕形状を有し、nが2以上の正の整数であり、Xがハブ種(例えば、開始剤分子残基、前もって形成された重合体鎖が取り付けられる分子の残基等)であるブロック共重合体、(c)H鎖骨格と複数のL側鎖を有する櫛形共重合体のみならずL鎖骨格と複数のH側鎖を有する櫛形共重合体。
【0022】
単量体に加え、本発明による治療用ホモポリマー及び共重合体は多様なその他の種を含有していてもよい。例にはハブ種(開始剤残分等。上を参照のこと)、キャップ分子、末端基、結合残基、治療薬(例えば、加水分解性又は非加水分解性結合によって結合されたもの)その他が含まれる。
【0023】
本発明による治療用重合体は多数の方法で生成可能であり、1つ以上の(例えば、2、3、4、5、10、25、50、100等、又はそれ以上)のクロロシリル(Si−Cl)基を含有する重合体を用意し、ヒドロキシル基(例えば、C−O−H)、1級及び2級アミン基(例えば、C−NH又はC−NH−C。中性電荷と仮定する)、及びその組合せから選択した1つ以上の基を含む治療薬を、重合体と治療薬との間でのそれぞれ共有Si−O及びSi−N結合の形成へとつながる条件下で反応させることを含む。概して、これらの反応条件にはクロロシラン含有重合体と治療薬とをHCl捕捉剤(例えば、ピリジン又はトリエチルアミン)と共に無水溶媒系中で混合し、続いて無水環境下で単離及び精製することを含む。
【0024】
クロロシリル基を含有する重合体の一生成方法は、不飽和(例えば、ビニル)基を有する(又は有するように変性された)重合体をジメチルクロロシラン、(CHSiClH等の種と触媒条件下で反応させることである。これを目的とした適切な重合体は、例えば、以下に記載の重合体の一覧から選択可能であり、この一覧から本発明で使用する補助的な重合体を選択してもよい。
【0025】
別の方法では、1つ以上のシリルクロライド基を含有する単量体からホモポリマー又は共重合体を生成する。共重合体の場合、例えば、各自1つ以上のシリルクロライド基を含有する1つ以上の単量体、及び各自シリルクロライド基を有する又は有さない1つ以上の追加の単量体を同時(例えば、周期的、ランダム、統計的又はグラジエント共重合体となる)又は連続的に(例えば、ブロック共重合体となる)重合する。
【0026】
クロロシリル官能基はカチオン重合条件下では保護する必要がないという点で幾分通常とは異なり、これはカルボカチオン又はルイス酸と反応しないからである(例えば、Faustその他に発行された米国特許第6051657号(特許文献1)を参照のこと)。従って、シリルクロライド基含有重合体の生成に使用する単量体は、カチオン的に重合可能なクロロシリル基含有単量体を含む。
【0027】
こういった単量体の例には

及び

が含まれ、ここでR''基は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基、6〜10個の炭素原子を有するアリール基、及び7〜12個の炭素原子を有するアルキル・アリール基から独立して選択され、R'及びR'''は0〜6個の炭素原子を有する二価の非芳香族炭化水素基であり、X基はハロゲン原子であり、nは1、2又は3である。こういった単量体は、例えば、ビニルアルケニルベンゼンと対応するハロシランとのプラチナ触媒の存在下でのヒドロシリル化反応、それに続く蒸留による分離で調製してもよい。こういった単量体の2つの具体例は(2−ジクロロメチルシリル−エチル)スチレン(DSiSt)及び1−イソプロペニル−3−(1−ジクロロメチルシリルメチル)エチル−ベンゼン(IDEB)である。これらは、例えば、Faustその他に発行された米国特許第6469115号(特許文献2)及び第6268451号(特許文献3)に記載されている。また、4−(クロロジメチルシリル)スチレンが樹枝状重合体のリビング重合に使用されることもある。
【0028】
これらはカチオン的に重合可能なため、上記及びその他のシリルクロライド基含有単量体はその他のカチオン的に重合可能な単量体と共に(例えば、同時又は連続的に)重合可能である。適切な候補は、以下の既知のカチオン的に重合可能な単量体:(a)脂肪族オレフィン単量体、例えばプロピレン、1−ブテン、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキセン、オクテン、及びノルボルネンその他、(b)ビニル芳香族単量体、例えばスチレン、o−、m−、又はp−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、α−メチル−o−メチルスチレン、α−メチル−m−メチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、β−メチル−o−メチルスチレン、β−メチル−m−メチルスチレン、β−メチル−p−メチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチル−2,6−ジメチルスチレン、α−メチル−2,4−ジメチルスチレン、β−メチル−2,6−ジメチルスチレン、β−メチル−2,4−ジメチルスチレン、o−、m−、又はp−クロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、α−クロロ−o−クロロスチレン、α−クロロ−m−クロロスチレン、α−クロロ−p−クロロスチレン、β−クロロ−o−クロロスチレン、β−クロロ−m−クロロスチレン、β−クロロ−p−クロロスチレン、2,4,6−トリクロロスチレン、α−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、α−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,6−ジクロロスチレン、β−クロロ−2,4−ジクロロスチレン、o−、m−、又はp−tert−ブチルスチレン、o−、m−、又はp−メトキシスチレン、o−、m−、又はp−クロロメチルスチレン、o−、m−、又はp−ブロモメチルスチレン、ビニルナフタレン、及びインデンその他、(c)ジエン単量体、例えばブタジエン、イソプレン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、ジビニルベンゼン、及びエチリデンノルボルネンその他、(d)ビニルエーテル単量体、例えばメチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−、sec−、tert−、又はイソブチルビニルエーテル、メチルプロペニルエーテル、及びエチルプロペニルエーテルその他、(e)シラン化合物、例えばビニルトリクロロシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジクロロシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランその他、(f)ビニルカルバゾール、(g)β−ピネン、及び(h)アセナフチレンの1つ以上から選択可能である。
【0029】
典型的なカチオン重合反応において、重合体及び共重合体は反応混合物から低温度で生成され、反応混合物は(a)カチオン重合に適切な溶媒系、(b)1つ以上のカチオン的に重合可能な単量体種、(c)開始剤、及び(d)ルイス酸共開始剤を含む。加えて、典型的にはプロトン捕捉剤を加えることで、プロトン性不純物、例えば水を実際的に不在とする。重合は、例えば約0℃〜約−100℃、より典型的には約−50℃〜−90℃の温度範囲内で実行可能である。重合時間は、典型的には、単量体種から重合体への転換率が50%、75%、90%、95%、99%又はそれよりも高い値に達するに十分な時間である。その多くが当該分野で周知であるカチオン重合に適した溶媒系には(a)C1〜C4ハロゲン化炭化水素、例えば塩化メチル及び二塩化メチレン、(b)C5〜C8脂肪族炭化水素、例えばペンタン、ヘキサン、及びヘプタン、(c)C5〜C10環状炭化水素、例えばシクロヘキサン及びメチルシクロヘキサン、及び(d)その混合物が含まれる。例えば、一部の有益な実施形態において、溶媒系は極性溶媒、例えば塩化メチル、塩化メチレン等と、非極性溶媒、例えばヘキサン、シクロヘキサン又はメチルシクロヘキサン等との混合物を含有する。リビングカルボカチオン重合用の開始剤は、通常、有機エーテル、有機エステル、有機アルコール、又は有機ハロゲン化物であり、tert−エステル、tert−エーテル、tert−ヒドロキシル及びtert−ハロゲン含有化合物が含まれる。具体例にはアルキルクミルエーテル、ハロゲン化クミル、アルキルクミルエステル、クミルヒドロキシル化合物及びそのヒンダード形、例えば、ジクミルクロライド及び5−tert−ブチル1,3−ジクミルクロライドが含まれる。星型重合体を含む多腕型重合体は、3つ以上の開始地点を有する開始剤、例えば3つの開始地点を有するトリクミルクロライド(つまり、1,3,5−トリス(1−クロロイ−1−メチルエチル)ベンゼン)を選択することで生成可能である。ルイス酸共開始剤の例にはハロゲン化金属、例えば三塩化ホウ素、四塩化チタン及びハロゲン化アルキルアルミニウムが含まれる。ルイス酸共開始剤は、典型的には、開始剤の濃度に等しい又はそれより高い、例えば2〜50倍高い濃度で使用する。プロトン捕捉剤(プロトントラップとも称される)の例には置換又は非置換2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン及び4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、同様に1,8−ビス(ジメチルアミノ)−ナフタレン及びジイソプロピルエチルアミンが含まれる。プロトントラップの濃度は、好ましくは、重合系内の水等のプロトン性不純物の濃度よりも若干高いにすぎない。
【0030】
本発明の実行に適したシリルクロライド基含有共重合体の生成に適切な技法は、例えば、双方共にFaustその他に発行された米国特許第6469115号(特許文献2)及び第6268115号(特許文献4)に見出すことが可能である。
【0031】
本発明の特定の実施形態においては、各自が1つ以上のシリルクロライド基を含有する1つ以上のカチオン的に重合可能な単量体と、各自がシリルクロライド基を有していない1つ以上の追加のカチオン的に重合可能な単量体を反応させる。
【0032】
1つ以上のシリルクロライド基を含有するカチオン的に重合可能な単量体の具体例には、上述したもの等のシリルクロライド基含有スチレン単量体が含まれる。シリルクロライド基含有スチレンブロックは、こういった重合体を単体で、或いは上述したもの等のシリルクロライド置換基を有さない別のスチレン単量体と組み合わせて重合することで生成してもよい。
【0033】
シリルクロライド基を有さないカチオン的に重合可能な単量体の追加例は、上記の脂肪族オレフィン、ビニル芳香族化合物、ジエン、ビニルエーテル、シラン、ビニルカルバゾール、β−ピネン、及びアセナフチレン中に見出すことが可能である。
【0034】
上述したように、こういった単量体を同時に反応させ、例えば周期的、ランダム、統計的又はグラジエント共重合体としてもよい。こういった場合、得られる重合体内のシリルクロライド基の密度(及び最終的には、共有結合した治療薬の密度)は、シリルクロライド基を含有する単量体のシリルクロライド基を含有しないものに対しての比を変更することで変更可能である。具体例としては、スチリルクロライド含有重合体は、(a)イソブチレンとDSiSt及び/又はIDEB、(b)スチレンとDSiSt及び/又はIDEB又は(c)イソブチレンとスチレン及びDSiSt及び/又はIDEBとを同時に反応させることで生成可能である。(具体例については、米国特許第6268451号(特許文献3)を参照のこと。ここではイソブチレン、IDEB及びDSiStを同時に反応させて3つの単量体の統計的共重合体を生成している。米国特許第6469115号(特許文献2)ではイソブチレンとDSiStを同時に反応させて2つの単量体のランダム共重合体を生成している)。
【0035】
こういった重合体は連続的に反応させてもよく、これにより例えばブロック共重合体が生成される。具体例としては、米国特許第6469115号(特許文献2)を参照のこと。ここではイソブチレンとDSiStを連続的に反応させてブロック共重合体を生成している。シリルクロライド含有ブロックと非シリルクロライド含有ブロックを有するブロック共重合体に関しては、重合体中のシリルクロライド基の数(及び、最終的には共有結合している治療薬の数)はシリルクロライド含有ブロックの長さ及び/又はこういったブロック中のシリルクロライド基の密度(例えば、ブロックがシリルクロライド基を含有しない単量体も含有する場合)を変更することで変更可能である。
【0036】
クロロシリル基を含有する重合体をヒドロキシル及び/又はアミン基含有治療薬と反応させる上記技法に加えて、本発明の治療用重合体はSi−O結合、Si−N結合、及びその組合せから選択される1つ以上の結合を介して共有結合された1つ以上の治療薬を含有する単量体を重合することでも生成し得る。
【0037】
一部の実施形態においては、共重合体を、例えば(a)治療薬と共有結合している2つの異なる単量体を重合、又は(b)各自1つ以上の共有結合された治療薬を含有する1つ以上の単量体を、各自共有結合された治療薬を有さない1つ以上の別の単量体と重合することで生成する。こういった単量体は同時(例えば、周期的、ランダム、統計的又はグラジエント共重合体となる)又は連続的に(例えば、ブロック共重合体につながる)に反応させてもよい。
【0038】
これを目的としては多様な合成方法が利用可能であり、上述のカチオン重合技法が含まれる。治療薬によっては、多様な基は重合に先立って保護を必要とすることもある。
【0039】
共有結合された治療薬を有するカチオン的に重合可能な単量体の具体例には、シリルクロライド基含有単量体、例えば上述のスチレン単量体とヒドロキシル、1級アミン及び/又は2級アミン基を含有する治療薬とを反応させることで得られるものが含まれる。こういった存在を反応させてSi−N−C結合、Si−O−C結合及びその組合せから選択された1つ以上の結合を形成するための条件は上記のとおりである。
【0040】
共有結合された治療薬を含まない、カチオン的に重合可能な単量体の具体例は上記の脂肪族オレフィン、ビニル芳香族化合物、ジエン、ビニルエーテル、シラン、ビニルカルバゾール、β−ピネン、及びアセナフチレン中に見出すことが可能である。
【0041】
付加重合技法を利用する場合(例えば、上述したもの等のカチオン重合反応は付加重合反応である)、飽和(例えば、オレフィン又はビニル重合の場合)又は不飽和(例えば、ジオレフィン重合の場合)炭素骨格を含有する重合体鎖が通常形成される。使用する単量体により、炭素骨格が有するペンダント基は多彩なものとなる。具体例にはペンダントアルキル基(例えば、様々な脂肪族オレフィン及びジエンを使用する場合)、ペンダント置換及び非置換芳香族基(例えば、様々なビニル芳香族単量体を使用する場合)、ペンダントエーテル基(例えば、多様なビニルエーテルを使用する場合)、ペンダントシラン基(例えば、多様なシラン単量体を使用する場合)その他が含まれる。
【0042】
使用する技法に関わらず、上記説明から、本発明による多彩な治療用重合体が生成可能なことが明らかである。
【0043】
本発明による治療用重合体は、植物及び脊椎動物等の真核生物を含む幅広い被験対象に、様々な治療目的でもって投与可能である。「脊椎動物」とはcordata亜門に属するもの全てを意味し、ヒト等の哺乳類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウマ、ラクダ、バッファロー、犬、猫及び鳥等の家畜哺乳類、ニワトリ、七面鳥及びその他の家禽等の家畜、野生及び狩猟用の鳥を含む。
【0044】
「治療目的」とは、対象のサイズ又は健康における改善を意味しており、1つ以上の疾病、疫病又は病的状態の治療を含む。本願で言うところの「治療」とは疾病又は病的状態の防止、疾病又は病的状態に関連した症状の軽減又は排除、又は疾病又は病的状態の実質的又は完全なる排除を意味している。
【0045】
多くの場合において、本発明の治療用重合体は治療用組成物又は医療器具等の治療用物品と共に投与される。本発明の多様な治療用物品の投与モードには局所性投与及び体内投与が含まれる。脊椎動物への体内投与モードには経口、経鼻投与、直腸投与、膣内投与、嚢内投与、皮内投与、膣内投与、腹腔内投与、局所性投与、口腔投与、非経口投与その他が含まれる。「非経口」という用語は、ここでは消化管を通す以外での投与モードを意味し、静脈、動脈、筋肉、皮下、腹膜、及び胸骨を介した送達、及びその他の経路を含む。
【0046】
治療用組成物の例には多様な医薬組成物及び農業用組成物が含まれる。本発明による治療用組成物は担体、例えば非毒性固形物、半固形物又は液状充填剤、希釈剤、カプセル化材料又はいずれのタイプのその他の処方助剤を含むことが多い。
【0047】
本発明の医薬組成物には粉末、顆粒、水溶液、分散液、エマルジョン、スプレー、エアロゾル、軟膏、ゲル、クリーム、ドロップ、錠剤、ピル、カプセル、経皮パッチ、坐薬その他が含まれる。医薬組成物は様々な薬学的に許容可能な担体及び/又は賦形剤(例えば、動物/ヒトへの使用が認可されたもの)を含んでいてもよい。こういった組成物の正確な処方は使用する特定の治療薬及び最適な投与モードに基づいて決定される。一例として、医薬用担体は水や油類等の滅菌液体を含んでいてもよい。食塩水及び水性デキストロース及びグリセロール溶液を液体担体、特には注射用溶液として用いてもよい。本発明の治療用重合体組成物は注射直前に再構成するためにアンプル内の乾燥形態で供給してもよい。適切な医薬用賦形剤には澱粉、ブドウ糖、乳糖、蔗糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリン、タルク、塩化ナトリウム、乾燥スキムミルク、グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール、界面活性剤、pH緩衝剤、徐放剤その他を含んでいてもよい。
【0048】
本発明の治療用重合体は植物への応用にも適しており、例えば殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤、肥料等の放出での使用が挙げられる。これらの農業用組成物は、典型的には局所的に適用、或いは根を通して吸収され、比較的粒径の大きい顆粒状剤、水溶性又は水分散性顆粒、粉末ダスト、水和性粉末、ペースト、エアロゾル、水性エマルジョン、水溶液、治療用重合体を含浸させた天然又は合成材料、治療用重合体のその他の重合体材料へのマイクロカプセル化、又は当業者に既知のその他の農業的に有用な処方が含まれる。適切な界面活性剤、pH緩衝剤、徐放剤その他も特定の治療上のニーズや適用モードに応じて含めてもよい。
【0049】
医療器具の例には、インプラント又は挿入可能な医療器具、例えばカテーテル(例えば、バルーンカテーテル等の腎臓又は血管カテーテル)、ガイドワイヤ、バルーン、フィルタ(例えば、大静脈フィルタ)、ステント(冠血管ステント、末梢血管ステント、脳、尿道、尿管、胆管、気管、消化管、食道ステントを含む)、ステントグラフト、血管グラフト、血管アクセスポート、脳動脈瘤フィラーコイルを含む塞栓形成装置(Guglilmi着脱式コイル及び金属コイルを含む)、心筋プラグ、パッチ、ペースメーカー及びペースメーカーリード、左心室補助人工心臓、完全人工心臓、心臓弁、血管弁、生検器具、及び体内にインプラント又は挿入されそこから治療薬が放出されるところのいずれのコーティング基体(例えば、ガラス、金属、重合体、セラミック、その組み合わせを含む)が含まれる。医療器具の例には更に無傷の皮膚及び損傷した皮膚(傷を含む)に治療薬を送達するパッチ、縫合糸、縫合糸アンカー、吻合クリップ及びリング、手術部位における組織ステープル及び結紮クリップ、カニューレ、金属ワイヤ結紮糸、整形外科用プロテーゼ、例えば骨グラフト、骨プレート、関節プロテーゼ、整形外科用固定器具、例えば足首、ひざ、手領域における干渉スクリュー、靭帯付着及び半月板の修復用の鋲、骨折固定用のロッド及びピン、頭蓋顎顔面修復用のスクリュー及びプレート、歯科用器具、例えば抜歯後の孔隙充填剤及び歯根膜手術後の組織再生誘導膜フィルム、組織充填装置、及び軟骨、骨、皮膚、及びその他の生体内組織再生のための再生工学スカホールドが含まれる。
【0050】
本発明の医療器具は、いずれの組織又は器官の局所治療のみならず全身的治療に使用されるものを含む。非限定的な例は腫瘍、心臓、冠動脈及び末梢血管系(総体的に「血管系」と称する)、腎臓、膀胱、尿道、尿管、前立腺、膣、子宮及び卵巣を含む泌尿生殖器系、目、肺、気管、食道、腸、胃、脳、肝臓及び膵臓、骨格筋、平滑筋、胸、皮膚組織、軟骨、歯及び骨を含む器官である。
【0051】
多様な実施形態において、医療器具はインプラント又は様々な体内管腔への挿入用に適合されており、以下の:心臓、動脈(例えば、冠状動脈、大腿動脈、大動脈、腸骨動脈、頚動脈、椎骨脳底動脈)及び静脈等の心血管系の管腔部、尿道(尿道前立腺部を含む)、膀胱、尿管、膣、子宮、精管及び卵管等の泌尿生殖器系の管腔部、耳鼻管、耳管、気管、気管支、鼻腔及び副鼻腔等の気道の管腔部、食道、腸、十二指腸、小腸、大腸、結腸、胆管系及び膵管系等の消化管の管腔部、リンパ系の管腔部、主要体腔部(腹膜、胸膜、心嚢)その他を含む。
【0052】
本発明と共に使用するインプラント又は挿入可能な医療器具の具体例には、冠状動脈ステント、脳ステント等の再狭窄の治療のための、血管系に治療薬を送達する血管ステントが含まれる。
【0053】
様々な実施形態において、本発明の治療用物品は重合体放出領域を含有する又は重合体放出領域から構成され、この領域は本発明の治療用重合体をその他任意の補助成分及び補助重合体と共に含有しており、これら補助成分の一部については以下で述べる。重合体放出領域とは重合体含有領域であり、通常、少なくとも50重量%の重合体(放出重合体を含む)、少なくとも75重量%の重合体、又は更に多くの重合体を含有する。
【0054】
一部の実施形態において、本発明の重合体放出領域は治療用物品全体に相当する。別の実施形態においては、重合体放出領域は治療用物品の1つ以上の部位に対応する。例えば、重合体放出領域は医療器具中に組み込まれる1つ以上の繊維の形態、その下の医療器具基体全体又は一部上のみに形成される1つ以上の重合体層の形態その他が可能である。層はその下の基体上の様々な位置で、様々な形状(例えば、リソグラフィー技法等の適切なマスク技法を用いて所望のパターンに)で施すことが可能であり、多様な重合体材料から形成可能である。その下の医療器具基体として使用する材料にはセラミック、金属及び重合体基体が含まれる。基体材料は炭素又はケイ素系材料その他も可能である。本願で使用するところの所定の材料の「層」とは、材料の厚みがその長さと幅の双方と比較して小さいその材料から成る領域のことである。ここで使用するところの層は平坦である必要はなく、例えば、その下の基体の輪郭に沿ったものである。層は不連続(例えば、パターン形成)である場合がある。「フィルム」「層」及び「コーティング」という用語は本明細書においては同じ意味で使用され得る。
【0055】
重合体放出領域を構成している材料(例えば、補助重合体等の補助材料のみならずその領域の治療用重合体)の属性に加え、治療薬の放出プロファイルは器具中の重合体放出領域のサイズ、数及び/又は位置等のその他の要因の影響も受ける。例えば、本発明による重合体放出領域の放出プロファイルは、その厚さ又は表面積を変更することで修正可能である。更に、複数の重合体放出領域を用いることで放出プロファイルを修正可能である。例えば、同一又は異なる成分内容いずれかを有する(例えば、異なる重合体及び/又は治療薬含有量)本発明の放出層を互いに積層する、横方向に相互に並べて位置させるその他が可能である。
【0056】
具体例としては、ステント等の管状器具(例えば、レーザ又は機械切断したチューブ、1つ以上の組んだ、織った、編んだフィラメント等を含む)の場合、重合体放出層を管腔表面、管腔外側表面、管腔と管腔外側表面との間の側面(端部を含む)に設け、器具の管腔又は管腔外長さに沿ってパターニングその他することが可能である。更に、重合体放出層は同一又は異なるその下の治療薬の放出を制御可能である。そのため、例えば、医療器具の異なる部位から同一又は異なる治療薬を異なる速度で放出可能である。別の具体例としては、その内部管腔表面上に第1治療薬(例えば、抗血栓剤)を含有する第1重合体放出層と、その外側の管腔外表面上(所望なら、その端部も同様に)に第1治療薬とは異なる第2治療薬(例えば、抗増殖剤)を含有する第2重合体放出層とを有する管状医療器具(例えば、血管ステント)を提供することが可能である。
【0057】
上述したように、本発明の重合体放出領域は治療用重合体とは別の材料も任意で含有してもよく、例えば上述の治療用重合体と混和可能な補助重合体を含む。
【0058】
補助重合体の例には多様なホモポリマー及び共重合体(交互、ランダム、統計的、グラジエント及びブロック共重合体)が含まれ、環状、直鎖又は分岐(例えば、星型、櫛型又は樹枝状構造を有する重合体)であってもよく、天然又は合成であってもよく、熱可塑性であっても熱硬化性であってもよい。特定の重合体は、例えば以下から選択し得る:ポリアクリル酸を含むポリカルボン酸重合体及び共重合体;アセタール重合体及び共重合体;アクリレート及びメタクリレート重合体及び共重合体(例えば、n−ブチルメタクリレート);酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、レーヨン、レーヨントリアセテート、カルボキシメチルセルロースとヒドロキシアルキルセルロース等のセルロースエーテルを含むセルロース重合体及び共重合体;ポリオキシメチレン重合体及び共重合体;ポリエーテルブロックイミド及びポリエーテルブロックアミド、ポリアミドイミド、ポリエステルイミド、ポリエーテルイミド等のポリイミド重合体及び共重合体;ポリアリールスルホンとポリエーテルスルホンを含むポリスルホン重合体及び共重合体;ナイロン6,6、ナイロン12、ポリカプロラクタムとポリアクリルアミドを含むポリアミド重合体及び共重合体;アルキド樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アリル樹脂、エポキシド樹脂を含む樹脂;ポリカーボネート;ポリアクリロニトリル;ポリビニルピロリドン(架橋その他);ポリビニルアルコール、ハロゲン化ポリビニル、例えばポリ塩化ビニル、エチレン−ビニルアセテート共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルエーテル、例えばポリビニルメチルエーテル、ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン共重合体(例えば、Kraton(登録商標)Gシリーズ重合体として入手可能なポリスチレン−ポリエチレン/ブチレン−ポリスチレン(SEBS)共重合体)、スチレン−イソプレン共重合体(例えば、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン)、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体及びスチレン−イソブチレン共重合体(例えば、Pinchukに発行された米国特許第6545097号(特許文献5)に開示されるようなポリイソブチレン−ポリスチレンとポリスチレン−ポリイソブチレン−ポリスチレンブロック共重合体)を含むビニル芳香族オレフィン共重合体、ポリビニルケトン、ポリビニルカルバゾール、及びポリビニルエステル、例えばポリビニルアセテートを含むビニル単量体の重合体及び共重合体;ポリベンゾイミダゾール;酸基の一部が亜鉛又はナトリウムイオンのいずれかで中和可能なエチレン−メタクリル酸共重合体及びエチレン−アクリル酸共重合体(通常、アイオノマーとして知られる);ポリエチレンオキシド(PEO)を含むポリアルキルオキシド重合体及び共重合体;ポリエチレンテレフタレートを含むポリエステル及び脂肪族ポリエステル、例えばラクチド(d−、l−、meso−ラクチド同様に乳酸を含む)の重合体及び共重合体、イプシロン−カプロラクトン、グリコリド(グリコール酸を含む)、ヒドロキシ酪酸塩、ヒドロキシ吉草酸、para−ジオキサノン、トリメチレンカーボネート(及びそのアルキル誘導体)、1,4−ジオキセパン−2−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン、及び6,6−ジメチル−1,4−ジオキサ−2−オン(一具体例はポリ(乳酸)とポリ(カプロラクトン)との共重合体);ポリアリールエーテル、例えばポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンを含むポリエーテル重合体及び共重合体;ポリフェニレンサルファイド、ポリイソシアネート;ポリアルキレン、例えばポリプロピレン、ポリエチレン(低密度及び高密度、低分子及び高分子)、ポリブチレン(例えばポリブト−1−エン及びポリイソブチレン)、ポリオレフィンエラストマー(例えば、サントプレン)、エチレンプロピレンジエン単量体(EPDM)ゴム、ポリ−4−メチル−ペン−1−エン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−酢酸ビニル共重合体を含むポリオレフィン重合体及び共重合体;ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロペン)(FEP)、変性エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含むフッ化重合体及び共重合体;シリコーン重合体及び共重合体;熱可塑性ポリウレタン(TPU);エラストマー、例えば弾性ポリウレタンとポリウレタン共重合体(ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、脂肪族系、芳香族系及びその組み合わせであるブロック及びランダム共重合体を含む。市販のポリウレタン共重合体の例にはバイオネート(Bionate(登録商標))、カルボセーン(Carbothane(登録商標))、テコフレックス(Tecoflex(登録商標))、テコセーン(Tecothane(登録商標))、テコフィリック(Tecophilic(登録商標))、テコプラスト(Tecoplast(登録商標))、ペレセーン(Pellethane(登録商標))、クロノセーン(Chronothane(登録商標))、クロノフレックス(Chronoflex(登録商標))が含まれる);p−キシリレン重合体;ポリイミノカーボネート;コポリ(エーテル−エステル)、例えばポリエチレンオキシド−ポリ乳酸共重合体;ポリフォスファジン;ポリアルキレンオキサレート;ポリオキサアミド及びポリオキサエステル(アミン及び/又はアミド基を含有するものを含む);ポリオルトエステル;フィブリン、フィブリノゲン、コラーゲン、エラスチン、キトサン、ゼラチン、スターチ、グリコサミノグリカン、例えばヒアルロン酸を含む生体高分子、例えばポリペプチド、タンパク質、多糖及び脂肪酸(及びそのエステル);及び上記の混合物及び更なる共重合体。
【0059】
補助の重合体は様々な理由で使用可能である。例えば、補助重合体は(a)重合体放出領域の親水性(又は疎水性)を高くする又は粘着性を低下させるために、(b)治療薬の放出プロファイルを調節するために、又は(c)領域の機械特性、生物学的安定性、生体適合性、加工性その他の1つ以上に影響を与えるために導入してもよい。
【0060】
本発明による重合体領域を形成するためには、多数の技法が利用可能である。
【0061】
例えば、処理対象である本発明の治療用重合体及び/又はその他いずれの補助材料が熱可塑性を有する場合、又、治療用重合体及びその他いずれの補助材料が(例えば、上述のSi−N及びSi−O結合の加水分解を含む、処理中の実質的な反応/劣化を回避するに)十分に安定である限り、重合体放出領域の形成には多数の標準的な熱可塑性処理技法を使用することができ、様々な長さのシート、ファイバー、ロッド、チューブ及びその他の断面形状への押出成形のみならず圧縮成形、射出成形、ブロー成形、スピン成形、真空成形、カレンダー成形を含む。こういった技法やその他の熱可塑性処理技法を用いて、器具全体又はその一部分を形成することができる。
【0062】
別の実施形態においては、溶媒型技法を用いて本発明の重合体放出領域を形成する。こういった技法を用いて、まず本発明の治療用重合体(及び/又は処理対象となるその他いずれの補助材料)を含有する溶液を用意し、続いて溶媒を除去して重合体放出領域を形成することで、重合体放出領域は形成可能である。最終的に選択する溶媒は1つ以上の溶媒種を含有し、通常は、乾燥速度、表面張力等を含むその他の要素のみならず、重合体放出領域を形成する材料の溶解能力に基づいて選択される。更に、上述したように、使用する溶液及び処理条件は、通常、存在する治療用重合体及びその他の補助材料の安定性が確保されるように選択される。好ましい溶媒型技法には、溶媒キャスト法、スピンコーティング法、ウェブコーティング法、溶媒スプレー法、浸漬法、エアサスペンションを含む機械的サスペンションによるコーティングを伴う技法、インクジェット法、静電法、及びこれらの方法の組み合わせが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0063】
本発明の一部の実施形態においては、溶液(溶媒型処理を用いた場合)又は溶解物(熱可塑性処理を利用する場合)を基体に塗布し、重合体放出領域を形成する。例えば、基体はそこに重合体放出領域を適用するところのインプラント又は挿入可能な医療器具全体又は一部に対応する。又、基体は、例えば固化後に重合体放出領域をそこから取り外す金型等のテンプレートである。別の実施形態においては、例えば、押出及び共押出技法により、1つ以上の重合体放出領域を基体の助けを借りずに形成する。
【0064】
更なる具体例においては、ステント本体全体を押出成形する。或いは、重合体放出層をその下のステント本体に沿って共押出成形する。別の具体例においては、既に存在するステント本体上にコーティング層を噴霧又は押出成形することでその下のステント本体上に重合体放出層を施す。更に別のより具体的な例において、ステントは金型で成形する。
【0065】
本願でいうところの「治療薬」とは、有効な投与量レベルを投与した際に、被験者の成長又は健康の改善につながる化合物である。治療薬には遺伝子治療薬、非遺伝子治療薬及び細胞が含まれる。
【0066】
上述したように、本発明の治療用重合体において、治療薬は共有Si−O及び/又はSi−N結合を介して結合されている。これを目的とした適切な治療薬にはヒドロキシル基、1級アミン基、及び2級アミン基を含有するものが含まれる。共有結合された治療薬に加え、本発明の医療用物品は1つ以上の任意の非共有結合された治療薬も含んでいてもよい。
【0067】
共有結合された(必要なら、治療薬元来又は変性のいずれかによるヒドロキシル及びアミン基等の結合基が存在する)又は非結合の治療薬の具体例の一部は、例えば、以下に記載の治療薬その他から選択可能である。
【0068】
本発明と共に使用する非遺伝子治療薬の例には、(a)抗血栓剤、例えばヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、及びPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)、(b)抗炎症薬、例えばデキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデソニド、エストロゲン、スルファサラジン及びメサラミン、(c)抗腫瘍性/抗増殖/細胞分裂阻害薬、例えばパクリタクセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、エンドスタチン、アンジオスタチン、アンジオペプチン、平滑筋細胞の増殖を阻害するモノクローナル抗体、及びチミジンキナーゼ阻害剤、(d)麻酔薬、例えばリドカイン、ブピバカイン及びロピバカイン、(e)抗凝固薬、例えばD−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、ヒルジン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、プロスタグランジン阻害剤、血小板阻害薬及びマダニ抗血小板ペプチド、(f)血管細胞成長促進物質、例えば成長因子、転写活性化因子、翻訳プロモーター、(g)血管細胞成長阻害剤、例えば成長因子阻害剤、成長因子受容体拮抗薬、転写リプレッサー、翻訳レプレッサー、複製阻害剤、阻害抗体、成長因子に対する抗体、成長因子と細胞毒素から成る二官能性分子、抗体と細胞毒素から成る二官能性分子、(h)プロテインキナーゼ及びチロシンキナーゼ阻害薬(例えば、チロホスチン、ゲニステイン、キノキサリン)、(i)プロスタサイクリン類似体、(j)コレステロール降下薬、(k)アンジオポイエチン、(l)抗菌剤、例えばトリクロサン、セファロスポリン、アミノグリコシド及びニトロフラントイン、(m)細胞毒性薬、細胞増殖抑制剤、細胞増殖影響因子、(n)血管拡張剤、(o)内因性血管作動機構阻害剤(p)白血球動員阻害剤、例えばモノクローナル抗体、(q)サイトカイン、(r)ホルモン、(s)ゲルダナマイシンを含むHSP90タンパク質阻害剤(つまり、熱ショックタンパク質。分子シャペロン又はハウスキーピングタンパク質であり、細胞の成長と生存に関係するその他のクライアントタンパク質/情報伝達タンパク質の安定性と機能に必要である)、(t)β−ブロッカー、(u)bARKct阻害剤、(v)ホスホランバン阻害剤、(w)セルカ2遺伝子/タンパク質が含まれる。
【0069】
特に有益な非遺伝子治療薬には、アルギニン、2−ニトロレタノール、パクリタクセル(ABRAXANEアルブミン結合パクリタクセル・ナノ粒子等のその微粒子型を含む)、シロリムス、エベロリムス、タクロリムス、Epo D、デキサメタゾン、エストラジオール、ハロフジノン、シロスタゾール、ゲルダナマイシン、ABT−578(Abbott Laboratories社)、トラピジル、リプロスチン、アクチノマイシンD、レステン−NG、Ap−17、アブシキマブ、クロピドグレル、リドグレル、β−ブロッカー、bARKct阻害剤、ホスホランバン阻害剤、セルカ2遺伝子/タンパク質その他が含まれる。
【0070】
本発明と共に使用する遺伝子治療薬の例には様々なタンパク質のDNAコーディング(及びタンパク質それ自体)のみならずアンチセンスDNA及びRNAが含まれ、(a)アンチセンスRNA、(b)不良又は不全な内因性分子を置き換えるためのtRNA又はrRNA、(c)成長因子、例えば酸性及び塩基性線維芽細胞増殖因子、血管内皮成長因子、内皮細胞分裂成長因子、上皮細胞増殖因子、形質転換成長因子α及びβ、血小板由来内皮成長因子、血小板由来成長因子、腫瘍壊死因子α、肝細胞成長因子及びインスリン様成長因子を含む血管新生因子その他の因子、(d)CD阻害薬を含む細胞周期阻害薬、(e)チミジンキナーゼ(TK)及び細胞増殖を阻害するのに有用なその他の物質が挙げられる。又、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(OP−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−13、BMP−14、BMP−15、BMP−16を含む骨形成タンパク質(BMP)の一群をエンコードしているDNAも対象である。現在好ましいBMPはBMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7のいずれかである。これらの二量体タンパク質はホモ二量体、ヘテロ二量体、又はその組み合わせ、単独又はその他の分子との組み合わせとして提供可能である。或いは、又は加えて、BMPの上流効果又は下流効果を誘起可能な分子を提供可能である。こういった分子にはいずれの「ヘッジホッグ」タンパク質又はこれらをエンコードしているDNAが含まれる。
【0071】
遺伝子治療薬を送達するためのベクターにはウィルスベクターが含まれ、例えばアデノウィルス、guttedアデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、レトロウィルス、アルファウィルス(セムリキ森林ウィルス、シンドビスウィルス等)、レンチウィルス、単純ヘルペスウィルス、複製型ウィルス(例えば、ONYX−015)及びバイブリッドベクター;及び非ウィルスベクター、例えば人工染色体及びミニ染色体、プラスミドDNAベクター(例えば、pCOR)、カチオン性重合体(例えば、ポリエチレンイミン、ポリエチレンイミン(PEI))、グラフト共重合体(例えば、ポリエーテル−PEI及びポリエチレンオキシド−PEI)、中性重合体PVP、SP1017(SUPRATEK)、脂質、例えばカチオン性脂質、リポソーム、リポプレックス、ナノ粒子、又はミクロ粒子が含まれ、タンパク導入ドメイン(PTD)等の標的配列を有する又は有さない。
【0072】
本発明と共に使用する細胞には全骨髄、骨髄由来の単核細胞、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉細胞、造血細胞、神経細胞)、多能性幹細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、衛星細胞、周皮細胞、心筋細胞、骨格筋細胞又はマクロファージを含むヒト由来の細胞(自己又は同種異系)、又は動物、細菌又は真菌由来(異種)のものが含まれ、要望に応じて目的のタンパク質を送達するために遺伝子操作することが可能である。
【0073】
上で列挙したものを必ずしも除外せずとも、数々の治療薬が血管治療計画の候補、例えば、再狭窄をターゲットとした薬剤として確認されている。こういった薬剤は本発明の実施に有用であり、以下の(a)ベンゾチアゼピン、例えばジルチアゼム及びクレンチアゼム、ジヒドロピリジン、例えばニフェジピン、アムロジピン及びニカルダピン、及びフェニルアルキルアミン、例えばベラパミルを含むCaチャンネル阻害薬、(b)5−HT拮抗薬、例えばケタンセリン及びナフチドロフリル、同様に5−HT吸収阻害剤、例えばフルオキセチンを含むセロトニン経路モジュレータ、(c)ホスホジエステラーゼ阻害剤、例えばシロスタゾール及びジピリダモール、アデニレート/グアニレートシクラーゼ刺激剤、例えばホルスコリン、同様にアデノシン類似体を含む環状ヌクレオチド経路剤、(d)α拮抗薬、例えばプラゾシン及びブナゾシン、β拮抗薬、例えばプロプラノロール及びα/β拮抗薬、例えばラベタロール及びカルベジロールを含むカテコールアミンモジュレーター、(e)エンドセリン受容体拮抗薬、(f)有機硝酸塩/亜硝酸塩、例えばニトログリセリン、イソソルビドジニトレート及び亜硝酸アミル、無機ニトロソ化合物、例えばニトロプルシドナトリウム、シドノニミン、例えばモルシドミン及びリンシドミン、ノノエート、例えばジアゼニウムジオラート及びアルカンジアミンのNO付加化合物、低分子化合物(例えば、カプトプリル、グルタチオン及びN−アセチルペニシラミンのS−ニトロソ誘導体)及び高分子化合物(例えば、タンパク質、ペプチド、オリゴ糖、多糖、合成重合体/オリゴマー及び天然重合体/オリゴマーのS−ニトロソ誘導体)を含むS−ニトロソ化合物、同様にC−ニトロソ化合物、O−ニトロソ化合物、N−ニトロソ化合物及びL−アルギニンを含む一酸化窒素供与/放出分子及び前駆体、(g)ACE阻害剤、例えばシラザプリル、フォシノプリル及びエナラプリル、(h)ATII受容体拮抗薬、例えばサララシン及びロサルチン、(i)血小板粘着阻害剤、例えばアルブミン及びポリエチレンオキシド、(j)シロスタゾール、アスピリン及びチエノピリジン(チクロピジン、クロピドグレル)及びGPIIb/IIIa阻害薬、例えばアブシキマブ、エピチフィバチド及びチロフィバンを含む血小板凝集阻害薬、(k)ヘパリノイド、例えばヘパリン、低分子ヘパリン、硫酸デキストラン及びβ−シクロデキストリンテトラデカサルフェート、トロンビン阻害薬、例えばヒルジン、ヒルログ、PPACK(D−phe−L−プロピルーL−arg−クロロメチルケトン)及びアルガトロバン、FXa阻害薬、例えばアンチスタチン及びTAP(マダニ抗凝固ペプチド)、ビタミンK阻害剤、例えばワルファリン、同様に活性化タンパクCを含む凝固経路モジュレーター、(l)シクロオキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばアスピリン、イブプロフェン、フルルビプロフェン、インドメタシン及びスルフィンピラゾン、(m)天然及び合成コルチコステロイド、例えばデキサメタゾン、プレドニソロン、メチルプレドニソロン及びヒドロコルチゾン、(n)リポキシゲナーゼ経路阻害剤、例えばノルジヒドログアイアレチン酸及びコーヒー酸、(o)ロイコトリエン受容体拮抗薬、(p)E−及びP−セレクチンの拮抗薬、(q)VCAM−1及びICAM−1の相互作用阻害薬、(r)プロスタグランジン、例えばPGE1及びPGI2及びプロスタサイクリン類似体、例えばシプロステン、エポプロステノール、カルバサイクリン、イロプロスト及びベラプロストを含むプロスタグランジン及びその類似体、(s)ビスホスフォネートを含むマクロファージ活性化防止剤、(t)HMG−CoAリダクターゼ阻害剤、例えばロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン及びセリバスタチン、(u)魚油及びオメガ3−脂肪酸、(v)フリーラジカル捕捉剤/酸化防止剤、例えばプロブコール、ビタミンC及びE、エブセレン、トランス−レチノイン酸及びSOD模倣物、(w)FGF経路剤、例えばbFGF抗体及びキメラ融合タンパク質、PDGF受容体拮抗薬、例えばトラピジル、ソマトスタイン類似体例えばアンジオペプチン及びオクレオチドを含むIGF経路剤、TGF−β経路剤、例えばポリアニオン系剤(ヘパリン、フコイジン)、デコリン、及びTGF−β抗体、EGF経路剤、例えばEGF抗体、受容体拮抗薬及びキメラ融合タンパク質、TNF−α経路剤、例えばサリドマイド及びその類似体、トロンボキサンA2(TXA2)経路モジュレータ、例えばスロトロバン、バピプロスト、ダゾキシベン及びリドグレル、同様にタンパク質チロシンキナーゼ阻害薬、例えばチロホスチン、ゲニステイン及びキノキサリン誘導体を含む、様々な成長因子に影響を与える物質(x)MMP経路阻害薬、例えばマリマスタット、イロマスタット及びメタスタット、(y)細胞運動阻害薬、例えばサイトカラシンB、(z)代謝拮抗剤、例えばプリン類似体(例えば、塩素化プリンヌクレオシド類似体である6−メルカプトプリン又はクラドリビン)、ピリミジン類似体(例えば、シタラビン及び5−フルオロウラシル)及びメトトレキサート、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、エチレンイミン、抗生物質(例えば、ダウノルビシン、ドキソルビシン)、ニトロソウレア、シスプラチン、微小管動態に影響する物質(例えば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、コルヒチン、Epo D、パクリタクセル及びエポチロン)、カスパーゼ活性剤、プロテアソーム阻害薬、血管形成阻害薬(例えばエンドスタチン、アンジオスタチン、スクアラミン)、ラパマイシン、セリバスタチン、フラボピリドール及びスラミンを含む増殖抑制/抗腫瘍薬、(aa)マトリクス沈着/組織化経路阻害薬、例えばハロフジノン又はその他のキナゾリノン誘導体及びトラニラスト、(bb)内皮化促進剤、例えばVEGF及びRGDペプチド、及び(cc)血液レオロジーモジュレーター、例えばペントキシフィリンを1つ以上含む。
【0074】
本発明の実施に有用な数々のその他の治療薬は、NeoRX社に譲受された米国特許第5733925号(特許文献6)にも開示されており、その開示は参照することにより全て本願に組み込まれるものとする。
【0075】
本発明の治療用物品と共に広範囲に亘る治療薬搭載量を用いることができ、治療上効果的な量は当業者によってすぐに求められる。
【0076】
本願では様々な実施形態を特に説明、記載したが、当然のことながら、上記の教示により本発明の改変及び変形も網羅され、本発明の精神と意図した範囲から逸脱することなく添付の請求項の範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合体部位と、水性環境下で加水分解する1つ以上の結合を介して前記重合体部位に共有結合された治療薬を含み、前記1つ以上の結合がSi−N結合、Si−O結合、又はその組合せを含む治療用重合体。
【請求項2】
前記重合体部位が共有結合された複数の異なる治療薬を含む、請求項1に記載の治療用重合体。
【請求項3】
前記重合体部位が単量体成分の異なる複数の重合体鎖を含む、請求項1に記載の治療用重合体。
【請求項4】
前記重合体部位が飽和又は不飽和炭素骨格を含む、請求項1に記載の治療用重合体。
【請求項5】
前記重合体部位が複数のペンダント芳香族基を含む、請求項1に記載の治療用重合体。
【請求項6】
前記ペンダント芳香族基が非置換フェニル基、置換フェニル基及びその組み合わせから選択される、請求項5に記載の治療用重合体。
【請求項7】
前記重合体部位が複数のペンダントアルキル基を含む、請求項1に記載の治療用重合体。
【請求項8】
前記アルキル基がメチル基、エチル基及びその組み合わせから選択される、請求項7に記載の治療用重合体。
【請求項9】
前記重合体部位がランダム又は交互共重合体鎖を含む、請求項1に記載の治療用重合体。
【請求項10】
前記重合体部位が飽和又は不飽和炭素骨格を含む、請求項9に記載の治療用重合体。
【請求項11】
前記炭素骨格が複数のペンダントアルキル基を含む、請求項10に記載の治療用重合体。
【請求項12】
前記炭素骨格が複数のペンダント置換又は非置換芳香族基を含む、請求項10に記載の治療用重合体。
【請求項13】
前記炭素骨格が前記治療薬が結合する複数のペンダント芳香族基を含む、請求項10に記載の治療用重合体。
【請求項14】
前記炭素骨格が複数のペンダントアルキル基と複数のペンダント置換又は非置換芳香族基を含む、請求項10に記載の治療用重合体。
【請求項15】
請求項1記載の治療用重合体と補助重合体を含む重合体放出領域。
【請求項16】
請求項1記載の治療用重合体を含む治療用物品。
【請求項17】
前記治療用物品が農業用組成物である、請求項16に記載の治療用物品。
【請求項18】
前記治療用物品が医薬組成物である、請求項16に記載の治療用物品。
【請求項19】
前記医薬組成物が注射用、経口投与、経鼻投与、直腸投与、膣内投与、眼球投与、経耳投与型、又は局所用組成物である、請求項18に記載の治療用物品。
【請求項20】
前記治療用物品が医療器具である、請求項16に記載の治療用物品。
【請求項21】
前記医療器具が前記治療用重合体を含む重合体放出領域を含む、請求項20に記載の治療用物品。
【請求項22】
前記重合体放出領域が前記医療器具全体を構成している、請求項21に記載の治療用物品。
【請求項23】
前記重合体放出領域が前記医療器具の一部を構成している、請求項21に記載の治療用物品。
【請求項24】
前記重合体放出領域が医療器具基体上に配置される、請求項21に記載の治療用物品。
【請求項25】
前記重合体放出領域が医療器具コーティングである、請求項21に記載の治療用物品。
【請求項26】
前記医療器具の少なくとも一部が対象へのインプラント又は挿入用に構成されている、請求項20に記載の治療用物品。
【請求項27】
前記医療器具がガイドワイヤ、バルーン、大静脈フィルタ、カテーテル、ステント、ステントグラフト、血管グラフト、脳動脈瘤フィラーコイル、心筋プラグ、心臓弁、血管弁、パッチ及び再生工学スカホールドから選択される、請求項20に記載の治療用物品。
【請求項28】
前記共有結合した治療薬がヒドロキシル基、アミン基及びその組合せから選択された官能基を含む治療薬から誘導される、請求項16に記載の治療用物品。
【請求項29】
前記共有結合された治療薬が抗血栓剤、抗増殖剤、抗炎症薬、抗遊走薬、細胞外器質産生及び組織化に影響する薬剤、抗腫瘍薬、抗有糸分裂薬、麻酔薬、抗血液凝固剤、血管細胞成長促進剤、血管細胞成長阻害薬、コレステロール降下薬、血管拡張剤、及び内因性血管作動機構阻害剤から選択された薬剤から誘導される、請求項28に記載の治療用物品。

【公表番号】特表2009−507767(P2009−507767A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522929(P2008−522929)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/028054
【国際公開番号】WO2007/012013
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(507017004)ボストン サイエンティフィック リミティッド (24)
【Fターム(参考)】